説明

電解水生成装置

【課題】広範囲の導電率の水を電解することのできる電解水生成装置を提供する。
【解決手段】電解水生成装置は、陽極21と陰極22の少なくとも一対の電極を備える電解槽2と、電解槽2に流入する原水の導電率を検知する検知部8と、検知部8により検知された原水の導電率に応じて電極間の距離を制御する制御部7と、制御部7の制御に応じて電極間の位置を可変する電極位置可変部10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水を生成する電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電解水を生成する電解水生成装置が知られている。例えば、特許文献1には、電解処理に先立ってパルス通電により電流値を検出し、導電率の高い水が通水され過電流が流れた場合は電解槽への通電を停止させる電解水生成器が開示されている。このような電解水生成器によれば、過電流による回路部品の損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−156361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される電解水生成器では、過電流を検知すると電解を停止するため、導電率の高い水が通水された場合は電解ができない。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、広範囲の導電率の水を電解することのできる電解水生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電解水を生成する電解水生成装置であって、陽極と陰極の少なくとも一対の電極を備える電解槽と、前記電解槽に流入する原水の導電率を検知する検知部と、前記検知部により検知された原水の導電率に応じて前記電極間の距離を制御する制御部と、前記制御部の制御に応じて前記電極間の位置を可変する電極位置可変部とを備える。
【0007】
また、本発明において、前記制御部は、前記電極間に流れる電解電流値が所定の値以上の場合は電極間距離を広げ、その電解電流値が所定の値まで小さくなると前記電極の位置を固定し、逆に、前記電極間に流れる電解電流値が所定の値以下の場合は電極間距離を狭くし、その電解電流値が所定の値まで大きくなると前記電極の位置を固定してもよい。
【0008】
また、本発明は、前記電極に接触防止用のストッパを設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原水の導電率に応じて電極間の距離を可変するようにしているので、広範囲の導電率の水を電解することのできる電解水生成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態における電解水生成装置の構成図である。
【図2】第1実施形態における電解槽内の電極の位置を説明するための図である。
【図3】電解電流値と電極間距離との関係を説明するための図である。
【図4】第1実施形態における電解水生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態における電解槽内の電極の位置を説明するための図である。
【図6】第2実施形態における電解水生成装置の構成図である。
【図7】第2実施形態における電解槽内の電極の位置を説明するための図である。
【図8】第2実施形態における電解水生成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における電解水生成装置の構成図である。この図に示すように、原水導入口1から通水された原水はカートリッジ4で不純物が取り除かれ、流量センサ5を通過し電解槽2に流れ込む。電解槽2は、陽極21と陰極22の少なくとも一対の電極を備えている。これら電極に電圧を印加すると、陰極室にはアルカリ水が生成され、陽極室には酸性水が生成される。生成されたアルカリ水はアルカリ水吐出口3から排出され、酸性水は図示しない酸性水排出口から排出されるようになっている。流量センサ5は、流量を検知して制御部7に通知する。検知部8は、電解槽2に流入する原水の導電率(電極間に流れる電解電流値)を検知して制御部7に通知する。制御部7は、電解槽2への通電や印加する電解電圧を制御したり、検知部8により検知された原水の導電率に応じて電極間の距離を制御したりする。電極位置可変部10は、制御部7の制御に応じて電極間の位置を可変する。
【0013】
図2は、電解槽2内の電極の位置を説明するための図であり、(a)は側面図、(b)はA矢視図である。ここでは、中央陽極21の両側に2つの側方陰極22a,22bをそれぞれ配置している。陽極21および陰極22a,22bは、絶縁が施されたバネ23により連結されており、モーター駆動により電極間距離が可変できるようになっている。すなわち、モーター27が回転すると、ギア25,26および軸24を介して陰極22aが矢印方向に移動し、バネ23で連結された陽極21も矢印方向に移動する。陰極22bは固定されているものとする。このように、モーター27により片側の電極22aだけを移動させても、各々の電極はバネ23により連結されているので、陽極21と陰極22aとの間の距離、陽極21と陰極22bとの間の距離はそれぞれ同一となる。
【0014】
制御部7は、流量センサ5の信号を読み取り、流量レベルが一定量を超えると通水中と判断する。そして、電源部9を制御して電解槽2の電極に直流電圧を供給し、アルカリ水または酸性水を生成する。この電解制御において、検知部8は、電極間に流れる電解電流値を監視している。ここで、図3に示すように、水の導電率をρ、電極間距離をL、電極板の面積をA、電解電圧値をVとする。抵抗Rは、R=ρ×L/Aであるから、オームの法則より、電極間に流れる電解電流値iは、i=V/R=(V×A)/(L×ρ)である。したがって、電解電圧値Vおよび電極板面積Aを固定値とすると、電極間距離Lが広くなるほど流れる電流値iはより小さくなり、逆に、電極間距離Lが狭くなるほど流れる電流値iはより大きくなる。
【0015】
ここで、導電率が高い原水が通水された場合、水の抵抗値が小さいため電極間を流れる電流は大きくなる。そこで、制御部7は、電解電流値が所定の値以上の場合、電極位置可変部10のモーター27を回転させて電極間距離を広げる(図4、S1→S2→S3→S4→S6)。これにより、電解電流値が所定の値まで小さくなると、電極位置可変部10のモーター27を停止し、電極の位置を固定する。
【0016】
逆に、導電率が低い原水が通水された場合、水の抵抗値が大きいため電極間に流れる電流は小さくなる。そこで、制御部7は、電解電流値が所定の値以下の場合、電極位置可変部10のモーター27を先程とは逆回転させて電極間距離を狭くする(図4、S1→S2→S3→S4→S5)。これにより、電解電流値が所定の値まで大きくなると、電極位置可変部10のモーター27を停止し、電極の位置を固定する。
【0017】
その後、通水が停止すると、電解電圧の印加を停止する(図4、S7→S8)。
【0018】
以上のように、第1実施形態における電解水生成装置によれば、原水の導電率に応じて電極間の距離を可変するようにしているので、広範囲の導電率の水を電解することができる。すなわち、導電率が高い水でも回路部品に負荷をかけることなく電解することができ、逆に、導電率が低い水でもpHを得ることができる。
【0019】
また、制御部7は、電解電流値が所定の値以上の場合は電極間距離を広げ、その電解電流値が所定の値まで小さくなると電極の位置を固定する。逆に、電解電流値が所定の値以下の場合は電極間距離を狭くし、その電解電流値が所定の値まで大きくなると電極の位置を固定する。これにより、電解電流値に応じた適切な電極間距離を保つことが可能である。
【0020】
なお、ここでは、片側の陰極22aだけを移動させることとしているが、もう片側の陰極22bも同様に移動させてもよい。すなわち、図5に示すように、モーター27bが回転すると、ギア25b,26bおよび軸24bを介して陰極22bが矢印方向に移動するようにしてもよい。この場合、バネ23は不要である。このような電極位置可変部10によっても、モーター27a,27bを同じ回転数に制御することで、陽極21と陰極22aとの間の距離、陽極21と陰極22bとの間の距離をそれぞれ同一にすることができる。
【0021】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態における電解水生成装置の構成図である。この電解水生成装置は、図6に示すように、電極間の距離可変用のモーター27に流れる電流値を検知して制御部7に通知するモーター電流検知部11を備えている。また、電極に接触防止用のストッパ30を設けている。例えば、図7に示すように、電解槽2内の陰極22a,22bの両面にストッパ30となる突起を設けるようにしてもよい。ストッパ30の材質は、導電性がなく耐水性があればよく、例えばゴム等を採用することができる。このようなストッパ30は、電極板に均等に力が加わるようにするため、電極板の四隅に設けるのが望ましい。ここでは、陰極22a,22bの両面にストッパ30を設けることとしているが、陽極21に面している側にはストッパ30を設けず、陽極21側にストッパ30を設けるようにしてもよい。
【0022】
図8は、第2実施形態における電解水生成装置の動作を示すフローチャートである。この図に示すように、基本動作は第1実施形態と同じである。すなわち、電極板が移動する際、より大きな導電率の原水が通水された場合、電極板は電解槽ケースに近づき(S11→S12→S13→S14→S19)、逆に、より小さな導電率の原水が通水された場合、電極板同士が近づく(S11→S12→S13→S14→S15)。これにより、電極板に設けられたストッパ30が電解槽ケースもしくは相手電極板に当たると、それ以上、電極板は移動することができなくなる。この時、電極位置可変部10のモーター27はロック状態となり、過電流が流れる。モーター駆動中、モーター電流検知部11はモーター電流を常に監視している。そして、一定以上の電流が流れた場合はモーター27を停止させ、電極板の移動を停止させる(S16→S17→S18、S20→S21→S22)。
【0023】
以上のように、第2実施形態における電解水生成装置によれば、電極に接触防止用のストッパ30を設けているので、電極板が移動し過ぎないように規制することができる。これにより、電極板同士の接触や、電極間が広がり過ぎることを防止することが可能である。
【0024】
なお、以上では好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、電解槽2は少なくとも一対の電極を備えていればよく、その構成は適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
2 電解槽
8 検知部
7 制御部
10 電極位置可変部
21 陽極
22 陰極
30 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水を生成する電解水生成装置であって、
陽極と陰極の少なくとも一対の電極を備える電解槽と、
前記電解槽に流入する原水の導電率を検知する検知部と、
前記検知部により検知された原水の導電率に応じて前記電極間の距離を制御する制御部と、
前記制御部の制御に応じて前記電極間の位置を可変する電極位置可変部と、
を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電極間に流れる電解電流値が所定の値以上の場合は電極間距離を広げ、その電解電流値が所定の値まで小さくなると前記電極の位置を固定し、逆に、前記電極間に流れる電解電流値が所定の値以下の場合は電極間距離を狭くし、その電解電流値が所定の値まで大きくなると前記電極の位置を固定することを特徴とする請求項1記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記電極に接触防止用のストッパを設けたことを特徴とする請求項1または2記載の電解水生成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−179566(P2012−179566A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44982(P2011−44982)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】