説明

電解液流通型電池

【課題】電源を用いることなく、簡易な構成で、正極側と負極側の電解液量のアンバランスを自動的に是正することができる電解液流通型電池を提供する。
【解決手段】レドックスフロー電池1Aは、電池セル10と、正極電解液及び負極電解液を循環させる正極用循環経路20及び負極用循環経路30と、各電解液を圧送するポンプ40と、を備える。また、連通管50を備え、正極タンク201と負極タンク301とが連通管50により連通している。この連通管50の負極タンク301に接続される側の開口部には、蓋51がヒンジ52を介して開閉自在に設けられており、この蓋51には、負極タンク301内の電解液の液面位置に応じて上下動する浮子61が取り付けられている。そして、負極タンク301内の電解液の液面位置が所定の位置より高くなると、浮子61が上昇し、これに伴い蓋51が開放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極側と負極側の電解液量のアンバランスを自動的に是正することができる電解液流通型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化への対策として、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用した風力発電や太陽光発電の導入が世界的に推進されている。これらの発電出力は天候に影響されるため、再生可能エネルギーを利用した発電の大量導入は、電力系統の周波数や電圧の維持が困難にさせるという問題を招く。この問題への対策の一つとして、大容量の蓄電池を設置して、出力変動の平滑化、余剰電力の貯蔵、負荷平準化などを図ることが提案されている。
【0003】
大容量の蓄電池の一つにレドックスフロー電池などの電解液流通型電池がある。レドックスフロー電池は、正極電極と負極電極との間に隔膜を介在させた電池セルに正極電解液及び負極電解液をそれぞれ供給して充放電を行う。電解液には、酸化還元により価数が変化する金属イオンを含有する水溶液が一般的に使用されている。レドックスフロー電池としては、正負極の電解液にバナジウムイオン水溶液を用いたバナジウム系レドックスフロー電池がよく知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
図4は、電解液流通型電池(レドックスフロー電池)の基本構成を説明するための概要図である。レドックスフロー電池1Nは、電池セル10を備える。電池セル10は、イオン透過膜からなる隔膜101で正極セル102と負極セル103とに区画され、正極セル102には正極電極104が、負極セル103には負極電極105がそれぞれ内蔵されている。また、レドックスフロー電池1Nは、正極セル102及び負極セル103の各セルに正極電解液及び負極電解液の各電解液を循環させる正極用及び負極用の各循環経路20,30と、各循環経路20,30のそれぞれに設けられ、各電解液を循環させる2つのポンプ40と、を備える。正極用循環経路20は、正極電解液を貯留する正極タンク201と、正極電解液を正極タンク201から正極セル102に送る往路配管202と、正極電解液を正極セル102から正極タンク201に戻す復路配管203と、を有する。負極用循環経路30は、負極電解液を貯留する負極タンク301と、負極電解液を負極タンク301から負極セル103に送る往路配管302と、負極電解液を負極セル103から負極タンク301に戻す復路配管303とを有する。このレドックスフロー電池1Nでは、正極タンク201及び負極タンク301の各タンクの下部と各セル102,103の下部とを連通するように往路配管202,302が接続され、各タンク201,302の上部と各セル102,103の上部とを連通するように復路配管203,303が接続されている。
【0005】
そして、各循環経路20,30のそれぞれにおける各往路配管202,302に設けられた各ポンプ40により、各タンク201,301から各往路配管202,302を介して各電解液が各セル102,103に送られる。各セル102,103に供給された各電解液は、各セル102,103の下方から内部を通って上方に排出され、各復路配管203,303を介して各タンク201,301に戻されて循環する。電池セル10内では、電池反応(充放電反応)が行われる。なお、図4に示すレドックスフロー電池1Nでは、正負極の電解液にバナジウムイオン水溶液を用いた場合を例に挙げている。また、図4中の電池セル内の実線矢印は充電反応を、破線矢印は放電反応をそれぞれ示す。
【0006】
レドックスフロー電池の電池セルは、一般に、正極電極と隔膜と負極電極とを有する複数の単位セルが積層されたセルスタックと呼ばれる形態で利用される。図5は、セルスタックを説明するための概要図である。セルスタック110は、双極板111を有するセルフレーム112、正極電極104、隔膜101、負極電極105、双極板111を有するセルフレーム112を順に繰り返し積層した構造となっている。図5に示すセルスタック110では、両側に一対のエンドプレート120を配置し、ボルトなどの締付部材125で両エンドプレート120を締め付けることで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001‐43884号公報
【特許文献2】特開2007‐188729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電解液流通型電池(レドックスフロー電池)では、充放電の繰り返しに伴い、電池セル内において正極セル又は負極セルの一方のセルから他方のセルに隔膜を通って電解液が移動する液移りが生じることが知られている。この液移りにより、正極タンク内の正極電解液の液量と負極タンク内の負極電解液の液量とに差が生じ、正極側と負極側の電解液量がアンバランスになることで、電池容量(放電容量)が低下する。
【0009】
このような液移りによる不具合を解消するため、例えば、上記した特許文献2には、正極タンクと負極タンクとを連通する連通管と、この連通管の流路を開閉するバルブを設けることが開示されている。そして、この連通管とバルブにより、液移りにより生じた正極電解液と負極電解液との液量のアンバランスを是正することが記載されている。
【0010】
上記した特許文献2に記載のレドックスフロー電池の場合、連通管に設けたバルブを開放することにより電解液量の調整を行う。しかし、電解液量の調整を自動的に行おうとすれば、例えば、バルブを電動バルブとし、電解液を貯留するタンクに液量を検出する液量センサを取り付け、この液量センサからの検出信号に基づいてバルブの開閉を制御する制御機器が必須になる。そのため、正極側と負極側の電解液量のアンバランスを自動的に是正するには、電動バルブなどを動作させるための電源や、定期的なメンテナンスが必要である。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、電源を用いることなく、簡易な構成で、正極側と負極側の電解液量のアンバランスを自動的に是正することができる電解液流通型電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電解液流通型電池は、電池セルと、正極用循環経路と、負極用循環経路と、電解液を循環させるポンプと、正極用循環経路と負極用循環経路とを連通する連通管と、連通管の開口部に設けられる蓋と、蓋に取り付けられる浮子と、を備える。電池セルは、正極電極を内蔵する正極セルと、負極電極を内蔵する負極セルと、前記正極セルと前記負極セルを区画する隔膜と、を有する。正極用循環経路は、正極電解液を貯留する正極タンクと、正極電解液を正極タンクから正極セルに送る往路配管と、正極電解液を正極セルから正極タンクに戻す復路配管と、を有する。負極用循環経路は、負極電解液を貯留する負極タンクと、負極電解液を負極タンクから負極セルに送る往路配管と、負極電解液を負極セルから負極タンクに戻す復路配管と、を有する。ポンプは、正極用循環経路及び負極用循環経路のそれぞれに設けられ、各電解液を循環させる。連通管は、一端側が正極用循環経路又は負極用循環経路の一方の循環経路に接続され、他端側が他方の循環経路における電解液を貯留するタンクに接続され、正極用循環経路と負極用循環経路とを連通する。蓋は、連通管の他端側開口部に設けられ、開閉自在である。浮子は、蓋に取り付けられ、タンク内の電解液の液面位置に応じて上下動し、その上下動によって蓋を開閉する。そして、タンク内の電解液の液面位置が所定の位置に達すると、浮子が移動し、浮子の移動に伴い蓋が開放されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、連通管の他端側開口部に蓋を設け、この蓋に浮子を取り付けることで、タンク内の電解液の液面位置が所定の位置に達すると、浮子の移動に伴い蓋が開放されることにより、連通管が連通状態となる。そのため、電解液量の調整を自動的に行うことができる。また、蓋を開閉する機構を浮子を用いた簡易な機械的機構によって実現したことにより、電動バルブや液量センサ用いた制御機器が不要であり、故障し難く、メンテナンスの必要も少ない。そして、この構成によれば、電源を用いることなく、簡易な構成で、正極側と負極側の電解液量のアンバランスを自動的に是正することが可能である。その結果、電池容量(放電容量)の低下を抑制することができる。タンク内の電解液の液面位置が所定の範囲内にあるときは、蓋が閉塞され、連通管が非連通状態となることで、連通管を介して正負極の電解液が常に混合するような状況を回避し、自己放電によるロスを低減することができる。
【0014】
本発明の電解液流通型電池の形態としては、次のような形態が挙げられる。
【0015】
(1)連通管の一端側が一方の循環経路における電解液を貯留するタンクに接続され、連通管の他端側に接続されたタンク内の電解液の液面位置が所定の位置より高くなると、浮子が上昇することによって蓋が開放される形態。
【0016】
(2)連通管の一端側が一方の循環経路における電解液を貯留するタンクに接続され、連通管の他端側に接続されたタンク内の電解液の液面位置が所定の位置より低くなると、浮子が下降することによって蓋が開放される形態。
【0017】
(3)連通管の一端側が一方の循環経路における復路配管に接続され、連通管の他端側に接続されたタンク内の電解液の液面位置が所定の位置より低くなると、浮子が下降することによって蓋が開放される形態。
【0018】
上記した(1)、(2)の形態は、一方の循環経路におけるタンク(以下、単に「一方のタンク」と呼ぶ場合がある)と他方の循環経路におけるタンク(以下、単に「他方のタンク」と呼ぶ場合がある)とが連通管で接続された構成である。いずれの場合も、蓋が開放され連通管が連通状態となることで、連通管を介して電解液の液面が高い側のタンクから液面が低い側のタンクへ電解液を移動させることにより、電解液量の調整を行う。上記(1)の形態の場合、連通管の他端側が接続される他方のタンクは、充放電の繰り返しにより電解液量が増加し易い側とし、上記(2)の形態の場合、充放電の繰り返しにより電解液量が減少し易い側とするとよい。
【0019】
上記した(3)の形態は、一方の循環経路における復路配管(以下、単に「一方の復路配管」と呼ぶ場合がある)と他方の循環経路におけるタンク(以下、単に「他方のタンク」と呼ぶ場合がある)とが連通管で接続された構成である。この場合、蓋が開放され連通管が連通状態となることで、連通管を介して一方の復路配管に流れる電解液を他方のタンクへ送ることにより、電解液量の調整を行う。また、連通管の他端側が接続される他方のタンクは、充放電の繰り返しにより電解液量が減少し易い側とするとよい。
【0020】
上記(1)、(2)の形態の場合、一方のタンク内の電解液の液面と他方のタンク内の電解液の液面との高低差を利用し、重力によって電解液を移動させるため、液面の高低差が小さくなると連通管を通る電解液の流量(流速)が減少する。これに対し、上記(3)の形態の場合、一方の循環経路に電解液を循環させるポンプの圧送力を利用し、一方の復路配管に流れる電解液を分岐して他方のタンクへ電解液を送るため、ポンプの圧送力によっては、上記(1)、(2)の形態の場合と比較して、連通管を通る電解液の流量(流速)を大きくすることができ、電解液量の調整を短時間に行うことができる。また、上記(3)の形態の場合、両タンク内の電解液の液面が異なる高さになるように電解液量の調整を行うことができる。例えば、上記(3)の形態では、電解液量の調整後、電解液量が減少し易い他方のタンク内の電解液の液面が、一方のタンク内の電解液の液面よりも高くなるように設定することも可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電解液流通型電池は、タンク内の電解液の液面位置が所定の位置に達すると、浮子の移動に伴い蓋が開放されることで、連通管が連通状態となるため、液移りにより正極側と負極側の電解液量が増減したとき、電解液量の調整を自動的に行うことができる。特に、蓋を開閉する機構が浮子を用いた純機械的な構造であるため、電動バルブや液量センサ用いた制御機器が不要であり、また、簡易な構造であるため、故障し難く、メンテナンスの必要も少ない。そのため、本発明の電解液流通型電池は、電源を用いることなく、簡易な構成で、正極側と負極側の電解液量のアンバランスを自動的に是正することが可能であり、その結果、電池容量(放電容量)の低下を抑制することができる。さらに、タンク内の電解液の液面位置が所定の範囲内にあるときは、蓋が閉塞され、連通管が非連通状態となることで、連通管を介して正負極の電解液が常に混合するような状況を回避し、自己放電によるロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1に係るレドックスフロー電池を説明するための概要図であり、(A)は初期状態を示し、(B)は負極タンク内の電解液の液面位置が高くなった状態を示す。
【図2】実施の形態2に係るレドックスフロー電池を説明するための概要図であり、(A)は初期状態を示し、(B)は負極タンク内の電解液の液面位置が低くなった状態を示す。
【図3】実施の形態3に係るレドックスフロー電池を説明するための概要図であり、(A)は初期状態を示し、(B)は負極タンク内の電解液の液面位置が低くなった状態を示す。
【図4】レドックスフロー電池の基本構成を説明するための概要図である。
【図5】セルスタックを説明するための概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0024】
(実施の形態1)
図1に示す実施の形態1に係るレドックスフロー電池1Aの基本構成は、図4を用いて説明したレドックスフロー電池1Nと同様であり、レドックスフロー電池1Aの特徴の一つは、正極用循環経路20と負極用循環経路30とを連通する連通管50を備える点にある。以下、レドックスフロー電池1Aの基本構成については概要のみを説明し、特徴点を中心に説明する。
【0025】
レドックスフロー電池1Aは、電池セル10と、正極電解液及び負極電解液を循環させる正極用循環経路20及び負極用循環経路30と、を備え、各循環経路20,30には、各電解液を圧送するポンプ40がそれぞれ設けられている。電池セル10は、イオン透過膜からなる隔膜101で正極セル102と負極セル103とに区画されており、正極セル102及び負極セル103には正極電極及び負極電極がそれぞれ内蔵されている。正極用循環経路20は、正極電解液を貯留する正極タンク201と、正極電解液を正極タンク201から正極セル102に送る往路配管202と、正極電解液を正極セル102から正極タンク201に戻す復路配管203と、を有する。負極用循環経路30は、負極電解液を貯留する負極タンク301と、負極電解液を負極タンク301から負極セル103に送る往路配管302と、負極電解液を負極セル103から負極タンク301に戻す復路配管303とを有する。ポンプ40は、各循環経路20,30にそれぞれ設けられており、各循環経路20,30に各電解液を循環させる。この例では、電池セル10が図示しない架台に支持され、正極タンク201及び負極タンク301より高い位置に設置されている。
【0026】
ここで、正負極の電解液について述べると、正負極の電解液は、同じ金属イオン種を含有することが挙げられる。例えば、正負極の電解液はそれぞれバナジウムイオンを含有する電解液とする他、マンガンイオン又はチタンイオン、或いはマンガンイオン及びチタンイオンの双方を含有する電解液とすることが挙げられる。正負極の電解液にマンガンイオン及びチタンイオンの双方を含有する電解液を用いた場合、高い起電力が得られ、析出物の発生も抑制される。
【0027】
レドックスフロー電池1Aは、連通管50を備え、連通管50の一端側が正極用循環経路20における正極タンク201に接続され、連通管50の他端側が負極用循環経路30における負極タンク301に接続されており、正極タンク201と負極タンク301とが連通管50により連通している。この例では、連通管50が、直線状であり、各タンク201,301に対して側面から略水平方向に導入されている。
【0028】
連通管50の他端側開口部(即ち、負極タンク301に接続される側の開口部)には、蓋51が設けられている。この例では、蓋51が、連通管50の他端側開口部の上縁にヒンジ52を介して開閉自在に設けられている。
【0029】
蓋51には、電解液の比重より軽く、負極タンク301内の電解液の液面位置に応じて上下動する浮子61が取り付けられ、この浮子61の移動(上下動)に伴い蓋51が開閉するようになっている。具体的には、浮子61は、負極タンク301内の電解液の液面が高くなった場合に上昇することによって蓋51を開放し、電解液の液面が低く、下限位置にある状態では、蓋51を閉塞するように蓋51に取り付けられている。この例では、蓋51の沿面方向と直交する方向に延びるようにロッド62を蓋51のヒンジ52側に接合し、このロッド62の先端に浮子61を取り付けている。
【0030】
レドックスフロー電池1Aにおける電解液量の調整動作を説明する。図1(A)は、初期状態(即ち、液移りにより正極側と負極側の電解液量が増減していない状態)を示し、この状態では、浮子61は下限位置にあり、蓋51が閉塞されている。よって、連通管50が非連通状態となるため、連通管50を介して正極タンク201と負極タンク301との間で電解液が移動することがない。一方、図1(B)は、液移りにより負極側の電解液量が増加し、負極タンク301内の電解液の液面位置が高くなった状態を示し、正極側と負極側の電解液量がアンバランスになっている。図1(B)に示すように、負極タンク301内の電解液の液面位置が浮子61の下限位置より高くなると、浮子61が上昇し、これに伴い蓋51が開放される。そして、連通管50が連通状態となることで、電解液量が増加し液面が上昇した負極タンク301から電解液量が減少し液面が低下した正極タンク201へ連通管50を介して電解液を移動させることにより、電解液量の調整を行う。
【0031】
(実施の形態2)
図2に示す実施の形態2に係るレドックスフロー電池1Bは、図1に示すレドックスフロー電池1Aとほぼ同様であり、以下では相違点を中心に説明する。
【0032】
レドックスフロー電池1Bでは、蓋51が、連通管50の他端側開口部の下縁にヒンジ52を介して開閉自在に設けられている。また、浮子61は、負極タンク301内の電解液の液面が低くなった場合に下降することによって蓋51を開放し、電解液の液面が高く、上限位置にある状態では、蓋51を閉塞するように蓋51に取り付けられている。この例でも、蓋51の沿面方向と直交する方向に延びるようにロッド62を蓋51のヒンジ52側に接合し、このロッド62の先端に浮子61を取り付けている。
【0033】
レドックスフロー電池1Bにおける電解液量の調整動作を説明する。図2(A)は、初期状態(即ち、液移りにより正極側と負極側の電解液量が増減していない状態)を示し、この状態では、浮子61は上限位置にあり、蓋51が閉塞されている。よって、連通管50が非連通状態となるため、連通管50を介して正極タンク201と負極タンク301との間で電解液が移動することがない。一方、図2(B)は、液移りにより負極側の電解液量が減少し、負極タンク301内の電解液の液面位置が低くなった状態を示し、正極側と負極側の電解液量がアンバランスになっている。図2(B)に示すように、負極タンク301内の電解液の液面位置が浮子61の上限位置より低くなると、浮子61が下降し、これに伴い蓋51が開放される。そして、連通管50が連通状態となることで、電解液量が増加し液面が上昇した正極タンク201から電解液量が減少し液面が低下した負極タンク301へ連通管50を介して電解液を移動させることにより、電解液量の調整を行う。
【0034】
上記したレドックスフロー電池1A,1Bでは、負極タンク301内の液面が低くなった場合、上記したレドックスフロー電池1Bでは負極タンク301内の液面が高くなった場合にそれぞれ、浮子61の移動に伴い蓋51が開放され、連通管50が連通状態となる。そこで、上記レドックスフロー電池1Aで説明した連通管50と上記レドックスフロー電池1Bで説明した連通管50との両方を設けることで、液面が低くなっても高くなっても、一方の連通管が連通状態となり、電解液量の調整を行うことができる。
【0035】
(実施の形態3)
図3に示す実施の形態3に係るレドックスフロー電池1Cは、図1、2に示すレドックスフロー電池1A,1Bと基本的にはほぼ同様の構成であり、以下では相違点を中心に説明する。
【0036】
レドックスフロー電池1Cでは、連通管50の一端側が正極用循環経路20における復路配管203に接続され、連通管50の他端側が負極用循環経路30における負極タンク301に接続されており、復路配管203と負極タンク301とが連通管50により連通している。この例では、連通管50が、負極タンク301に対して上面から略垂直方向に導入され、その開口部が電解液の液面近傍まで延ばされている。
【0037】
連通管50の他端側開口部(即ち、負極タンク301に接続される側の開口部)には、蓋51が設けられている。この例では、蓋51が、連通管50の他端側開口部の周縁にヒンジ52を介して開閉自在に設けられている。
【0038】
蓋51には、電解液の比重より軽く、負極タンク301内の電解液の液面位置に応じて上下動する浮子61が取り付けられ、この浮子61の移動(上下動)に伴い蓋51が開閉するようになっている。具体的には、浮子61は、負極タンク301内の電解液の液面が低くなった場合に下降することによって蓋51を開放し、電解液の液面が高く、上限位置にある状態では、蓋51を閉塞するように蓋51に取り付けられている。この例では、連通管50の開口方向と直交する方向であって、ヒンジ52側とは反対側に延びるようにロッド62を蓋51に接合し、このロッド62の先端に浮子61を取り付けている。
【0039】
レドックスフロー電池1Cにおける電解液量の調整動作を説明する。図3(A)は、初期状態(即ち、液移りにより正極側と負極側の電解液量が増減していない状態)を示し、この状態では、浮子61は上限位置にあり、蓋51が閉塞されている。よって、連通管50が非連通状態となるため、連通管50を介して復路配管203に流れる電解液が負極タンク301に送られることがない。一方、図3(B)は、液移りにより負極側の電解液量が減少し、負極タンク301内の電解液の液面位置が低くなった状態を示し、正極側と負極側の電解液量がアンバランスになっている。図3(B)に示すように、負極タンク301内の電解液の液面位置が浮子61の上限位置より低くなると、浮子61が下降し、これに伴い蓋51が開放される。そして、連通管50が連通状態となることで、復路配管203から分岐する連通管50を介して復路配管203に流れる電解液を負極タンク301へ送ることにより、電解液量の調整を行う。
【0040】
上記したレドックスフロー電池1Cでは、負極タンク301内の液面が低くなった場合に、浮子61の移動に伴い蓋51が開放され、連通管50が連通状態となる。そこで、この連通管50と同様の連通管を、負極用循環経路30における復路配管303と正極タンク201とを連通するように更に設けてもよい。これによれば、負極タンク301内の液面が高くなれば、正極タンク201内の液面は低くなることから、負極タンク301内の液面が低くなっても高くなっても、一方の連通管が連通状態となり、電解液量の調整を行うことができる。
【0041】
上記したレドックスフロー電池1Cでは、正極用循環経路20に電解液を循環させるポンプ40の圧送力を利用し、復路配管203に流れる電解液を分岐して負極タンク301へ電解液を送る。そのため、両タンク201,301内の電解液の液面の高低差を利用し、重力によって電解液を移動させる上記レドックスフロー電池1A,1Bの場合と比較して、ポンプの圧送力によって、連通管50を通る電解液の流量(流速)を大きくすることができ、電解液量の調整を短時間に行うことができる。また、上記レドックスフロー電池1Cの場合、ポンプ40が駆動しているとき(即ち、電池の運転中)のみ、電解液量の調整を行う。この場合、復路配管203から分岐して連通管50に流れる電解液により蓋51を開こうとする力がかかることから、浮子61が蓋51を閉塞する際の閉塞力を大きくするため、例えば、浮子61の体積を増やして浮力を大きくしたり、ロッド62の長さを長くしたりすることが考えられる。ロッド62の長さを長くすることで、テコの原理により蓋51を開口部に押し付ける閉塞力が高くなる。
【0042】
以上説明した実施の形態1〜3に係るレドックスフロー電池は、液移りにより正極側と負極側の電解液量が増減したとき、電解液量の調整を自動的に行うことができる。特に、蓋を開閉する機構が浮子を用いた純機械的な構造であるため、電動バルブや液量センサ用いた制御機器が不要であり、また、簡易な構造であるため、故障し難く、メンテナンスの必要も少ない。そのため、電源を用いることなく、簡易な構成で、正極側と負極側の電解液量のアンバランスを自動的に是正することが可能であり、その結果、電池容量(放電容量)の低下を抑制することができる。さらに、タンク内の電解液の液面位置が所定の範囲内にあるときは、蓋が閉塞され、連通管が非連通状態となることで、連通管を介して正負極の電解液が常に混合するような状況を回避し、自己放電によるロスを低減することができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記した実施の形態では、連通管の他端側に接続するタンクを負極タンクとしたが、正極タンクとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の電解液流通型電池は、例えば、レドックスフロー電池の分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1A,1B,1C,1N 電解液流通型電池(レドックスフロー電池)
10 電池セル
101 隔膜 102 正極セル 103 負極セル
104 正極電極 105 負極電極
20 正極用循環経路
201 正極タンク 202 往路配管 203 復路配管
30 負極用循環経路
301 負極タンク 302 往路配管 303 復路配管
40 循環ポンプ
50 連通管
51 蓋 52 ヒンジ
61 浮子 62 ロッド
110 セルスタック
111 双極板 112 セルフレーム
120 エンドプレート 125 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極を内蔵する正極セルと、負極電極を内蔵する負極セルと、前記正極セルと前記負極セルを区画する隔膜と、を有する電池セルと、
正極電解液を貯留する正極タンクと、前記正極電解液を前記正極タンクから前記正極セルに送る往路配管と、前記正極電解液を前記正極セルから前記正極タンクに戻す復路配管と、を有する正極用循環経路と、
負極電解液を貯留する負極タンクと、前記負極電解液を前記負極タンクから前記負極セルに送る往路配管と、前記負極電解液を前記負極セルから前記負極タンクに戻す復路配管と、を有する負極用循環経路と、
前記正極用循環経路及び前記負極用循環経路のそれぞれに設けられ、各電解液を循環させるポンプと、を備える電解液流通型電池であって、
管の一端側が前記正極用循環経路又は前記負極用循環経路の一方の循環経路に接続され、管の他端側が他方の循環経路における電解液を貯留するタンクに接続され、前記正極用循環経路と前記負極用循環経路とを連通する連通管と、
前記連通管の他端側開口部に設けられる開閉自在な蓋と、
前記蓋に取り付けられ、前記タンク内の電解液の液面位置に応じて上下動し、その上下動によって前記蓋を開閉する浮子と、を備え、
前記タンク内の電解液の液面位置が所定の位置に達すると、前記浮子が移動し、前記浮子の移動に伴い前記蓋が開放されることを特徴とする電解液流通型電池。
【請求項2】
前記連通管の一端側が前記一方の循環経路における電解液を貯留するタンクに接続され、
前記連通管の他端側に接続された前記タンク内の電解液の液面位置が所定の位置より高くなると、前記浮子が上昇することによって前記蓋が開放されることを特徴とする請求項1に記載の電解液流通型電池。
【請求項3】
前記連通管の一端側が前記一方の循環経路における電解液を貯留するタンクに接続され、
前記連通管の他端側に接続された前記タンク内の電解液の液面位置が所定の位置より低くなると、前記浮子が下降することによって前記蓋が開放されることを特徴とする請求項1に記載の電解液流通型電池。
【請求項4】
前記連通管の一端側が前記一方の循環経路における復路配管に接続され、
前記連通管の他端側に接続された前記タンク内の電解液の液面位置が所定の位置より低くなると、前記浮子が下降することによって前記蓋が開放されることを特徴とする請求項1に記載の電解液流通型電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−25964(P2013−25964A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158431(P2011−158431)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】