説明

電解生成水の貯留装置

【課題】電解生成水の貯留装置において、電解生成酸性水専用の貯留タンク内で揮発する塩素成分の処理の問題と、電解生成アルカリ性水専用の貯留タンク内で発生する衛生上の問題の両問題を解決する。
【解決手段】電解生成酸性水専用の第1の貯留タンク21と、電解生成アルカリ性水専用の第2の貯留タンク22からなる貯留機構を備え、これら両貯留タンク内の上方空間部S1,S2を互いに連通させる第1の連通管路25と、第2の貯留タンク22に連結されて第2の貯留タンク22内の上方空間部S2と外部とを連通させる第2の連通管路26からなる排気機構を備え、第1の貯留タンク21の上方空間部S1に滞留する塩素成分含有ガスを第2の貯留タンク22の上方空間部S2に漸次導入して、上方空間部S2を殺菌能を有する雰囲気に形成し、導入された上方空間部S2のガスをアルカリ成分により緩和させた状態で導入量に応じて漸次排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置にて生成される電解生成水(電解生成酸性水および電解生成アルカリ性水)を貯留するための貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解水生成装置の一形式として、有隔膜電解方式の電解水生成装置がある。当該電解生成方式の電解水生成装置は、陽極側電解室および陰極側電解室を有する有隔膜電解槽を備え、有隔膜電解槽の陽極側電解室にて電解生成酸性水が生成され、かつ、有隔膜電解槽の陰極側電解室にて電解生成アルカリ性水が生成される。生成された各電解生成水(電解生成酸性水および電解生成アルカリ性水)は、各電解室に接続されている専用の導出管路から導出される。導出された電解生成酸性水および電解生成アルカリ性水は、そのまま使用される場合もあるが、それぞれ独立した専用の貯留タンクに一旦貯留され、専用の各貯留タンクから電解生成酸性水および電解生成アルカリ性水を選択的に採取して使用され、または、選択的に排水される場合が多い。
【0003】
これらの専用の貯留タンクを備える電解生成水の貯留装置においては、各貯留タンク内の上方空間部にはガスが必然的に滞留することになり、貯留タンク内の圧力の上昇を防止すべく、ガス抜き手段を備えているのが一般である。ガス抜き手段としては、例えば、貯留タンク内の上方空間部と外部を連通させる連通管路が採用される場合が多く、当該上方空間部に滞留するガスは、連通管路を通して外部へ漸次放出されるようになっている。
【0004】
ところで、当該貯留装置を構成する電解生成酸性水専用の貯留タンク内では、貯留されている電解生成酸性水から塩素成分が揮発し、貯留タンク内の上方空間部に滞留する。このため、当該上方空間部に滞留するガスは塩素成分を含有した状態で、連通管路を通して外部へ漸次放出される。この場合、当該上方空間部に滞留するガス中の塩素成分の濃度が高いと、当該上方空間部から放出されたガスは、装置やその周囲の金属類を発錆させ、あるいは、人体に影響を及ぼす等の問題を惹起させるおそれがある。貯留する電解生成酸性水が強酸性の電解生成酸性水である場合には、これらの問題を惹起させるおそれが大きいことになる。このため、当該貯留装置においては、電解生成酸性水専用の貯留タンクに貯留する電解生成酸性水から揮発する塩素成分の処理が重視され、かかる問題に対処する一手段を備えた電解生成水の貯留装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
特許文献1にて提案されている電解生成水の貯留装置は、有隔膜電解方式の電解水生成装置と一体のもので、食塩等の希薄水溶液を被電解水として有隔膜電解にて生成される電解生成酸性水および電解生成アルカリ性水を専用に貯留する、電解生成酸性水専用の貯留タンクと電解生成アルカリ性水専用の貯留タンクを備えているものである。当該貯留装置においては、電解生成酸性水専用の貯留タンクの下方に電解生成アルカリ性水専用の貯留タンクを配置して、電解生成酸性水専用の貯留タンクが備えるオーバフローパイプを電解生成アルカリ性水専用の貯留タンク内に臨ませて、オーバフローパイプの下端部を電解生成アルカリ性水内に位置させる手段を採っている。
【0006】
かかる構成の貯留装置においては、電解生成酸性水専用の貯留タンク内の上方空間部に滞留するガスは、オーバフローパイプを通して電解生成アルカリ性水専用の貯留タンク内の電解生成アルカリ性水中に導入される。電解生成アルカリ性水中に導入されたガス中の塩素成分は、電解生成アルカリ性水中のアルカリ成分と反応して塩となって、電解生成アルカリ性水中に溶解して消失し、外部への漏洩が防止される。
【特許文献1】特開平7−265857号公報参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上記した特許文献1にて提案されている電解生成水の貯留装置は、電解生成酸性水専用の貯留タンク内で揮発する塩素成分を外部へ漏洩を防止し得るという点では、極めて優れたものと評価することができる。しかしながら、当該貯留装置には下記の2つの問題がある。
【0008】
当該貯留装置が有する第1の問題は、当該貯留装置が、電解生成アルカリ性水専用の貯留タンクに貯留されている電解生成アルカリ性水を使用しないことを前提として構成されているものであって、当該貯留タンクに貯留されている電解生成アルカリ性水は、その生成当時の特性を経時的に変性させ、設定された特性の電解生成アルカリ性水としての使用には供し得ない点にある。当該貯留装置を構成する電解生成アルカリ性水専用の貯留タンクに貯留されている電解生成アルカリ性水は、洗浄用水に使用して、その設定されている高い洗浄能力を利用することはできない。
【0009】
当該貯留装置が有する第2の問題は、電解生成アルカリ性水専用の貯留タンクに貯留されている電解生成アルカリ性水の使用の可否に関わりなく、当該貯留タンク内では、電解生成アルカリ性水中には勿論のこと、当該貯留タンク内の上方空間部に塩素成分が存在しないことから、藻や細菌(かび等)の発生、虫類の侵入等が避けられない点にある。当該貯留装置では、藻、細菌(かび等)、虫類の侵入およびそれらの増殖等を防止することができず、衛生上の問題が発生するおそれがあり、この問題を解決しないかぎり、必ずしも好適な貯留装置とはいえない。
【0010】
従って、本発明の目的は、電解水生成装置にて生成される電解生成水を貯留するための貯留装置において、電解生成酸性水専用の貯留タンク内で揮発する塩素成分の処理の問題と、電解生成アルカリ性水専用の貯留タンク内での衛生上の問題等、これらの両問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解水生成装置にて生成される電解生成水を貯留するための貯留装置に関する。本発明に係る電解生成水の貯留装置は、電解水生成装置にて生成される電解生成酸性水と電解生成アルカリ性水をそれぞれ独立して貯留する電解生成酸性水専用の第1の貯留タンクと、電解生成アルカリ性水専用の第2の貯留タンクからなる貯留機構を備えるとともに、前記第1の貯留タンクと前記第2の貯留タンクに連結されてこれら両貯留タンク内の上方空間部を互いに連通させる第1の連通管路と、前記第2の貯留タンクに連結されて同第2の貯留タンク内の上方空間部と外部とを連通させる第2の連通管路からなる排気機構を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る電解生成水の貯留装置を、第1の貯留タンクおよび第2の貯留タンクがそれぞれオーバフローパイプを備える貯留機構に適用する場合には、前記排気機構を構成する各連通管路は、前記各オーバフローパイプとは独立して構成することができ、また、これらのオーバフローパイプが前記排気機構を構成する各連通管路の少なくとも一部を兼ねる構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電解生成水の貯留装置においては、貯留機構を構成する第1の貯留タンク(電解生成酸性水専用の貯留タンク)と第2の貯留タンク(電解生成アルカリ性水専用の貯留タンク)にあっては、それらの内部の各上方空間部が、排気機構を構成する第1の連通管路を介して互いに連通し、第2の貯留タンクにあっては、その内部の上方空間部が、排気機構を構成する第2の連通管路を介して外部に連通している。
【0014】
このため、第1の貯留タンク内の上方空間部に滞留する塩素成分を含有するガスは、わずかづつ継続して、第1の連通管路を通して、第2の貯留タンク内の上方空間部に導入される。これに伴い、第2の貯留タンク内の上方空間部に滞留するガスは漸次外部に排出される。このため、当該上方空間部に滞留するガスは、第1の貯留タンクの上方空間部から導入される塩素成分を含有するガスに常時置換され、当該上方空間部を殺菌能を有する雰囲気に保持する。また、殺菌能を有する雰囲気を形成しているガスの塩素成分は、第2の貯留タンクに貯留している電解生成アルカリ性水のアルカリ成分によって緩和された状態で、第1の貯留タンク内の上方空間部から導入されるガスに見合った量だけ、外部へ漸次排気される。
【0015】
このように、本発明に係る電解生成水の貯留装置においては、排気機構によって、上記したガスの排気回路を構成していることから、第2の貯留タンク内の上方空間部は、第1の貯留タンク内の上方空間部から導入される塩素成分を含有するガスにより、殺菌能を有する雰囲気に形成され、このため、第2の貯留タンク内への藻、細菌(かび等)、虫類等の侵入や、第2の貯留タンク内でのこれらの増殖が防止され、第2の貯留タンク内での衛生上の問題の発生が防止される。
【0016】
また、第1の貯留タンク内で揮発した塩素成分を含有するガスは、第2の貯留タンク内の上方空間部に滞留している間にアルカリ成分によって緩和されて、塩素成分の大部分が消失する。このため、第2の貯留タンクの上方空間部から排気されるガス中の塩素成分は、皆無または極微量であり、塩素成分を含有するガスの排気に起因する種々の問題の発生は皆無または大幅に抑制されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、電解水生成装置にて生成される電解生成水を貯留するための貯留装置に関する。図1には、本発明の一実施形態に係る貯留装置を一体に備えた電解水生成装置を示している。また、図2には、当該貯留装置を詳細に示している。電解水生成装置10は、それ自体公知のもので、有隔膜電解槽10aと、被電解水の供給管路10bと、電解生成水の導出管路10cを主要部とする。また、貯留装置20は、電解水生成装置10の有隔膜電解槽10aにて生成された電解生成酸性水を収容して貯留する電解生成酸性水専用の第1の貯留タンク21と、電解生成アルカリ性水を収容して貯留する電解生成アルカリ性水専用の第2の貯留タンク22を主要部としている。
【0018】
有隔膜電解槽10aは、槽本体11と、槽本体11の内部を一対の区画室に区画するイオン透過能を有する隔膜12と、各区画室に配設されて各区画室を電解室R1,R2に形成する一対の電極13a,13bにて構成されている。有隔膜電解槽10aを構成する各電解室R1,R2には、その上流側に、被電解水を供給する供給管路10bを構成する分岐管路部14a,14bが接続されている。また、各電解室R1,R2の下流側には、導出管路10cを構成する第1,第2導出管15a,15bが接続されている。
【0019】
導出管路10cは、有隔膜電解槽10aの各電解室R1,R2の下流側に接続されている第1,第2導出管15a,15bと、貯留装置20を構成する第1の貯留タンク21および第2の貯留タンク22にそれぞれ接続されている第3,第4導出管15c,15dと、これらの導出管15a〜15d間に介装されている切替弁16にて構成されている。切替弁16は、その切替動作によって弁体16aの位置を、図示実線の状態と図示2点鎖線の状態とに切替える。
【0020】
当該電解水生成装置10においては、電解運転時には、有隔膜電解槽10aの各電解室R1,R2には、希薄食塩水等の被電解水が供給管路10bを通して供給されるとともに、各電解室R1,R2の電極13a,13bに電圧を印加して、いずれか一方の電解室R1を陽極側電解室とするとともに、いずれか他方の電解室R2を陰極側電解室とする。これにより、一方の電解室R1では電解生成酸性水が生成され、他方の電解室R2では電解生成アルカリ性水が生成される。生成された電解生成酸性水および電解生成アルカリ性水は、導出管路10cを介して、貯留装置20を構成する第1の貯留タンク21および第2の貯留タンク22にそれぞれ導出される。当該電解水生成装置10の電解運転時、導出管路10cが図1に示す状態である場合には、電解室R1にて生成された電解生成酸性水は、第1導出管15a、切替弁16および第3導出管15cを通って、貯留装置20を構成する第1の貯留タンク21に導出され、また、電解室R2にて生成された電解生成アルカリ性水は、第2導出管15b、切替弁16および第4導出管15dを通って、貯留装置20を構成する第2の貯留タンク22に導出される。
【0021】
当該電解水生成装置10の当該電解運転においては、電解生成アルカリ性水が生成される電解室R2では、被電解水が含有するカルシウムやマグネシウム等の金属イオンに起因して不溶性の金属化合物が発生する。発生した不溶性の金属化合物は、スケールとして電解室R2の内壁、電極13b、隔膜12等に付着して、電解効率を低下させるおそれがある。当該電解水生成装置10では、これに対処すべく、各電解室R1,R2の電極13a,13bに印加する電圧の極性を定期的に正負反転させて、例えば、電解室R1を陽極側から陰極側に、かつ、電解室R2を陰極側から陽極側に変更する手段を採っている。これにより、陰極側から陽極側に変更された電解室R2では電解生成酸性水が生成され、生成された電解生成酸性水は、すでに発生しているスケールを溶解して流出させる。
【0022】
当該電解水生成装置10においては、電解室R1,R2内の電極13a,13bの極性の反転に対応して、切替弁16が切替動作するように構成されている。切替弁16が切替動作すると、切替弁16の弁体16aは、図示実線の位置から2点鎖線の位置に移行する。これにより、導出管路10cでは、第1導出管15aと第4導出管15dが接続され、かつ、第2導出管15bと第3導出管15cが接続される。この結果、第3導出管15cは、電解室R2にて生成された電解生成酸性水を第1の貯留タンク21に導出し、また、第4導出管15dは、電解室R1にて生成された電解生成アルカリ性水を第2の貯留タンク22に導出する。従って、当該電解水生成装置10では、第3導出管15cが電解生成酸性水専用の導出管に、第4導出管15dが電解生成アルカリ性水専用の導出管に設定され、一方、当該貯留装置20dでは、第1の貯留タンク21が電解生成酸性水専用の貯留タンクに設定され、かつ、第2の貯留タンク22が電解生成アルカリ性水専用の貯留タンクに設定されている。
【0023】
当該貯留装置20においては、図2に示すように、第1の貯留タンク21と第2の貯留タンク22とが、本発明における電解生成水の貯留機構を構成していて、当該貯留機構に、本発明における排気機構が設けられている。当該貯留機構を構成する第1の貯留タンク21においては、タンク本体21aにおける一方の側壁の中央部より少し上方の部位に、電解生成酸性水を導出する第3導出管15cが接続されているとともに、タンク本体21aにおける他方の側壁の中央部より少し上方の部位に、オーバフローパイプ23aが接続されている。また、第2の貯留タンク22においては、タンク本体22aにおける一方の側壁の中央部より少し上方の部位に、電解生成アルカリ性水を導出する第4導出管15dが接続されているとともに、タンク本体22aにおける他方の側壁の中央部より少し上方の部位に、オーバフローパイプ23bが接続されている。オーバフローパイプ23bとオーバフローパイプ23aは、互いに一体となって下方に延びている。
【0024】
当該貯留機構においては、有隔膜電解槽10aにて生成される電解生成酸性水は、第3導出管15cを通して第1の貯留タンク21内に導入される。第1の貯留タンク21は、設定された量の電解生成酸性水を貯留し、電解生成酸性水が過剰になった場合には、過剰量の電解生成酸性水は、オーバフローパイプ23aを通して排出される。また、有隔膜電解槽10aにて生成される電解生成アルカリ性水は、第4導出管15dを通して第2の貯留タンク22内に導入される。第2の貯留タンク22は、設定された量の電解生成アルカリ性水を貯留し、電解生成アルカリ性水が過剰になった場合には、過剰量の電解生成アルカリ性水は、オーバフローパイプ23bを通して排出される。
【0025】
第1の貯留タンク21に貯留されている電解生成酸性水は、必要時には、ポンプPを駆動することにより、流出管24aを通して採取されて使用に供される。また、第2の貯留タンク22に貯留されている電解生成アルカリ性水は、必要時には、ポンプPを駆動することにより、流出管24bを通して採取されて使用に供される。なお、両オーバフローパイプ23a,23bが合体して下方に延びているパイプ部の中間部には、図示しないトラップが設けられていて、当該トラップには、オーバフローした電解生成酸性水と電解生成アルカリ性水が合体して略中性となっている電解生成水が滞留している。当該トラップに滞留している略中性の電解生成水は、各貯留タンク21,22内の上方空間部S1,S2を外部から遮断している。
【0026】
しかして、当該貯留装置20を構成する排気機構は、第1の貯留タンク21における他方の側壁の上方部位と第2の貯留タンク22における他方の側壁の上方部位に接続されている第1の連通管路25と、第2の貯留タンク22における一方の側壁の上方部位に接続されている第2の連通管路26にて構成されている。第1の連通管路25は、第1の貯留タンク21内と第2の貯留タンク22内の上方空間部S1,S2を互いに連通させ、第2の連通管路26は、第2の貯留タンク22内の上方空間部S2を外部に連通させている。
【0027】
このように構成した当該貯留装置20においては、電解生成酸性水専用の第1の貯留タンク21内では、貯留する電解生成酸性水から塩素成分がガス状態で揮発して、その上方空間部S1に他のガスと混合した状態で滞留する。第1の貯留タンク21内の上方空間部S1に滞留する塩素成分を含有するガスは、わずかづつ継続して、排気機構を構成する第1の連通管路25を通して、第2の貯留タンク22内の上方空間部S2に導入される。これに伴い、第2の貯留タンク22内の上方空間部S2に滞留する既存のガスは、漸次外部に排出される。この結果、第2の貯留タンク22内の上方空間部S2に滞留するガスは、第1の貯留タンク21内の上方空間部S1から導入される塩素成分を含有するガスに常時置換され、当該上方空間部S2は殺菌能を有する雰囲気に常時保持される。また、殺菌能を有する雰囲気を形成しているガスは、第2の貯留タンク22内の上方空間部S2に滞留している間に、同貯留タンク22に貯留している電解生成アルカリ性水のアルカリ成分によってその塩素成分を緩和され、導入されるガスに見合った量だけ、外部へ漸次排気される。
【0028】
このように、当該貯留装置20においては、第1の貯留タンク21内の上方空間部S1に滞留する塩素成分を含有するガスは、第1の連通管路25を通して第2の貯留タンク22内の上方空間部S2に漸次導入されて、当該上方空間部S2を、塩素成分を含有するガスが充満する殺菌能を有する雰囲気に形成する。また、当該上方空間部S2で殺菌能を消失したガスは、導入される塩素成分を含有するガスに応じて、第2の連通管路26を通して外部に排出され、この結果、当該上方空間部S2内は、常に殺菌能を有する雰囲気に保持される。このため、第2の貯留タンク22内への藻、細菌(かび等)、虫類等の侵入、および、同貯留タンク22内でのこれらの増殖が防止され、第2の貯留タンク22内での衛生上の問題の発生が防止される。
【0029】
また、第1の貯留タンク21内で揮発した塩素成分を含有するガスは、第2の貯留タンク22内の上方空間部S2に滞留している間にアルカリ成分によって緩和されて、その大部分が消失する。このため、第2の貯留タンク22内の上方空間部S2から排気されるガス中の塩素成分は、皆無または極微量であって、塩素成分を含有するガスの排気に起因する種々の問題の発生は皆無または大幅に抑制される。
【0030】
なお、当該貯留装置20においては、排気機構を第1の連通管路25と第2の連通管路26にて構成しているが、第1の連通管路25を、既存のオーバフローパイプ23a,23bに交換して実施することができる。
【0031】
本発明に係る貯留装置の一実施形態(当該排気機構を備える貯留装置20)による一実験では、電解生成酸性水専用の第1の貯留タンク21内における上方空間部S1に滞留するガス中の塩素ガス濃度は220ppm、電解生成アルカリ性水専用の第2の貯留タンク22内における上方空間部S2に滞留するガス中の塩素ガス濃度は4ppm、第2の貯留タンク22内における上方空間部S2から排出された排気中の塩素ガス濃度は2ppmであるとの結果を得ている。これに対して、排気機構を備えていない電解生成酸性水専用の貯留タンクにおいては、その上方空間部Sに滞留するガス中の塩素ガス濃度は220ppm、当該上方空間部Sから排出された排気中の塩素ガス濃度は35ppmであった。なお、排気中の塩素ガスの最大許容量は、0,5mg/Lである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る貯留装置を装備する電解水生成装置を概略的に示す概略構成図である。
【図2】同貯留装置を概略的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0033】
10…電解水生成装置、10a…有隔膜電解槽、10b…供給管路、10c…導出管路、11…槽本体、12…隔膜、13a,13b…電極、14a,14b…分岐管路部、15a…第1導出管、15b…第2導出管、15c…第3導出管、15d…第4導出管、16…切替弁、16a…弁体、R1,R2…電解室、20…貯留装置、21…第1の貯留タンク、22…第2の貯留タンク、21a,22a…タンク本体、23a,23b…オーバフローパイプ、24a,24b…流出管、25…第1の連通管路、26…第2の連通管路、P…ポンプ、S1,S2…上方空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水生成装置にて生成される電解生成水を貯留するための貯留装置であり、当該貯留装置は、前記電解水生成装置にて生成される電解生成酸性水と電解生成アルカリ性水をそれぞれ独立して貯留する電解生成酸性水専用の第1の貯留タンクと、電解生成アルカリ性水専用の第2の貯留タンクからなる貯留機構を備えるとともに、前記第1の貯留タンクと前記第2の貯留タンクに連結されてこれら両貯留タンク内の上方空間部を互いに連通させる第1の連通管路と、前記第2の貯留タンクに連結されて同第2の貯留タンク内の上方空間部と外部とを連通させる第2の連通管路からなる排気機構を備えていることを特徴とする電解生成水の貯留装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解生成水の貯留装置において、前記貯留機構を構成する第1の貯留タンクおよび第2の貯留タンクはそれぞれオーバフローパイプを備え、前記排気機構を構成する各連通管路は、前記各オーバフローパイプとは独立して構成されていることを特徴とする電解生成水の貯留装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電解生成水の貯留装置において、前記貯留機構を構成する第1の貯留タンクおよび第2の貯留タンクはそれぞれオーバフローパイプを備え、これらのオーバフローパイプが前記排気機構を構成する各連通管路の少なくとも一部を兼ねていることを特徴とする電解生成水の貯留装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−44609(P2007−44609A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230734(P2005−230734)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】