説明

電解用陽極と該電解用陽極を使用する電気分解装置

【課題】電気分解における高電流密度下の長時間連続運転ができ、高電流下での使用により生じる電圧ロスを小さくでき、使用可能電流密度の上限値を押し上げることが可能になる。また電圧ロスを最小限に抑えることにより、省エネによるエネルギー効率の向上も可能になる電解用陽極を実現する。
【解決手段】フッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴を用いてフッ素含有物質を電解合成するために使用する電解用陽極1aにおいて、不動態化処理により表面に不動態膜が形成可能な金属基体2と、この金属基体の少なくとも一部に被覆されたダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3と、このダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3で被覆されていない前記金属基体表面を被覆する不動態皮膜4とを具備したことを特徴とする電解用陽極1aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解用陽極に関するものである。
更に詳述すれば、フッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴を用いてフッ素含有物質を電解合成するために使用する電解用陽極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第3893397号公報「電解用陽極および該電解用陽極を使用するフッ素含有物質の電解合成方法」には、
フッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴を用いてフッ素含有物質を電解合成するために使用する電解用陽極であって、少なくともその表面が導電性炭素質材料から成る導電性基体、および該基体の一部に被覆されたダイヤモンド構造を有する導電性炭素質及び当該ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質で被覆されていない基体表面を被覆する(CF)nから成る炭素質皮膜を含んで成ることを特徴とする電解用陽極が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3893397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置においては、以下の問題点がある。
基材となる導電性炭素基体の抵抗率が大きいため、高電流密度下でのフッ素ガスの発生において大きなジュール熱が発生し、溶融塩の温度上昇を引き起こす。
そのため溶融塩の温度上昇が使用電流範囲の限定要因となり、安定した操業を行うためには電流密度の範囲が限られてしまう。
また炭素を使用しているため加工性が悪く、形状の自由度が限られてしまう。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、
電気分解における高電流密度下の長時間連続運転ができ、高電流下での使用により生じる電圧ロスを小さくでき、使用可能電流密度の上限値を押し上げることが可能になる。また電圧ロスを最小限に抑えることにより、省エネによるエネルギー効率の向上も可能になる電解用陽極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1の電解用陽極においては、
フッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴を用いてフッ素含有物質を電解合成するために使用する電解用陽極において、不動態化処理により表面に不動態膜が形成可能な金属基体と、この金属基体の少なくとも一部に被覆されたダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜と、このダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜で被覆されていない前記金属基体表面を被覆する不動態皮膜とを具備したことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2の電解用陽極においては、請求項1記載の電解用陽極において、
フッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴を用いてフッ素含有物質を電解合成するために使用する電解用陽極において、不動態化処理により表面に不動態膜が形成可能な金属基体と、この金属基体を被覆し不動態化処理により外表面に不動態膜が形成可能な金属膜と、この金属膜の少なくとも一部に被覆されたダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜と、このダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜で被覆されていない前記金属膜表面を被覆する不動態皮膜とを具備したことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3の電解用陽極においては、請求項1又は請求項2記載の電解用陽極において、
前記金属基体あるいは前記金属膜と前記ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜との間に設けられ前記ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜が少なくとも一部に被覆された種結晶を担持する担持層を具備したことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4の電解用陽極においては、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電解用陽極において、
前記ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜は、導電性ダイヤモンドライクカーボン及び又は導電性ダイヤモンドを含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5の電解用陽極においては、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電解用陽極において、
前記不動態皮膜が、前記金属基体あるいは前記金属膜の表面を構成する金属のフッ化物より成ることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6の電解用陽極においては、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電解用陽極において、
前記電極構造が、複数の貫通孔の壁面を疎液性とする表面処理を行った多孔電極であって、前記多孔電極内の貫通孔の一端と繋がる一方の電極表面を接気面とし、前記貫通孔の他端と繋がる他方の電極表面を接液面として配置されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7の電気分解装置においては、
電解液としてフッ化水素を含む溶融塩を電気分解する電気分解装置において、前記請求項1乃至請求項6記載の電極を具備し、フッ素ガスを発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
溶融塩KF・n HF等のフッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴に対する、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜と不動態皮膜の優れた耐腐食性を活かし、電気分解における高電流密度下の長時間連続運転が可能になる。
また、導電率の高い金属基体を用いることにより高電流下での使用により生じる電圧ロスを最小にするため、電圧ロス分が電気エネルギーから熱エネルギーに変換されて発生する陽極の発熱を抑えることが可能になり、基板の発熱により限定されていた使用電流密度の上限値を押し上げることが可能になる。
また電圧ロスを最小限に抑えることにより、省エネによるエネルギー効率の向上も可能になる電解用陽極が得られる。
【0014】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
金属基体とダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜の間に金属膜をバッファ層として形成することにより、金属膜として炭化物を形成し易い金属を用いることにより、金属膜上におけるダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜の形成を容易にし、金属膜-炭素質皮膜間の密着性を向上できる電解用陽極が得られる。
金属基体の熱膨張率とダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜の熱膨張率の間にある熱膨張率を持つ金属膜を使用することにより金属基体-金属膜-炭素質皮膜間の密着性を向上できる電解用陽極が得られる。
【0015】
本発明の請求項3によれば、次のような効果がある。
種結晶を担持した担持層のアンカー効果により、導電性炭素質皮膜と担持層の間の密着性を向上出来る電解用陽極が得られる。
【0016】
本発明の請求項4によれば、次のような効果がある。
導電性ダイヤモンドは、規則性のある結晶構造となり、sp3結合を含むダイヤモンド構造を持ち、また導電性ダイヤモンドライクカーボンは、無定形の結晶構造となり、sp3結合とsp2結合を含むアモルファス構造を持つ。
そのため、フッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴を用いた電気分解において、sp3結合に起因する熱的・化学的な安定性により、電極表面のフッ化グラファイト(CF)nの生成(陽極効果)を抑制するため、安定して長時間の電解を可能とする電解用陽極が得られる。
【0017】
本発明の請求項5によれば、次のような効果がある。
不動態皮膜として、金属基体あるいは金属膜の表面を構成する金属のフッ化物から成ることにより、溶融塩KF・n HF等のフッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴に対して特に優れた耐腐食性を持つ電解用陽極が得られる。
【0018】
本発明の請求項6によれば、次のような効果がある。
接液面側の電極表面上で発生した気体を、多孔を通して接気面側に分離することにより、接液面側の電極表面上を覆っていた気体を取り除き、接液面側の電極表面と電解液の接する面積が増加するため、接液面側の有効面積が増加し電流密度が向上する。
陽極の発熱を最小限に抑えた状態で電流密度を向上させる電解用陽極が得られる。
【0019】
本発明の請求項7によれば、次のような効果がある。
請求項1〜6の電極を用いてフッ素ガスを発生させることにより、電流密度の増加に対応して、単位時間当たりに発生するフッ素ガス量を増加させることができ、またダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜と不動態皮膜の優れた耐腐食性により、電極の損傷を抑えて長時間安定して電解を継続させることができる電気分解装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図3】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図4】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図5】本発明の電極作製方法の一実施例の要部構成説明図である。
【図6】本発明の電極作製方法の他の実施例の要部構成説明図である。
【図7】本発明の電極作製方法の他の実施例の要部構成説明図である。
【図8】本発明の電極作製方法の他の実施例の要部構成説明図である。
【図9】本発明の電極が使用された電気分解の一実施例の要部構成説明図である。
【図10】本発明の電極1が使用された気液分離機能付き多孔電極の一実施例の要部構成説明図である。
【図11】本発明の電極が使用された気液分離機能付き多孔電極20の電極保持部の一実施例の要部構成説明図である。
【図12】本発明の電極が使用された気液分離機能付き多孔電極20が、電気分解に使用された一実施例の要部構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【0022】
図1は、不動態化処理により表面に不動態膜が形成可能な金属基板2の少なくとも一部に、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3を被覆し、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3で被覆されていない金属基体2の表面を不動態皮膜4により少なくとも一部被覆した電極1aの断面図を示している。
【0023】
金属基板2上には、マイクロ波プラズマCVD装置などにより導電性ダイヤモンド薄膜3を成膜する。
金属基体2として、不動態化処理により表面に不動態膜が形成可能な金属が使用され、例えば、フッ素ガスによる表面処理などにより絶縁性の不動態被膜を形成するニッケル、銅、クロム、またはその合金、鉄合金が用いられる。
【0024】
フッ素ガスなどの浸漬により、金属基体2の表面にはフッ化ニッケル、フッ化銅、フッ化クロム、フッ化鉄等が形成され、溶融塩KF・n HFに対して耐腐食性を持つことが可能になる。
【0025】
溶融塩KF・n HFを用いた電解方式によるフッ素ガス発生において、通常の炭素電極を使用すると、C-F結合の生成が促進されてフッ化グラファイト(CF)nが生成する。
炭素電極表面においてフッ化グラファイト(CF)nが生成すると、溶融塩KF・n HFの濡れ性が悪くなり、溶融塩と炭素電極の接触面積が減少し、最終的には電気分解を継続することができなくなる。
【0026】
また、ニッケル電極を用いると電圧印加により、ニッケルがイオン化して溶融塩に溶出してしまう現象が生じる。
銅電極を使用すると、溶融塩に浸漬すると表面が不動態化するため、電気分解用の電極として使用することはできない。
【0027】
本発明では、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3と絶縁性不動態被膜4の溶融塩KF・n HFに対する安定性を活かし、また、導電率の高い金属基体を用いることにより、高電流密度下の電気分解における陽極の発熱を抑えることができるため、安定した温度を維持したまま高電流密度下での長時間運転が可能となる。
【0028】
なお、金属基体の形状は、例えば、平板構造、円筒構造、円柱構造、メッシュ構造、ポーラス構造、多孔質構造などが使用される。
金属基体の材質は、例えば、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Cr(クロム)、Fe(鉄)の単体、または前記を成分とする合金、Fe(鉄)の合金、例えば無酸素銅、タフピッチ銅、Ni(ニッケル)-Cu(銅)合金、Ni(ニッケル)-Cr(クロム)-Fe(鉄)合金、Ni(ニッケル)- Mo(モリブデン)合金、Ni(ニッケル)-Cr(クロム)-Mo(モリブデン)合金又はステンレスなどが挙げられる。
【0029】
陽極・陰極の組み合わせとして、前記材料単一あるいは2つ以上の材料の組み合わせでも良い。
金属基体2上にダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3を被覆する際に、生じたピンホールにより露出した金属基体2が、フッ化処理により絶縁性不動態化して溶融塩KF・n HFに対して耐腐食性を持つための前記金属基体2の材質として、特に、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)、Cu(銅)、モネル合金、ステンレス等が好適である。
【0030】
金属基体2へのダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3の被覆方法には、例えば、熱フィラメントCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、高温高圧合成法、プラズマアークジェット法及び物理蒸着法などが使用される。
導電性ダイヤモンド薄膜3に導電性を付与するためのドーパントとして、ボロン、窒素、リン、ニッケルなどが使用される。
【0031】
ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質としては、例えば、導電性単結晶ダイヤモンド、導電性多結晶ダイヤモンド、導電性ダイヤモンドライクカーボン、グラファイト、アモルファスカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、ECRスパッタカーボン、RFスパッタカーボンなどが使用される。
【0032】
前記金属フッ化物による不動態処理としては、例えば、フッ素ガス(F2ガス)、フッ化水素ガス(HFガス)、フッ化カルボニルガス(COF2ガス)、三フッ化窒素ガス(NF3ガス)やその他フッ素系ガスが使用される。
また、より安定な皮膜を形成するために高温、例えば、200℃以上の温度条件で処理することが好ましい。
【0033】
不動態皮膜4としては限定されておらず、溶融塩KF・n HFに対して耐腐食性を持つフッ化ニッケル、フッ化銅、フッ化クロムなどの不動態皮膜が使用される。
また、不動態皮膜4を絶縁性不動態皮膜とすることにより、本来フッ素ガスの発生に使用される電流の一部が電極の金属箇所溶解に使用されていたが、絶縁性とすることにより電流の一部が電極溶解に使用されることを防ぎ、不動態皮膜の耐腐食性に加えて、更に電極の損傷を抑える事ができる。また前述のように電流の一部が電極溶解に使用されることを防ぐため、フッ素ガス発生に使用される電流量が増加する。

また、不動態皮膜4を絶縁性不動態皮膜とすることにより、電気分解を行なう際の電子の一部が電極溶解に使用されることを防ぐことができ、更に電極の損傷を抑えることができる。
【0034】
この結果、
溶融塩KF・n HF等のフッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴に対する、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3と不動態皮膜4の優れた耐腐食性を活かし、電気分解における高電流密度下の長時間連続運転が可能になる。
また、導電率の高い金属基体2を用いることにより高電流下での使用により生じる電圧ロスを最小にするため、電圧ロス分が電気エネルギーから熱エネルギーに変換されて発生する陽極の発熱を抑えることが可能になり、基板2の発熱により限定されていた使用電流密度の上限値を押し上げることが可能になる。
また電圧ロスを最小限に抑えることにより、省エネによるエネルギー効率の向上も可能になる電解用陽極が得られる。
【0035】
図2は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図2は、金属基体2を異種の金属膜5により被覆して、その後、少なくとも一部にダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3を被覆し、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3で被覆されていない金属基体2の表面を不動態皮膜4により被覆した電極1bの断面図を示している。
【0036】
金属基体2を異種の金属により被覆する理由は、
(1)ピンホールが実用上無視できる程度になるようにニッケルメッキ、銅メッキ、クロムメッキなどを行うことにより、溶融塩KF・n HFに対して耐腐食性を持つフッ化ニッケル、フッ化銅、フッ化クロムなどの不動態被膜を、金属基体2の表面に形成することが可能になるため、加工のし易い金属、例えばアルミ、シリコンなど、の溶融塩KF・n HFに腐食する金属を金属基体2として選択することができる。
(2)炭化物を形成しやすい金属を被覆することにより、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3と金属基体2の表面の密着性を向上させることができる。
からである。
【0037】
金属基体2を被覆する金属の材質は、たとえば、はTi(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)の単体または前記を成分とする合金により前記金属基体2が被覆される。
【0038】
(1)金属基体2の表面上にダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3を被覆する際に生じたピンホールにより露出した金属基体2の表面が、フッ化処理により絶縁性不動態化して溶融塩KF・n HFに対して耐腐食性を持つようにするため。
(2)且つ、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3と金属基体2の表面の密着性を向上させるため。
(1)(2)を満足する被覆金属材質として、特に、Cr(クロム)が好適である。
【0039】
この結果、
金属基体2とダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3の間に金属膜5をバッファ層として形成することにより、金属膜5として炭化物を形成し易い金属を用いることにより、金属膜5上におけるダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3の形成を容易にし、金属膜5-炭素質皮膜3間の密着性を向上できる電解用陽極が得られる。
金属基体2の熱膨張率とダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3の熱膨張率の間にある熱膨張率を持つ金属膜5を使用することにより金属基体2-金属膜5-炭素質皮膜3間の密着性を向上できる電解用陽極が得られる。
【0040】
図3は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図3は、金属基体2とダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3との間に設けられ、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3が少なくとも一部に被覆された種結晶7を、金属基体2の表面上に担持する種結晶担持層6と、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3で被覆されていない金属基体2の表面を被覆する不動態皮膜4とを含んで成る電極の断面図を示している。
【0041】
本構成によると種結晶7が金属基体2表面上に機械的に担持された状態となり、導電性炭素質皮膜3を持つ種結晶7と金属基体2との密着性は良好となる。
また、金属基体2の両面に一度に被覆が出来、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3の形成が容易となる。
【0042】
種結晶7の担持方法は、例えば、種結晶7を含むメッキ液を用いて電解/無電解メッキを行なう方法、金属基体2上に予め種結晶7を塗布した後に、メッキ液を塗布して電解/無電解メッキを行なう方法、加熱溶融により金属基体2の表面を溶解させて種結晶7を埋設する方法などが使用される。
【0043】
メッキの材質としてはニッケル、銅、ニッケル-銅合金、金、クロム、亜鉛、アルマイトなどが使用され、特に、ニッケル、銅、ニッケル-銅合金、クロムが好適である。
種結晶7の材質は限定されておらず、たとえば、カーボンパウダー、ダイヤモンドライクカーボンパウダー、ダイヤモンドパウダー、セラミックパウダーなどが使用される。
【0044】
また、前記材料の単一あるいは2つ以上の組み合わせでも良い。特にダイヤモンドパウダーが耐久性の点で好適である。
種結晶7の直径は、例えば、100um以下のものが使用され、特に10um以下であれば好適である。
【0045】
この結果、
種結晶7を担持した担持層6のアンカー効果により、導電性炭素質皮膜3と担持層6の間の密着性を向上出来る電解用陽極が得られる。
【0046】
図4は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図4は、金属膜5とダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3との間に設けられ、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3が少なくとも一部に被覆された種結晶7を担持する種結晶担持層6と、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3で被覆されていない金属基体2の表面を被覆する不動態皮膜4とを含んで成る電極の断面図を示している。
【0047】
本構成によると、種結晶7が金属膜5の表面上に機械的に担持された状態であり、金属膜5にダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3を密着性良く成膜することができる。
また、単に、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3が少なくとも一部に被覆された種結晶7を担持した金属基体2と比較して、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3が被覆されているので、導電性ダイヤモンド薄膜の面積を大きく取ることが可能になり、電極の有効面積向上に繋がる。
【0048】
この結果、
種結晶7を担持した担持層6のアンカー効果により、導電性炭素質皮膜3と担持層6の間の密着性を向上出来る電解用陽極が得られる。
【0049】
図5は、本発明の電極作製方法の一実施例の要部構成説明図である。
図5において、step(1)に示す如き金属基体2に対して、step(2)に示す如く、外径10um以下のダイヤモンドパウダーによりスクラッチ処理及び結晶核7の種付けを行い、step(3)に示す如く、前述した被覆方法を用いて、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3を金属基体2の上に形成させる方法である。
基板としては、図1に示す如く、金属基板2の上に直接成膜しても良いし、また、図2に示す如く、クロムCrなどの金属膜5を介して成膜しても良い。
【0050】
図6は、本発明の電極作製方法の他の実施例の要部構成説明図である。
図6において、step(1)に示す如き、シリコンやニオブなどの導電性ダイヤモンド薄膜3が成長し易い犠牲層8に、step(2)に示す如く、導電性ダイヤモンド薄膜3を成長させ、その後、step(3)に示す如く、導電性ダイヤモンド薄膜3の犠牲層8が付いていない方の面からCrメッキなどを介して、Ni或いはCuメッキなどを行い、step(4)に示す如く、導電性ダイヤモンド薄膜3を成長させた犠牲層8を除去して、導電性ダイヤモンド薄膜3を持つ金属基体2を作製する。
【0051】
Crメッキを行わずに金属基体2と導電性ダイヤモンド薄膜3の密着性を向上させるために、Ni或いはCuメッキを行う前処理として、蒸着や結晶成長により、予め、Ni或いはCu薄膜を形成させておいても良い。
【0052】
本プロセスでは、CVD装置による成膜時における数百度に達する高温状態を回避することができ、金属基体2と導電性ダイヤモンド薄膜3の熱膨張率の違いによる密着性の低下を最小限に抑えることが可能になる。
【0053】
図7は、本発明の電極作製方法の他の実施例の要部構成説明図である。
図7において、step(1)に示す如き、シリコンやニオブなどの導電性ダイヤモンド薄膜3が成長し易い犠牲層8に、step(2)に示す如く、導電性ダイヤモンド薄膜3を成長さる。
【0054】
step(3)に示す如く、導電性ダイヤモンド薄膜3の犠牲層8が付いていない方の面が凹凸構造となるように、例えば、O2によるリアクティブイオンエッチング加工などを行ない、その後、step(4)に示す如く、凹凸加工を行なった面からCrメッキなどを介してNi或いはCuメッキなどを行い、step(5)に示す如く、導電性ダイヤモンド薄膜3を成長させた犠牲層8を除去して、導電性ダイヤモンド薄膜3を持つ金属基体2を作製する。
【0055】
図6と同様にCrメッキを行わずに金属基体2と導電性ダイヤモンド薄膜3の密着性を向上させるために、Ni或いはCuメッキを行う前処理として、蒸着や結晶成長により、予めNi或いはCu薄膜を形成させておいても良い。
【0056】
本プロセスでは、導電性ダイヤモンド薄膜3の表面の凹凸構造による、金属基体2へのアンカー作用により、金属基体2と導電性ダイヤモンド薄膜3の密着性を向上することができる。
【0057】
図8は、本発明の電極作製方法の他の実施例の要部構成説明図である。
図8において、step(1)に示す如く、シリコンやニオブなどの犠牲層8の表面にエッチングによりリブ構造を作製し、step(2)に示す如く、その面に導電性ダイヤモンド薄膜3を成長させる。
【0058】
step(3)に示す如く、導電性ダイヤモンド薄膜3を成長させた犠牲層8を除去することにより、導電性ダイヤモンド薄膜3の表面がリブ構造を持つようにして、導電性ダイヤモンド薄膜3の単体でも比較的機械的強度がある状態にしておく。そしてstep(4)に示す如く、リブ構造のある面に、Crメッキなどを介してNi或いはCuメッキなどを行い、導電性ダイヤモンド薄膜3を持つ金属基体2を作製する。
【0059】
本プロセスにより導電性ダイヤモンド薄膜3の表面の凹凸構造による金属基体2へのアンカー作用により、金属基体2と導電性ダイヤモンド薄膜3の密着性を向上することに加え、導電性ダイヤモンド薄膜3を持つ金属基体2を作製するプロセスの簡略化を図ることができる。
【0060】
図9は、本発明の電極が使用された電気分解の一実施例の要部構成説明図である。
図9において、図5〜図8のような方法で、金属基体2に、少なくとも一部にダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3を被覆し、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3で被覆されていない金属基体2の表面を、不動態皮膜4により被覆した電極を陽極1として、Ni、ステンレス等の材質で構成された電極を陰極11として設置し、溶融塩12に浸漬して、陽極-陰極間に電圧を印加する電気分解装置を組み立てる。
【0061】
両極において、ガス発生電圧以上となる電圧を陽極-陰極間に印加すると、電解質種に応じて、陽極1と陰極11の表面にそれぞれ異なるガスが発生する。
特段のガス分離構造を有していない陽極1、陰極11では、それぞれの表面で発生したガスは、浮力により電極表面から分離され、ガス分離スカート14により陽極1、陰極11上でそれぞれ発生したガスは混合しないようになっている。
ガス分離構造を有する陽極1、陰極11を用いた時は、ガス分離スカート14を設置する必要が無く、省スペース化を図ることができる。
【0062】
本実施例では溶融塩として、加熱溶解した溶融塩KF・n HF(nは係数、n値に制限は無いが、1<=n<=3であることが好ましい。)を用いており、陽極1においてフッ素ガスが、陰極11において水素ガスが発生する。
【0063】
通常の炭素電極では、フッ素発生反応と同時に、C-F結合の生成が促進されてフッ化グラファイト(CF)nが生成する。
炭素電極表面においてフッ化グラファイト(CF)nが生成すると、溶融塩KF・n HFの濡れ性が悪くなり、溶融塩と炭素電極の接触面積が減少し、最終的には電気分解を継続することができなくなる。
【0064】
また、ニッケル電極を用いると電圧印加により、ニッケルがイオン化して溶融塩12に溶出してしまう現象が生じる。
また、銅電極では溶融塩12に浸漬すると、表面のフッ化により不動態化するため、電気分解用の電極として使用することはできない。
【0065】
本発明では、金属基体2の少なくとも一部に、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3を被覆し、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3で被覆されていない金属基体2の表面を、不動態皮膜4により少なくとも一部被覆した電極を陽極1として用いる。
したがって、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3と絶縁性不動態被膜4の溶融塩KF・n HFに対する安定性を活かし、また、導電率の高い金属基体2を用いることにより、高電流密度下の電気分解における陽極1の発熱を抑えることができるため、安定した温度を維持したまま、高電流密度下での長時間運転が可能となる。
【0066】
この結果、
本発明の電極を用いてフッ素ガスを発生させることにより、電流密度の増加に対応して、単位時間当たりに発生するフッ素ガス量を増加させることができ、またダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜と不動態皮膜の優れた耐腐食性により、電極の損傷を抑えて長時間安定して電解を継続させることができる電気分解装置が得られる。
【0067】
図10は、本発明の電極1が使用された気液分離機能付き多孔電極の一実施例の要部構成説明図である。
図10(a)は、金属基体2の少なくとも一部にダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3を被覆し、ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜3で被覆されていない金属基体2の表面を不動態皮膜4により被覆した電極であり、更に、複数の貫通孔22の壁面を撥液膜21で覆って気体微細流路23を構成し、疎液性とする表面処理を行った多孔金属電極20の正面図を、(b)は断面図を示している。
【0068】
多孔電極20は、結局、気体のみを通過する通気性の気体微細流路23を備えている。
この気体微細流路23は、メッシュ構造と、ポーラス構造と、多孔質膜構造と、多数の貫通孔を穿設した構造と、の少なくとも何れかの構造によって形成されている。
気体微細流路23には、所望の方向にだけ気体を通過させ易い性質があるので、多孔電極20は、気泡を所定の方向へ効率良く導くことが可能になる。
【0069】
気体・液体における表面張力γ[N/m]、電極と液体の接触角θ[deg]、電極の貫通穴の半径r[m]に対して、液体が穴の内部に入り込むために必要な圧力「ヤング・ラプラス圧力」△Pは以下のように定義される。
△P=−2γcosθ/r
【0070】
また、電解液により発生する圧力として、電解液の深さによる圧力があるが、その圧力が前記△P以下であれば、電解液はヤング・ラプラス圧により、電極板20の気体微細流路23を通過することができず、気液界面が安定的に形成・保持される。
即ち、「安定な気液界面」が形成される。
【0071】
多孔電極20における気体微細流路23の穿孔された一方の面である電解液の接する面(以下、「電極オモテ面」という)は、気泡よりも電解液と馴染みやすい。
電解液と接していない疎液性の気体微細流路23の壁面は、電解液よりも気泡と馴染もうとする。
【0072】
気泡が成長することにより、気泡側の気液界面と、気体微細流路23側の気液界面が接することにより、液体の表面張力に関連する作用によって、電極オモテ面で発生した気泡は電極オモテ面にまとわりつかず速やかに気体微細流路23内へ排除される。
【0073】
電極20は多数の貫通孔を有する電極であり、接液面の接触角をα[deg]、貫通孔壁面の接触角をβ[deg]とした場合に、90[°]<βかつrが十分小さい(r<500[um])ことにより液体側と気体側を完全に分離することができる。
また、電極オモテ面で発生した気泡はα<90である場合には、気泡よりも溶融塩12と馴染みやすいため気泡の除去が容易になる。そのためα<90<βの関係であると気液分離能が高められて効果的である。α<80であればより好ましく、α<65であれば最も好適である。また接気面の接触角をγ[deg]とした場合に、γ<βであっても良い。
【0074】
図10では多孔電極20として、貫通孔が一様の間隔で、格子状に、規則正しく整然と穿孔されているものを示したが、貫通孔が一様の間隔で60度の千鳥模様に規則正しく整然と穿孔されているものを使用しても良い。また、多孔電極が規則正しく穿孔されていなくても良い。
貫通孔には特段の制限は無いが、直径10μm以上500μm以下が効果的である。また隣り合う貫通孔同士のピッチも同じく特段の制限は無いが、10μm以上500μm以下が効果的である。
【0075】
この結果、
上記のような方法で、ガスの発生する近傍に疎液界面を設けることにより、電極表面において発生した気泡を速やかに取り除くことができ、電解に使用される電極の実質的な有効面積を増加させ、電流密度を向上させることが可能になる。
【0076】
図11は、本発明の電極が使用された気液分離機能付き多孔電極20の電極保持部の一実施例の要部構成説明図である。
図11は図10で示された多孔電極20を、電極ユニット30内に設置した構成図であり、a)は正面図、b)は断面図、c)は側面図を示している。
【0077】
電極ユニット30について説明する。
多孔電極20は、電極カバー31と電極ホルダ32により挟まれた状態で固定されている。締結ネジ35により電極カバー31を締め付けることにより、多孔電極20を電極ホルダ32に密着させ、溶融塩12が気体チャンバー36に浸入することを防ぐ。
【0078】
多孔電極20の片面を溶融塩12と接する側に、反対面を気体チャンバー36側にすると、ヤング・ラプラス圧により、多孔電極20の気体微細流路23から溶融塩12は浸入することができないため、気体側と液体側を完全に分離することができる。
電圧の印加は、多孔電極20と接続されている導線34により行なわれる。
気体チャンバー36へ分離された気体は、気体チャネル33を通過して電極ユニット20より排出される。
【0079】
図12は、本発明の電極が使用された気液分離機能付き多孔電極20が、電気分解に使用された一実施例の要部構成説明図で、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【0080】
気体微細流路23を持つ気液分離電極20を保持する電極ユニット30と、気体微細流路23を有しない平板状の対向電極11とを、溶融塩12に浸漬して、電圧を印加する電気分解装置を組み立てる。
【0081】
両極においてガス発生電圧以上となる電圧を、陽極となる電極ユニット30内の多孔電極20と、陰極となる対向電極11の間に印加すると、電解質種に応じて陽極と陰極の表面にそれぞれ異なるガスが発生する。
【0082】
陽極として使用している電極ユニット30内の多孔電極20の表面で発生したガスは、先に説明した、疎液性の界面により気体チャネル36内に分離される。
一方陰極として使用している対向電極11の表面には別種のガスが生じるが、気液分離機構を持たないため、表面に付着するか、浮力により電極表面から分離される。
【0083】
このようにして電気分解を行うことにより、陽極20で発生したガスと陰極11で発生したガスを分離することが可能になり、電解槽13内にガス分離のためのスカートなどを取り付ける必要がなくなり、装置の小型化が出来る。
【0084】
本発明に記載の導電性ダイヤモンド薄膜3を持つ気液分離機能付き多孔電極20を用いると、陽極20で発生した気泡を除去することが出来るので、電極の有効面積が増加し電流密度が増加する。
この時陽極20で発生する発熱量は、導電性ダイヤモンド薄膜3を持つ平板電極を用いた時よりも大きくなるため、電極基体2として金属を用いることにより、高電流密度下での電気分解において陽極20の発熱を抑える効果は非常に大きい。
【0085】
この結果、
接液面側の電極20の表面上で発生した気体を、多孔22を通して接気面側に分離することにより、接液面側の電極表面上を覆っていた気体を取り除き、接液面側の電極20の表面と溶融塩12の接する面積が増加するため、接液面側の有効面積が増加し電流密度が向上する。
陽極30の発熱を最小限に抑えた状態で電流密度を向上させる電解用陽極が得られる。
【0086】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【符号の説明】
【0087】
1 電極
1a 電極
1b 電極
1c 電極
1d 電極
2 金属基板
3 ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜
4 不動態皮膜
5 金属膜
6 種結晶担持層
7 種結晶
8 犠牲層
1 陽極
11 陰極
12 溶融塩
13 電解槽
14 ガス分離スカート
15 電解電源
16 水素
17 フッ素
20 多孔電極
21 撥液膜
22 貫通孔
23 気体微細流路
30 電極ユニット
31 電極カバー
32 電極ホルダ
33 気体チャネル
34 導線
35 締結ネジ
36 気体チャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴を用いてフッ素含有物質を電解合成するために使用する電解用陽極において、
不動態化処理により表面に不動態膜が形成可能な金属基体と、
この金属基体の少なくとも一部に被覆されたダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜と、
このダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜で被覆されていない前記金属基体表面を被覆する不動態皮膜と
を具備したことを特徴とする電解用陽極。
【請求項2】
フッ化物イオンを含有する溶融塩電解浴を用いてフッ素含有物質を電解合成するために使用する電解用陽極において、
不動態化処理により表面に不動態膜が形成可能な金属基体と、
この金属基体を被覆し不動態化処理により外表面に不動態膜が形成可能な金属膜と、
この金属膜の少なくとも一部に被覆されたダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜と、
このダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜で被覆されていない前記金属膜表面を被覆する不動態皮膜と
を具備したことを特徴とする電解用陽極。
【請求項3】
前記金属基体あるいは前記金属膜と前記ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜との間に設けられ前記ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜が少なくとも一部に被覆された種結晶を担持する担持層
を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電解用陽極。
【請求項4】
前記ダイヤモンド構造を有する導電性炭素質皮膜は、導電性ダイヤモンドライクカーボン及び又は導電性ダイヤモンドを含有すること
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電解用陽極。
【請求項5】
前記不動態皮膜が、前記金属基体あるいは前記金属膜の表面を構成する金属のフッ化物より成ること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電解用陽極。
【請求項6】
前記電極構造が、複数の貫通孔の壁面を疎液性とする表面処理を行った多孔電極であって、前記多孔電極内の貫通孔の一端と繋がる一方の電極表面を接気面とし、前記貫通孔の他端と繋がる他方の電極表面を接液面として配置されたこと
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電解用陽極。
【請求項7】
電解液としてフッ化水素を含む溶融塩を電気分解する電気分解装置において、
前記請求項1乃至請求項6記載の電極を具備し、フッ素ガスを発生させることを特徴とする電気分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−46994(P2011−46994A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195488(P2009−195488)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】