説明

電解装置

【課題】原料の供給が容易になる電解装置を提供する。
【解決手段】電解装置は、原料のナトリウム硫化物から電解生成物の金属ナトリウムを生成する。電解セル116の原料収容空間148と電解生成物収容空間とはナトリウムイオン伝導性の固体電解質からなる隔壁容器130で隔てられる。ポンプは、原料供給パイプ122を経由して原料収容空間148へ原料を供給する。コントローラは、ポンプによる原料の供給が終了した後に電源による電圧の印加を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム硫化物から金属ナトリウムを生成する電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、石油の脱硫に関する。特許文献1の石油の脱硫では、石油中のイオウと金属ナトリウムとが反応させられ、生成したナトリウム硫化物が石油から除去される。除去されたナトリウム硫化物は、ナトリウムイオン伝導性の固体電解質からなる隔壁(beta-alumina membranes 4)を備える電解セル(electrolytic cell)で電解され、金属ナトリウムが回収される。
【0003】
特許文献2は、ナトリウムアマルガムからの金属ナトリウムの生成に関する。特許文献2の電解セルでは、ステンレスからなる有底円筒形容器(容器3)の内面とベータアルミナからなる有底円筒形容器(管1)の外面との間にナトリウムアマルガムが収容され、ベータアルミナからなる有底円筒形容器の内部に金属ナトリウムが収容される。ステンレスからなる有底円筒形容器の円筒部の底部寄りには原料排出口(パイプ片11)が形成され、開口寄りには原料供給口(パイプ片10)が形成される。ベータアルミナからなる有底円筒形容器の内部の金属ナトリウムは、電解生成物回収経路(管13)により回収される。ナトリウムアマルガムの電解にあたっては、ナトリウムアマルガムの運動状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3785965号明細書
【特許文献2】特開2000−219989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、電解セルの詳細な構造に言及しておらず、ナトリウム硫化物からの金属ナトリウムの生成の詳細は不明であった。
【0006】
特許文献2のナトリウムアマルガムから金属ナトリウムを生成する電解の発明をナトリウム硫化物から金属ナトリウムを得る電解に援用することも考えられる。しかし、特許文献2の発明は、原料の運動状態を維持するため、原料の電解を適切に行うためには原料の供給量の調整に精緻さが要求され、原料の供給が困難である。原料の供給が困難であるのは、ナトリウム硫化物の腐食性が強いため、使用することができるポンプが限られることによる。
【0007】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、原料の供給が容易になる電解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、以下の手段が提供される。
【0009】
第1の発明は、ナトリウム硫化物から金属ナトリウムを生成する電解装置であって、原料収容空間と電解生成物収容空間とを隔てナトリウムイオン伝導性の固体電解質からなる隔壁と、前記原料収容空間に収容された原料と接触する正極集電体と、前記電解生成物収容空間に収容された電解生成物と接触する負極集電体と、を備える電解セルと、前記電解セルに接続され前記原料収容空間へ原料を供給する経路となる原料供給経路と、前記電解セルに接続され前記原料収容空間から廃原料を排出する経路となる廃原料排出経路と、前記電解セルに接続され前記電解生成物収容空間から電解生成物を回収する経路となる電解生成物回収経路と、前記原料供給経路に接続され前記原料供給経路を経由して前記原料収容空間へ原料を供給するポンプと、前記電解セルに接続され前記正極集電体と前記負極集電体との間へ電圧を印加する電源と、前記電源及び前記ポンプを制御し、前記電源による電圧の印加を開始する前に前記ポンプによる原料の供給を行わせ、前記ポンプによる原料の供給が終了した後に前記電源による電圧の印加を開始させるコントローラと、を備える。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の電解装置において、前記電解生成物収容空間の内部から外部へ延在する放熱体、をさらに備える。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明の電解装置において、前記正極集電体は、第1の有底円筒体であり、前記隔壁は、前記第1の有底円筒体の内部に収容され前記第1の有底円筒体の円筒部と同軸配置された円筒部を有する第2の有底円筒体であり、前記第1の有底円筒体の内面と前記第2の有底円筒体の外面との間隙が前記原料収容空間であり、前記第2の有底円筒体の内部が電解生成物収容空間であり、前記原料供給経路は、前記第1の有底円筒体の底部の中心に形成された原料の供給口に接続され、前記廃原料排出経路は、前記第1の有底円筒体の円筒部の開口寄りに形成された廃原料の排出口に接続される。
【0012】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかの電解装置において、前記電源から前記正極集電体へ至る又は前記負極集電体から前記電源へ至る導電経路に挿入され前記正極集電体へ流入する又は前記負極集電体から流出する電流を検出する電流検出器、をさらに備え、前記コントローラは、前記電流検出器の検出結果から前記正極集電体へ流入した又は前記負極集電体から流出した電気量を導出し、導出した電気量が前記原料収容空間に単体イオウが生成する電気量よりも小さく設定された閾値に達すると前記電源による電圧の印加を終了させる。
【0013】
第5の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかの電解装置において、前記正極集電体と前記負極集電体との間の電圧を検出する電圧検出器、をさらに備え、前記コントローラは、前記電圧検出器の検出結果が前記原料収容空間に単体イオウが生成する電圧よりも小さく設定された閾値に達すると前記電源による電圧の印加を終了させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原料の供給量の調整に精緻さが要求されないので、原料の供給が容易になる。
【0015】
請求項2の発明によれば、電解時に発生する熱が電解セルの外部に効率よく放熱されるので、電解電流を増やし電解生成物の生成量を増加させることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、原料収容空間へ原料が均一に供給されるので、電解が均一に行われる。また、廃原料が供給された原料に押し上げられ排出口からが排出されるので、廃原料の排出が容易にある。
【0017】
請求項4ないし請求項5の発明によれば、粘度が高い単体イオウが生成しないので、廃原料の排出が容易になる。また、絶縁体の単体イオウが生成しないので、廃原料が完全に排出されなくても、原料収容空間の収容物の電気抵抗が大きくならず、電解の効率が向上する。さらに、電解セルの電圧が高くならないので、ナトリウムイオン伝導性の固体電解質からなる隔壁のカリウムイオンによる劣化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の電解装置の斜視図である。
【図2】断熱容器の内部の収容物の斜視図である。
【図3】電解セルの縦断面図である。
【図4】コントローラによる電源及びポンプの制御を説明するタイミングチャートである。
【図5】第2実施形態の付加構成物を示すブロック図である。
【図6】第3実施形態の付加構成物を示すブロック図である。
【図7】閾値の設定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1.第1実施形態)
第1実施形態は、原料のナトリウム硫化物から電解生成物の金属ナトリウムを生成する電解装置102に関する。
【0020】
(電解装置102の概略)
図1は、第1実施形態の電解装置102の模式図である。図2は、電解装置102の断熱容器104の内部の収容物の模式図である。図1及び図2は、それぞれ、電解装置102及び断熱容器104の内部の収容物の斜視図となっている。
【0021】
図1に示すように、電解装置102は、後述する電解セル(電解槽)116等を収容する断熱容器104と、電解セル116へ電圧を印加する電源106と、電解セル116へ原料を供給するポンプ108と、電源106及びポンプ108を制御するコントローラ110と、を備える。断熱容器104の内底面及び内側面には、断熱容器104の内部の温度を調整するヒータパネル111が取り付けられる。断熱容器104の上蓋112には、前後左右に規則的に配列された貫通孔114が形成される。
【0022】
(電解装置102の内部の収容物)
図2に示すように、断熱容器104の内部には、縦置きされた電解セル116が前後左右に規則的に配列される。電解セル116の配列の形態は図2に示す形態に限られない。例えば、横置きされた電解セル116を規則的に配列してもよい。
【0023】
前後に配列された電解セル116はブスバー120によって電気的に並列接続され、左右方向に配列された電解セル116はブスバー118によって電気的に直列接続される。電源106は、電解セル116の直並列接続体へ接続され、当該直並列接続体へ電圧を印加することにより、電解セル116へ電圧を印加する。個々の電解セル116又は電解セル116の直列接続体若しくは並列接続体へ電源106を接続してもよい。
【0024】
断熱容器104の内部には、電解セル116へ原料を供給する経路となる原料供給パイプ122と、電解セル116から廃原料を排出する経路となる廃原料排出パイプ124と、電解セル116から電解生成物を回収する経路となる電解生成物回収パイプ126と、が設けられる。原料を供給する経路、廃原料を排出する経路及び電解生成物を回収する経路として柔軟なホースを採用してもよい。原料供給パイプ122は、電解セル116及びポンプ108に接続される。廃原料排出パイプ124及び電解生成物回収パイプ126は、電解セル116に接続される。
【0025】
原料供給パイプ122、廃原料排出パイプ124及び電解生成物回収パイプ126は、電気的に並列接続された電解セル116、すなわち、前後方向に配列された電解セル116の列ごとに設けられる。列ごとに設けられた原料供給パイプ122、廃原料排出パイプ124及び電解生成物回収パイプ126は、相互に電気的に絶縁される。
【0026】
(電解セル116の概略)
図3は、電解セル116の模式図である。図3は、電解セル116の縦断面図となっている。
【0027】
図3に示すように、電解セル116は、電解セル116の構成物を収容するとともに正極集電体を兼ねる収容容器128と、原料のナトリウム硫化物が収容される原料収容空間148と電解生成物の金属ナトリウムが収容される電解生成物収容空間150とを隔てる隔壁容器130と、電解時に発生する熱を電解セル116の外部に放熱するとともに負極集電体を兼ねる放熱棒132と、隔壁容器130の内面に接触するナトリウムの量を規制する安全容器134と、収容容器128と放熱棒132とを絶縁する絶縁リング136とを備える。
【0028】
(収容容器128及び隔壁容器130)
収容容器128は、円筒の一端を閉じた有底円筒体の開口に陽極端子となるタブ138を形成した構造を有する。隔壁容器130は、円筒の一端を閉じた有底円筒体である。隔壁容器130は、収容容器128の内部に収容される。収容容器128の円筒部と隔壁容器130の円筒部とは同軸配置され、収容容器126及び隔壁容器130の底部は下方にあり、収容容器126及び隔壁容器130の開口は上方にある。
【0029】
収容容器128の内面と隔壁容器130の外面との間隙は原料収容空間148、隔壁容器130の内部は電解生成物収容空間150となる。原料収容空間148に収容された原料は、収容容器128に接する。電解生成物収容空間150に収容された製品は、放熱棒132に接する。
【0030】
収容容器128の材質は、原料に対して安定な固体導電体であれば特に制限されないが、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが望ましい。隔壁容器130の材質は、ナトリウムイオン伝導性の固体電解質であれば特に制限されないが、ベータアルミナであることが望ましい。
【0031】
(導電経路形成体)
原料収容空間148には、原料とともに、原料収容空間148に導電経路を形成する導電経路形成体が充填される。これにより、原料の電気抵抗の高さに起因する電解の効率の低下が抑制される。
【0032】
導電経路形成体の材質は、原料を収容する空隙を有し原料に対して安定な導電体であれば特に制限されないが、グラファイトフェルトであることが望ましい。
【0033】
導電経路形成体は、原料収容空間148における原料の流れを阻害するが、後述するように電解装置102では原料の供給量の調整に精緻さが要求されないので、原料の流れが若干阻害されても大きな問題とはならない。
【0034】
(安全容器134)
安全容器134は、円筒の一端を閉じた有底円筒体である。安全容器134は、隔壁容器130の内部に収容される。隔壁容器130の円筒部と安全容器134の円筒部とは同軸配置され、隔壁容器130及び安全容器134の底部は下方にあり、隔壁容器130及び安全容器134の開口は上方にある。
【0035】
隔壁容器130の内面と安全容器134の外面との間隙は、電解生成物収容空間150の一部をなし、当該間隙に収容された電解生成物(活物質)は隔壁容器130の内面156と接触し電解反応に寄与する。
【0036】
安全容器134の材質は、電解生成物に対して安定で隔壁容器130の材質よりも熱膨張率が大きい固体であれば特に制限されないが、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが望ましい。安全容器134の熱膨張率が隔壁容器130よりも大きいことは、電解セル116の温度が上昇したときに隔壁容器130の内面と安全容器134の外面との間隙を狭くし、電解反応に寄与する電解生成物を減少させ、さらなる電解セル116の温度の上昇を抑制することに寄与する。
【0037】
(放熱棒132)
放熱棒132は、電解生成物収容空間150の内部から外部へ延在する。これにより、電解電流を増やし電解生成物の生成量を増加させることができる。
【0038】
放熱棒132の安全容器134の内部に収容される収容部160は、円柱体である。安全容器134の円筒部と収容部160とは同軸配置される。安全容器134の内面と収容部160の外面との間隙は、電解生成物収容空間150の一部をなし、当該間隙に収容された電解生成物は隔壁容器130の内面と接触せず電解反応に寄与しない。
【0039】
放熱棒132の安全容器134の内部に収容されない放熱部168は、円柱体である。放熱の効率を向上するため、放熱部168にフィンを形成してもよい。又は、放熱部168にヒートシンクを取り付けてもよい。
【0040】
放熱棒132の収容部160と放熱部168との間にはフランジ166が形成される。安全容器134の上端とフランジ166との間には間隙がある。電解生成物は、当該間隙を通って、隔壁容器130の内面と安全容器134の外面との間隙と、安全容器134の内面と放熱棒132の収容部160の外面との間隙との間を往来する。
【0041】
放熱棒132には、収容部160の底部から放熱棒132の円筒面にある電解生成物の回収口172へ至る流路170が形成される。
【0042】
なお、放熱棒132と負極集電体とを別体としてもよい。
【0043】
(絶縁リング136)
絶縁リング136は、円環体である。絶縁リング136の外周面は収容容器128の円筒内面に接触する。絶縁リング136の内周面はフランジ166の外周面に接触する。
【0044】
絶縁リング136の材質は、原料及び電解生成物に対して安定な固体絶縁体であれば特に制限されないが、アルファアルミナであることが望ましい。
【0045】
(電解)
収容容器128と放熱棒132との間へ電源106から電圧が印加されると、原料収容空間148に収容された活物質が正極、電解生成物収容空間150に収容された活物質が負極となり、隔壁容器130の原料収容空間148の側にある外面から電解生成物収容空間150の側にある内面へナトリウムイオンが移動し、電解生成物収容空間150においてナトリウムイオンが還元され、金属ナトリウムが製造される。
【0046】
収容容器128の底部の中心には原料の供給口174が形成される。収容容器128の円筒部の開口寄りには廃原料の排出口176が形成される。供給口174には、原料供給パイプ122が接続される。排出口176には、廃原料排出パイプ124が接続される。収容容器128の底部の「中心」から横断面円環形状を有する原料収容空間148へ原料を供給することにより、原料収容空間148へ原料が均一に供給されるので、電解が均一に行われる。また、収容容器128の「底部」から原料を供給することにより、廃原料が供給された原料に押し上げられ排出口から排出されるので、廃原料の排出が容易になる。
【0047】
電解生成物の金属ナトリウムは、流路170及び回収口172に接続された電解生成物回収パイプ126を経由して回収される。
【0048】
(コントローラ110による電源106及びポンプ108の制御)
図4は、コントローラ110による電源106及びポンプ108の制御を説明するタイミングチャートである。図4(A)は、電源106により印加される電圧を示し、図4(B)は、ポンプ108により供給される原料の供給量を示し、図4(C)は、電解セル116の電圧を示す。
【0049】
図4に示すように、電源106による電圧の印加が行われる前に(t≦t2)、ポンプ108による原料の供給が行われ、原料供給パイプ122を経由して原料収容空間148に原料が供給される(t0≦t≦t1)。このように電解が行われていないときに原料収容空間148へ原料を供給するようにすれば、原料の供給量の調整に精緻さが要求されないので、原料の供給が容易になり、ガス圧ポンプ108のような簡易な構造のポンプもポンプ108として採用しうるようになる。ただし、このことは、ガス圧ポンプをポンプ108として採用することが必須であることを意味しない。すなわち、原料のナトリウム硫化物の強い腐食性に耐え得る任意のポンプをポンプ108として採用しうる。図4(c)に示すように、原料収容空間148への原料の供給を開始すると、電解セル116の電圧は約2.07Vから約1.96Vまで低下する。
【0050】
ポンプ108による原料の供給が終了した後に(t1≦t)、電源106による電圧の印加が開始され、原料が電解され、金属ナトリウムが生成する(t2≦t≦t3)。印加される電圧は、図4(c)に示すように、電解セルあたり約2.45Vとなる。この電圧は通電状態や劣化状態に応じて変化し、より一般的には約1.74V以上となる。
【0051】
電源106による電圧の印加は、原料収容空間148に単体イオウ(S)が生成する前に終了することが望ましい。これにより、粘度が高い単体イオウが生成しないので、廃原料の排出が容易になる。また、絶縁体の単体イオウが生成しないので、廃原料が完全に排出されなくても、原料収容空間148の収容物の電気抵抗が大きくならず、電解の効率が向上する。さらに、電解セル116の電圧が高くならないので、ナトリウムイオン伝導性の固体電解質からなる隔壁容器130のカリウムイオンによる劣化が抑制される。
【0052】
このようなバッチ処理を繰り返すことにより、原料の電解が繰り返し行われる。
【0053】
コントローラ110のこれらの機能は、組み込みコンピュータに制御プログラムを実行させることにより実現されてもよいし、専用のハードウウエアにより実現されてもよい。
【0054】
(原料及び廃原料)
原料は、典型的には、石油の脱硫プロセスで生じたナトリウム硫化物Na2x(x=1〜5)であり、特に、四硫化二ナトリウム(Na24)である。ただし、石油の脱硫プロセスで生じたナトリウム硫化物以外のナトリウム硫化物も原料となりうる。
【0055】
廃原料は、先述したように単体イオウが生成しないようにすることが望ましく、組成式Na2x(x=4.5〜5.0)であらわされるナトリウム硫化物であることが望ましい。
【0056】
(2.第2実施形態)
第2実施形態は、原料収容空間148に単体イオウが生成する前に電源106による電圧の印加を自動的に終了する自動終了機能を実現するために第1実施形態の電解装置102に付加される付加構成物に関する。
【0057】
図5は、第2実施形態の付加構成物を示すブロック図である。
【0058】
図5に示すように、自動終了機能を実現するために、電源106から正極集電体へ至る又は負極集電体から電源106へ至る導電経路202に挿入され正極集電体へ流入する又は負極集電体から流出する電流を検出する電流センサ204が電解装置102に付加される。電流センサ204は、抵抗方式・ホール素子方式のいずれでもよいし、他の原理によるものであってもよい。
【0059】
また、コントローラ110には、電流センサ204の検出結果から正極集電体へ流入した又は負極集電体から流出した電気量(電荷量)Q(C)を導出する電気量導出部206と、電気量導出部206により導出された電気量Qが閾値QTHに達したか否かを検知する閾値検知部208と、が付加される。電気量Q(C)は、電流値I(A)を時間で積分することにより導出される。コントローラ110は、閾値検知部208により電気量Q(C)が閾値QTH(C)に達したことが検知されると、電源106による電圧の印加を終了させる。閾値QTH(C)は、原料収容空間148に単体イオウが生成する電気量よりも小さく設定される。
【0060】
閾値QTHは、原料収容空間148に収容された原料(活物質)の物質量n(mol)と原料におけるイオウの酸化数zと単体イオウの酸化数0との差−zとファラデー定数F(C/mol)との積−Fznに損失となる電気量Qloss(C)を加えた値−Fzn+Qloss(C)より小さく設定される。原料が組成式Na2x1であらわされるナトリウム硫化物であり、廃原料が組成式Na2x2であらわされるナトリウム硫化物であれば、閾値は2F(x2-1−x1-1)n+Qloss(C)に設定される。もちろん、電流センサ204が検出する電流が、電気的に並列接続された複数の電解セル116に流入する電流である場合や電気的に並列接続された複数の電解セル116から流出する電流である場合は、これらの閾値に代えて、これらの閾値に電解セル116の並列接続数を乗じた閾値が採用される。なお、電解が均一に行われていないと、これらの閾値を採用しても原料収容空間148の一部に単体イオウが生成することがあるが、第1実施形態の電解セル116は電解の均一性に優れるので、そのような単体イオウの生成は問題となりにくい。
【0061】
(3.第3実施形態)
第3実施形態は、原料収容空間148に単体イオウが生成する前に電源106による電圧の印加を自動的に終了する自動終了機能を実現するために望ましくは第1実施形態の電解装置102に付加される付加構成物に関する。
【0062】
図6は、第3実施形態の付加構成物を示すブロック図である。
【0063】
図6に示すように、自動終了機能を実現するために、正極集電体と負極集電体との間の電圧を検出する電圧センサ302が電解装置102に付加される。
【0064】
また、コントローラ110には、電圧センサ302の検出結果が閾値VTHに達したか否かを検知する閾値検知部304が付加される。コントローラ110は、閾値検知部304により電圧Vが閾値VTHに達したことが検知されると、電源106による電圧の印加を終了させる。閾値VTHは、原料収容空間148に単体イオウが生成する電圧よりも小さく設定される。
【0065】
図7は、閾値VTHの設定を説明する図である。図7は、1個の電解セル116に供給された電気量(Ah)を横軸、1個の電解セル116の電圧(V)を縦軸にとったグラフである。
【0066】
図7に示すように、原料収容空間148にナトリウム硫化物(Na2x)のみが存在する一相域においては、供給された電気量が増加するにつれて電解セル116の電圧も上昇する。しかし、原料収容空間148にナトリウム硫化物(Na25)と単体イオウ(S)とが存在する二相域においては、供給された電気量が増加しても電解セル116の電圧は概ね一定である。したがって、閾値VTHは、二相域に到達したときの電解セル116の電圧よりも低く設定される。もちろん、電圧センサ302が検出する電圧が電気的に直列接続された複数の電解セル116の電圧である場合は、この閾値に代えて、この閾値に電解セル116の直列接続数を乗じた閾値が採用される。
【0067】
<4.その他>
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明はすべての局面において例示であって、この発明は上記の説明に限定されない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定されうる。
【符号の説明】
【0068】
102 電解装置
106 電源
108 ポンプ
110 コントローラ
116 電解セル
122 原料供給パイプ
124 廃原料排出パイプ
126 電解生成物回収パイプ
130 隔壁容器
132 放熱棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム硫化物から金属ナトリウムを生成する電解装置であって、
原料収容空間と電解生成物収容空間とを隔てナトリウムイオン伝導性の固体電解質からなる隔壁と、前記原料収容空間に収容された原料と接触する正極集電体と、前記電解生成物収容空間に収容された電解生成物と接触する負極集電体と、を備える電解セルと、
前記電解セルに接続され前記原料収容空間へ原料を供給する経路となる原料供給経路と、
前記電解セルに接続され前記原料収容空間から廃原料を排出する経路となる廃原料排出経路と、
前記電解セルに接続され前記電解生成物収容空間から電解生成物を回収する経路となる電解生成物回収経路と、
前記原料供給経路に接続され前記原料供給経路を経由して前記原料収容空間へ原料を供給するポンプと、
前記電解セルに接続され前記正極集電体と前記負極集電体との間へ電圧を印加する電源と、
前記電源及び前記ポンプを制御し、前記電源による電圧の印加を開始する前に前記ポンプによる原料の供給を行わせ、前記ポンプによる原料の供給が終了した後に前記電源による電圧の印加を開始させるコントローラと、
を備える電解装置。
【請求項2】
請求項1の電解装置において、
前記電解生成物収容空間の内部から外部へ延在する放熱体、
をさらに備える電解装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の電解装置において、
前記正極集電体は、第1の有底円筒体であり、
前記隔壁は、前記第1の有底円筒体の内部に収容され前記第1の有底円筒体の円筒部と同軸配置された円筒部を有する第2の有底円筒体であり、
前記第1の有底円筒体の内面と前記第2の有底円筒体の外面との間隙が前記原料収容空間であり、
前記第2の有底円筒体の内部が電解生成物収容空間であり、
前記原料供給経路は、
前記第1の有底円筒体の底部の中心に形成された原料の供給口に接続され、
前記廃原料排出経路は、
前記第1の有底円筒体の円筒部の開口寄りに形成された廃原料の排出口に接続される、
電解装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかの電解装置において、
前記電源から前記正極集電体へ至る又は前記負極集電体から前記電源へ至る導電経路に挿入され前記正極集電体へ流入する又は前記負極集電体から流出する電流を検出する電流検出器、
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記電流検出器の検出結果から前記正極集電体へ流入した又は前記負極集電体から流出した電気量を導出し、導出した電気量が前記原料収容空間に単体イオウが生成する電気量よりも小さく設定された閾値に達すると前記電源による電圧の印加を終了させる、
電解装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかの電解装置において、
前記正極集電体と前記負極集電体との間の電圧を検出する電圧検出器、
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記電圧検出器の検出結果が前記原料収容空間に単体イオウが生成する電圧よりも小さく設定された閾値に達すると前記電源による電圧の印加を終了させる、
電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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