説明

電解質膜・電極構造体の製造装置

【課題】簡単且つ経済的な構成で、積層方向の重なり部位に過剰な荷重が付与されることを阻止し、MEA全体を均一且つ良好に押圧することを可能にする。
【解決手段】製造装置40は、固体高分子電解質膜18の両側にガス拡散層20b、22bが配設された積層体52を挟持し、前記積層体52にホットプレスを行う第1プレス金型42及び第2プレス金型44を備える。第1プレス金型42及び第2プレス金型44は、電極触媒層20a、22aの外周部と保護フイルム24、26との重なり部位24a、26aに対向する部分に、それぞれプレス面42a、44aから離間する逃げ溝46、48が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子電解質膜の両側に、前記固体高分子電解質膜の外周縁部から内方に離間して電極触媒層が設けられるとともに、各電極触媒層の外周部と重なり部位を有して前記固体高分子電解質膜の両側外周縁部に保護フイルムが設けられる電解質膜・電極構造体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ触媒層(電極触媒層)とガス拡散層(多孔質カーボン)とからなるアノード電極及びカソード電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。通常、この燃料電池を所定数だけ積層した燃料電池スタックが、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この種の電解質膜・電極構造体では、固体高分子電解質膜の表面積が、この固体高分子電解質膜の両面に積層されている触媒層の表面積よりも大きく構成され、前記固体高分子電解質膜の外周端面が、前記触媒層の外周端面よりも外方に突出する、所謂、膜突出型MEAを構成する場合がある。
【0004】
また、この種の電解質膜・電極構造体では、一方の電極の面積が他方の電極の面積よりも大きく構成され、前記一方の電極の端部が前記他方の電極の端部から外方に突出する、所謂、段差型MEAを構成する場合がある。
【0005】
上記のMEAでは、固体高分子電解質膜の面方向外方に突出する外周部からのガス透過量が、面方向内方側の触媒層が塗布された部分のガス透過量に比べて多くなり易い。このため、固体高分子電解質膜の外周縁部では、該固体高分子電解質膜の両側に存在する燃料ガスと酸化剤ガスとの混在が惹起され易く、前記固体高分子電解質膜の劣化が促進されるという問題がある。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている電解質膜−電極接合体が知られている。この電解質膜−電極接合体は、図10に示すように、高分子電解質膜1と、前記高分子電解質膜1の一方の面に形成されるカソード触媒層2と、前記高分子電解質膜1の他方の面に形成されるアノード触媒層3と、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積よりも大きくなるように、前記カソード触媒層2の端部の少なくとも一部に形成される第1のガスケット層4aと、前記アノード触媒層3の端部の少なくとも一部に形成される第2ガスケット層4bとを有している。
【0007】
そして、高分子電解質膜1の、少なくとも電解質膜−電極接合体の厚み方向に対してカソード触媒層2の端部と重複する部位には、前記高分子電解質膜1よりも強度の高い補強層5が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−338938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1では、カソード触媒層2の端部に第1のガスケット層4aの一部が重なり合うとともに、アノード触媒層3の端部に第2のガスケット層4bの一部が重なり合っている。
【0010】
このため、高分子電解質膜1の両面には、積層方向の厚さが大きなラップ部が存在しており、MEA製造時のプレス工程では、前記ラップ部に過大な荷重が付与されるおそれがある。従って、高分子電解質膜1が変形し易くなり、長期間の使用に際して、前記高分子電解質膜1に破損が惹起されるという問題がある。
【0011】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的な構成で、積層方向の重なり部位に過剰な荷重が付与されることを阻止し、MEA全体を均一且つ良好に押圧することが可能な電解質膜・電極構造体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、固体高分子電解質膜の両側に、前記固体高分子電解質膜の外周縁部から内方に離間して電極触媒層が設けられるとともに、各電極触媒層の外周部と重なり部位を有して前記固体高分子電解質膜の両側外周縁部に保護フイルムが設けられる電解質膜・電極構造体の製造装置に関するものである。
【0013】
この製造装置は、電解質膜・電極構造体の両側にガス拡散層が配設された積層体を挟持し、前記積層体にホットプレスを行う第1プレス金型及び第2プレス金型を備えている。そして、第1プレス金型及び第2プレス金型は、電極触媒層の外周部と保護フイルムとの重なり部位に対向する部分に、それぞれプレス面から離間する逃げ部が設けられている。
【0014】
また、この製造装置では、一方の電極触媒層と一方の保護フイルムとの重なり部位と、他方の電極触媒層と他方の保護フイルムとの重なり部位とは、固体高分子電解質膜と前記電極触媒層との積層方向に対し、互いにオフセットして設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電解質膜・電極構造体の両側にガス拡散層が配設された積層体は、第1プレス金型及び第2プレス金型に挟持され、ホットプレスにより一体化される。その際、電極触媒層の外周部と保護フイルムとの重なり部位は、第1プレス金型及び第2プレス金型に設けられているそれぞれの逃げ部に配置されており、前記重なり部位に過剰な荷重が付与されることがない。
【0016】
これにより、簡単且つ経済的な構成で、積層方向の重なり部位に過剰な荷重が付与されることを阻止し、MEA全体を均一且つ良好に押圧することが可能になる。従って、固体高分子電解質膜は、変形することがなく、長期間にわたって良好且つ確実に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製造装置により製造される電解質膜・電極構造体を組み込む燃料電池の要部断面説明図である。
【図2】前記製造装置の概略構成説明図である。
【図3】前記電解質膜・電極構造体を構成する固体高分子電解質膜に電極触媒層を塗布する際の斜視説明図である。
【図4】前記固体高分子電解質膜に前記電極触媒層を塗布する際の断面説明図である。
【図5】前記固体高分子電解質膜の両側に保護フイルムが配置された状態の斜視説明図である。
【図6】前記固体高分子電解質膜に前記保護フイルムがラミネートされたラミネート体の断面説明図である。
【図7】前記電解質膜・電極構造体の要部断面説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る製造装置の概略構成説明図である。
【図9】前記製造装置により製造される電解質膜・電極構造体の要部断面説明図である。
【図10】特許文献1に開示されている電解質膜−電極接合体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る製造装置により製造される電解質膜・電極構造体(MEA)10は、固体高分子型燃料電池12に組み込まれる。燃料電池12は、電解質膜・電極構造体10を第1セパレータ14及び第2セパレータ16により挟持する。
【0019】
第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板等の金属セパレータの他、カーボンセパレータにより構成される。
【0020】
電解質膜・電極構造体10は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するアノード電極20及びカソード電極22とを備える。
【0021】
固体高分子電解質膜18は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質が使用される。固体高分子電解質膜18は、例えば、主鎖がポリフェニレン構造であり、スルホン酸基を有する側鎖を有する構造でもよい。
【0022】
アノード電極20は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに塗布され、且つ前記固体高分子電解質膜18の外周縁部を額縁状に露呈させる電極触媒層20aと、前記固体高分子電解質膜18の外周縁部を覆うガス拡散層20bとを設ける。電極触媒層20aは、固体高分子電解質膜18の面18aに白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が一様に塗布されて形成される。ガス拡散層20bは、カーボンペーパやカーボンクロス等からなる。
【0023】
カソード電極22は、上記のアノード電極20と同様に、固体高分子電解質膜18の他方の面18bに塗布され、且つ前記固体高分子電解質膜18の外周縁部を額縁状に露呈させる電極触媒層22aと、前記固体高分子電解質膜18の外周縁部を覆うガス拡散層22bとを設ける。電極触媒層20aと電極触媒層22aとは、同一の表面積に設定される。
【0024】
固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bには、額縁状の保護フイルム24、26が設けられる。保護フイルム24、26は、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等で構成される。
【0025】
保護フイルム24、26は、電極触媒層20a、22aの外方で固体高分子電解質膜18の面18a、18bに直接設けられるとともに、前記電極触媒層20a、22aの外周部と積層方向(矢印A方向)に重なり合う重なり部位24a、26aを有する。保護フイルム24、26は、固体高分子電解質膜18とガス拡散層20b、22bとの間に介装される。固体高分子電解質膜18と保護フイルム24、26との間には、接着層(図示せず)を設けてもよい。
【0026】
第1セパレータ14の電解質膜・電極構造体10に向かう面14aには、アノード電極20に燃料ガスを供給するための燃料ガス流路28が形成される。第2セパレータ16の電解質膜・電極構造体10に向かう面16aには、カソード電極22に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路30が形成される。互いに当接する第1セパレータ14の面14bと第2セパレータ16の面16bとの間には、冷却媒体を供給するための冷却媒体流路32が形成される。
【0027】
第1セパレータ14及び第2セパレータ16には、シール部材(図示せず)が一体又は個別に設けられる。シール部材は、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。少なくとも第1セパレータ14及び第2セパレータ16には、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体を積層方向に流通させるための連通孔が形成され、内部マニホールドを構成する。
【0028】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る製造装置40の概略構成説明図である。製造装置40は、ホットプレス装置であり、互いに近接及び離間する第1プレス金型42及び第2プレス金型44を備える。第1プレス金型42及び第2プレス金型44には、図示しないが、加熱用プレート(ヒータ)が設けられる。
【0029】
第1プレス金型42のプレス面42aには、電極触媒層20aの外周部と保護フイルム24との重なり部位24aに対向する部分に、前記プレス面42aから離間する逃げ溝(逃げ部)46が設けられる。第2プレス金型44のプレス面44aには、電極触媒層22aの外周部と保護フイルム26との重なり部位26aに対向する部分に、前記プレス面44aから離間する逃げ溝(逃げ部)48が設けられる。
【0030】
逃げ溝46、48は、10μm〜200μm程度の深さに設定される。逃げ溝46、48は、重なり部位24a、26aが前記逃げ溝46、48の内側に入る程度の幅寸法が全周にわたって設定される。逃げ溝46、48の角部には、滑らかなRが設けられることが好ましい。
【0031】
次いで、電解質膜・電極構造体10を製造する方法について以下に説明する。
【0032】
先ず、図3及び図4に示すように、固体高分子電解質膜18が長方形状に作製された後、この固体高分子電解質膜18の面18a及び面18bには、それぞれ触媒ペーストを塗布することにより、電極触媒層20a及び電極触媒層22aが形成される。
【0033】
電極触媒層20a及び電極触媒層22aは、例えば、イオン導電性バインダと、Ptを担持したカーボン粒子からなる触媒粒子とを、アルコール系溶媒、例えば、水とn−プロピルアルコールとエタノールとの混合液に、一定の割合で混合して触媒ペーストを作成する。さらに、この触媒ペーストを固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bにスクリーン印刷等により直接塗布した後、前記触媒ペーストを乾燥させることにより形成される。
【0034】
次いで、図5に示すように、固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bに対向して保護フイルム24、26が配置される。保護フイルム24、26は、それぞれ電極触媒層20a、22aの外形寸法よりも小さな開口寸法を有する開口部24b、26bを設ける。
【0035】
図6に示すように、保護フイルム24、26は、固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bにラミネートされることにより、前記固体高分子電解質膜18に一体化されてラミネート体50が得られる。その際、ラミネート体50には、電極触媒層20a、22aの外周部と保護フイルム24、26との重なり部位24a、26aが設けられる。重なり部位24a、26aは、電極触媒層20a、22aの全外周にわたって設けられる。
【0036】
さらに、図2に示すように、製造装置40を構成する第1プレス金型42と第2プレス金型44との間には、ラミネート体50の両側にガス拡散層20b、22bが配設された積層体52が配置される。第1プレス金型42と第2プレス金型44とは、互いに型締めされるとともに、ガス拡散層20b、22bを加熱して積層体52をホットプレスする。
【0037】
具体的には、プレス圧力は、例えば、0.05MPa〜4.0MPa、好ましくは、0.1MPa〜2.0MPaであり、プレス時間は、1秒〜600秒、好ましくは、10秒〜60秒である。温度は、50℃〜170℃、好ましくは、90℃〜150℃である。
【0038】
このため、図7に示すように、電解質膜・電極構造体10が製造される。電解質膜・電極構造体10では、電極触媒層20a、22aの外周部と保護フイルム24、26との重なり部位24a、26aに対応する部位が、厚さ方向に肉厚に形成される。
【0039】
保護フイルム24とガス拡散層20bとの厚さW1は、電極触媒層20aと前記ガス拡散層20bとの厚さW2と略同一の寸法に設定される。保護フイルム26とガス拡散層22bとの厚さW3は、電極触媒層22aと前記ガス拡散層22bとの厚さW4と略同一の寸法に設定される。電解質膜・電極構造体10は、全体として均一な厚さを有する。
【0040】
なお、図1に示すように、電解質膜・電極構造体10が第1セパレータ14及び第2セパレータ16間に挟持されて燃料電池12が構成される際には、積層方向の締め付け荷重により前記電解質膜・電極構造体10が厚さ方向に加圧される。従って、電解質膜・電極構造体10の両面(ガス拡散層20b、22bの表面)は、略平面状に維持される。
【0041】
この場合、第1の実施形態では、図2に示すように、製造装置40を構成する第1プレス金型42と第2プレス金型44との間には、ラミネート体50の両側にガス拡散層20b、22bが配設された積層体52が配置され、ホットプレスにより前記積層体52が一体化されている。
【0042】
その際、電極触媒層20a、22aの外周部と保護フイルム24、26との重なり部位24a、26aは、第1プレス金型42及び第2プレス金型44に設けられている逃げ溝46、48に配置されている。このため、ホットプレス処理時に、重なり部位24a、26aに過剰な荷重が付与されることがない。
【0043】
これにより、簡単且つ経済的な構成で、積層方向の重なり部位24a、26aに過剰な荷重が付与されることを阻止し、電解質膜・電極構造体10全体を均一且つ良好に押圧することが可能になる。従って、特に固体高分子電解質膜18は、変形することがなく、長期間にわたって良好且つ確実に使用することができるという効果が得られる。
【0044】
このように構成される電解質膜・電極構造体10が組み込まれる燃料電池12の動作について、以下に説明する。
【0045】
図1に示すように、燃料ガス流路28には、水素含有ガス等の燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス流路30には、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給される。さらに、冷却媒体流路32には、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0046】
このため、燃料ガスは、電解質膜・電極構造体10のアノード電極20に供給される一方、酸化剤ガスは、前記電解質膜・電極構造体10のカソード電極22に供給される。従って、電解質膜・電極構造体10では、アノード電極20に供給される燃料ガスと、カソード電極22に供給される酸化剤ガスとが、電極触媒層20a、22a内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0047】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る製造装置60の概略構成説明図である。この製造装置60により、電解質膜・電極構造体62が製造される(図9参照)。なお、第1の実施形態に係る電解質膜・電極構造体10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0048】
図9に示すように、電解質膜・電極構造体62は、固体高分子電解質膜18をアノード電極20及びカソード電極22により挟持する。アノード電極20を構成する電極触媒層20aLは、カソード電極22を構成する電極触媒層22aSよりも大きな表面積に設定され、所謂、段差MEAを構成する。
【0049】
保護フイルム24、26は、電極触媒層20aL、22aSの外周部と積層方向(矢印A方向)に重なり合う重なり部位24aa、26aaを有する。重なり部位24aaと重なり部位26aaとは、積層方向に対して互いにオフセット(重なり合わない状態)して設けられる。
【0050】
保護フイルム24とガス拡散層20bとの厚さW1aは、電極触媒層20aLと前記ガス拡散層20bとの厚さW2aと略同一の寸法に設定される。保護フイルム26とガス拡散層22bとの厚さW3aは、電極触媒層22aSと前記ガス拡散層22bとの厚さW4aと略同一の寸法に設定される。電解質膜・電極構造体62は、全体として均一な厚さを有する。
【0051】
図8に示すように、製造装置60は、互いに近接及び離間する第1プレス金型64及び第2プレス金型66を備える。第1プレス金型64のプレス面64aには、電極触媒層20aLの外周部と保護フイルム24との重なり部位24aaに対向する部分に、前記プレス面64aから離間する逃げ溝(逃げ部)68が設けられる。
【0052】
第2プレス金型66のプレス面66aには、電極触媒層22aSの外周部と保護フイルム26との重なり部位26aaに対向する部分に、前記プレス面66aから離間する逃げ溝(逃げ部)70が設けられる。逃げ溝68と逃げ溝70とは、積層方向に対して互いにオフセットして配置される。
【0053】
このように構成される第2の実施形態では、電解質膜・電極構造体62を構成する保護フイルム24、26は、電極触媒層20aL、22aSの外周部と積層方向に重なり合う重なり部位24aa、26aaを有するとともに、前記重なり部位24aaと前記重なり部位26aaとは、積層方向に対して互いにオフセットして設けられている。
【0054】
このため、製造装置60では、重なり部位24aa、26aaに対して過剰な荷重が付与されることがなく、一層良好に荷重を付与することができる。これにより、固体高分子電解質膜18の損傷がより低減され、長期間にわたって良好且つ確実に使用することができる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0055】
10、62…電解質膜・電極構造体 12…燃料電池
14、16…セパレータ 18…固体高分子電解質膜
20…アノード電極
20a、22a、20aL、22aS…電極触媒層
20b、22b…ガス拡散層 22…カソード電極
24、26…保護フイルム
24a、26a、24aa、26aa…重なり部位
28…燃料ガス流路 30…酸化剤ガス流路
32…冷却媒体流路 40、60…製造装置
42、44、64、66…プレス金型 42a、44a、64a、66a…プレス面
46、48、68、70…逃げ溝 50…ラミネート体
52…積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜の両側に、前記固体高分子電解質膜の外周縁部から内方に離間して電極触媒層が設けられるとともに、各電極触媒層の外周部と重なり部位を有して前記固体高分子電解質膜の両側外周縁部に保護フイルムが設けられる電解質膜・電極構造体の製造装置であって、
前記電解質膜・電極構造体の両側にガス拡散層が配設された積層体を挟持し、前記積層体にホットプレスを行う第1プレス金型及び第2プレス金型を備え、
前記第1プレス金型及び前記第2プレス金型は、前記電極触媒層の外周部と前記保護フイルムとの重なり部位に対向する部分に、それぞれプレス面から離間する逃げ部が設けられることを特徴とする電解質膜・電極構造体の製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の製造装置において、一方の電極触媒層と一方の保護フイルムとの前記重なり部位と、他方の電極触媒層と他方の保護フイルムとの前記重なり部位とは、前記固体高分子電解質膜と前記電極触媒層との積層方向に対し、互いにオフセットして設けられることを特徴とする電解質膜・電極構造体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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