説明

電話機及びその製造方法

【課題】放音孔を覆うことなく、手を放した状態でも安定して電話を保持するのに適した滑り止めを有した滑り止め付電話機及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表面に受話部開口及び通話部開口が設けられた筐体1bの内部に設けられた音声スピーカーと、前記筐体1bの背面に前記音声スピーカーから出力される音声を放音するための複数の放音孔7とを備え、前記複数の放音孔7間、及び前記複数の放音孔7の周囲であって前記筐体1bの背面上、すなわち放音孔7を設ける電話機子機背面中央に、プライマー層9を介して前記筐体1b表面に突起状の弾性体8が形成されていることを特徴とする。
電話機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機、特にハンドセット型コードレス電話機といった電話機子機の放音孔を設ける電話機子機背面中央に滑り止め機能を付与した電話機及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドセット型コードレス電話機は、電話機子機を手で持ち通話を行うことが一般的であった。近年、手でなく肩を用いて電話機子機を保持する通話形態がハンズフリーの利便さから海外中心に広がっており、それに伴い肩で保持しやすい構造を持つ電話機子機が種々提案されている。この肩で保持しやすい電話機子機の構造としては、電話機子機の背面に補助具を付けた構造や、滑り止め部材を付けた構造などがある。電話機に滑り止め機能を持たせる方法として、電話機背面に滑り止め部材を付けた構造が(特許文献1)に開示されている。この構造の特徴としては、ゴムシートを電話機背面に貼り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−46615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、放音孔を設ける電話機子機背面中央に滑り止め部材をつけることができないという問題が生じていた。
【0005】
すなわち、前記電話機子機を肩と顔で挟んで使用する際、肩と接触するのは前記電話機子機背面中央である。この前記電話機子機背面中央には放音孔が設けられるため、この放音孔を設ける電話機子機背面中央に滑り止め機能を持たせる必要がある。しかし、上記ゴムシートは板状のシートであるため、上記ゴムシートを放音孔を設ける電話機子機背面中央に貼ろうとすると放音孔を覆ってしまい、その結果、放音孔部及びその周辺を避けて貼り付けなければならない。従って、上記ゴムシートでは、電話機の最も滑り止め機能を付与したい部分である放音孔を設ける電話機子機背面中央に滑り止め機能を付与することができないという問題があった。なお、放音孔が前記電話機子機背面中央に設けられる理由については後述する。
【0006】
そこで本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、電話機子機を肩と顔とで挟んで使用する際、肩と接触する放音孔を設ける電話機子機背面中央に滑り止め性を有する滑り止め付電話機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の電話機は、表面に受話部開口及び通話部開口が設けられた筐体の内部に設けられた音声スピーカーと、前記筐体の背面に前記音声スピーカーから出力される音声を放音するための複数の放音孔とを備え、前記複数の放音孔間、及び前記複数の音孔の周囲であって前記筐体の背面上、すなわち放音孔を設ける電話機子機背面中央に、プライマー層を介して前記筐体表面に突起状の弾性体が形成されていることを特徴とする電話機である。
【0008】
また、上記課題を解決するために本発明の電話機の製造方法は、表面に受話部開口及び通話部開口が設けられた筐体の背面に設けられた複数の放音孔を設ける電話機子機背面中央を含む電話機子機背面であって前記筐体の背面上にプライマーを塗布乾燥するプライマー層形成工程と、次いでエラストマーの液状未硬化物を放音孔を設ける電話機子機背面中央にパターン状に印刷する印刷工程と、次いで前記筐体背面表面に形成されたパターン状の前記エラストマーの液状未硬化物を硬化する硬化工程を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電話機子機筐体背面の放音孔を設ける電話機子機背面中央、すなわち滑り止め機能を付与したい位置のみに放音孔を覆うことなく複数個の突起状の弾性体を形成させることが可能となり、放音孔を設ける電話機子機背面中央に滑り止め性を有する滑り止め付電話機を提供することができる。
【0010】
また、本発明の電話機の製造方法によれば、プライマー層形成とパターン印刷と硬化の3工程という非常にシンプルな工程で放音孔を設ける電話機子機背面中央に突起状の弾性体を形成することができるため、単純工程にて生産性よく、放音孔を設ける電話機子機背面中央に滑り止め性を有する滑り止め付電話機を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)電話機子機の正面図、(b)電話機子機の背面図
【図2】(a)筐体背面の弾性体が形成された放音孔を設ける電話機子機背面中央の拡大斜視図、(b)筐体背面の弾性体が形成された放音孔を設ける電話機子機背面中央の正面拡大図
【図3】筐体背面にプライマー層を介して弾性体が形成された放音孔周辺の断面拡大図
【図4】(a)本発明の一実施の形態における電話機子機筐体背面の要部断面図、(b)本発明の一実施の形態におけるプライマー層形成工程の要部断面図、(c)本発明の一実施の形態における印刷工程の要部断面図、(d)本発明の一実施の形態における突起状の弾性体が形成された電話機子機筐体背面の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の請求項1に記載の電話機によれば、表面に受話部開口及び通話部開口が設けられた筐体の内部に設けられた音声スピーカーと、前記筐体の背面に前記音声スピーカーから出力される音声を放音するための複数の放音孔とを備え、前記複数の放音孔を設ける電話機子機背面中央に、プライマー層を介して前記筐体表面に突起状の弾性体が形成されていることにより、放音孔を設ける電話機子機背面中央、すなわち滑り止め機能を付与したい位置のみに放音孔を覆うことなく複数個の突起状の弾性体を高い密着強度で形成させることが可能となり、放音孔部に滑り止め性を有する滑り止め付電話機を提供することができる。
【0013】
本発明の請求項2に記載の電話機によれば、請求項1に記載の電話機において前記突起状の弾性体が、複数の略半球体の弾性体であることを特徴とすることにより、放音孔の位置に左右されず、限られた面積の部分に配置することができるため、配置の自由度が向上するという効果がある。
【0014】
本発明の請求項3に記載の電話機によれば、請求項1に記載の電話機においてシラン化合物で構成されるプライマーの有機反応基と電話機子機筐体である有機物との結合及び加水分解性基とシリコーンゴムとの結合により、シリコーンゴムの弾性体がシラン化合物で構成されるプライマー層を介し強固に密着されることから、高密着性の弾性体が得られる。更に筐体表面に形成されたシラン化合物のプライマー層は撥水性のSi基を表面に向けた形となるため、筐体表面は撥水性を示し、筐体表面に防汚性をも付与できる。従って、更に高密着の弾性体からなる滑り止め部を有し、かつ筐体表面の防汚性に優れる滑り止め付電話機を提供することができる。
【0015】
本発明の請求項4に記載の電話機の製造方法によれば、表面に受話部開口及び通話部開口が設けられた筐体の背面に設けられた複数の放音孔放音孔を設ける電話機子機背面中央であって前記筐体の背面上にプライマーを塗布乾燥するプライマー層形成工程と、次いでエラストマーの液状未硬化物をパターン状に印刷する印刷工程と、次いで前記筐体表面に形成されたパターン状の前記エラストマーの液状未硬化物を硬化する硬化工程を備えることを特徴とし、プライマー層形成とパターン印刷と硬化の3工程という非常にシンプルな工程で電話機子機筐体表面に突起状の弾性体を高い密着強度で形成することができるため、単純工程にて生産性よく、放音孔を設ける電話機子機背面中央に滑り止め性を有する滑り止め付電話機を製造することができる。
【0016】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
まず、一般的な電話機子機の構成について図1(a)及び図1(b)を用いて説明する。ここで図1(a)は筐体背面に放音孔を設けた一般的な電話機子機の正面図であり、電話筐体表1aには、日時や電話番号などを表示する液晶表示部2、文字入力のためのキー操作部3、受話音を聴取するための受話部開口4、電話先の相手に話をするための通話部開口5をそれぞれ備えている。また、図1(b)は筐体背面に放音孔を設けた一般的な電話機子機の背面図であり、子機背面となる電話筐体裏1bには、充電池を保護するための電池カバー6、放音孔7を備えている。ここで放音孔7とは、電話着信時の呼び出し音用として、電話機子機1の電話筐体表裏1a、1bの内部中央に設けた音声スピーカー(図示せず)が生成した音声を外部に放音するための穴であり、電話筐体裏1b中央に設けられる。この放音孔7の径、ピッチ、数は呼び出し音用スピーカーの大きさ、性能などによって決まるが、放音孔7は呼び出し音用スピーカーのある領域内に収まるように設けられる。一般的によく用いられる呼び出し音用スピーカーの直径は20mm〜30mmである。それに伴い、放音孔7の径は0.5mm〜1.0mm、ピッチは1.0mm〜5.0mmである。
【0018】
次に、放音孔7が電話筐体裏1b中央に設けられる理由について以下に説明する。
【0019】
まず、図1(b)のAに示す電話機子機1上部には音の信号を持った電波を受信するためのアンテナが内蔵されている。これは、電話機子機1を手で把持して通話する際に、上記アンテナが対面している筐体部分を手で覆うことにより生じる電波特性の低下が起こらないように設計されているためである。通常、電話機子機1を手で把持する場合も肩で挟んで保持する場合も、電話機子機1の図1(b)のB及びCに示す部分は手もしくは肩で覆われてしまう。アンテナは電波特性が悪くなると相手の声が聞きとりにくくなる。また、アンテナの電波特性は金属の接近によっても阻害されるため、アンテナに金属を近づけてはならない。これらの理由により、アンテナは電話機子機1の上部Aに内蔵され、アンテナの電波特性を良好にしている。
【0020】
一方、図1(b)のCに示す電話機子機1下部には電池が内蔵されている。これは、電話機子機1を充電する際、使用者の使い勝手を考慮して電話機子機1を立てて充電する方法が最良であり、それに伴い、電気を蓄えるために電池は電話機子機1の下部Cに内蔵される。
【0021】
更に図1(b)のBに示す電話機子機1中央部には呼び出し音用スピーカーが電話機子機1背面側に音が出るように内蔵されている。これは、スピーカーから発せられる音の特性の最もよい位置が電話機子機1背面中央であるためである。以上の理由から、スピーカーは電話機子機の中央部Bに内蔵される。
【0022】
従って、電話機の設計上、電話機子機1の内部上方Aにはアンテナが設けられていること、また、内部下方Cには充電池が設けられていることから、音声スピーカーを設ける位置は必然的に電話機子機1の内部中央部Bに限定されるため、放音孔7の位置についても必然的に電話機子機1背面中央部Bに設けられることとなる。
【0023】
次に本発明の滑り止め付電話機の構成について図2及び図3を用いて以下に説明する。
【0024】
図2(a)は筐体背面の弾性体が形成された放音孔を設ける電話機子機背面中央の拡大斜視図、(b)は筐体背面の弾性体が形成された放音孔を設ける電話機子機背面中央の正面拡大図である。本発明においては、図2(a)及び(b)に示すように電話筐体裏1bは放音孔7を備えるとともに、その放音孔7の間及び周辺に弾性体8を備えている。特に、本実施例においては突起状の弾性体8であるため、放音孔7を覆うことなく形成され、滑り止め機能を付与したい位置に放音孔7の機能を阻害することなく滑り止め機能を付与することができる。従って、放音孔7に滑り止め性を有する滑り止め付電話機を提供することができる。
【0025】
更に詳細な構成について図3を用いて説明する。
【0026】
図3は筐体背面にプライマー層9を介して弾性体8が形成された放音孔7周辺の断面拡大図である。図3に示すように放音孔7を設ける電話機子機背面中央に設けられた突起状の弾性体8の形状が略半球体であることから、放音孔7の位置に左右されず自由に突起状の弾性体8を形成することができる。また、突起状の弾性体8は、表面が丸みを持っているとよい。これは、使用者にとって違和感のない、手触りがよい突起状の弾性体8を形成することが可能となり、更に好触感の滑り止め部を持つ滑り止め付電話機を提供することができる。弾性体8の材料としては、エラストマー、特にゴムが好適である。更に電話筐体裏1b表面にプライマー層9を形成することにより、電話筐体裏1bと突起状の弾性体8の密着性を高めることができる。すなわち、一般的に電話筐体表裏1a、1bを構成する樹脂と弾性体8をエラストマーは密着性が十分でない。更に、複数設けられた放音孔7間に弾性体8を配するため、弾性体8は非常に小さい形状となっているので、更に密着性が悪化する。なお、電話筐体表裏1a、1bの材料は一般的に樹脂であり、例えばABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)、PC(ポリカーボネート)/ABSが挙げられる。
【0027】
プライマー処理とは、物体と物体を接着する前の下処理のことであり、プライマーを被着材に塗布することによって成分の一部が被着材と化学結合をするため、密着性を上げることができる。本実施例の場合、プライマーを樹脂からなる電話筐体裏1b表面に塗布することでプライマー層9と電話筐体裏1bとが化学結合により密着し、プライマー層9上にエラストマーからなる弾性体8を設けることによりプライマー層9と弾性体8が化学結合により密着する。その結果、電話筐体表裏1a、1bを構成する樹脂と弾性体8をエラストマーは十分でないが、プライマー層9を介することによって、電話筐体裏1bと、複数設けられた放音孔7間に弾性体8を配するため非常に小さい形状となった弾性体8との、密着性を向上させることができる。前記プライマーの種類としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の反応性樹脂、極性樹脂、シラン化合物等が挙げられる。被着材に応じたプライマーを選択することによって、より密着性を向上させることができる。
【0028】
特に弾性体8としてシリコーンゴム、プライマー層9としてシラン化合物を用いると、弾性体8の密着性が向上する。更に、電話筐体裏1b表面に形成されたプライマー層9表面が撥水性を示すため、電話筐体裏1b表面に優れた防汚性をも付与できる。これらの理由を以下に述べる。シラン化合物で構成されるプライマーの有機反応基である不飽和炭化水素基が、電話機子機筐体表裏1a、1bである有機物の表面に存在する反応基である不飽和炭化水素基と反応し結合することにより、電話筐体裏1bとプライマー層9とが密着する。また、プライマー層9の加水分解性基であるOH基とシリコーンゴムの表面に存在するH基が反応し結合することにより、シリコーンゴムの弾性体8がシラン化合物で構成されるプライマー層9を介し強固に密着されるためである。これにより、高密着性の弾性体8が得られる。更に電話筐体裏1b表面に形成されたシラン化合物のプライマー層9は撥水性のSi基を表面に向けた形となり、電話筐体裏1b表面は撥水性を示すことから、電話筐体裏1b表面に防汚性をも付与できる。従って、これにより更に高密着の弾性体8からなる滑り止め部を有し、かつ電話筐体裏1b表面の防汚性に優れる滑り止め付電話機を提供することができる。
【0029】
なお、本発明の突起状の弾性体8の形状については、電話筐体背面1bの放音孔7部分を覆うことなく、電話の機能、デザイン性を阻害しない形状であればよく、図2及び図3に例示したものに限定されるものではない。具体的な形状として、弾性体8の好ましい径は50μm〜1.0mm、より好ましくは100μm〜700μmであり、好ましい厚みは1μm〜1.0mm、好ましくは5μm〜500μmである。突起状弾性体8―突起状弾性体8間のピッチとしては、電話機子機1の放音孔7―放音孔7間のピッチに適していれば特に限定されないが、好ましくは50μm〜1.0mm、より好ましくは100μm〜700μmである。これにより、放音孔7に最適形状の弾性体8からなる滑り止め部を有した滑り止め付電話機を提供することができる。
【0030】
次に、このような突起上弾性体8を持つ滑り止め付電話機の製造方法について図4を用いて更に詳しく説明する。
【0031】
ここで、図4(a)は本発明の一実施の形態における電話機子機筐体背面の要部断面図、(b)は本発明の一実施の形態におけるプライマー層形成工程の要部断面図、(c)は本発明の一実施の形態における印刷工程の要部断面図、(d)は本発明の一実施の形態における突起状の弾性体が形成された電話機子機筐体背面の要部断面図である。また、筐体表面に液状エラストマーの液状未硬化物をパターン印刷するためにスクリーン版10を用いている。
【0032】
本発明の一実施の形態における滑り止め付電話機の製造方法について、以下に詳細に説明する。
【0033】
まず、図4(a)に示すように、射出成形を用い放音孔7を有する電話筐体裏1bを準備する。
【0034】
次に、図4(b)に示すように、筐体の放音孔7周辺にプライマー(メタクリルシランを1〜5重量部溶解させたイソプロピルアルコール)をスプレー塗布し、常温で乾燥させプライマー層9を形成する。ここでは、この後形成される弾性体8がプライマー層9を介して強固に密着されるので、この後のプロセスにおいて弾性体8の剥がれを防ぐことができる。従って、製造時の品質を確保しつつ、滑り止め付電話機を製造することができる。プライマー層9の膜厚は、目的に応じて適時決められるが、おおよそ0.01μm〜20μmの範囲であり、好ましくは0.05μm〜10μmの範囲である。
【0035】
次に、図4(c)に示すように、プライマー層9を形成した筐体表面にエラストマーの液状未硬化物(液状シリコーンゴム)を、スクリーン版10を用いて印刷する。スクリーン版10は、径500μm、ピッチ500μm、厚み100μmのものを用いた。ここでは、印刷工程としてスクリーン印刷を例示しているが、厚みを持った突起状の弾性体8を形成する場合は、パッド印刷を行うことにより、厚みを持った突起状の弾性体8を形成することができる。弾性体8の設計に応じて、スクリーン印刷、シルク印刷、パッド印刷のどの手法を用いてもよい。スクリーン印刷とは、ポリアミドやポリエステル等の単繊維で作られたスクリーン版のメッシュの孔を通して、スキージを用いて加圧しながらエラストマーの液状未硬化物を押し出して印刷する方法である。シルク印刷は、スクリーン版の素材がシルクである以外はスクリーン印刷と同じ工程で印刷できる方法である。シルク印刷用の版の繊維はスクリーン版の繊維よりも径が小さいため、より厚みの薄い弾性体8を形成させることができる。パッド印刷とは、凹板にエラストマーの液状未硬化物を流し込み、余分なエラストマーの液状未硬化物を除去後、弾力性のあるシリコーンゴム製のパッドに転移させ、次にパッドを被印刷物に表面に押し付けることにより、エラストマーの液状未硬化物をパッドから転移させて印刷する方法である。パッド印刷は3次曲面や凹面にも印刷可能であること、2度刷りや3度刷り等の重ね刷りが可能であるという特徴がある。スクリーン印刷は数十μm〜100μm、シルク印刷は1μm〜数十μm、パッド印刷は数十μm〜50μmの厚みを持った弾性体8を形成することができる。また、上述したように、パッド印刷の場合、やわらかいパッドが被印刷物になじむため、平面ばかりでなく、曲面、凹凸面にも印刷が可能であること、重ね刷りが可能であることから、電話機子機1に厚みを持った弾性体8を形成させることが可能となる。上記様々な手法を用いることで、弾性体8の設計自由度高く、滑り止め付電話機を製造することができる。
【0036】
最後に、図4(d)に示すように、筐体表面のエラストマーの液状未硬化物を20℃〜80℃の温度下で硬化させることで、筐体表面の放音孔7周辺に突起状の弾性体8が形成された電話筐体裏1bが得られる。エラストマーの液状未硬化物の硬化方法として、ここでは加熱硬化方法を用いたが、硬化方法は、エラストマーの液状未硬化物の重合形態により、常温硬化、加熱硬化、紫外線硬化のどの方法を用いてもよい。常温硬化した場合は、熱可塑性樹脂の電話機筐体に起こりうる熱変形を防ぐことができる。加熱硬化した場合は、紫外線硬化のものに起こりうる電話機筐体の光照射による劣化・変色を防ぐことができ、製造時の品質を確保しつつ、製造することができる。また、紫外線硬化した場合は、短時間硬化を可能にするため、製造タクトを短縮化でき、更に高生産性にて製造することができる。各種好適に応じて用いることが可能である。
【0037】
以上のことから本発明の製造方法によれば、プライマー層形成とパターン印刷と硬化の3工程という非常にシンプルな工程で電話機子機筐体背面表面に突起状の弾性体を形成することができるため、単純工程にて生産性よく、放音孔を設ける電話機子機背面中央に滑り止め性を有する滑り止め付電話機を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の滑り止め付電話機は、電話機子機筐体の背面に滑り止め機能を有しており、この電話機子機を肩と耳に挟んで使用した際、前期電話機子機筐体背面にある放音孔を覆うことなく形成でき、また、その電話機子機を使用する場合、電話機子機から手を放した状態で、肩と耳で電話を挟んで使用しても、電話機子機が滑り落ちることなく安定に保持可能な滑り止め付電話機及びその製造方法を提供できる。
【符号の説明】
【0039】
1 電話機子機
1a 電話筐体表
1b 電話筐体裏
2 液晶部
3 ボタン
4 受話部開口
5 通話部開口
6 電池カバー
7 放音孔
8 弾性体
9 プライマー層
10 スクリーン版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に受話開口部及び通話開口部が設けられた筐体の内部に設けられた音声スピーカーと、前記筐体の背面に前記音声スピーカーから出力される音声を放音するための複数の放音孔とを備え、
前記複数の放音孔間、及び前記複数の音孔の周囲であって前記筐体の背面上に、プライマー層を介して前記筐体表面に突起状の弾性体が形成されていることを特徴とする電話機。
【請求項2】
前記突起状の弾性体が、複数の略半球体の弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の電話機。
【請求項3】
前記弾性体がシリコーンゴムで構成され、前記プライマー層がシラン化合物で構成されることを特徴とする請求項1に記載の電話機。
【請求項4】
表面に受話開口部及び通話開口部が設けられた筐体の背面に設けられた複数の放音孔の間、及び前記複数の音孔の周囲であって前記筐体の背面上にプライマーを塗布乾燥するプライマー層形成工程と、
次いでエラストマーの液状未硬化物をパターン状に印刷する印刷工程と、
次いで前記筐体表面に形成されたパターン状の前記インクを硬化する硬化工程を備えることを特徴とする電話機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−199345(P2011−199345A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60619(P2010−60619)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】