説明

電離放射線安定性ポリアリールエステルカーボネート組成物

電離放射線安定性ポリアリールエステルカーボネート樹脂組成物、電離放射線安定性組成物の製造方法、電離放射線安定性組成物から製造した物品及び医療用具が開示される。例えばブロックコポリアリールエステルカーボネートと電離放射線安定化添加剤を含んでなる組成物が開示される。コポリアリールエステルカーボネートは有機カーボネートブロックと1以上のアリーレートブロックを含有する。アリーレートブロックが、1以上の1,3−ジヒドロキシベンゼン部分及び1以上の芳香族ジカルボン酸部分由来のアリーレート構造単位を含む。アリーレートブロックが1以上の重合度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電離放射線安定性ポリアリールエステルカーボネート組成物に関し、特に電離放射線滅菌を利用して滅菌される医療用具に適した電離放射線安定性ポリアリールエステルカーボネート組成物に関する。本発明は、電離放射線安定性組成物の製造方法及びこれらの電離放射線安定性組成物から製造される医療用途に適した製品に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用具に用いられるプラスチックの一般的処理法では、医療処置を施す患者への感染の危険性を低減するためにプラスチックを滅菌処理に付す。滅菌は、部材成形後医療品供給業者又は成形業者と契約した第三者による医療機関への輸送前の期間、或いは医療機関で医療措置に使用する前に実施できる。プラスチック物品の滅菌には、一般にγ線や電子線(Eビーム)のような電離放射線を25〜50kGyの照射線量で用いる電離放射線滅菌、121℃〜130℃の飽和蒸気を用いるオートクレーブ処理、乾熱滅菌、及びエチレンオキサイドガス滅菌の4通りの方法が用いられている。他の滅菌法では、上述の慣用滅菌法を繰返すか、或いは併用する多滅菌工程が用いられる。
【0003】
ポリカーボネートは、その光学的透明性、靱性及び耐熱性に起因して高い信頼性及び安全性という利点があるので、医療産業用装置での使用に特に適した熱可塑性プラスチックである。ポリカーボネートから作製される一般医療用具は多々存在するが、特に注射器、血液フィルターのハウジング、静脈内コネクタ、透析装置用の部品などが挙げられる。
【0004】
ポリカーボネート製品は、エチレンオキサイドガス滅菌やオートクレーブ滅菌後も十分に機能し、耐変色性をもつことが当業者に周知である。しかし、高エネルギー線滅菌法を用いると、ポリカーボネートは、機械的特性はほとんど劣化しないにもかかわらず(図1参照)、変色してしまう傾向がある。変色は製品の透明性を損なうので、医療用途には望ましくない。強い黄変にある程度起因する失透は、血液その他の液体の流れのモニタリングが大きく妨げられるので、医療用具の機能及び安全性を大幅に損なうおそれがある。重度の変色は、外観の損なわれた医療用具では、そうしたポリカーボネート医療用具を用いた治療を受ける患者の信頼を損ないかねないという点でも望ましくない。
【0005】
γ線や電子線(Eビーム)のような高エネルギー線で処理したときのポリカーボネートの変色は、ポリカーボネート主鎖に高エネルギー状態の不安定種が生ずることに起因すると考えられる。かかる不安定種はポリカーボネート製品の外観を黄色くし、その光学的透明性を損なう。黄色度及び光学的透明性の低下は照射線量に依存する。
【0006】
照射で生ずる初期黄色度は通常経時的に減少するとともに、通常の露光によって減少する(図2参照)。この色反転は光退色として当業者に知られている。結局、光退色した部品は定常変色状態に達するが、この状態では、初期照射前の部品よりも黄色く、透明性に欠けるが、初期照射直後よりも黄色未は薄く、透明性が高い。定常状態の黄色に達するのに要する時間の長さは、放射線照射量及び照射プロセス後に部品が受ける平常の室内照明の光量に依存する。
【0007】
電子線(Eビーム)やγ線に起因するポリカーボネートの変色を低減するための様々な添加剤が開発されており、例えば臭素系添加剤、硫化物系添加剤、並びにグリコールのようなポリマー状又は非ポリマー状アルコールなどが挙げられる。ポリカーボネートとある種のポリエステルのような電離放射線安定性に優れるポリマーとのブレンドもこの目的に試みられている。これらの解決策は黄色度及び光学的透明性の低下の軽減にある程度有効ではあるが、ポリカーボネート製品の物性及び透明性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
本明細書に開示する組成物及び方法に関する発明以前には、医療産業用ポリカーボネート組成物は、電離放射線滅菌に付随する高エネルギーレベルに付されると、多大な黄変及び失透を起こす傾向があることが周知であった。上述の通り、こうした変化は医療産業では極めて望ましくない。病院への医療品供給業者には、電離放射線滅菌法が好ましい滅菌法となりつつある。そこで、電離放射線滅菌時のポリカーボネートの黄変及び失透傾向を軽減する組成物及び/又は方法を見いだすことができなければ、医療用具(例えばボトル、器具など)にポリカーボネート樹脂を継続して使用することは大幅に制限されるであろうことは明らかである。
【特許文献1】米国特許第5672664号明細書
【特許文献2】米国特許第5608027号明細書
【特許文献3】米国特許第4880855号明細書
【特許文献4】米国特許第4880856号明細書
【特許文献5】米国特許第4686245号明細書
【特許文献6】米国特許第4939185号明細書
【特許文献7】米国特許第4996248号明細書
【特許文献8】米国特許第5137688号明細書
【特許文献9】米国特許第5196245号明細書
【特許文献10】米国特許第4880850号明細書
【特許文献11】米国特許第6197854号明細書
【特許文献12】米国特許第6197853号明細書
【特許文献13】米国特許第6008280号明細書
【特許文献14】米国特許第5936007号明細書
【特許文献15】米国特許第5852070号明細書
【特許文献16】米国特許第5773491号明細書
【特許文献17】米国特許第5744517号明細書
【特許文献18】米国特許第5684062号明細書
【特許文献19】米国特許第5681905号明細書
【特許文献20】米国特許第5612398号明細書
【特許文献21】米国特許第5491179号明細書
【特許文献22】米国特許第5476893号明細書
【特許文献23】米国特許第5464893号明細書
【特許文献24】米国特許第5453457号明細書
【特許文献25】米国特許第5382605号明細書
【特許文献26】米国特許第5274009号明細書
【特許文献27】米国特許第4778656号明細書
【特許文献28】米国特許第5399658号明細書
【特許文献29】米国特許第4645736号明細書
【特許文献30】米国特許第5280050号明細書
【特許文献31】米国特許第5214078号明細書
【特許文献32】米国特許第5187211号明細書
【特許文献33】米国特許第5187208号明細書
【特許文献34】米国特許第5006572号明細書
【特許文献35】米国特許第4963598号明細書
【特許文献36】米国特許第4874802号明細書
【特許文献37】米国特許第4873271号明細書
【特許文献38】米国特許第4804692号明細書
【特許文献39】米国特許第6166116号明細書
【特許文献40】米国特許第5807908号明細書
【特許文献41】米国特許第4904710号明細書
【特許文献42】米国特許第4624972号明細書
【特許文献43】米国特許第4657949号明細書
【特許文献44】米国特許第4757104号明細書
【特許文献45】米国特許第5599863号明細書
【特許文献46】米国特許第5118726号明細書
【特許文献47】米国特許第6040367号明細書
【特許文献48】米国特許第5948838号明細書
【特許文献49】米国特許第4217438号明細書
【特許文献50】米国特許第3635895号明細書
【特許文献51】米国特許第4001184号明細書
【特許文献52】米国特許第6559270号明細書
【特許文献53】欧州特許出願公開第0687710号明細書
【特許文献54】欧州特許出願公開第01004621号明細書
【特許文献55】欧州特許出願公開第0152012号明細書
【特許文献56】国際公開第01/02474号パンフレット
【特許文献57】欧州特許第0611797号明細書
【特許文献58】欧州特許出願公開第0572889号明細書
【特許文献59】欧州特許第0296473号明細書
【特許文献60】欧州特許出願公開第0439763号明細書
【特許文献61】欧州特許第0384110号明細書
【特許文献62】欧州特許第0346706号明細書
【特許文献63】欧州特許第0338319号明細書
【特許文献64】欧州特許第0315865号明細書
【特許文献65】欧州特許第0296473号明細書
【特許文献66】国際公開第00/75223号パンフレット
【特許文献67】欧州特許第0228525号明細書
【特許文献68】欧州特許第0598043号明細書
【特許文献69】国際公開第02/15725号パンフレット
【特許文献70】欧州特許第0359366号明細書
【特許文献71】欧州特許出願公開第0572889号明細書
【特許文献72】欧州特許第0376289号明細書
【特許文献73】欧州特許出願公開第0664316号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
今回、ポリアリールエステルカーボネート組成物及びブレンドにレゾルシノール由来のエステル単位が存在すると、電離放射線滅菌処理後のかかる樹脂の黄変及び失透傾向を改善するのに特に有効であるという予想外の知見が得られた。この性能は、レゾルシノール含有ポリアリールエステルカーボネート組成物及びブレンドに電離放射線安定化添加剤を添加することによって、さらに改善される。
【0010】
本発明者らの発見以前には、ポリカーボネートの電離放射線安定性を改良する唯一の可能な手段は高価な添加剤を使用又は高価なコモノマーを使用することであると考えられていたが、かかる添加剤は耐電離放射線性をわずかしか改良できず、環境面及び毒性の面で望ましくない性質が持ち込んで医療用途に向かなくなることが多く、上記のコモノマーはポリカーボネートの靱性、耐熱性、加水分解安定性のような非常に望ましい機械的特性を損なうことが多かった。本明細書に開示する解決策はこれらの問題を概ね解決する。
【0011】
本明細書では、電離放射線安定性コポリアリールエステル組成物、かかる組成物の製造方法、かかる組成物から製造した物品、かかる組成物から製造した医療用具、かかる組成物から製造した医療用具の電離放射線安定性の性能特性、並びに医療用具の滅菌方法について開示する。
【0012】
本発明の一実施形態では、電離放射線安定性組成物はブロックコポリアリールエステルカーボネートと電離放射線安定化添加剤とを含む。ブロックコポリアリールエステル−カーボネートは有機カーボネートブロック(典型的にはマルチブロック)と1以上のアリーレートブロック(同じく典型的にはマルチブロック)とを含む。アリーレートブロックは1,3−ジヒドロキシベンゼン(つまりレゾルシノール)部分及び1以上の芳香族ジカルボン酸部分(酸又はその酸ハライド誘導体でもよい)に由来するアリーレート構造単位を含む。アリーレートブロックの重合度は1以上である。
【0013】
別の実施形態では、電離放射線安定性組成物の製造方法は、以下の工程を含む。最初に、上述の望ましい構造を有するブロックコポリアリールエステルカーボネートを製造する。次に、ブロックコポリアリールエステルカーボネートを電離放射線安定性添加剤と混合して電離放射線安定性組成物を形成する。
【0014】
本発明の他の実施形態では、上述の電離放射線安定性組成物から物品が成形される。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態では、医療用具が製造される。医療用具の少なくとも一部は、上記ポリアリールエステル−カーボネートを含有する組成物から製造される。この組成物は電離放射線安定化添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、25kGyの電離放射線で滅菌した後の黄色度変化が10黄色度単位未満であるブロックコポリアリールエステルカーボネートを含んでなる医療用具である。典型的には、上述の電離放射線安定性組成物から製造した医療用具がかかる特性を有する。
【0017】
本発明のさらに他の実施形態は、ブロックコポリアリールエステルカーボネートと適宜電離放射線安定化添加剤とを含んでなる医療用具に電離放射線を照射する工程を含む、医療用具の滅菌方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書で用いる「電離放射線安定性」組成物という用語は、電離放射線照射時に黄変を起こす傾向の低い熱可塑性樹脂組成物をいう。黄色度の変化は本明細書では「黄色度変化」(略号dYI)という。電離放射線安定化添加剤を含有する組成物を電離放射線安定性とみなすには、照射線量レベル75kGyでの黄色度変化が30dYI未満であるべきである。γ線安定化添加剤を含有しない組成物を電離放射線安定性とみなすには、線量レベル75kGyでの黄色度変化が40dYI未満であるべきである。
【0019】
本明細書で用いる「電離放射線]という用語は、γ線又は電子線(Eビーム)の形態のエネルギーをいう。医療産業における電離放射線の典型的な線量レベルは25〜50kGyの範囲である。しかし、医療産業では電離放射線に対する安定性を線量レベル75kGyで試験するのが普通である。
【0020】
本明細書で用いる「滅菌]という用語は、医療処置を受ける際に熱可塑性樹脂医療品に接触する患者の感染原となりかねない熱可塑性樹脂医療品に付着した微生物を破壊するために医療産業の当業者が用いる手順をいう。医療産業で用いられ一般的形態の滅菌としては、蒸気滅菌、乾熱滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌及び電離放射線滅菌が挙げられる。
【0021】
本明細書で用いる「電離放射線滅菌]という用語は、製品又は装置に電離放射線を特定の照射線量レベルで照射する滅菌法をいう。照射線量レベルはキログレイ(本明細書ではkGyと略す)単位で測定される。電離放射線照射レベルの他の一般的測定単位はメガラド(MRと略される)である。医療品の滅菌に用いられる典型的な照射線量は25kGy及び50kGyである。ただし、新規な電離放射線安定性組成物の黄色度試験は一般にさらに厳しい75kGyの照射線量レベルで行われる。
【0022】
本明細書で用いる「部分]という用語は、特定の出発原料に対応したポリマー構造の部分をいい、重合時に原子が失われることもある。例えば、1,3−ジヒドロキシベンゼン部分はレゾルシノールに対応し、ポリマーに組込まれた状態ではそのヒドロキシル基の水素原子がない。
【0023】
「ポリアリールエステルカーボネート」と「コポリアリールエステルカーボネート]という用語は本明細書では互換的に用いられれ、同義である。
【0024】
本明細書で用いる「光退色]という用語は、樹脂が、電離放射線照射処理に起因する初期黄色度色変化後に、黄色度が反転する傾向を意味する。この反転は暗所でも起こるが、樹脂が露光されると加速される。最終的に、定常状態に達すると、永久的な変色が認められ、それ以上の有意な光退色は起こらない。
【0025】
本明細書で用いる「電離放射線安定化添加剤]という用語は、得られる熱可塑性樹脂組成物の電離放射線照射後の黄変傾向を低減するため熱可塑性樹脂組成物に混合される添加剤をいう。これらの添加剤が熱可塑性樹脂組成物の黄変を低減する効果は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂組成物中に存在する電離放射線安定化添加剤の種類に応じて、変動する。ポリカーボネート樹脂組成物に用いられる慣用の電離放射線安定化添加剤としては、特に限定されないが、テトラブロモフタル酸無水物及び臭素化ポリカーボネートとのブレンドのような臭素化添加剤、ジフェニルスルフィドのような硫化物系添加剤、ヘキシレングリコール(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)のような脂肪族アルコール、並びにヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのようなポリ脂肪族アルコールが挙げられる。また、ポリマーをポリカーボネートとブレンドして電離放射線照射時の黄変傾向を低減できることも知られている。かかるポリマーの非限定的な例としては、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメタノール)テレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールのコポリマー、エチレングリコールとテレフタル酸のコポリマー、及びポリアミドが挙げられる。これらのうち、グリコール類が好ましい。
【0026】
本発明のブロックコポリアリールエステルカーボネートは、典型的には、有機カーボネートブロックとアリーレートブロックを交互に含む。例として、次の式(I)の部分を含むポリマーが挙げられる。
【0027】
【化1】

式中、R1は水素、ハロゲン又はC1-4アルキルであり、R2は各々独立に二価有機基であり、mは約1以上であり、nは約1以上である。アリーレートブロックは1,3−ジヒドロキシベンゼン部分を含んでおり、1,3−ジヒドロキシベンゼン部分はハロゲン(通常塩素又は臭素)又はC1-4アルキル(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチル)で置換されていてもよい。上記アルキル基は好ましくは第一級又は第二級基であり、メチルがさらに好ましく、大抵は両酸素原子に対してオルト位に位置するが、他の位置も可能である。最も好ましい部分は、R1が水素であるレゾルシノール部分である。一実施形態では、R1は水素であり、R2基は各々独立にレゾルシノール又はビスフェノールA部分であり、コポリアリールエステルカーボネート末端基はヒドロキシル基、カルボン酸基、フェニル基又はこれらの混合物である。
【0028】
上記1,3−ジヒドロキシベンゼン部分は芳香族ジカルボン酸部分と結合しており、芳香族ジカルボン酸部分は、イソフタレート又はテレフタレートのような単環式部分でも、ナフタレンジカルボキシレートのような多環式部分でもよい。好ましくは、芳香族ジカルボン酸部分はイソフタレート及び/又はテレフタレートである。イソフタレート部分とテレフタレート部分の一方が存在してもよいし、両者共存在していてもよい。大抵は、イソフタレート部分とテレフタレート部分が、約0.25〜4.0:1、好ましくは約0.8〜2.5:1のイソフタレート/テレフタレートモル比で存在する。
【0029】
カーボネートブロックにおいて、R2は各々独立に有機基である。大抵は、ポリマー中のR2基の総数の約60%以上が芳香族有機基であり、残部は脂肪族、脂環式又は芳香族基である。好適なR2基としては、m−フェニレン、p−フェニレン、4,4′−ビフェニレン、4,4′−ビ(3,5−ジメチル)フェニレン、2,2−ビス(4−フェニレン)プロパンその他同様の基、例えば米国特許第4217438号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)に名称又は式(一般式もしくは特定の式)で開示されたジヒドロキシ置換芳香族炭化水素に対応するものが挙げられる。
【0030】
さらに好ましくは、各R2は芳香族有機基であり、さらに一段と好ましくは次式の基である。
【0031】
【化2】

式中、A1及びA2は各々単環式二価アリール基であり、YはA1とA2とを1又は2原子の炭素で隔てる橋かけ基である。式(II)における結合手は通常Yに対してA1及びA2のメタ又はパラ位にある。R2が式(II)である化合物はビスフェノール化合物であり、本明細書ではジヒドロキシ置換芳香族炭化水素を表すのに便宜上「ビスフェノール]という用語を用いることもある。しかし、このタイプの非ビスフェノール化合物も適切に用いることができる。
【0032】
式(II)において、A1及びA2は典型的には非置換フェニレン又はその置換誘導体を表し、置換基(1又は複数)の具体例としてはアルキル、アルケニル及びハロゲン(特に臭素)がある。非置換フェニレン基が好ましい。A1及びA2が共にp−フェニレンであるのが好ましいが、両方共にo−又はm−フェニレンであっても、一方がo−又はm−フェニレンで他方がp−フェニレンであってもよい。
【0033】
橋かけ基Yは1又は2原子でA1とA2とを隔てるものである。好ましい実施形態は、A1とA2とが1原子で隔てられているものである。この種の基の具体例は、−O−、−S−、−SO−又は−SO2−、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−[2,2,1]−ビシクロへプチルメチレン、エチレン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデン及び以下の式(III)の2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオールである。
【0034】
【化3】

gem−アルキレン(アルキリデン)基が好ましい。ただし、不飽和基も包含される。入手性及び本発明の目的に特に適している点から、好ましいビスフェノールは、Yがイソプロピリデンで、A1及びA2が各々p−フェニレンである2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「BPA」又はビスフェノールAともいう。)である。
【0035】
アリーレートブロックは、nで表わされる重合度(DP)が約1以上、好ましくは約10〜50である。mで表わされるカーボネートブロックの重合度は通常約1以上、好ましくは約10〜50である。
【0036】
これらのブロックの分布は、カーボネートブロックに対してアリーレートブロックを任意所望の重量割合で含有するコポリマーを与える分布でよい。一般に、アリーレートブロックを約1〜99重量%含有するコポリマーが好ましい。通例、アリーレートブロックは約3〜85重量%存在する。
【0037】
本発明のブロックコポリエステルカーボネートの製造方法の第一工程Aでは、1,3−ジヒドロキシベンゼン化合物(レゾルシノール(これが好ましい)でも、アルキル−又はハロレゾルシノールでもよい。)を、1以上の芳香族ジカルボン酸クロライド、好ましくはイソフタロイルクロライド、テレフタロイルクロライド又はその混合物と水性アルカリ性反応条件下で接触させる。アルカリ性条件は、通例、アルカリ金属水酸化物(通常は水酸化ナトリウム)の導入によって達成される。触媒、大抵はトリエチルアミンのような第三級アミン又はテトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウムもしくはヘキサアルキルグアニジニウムハライドのような第四級塩も通常存在し、有機溶剤、一般に水と非混和性溶剤、好ましくは塩化メチレン塩素化脂肪族化合物も存在する。したがって、反応は一般に二相系で実施される。
【0038】
ヒドロキシ末端ポリエステル中間体を得るため、レゾルシノール/アシルクロライドのモル比は好ましくは1:1を超える。塩基は約2〜2.5:1の塩基/アシルハライドモル比で存在し得る。触媒は通常アシルハライドの合計量を基準にして約0.1〜10モル%の量で使用される。反応温度は大抵約25〜50℃である。
【0039】
ポリエステル中間体の合成完了後、二相系の水性相を弱酸で酸性化してから相分離するのが有利なことがある。ポリエステル中間体を含む有機相を次いで第二工程Bに付すが、この工程はブロックコポリエステルカーボネート合成反応である。ただし、酸性化又は分離を行わずに工程Bに進んでもよく、これを収率又は純度の低下を伴わずに行えることも多い。
【0040】
有機液体に可溶性の塩基を用いてポリエステル中間体を完全に有機液体中で合成することも本発明の技術的範囲に属する。かかる用途に適した塩基として、トリエチルアミンのような第三級アミンが挙げられる。
【0041】
第二工程に用いられるジヒドロキシ芳香族化合物は典型的には式HO−R2−OHのものであり、R2は前記で定義した通りである。ビスフェノールAが概して好ましい。ハロゲン化カルボニルは好ましくはホスゲンである。この反応は当技術分野で周知の界面法(同じく二相系)によって、適当な界面重合触媒及びアルカリ性試薬(好ましくは、ここでも水酸化ナトリウム)、適宜、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのような枝分れ剤及び/又はフェノールもしくはp−クミルフェノールのような連鎖停止剤を用いて実施できる。乱雑なブロックコポリマーの合成を抑制するため、ホスゲン反応の初期はpHを比較的低いレベル、通例約5〜9の範囲に維持し、反応の後半にpHを約10〜13に上げてもよい。
【0042】
以上2つの反応の完了後、ブロックコポリアリールエステルカーボネートを慣用法で単離してもよい。例として、貧溶媒沈殿、乾燥及び押出によるペレット化がある。第一工程を他のエステル形成法、例えば芳香族ジエステルと1,3−ジヒドロキシベンゼンを溶剤中又はメルトで用いるエステル交換反応で実施することも想定される。
【0043】
本発明のブロックコポリアリールエステルカーボネートは、物性の優れたポリマーである。その光透過特性はポリカーボネートと同様である。したがって、本発明のブロックコポリアリールエステルカーボネートは実質的に透明であり、優れた耐候性が必要とされる透明シート材の製造にポリカーボネートの代替物として使用できる。
【0044】
本発明のブロックコポリエステルカーボネートの耐候性その他の有益な特性は、熱又は光化学的に誘起されるそのアリーレートブロックのフリース転位によってベンゾフェノン部分が生成し、これが光安定剤として作用するすることに少なくともある程度起因する。例えば、式(I)の部分の転位によって次の式(IV)の部分が生成することがある。
【0045】
【化4】

式中、R1、R2、m及びnは前記で定義した通りである。式(IV)の部分を合成及び重合によって導入することも想定される。
【0046】
本発明の一実施形態では、上述のポリアリールエステルカーボネート組成物を1種以上のポリカーボネートとブレンドする。本明細書で用いる「ポリカーボネート」、「ポリカーボネート組成物」及び「芳香族カーボネート鎖単位を含有する組成物]という用語には、次の式(V)の構造単位を有する組成物が包含される。
【0047】
【化5】

式中、R1基の総数の約60%以上が芳香族有機基であり、その残部は脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である。R1は好ましくは芳香族有機基であり、さらに好ましくは次の式(VI)の基である。
【0048】
―A1―Y1―A2― (VI)
式中、Z1及びZ2は各々単環式二価アリール基であり、B1はZ1とZ2とを1又は2原子の炭素で隔てる橋かけ基である。一実施形態では、Z1とZ2とが1原子で隔てられているものである。この種の基の非限定的な具体例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O2)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2-[2,2,1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンである。橋かけ基B1は、炭化水素基又はメチレン、シクロヘキシリデン、イソプロピリデンのような飽和炭化水素基とすることもできる。
【0049】
ポリカーボネートは、Z1とZ2とが1原子のみで隔てられたジヒドロキシ化合物の界面反応で製造することができる。本明細書で用いる「ジヒドロキシ化合物]という用語には、例えば次の一般式(VII)のビスフェノール化合物が包含される。
【0050】
【化6】

式中、Ra及びRbは各々ハロゲン原子又は一価炭化水素基であり、同一でも異なるものでもよく、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xaは以下の式(VIII)の基のいずれかを表す。
【0051】
【化7】

式中、Rc及びRdは各々独立に水素原子又は一価線状もしくは環式炭化水素基であり、Reは二価炭化水素基である。
【0052】
好適なジヒドロキシ化合物の非限定的な例としては、米国特許第4217438号に(一般又は具体的)名称又は式で開示されたジヒドロキシ置換芳香族炭化水素が挙げられる。式(VII)で表される種類のビスフェノール化合物の非限定的な例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」又はBPA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類など、並びにこれらの化合物の1種以上を含む組合せが挙げられる。
【0053】
カーボネートのホモポリマーではなくコポリマーの使用が望まれる場合、2種以上の異なる二価フェノール、或いは二価フェノールとグリコールとのコポリマー、又はヒドロキシ−若しくは酸末端ポリエステルとのコポリマー、又は二塩基酸若しくはヒドロキシ酸とのコポリマーを用いることも可能である。一般に、有用な脂肪族二酸は炭素原子数2〜約40のものである。好ましい脂肪族二酸はドデカン二酸である。ポリアリーレート及びポリエステル−カーボネート樹脂又はこれらのブレンドを使用することもできる。枝分れポリカーボネート、並びに線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも有用である。枝分れポリカーボネートは、重合中に枝分れ剤を添加することによって製造することができる。
【0054】
枝分れ剤としては、3個以上の官能基を含む多官能性有機化合物が挙げられ、官能基としては、ヒドロキシル、カルボキシル、無水カルボン酸、ハロホルミル及びこれらの1以上の基を含む混成物が挙げられる。具体例としては、
トリメリト酸、無水トリメリト酸、トリメリト酸トリクロライド、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビスフェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミル無水フタル酸、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが挙げられる。枝分れ剤は、樹脂の全重量を基準にして約0.05〜2.0重量%のレベルで添加し得る。枝分れ剤及び枝分れポリカーボネートの製造法は米国特許第3635895号及び同第4001184号に記載されている。本発明では、あらゆる種類のポリカーボネート末端基が想定される。
【0055】
好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールA、つまりZ1及びZ2が各々p−フェニレンで、B1がイソプロピリデンである化合物に基づくものである。ポリカーボネートの重量平均分子量は好ましくは約5000〜約100000、さらに好ましくは約10000〜約65000、最も好ましくは約15000〜約35000である。
【0056】
ポリアリールエステルカーボネート組成物又はブレンドは、この種の樹脂組成物に慣用される種々の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、例えば充填剤又は補強材、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、追加の樹脂、発泡剤など、並びにこれらの添加剤の1種以上を含む組合せが挙げられる。充填剤又は補強材の例としては、ガラス繊維、アスベスト、炭素繊維、シリカ、タルク、炭酸カルシウムなどがある。熱安定剤の例としては、トリフェニルホスファイト、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(混成モノ−及びジ−ノニルフェニル)ホスファイト、ジメチルベンゼンホスホネート、トリメチルホスフェートなどがある。酸化防止剤の例としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などがある。光安定剤の例としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどがある。可塑剤の例としては、ジオクチル−4,5−エポキシ−ヘキサヒドロフタレート、トリス(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリステアリン、エポキシ化大豆油などがある。帯電防止剤の例としては、グリセロールモノステアレート、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどがある。離型剤の例としては、ステアリン酸ステアリル、みつ蝋、モンタンワックス、パラフィンワックスなどがある。他の樹脂の例としては、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンオキシドが挙げられる。以上の添加剤の組合せも使用できる。かかる添加剤は、組成物を形成するための成分混合時の適当な時点で添加混合すればよい。
【0057】
ポリマー及び着色材料に加えて、本組成物は所望に応じてこの種の樹脂組成物に慣用される各種添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、UV吸収剤、安定剤、例えば光安定剤及び熱安定剤(例えば酸性リン系化合物)、ヒンダードフェノール化合物、酸化亜鉛、硫化亜鉛粒子もしくはこれらの組合せ、滑剤(鉱油など)、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤(テトラアルキルアンモニウムベンゼンスルホネート塩、テトラアルキルホスホニウムベンゼンスルホネート塩など)、離型剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート、グリセロールモノステアレートなど)など、並びに上記添加剤の1種以上を含む組合せがある。例えば、基板は、ポリマーの全重量を基準にして、約0.01重量%〜約0.5重量%の熱安定剤、約0.01重量%〜約0.2重量%の帯電防止剤、及び約0.1重量%〜約1重量%の離型剤を含有し得る。
【0058】
使用し得る酸化防止剤としては、例えば、オルガノホスファイト類、例えばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなど;アルキル化モノフェノール類、ポリフェノール類及びポリフェノールとジエンとのアルキル化反応生成物、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートオクタデシル、2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイトなど;p−クレゾールとジシクロペンタジエンとのブチル化反応生成物;アルキル化ヒドロキノン;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;アルキリデン−ビスフェノール類;ベンジル化合物;β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価もしくは多価アルコールとのエステル;β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸と一価もしくは多価アルコールとのエステル;チオアルキルもしくはチオアリール化合物のエステル、例えばチオプロピオン酸ジステアリル、チオプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジトリデシルなど;β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミドなど;並びに上記酸化防止剤の1種以上を含む組合せがある。
【0059】
ブロックコポリエステルカーボネートは、他のポリマー、特にポリカーボネート、ポリエステル及び追加のポリマー用の添加剤として用いることもできる。本発明のブレンド組成物中のポリカーボネートは、大抵は、上述のブロックコポリエステルカーボネートのカーボネートブロックと類似の分子構造を有し、ビスフェノールAホモポリカーボネート及びコポリカーボネートが概して好ましい。ポリエステルは大抵はポリ(アルキレンジカルボキシレート)、特にポリ(アルキレンアレーンジオエート)であるが、ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)が好ましい。追加のポリマーとしては、ホモポリマー及びコポリマー、特にスチレンのようなアルケニル芳香族化合物と、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなエチレン系不飽和ニトリル、ブタジエン、イソプレンのようなジエン、アクリル酸エチルのようなアクリル単量体との共重合体が挙げられる。例として、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)及びASA(アクリロニトリル−スチレン−アルキルアクリレート)グラフト共重合体がある。
【0060】
本発明のブレンド組成物は、溶剤ブレンディングや、押出などによる溶融ブレンディングのような慣用法で製造することができる。ブレンド組成物はさらに、顔料、染料、耐衝撃性改良剤、安定剤、流動助剤、離型剤などの当技術分野で周知の添加剤を含んでいてもよい。ブレンド組成物には、単なる物理的ブレンドだけでなく、ポリエステル−ポリカーボネートエステル交換反応生成物のようなその反応生成物も包含される。
【0061】
かかるブレンド中のブロックコポリエステルカーボネートの割合は、主に、活性電離放射線安定性改善の実体であるアリーレートブロックの割合によって決まり、典型的な割合はブレンド中のアリーレートブロックが約3〜85重量%となる割合である。本明細書に記載の通り照射時の黄変性能をルーチン実験を用いて試験することによって、最大許容値を求めることができる。本発明のブロックコポリアリールエステルカーボネートとそれを配合するポリカーボネート及びポリエステルとの間にはある程度の非相溶性があるので、ブレンドは透明でないことが多々ある。しかし、ほとんどの医療品及び装置には透明ブレンドが必要とされ、透明ブレンドは、ブロックコポリアリールエステルカーボネート中のアリーレートブロックの長さの調節によって調製できる。透明ブレンドの製造には10〜20程度の繰返し単位のブロック長が好ましい。ポリアリールエステルブロックのブロック長を制御する好ましい方法の一つは、芳香族二酸クロライド又は芳香族二酸クロライド混合物との反応混合物中に存在するレゾルシノールの量を調節することである。レゾルシノールの量が増すと、得られるポリアリールエステルブロックのブロック長が短くなる。例えば、(ポリカーボネート標準を用いたGPCで測定して)約10000〜15000分子量単位の重量平均ブロック長を達成するには、反応混合物中の二酸クロライドのモル数に対して10倍モル過剰のレゾルシノールが好ましく、(ポリカーボネート標準を用いたGPCで測定して)約5500分子量単位の重量平均ブロック長を達成するには、二酸クロライドのモル数に対して30倍モル過剰のレゾルシノールが好ましい。ブレンドの他の特性は優れており、ビスフェノールAポリカーボネートと同等である。
【実施例】
【0062】
ビスフェノールAポリカーボネートとの対比における、本発明のレゾルシノールアリーレート単位を有するコポリアリールエステルカーボネートの電離放射線滅菌安定性の改善を実証するデータを、図3及び図6に示す。図6のデータを得るのに用いた試験サンプルは、上記の説明にしたがって製造した図9に示す式の樹脂組成物の押出で製造した成形品であった。即ち、樹脂組成物をプラックに成形し、プラックに電離放射線を照射した。プラックを電離放射線滅菌に付す前後の黄色度の変化(dYI)を測定した。このデータを得るのに用いたコポリエステルアリーレートはエステル含量約20%を有するもので、テレフタル酸クロライド及びイソフタル酸クロライドの1:1混合物とレゾルシノールとの反応で合成した。ブロック合成後、ビスフェノールA、ホスゲン及びp−クミルフェノール末端封鎖剤を添加してブロックコポリアリールエステルカーボネートの合成を完了した。アリーレートブロックの重量平均分子量は約5500分子量単位(ポリカーボネート標準のゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて)と推計された。図6において、ポリエステル20%は、サンプルが上記ポリアリールエステルカーボネート(エステル含量約20%)を100%含有することを意味し、ポリエステル0%はサンプルがポリカーボネートのみを含有し、ポリアリールエステルカーボネートが存在しないことを意味する。中間の%数値はポリエステル含量20重量%のポリエステルカーボネートとポリカーボネートとのブレンドに対応する。具体的には、図6においてポリエステル5%及び13%と表示した2つのサンプルは、上記ポリアリールエステルカーボネートとポリカーボネートとをブレンドして得たサンプルであった。ブレンドは透明で、ポリカーボネート樹脂に典型的な機械的特性を有した。図3及び図6における黄色度変化(dYI)の結果から、慣用の3つの電離放射線照射線量レベル(25kGy、50kGy及び75kGy)において、本発明のコポリアリールエステルカーボネートが耐電離放射線性能がポリカーボネート対照サンプルに比して100%以上改善されていることが分かる。
【0063】
ポリアリールエステルカーボネートにレゾルシノール部分が存在し、かつアリール酸部分と組合せることの重要性は、30重量%のレゾルシノールを含有するコポリカーボネートと略同じ重量%のレゾルシノールを含有するポリアリールエステルカーボネートとの対比から実証される。レゾルシノールコポリカーボネートが電離放射線照射線量25kGyで27.4のdYIを示したのに対して、レゾルシノール単位を含有するポリアリールエステルカーボネートのdYIは電離放射線照射線量25kGyでわずか5.9であった。レゾルシノールの存在しないポリアリールエステルカーボネート組成物も、レゾルシノールを含有するポリアリールエステルカーボネートに比べ多大な黄変を示した。
【0064】
ポリアリールエステルカーボネート組成物のポリアリールエステル含量を増加すると、予想通り、電離放射線安定性組成物の電離放射線安定性能がさらに向上される。これらの結果を、ポリエステル0%〜20%の範囲のポリアリールエステル含量について、図3に示す。ポリアリールエステル含量をさらに約87%のポリアリールエステルまで増加すると、dYI性能はさらに改善された。例えば、ポリアリールエステル含量20重量%のポリアリールエステルカーボネート組成物はdYIが23.4(25kGy)、39(50kGy)、60.6(75kGy)であったのに対して、ポリアリールエステル含量87%のポリアリールエステルカーボネートはdYIが5.9(25kGy)、7.8(50kGy)、10.6(75kGy)であった。
【0065】
イソフタル酸単位とテレフタル酸単位との比の重要性をさらに検討すべく、約82%のポリエステルを含有するポリアリールエステルカーボネート組成物において、イソフタル酸とテレフタル酸との比を約2:1から1:1まで変化させた。dYIの有意な変化は認められなかった(25kGyで比2:1のときのdYIが6.0、比1:1のときのdYIが5.9)。
【0066】
驚くべきことに、本発明のコポリアリールエステルカーボネートを電離放射線安定化添加剤と組合わせると、電離放射線安定性の相乗的改善がみられた。かかる改善を図4、図5及び図7に示す。図4、図5及び図7に、上述のポリアリールエステルカーボネートとビスフェノールAポリカーボネートとの(比3:1の)ブレンドに電離放射線安定化添加剤であるヘキシレングリコール(2−メチル−2,4−ペンタンジオールともいう。)を組合せたものから作製したプラックについての黄色度変化(dYI)を示す。3つの照射線量レベルすべてにおいて、ヘキシレングリコールを含有するポリアリールエステルカーボネートブレンドでは、ポリカーボネート対照例に比して、dYIのさらに一段と大きな改善が認められる。例えば、ポリアリールエステルカーボネートブレンドは、ヘキシレングリコールが存在する場合(図5)、dYI53%(25kGy)、51%(50kGy)及び38%(75kGy)が改善されたのに対して、ヘキシレングリコールを含有するポリカーボネート対照例(図4)は、dYIが36%(25kGy)、28%(50kGy)及び16%(75kGy)改善されたにすぎなかった。
【0067】
本発明に使用できるその他の好ましい電離放射線安定化添加剤としては、ジオール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、meso−2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオールなど;脂環式アルコール類、例えば1,2−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールなど;枝分れ非環式ジオール類、例えば2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール(ピナコール)など、ポリオール類並びにアルコキシ置換環式又は非環式アルカン類が挙げられる。不飽和部位を有するアルケノール類も好ましいアルコール類である。具体的には、4−メチル−4−ペンテン−2−オール、3−メチル−ペンテン−3−オール、2−メチル−4−ペンテン−2−オール、2,4−ジメチル−4−ペネ−2−オール及び9−デセン−1−オールが挙げられる。別の好ましい群のアルコールは、1以上のヒドロキシ置換第三級炭素を含有する第三級アルコール類である。具体的には、第三級アルコール−1−メチルシクロヘキサンが挙げられる。他の有用な群のアルコールは、芳香環内の不飽和炭素に結合した飽和炭素にヒドロキシ置換を有するヒドロキシメチル芳香族化合物である。ヒドロキシ置換飽和炭素は、単純なメチロール基(−CH2OH)であっても、(−CR4HOH)もしくは(−CR42OH)(式中、R4は複雑な又は簡単な炭化水素である)の場合のような、もっと複雑な炭化水素基であってもよい。具体的なヒドロキシメチル芳香族化合物としては、ベンズヒドロール、1,3−ベンゼンジメタノール、ベンジルアルコール、4−ベンジルオキシベンジルアルコール及びベンジルベンジルアルコールが挙げられる。特に好ましいアルコールは、2−メチル−2,4−ペンテンジオール(ヘキシレングリコールともいう。)、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。
【0068】
本発明の電離放射線安定性組成物の光退色性能を検討した。電離放射線照射線量25kGy及び75kGyでの結果を図8に示す。これらの測定は、プラックを電離放射線で処理し、その後暗所で14日間エージングし、次いでそれ以上電離放射線処理せずに露光したもので行った。14日の暗所エージング後を時間0と記録した。プラックの黄色度を28日の露光中(その間にプラックが光退色する)定期的に測定した。上述のポリアリールエステルカーボネート/ビスフェノールAポリカーボネートブレンド及びヘキシレングリコール(電離放射線安定性組成物の全重量を基準にして0.1重量%)から処方した組成物では、両照射線量レベルで、28日間の光退色後にYI値が最低になった。
【0069】
[ポリアリールエステルカーボネート樹脂の製造]
ポリアリールエステルカーボネート樹脂の製造方法は、米国特許第6559270号を始めとする様々な特許に記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0070】
[ブレンド法]
本発明のポリアリールエステルカーボネートとのブレンドに用いられるポリカーボネート樹脂は、(ポリカーボネート標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ法で測定して)重量平均分子量目標値が30000又は21800のポリカーボネート樹脂いずれかであるか、表示した場合には、メルトフローインデックスが7〜26となる上記2種類の樹脂の組合せであった。メルトフローインデックスは、押出ペレットについてISO方法1133を用いて300℃で測定した。電離放射線性能は、同等のポリアリールエステル及び/又はヘキシレングリコール含量を有する組成物では、メルトフローインデックスとは無関係であることを確認した。ヘキシレングリコールのような他の添加剤は、押出前に、ポリアリールエステルカーボネート及びポリカーボネートと共に混合した。次に、典型的なポリカーボネート押出条件(メルト温度約550°F)を用いて、混合物を単軸又は二軸押出機で押出してブレンドを形成した。
【0071】
[電離放射線照射法]
サンプルを3インチ×4インチ×1/8インチのプラックに成形し、Gretag Color Eye 7000A測定器を用いて、透過モードで角度20及び光源Cの設定でYIを測定した。次にサンプルを照射実験のため、IBA Sterigenics(米国オハイオ州ウェスタービル)に送った。サンプルは25、50及び75kGyで照射後、密封ボックスで送り返された。照射チップのうち、半分を除いて、YI値をGretag Color Eye 7000A測定器で測定した。残りのチップは、光に露光せずに2週間保存した。保存チップについて7、14、21及び28日のスケジュールでYIを測定して、時間経過に伴う光退色をモニターした。電離放射線安定化添加剤であるヘキシレングリコールを配合又は配合していない様々なポリアリールエステルカーボネート配合物及びブレンドの結果を図8に示す。
【0072】
特許請求の範囲は明細書全体の教示内容に鑑みて解釈すべきであり、ここに記載した特定の実施形態に限定されると解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】電離放射線安定化添加剤のヘキシレングリコールがポリカーボネートの重量を基準にして約0.1重量%のレベルで存在するポリカーボネート(ポリアリールエステルカーボネートではない)組成物から作製したポリカーボネート製品の、線量25kGy及び75kGyでの電離放射線照射後の、機械的特性保持を示すグラフ。
【図2】電離放射線安定化添加剤のヘキシレングリコールがポリカーボネートの重量を基準にして約0.1重量%のレベルで存在するポリカーボネート組成物から作製したポリカーボネート(ポリアリールエステルカーボネートではない)物品の、線量25kGy、50kGy及び75kGyでの電離放射線照射後の、黄色度の時間変化(dYI)を示すグラフ。
【図3】ポリアリールエステルカーボネートと各種ビスフェノールAポリカーボネートとのブレンドのビスフェノールAポリカーボネート組成物(電離放射線安定化添加剤は存在しない)について、3つの異なる電離放射線照射線量レベルでの、初期黄色度の変化(dYI)を示すグラフ。
【図4】含有量(重量%)の種々異なるヘキシレングリコールを含有する、ビスフェノールAポリカーボネート組成物について、3つの異なる電離放射線照射線量での、初期黄色度の変化(dYI)を示すグラフ。
【図5】含有量(重量%)の種々異なるヘキシレングリコールを含有する、ポリエステル含量20重量%のポリアリールエステルカーボネートとビスフェノールAポリカーボネートとの1:3(重量部)ブレンド(全ポリエステル含量5%)について、3つの異なる電離放射線照射線量での、初期黄色度の変化(dYI)を示すグラフ。
【図6】図3に示すデータをまとめた表。
【図7】図4及び図5に示すデータをまとめた表。
【図8】25kGy又は75kGyの線量の電離放射線を照射した後、暗所で14日間エージングし、次いで黄色度測定値の変化(dYI)を定期的に記録しながら28日間露光したサンプルについて、黄色度の変化(dYI)を示す表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックコポリアリールエステルカーボネートと電離放射線安定化添加剤とを含んでなる組成物であって、上記コポリアリールエステルカーボネートが有機カーボネートブロックと1以上のアリーレートブロックとを含んでいて、上記アリーレートブロックが(a)1以上の1,3−ジヒドロキシベンゼン部分及び(b)1以上の芳香族ジカルボン酸部分に由来するアリーレート構造単位を含んでおり、アリーレートブロックの重合度が1以上であって、電離放射線に対して安定である組成物。
【請求項2】
前記芳香族ジカルボン酸部分がイソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸のハロゲン置換誘導体、テレフタル酸のハロゲン置換誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
イソフタル酸又は酸ハライド由来のアリーレート構造単位とテレフタル酸又は酸ハライド由来のアリーレート構造単位との比が1:1〜4:1である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記有機カーボネートブロックがビスフェノールA、1,3−ジヒドロキシベンゼン及びこれらの混合物からなる群から選択されるビスフェノールから誘導される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記1以上の芳香族ジカルボン酸部分がイソフタル酸又は酸ハライドとテレフタル酸又は酸ハライドとのモル比約1:1の混合物を含んでおり、さらに前記有機カーボネートブロックがビスフェノールAから誘導される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
コポリアリールエステルカーボネート組成物のアリールエステル含量が該コポリアリールエステルカーボネートの重量を基準にして10重量%〜99重量%である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記アリールエステルブロックが2000〜約20000の重量平均分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
さらに、1種以上のポリカーボネート樹脂を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記電離放射線安定化添加剤が臭素系添加剤、硫化物系添加剤及び脂肪族アルコール添加剤からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記電離放射線安定化添加剤がポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びヘキシレングリコールからなる群から選択される、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記電離放射線安定化添加剤がヘキシレングリコールである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
ヘキシレングリコールが当該電離放射線安定性組成物の全重量を基準にして0.01〜1重量%の範囲内で当該電離放射線安定性組成物に存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
電離放射線安定性組成物の製造方法であって、
有機カーボネートブロックと1以上のアリーレートブロックを含有するブロックコポリアリールエステルカーボネートで、上記アリーレートブロックが(a)1以上の1,3−ジヒドロキシベンゼン部分及び(b)1以上の芳香族ジカルボン酸部分に由来するアリーレート構造単位を含んでおり、上記アリーレートブロックが1以上の重合度を有する、ブロックコポリアリールエステルカーボネートを製造する工程、及び
ブロックコポリアリールエステルカーボネートを電離放射線安定性添加剤と混合する工程
を含んでなる方法。
【請求項14】
ブロックコポリアリールエステルカーボネートと電離放射線安定性添加剤とを含んでなる電離放射線安定性物品であって、上記コポリアリールエステルカーボネートが有機カーボネートブロックと1以上のアリーレートブロックとを含んでいて、上記アリーレートブロックが(a)1,3−ジヒドロキシベンゼン部分及び(b)1以上の芳香族ジカルボン酸部分に由来するアリーレート構造単位を含んでおり、上記アリーレートブロックが1以上の重合度を有する、物品。
【請求項15】
ブロックコポリアリールエステルカーボネートを含む組成物を含む医療用具であって、上記コポリアリールエステルカーボネートが有機カーボネートブロックと1以上のアリーレートブロックとを含んでいて、上記アリーレートブロックが(a)1以上の1,3−ジヒドロキシベンゼン部分及び(b)1以上の芳香族ジカルボン酸部分に由来するアリーレート構造単位を含んでおり、上記アリーレートブロックが1以上の重合度を有する、医療用具。
【請求項16】
さらに電離放射線安定化添加剤を含有する、請求項15記載の医療用具。
【請求項17】
ブロックコポリエステルカーボネートを含んでなる組成物を含む医療用具であって、コポリエステルカーボネートが有機カーボネートブロックと1以上のアリーレートブロックとを含んでいて、上記アリーレートブロックが(a)1以上の1,3−ジヒドロキシベンゼン部分及び(b)1以上の芳香族ジカルボン酸部分に由来するアリーレート構造単位を含んでおり、アリーレートブロックの重合度が1以上であって、上記組成物を75kGyの電離放射線で滅菌した後の黄色度シフトが40黄色度単位未満である、医療用具。
【請求項18】
ブロックコポリアリールエステルカーボネートを含んでなる組成物を含む物品であって、コポリエステルカーボネートが有機カーボネートブロックと1以上のアリーレートブロックとを含んでいて、上記アリーレートブロックが(a)1以上の1,3−ジヒドロキシベンゼン部分及び(b)1以上の芳香族ジカルボン酸部分に由来するアリーレート構造単位を含んでおり、アリーレートブロックの重合度が1以上であって、上記組成物がさらに電離放射線安定化添加剤を含有し、75kGyの電離放射線で滅菌した後の黄色度シフトが30黄色度単位未満である、物品。
【請求項19】
25kGyの電離放射線での滅菌後に光退色定常状態に達したときの上記組成物の黄色度変化が5黄色度単位未満である、請求項18記載の物品。
【請求項20】
医療用具に電離放射線を照射する工程を含む医療用具の滅菌方法であって、
上記医療用具がブロックコポリアリールエステルカーボネートを含む組成物を含んでおり、上記コポリアリールエステルカーボネートが有機カーボネートブロックと1以上のアリーレートブロックとを含んでいて、上記アリーレートブロックが(a)1,3−ジヒドロキシベンゼン部分及び(b)1以上の芳香族ジカルボン酸部分に由来するアリーレート構造単位を含んでおり、上記アリーレートブロックが1以上の重合度を有する、
療用具の滅菌方法。
【請求項21】
前記組成物がさらに電離放射線安定化添加剤を含有する、請求項20記載の医療用具の滅菌方法。
【請求項22】
次式(I)で表される、請求項1記載の組成物。
【化1】

式中、mは1以上の整数であり、nは1以上の整数である。
【請求項23】
1が水素であり、R2がレゾルシノール及びビスフェノールAからなる群から選択され、前記コポリアリールエステルカーボネートがヒドロキシル基、カルボン酸基、フェニル基及びこれらの混合物からなる群から選択される末端基を有する、請求項22記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−512415(P2007−512415A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541186(P2006−541186)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/035508
【国際公開番号】WO2005/052024
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】