説明

霧化装置

【課題】霧化装置において、簡単な構成により霧化量を増大させ、しかも装置の小型化を図る。
【解決手段】ライン型の超音波振動子を使用するもので、ライン型振動子5,5を2個並べて配置し、1列の水柱4を形成するように構成する。ここで、これらのライン型の超音波振動子の出力を個別に調整することにより、水柱の角度を変化させる。また、水柱を発生させるための低周波ライン型超音波振動子と、キャビテーションを発生させるための高周波ライン型超音波振動子を配置してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子を用いて霧化用液を霧化するために用いられる霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の霧化装置として、円盤状の超音波振動子を用い、これを、霧化用液を入れた容器の底に配置することにより、霧化用液を霧化するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2003−061194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の霧化装置では、霧化量を増加したい場合、霧化器である円盤状の超音波振動子を複数個設置する必要があった。
この場合において、上述した円盤状の超音波振動子を複数個配置するには、それぞれの円盤型振動子によって発生する水面上の水柱が、隣りの水柱と干渉しないように、それぞれの設置間隔を広げて配置しなければならず、振動子の設置面積が大きくなり、巨大な水槽等の容器が必要となる問題が生じている。
【0005】
たとえば直径20mmの円盤型振動子を複数個用いた場合、隣りの円盤型振動子との間隔は40mm離す必要がある。
【0006】
また、たとえば直径20mmの円盤型振動子の場合、1個配置した場合には水柱をきれいに生成するのに必要な水槽の床面積サイズは、水槽の側面からの反射波による影響を考えて50mm×50mmになる。このサイズより水槽の床面積が小さいと水柱3がきれいに形成することができなくなり、霧化量が減少する。
この条件の円盤型振動子を2個配置すると、円盤型振動子を40mmは離さなければならないので、50mm×65mmの水槽の床面積が必要である。
【0007】
一方、このサイズ以下の水槽で複数個の円盤型振動子を配置した場合には、それぞれの水柱が干渉し水柱の形成が不安定になり霧化量が減少する。
また、水柱が干渉しないように円盤型振動子の出力を下げると、水柱同士の干渉は防止できるが、霧化量が減少してしまう。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により霧化量を増大させ、しかも装置の小型化が可能となる霧化装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る霧化装置は、ライン型の超音波振動子を2個並べて配置し、1列の水柱を形成するように構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項2記載の発明)に係る霧化装置は、請求項1において、ライン型の超音波振動子の出力を個別に調整することにより、水柱の角度を変化させることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項3記載の発明)に係る霧化装置は、水柱を発生させるためのライン型超音波振動子と、キャビテーションを発生させるためのライン型超音波振動子とを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明に係る霧化装置によれば、ライン型の超音波振動子を2個並べて配置し、1列の水柱を形成するようにしているから、限られた水槽であっても円盤型振動子を用いる場合よりも効率的に霧化することが可能になり、大きな霧化量を確保することが可能になる等の優れた効果がある。
【0013】
また、本発明によれば、ライン型の超音波振動子の出力を個別に調整することで、水柱の角度を変化させているから、この状態であると、水柱先端で発生した水滴が落下して水柱にぶつかりライン型水柱の形成が不安定になることが防止でき、これにより、より安定した霧化をすることが可能になる。
【0014】
さらに、本発明によれば、水柱を発生させるためのライン型超音波振動子とキャビテーションを発生させるためのライン型超音波振動子を配置しているから、円盤型振動子を用いる場合よりも、より大きな水柱を形成することが可能になり、霧化量の増加が可能になるという利点を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2は本発明に係る霧化装置の一実施形態を示すものであり、これらの図において、符号1で示す霧化装置は、霧化用液として、たとえば水を入れた水槽2を備え、この水槽2の底には、超音波振動子である2個のライン型振動子5,5が並べて配置されている。
ここで、これらのライン型振動子5,5の配置例を、図2に示す。
【0016】
これらのライン型振動子5,5には図示しない回路により共振周波数の波形が印加されると、これによる振動により、水槽2中の水の水面上にライン型の水柱4が形成される。その位置は、ライン型振動子5,5の間になる。
【0017】
このようなライン型水柱4の模式的斜視図を、図3に示す。
すなわち、2個のライン型振動子5,5を近接して配置することにより、それぞれのライン型振動子5,5の上方の水面に水柱を形成するのではなく、ライン型振動子5,5同士の間にライン型水柱4を1個形成することが特徴である。
【0018】
ここで、2個のライン型振動子5,5から出た音圧が共振するため、それぞれのライン型振動子5,5の間の上方に1個の大きなライン型水柱4が形成されると考えられる。
【0019】
また、このようなライン型水柱4を形成することにより、キャビテーション効果により霧化が行われる。
【0020】
このようなライン型振動子5,5を2個で1つのライン型水柱4を形成するので、従来装置において円盤型振動子を2個用いた場合のような霧化量の減少の問題は生じない。
【0021】
また、同じ水槽の床面積においては、ライン型振動子5,5の方が、円盤型振動子よりも効率的に配置することが可能なので、ライン型振動子5,5を使用した霧化器の霧化量は、円盤型振動子を用いた場合よりも霧化量は大きくなる。
【0022】
たとえば50mm×65mmの床面積を持つ水槽を用いた場合に、直径20mmの円盤型振動子を2個配置し、1.6Mhzの共振周波数を持つ円盤型振動子で1時間500mlの霧化能力を有する場合、2個配置することにより、1時間あたり1000mlの霧化量を得ることができたが、本発明によるライン型振動子5,5を用いた場合には、以下のようになる。
【0023】
すなわち、ライン型振動子5,5を用いると、50mm×65mmの床面積の水槽2には、10mm×30mmのライン型振動子5,5を配置することが可能である。この場合、ライン型振動子5,5同士の間隔は、約1mmとする。そして、この場合において、1.6Mhzの共振周波数を持つライン型振動子5,5を使用すると、1時間あたりの霧化量は1500mlの霧化量を得ることが、実験により確認されている。
【0024】
また、ここで形成されるライン型水柱4は、円盤型振動子で形成される水柱よりも大きな表面積を持つことができるので、1時間あたりの霧化量が多くなる。
さらに、上述したようにライン型振動子5,5を2個用いることにより、限られた水槽であっても、2個の円盤型振動子を用いる場合よりも効率的に霧化することが可能になり、大きな霧化量を確保することが可能になる。
【0025】
図4は本発明の別の実施形態を示すものであり、ここでは、上述したライン型振動子5,5の出力をそれぞれ個別の調整することにより、傾いたライン型水柱4’を形成している。
【0026】
このようにすると、水柱4’の先端で発生した水滴が落下して水柱にぶつかりライン型水柱の形成が不安定になることが防止できる。
また、これにより、より安定した霧化をすることが可能になる。
【0027】
図5は本発明のさらに別の実施形態を示す。
この実施形態では、水槽2底面に、低周波ライン型振動子6,6を2個配置する。さらに、高周波ライン型振動子7を、図5に示すように音圧が水柱にあたるような位置に配置する。
【0028】
ここで、低周波ライン型振動子6,6は、高周波ライン型振動子7よりもPZTを用いた場合、振動子の厚さを厚くすることが可能なので、低周波ライン型振動子6,6の出力を上げることが可能である。
【0029】
このため、低周波ライン型振動子6,6を用いると、大きなライン型水柱4を形成することが可能になるが、低周波であると粒径の大きい水滴が発生し小粒径の霧は発生しない。このため、霧化器としての機能はない。この低周波ライン型振動子6,6で形成された水柱4に高周波ライン型振動子7で音圧を与えると水柱表面でのキャビテーション効果により霧が発生し霧化装置としての機能が発生するのである。
【0030】
たとえば、高周波ライン型振動子7の共振周波数を1.6Mhzとし、低周波ライン型振動子6,6の共振周波数を200Khzとした場合、平均粒径4μmの霧を得ることができることが実験により確認されている。
【0031】
また、このような構成では、水柱4の面積が大きくなるので、霧化量の増加を行うことが可能になるという利点がある。
すなわち、従来のような円盤型振動子を用いる場合よりも、より大きな水柱を形成することが可能になるので、霧化量の増加が可能になるのである。
【0032】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、霧化装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る霧化装置の一実施形態を示し、ライン型超音波振動子を用いた霧化装置の模式的断面図である。
【図2】図1のライン型超音波振動子の配置例を示す図である。
【図3】図1のライン型水柱を示す模式的斜視図である。
【図4】本発明に係る霧化装置の別の実施形態を示す模式的断面図である。
【図5】本発明に係る霧化装置のさらに別の実施形態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…霧化装置、2…水槽、4,4’…ライン型水柱、5…ライン型振動子、6…低周波ライン型振動子、7…高周波ライン型振動子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン型の超音波振動子を2個並べて配置し、
1列の水柱を形成するように構成したことを特徴とする霧化装置。
【請求項2】
請求項1記載の霧化装置において、
ライン型の超音波振動子の出力を個別に調整することにより、水柱の角度を変化させることを特徴とする霧化装置。
【請求項3】
水柱を発生させるためのライン型超音波振動子と、
キャビテーションを発生させるためのライン型超音波振動子を配置したことを特徴とする霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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