説明

霧化装置

【課題】ミスト化量が多く、超音波振動素子の寿命が長く、かつ簡易な構造の霧化装置を提供すること目的とする。
【解決手段】霧化用液体4を収容する容器8と、容器8および中間溶液6を収容し、中間溶液6に少なくとも容器8の底面部8cを浸漬させる溶液槽7と、溶液槽7に配置され、容器8の底面部8cに対して超音波を照射する超音波振動子部113と、を備え、
超音波振動子部113は、基板と、基板上の中央部及びその円周部に配置された複数の超音波振動子により構成されており、複数の超音波振動子のうち駆動される超音波振動子が、中央部から円周部時計回り又は反時計回りに順次繰り返し切り替え可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霧化装置に係る。より詳細には、例えば成膜にも利用することが可能な霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOCVD(有機金属気相堆積法)のような、液体材料を霧化してから成膜を行う技術においては、キャリアガスを用いる技術が一般的である。かかる技術として、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1記載技術は、原料容器とは別個に設けられた気化器ノズルを設け、原料溶液をノズルから気化器の内部に噴出せしめて霧状にしたのち、加熱ヒーターにより加熱して気化し、原料ガス輸送管によって前記気化した原料ガスを、加熱手段によって熱せられる反応炉に導入し、反応ガス輸送管から送られる反応ガスと成膜基板上で反応せしめてCVD法による薄膜をうる装置である。また、特許文献2には、原料溶液をキャリアガスによりせん断し、霧化する技術が開示されている。
【0004】
ただ、これらの技術は、キャリアガスを用いる必要があり、その圧力制御が難しいなどの課題がある。また、装置の構造が複雑である。
【0005】
一方、原料液体に対して超音波振動を印加し、それにより原料液体を霧化する技術が提供されている。この技術においては、キャリアガスを用いるが微調整の必要がなく、また、装置の構造の簡易化を図ることができる。
【0006】
かかる技術として、例えば、特許文献3には、図3に示す成膜用霧化装置が開示されている。この成膜用霧化装置は、霧化用液体4を収容し、底面部材8bが高分子材料の薄膜で形成された容器8と、容器8および中間溶液6を収容し、中間溶液6に少なくとも容器8の底面部材8bを浸漬させる溶液槽7と、溶液槽7に設けられ、容器8の底面部材8bに対して超音波を照射する超音波振動子13とを有するものである。
【0007】
しかし、特許文献3に例示される、超音波振動による霧化の技術においては、成膜に時間がかかるという課題がある。さらに、超音波振動素子の寿命が短いという課題もある。
そこで、成膜時間が短く、超音波振動素子の寿命が短く、かつ簡易な構造の成膜用霧化装置の出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−310444号公報
【特許文献2】特開平11−14970号公報
【特許文献3】特開2005−305233公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、霧化時間が短く、超音波振動素子の寿命が長く、かつ簡易な構造の霧化装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、
霧化装置であって、
霧化用液体を収容する容器と、
前記容器および中間溶液を収容し、当該中間溶液に少なくとも前記容器の底面部を浸漬させる溶液槽と、
前記溶液槽に配置され、前記容器の底面部に対して超音波を照射する超音波振動子部と、を備え、
前記超音波振動子部は、基板と、該基板上の中央部及びその円周部に配置された複数の超音波振動子により構成されており、当該複数の超音波振動子のうち駆動される超音波振動子が、該中央部と該円周部時計回り又は反時計回りに順次繰り返し切り替え可能であることを特徴とする霧化装置である。
【0011】
請求項2に係る霧化装置は、前記複数の超音波振動子の面積は同一である請求項1記載の霧化装置である。
請求項3に係る霧化装置は、成膜膜用の霧化装置とした請求項1又は2記載の霧化装置である。
請求項4に係る霧化装置は、自走式ロボットのに搭載されている請求項1又は2記載の霧化装置である。
【0012】
本発明者は、従来の霧化装置における上記課題が発生する原因を探求した。特に、霧化ひいては成膜に時間がかかる原因を探った。
その結果、成膜に時間がかかる理由は、霧化したミストの量が少ないことにあることを見出した。さらにその原因を探ったところ、超音波振動子において、発熱が生じていることが判明した。発熱のために、ミストの量が少なくなっているのではないかと考えた。さらに、原料溶液中における音圧振幅が小さいことも判明し、これもミスト量が少ない原因ではないかと考えた。
【0013】
そこで、発熱を防止するための手段を鋭意探求した。その過程で超音波振動子を分割タイプにし、中央部とその円周部に複数配置し、さらに、複数の超音波振動子のうち駆動される超音波振動子が、中央部から円周部に切り替え、円周部において、時計回り又は反時計回りに順次切り替え、そして中央部に切り替えることを繰り替えして駆動するようにしたところ、発熱が低減されることを発見した。さらに音圧振幅も単一の超音波振動子の場合よりも高く保持させることができることも見出した。本発明は、かかる知見に基づきなされたものである。
【0014】
請求項1に係る発明によれば、複数の超音波振動子を設け、当該複数の超音波振勲子のうち駆動させる超音波振動子が、中央部から円周部に切り替え、円周部において、時計回り又は反時計回りに順次切り替え、そして中央部に切り替えることを繰り返して駆動することで、各超音波振動子の発熱を抑制することができ、かつ霧化用液体中の音圧振幅を高く保持させることができる。その結果、ミストの発生量を増加させることができる。さらに、各超音波振動子の負荷が小さくなり、超音波振動子の寿命を延ばすことができる。切り替えは100Hz周期で行う。
【0015】
ここで、小さな超音波振動子は振動するのに使うエネルギーが小さく、自身の質量も小さいので振動するためのエネルギーが小さくなる。そのため、小さな超音波振動子はエネルギーの伝達効率がよい。その結果、単体の超音波振動子を連続して駆動する場合に比べ、複数の超音波振動子を設け、各超音波振動子を間欠的に切り換えて駆動することで、各超音波振動子への投入電力の低減を図ることができる。さらに、各超音波振動子のうち駆動される超音波振動子が中央部と円周部とに切り換えて駆動されるので、各超音波振動子の発熱を抑制することができる。
【0016】
ここで、寸法の大きな超音波振動子では指向角(中心軸の音圧に対して、音圧が1/2に減少する角度)が小さく、寸法の小さな超音波振動子では指向角が大きくなる。そのため、単体の超音波振勤子を用いる場合は、音圧の強い波動を霧化用液体に幅広く伝播させるために、超音波振動子の寸法を大きくする必要や、超音波振動子と霧化用液体との間の距離を長くとる必要があり、設置スペースが広くなってしまう。しかし、寸法の小さな超音波振動子は指向角が大きいので、寸法の小さな超音波振動子を複数用いることで、超音波振動子の寸法を大きくする必要がない。その結果、省スペース化を図ることができる。
【0017】
中央部から円周部に切り替え、円周部において、時計回り又は反時計回りに順次切り替えることにより振動面における定在波が回避され、波動を分散させることができる。その結果、波動が霧化用液体中を局部的に伝播することなくなるので、単体の超音波振動子を用いる場合に比べてミストの発生量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、消費電力の削減、振動子の発熱の防止がなされ、効率よいミスト化を図ることが可能となり、ミストの発生量の増加ひいては、例えば成膜時間の短縮化が達成される。また、小型化の装置が達成される。
請求項2に係る発明によれば、均一にミストを発生させることができる。
請求項3に係る発明によれば、成膜時間の短縮化を達成することが可能となる。
請求項4に係る発明によれば、例えば室内に満遍なくミストを行きわたらせることができる。なお、手が届かないような隙間には入れるような小さな寸法に設計することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る霧化装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施例に係る超音波振動部を示す平面図である。
【図3】従来例に係る成膜装置の概略構成を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例に係る霧化装置を自走式ロボットに組み込んだ例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 成膜用霧化装置
4 霧化用液体
6 中間溶液
7 溶液槽
8 容器
8c 底面部
9c ガス供給口
10 出口
11 ミスト
110 排出口
113 超音波振動子部
120 自走式ロボット
CH−1〜CH−8 超音波振動子
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図1に基づき説明する。
本実施の形態に係る霧化装置1は、成膜に用いられる霧化装置であって、霧化用液体4を収容する容器8と、容器8および中間溶液4を収容し、中間溶液4に容器8の底面部8cを浸漬させる溶液槽7と、溶液槽7に配置され、容器8の底面部8cに対して超音波を照射する超音波振動子部113と、を備え、
超音波振動子部113は、複数の超音波振動子CH−1〜CH−8により構成されており、複数の超音波振動子CH−1〜CH−8のうち駆動される超音波振動子を順次切り替え可能とした。
【0022】
以下に本実施の形態をより詳細に説明する。
本実施の形態に係る成膜用霧化装置1における成膜装置の基本的構成は、従来例としてあげた図3に示す構成と同じである。従って、特許文献3に記載された事項は、その本質に反しない限り適用可能であり、本発明の技術的範囲に属する。
【0023】
本形態に係る成膜用霧化装置は、図1に示すように、薄膜製造装置の一部を構成している。薄膜製造装置は、霧化用液体4を霧化する成膜用霧化装置1と、霧化用液体4に含まれる物質を成膜する成膜装置2と、これら成膜用霧化装置1と成膜装置2を制御する制御装置3とを有している。成膜用霧化装置1は、霧化用液体4を収容しながら霧化されたミストを排出する排出口110を容器8の上方に有している。また、容器8は、さらに、その側面にガスを導入するためのガス供給口9cを有している。
【0024】
なお、図1には図示していないが、特許文献3に記載されていると同様に、容器8の底面部には、超音波を透過しやすい高分子材料で形成してもよい。
ガス供給口9cは、窒素ガスボンベに流量制御弁を介して接続されている。そして、窒素ガスボンベ は、流量制御弁2の開度に応じた供給量でキャリアガスを容器内に供給するようになっている。なお、キャリアガスとしては、例えば、窒素、酸素、空気等を使うことができる。
【0025】
排出口110は、成膜装置2に配管を介して接続されており、霧化用液体4を霧化して生成されたミストを窒素ガスと共に成膜装置2に流出させるようになっている。
【0026】
上記のように構成された容器8は、溶液槽7内に設けられている。これにより、容器8は、底面部から側面部の一部にかけた領域が溶液槽7の中間溶液6に浸漬可能にされている。
【0027】
容器8を中間溶液6と共に収容した溶液槽7の底面部には、超音波振動子部113 が設けられている。超音波振動子部113は、図2に示す通り、複数の超音波振動子CH−1〜CH−8により構成されている。
【0028】
PZTなどの強誘電体からなる基板の裏面に図2に示す電極をパターニングする。図2に示すパターニングは、中心に一つ、その周囲に7個形成してある。数には特に限定されない。中心に一つを有しており、その周囲に形成してあれば、周囲のパターニングの数は7個より多くても少なくてもよい。
【0029】
パターニングされた各電極にはリード部を設ける。
各リード部は高周波発振部(図示せず)にそれぞれ個別に接続されている。高周波発振部は制御部(図示せず)からの信号に基づいて、リード部及び電極を介して超音波振動子に電圧を印加する。電圧は、CH−1、CH−2、CH−3、…、・・、CH−、CH−8の順に切り替えながら順次印加していく。CH−8に印加した後は、CH−1から同様に繰り返す。
【0030】
一方、表面には一面の電極を貼付し、電極の一部からアースをとっておく。
【0031】
以下、図3に基づいて本実施の形態説明する。
上記のように構成された成膜用霧化装置1は、配管14を介して成膜装置2に接続されている。なお、配管14の途中には、閉栓バルブが設けられていても良い。成膜装置2は、中空状の上部隔壁体21と、上部隔壁体21の下面を支持した基台22とを有している。
【0032】
上部隔壁体21の上面壁には、ガス導入部21aが形成されている。ガス導入部21a には、上述の成膜用霧化装置1 に連絡された配管14が接続されており、成膜用霧化装置1から霧化用液体4を霧化したミストが供給されるようになっている。
【0033】
上部隔壁体21の内部には、予熱室23が形成されている。予熱室23は、上部隔壁体21の上端部から下端部にかけて垂直方向に形成されている。予熱室23の上端部は、上述のガス導入部21aに連絡されており、成膜用霧化装置1からのミストが導入されるようになっている。また、予熱室23は、上端部から上部側の中間位置にかけた範囲がガス導入部21aと同一の断面形状および断面積(流路面積)となる管形状に形成された後、上部側の中間位置から下端部までの範囲が大きな断面積であって長辺が上部隔壁体21の幅方向に一致する長方形状となるように形成されている。これにより、予熱室23は、ガス導入部21aよりも流路面積が拡大することによって、ガス導入部21aから導入されたミストの流速を低下させ、ミストに対して所望の熱量を付与することを可能にしている。尚、予熱室23は、後述の成膜室24側から伝達される熱でミストを予熱しても良いし、予熱室23専用の予熱ヒータにより予熱しても良い。
【0034】
上記の予熱室23の下端部は、成膜室24の一端部に連通されている。成膜室24は、上部隔壁体21と基台22との間に水平方向に形成されている。成膜室24は、予熱室23から均一にミストが導入されるように、縦断面(流路断面)の幅が予熱室23の幅に一致されている。また、成膜室24の近傍には、加熱ヒータ25が設けられている。加熱ヒータ25は、成膜室24の温度を成膜処理に適した温度範囲に維持する機能を備えている。具体的には、酢酸亜鉛と溶媒(水)とのミストを用いて酸化亜鉛(ZnO)の成膜処理を実施する場合においては280℃〜430℃の温度範囲に維持する機能を備えている。
【0035】
また、成膜室24は、他端部が開口されている。これにより、成膜室24は、予熱室23から導入されたミストを一端側(予熱室側)から水平方向に流動させた後、他端側の開口から排出するようになっている。成膜室24には、成膜処理が施される平板状の基板26 が載置台27により搬入可能にされている。載置台27は、図示しない移動機構に連結されており、成膜室24と機外との間を進退移動可能にされている。
【0036】
上記のように構成された成膜用霧化装置1および成膜装置2は、制御装置3により動作が制御されている。制御装置3は、演算部や記憶部、入出力部等を備えており、手動運転や自動運転で各装置1、2を単独や連動させながら作動させる各種の処理機能を有している。
【0037】
具体的には、成膜用霧化装置1を単独で運転する機能としては、成膜用霧化装置1の傾動動作を定期的に実施する機能や、中間溶液6の温度や粘度を超音波の伝播にとって最適な状態となるように調整する機能、霧化用液体4の収容量を検知して補充時期を報知したり、自動補充する機能、窒素ガスの供給量を所定値とするように流量制御弁12の開度を調整する機能等がある。また、成膜装置2を単独で運転する機能としては、成膜室24の温度を所望の温度に維持するように加熱ヒータ25を制御する機能や、基板26を成膜室24内で往復移動させて載置台27全体に均等に成膜させる機能等がある。成膜用霧化装置1と成膜装置2とを連動させながら運転する機能としては、成膜用霧化装置1のミストの生成量と、成膜装置2における成膜室24の温度およびミストの流速とを連動させながら、成膜処理の好適な条件を出現させる機能等がある。
【0038】
上記の構成において、薄膜製造装置における成膜用霧化装置1の動作を説明する。エタノールが溶液槽7に中間溶液6として投入され、容器8の底面部材8bが中間溶液6に完全に浸漬される。この後、蓋部材9が容器8から取り外され、0.05M等の所定濃度の酢酸亜鉛溶液が霧化用液体4 として容器8に投入される。尚、霧化用液体4の投入は、蓋部材9に図示しない投入口を開閉可能に形成しておき、この投入口から行っても良い。この後、蓋部材9が容器8に冠着され、霧化用液体4および中間溶液6が図示しない熱交換装置で加熱や冷却されることによって、超音波の伝播にとって好適な温度および粘度に調整される。
【0039】
次に、成膜用霧化装置1が直立姿勢であることが確認された後、超音波振動子部113が作動され、例えば2.4MHzの超音波が発振される。
その際、超音波振動子部113を構成する複数の超音波振動子CH−1〜CH−8に数字の順に順次超音波の入力を切り替えていく。逆の順番でもよい。すなわち、時計回りでも反時計回りでもよい。
順次切り替えて印加する際、一つの超音波音波振動子に印加する時間としては、100Hzが好ましい。
【0040】
尚、この超音波の発振周波数は、成膜処理にとって最適なミストの粒径となるように適宜変更される。超音波は、中間溶液6を伝播し、容器8の底面部8cを透過して霧化用液体4に伝播する。この結果、霧化用液体4は、超音波により振動され、液体同士の結合が外れることによりミストとなって放出される。尚、この場合におけるミストは、酢酸亜鉛と水との混合物である。
【0041】
ところで、底面部8cに、図3に示したと同様に、底面部材8bを設けてもよい。底面部材8bは、超音波を透過させ易い高密度ポリエチレン等の材料を薄膜化したフィルム状に形成されている。従って、超音波は、底面部材8bでの減衰が極めて小さな状態で霧化用液体4に伝播して霧化用液体4を振動させるため、高い効率でミストを生成することができる。
【0042】
上記のようにしてミストが生成されると、この生成タイミングに一致したタイミングや僅かに前後したタイミングで流量制御弁12が開栓される。そして、窒素ガスボンベ11の窒素ガスが流量制御弁12の開度に応じた供給量で容器8内に供給される。これにより、ミストは、窒素ガスと共に筒状部材10から排出され、配管14を介して成膜装置2 に供給される。この後、成膜装置2において、ミストは、予熱室23で予熱された後、成膜室24に流動され、基板26の表面に沿って流動されながら加熱により酸化亜鉛(ZnO) を生成し、酸化亜鉛(ZnOの膜を基板26の表面に形成する。
【0043】
本実施形態においては、成膜用霧化装置1を薄膜製造装置に搭載し、酸化亜鉛を成膜する用途に適用した場合について説明しているが、これに限定されるものではない。酸化亜鉛以外に、アルミナ系、ジルコニア系、シリカ系、ペロブスカイト系などの酸化物や、さらに酸窒化物の成膜にも適用できる。
【実施例】
【0044】
図1の成膜用霧化装置において、超音波振動部113を、図2に示す8つの超音波音波振動子CH−1〜CH8により構成した。
各超音波音波振動子CH−1〜CH−8におけるパターニングの面積は等しくなるように設計した。
霧化用液体4として、酢酸亜鉛と水との溶液を用いた。
超音波音波振動子CH−1〜CH−8からは3MHzの超音波を霧化用液体4に付加した。
超音波音波振動子CH−1〜CH−8へは制御装置からの信号に基づく、数字の番号順に電圧を切り替えつつ順次印加した。
薄膜製造装置としては、超音波音波振動子部以外は、図3に示す構成の装置を用いてZnOの成膜を行った。
【0045】
次の事項について評価を行った。
(1)一定時間経過後におけるZnOの膜厚
(2)霧化後におけるミストの粒径
ミストの粒径は、走査式モビリティーパーティクルサイザー(一体型)/SMPS3034 計測器にて計測した。
【0046】
一方、従来例として、超音波音波振動子部が複数の超音波音波振動子から構成されていない霧化装置について同様の評価を行った。
超音波音波振動子部以外は上記実施例と同じ条件で実験を行った。
その結果、本発明の実施例においては、従来例に比べて、膜厚は増加していた。これは、ミストの発生量が従来例よりも多いことを示している。
また、粒径も本発明の実施例の場合は、従来例よりも小さかった。従って、本発明の実施例によれば、従来例よりも緻密な膜ひいては品質の優れた膜が形成されることが予測される。
【0047】
図3に本霧化装置を自走式のロボットに搭載した例を示す。図3(a)は斜視図、図3(b)は内部を示す断面図である。
【0048】
発明を、上記の実施形態ないし実施例により説明したが、本発明の技術的範囲はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解される。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜に用いられる霧化装置であって、
霧化用液体を収容する容器と、
前記容器および中間溶液を収容し、当該中間溶液に少なくとも前記容器の底面部を浸漬させる溶液槽と、
前記溶液槽に配置され、前記容器の底面部に対して超音波を照射する超音波振動子部と、を備え、
前記超音波振動子部は、基板と、該基板上の中央部及びその円周部に配置された複数の超音波振動子により構成されており、当該複数の超音波振動子のうち駆動される超音波振動子が、該中央部と該円周部時計回り又は反時計回りに順次繰り返し切り替え可能であることを特徴とする霧化装置。
【請求項2】
前記複数の超音波振動子の面積は同一である請求項1記載の霧化装置である。
【請求項3】
霧化装置は成膜用霧化装置である請求項1又は2記載の霧化装置。
【請求項4】
自走式ロボットに搭載されていることを特徴とする請求項1又は2記載の霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−67763(P2011−67763A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221029(P2009−221029)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(509027076)株式会社チャレンジ (1)
【Fターム(参考)】