説明

青果物の鮮度保持方法

【課題】
特殊な包装を行うことなく遠隔な収穫地で加工された青果物でも、消費地たる店頭で鮮度を保って商品展示できるようにする。
【解決手段】
加工された青果物を処理用液に浸漬する。処理用液は天然物を原材料として粉砕混合し加水して発酵熟成させものを濾過してなる発酵熟成液を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工された青果物の褐変、萎凋等の変敗を防止して鮮度を保持する青果物の鮮度保持方法に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
青果物の加工、運送等に付いての効率は収穫地で加工し鮮度を保って消費地に送られ且つ鮮度を保持して店頭に数日間並べられれば極めて良いことになる。しかしながら収穫地(産地)で分割、切断等の加工(例えばカットレタスのようなもの)された青果物は加工面が大気に含まれる雑菌、酵素、酸素ほかの諸成分にさらされて未加工の青果物よりも変敗しやすくなる。製造日を含む3日間が限界と言われている。簡単な加工で消費地に運ばれた青果物は変敗部分を取り除かれるわけだが、その歩留まりは6割と言われ4割は消費地、つまり都市部でのゴミとなっている。収穫地で加工する場合の廃棄量は2割と言われているので2割の捨てる部分を輸送しなくて良いし都市部のゴミも減ずることになる。このため収穫地で加工された青果物の鮮度を消費地まで保持できる技術の開発が要望されている。
【0003】
従来、青果物の鮮度保持の技術としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
【特許文献1】特開平5−184290号公報 特許文献1には、加工された青果物を処理用液に浸漬する青果物の鮮度保持方法が記載されている。処理用液は、植物生理活性剤(サイトカイニン活性を有する物質)を含有した洗浄用溶液である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る青果物の鮮度保持方法では、酸化現象である褐変についてはある程度有効であるものの、減圧包装を行って冷蔵保存しなければ、収穫地で加工された青果物の鮮度を消費地まで保持することができないという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、特殊な包装を行うことなく遠隔な収穫地で加工された青果物の鮮度を消費地たる店頭展示期間まで略10日保持することのできる青果物の鮮度保持方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明に係る青果物の鮮度保持方法は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0007】
即ち、請求項1では、加工された青果物を処理用液に浸漬する青果物の鮮度保持方法において、処理用液は天然物を原材料として粉砕混合し加水して発酵熟成させたものを濾過してなる発酵熟成液を含むものであることを特徴とする。
【0008】
この手段では、天然物である原材料から抽出され水の分子を細分化する機能を有する金属イオンを含む発酵熟成液を青果物の細胞の内部に取込ませ、青果物を活性化させることで、青果物の鮮度を保持し減圧包装等を不要にする。
【0009】
また、請求項2では、請求項1の青果物の鮮度保持方法において、処理用液は水1000量に対して発酵熟成液0.2〜1量からなることを特徴とする。
【0010】
この手段では、青果物の種類、品質などの条件を考慮し、水に対して発酵熟成液を適宜少量添加する。
【0011】
また、請求項3では、請求項2の青果物の鮮度保持方法において、加工された青果物は40〜60℃に保持された処理用液に90〜120秒間浸漬されることを特徴とする。
【0012】
この手段では、水の分子の細分化がより促進される処理用液の温度として40〜60℃の温度域が選択され、青果物の加工面等に金属イオン膜がコーティングされる時間として90〜120秒が選択される。
【0013】
また、請求項4では、請求項3の青果物の鮮度保持方法において、加工された青果物は処理用液の水切りの後に0〜20℃の冷却液に90〜120秒間浸漬けされて冷却されることを特徴とする。
【0014】
この手段では、雑菌,酵素の作用を減衰させる冷却手段として0〜20℃の冷却液への90〜120秒間の浸漬が選択される。
【0015】
また、請求項5では、請求項4の青果物の鮮度保持方法において、冷却液はアルカリイオン水であることを特徴とする。
【0016】
この手段では、冷却液として酸化防止機能を有する活性水素が含まれるアルカリイオン水が選択される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る青果物の鮮度保持方法は、天然物である原材料から抽出され水の分子を細分化する機能を有する金属イオンを含む発酵熟成液を青果物の細胞の内部に取込ませ、発酵熟成液に含まれる栄養成分、ミネラル成分で青果物を活性化させることで、青果物の鮮度を保持して減圧包装等を不要にするため、特殊な包装を行うことなく収穫地で加工された青果物の鮮度を消費地まで保持することができる効果がある。
【0018】
さらに、請求項2として、水に対して発酵熟成液を少量添加するだけで、製造コストの高い発酵熟成液を大量に使用しないため、鮮度保持の処理コストを安価にする効果がある。
【0019】
さらに、請求項3として、水の分子の細分化がより促進される処理用液の温度として40〜60℃の温度域が選択され、発酵熟成液の、青果物の細胞内部への取込みが促進されるとともに、青果物の加工面等に金属イオン膜がコーティングされる時間として90〜120秒が選択され、青果物の加工面等が大気に含まれている雑菌、酵素、酸素、化学成分等から遮断されるため、特殊な包装を行うことなく収穫地で加工された青果物の鮮度を消費地までより確実に保持することができる効果がある。
【0020】
さらに、請求項4として、雑菌、酵素の作用を減衰させる冷却手段として0〜20℃の冷却液への90〜120秒間の浸漬が選択されるため、加温された処理用液の使用による不具合が解消され、特殊な包装を行うことなく収穫地で加工された青果物の鮮度を消費地までより確実に保持することができる効果がある。
【0021】
さらに、請求項5として、冷却液として酸化防止機能を有する活性水素が含まれるアルカリイオン水が選択されるため、変敗のうちの褐変防止に特に有効である効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る青果物の鮮度保持方法を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
この形態では、球レタスからなる青果物に適用されるものを示してある。
【0024】
この形態は、図1に示すように、収穫された青果物を処理工場に搬入し、青果物である球レタスの痛んだ外側の葉を除去して複数個に分割したカットレタスとする加工が行われる。
【0025】
続いて、青果物を網形のパレットに整列させるパレット詰が行われる。パレット詰は、転動しやすい形状のカットレタスからなる青果物を安定した姿勢に保持するために行われる。
【0026】
続いて、青果物の整列されたパレットを積上げるパレット積上が行われる。パレット積上は、後続の処理を連続的に実施するための準備である。
【0027】
続いて、青果物を処理用液に浸漬する。処理用液は、水1000量に対して発酵熟成液1量を添加したものである。青果物は産地、収穫時期によって品質が一定ではないのでそれら条件を考慮し、0.2から1量を適宜調整して添加する。浸漬は、処理用液を40〜60℃(好ましくは50℃)に加温して90から120秒間行われる。なお、青果物は、パレットごと処理用液の貯溜された処理水槽に浸漬されて大量処理される。
【0028】
発酵熟成液を製造するには、図2に示すように、天然物である桃、胡桃の種子や杏の核、真珠(または卵殻)、根昆布、澱粉を原材料として粉砕混合し、3倍量程度の水を加えながら撹拌しさらに撹拌を継続しながら加熱する。この後、撹拌しながら麹を添加し、約1週間の間撹拌流動させながら37〜40℃の温度を保持して発酵させる。そして、しばらく熟成させた後、5ミクロン、2ミクロン、1ミクロン、0.4ミクロン、0.1ミクロンのフィルタで段階的に濾過する。濾過後には、紫外線照射に続いて120℃で1分間の加熱殺菌が行われる。
【0029】
この発酵熟成液は、図3に示すように、栄養成分,ミネラル成分を多く含んだものとなっている。特に、ミネラル成分の金属イオンは、水の分子を10Å(オングストローム)程度に細分化する機能を有して、100Å(オングストローム)といわれる細胞のイオンチャンネル(トンネル)を通して栄養成分,ミネラル成分を細胞の内部に有効に取込むことができるものである。
【0030】
処理用液に浸漬された青果物は、細胞の内部(特に加工面の)に栄養成分,ミネラル成分が有効に取込まれて、極めて活性化された状態になる。また、青果物の加工面等に金属イオン膜がコーティングされる、青果物の加工面等が大気に含まれている雑菌、酵素、酸素、化学成分等から遮断される。このため、褐変、萎凋等の変敗が起こらなくなる。なお、40〜60℃の温度域と90秒間の時間域を超えると、水の分子の細分化が低下する。なお、処理用液への浸漬は、青果物の洗浄をも兼ねている。
【0031】
続いて、青果物を水切する。水切は、処理用液から青果物をパレットごと引上げ水切台等に静置することで行われる。
【0032】
続いて、青果物を冷却する。冷却は、冷却液であるアルカリイオン水を0〜20℃に冷却して90〜120秒間行われる。なお、青果物は、パレットごと冷却液の貯溜された冷却水槽に浸漬されて大量処理される。
【0033】
冷却液に浸漬された青果物は、温度の低下で付着している雑菌,酵素の作用が減衰される。また、アルカリイオン水に含まれている酸化防止機能を有する活性水素によって、変敗のうちの褐変が特に有効に防止される。
【0034】
続いて、青果物を水切する。水切は、冷却液から青果物をパレットごと引上げ水切台等に静置することで行われる。
【0035】
この後、青果物は、箱詰されて冷蔵保管され、適時に処理工場出荷されることになる。
【0036】
製品として出荷された青果物は、減圧包装等の特殊な包装を行わなくても、10日間程度商品価値を有する鮮度を保持することができる。
【0037】
以上、図示した形態の外に、青果物として葉ものが特に有効であるが根菜ものや果物にも適用が可能である。
【0038】
さらに、発酵熟成液の原材料として、米粉、そば粉、小麦粉等の穀類を加えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る青果物の鮮度保持方法を実施するための、最良の形態の工程ブロック図である。
【図2】図1の発酵熟成液を製造する工程ブロック図である。
【図3】図2の製造手段で製造された発酵熟成液の成分分析表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工された青果物を処理用液に浸漬する青果物の鮮度保持方法において、処理用液は天然物を原材料として粉砕混合し加水して発酵熟成させたものを濾過してなる発酵熟成液を含むものであることを特徴とする青果物の鮮度保持方法。
【請求項2】
請求項1の青果物の鮮度保持方法において、処理用液は水1000量に対して発酵熟成液0.2〜1量からなることを特徴とする青果物の鮮度保持方法。
【請求項3】
請求項2の青果物の鮮度保持方法において、加工された青果物は40〜60℃に保持された処理用液に90〜120秒間浸漬されることを特徴とする青果物の鮮度保持方法。
【請求項4】
請求項3の青果物の鮮度保持方法において、加工された青果物は処理用液の水切りの後に0〜20℃の冷却液に90〜120秒間浸漬されて冷却されることを特徴とする青果物の鮮度保持方法。
【請求項5】
請求項4の青果物の鮮度保持方法において、冷却液はアルカリイオン水であることを特徴とする青果物の鮮度保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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