説明

青果物保存用シート、前記シートを使用した青果物保存用品および前記シートを使用した青果物保存方法

【課題】 野菜や果物を冷蔵庫内に長時間保管しても新鮮度を保つことができる青果物保存用シートおよびこのシートを使用した青果物保存用品ならびに青果物保存方法を提供する。
【解決手段】 樹脂フィルムで形成された青果物保存用袋20の内部に、青果物保存用シート13と野菜や果物の被保存物30を収納し、袋20の開口部23を密閉し、冷蔵庫に保管する。青果物保存用シート13は、液吸収層14と樹脂フィルム層15とが積層されたものであり、樹脂フィルム層15が被保存物30に向けられる。青果物保存用シート20によって被保存物30の水分の蒸発を抑制できる。また保存用袋20の内面に凝縮した水分は青果物保存用シート13の液吸収層14で吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用または業務用の冷蔵庫内に野菜や果実を保存する際に使用するのに適した青果物保存用シート、および前記保存用シートを使用した青果物保存用品、さらに前記保存用シートを使用した青果物保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レタス、ほうれん草、キャベツ、きゅうりなどの野菜、あるいは、いちご、桃、などの果実のように比較的多くの水分を含む青果物の鮮度を保つには、低温内に保存して呼吸作用を抑制すること、および水分の蒸発を抑制することが必要である。これら野菜や果実の水分が蒸発すると、野菜や果実の鮮度が低下して風味や食感が劣化するのみならず、ビタミンCなどの栄養分も減少する。
【0003】
野菜や果実の乾燥を防止するために使用される家庭用冷蔵庫の野菜保管室は、呼吸作用を抑制できるように0〜10℃程度の庫内温度に設定され、さらに庫内の湿度の低下をある程度抑制できる構造となっている。しかし、家庭用冷蔵庫の野菜保管室は、頻繁に開放されるため、開放の度に庫内温度が上昇し、また開放の度に庫内の水分が冷蔵庫外へ放出されて庫内湿度も低下しやすい。そのため、野菜や果実を3日間以上または1週間以上さらには10日間以上保管していると、水分が蒸発し乾燥し、外見に皺が生たり変色して鮮度が低下するとともにビタミンCなどの栄養分も減少する。
【0004】
また、家庭用の野菜保管室で青果物を保管するための保存用袋も市販されている。この保存用袋は、ポリエチレンなどの樹脂フィルムで形成されているものであり、開口部に樹脂ファスナーなどの密閉手段が設けられている。保存用袋内に野菜や果実を入れて開口部を密閉して野菜保管室に保存すると、野菜や果実から蒸発する水分を保存用袋内に封入できるため、野菜や果実の乾燥を抑制できる。
【0005】
しかしながら、樹脂フィルム製の保存用袋内に野菜や果物を収納していると、野菜や果物から蒸発した水分が保存用袋の内面に凝縮して水滴が付着し、この水滴が保存用袋の内面を伝わって、野菜や果物に直接に接触しやすくなる。水分が野菜や果物に触れると、野菜や果物の表面が変質し変色し、また水分が付着した部分で雑菌が繁殖しやすくなって腐敗の原因となる。
【0006】
以下の特許文献1には、青果物鮮度保持包装袋が開示されている。この包装袋は、高分子フィルムからなる袋体に、孔径が20〜100μmの微細孔と、孔径が100〜700μmの微細孔が形成されている。この発明は、流通過程において、青果物を包装袋内に封入した状態で、青果物の呼吸作用を適度な状態に設定して鮮度低下を防止することを目的としている。
【0007】
次に、特許文献2には、エアレイドパルプで形成された吸収シート体に、微細な開孔を有する多孔性樹脂フィルムが積層されたドリップ吸収マットが開示されている。このドリップ吸収マットは、肉や魚など血汁(ドリップ)が出る食品の下に敷かれて使用されるものであり、ドリップを吸収し、またマットに接する部分で食品が変色するのを防止することを目的としている。
【特許文献1】特開2004−242521号公報
【特許文献2】特開2002−302182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の包装袋は、青果物を流通過程において常温下で保存したり輸送する際に、野菜などの呼吸作用を最適化するためのものであって、冷蔵庫の野菜保管室内において野菜などを低温下で保存することを想定したものではない。仮にこの包装袋内に野菜などを収納して冷蔵庫に保管したとしても、袋の内面に付着した水分が野菜に直接に接触するため変質や腐敗を生じやすい。
【0009】
特許文献2に記載のものは、肉や魚などから出るドリップを効果的に吸収し、吸収後のドリップが肉や魚などに触れないようにしたものであり、保存用袋内に野菜や果物を収納して冷蔵庫の野菜保管室に保管することを目的としたものではない。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、野菜や果物を低温下で保存する際に、水分の蒸発を抑制でき且つ水分の付着による変質や腐敗を抑制できるようにした青果物保存用シート、前記シートを使用した青果物保存用品および前記シートを使用した青果物保存方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明の青果物保存用シートは、液吸収層と、被保存物である野菜または果実との当接面に設けられた樹脂フィルム層とを有し、前記当接面が被保存物に向けられた状態で、前記被保存物と共に保存用袋内に収納され冷蔵庫内に保管されて使用されることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の保存用シートを、被保存物である野菜や果物と共に保存用袋内に入れて低温下で保管すると、保存用袋によって野菜や果物の乾燥を防止でき、また野菜や果物から蒸発して保存用袋の内面に凝縮し保存用袋の内面を伝わる水分を液吸収層で保持できる。したがって、野菜や果物への水分の付着による変質や変色および腐敗の促進を抑制できるようになる。
【0013】
第2の本発明の青果物保存用シートは、液吸収層と、被保存物である野菜または果実との当接面に設けられた樹脂フィルム層とを有して帯状に形成され、所定面積ごとに分離できる分離部が、液吸収層と樹脂フィルム層の双方を貫通して形成されており、ロール状に巻かれまたは折り畳まれて包装体内に収納されていることを特徴とするものである。
【0014】
上記保存用シートは、ロール状または折り畳まれて包装体内に収納されているため、使用者が必要なときに、保存用シートを分離部において分離して、野菜や果物と一緒に保存用袋内に収納して使用することができる。
【0015】
前記第1と第2の発明において、前記液吸収層は、公定水分率が1.0%以下の繊維を70質量%以上含んでいることが好ましい。
【0016】
液吸収層を公定水分率が1.0%以下の繊維を主体として構成すると、保存用袋内において野菜や果物から蒸発した水蒸気(気化した水分)を液吸収層が多量に引き込むことがないため、液吸収層の存在によって保存用袋内の湿度が過剰に低下するのを防止でき、野菜や果物の乾燥を長期間抑制できるようになる。
【0017】
よって好ましい第3の本発明の青果物保存用シートは、液吸収層と、被保存物である野菜または果実との当接面に設けられた樹脂フィルム層とを有し、前記液吸収層は、公定水分率が1.0%以下の繊維を70質量%以上含んでいることを特徴とするものである。
【0018】
第2と第3の本発明においても、前記当接面が被保存物である野菜または果実に向けられた状態で、前記被保存物と共に保存用袋内に収納され冷蔵庫内に保管されて使用されるものである。
【0019】
前記各発明において、前記樹脂フィルム層には、当接面から液吸収層に向けて貫通する多数の液透過孔が形成されていることが好ましい。
【0020】
樹脂フィルム層に液透過孔が形成されていると、野菜や果物の表面で凝縮して表面を伝わる水分を液吸収層内に引き込んで吸収できるようになる。よって、青果物と保存用シートとの接触部に水分が残るのを防止できる。
【0021】
また本発明の青果物保存用品は、前記のいずれかに記載の青果物保存用シートと、合成樹脂製の青果物保存用袋とが組み合わされていることを特徴とするものである。
【0022】
次に、本発明の野菜または果実の保存方法は、液吸収層と、被保存物である野菜または果実との当接面に設けられた樹脂フィルム層とを有する保存用シートを用い、前記保存用シートの前記当接面を被保存物に向けた状態で、被保存物と保存用シートを、合成樹脂で形成され且つ密閉手段を有する保存用袋内に収納し、庫内温度が0〜10℃に設定された冷蔵庫内に保管することを特徴とするものである。
【0023】
上記保存方法においても、前記樹脂フィルム層には、当接面から液吸収層に向けて貫通する多数の液透過孔が形成されていることが好ましく、また、前記液吸収層は、公定水分率が1.0%以下の繊維を70質量%以上含んでいることが好ましい。
【0024】
また上記保存方法において、前記液吸収層に水分を与えてから保存用袋に収納してもよい。
【0025】
液吸収層に水分を与えておくと、たとえばほうれん草などのように水分を吸収して新鮮度を保つ野菜を保存するときに、液吸収層から保存用袋内に水分を供給できるようになって、野菜の新鮮度を保ちやすくなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、被保存物である野菜や果実を低温で保存する際に、乾燥を防止でき、新鮮度を長期間保つことができる。また水分が被保存物である野菜や果物に直接付着するのを防止して、被保存物が変質し変色するのを抑制でき、さらには腐敗を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、野菜や果実などの青果物を冷蔵庫で保存する際に使用される青果物保存用品1の第1の実施の形態の全体構造を示す斜視図、図2は青果物保存用シート13が巻かれたロール体10を示す斜視図、図3は青果物保存用シート13の拡大断面図、図4は青果物保存用袋20を平坦にして示す平面図、図5は青果物の保存方法を説明する説明図である。
【0028】
図1に示す青果物保存用品1は、第1の包装体2と第2の包装体3とが組み合わされている。第1の包装体2と第2の包装体3は、共に厚紙で製造された包装箱である。第1の包装体2の内部には、図2に示す青果物保存用シート13を巻いたロール体10が収納され、第2の包装体3の内部には、図4に示す青果物保存用袋20が収納されている。
【0029】
第1の包装体2と第2の包装体3は、一体の箱として形成されてもよいし、それぞれ個別に製造された包装箱であって、接着などにより一体化されているものであってもよい。または第1の包装体2と第2の包装体3が独立しているものであり、第1の包装体2と第2の包装体3とが、セットとして店頭に並べられて販売されるものであってもよい。
【0030】
前記青果物保存用シート13は、野菜や果物と共に前記青果物保存用袋20内に収納されて使用されるものである。よって、第1の包装体2と第2の包装体3とがセットとなって販売される販売形態と、第1の包装体2のみが単独で販売される販売形態とを併用し、消費者が購入時に選択できるようにしてもよい。
【0031】
第1の包装体2は、内部が空洞の六面体であり、底面2aと天井面2b、前面2cと背面2d、さらに左右両端面2eと2fとを有している。また、天井面2bから前面2cにわたって、ミシン目2gが形成され、天井面2bには折り癖部2hが形成されている。前記ミシン目2gにおいて包装箱を構成している厚紙を切断することにより、蓋体4が分離され、この蓋体4が折り癖部2hをヒンジとして開閉できるようになる。
【0032】
第1の包装体2の内部には、図2に示すロール体10が収納されている。このロール体10は、帯状のシート11が巻かれたものである。帯状のシート11には、長手方向に一定距離を空けて分離部12が形成されている。この分離部12は、シート11を貫通する短い切断線が間隔を開けて形成されたミシン目(パーフォレーション)であり、このミシン目がシート11を横断して形成されている。第1の包装体2の前記蓋体4を空けた状態で、第1の包装体2の内部から帯状のシート11を引き出し、分離部12の部分で分離することにより個々の青果物保存用シート13を取り出すことができる。個々の青果物保存用シート13は、例えば180mm×210mmであるが、この寸法に限定されるものではない。
【0033】
図3の拡大断面図に示すように、青果物保存用シート13は、液吸収層14とこの液吸収層14の一方の面のみに積層された樹脂フィルム層15とを有している。図2に示すロール体10では、樹脂フィルム層15が内周側に向けられた状態で巻かれている。
【0034】
液吸収層14は、青果物保存用袋20の内面で凝縮し袋の内面を伝わる水分を吸収するものであり、液吸収層14は不織布である。この不織布を構成する繊維は、パルプ繊維などの天然繊維やレーヨン繊維などの再生セルロース繊維を使用することが可能であり、また液吸収層14を、不織布の代わりにパルプ繊維で構成された紙で構成することも可能である。
【0035】
液吸収層14は、青果物保存用袋20の内面を伝わった水分を吸収保持でき、しかも青果物保存用袋20内の水蒸気(気化した水分)を吸収しすぎず、袋内の湿度を比較的高い状態に保てることが必要である。そのため、液吸収層14が天然繊維やレーヨン繊維などで形成される場合、その目付けを5〜100g/m程度の薄いものとすることが好ましく、さらに好ましくは10〜50g/mである。
【0036】
または、液吸収層14は、公定水分率が1.0%以下の繊維のみで形成されることが好ましい。あるいは公定水分率が1.0%以下の繊維が70質量%以上含まれ、残りの30質量%未満が天然繊維や再生セルロース繊維で形成されることが好ましい。不織布などの繊維構造物においては、30質量%以上含まれた繊維の特性が繊維構造物の特性として反映される。したがって、天然繊維や再生セルロース繊維の含有量が30%未満であれば、液吸収層14の特性は公定水分率がほぼ1.0%以下のものとなる。この場合、液吸収層14が青果物保存用袋20内の水蒸気を吸着しにくくなるため、液吸収層14の目付けは特に制限されないが、青果物保存用袋20の内面を伝わった水分を吸収保持できるために、目付けは5g/m以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが100g/m程度である。また、液吸収層14の厚みは、0.3〜1.8mm程度である。
【0037】
公定水分率は、JISL−1030で定められているものであり、この公定水分率は、20℃で相対湿度が65%の環境下において、空気中の水分が繊維に付着するその水分付着量の繊維の絶対質量に対する割合とほぼ等価である。公定水分率は、綿が8.5%、レーヨンが11%、麻が12%、ナイロンが4.5%、アクリルが2.0%、ポリウレタンが1%、ポリエステルが0.4%、ポリエチレンが0%、ポリプロピレンが0%、ポリ塩化ビニルが0%、ビニリデンが0%である。
【0038】
よって、液吸収層14は、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル−ポリエチレンの複合合成繊維、ポリプロピレン−ポリエチレンの複合合成繊維などの疎水性の合成樹脂繊維のみで形成され、あるいは前記合成樹脂繊維を70質量%以上含むことが好ましい。また、これら合成樹脂繊維として表面に界面活性剤などの親水処理剤が塗工されたものや親水処理剤が練り込まれたものが好ましく使用される。このように公定水分率が1.0%以下の繊維、好ましくは公定水分率が0%の合成樹脂繊維のみで形成された不織布で液吸収層14を形成し、あるいは前記合成樹脂繊維が70質量%以上含まれた不織布で液吸収層14を形成すると、青果物保存用袋20内の水蒸気を吸収することがなく袋内の湿度の低下を防止できるとともに、袋の内面に凝縮して流れる水分を、不織布内の繊維間で保持することができ、水分が野菜や果物の表面に直接に触れるのを防止できる。
【0039】
液吸収層14を形成する不織布が合成樹脂繊維で形成される場合、不織布の形態としては、繊維どうしを熱風で融着接合させたエアースルー不織布で、例えば芯部がポリエステルで鞘部がポリエチレンの芯鞘型複合合成繊維が使用される。また、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ポイントボンド不織布など他の形態のものを使用することも可能である。
【0040】
樹脂フィルム層15は、液吸収層14に重ねられて、液吸収層14にホットメルト型接着剤を介して接着されている。または、樹脂フィルム層15が液吸収層14に部分的に熱融着されて一体化されたものであってもよい。青果物保存用シート13は、樹脂フィルム層15が形成されている面が、野菜や果実に直接に触れる当接面として使用される。
【0041】
樹脂フィルム層15は、多数の液透過孔15aが開孔している。液透過孔15aは、樹脂フィルムを加熱して軟化させて孔に相当する部分をエアーで吸引して開孔させるいわゆるパーフォレーション法で形成されたものであり、液透過孔15aの開孔面積は液吸収層14に向かうにしたがって徐々に狭くなり、液透過孔15aを囲む周壁15bが液吸収層14に向けて突出している。液透過孔15aの開孔面積が液吸収層14に向かうにしたがって徐々に狭くなっているため、液吸収層14に保持された水分が、樹脂フィルム層15の表面に滲み出るのを防止しやすい。例えば、液透過孔15aの開孔径(周壁15bが突出していない表面での開孔径)は0.5mmであり、その開孔面積率は80%である。
【0042】
この青果物保存用シート13は、青果物保存用袋20の内面を伝わった水分を樹脂フィルム層15と逆側の裏面やシートの端面で吸収し、前記内面を伝わった水分が野菜や果物の表面に直接に付着するのを防止するために使用される。そして、樹脂フィルム層15は、液吸収層14に吸収された水分を野菜や果物から隔離する機能を発揮するものである。そのため、樹脂フィルム層15は、液透過孔15aの開孔面積率が必ずしも大きい必要がなく、例えば開孔面積率が50%以下であってもよいし、さらには樹脂フィルム層15に液透過孔15aが全く開孔していないもので、野菜や果物との接触面積を減らすために凹凸加工されたものであってもよい。
【0043】
ただし、樹脂フィルム層15に液透過孔15aが形成されていると、野菜や果物の表面で凝縮した水分が、野菜や果物の表面を伝わって青果物保存用シート13に流れたときに、この水分を液吸収層14で吸収でき、野菜や果物の表面に水分が残るのをさらに防止しやすくなる。
【0044】
図1に示す前記第2の包装体3は、例えば天井面3aを開放できる開閉自在な箱であり、この第2の包装体3内には、図4に示す青果物保存用袋20が折り畳んで収納されている。
【0045】
青果物保存用袋20は、ポリエチレンの樹脂フィルム(樹脂シート)で形成されている。2枚の長方形の樹脂フィルムが重ねられた状態で、底辺21a、両側辺21b,21bに沿って、樹脂フィルムが熱融着されてシール線22が形成されている。上辺に開口部23が形成されこの開口部23では樹脂フィルムが融着されていない。ただし、開口部23には密閉手段となる樹脂ファスナー24が設けられている。この樹脂ファスナー24は、対面する樹脂フィルムの一方の内面に1条の凸部を有する雄型ファスナーが固定され、他方の内面に1条の凹部を有する雌型ファスナーが固定されて、雄型ファスナーと雌型ファスナーを嵌合させることにより、袋内部を密閉できるようになっている。
【0046】
この実施の形態での青果物保存用袋20の大きさは、図4に示すように扁平状態としたときに270mm×280mmである。前述のように青果物保存用シート13の大きさが180mm×210mmである場合、青果物保存用袋20の内面の面積に対する青果物保存用シートの面積の比は、25%である。本発明では、この比が15%以上であることが好ましい。この範囲内であれば、被保存物である野菜や青果物の下に青果物保存用シート13を敷いて青果物保存用袋20の内部に収納したときに、被保存物の下面が青果物保存用袋20の内面に直接触れる面積を最少にできる。また上限は100%であるが、青果物保存用シート13を青果物保存用袋20内に挿入しやすくするためには、前記比が70%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50%以下である。
【0047】
次に、前記青果物保存用シート13と青果物保存用袋20を使用した保存方法を説明する。図5は保存方法の一例を示す説明図である。
【0048】
図5では被保存物30がレタスまたはキャベツの場合を示している。ただし、被保存物30は他の青果物でもよく、水分を多く含み且つ水分が蒸発しやすいものに適している。例えば、被保存物は、ほうれん草、きゅうりなど野菜、いちご、桃などの果実である。
【0049】
図1に示す第2の包装体3から青果物保存用袋20を取り出す。また、第1の包装体2の蓋体4を開いて内部からロール状のシート11を引き出し、分離部12において切断し、長方形の青果物保存用シート13を取り出す。
【0050】
図5に示すように、青果物保存用袋20の樹脂ファスナー24の嵌合を解除して開口部23を開き、袋の底部(保存時に重力の方向へ向けられる部分)に、青果物保存用シート13を敷き、その上に被保存物30を設置する。このとき液吸収層14が青果物保存用袋20の内面に対面し、樹脂フィルム層15が被保存物30に対面する向きに青果物保存用シート13を敷設する。そして、樹脂ファスナー24を閉じて開口部23を密閉し、0〜10℃、または4〜8℃の低温環境下で保存する。家庭用の場合は、冷蔵庫の野菜保管室内に保存する。
【0051】
前記の低温下では、野菜または果実である被保存物30の呼吸が抑制されいわゆる仮死に近い状態となって、常温で保存するときよりも鮮度を長く維持できる。また、被保存物30が青果物保存用袋20内に密閉されているため、被保存物30から蒸発した水蒸気(気化した水分)が外部へ逃げることがなく、袋内の湿度をほぼ100%の高い状態に保てるため、被保存物30の乾燥を防ぎ、水分を保持した新鮮な状態を長く保つことができる。
【0052】
青果物保存用袋20内の水蒸気が袋の内面で凝縮して水滴となり、この水滴が集合し、水分が袋の内面に伝わって下へ流れることがある。青果物保存用シート13は、液吸収層14が袋の内面に対面しているため、前記水分は青果物保存用シート13の端部や裏面から液吸収層14内に吸収されて保持される。また、被保存物30の表面で凝縮した水滴が被保存物30の表面を伝わって下降すると、被保存物30と青果物保存用シート13との接触部において、水分は樹脂フィルム層15の液透過孔15aを通過して液吸収層14に吸収される。
【0053】
したがって、被保存物30の表面(特に下に向けられている部分の表面)に水分が直接に付着するのを防止でき、被保存物30の表面が変質し変色するのを抑制でき、水分の付着による雑菌の繁殖も抑制できる。
【0054】
また上記保存方法において、前記液吸収層14に水分を与えてから保存用袋20に収納してもよい。例えば、ほうれん草などのように葉を多く有する緑葉野菜は、低温下においても水分を吸収して新鮮度を保つ特性を有している。このような野菜を保存するときに、液吸収層14に予め水分を与えておくと、液吸収層14から保存用袋20内に気化した水分を供給でき、野菜の新鮮度をさらに長く持続できるようになる。
【0055】
図6は本発明の第2の実施の形態を示す断面図である。
この実施の形態では、第1の包装体102が厚紙で形成された六面体であり、上面が蓋体104となっている。蓋体104の先部に掛止片106が形成されてこの掛止片106が、前面107の内側に掛止される。そして、蓋体104を、背面108との接合部105をヒンジとして上方へ向けて回動させることで、第1の包装体102の上方を開放できる。
【0056】
第1の包装体102の内部では、図2に示した帯状のシート11が、分離部12を境として交互に折られた状態で重ねられて収納されている。この第1の包装体102においても、蓋体104を開放し、帯状のシート11を外部へ引き出し、分離部12で分離することによって、個々の青果物保存用シート13を取り出すことができる。
【実施例】
【0057】
(1)青果物保存用シート
大きさは210mm×180mm、液吸収層14は、芯部がポリエステルで鞘部がポリエチレンの芯鞘型の合成樹脂繊維(公定水分率が0%)で形成されたエースルー不織布であって、目付けが30g/mで無荷重時の厚みが0.8mmのものを使用した。樹脂フィルム層15は、坪量が24g/mのポリエチレン樹脂フィルムで、液透過孔15aの液吸収層14と逆側の表面での開孔径が0.5mm、開孔面積率が80%のものを使用した。液吸収層14と樹脂フィルム層15は、ホットメルト型接着剤をスプレー塗工して接着した。ホットメルト型接着剤の塗工量を3.0g/mとした。
【0058】
(2)青果物保存用袋
ポリエチレン樹脂フィルムで形成されたもので、図4に示すように平坦な状態のときの寸法が270×280mmのものを使用した。
【0059】
(3)保存試験1
実施例1として青果物保存用袋の内部に青果物保存用シートを敷設し、その内部にレタスを収納した。比較例1として、青果物保存用シートを使用せず、レタスを直接収納したものを使用した。実施例1と比較例1は同じ産地で同時に収穫したレタスを使用した。
【0060】
実施例1と比較例1を冷蔵庫の野菜保管室(6℃設定)に収納し、14日間保存した。野菜保管室は、毎日5回開放し、開放時間はそれぞれ1分間とした。
【0061】
(観察結果)
実施例1は、7日経過後も鮮度が落ちず、葉がみずみずしさとシャキシャキ感を持続していた。14日経過後は、葉の1枚が少しだけ褐色に変化したが、他の葉はみずみずしさとシャキシャキ感を持続していた。
【0062】
比較例1は、7日経過後に葉がしなってみずみずしさが無くなり、表面の一部が褐色に変色した。14日経過後は、表面にカビが発生して赤くなり、表面部分の生食は不可となった。
【0063】
(3)保存試験2
保存試験2として同じ産地で同時に収穫したきゅうりを2本ずつ包装して冷蔵庫に保管した。
【0064】
実施例2は、前記実施例1と同様に青果物保存用シートと青果物保存用袋を使用して包装した。比較例2−1は、前記比較例1と同様に、青果物保存用シートを使用せず、被保存物であるきゅうりを直接に青果物保存用袋に収納した。
【0065】
比較例2−2として、実施例の青果物保存用シートと同じ寸法で、パルプのみで形成された紙(目付けが40g/m)を、青果物保存用シートの代わりに使用した。
【0066】
実施例1、比較例2−1、比較例2−2の包装物を保存試験1と同様に冷蔵庫の野菜保管室に13日間保管した。野菜保管室は、毎日5回開放し、開放時間はそれぞれ1分間とした。
【0067】
(観察結果)
実施例2は、8日間経過後も表面に皺がほとんど発生せず(萎びることがなく)変色もほとんど生じなかった。13日経過後も、ほとんど皺が発生しなかった。また表面が新鮮な緑色を持続しほとんど変色は見られなかった。
【0068】
比較例2−1は、8日間経過後に表面に皺が発生し、表面がわずかに褐色に変色した。13日経過後は、皺と変色が増大していた。
【0069】
比較例2−2では、パルプ紙がきゅうりの水分を吸収して、8日間経過後に表面に皺が寄って萎びた状態となり、またパルプ紙の水分がきゅうりに直接に接触するために表面が褐色に変化した。13日経過後は皺の発生と褐色の変色がさらに増大した。
【0070】
(3)保存試験3
被保存物として保存試験2と同じきゅうり2本を使用した。比較例3として、多数の孔が開孔したポリエチレン袋を使用し、このポリエチレン袋内にきゅうりを2本収納した。この実施例と比較例を5個ずつ用意し、前記と同様に、冷蔵庫の野菜保管室に16日間保存した。野菜保管室は、毎日5回開放し、開放時間はそれぞれ1分間とした。
【0071】
保存前に同じきゅうりを10本粉砕して、ビタミンCの含有量を測定した。測定方法は「高速液体クロマトグラフ法」を採用した。また、保存後16日間経過後の実施例と比較例3のきゅうり10本を粉砕して同様にしてビタミンCの含有量を測定した。
【0072】
保存前は、ビタミンCの含有量が100g当たり11.9mgであった。保存後は、実施例では3.3mg、比較例3では1.5mgであった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すものであり、青果物保存用品の全体を示す斜視図、
【図2】青果物保存用シートが巻かれたロール体を示す斜視図、
【図3】青果物保存用シートの拡大断面図、
【図4】青果物保存用袋の平面図、
【図5】青果物保存用シートと被保存物が青果物保存用袋に収納された状態を示す断面図、
【図6】本発明の第2の実施の形態を示すものであり、第1の包装体を示す断面図、
【符号の説明】
【0074】
1 青果物保存用品
2 第1の包装体
3 第2の包装体
4 蓋体
10 ロール体
11 帯状のシート
12 分離部
13 青果物保存用シート
14 液吸収層
15 樹脂フィルム層
15a 液透過孔
20 青果物保存用袋
24 樹脂ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液吸収層と、被保存物である野菜または果実との当接面に設けられた樹脂フィルム層とを有し、前記当接面が被保存物に向けられた状態で、前記被保存物と共に保存用袋内に収納され冷蔵庫内に保管されて使用されることを特徴とする青果物保存用シート。
【請求項2】
液吸収層と、被保存物である野菜または果実との当接面に設けられた樹脂フィルム層とを有して帯状に形成され、所定面積ごとに分離できる分離部が、液吸収層と樹脂フィルム層の双方を貫通して形成されており、ロール状に巻かれまたは折り畳まれて包装体内に収納されていることを特徴とする青果物保存用シート。
【請求項3】
前記液吸収層は、公定水分率が1.0%以下の繊維を70質量%以上含んでいる請求項1または2記載の青果物保存用シート。
【請求項4】
液吸収層と、被保存物である野菜または果実との当接面に設けられた樹脂フィルム層とを有し、前記液吸収層は、公定水分率が1.0%以下の繊維を70質量%以上含んでいることを特徴とする青果物保存用シート。
【請求項5】
前記当接面が被保存物に向けられた状態で、前記被保存物と共に保存用袋内に収納され冷蔵庫内に保管されて使用されるものである請求項2または4記載の青果物保存用シート。
【請求項6】
前記樹脂フィルム層には、当接面から液吸収層に向けて貫通する多数の液透過孔が形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の青果物保存用シート。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の青果物保存用シートと、合成樹脂製の青果物保存用袋とが組み合わされていることを特徴とする青果物保存用品。
【請求項8】
液吸収層と、被保存物である野菜または果実との当接面に設けられた樹脂フィルム層とを有する保存用シートを用い、前記保存用シートの前記当接面を被保存物に向けた状態で、被保存物と保存用シートを、合成樹脂で形成され且つ密閉手段を有する保存用袋内に収納し、庫内温度が0〜10℃に設定された冷蔵庫内に保管することを特徴とする青果物保存方法。
【請求項9】
前記樹脂フィルム層には、当接面から液吸収層に向けて貫通する多数の液透過孔が形成されている請求項8記載の青果物保存方法。
【請求項10】
前記液吸収層は、公定水分率が1.0%以下の繊維を70質量%以上含んでいる請求項8または9記載の青果物保存方法。
【請求項11】
前記液吸収層に水分を与えてから保存用袋に収納する請求項8ないし10のいずれかに記載の青果物保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−288271(P2006−288271A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113059(P2005−113059)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】