説明

青果物用褐変防止剤及び青果物用褐変防止方法

【課題】
本発明は、皮を除去し中身が露出した状態において褐変しやすい青果物において、浸漬するだけで優れた褐変防止効果を発揮する青果物用褐変防止剤及び該青果物用褐変防止剤を用いた青果物用褐変防止方法を提供する。
【解決手段】
フェルラ酸を用いることでフェノール類の酸化酵素であるポリフェノールオキシダーゼの活性を低下させ、これによって青果物中の褐変防止を図ることを特徴とする強力で安全性が高いリンゴやバナナ等の青果物用褐変防止剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物、特にリンゴ、梨、桃等の果物やブロッコリー、グリーンピース、サヤエンドウ等の野菜において、皮が除去され中身が露出或いはカットした状態で褐変しやすい青果物の褐変をしにくくする青果物用褐変防止剤及びそれを用いた青果物褐変防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青果物をほぼ毎日食卓(食事・デザート・おやつ)に出している家庭は約48%と頻繁に食されている。そして、食卓には果皮を除去した状態やカットした状態で並べられるのが通常である。しかしながら、青果物の種類によっては褐変することがある。また、今日では、皮を除去する手間がかからない、ゴミがでない、すぐに食べられる、調理済などの、既に皮を除去した状態でいろいろな種類のカット青果物の組み合わせた製品がスーパー、コンビニエンスストアなどでの需要が年々増している。
【0003】
近年、消費者が青果物の鮮度や安全性への関心が高まる傾向にあり、色、艶、みずみずしさなどが最も重要な購入の目安となっている。上記のようなカット青果物等は、褐変を防止するために、ビタミンC液や食塩水に浸漬する方法が採られている。
【0004】
しかしながら、食塩水に浸漬する方法では、低温保存しても褐変を抑えられず、流通に通常3日間程かかるため、4日目には、表面の生菌数が許容限界に達するが、味をそこねない程度のうすい食塩水しか使用できないので問題があった。
「青果物の変色」は、果肉中の成分(ポリフェノール)が、酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)によって酸化されるためであると考えられているポリフェノールオキシダーゼ活性阻害を目的として「変色防止剤」などは、従来から種々開示されている(特許文献1〜3)。また、フェルラ酸に関しては、「ケイ皮酸及びケイ皮酸誘導体とシクロデキストリンを含有し、エチレン発生を抑制することによる青果物の鮮度保持方法」(特許文献4)が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−289163号公報
【特許文献2】特開平2−234649号公報
【特許文献3】特開平2−234638号公報
【特許文献4】特開平11−243853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の「変色防止剤」は、褐変防止効果が低く、コストがかかる、或いは味を低下させるなどの問題があった。本発明は、青果物、特に、皮が除去され中身が露出或いはカットした状態で褐変しやすいリンゴ、梨、桃等の果物やグリーンピース、サヤエンドウ等の野菜において、本発明の目的は、優れた褐変防止効果を発揮し、しかも低コストで、安全性が高く、味へ影響与えることなく、浸漬するだけで青果物を褐変しにくくする青果物用褐変防止剤及び該青果物用褐変防止剤を用いた青果物用褐変防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、抗酸化剤として知られている「フェルラ酸」にポリフェノールオキシダーゼの活性酸素を阻害し、野菜、果実等の青果物の変色を著しく抑制する効果があることを見出し、これに基づき本発明をなしたものである。本発明は、フェルラ酸の作用でポリフェノール類の酸化酵素であるポリフェノールオキシダーゼの活性を低下させ、これによって青果物中の褐変防止を図るものである。従って、フェルラ酸を与えることによって青果物のエチレンの発生を抑制し、これにより青果物の褐色防止を図るという考え方とは異なるものである。
【0008】
即ち、本発明は、フェルラ酸を用いることを特徴とする青果物用褐変防止剤及び該青果物用褐変防止剤を用いた青果物用褐変防止方法である。
すなわち、本発明の青果物の褐変防止剤は、フェルラ酸をポリフェノールオキシダーゼ活性阻害作用の有効成分とすることを特徴とするものであり、また、該青果物用褐変防止剤を用いた青果物用褐変防止方法を特徴とするものである。なお、本発明における「青果物の褐変」とは、ポリフェノールオキシダーゼの作用による変色を意味し、凍結させた場合や熱湯に通した場合などに生じる褐変を含むものでない。
【0009】
本発明の対象物となる「青果物」としては、リンゴ、バナナ、モモ、梨、メロン等の果物やブロッコリー、グリーンピース、サヤエンドウ等の野菜の剥皮或いはカットした果実などを挙げる事ができる。尚、上記の例はあくまでも例示であり、本発明で対象とする青果物はこれらに限定されず、その他の青果物にも適用可能である。
【発明の効果】
【0010】
以上に述べたように、本発明によれば、従来の青果物用褐変防止剤に比べ、青果物の褐変防止が長期にわたって保持できる青果物用褐変防止剤及び該青果物用褐変防止剤を用いた青果物用褐変防止方法が提供される。また、本発明の褐変防止剤は、原料が天然物であるから衛生的にも安全である。従って、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、外食産業、さらに、機内食用等への販売が拡大される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の製造方法は、まず果皮を除去、或いは除去しないまま適当な大きさ、例えば、8等分或いはスライス等にカットした青果物を当該青果物用褐変防止剤中に浸漬させるもしくは噴霧する。
フェルラ酸水溶液で処理する。カットした青果物は、中身が露出しているため、カットした時点から褐変現象が進行する事から、できるだけ速やかに前期水溶液で処理することが肝要である。
本発明の「青果物用褐変防止剤」におけるフェルラ酸の濃度は、0.001〜5w/w%、中でも0.5〜3w/w%が好ましい。この濃度範囲内において、適用する果実の種類、品質、重量などによって適宜変更する。そして、本発明の褐変防止剤は、フェルラ酸を上記範囲内となるように水に溶解させるといった簡便な方法で得ることができる。尚、青果物を本発明の青果物用褐変防止剤に浸漬処理する場合、15分間程度以上の浸漬により十分な効果が得られる。以下実施例を示すことにより、この発明の効果をより明確なものとするが、本発明は特にこの実施例に限定されるものではない。
【0012】
以上のように青果物用褐変防止剤に浸漬された青果物は取り出され、食卓に盛り付け又は脱水後、ポリ袋等の容器に充填・密封され、出荷される。
【0013】
(実施例1)リンゴ400gの皮と芯をとってスライスし、100gずつ4群に分け、a, b, c,dとした。上記a, bの2群を製剤A, Bの水溶液200mLに5分間浸漬した後水を切り、トレイに引き上げラップで覆い室温(20℃)で保管した。cは比較区として水200mLに5分浸漬後同様に保管した。dは、対照区として無処理で保管した。経時的な褐変は下記のとおりであった。褐変の程度は-、±、+、++、+++で表し、+が増えるにつれて褐変が進んでいることを示す。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
(実施例2) 梨400gの皮と芯をとってスライスし、100gずつ4群に分け、a, b, c,dとした。上記a, bの2群を製剤A, Bの水溶液200mLに15分間浸漬した後水を切り、トレイに引き上げラップで覆い室温(20℃)で保管した。cは比較区として水200mLに5分浸漬後同様に保管した。dは対照区として無処理で保管した。得られた青果物用褐変防止剤処理が施された梨の外観を実施例1と同様に判定し、その結果を表3に示した。
【0017】
【表3】

【0018】
(実施例3) ブロッコリー400gをカットし、100gずつ4群に分け、a, b, c, dとした。上記a, bの2群を製剤A, Bの水溶液200mLに15分間浸漬した後水を切り、トレイに引き上げラップで覆い室温(20℃)で保管した。cは比較区として水200mLに5分浸漬後同様に保管した。dは対照区として無処理で保管した。得られた青果物用褐変防止剤処理が施された梨の外観を実施例1と同様に判定し、その結果を表4に示した。
【0019】
【表4】

【0020】
(実施例4) グリーンピース100gずつ4群に分け、a, b, c, dとした。上記a, bの2群を製剤A, Bの水溶液200mLに15分間浸漬した後水を切り、トレイに引き上げラップで覆い室温(20℃)で保管した。cは比較区として水200mLに5分浸漬後同様に保管した。dは対照区として無処理で保管した。得られた青果物用褐変防止剤処理が施された梨の外観を実施例1と同様に判定し、その結果を表5に示した。
【0021】
【表5】

【0022】
表2、3、4、5から明らかなように、本発明の青果物用褐変防止剤に浸漬したリンゴ又は梨は24時間、ブロッコリー又はサヤインゲンは3日間経過後においても外観は全て±以下を示しており、長時間において表皮を除去した直後の中身の色に近い色を呈している。一方、水で処理したものは全て30分経過後で既に青果物の褐変が進んでいることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルラ酸を含有することを特徴とする青果物用褐変防止剤。
【請求項2】
中身が露出或いはカットした青果物を請求項1記載の褐変防止剤に浸漬することを特徴とする青果物用褐変防止方法。
【請求項3】
中身が露出或いはカットした青果物を請求項1記載の褐変防止剤を噴霧することを特徴とする青果物用褐変防止方法。
【請求項4】
中身が露出或いはカットした青果物を請求項1記載の褐変防止剤をまぶすことを特徴とする青果物用褐変防止方法。