説明

青色発光蛍光体粒子

【課題】基本組成式がMeMgSi26:Eu2+で表される、ディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子(但し、Meは、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる一種以上のアルカリ土類金属元素)のXe2分子線(波長172nmの真空紫外線)の励起による発光輝度を向上させる。
【解決手段】青色発光蛍光体粒子の表面を、厚さが2〜20nmの範囲にあるアモルファス二酸化珪素層で被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本組成式がMeMgSi26:Eu2+で表される、ディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子に関し、特にXe2分子線に相当する波長172nmの真空紫外線の励起による発光輝度が向上した青色発光蛍光体粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー表示のプラズマディスプレイパネル(以下、単にPDPという)は、希ガスの放電により発生した真空紫外線を蛍光体に照射して、蛍光体を励起させることにより、青色、緑色、赤色の可視光を得て、その組み合わせにより画像を表示する。希ガスとしては、一般にXe(キセノン)とNe(ネオン)との混合ガスが用いられている。この混合ガスでは、Xeが放電ガスであり、Neはバッファガスである。Xeの放電により発生する主な真空紫外線は、波長147nmのXeの共鳴線と、波長172nm(173nmと記載されている文献もある)のXe2の分子線である。通常、蛍光体の発光に利用されるのは、波長147nmのXe共鳴線である。
【0003】
このようなPDPに用いられる青色発光用の蛍光体粒子としては、基本組成式がBaMgAl1017:Eu2+で表されるBAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子や、基本組成式がMeMgSi26:Eu2+で表される、ディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子(但し、Meは、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる一種以上のアルカリ土類金属元素)が知られている。
【0004】
ディオプサイド結晶構造の青色発光蛍光体粒子は、BAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子と比べて、結晶構造が安定で経時的な安定性が高いという利点がある。しかし、ディオプサイド結晶構造の青色発光蛍光体粒子は、BAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子と比べて、発光輝度が低いという問題がある。
【0005】
特に最近では、PDPの発光効率を向上させることを目的として、希ガス中のXeガスの割合を多くする傾向にある。この希ガス中のXeガスの割合が多くなると、Xeの放電により発生する真空紫外線は、波長172nmの分子線の割合が多くなる。このため、波長172nmの真空紫外線での励起による発光輝度を向上させることが重要である。
【0006】
波長172nmの真空紫外線での励起による発光輝度が向上したディオプサイド結晶構造の青色発光蛍光体粒子として、特許文献1には、カルシウム源粉末、ユウロピウム源粉末、マグネシウム源粉末及び珪素源粉末を、所定量のフッ素源と共に還元性雰囲気下にて加熱焼成して製造した、一般式がCaMgSi26:Eu2+で表される青色発光蛍光体粒子が開示されている。この特許文献1によれば、フッ素源の量を最適化することによって、波長172nmの真空紫外線での励起による発光輝度が10〜30%程度向上する。しかしながら、実施例に記載されている青色発光蛍光体粒子の発光輝度は、BAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子の発光輝度100とした相対値で49〜55であり、従ってディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子については、さらなる発光輝度の向上が望まれる。
【特許文献1】特開2007−217510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特にXe2分子線の励起による発光輝度が向上した基本組成式がMeMgSi26:Eu2+で表される、ディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基本組成式がMeMgSi26:Eu2+で表される、ディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子(但し、Meは、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる一種以上のアルカリ土類金属元素)であって、厚さが2〜20nmの範囲にあるアモルファス二酸化珪素層で表面が被覆されていることを特徴とする青色発光蛍光体粒子にある。
アモルファス二酸化珪素層の厚さは、2〜10nmの範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の青色発光蛍光体粒子は、Xe2分子線に相当する波長172nmの真空紫外線の励起による輝度が、従来のディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体と比較して、高い値を示す。従って、本発明の青色発光蛍光体粒子は、希ガス中のXeガスの割合が多いPDP用の青色発光蛍光体として有利に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の青色発光蛍光体粒子は、基本組成式がMeMgSi26:Eu2+で表される、ディオプサイド(CaMgSi26)結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子からなる。基本組成式中のMeは、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる一種以上のアルカリ土類金属元素である。Meは、Ca単体、またはCaとSrの組み合わせであることが好ましい。CaとSrの組み合わせの場合、CaとSrとの比率は、原子比で9:1〜1:9の範囲にあることが好ましい。
【0011】
本発明の青色発光蛍光体粒子は、その表面が厚さ2〜20nmの範囲、好ましくは2〜10nmの範囲にあるアモルファス二酸化珪素層で被覆されている点に特徴がある。アモルファス二酸化珪素層がアモルファスであること及びその厚みは、透過型電子顕微鏡を用いて二酸化珪素層の断面の構造を観察することによって確認することができる。
【0012】
本発明の青色発光蛍光体粒子を構成するMe、Mg、Si及びEuの各原子の比率は、ディオプサイド結晶構造を形成する比率である限り特に制限はない。通常、Me、Mg、Si及びEuの各原子の比率は、Mgを1として、Meが0.8〜1.2の範囲、Siが1.8〜2.4の範囲、Euが0.005〜0.1の範囲にあり、Eu/(Me+Eu)は、0.004〜0.11の範囲にある。
【0013】
ディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子は、Me源粉末、Mg源粉末、Si源粉末及びEu源粉末を、ディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子を生成する割合にて混合して、得られた粉末混合物を還元性雰囲気下にて、焼成することによって製造することができる。
【0014】
Me源粉末、Mg源粉末、Si源粉末及びEu源粉末の各原料粉末は、酸化物、もしくは炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、フッ化物及び塩化物などの加熱より酸化物を生成する化合物であることが好ましい。Me源粉末、Mg源粉末、Si源粉末又はEu源粉末の一部もしくは全部に、融剤(フラックス)として作用するフッ化物もしくは塩化物を用いることが好ましい。
【0015】
粉末混合物は、還元性雰囲気下での焼成の前に、大気雰囲気下にて、600〜900℃の温度で仮焼してもよい。
【0016】
粉末混合物を還元性雰囲気下にて焼成する際の温度は、1000〜1500℃の範囲にあることが好ましい。粉末混合物の焼成を行なう際の還元性雰囲気は、水素ガスを1〜10体積%の範囲にて含むアルゴンガスあるいは窒素ガス雰囲気であることが好ましい。焼成時間は、一般に1〜100時間の範囲である。
【0017】
上記のようにして得られる青色発光蛍光体粒子の発光輝度を向上させるために、青色発光蛍光体粒子を大気雰囲気中にて再焼成するアニール処理や、酸水溶液に接触させる酸処理を行なってもよい。
【0018】
アニール処理の処理温度は、300〜1500℃の範囲、好ましくは400〜1000℃の範囲、より好ましくは550〜1000℃の範囲である。処理時間は、一般に10分〜10時間の範囲である。
【0019】
酸処理に用いる酸溶液の例としては塩酸水溶液、硝酸水溶液及び硫酸水溶液が挙げられる。特に塩酸水溶液が好ましい。酸溶液の濃度は0.05〜10モル/Lの範囲にあることが好ましい。処理時間は、一般に10分〜10時間の範囲である。
【0020】
青色発光蛍光体粒子の表面をアモルファス二酸化珪素層で被覆する方法としては、アルコール溶媒中にて、蛍光体粒子、加水分解性珪素化合物及び水を混合して、加水分解性珪素化合物を加水分解縮合させ、生成した珪素含有化合物を蛍光体粒子の表面に付着させることによって珪素含有化合物層付き蛍光体粒子を得て、次いで該珪素含有化合物層付き蛍光体粒子を焼成する方法が挙げられる。
【0021】
アルコール溶媒の例としては、メタノール、エタノールなどの炭素原子数1〜6の低級アルコールを挙げることができる。
【0022】
加水分解性珪素化合物の例としては、一般式SiR1a24-aで表される化合物を挙げることができる。この一般式において、R1は有機官能基、R2は加水分解性官能基、aは、0〜2の整数を表す。
【0023】
有機官能基R1の例としては、アルキル基(例、メチル基、エチル基)及びアルケニル基(例、ビニル基、アリル基)などの炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、炭素原子数が6以下であることが好ましい。加水分解性官能基R2は、加水分解反応によりシラノール基を生成する官能基であり、その例としては、アルコシキ基(例、メトキシ基、エトキシ基)及びハロゲン元素(例、塩素、臭素)を挙げることができる。
加水分解性珪素化合物は、反応速度の観点から、テトラメチルオルソシリケート及びテトラエチルオルソシリケート(TEOS)又は四塩化珪素であることが好ましい。
【0024】
加水分解性珪素化合物の加水分解縮合は、必要に応じてアルカリ触媒の存在下にて行なう。アルカリ触媒の例としては、アンモニア、及び水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物を挙げることができる。
【0025】
珪素含有化合物層付き蛍光体粒子の焼成温度は、一般に750℃以下、好ましくは350〜700℃の範囲である。焼成時間は、一般に10分〜10時間の範囲である。
【実施例】
【0026】
[比較例1]
Ca:Mg:Si:Euのモル比が、0.975:1:2.000:0.025となるように炭酸カルシウム粉末(純度:99.99質量%、平均粒子径:3.87μm)15.01g、塩基性炭酸マグネシウム粉末(純度:99.99質量%、平均粒子径:11.08μm)15.58g、二酸化珪素粉末(純度:99.9質量%、平均粒子径:3.87μm)20.00g、酸化ユウロピウム(純度:99.9質量%、平均粒子径:2.71μm)0.733g、塩化カルシウム粉末(純度:99.9質量%)3.675gをそれぞれ秤量した。なお、各原料粉末の平均粒子径はいずれもレーザ回折散乱法により測定した値である。秤量した各原料粉末を、純水750mLと共にボールミルに投入して、24時間湿式混合した後、乾燥して、粉末混合物を得た。
【0027】
得られた粉末混合物を、アルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気中にて、850℃の温度で3時間焼成し、次いで室温まで放冷した後、2体積%水素−98体積%アルゴンの混合ガス雰囲気中にて、1050℃の温度で3時間焼成して、粉末焼成物を得た。
【0028】
得られた粉末焼成物を、濃度0.1モル/Lの塩酸水溶液に30分間接触させた後、水で洗浄し、乾燥した後、アルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気中にて600℃の温度で1時間アニールした。
【0029】
アニール後の粉末焼成物のX線回折パターンを測定した結果、粉末焼成物はディオプサイド結晶構造を有することが確認された。また、粉末焼成物に波長172nmの真空紫外線を照射した結果、青色の発光が確認された。これらの結果から、粉末焼成物はディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子であることが確認された。青色発光蛍光体粒子の平均粒子径は2.8μmであった。
【0030】
[実施例1]
上記比較例1にて製造したディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子2.5gと、エタノール50mLとを、100mLビーカーに投入し、青色発光蛍光体粒子をエタノール中に分散させた。分散液を撹拌しながら、該分散液にテトラエチルオルソシリケート(純度:99.999質量%)5mL(青色発光蛍光体粒子に対する二酸化珪素換算量として50質量%)を添加した。次いで、分散液に濃度2.8質量%のアンモニア水2mLを10分かけて滴下し、さらに、1時間撹拌を続けた。撹拌終了後、分散液を遠心分離して、青色発光蛍光体粒子を回収した。回収した青色発光蛍光体粒子を、真空乾燥した後、アルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気中にて、400℃の温度で1時間焼成した。焼成後の青色発光蛍光体粒子の表面を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−2010F型)を用いて観察した結果、青色発光蛍光体粒子の表面には厚さ9nmの均一なアモルファス二酸化珪素層が形成されていることが確認された。
【0031】
得られたアモルファス二酸化珪素層付き青色発光蛍光体粒子の発光スペクトルを励起波長172nmとして分光蛍光光度計により測定し、その発光スペクトルの最大ピーク値を発光輝度として計測した。この発光輝度を、同じ条件で測定した比較例1の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表1に示す。
【0032】
[実施例2]
青色発光蛍光体粒子2.5gに対して、テトラエチルオルソシリケートの添加量を3mL(青色発光蛍光体粒子に対する二酸化珪素換算量として30質量%)とした以外は、実施例1と同様にして、青色発光蛍光体粒子の表面にアモルファス二酸化珪素層を形成した。青色発光蛍光体粒子の表面を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果、青色発光蛍光体粒子の表面には厚さ5nmの均一なアモルファス二酸化珪素層が形成されていることが確認された。
【0033】
得られたアモルファス二酸化珪素層付き青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例1の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表1に示す。
【0034】
[実施例3]
青色発光蛍光体粒子2.5gに対して、テトラエチルオルソシリケートの添加量を2mL(青色発光蛍光体粒子に対する二酸化珪素換算量として20質量%)とした以外は、実施例1と同様にして、青色発光蛍光体粒子の表面にアモルファス二酸化珪素層を形成した。青色発光蛍光体粒子の表面を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果、青色発光蛍光体粒子の表面には厚さ3nmの均一なアモルファス二酸化珪素層が形成されていることが確認された。
【0035】
得られたアモルファス二酸化珪素層付き青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例1の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表1に示す。
【0036】
[実施例4]
青色発光蛍光体粒子2.5gに対して、テトラエチルオルソシリケートの添加量を1mL(青色発光蛍光体粒子に対する二酸化珪素換算量として10質量%)とした以外は、実施例1と同様にして、青色発光蛍光体粒子の表面にアモルファス二酸化珪素層を形成した。青色発光蛍光体粒子の表面を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果、青色発光蛍光体粒子の表面には厚さ2nmの均一なアモルファス二酸化珪素層が形成されていることが確認された。
【0037】
得られたアモルファス二酸化珪素層付き青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例1の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表1に示す。
【0038】
[比較例2]
青色発光蛍光体粒子2.5gに対して、テトラエチルオルソシリケートの添加量を0.5mL(青色発光蛍光体粒子に対する二酸化珪素換算量として5質量%)とした以外は、実施例1と同様にして、青色発光蛍光体粒子の表面にアモルファス二酸化珪素層を形成した。得られた青色発光蛍光体粒子の表面を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果、青色発光蛍光体粒子の表面には厚さ1nmの均一なアモルファス二酸化珪素層が形成されていることが確認された。
【0039】
得られたアモルファス二酸化珪素層付き青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例1の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表1に示す。
【0040】
[比較例3]
市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例1の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表1に示す。
【0041】
表1
────────────────────────────────────────
アモルファス二酸化素層 相対発光輝度*
の厚み(nm) (対BAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子)
────────────────────────────────────────
実施例1 9 103(56.6)
実施例2 5 104(57.1)
実施例3 3 107(58.8)
実施例4 2 107(58.8)
────────────────────────────────────────
比較例1 0 100(54.9)
比較例2 1 101(55.5)
比較例3 0 182(100)
────────────────────────────────────────
*)相対発光輝度は、比較例1の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値。括弧内は、比較例3(市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子)の発光輝度を100とした相対値。
【0042】
表1の結果から明らかなように、ディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子(CaMgSi26:Eu2+)の表面にアモルファス二酸化珪素層を2nm以上の厚さとなるように形成することにより、Xe2分子線に相当する波長172nmの真空紫外線の励起による発光輝度が向上する。
【0043】
[比較例4]
Ca:Sr:Mg:Si:Euのモル比が、0.475:0.500:1:2.000:0.025となるように、炭酸カルシウム粉末(純度:99.99質量%、平均粒子径:3.87μm)5.417g、炭酸ストロンチウム粉末(純度:99.99質量%、平均粒子径:9.08μm)12.30g、塩基性炭酸マグネシウム粉末(純度:99.99質量%、平均粒子径:11.08μm)15.58g、二酸化珪素粉末(純度:99.9質量%、平均粒子径:3.87μm)20.00g、酸化ユウロピウム(純度:99.9質量%、平均粒子径:2.71μm)0.733g、塩化カルシウム粉末(純度:99.9質量%)3.675gをそれぞれ秤量した。なお、各原料粉末の平均粒子径はいずれもレーザ回折散乱法により測定した値である。秤量した各原料粉末を、純水750mLと共にボールミルに投入して、24時間湿式混合した後、乾燥して、粉末混合物を得た。
【0044】
得られた粉末混合物を、アルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気中にて、850℃の温度で3時間焼成し、次いで室温まで放冷した後、2体積%水素−98体積%アルゴンの混合ガス雰囲気中にて、1050℃の温度で3時間焼成して、粉末焼成物を得た。
【0045】
得られた粉末焼成物を、濃度0.1モル/Lの塩酸水溶液に30分間接触させた後、水で洗浄し、乾燥した後、アルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気中にて600℃の温度で1時間アニールした。
【0046】
アニール後の粉末焼成物のX線回折パターンを測定した結果、粉末焼成物はディオプサイド結晶構造を有することが確認された。また、粉末焼成物に波長172nmの真空紫外線を照射した結果、青色の発光が確認された。これらの結果から、粉末焼成物はディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子であることが確認された。青色発光蛍光体粒子の平均粒子径は5.0μmであった。
【0047】
[実施例5]
上記比較例4にて製造したディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子2.5gと、エタノール50mLとを、100mLビーカーに投入し、青色発光蛍光体粒子をエタノール中に分散させた。分散液を撹拌しながら、該分散液にテトラエチルオルソシリケート(純度:99.999質量%)5mL(青色発光蛍光体粒子に対する二酸化珪素換算量として50質量%)を添加した。次いで、分散液に濃度2.8質量%のアンモニア水2mLを10分かけて滴下し、さらに、1時間撹拌を続けた。撹拌終了後、分散液を遠心分離して、青色発光蛍光体粒子を回収した。回収した青色発光蛍光体粒子を、真空乾燥した後、アルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気中にて、400℃の温度で1時間焼成した。焼成後の青色発光蛍光体粒子の表面を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果、青色発光蛍光体粒子の表面には厚さ13nmの均一なアモルファス二酸化珪素層が形成されていることが確認された。
【0048】
得られたアモルファス二酸化珪素層付き青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例4の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表2に示す。
【0049】
[実施例6]
青色発光蛍光体粒子2.5gに対して、テトラエチルオルソシリケートの添加量を3mL(青色発光蛍光体粒子に対する二酸化珪素換算量として30質量%)とした以外は、実施例5と同様にして、青色発光蛍光体粒子の表面にアモルファス二酸化珪素層を形成した。青色発光蛍光体粒子の表面を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果、青色発光蛍光体粒子の表面には厚さ8nmの均一なアモルファス二酸化珪素層が形成されていることが確認された。
【0050】
得られたアモルファス二酸化珪素層付き青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例4の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表2に示す。
【0051】
[実施例7]
青色発光蛍光体粒子2.5gに対して、テトラエチルオルソシリケートの添加量を2mL(青色発光蛍光体粒子に対する二酸化珪素換算量として20質量%)とした以外は、実施例5と同様にして、青色発光蛍光体粒子の表面にアモルファス二酸化珪素層を形成した。青色発光蛍光体粒子の表面を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果、青色発光蛍光体粒子の表面には厚さ5nmの均一なアモルファス二酸化珪素層が形成されていることが確認された。
【0052】
得られたアモルファス二酸化珪素層付き青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例4の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表2に示す。
【0053】
[実施例8]
青色発光蛍光体粒子2.5gに対して、テトラエチルオルソシリケートの添加量を1mL(青色発光蛍光体粒子に対する二酸化珪素換算量として10質量%)とした以外は、実施例5と同様にして、青色発光蛍光体粒子の表面にアモルファス二酸化珪素層を形成した。青色発光蛍光体粒子の表面を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果、青色発光蛍光体粒子の表面には厚さ3nmの均一なアモルファス二酸化珪素層が形成されていることが確認された。
【0054】
得られたアモルファス二酸化珪素層付き青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例4の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表2に示す。
【0055】
[比較例5]
市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子の発光輝度を実施例1と同様に測定した。この発光輝度を、比較例4の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値として下記の表2に示す。
【0056】
表2
────────────────────────────────────────
アモルファス二酸化素層 相対発光輝度*
の厚み(nm) (対BAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子)
────────────────────────────────────────
実施例5 13 103(60.6)
実施例6 8 108(63.5)
実施例7 5 105(61.8)
実施例8 3 103(60.6)
────────────────────────────────────────
比較例4 0 100(58.8)
比較例5 0 170(100)
────────────────────────────────────────
*)相対発光輝度は、比較例4の青色発光蛍光体粒子の発光輝度を100とした相対値。括弧内は、比較例5(市販のBAM:Eu2+青色発光蛍光体粒子)の発光輝度を100とした相対値。
【0057】
表2の結果から明らかなように、カルシウムの一部をストロンチウムに置換したディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子[(Ca,Sr)MgSi26:Eu2+]についても、表面に2nm以上の厚さのアモルファス二酸化珪素層を形成することにより、Xe2分子線に相当する波長172nmの真空紫外線の励起による発光輝度が向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本組成式がMeMgSi26:Eu2+で表される、ディオプサイド結晶構造を有する青色発光蛍光体粒子(但し、Meは、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる一種以上のアルカリ土類金属元素)であって、厚さが2〜20nmの範囲にあるアモルファス二酸化珪素層で表面が被覆されていることを特徴とする青色発光蛍光体粒子。
【請求項2】
アモルファス二酸化珪素層の厚さが、2〜10nmの範囲にある請求項1に記載の青色発光蛍光体粒子。