説明

静止誘導電気機器およびその製造方法

【課題】組み立て(製造)が容易な静止誘導電気機器およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 実施形態の静止誘導電気機器は,碍管と,前記碍管の一端に配置され,送電線に接続される接続導体と,前記碍管内に配置され,前記接続導体に接続される導体と,静止誘導電気機器本体を覆い,前記碍管の他端と対応する開口部を有するケーシングと,前記静止誘導電気機器本体から前記開口部に向かって伸びるリードと,前記リードの端部に配置される端子と,前記碍管の他端と前記開口部とを取り外し可能に封止するスペーサと,前記端子と取り外し可能に接続される電極と,前記導体と取り外し可能に接続される接合部と,を有し,前記スペーサを貫通する電気接続部材と,前記碍管内に充填される第1の絶縁媒体と,前記ケーシング内に充填される第2の絶縁媒体と,を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は,静止誘導電気機器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所から工場,ビルまたは家庭などの需要家に送電する系統の途中において,変圧器やリアクトル等の静止誘導電気機器が用いられている。静止誘導電気機器では,例えば,液体絶縁媒体(絶縁油等)を用いて,静止誘導電気機器本体(変圧器やリアクトル等の本体)が絶縁される。ここで,静止誘導電気機器と気中架線(送電線等)の接続には,ブッシングを用いることが一般的である。例えば,静止誘導電気機器外の気中ブッシングおよび静止誘導電気機器内の油中ブッシングを介して,送電線からの電力が静止誘導電気機器本体に導入される。
【0003】
静止誘導電気機器がGIS(Gas Insulated Switch:ガス絶縁開閉装置)等のガス絶縁機器に接続される場合がある。この場合,気中ブッシングに替えて,スペーサを用いて,静止誘導電気機器側の液体絶縁媒体と,ガス絶縁機器側の気体絶縁媒体が仕切られる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−215630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,組み立て(製造)が容易な静止誘導電気機器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の静止誘導電気機器は,碍管と,前記碍管の一端に配置され,送電線に接続される接続導体と,前記碍管内に配置され,前記接続導体に接続される導体と,静止誘導電気機器本体を覆い,前記碍管の他端と対応する開口部を有するケーシングと,前記静止誘導電気機器本体から前記開口部に向かって伸びるリードと,前記リードの端部に配置される端子と,前記碍管の他端と前記開口部とを取り外し可能に封止するスペーサと,前記端子と取り外し可能に接続される電極と,前記導体と取り外し可能に接続される接合部と,を有し,前記スペーサを貫通する電気接続部材と,前記碍管内に充填される第1の絶縁媒体と,前記ケーシング内に充填される第2の絶縁媒体と,を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,組み立て(製造)が容易な静止誘導電気機器およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態に係る静止誘導電気機器10の構成図である。
【図2】静止誘導電気機器10の分解図である。
【図3】静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30,中間部40の結合構造を表す断面図である。
【図4A】静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30,中間部40の結合構造を表す断面図である。
【図4B】静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30,中間部40の結合構造を表す断面図である。
【図5A】静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30,中間部40の結合構造を表す断面図である。
【図5B】静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30,中間部40の結合構造を表す断面図である。
【図6】静止誘導電気機器10の組み立て工程の一例を示す図である。
【図7】静止誘導電気機器10の組み立て工程の一例を示す図である。
【図8】静止誘導電気機器10の組み立て工程の一例を示す図である。
【図9】静止誘導電気機器10の組み立て工程の他の例を示す図である。
【図10】静止誘導電気機器10の組み立て工程の他の例を示す図である。
【図11】静止誘導電気機器10の組み立て工程の他の例を示す図である。
【図12】比較例に係る静止誘導電気機器10xの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,図面を参照して,静止誘導電気機器接続装置の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は,一実施形態に係る静止誘導電気機器10の構成図である。図2は,静止誘導電気機器10を分解した状態を表す分解図である。静止誘導電気機器10は,静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30,中間部40を有し,規定の電圧,電流で課電された送電線PLと接続される。図2において,静止誘導電気機器10は,静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30,中間部40に分解されている。
【0011】
静止誘導電気機器本体部20は,静止誘導電気機器本体21,ケーシング22,絶縁媒体23,リード24,端子25を有する。
【0012】
静止誘導電気機器本体21は,変圧器やリアクトル等の静止した状態で静電誘導により動作する機器である。ここでは,静止誘導電気機器本体21が変圧器であるとする。
【0013】
ケーシング22は,静止誘導電気機器本体21を外界から保護する外殻である。ケーシング22は,上板22a,底板22b,側板22c,斜板22dを有する。上板22a,底板22b,側板22c,斜板22dはそれぞれ,静止誘導電気機器本体21の上方向,下方向,横方向,斜め上方向に配置される。ケーシング22は,静止誘導電気機器本体21を保持する内部空間を有する。
【0014】
ケーシング22の内部空間内に,絶縁媒体23が充填される。絶縁媒体23は,各種絶縁油(鉱油,シリコン油,エステル油,なたね油等),または各種絶縁ガス(SF,CO,N,空気等)からなり,静止誘導電気機器本体21を外界から絶縁する。絶縁媒体23は,ジェル(シリコンジェル等),発泡性固体(ポリエチレン発泡体等)であっても良い。
【0015】
ケーシング22は,開口部26,注入部27を有する。
【0016】
開口部26は,静止誘導電気機器本体部20を気中ブッシング部30および中間部40に連結するためのものである。ここでは,開口部26は,上板22aに配置されている。但し,側板22cまたは斜板22dに,開口部26を配置しても良い。
【0017】
開口部26には,略中空円盤形状の台座28を有する。台座28に,気中ブッシング部30および中間部40が連結される。この連結の詳細は後述する。
【0018】
注入部27は,ケーシング22の内部空間に絶縁媒体23を注入するための注入口を有する。注入部27は,その注入口を開閉可能なバルブを有する。
【0019】
リード24は,静止誘導電気機器本体21に電力を供給する導体である。リード24は,静止誘導電気機器本体21から開口部26に向かって伸びている。
【0020】
端子25は,後述の,中間部40の電極42に接続され,電極42からの電力をリード24に供給する。この接続のため,端子25は,電極42と対応する形状を有する。
【0021】
気中ブッシング部30は,気中接続導体31,碍管32,絶縁媒体33,導体34を有する。
【0022】
気中接続導体31は,柱状(例えば,円柱形状)の導体であり,送電線PLに接続され,送電線PLからの電力を静止誘導電気機器10に導入する。
【0023】
碍管32は,導体34を外界から保護するためのものであり,FRP(fiber reinforced plastics:繊維強化プラスチック),シリコーン等の高分子絶縁材料から構成される。碍管32は,略筒形状(例えば,円筒形状)の碍管本体32aと,略中空円盤形状の連結部32bを有する。碍管本体32aの内部に,導体34が配置され,絶縁媒体33が充填される。連結部32bは,気中ブッシング部30を静止誘導電気機器本体部20および中間部40に連結するためのものである。なお,この詳細は後述する。
【0024】
碍管32は,その内部に絶縁媒体33を充填するための注入部36を有する。注入部36は,その注入口を開閉可能なバルブを有する。
【0025】
絶縁媒体33は,各種絶縁ガス(SF,CO,N,空気等)からなり,導体34を外界から絶縁する。絶縁媒体33は,ジェル(シリコンジェル等),発泡性固体(ポリエチレン発泡体等)であっても良い。絶縁媒体33は,絶縁媒体23と同種,別種の材料のいずれでも利用できる。例えば,絶縁媒体23を絶縁油,絶縁媒体33を絶縁ガスとすることができる。
なお,絶縁媒体33を,各種絶縁ガス(SF,CO,N,空気等),ジェル(シリコンジェル等),発泡性固体(ポリエチレン発泡体等)とすることで,気中ブッシング部30が破壊された場合でも,絶縁が保たれるとともに,絶縁油が漏れることを防止できる。
【0026】
導体34は,略筒形状(例えば,略円筒形状)であり,気中接続導体31に接続される一端と,中間部40(スライドコンタクト接合部43)に接続される他端とを有する。
【0027】
導体34の他端の筒内(凹部)に後述のスライドコンタクト接合部43が挿入,固定される。導体34の他端の筒内(凹部)にバネ機構35が配置され,スライドコンタクト接合部43の保持,電気的接続の確実性が確保される。バネ機構35は,略筒形状(例えば,略円筒形状)であり,筒の径方向に変形可能であり,導体34の筒内(凹部)に挿入されたスライドコンタクト接合部43を押圧する。
【0028】
中間部40は,スペーサ41,電極42,スライドコンタクト接合部43,結合部44を有する。
【0029】
スペーサ41は,静止誘導電気機器本体部20と気中ブッシング部30との内部を仕切るためのものであり,エポキシ樹脂,メラミン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ポリイミド樹脂,フェノール樹脂などの樹脂で構成される。
【0030】
スペーサ41は,略中空円盤形状の連結部41a,略円盤形状の平板部41b,略円錐台筒形状の移行部41cを有する。連結部41aは,中間部40を気中ブッシング部30および静止誘導電気機器本体部20に連結するためのものである。なお,この詳細は後述する。平板部41bに,電極42,スライドコンタクト接合部43,結合部44が取り付けられる。移行部41cは,連結部41aと平板部41bとを接続する。
【0031】
電極42,スライドコンタクト接合部43,結合部44は,一体的に形成され,平板部41b(スペーサ41)を貫通して,静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30を電気的に接続する電気接続部材として機能する。
【0032】
電極42は,端子25と対応する形状を有し,端子25と係合して,電気的に接続される。
【0033】
スライドコンタクト接合部43は,導体34の筒内(凹部)に挿入され,導体34と接続,固定される。スライドコンタクト接合部43は,略円筒形状の凹部45を有する。この凹部45は,スライドコンタクト接合部43をある程度肉薄(略円筒形状)として,変形を容易とするために設けられる。
【0034】
結合部44は,略棒形状をなし,電極42,スライドコンタクト接合部43を結合すると共に,スペーサ41を貫通し,保持される。
【0035】
気中ブッシング部30,およびスペーサ41の,静止誘導電気機器10に対する取付け角度は問わない。即ち,上板22a,側板22c,斜板22dのいずれかに開口部26を配置し,気中ブッシング部30,およびスペーサ41を連結できる。
【0036】
送電線PLを流れる電流,および印加された電圧は,気中ブッシング部30(気中接続導体31,導体34),中間部40(スライドコンタクト接合部43,結合部44,電極42)を介して,静止誘導電気機器本体部20に導入される。
【0037】
ここでは,気中ブッシング部30,中間部40を経由して,送電線から静止誘導電気機器本体部20に電力が導入されることを想定している。これに対して,静止誘導電気機器本体部20から中間部40気中ブッシング部30を経由して,電力が送られても良い。
【0038】
(静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30,中間部40の連結構造)
静止誘導電気機器本体部20,気中ブッシング部30,中間部40の連結構造の一例を説明する。但し,本実施形態はこれに限定されるものではない。即ち,下記説明では,碍管32(連結部32b),スペーサ41(連結部41a),静止誘導電気機器本体部20(台座28)を直接連結している。これに対して,後述する製造工程を考慮した上で,例えば,次のような間接連結構造を採用しても良い。具体的には,碍管32(連結部32b)とスペーサ41(連結部41a)の間,または,スペーサ41(連結部41a)と静止誘導電気機器本体部20(台座28)の間,もしくはいずれかの間に,短管状の部材を挟んで,連結する。
【0039】
図3は,碍管32(連結部32b),スペーサ41(連結部41a),静止誘導電気機器本体部20(台座28)の断面の一部を拡大して表す拡大断面図である。
【0040】
連結部32b,連結部41a,台座28をボルト等で連結することで,気中ブッシング部30,中間部40,静止誘導電気機器本体部20が連結される。
連結部32b,連結部41a,台座28それぞれに,穴部H1〜H3が設けられる。穴部H1,H2は,貫通孔であり,穴部H3は非貫通孔である。穴部H2は,座繰部H21,ネジ部H22を有する。座繰部H21は,ボルトの頭部を挿入するためのものである。ネジ部H22および穴部H3は,ボルトの軸のネジと係合するねじ山を有する。
【0041】
図4A,図4Bは,中間部40,静止誘導電気機器本体部20を先に連結し,その後に気中ブッシング部30を連結するときの工程を表す図である。後述の製造工程1に対応する。
【0042】
(1)中間部40,静止誘導電気機器本体部20の連結(図4A)。
連結部41a,台座28をボルトB1で連結する。ボルトB1の軸部がネジ部H22,穴部H3にねじ込まれ,ボルトB1の頭部が座繰部H21に保持される。この結果,ボルトB1の頭部は,連結部41aの上面より低くなる。このため,ボルトB1の頭部が気中ブッシング部30(連結部32b)の連結の障害とはならない。
【0043】
(2)気中ブッシング部30の連結(図4B)。
連結部32bをボルトB2で連結する。ボルトB2の軸部が穴部H1,ネジ部H22,穴部H3に挿入される。
【0044】
図5A,図5Bは,気中ブッシング部30,中間部40を先に連結し,その後に静止誘導電気機器本体部20を連結するときの工程を表す図である。後述の製造工程2に対応する。
【0045】
(1)気中ブッシング部30,中間部40の連結(図5A)。
連結部32b,連結部41aをボルトB3で連結する。ボルトB3の軸部が穴部H1,ネジ部H22に挿入される。
【0046】
(2)静止誘導電気機器本体部20の連結(図5B)。
互いに連結された連結部32b,連結部41aをボルトB4で台座28に連結する。ボルトB4の軸部が穴部H1,ネジ部H22,穴部H3に挿入される。
【0047】
(静止誘導電気機器10の組み立て(製造))
以下,静止誘導電気機器10の組み立て(製造)工程を説明する。以下,2つの製造工程1,2を説明する。
【0048】
A.製造工程1(図4A,図4Bに対応)
(1)工場からの出荷時に,静止誘導電気機器本体部20,中間部40を連結しておく(図6,図7)。
静止誘導電気機器本体部20の台座28に,スペーサ41等の破損を防止するための保護用の蓋29が取り付けられる。蓋29に貫通孔を設け,この貫通孔にボルトを通して,台座28の穴部H3でネジ止めすれば良い。その後,注入部27から静止誘導電気機器本体部20内に絶縁媒体23が充填される。
【0049】
(2)静止誘導電気機器10の設置場所で,気中ブッシング部30を連結する(図8)。
気中ブッシング部30の下部にあるバネ機構35を,スライドコンタクト接合部43に差し込み固定する。その後,連結部32b,連結部41a,台座28がボルトで固定される。
【0050】
(3)気中ブッシング部30内への絶縁媒体33の充填
注入部36から気中ブッシング部30内に絶縁媒体33が充填される。
【0051】
B.製造工程2(図5A,図5Bに対応)
(1)工場からの出荷時に,気中ブッシング部30,中間部40を連結しておく(図9,図10)。
静止誘導電気機器本体部20の開口部26に,端子25,リード24が配置される。また,静止誘導電気機器本体部20内部への塵埃の侵入を防止するための保護用の蓋29が台座28に取り付けられる。蓋29に貫通孔を設け,この貫通孔にボルトを通して,台座28の穴部H3でネジ止めすれば良い。
【0052】
(2)静止誘導電気機器10の設置場所で,気中ブッシング部30を連結する(図11)。
台座28から蓋29を取り外し,電極42を端子25と接続する。その後,連結部32b,連結部41a,台座28がボルトで固定される。
【0053】
(3)気中ブッシング部30内への絶縁媒体33の充填
注入部36から気中ブッシング部30内に絶縁媒体33が充填される。
【0054】
(比較例)
図12は,本実施形態の比較例を示す図である。
比較例としての静止誘導電気機器10xは,気中ブッシング部30x(気中接続導体31x,碍管32x,導体34x),油中ブッシング50,リード24によって,送電線PLと静止誘導電気機器本体21(静止誘導電気機器本体部20x)が接続される。碍管32xは,磁器製であるのが通例である。気中ブッシング部30xと静止誘導電気機器本体部20xが連結部60で連結される。
【0055】
(静止誘導電気機器10の利点)
以下,静止誘導電気機器10xと比較した静止誘導電気機器10の利点を説明する。
【0056】
1.軽量
静止誘導電気機器10は静止誘導電気機器10xに対して軽量化容易である。気中ブッシング部30(碍管32)が高分子製で,磁器製の気中ブッシング部30x(碍管32x)と比較して軽量である。また,静止誘導電気機器10では,スペーサ41を使用することにより,静止誘導電気機器10xに存在していた,静止誘導電気機器側へ突出した電界緩和のための部分(油中ブッシング50)を省略できる。
【0057】
このため,地震等が発生した場合に,気中ブッシング部30xの質量に耐えるように強固に構成されていた静止誘導電気機器本体部20xと気中ブッシング部30xとの連結部60を,簡素化できる。連結部60を簡素化することにより,静止誘導電気機器のタンク構造部(静止誘導電気機器本体部20x)の補強構造が不要となり,結果として静止誘導電気機器を軽量化し,寸法を縮小できる。
【0058】
それにより,所要資材量が減少して経済的に優れたものとなるのみでなく,工場や現地,さらに将来のブッシング等の交換時の作業性が向上する。さらに,タンク寸法が縮小し,質量が減少することから静止誘導電気機器の輸送が容易になり経済的に優れたものとなる。
【0059】
2.良好な耐震性能
静止誘導電気機器10は静止誘導電気機器10xに対して耐震性能が良好である。気中ブッシング部30(碍管32)を高分子絶縁材料製とすることで,比較例と比べ,気中部分を軽量化できる。このため,地震が発生した場合,気中ブッシング部30が受ける慣性力は従来に比べ小さくなる。この結果,地震によるブッシングの破壊,および,重量物である磁器製の碍管32xの揺動により発生した隙間(口開き)からの絶縁油の流出を防止できる。
【0060】
また,絶縁媒体を気体(SF,CO,N,空気等),ジェル(シリコーンジェル等),発泡材(ポリエチレン発泡体等)などとすることで,気中ブッシング部30の破壊や取付け部(中間部40)の口開きが発生した際でも,絶縁油の漏れによる火災の発生を低減できる。
【0061】
3.良好な作業性
静止誘導電気機器10は静止誘導電気機器10xに対して作業性(静止誘導電気機器10の設置,および気中ブッシング部の交換時の作業性)が良好である。既述の図7,図8に示すように,工場出荷時に静止誘導電気機器10にスペーサ41を取付けた状態とすることで,静止誘導電気機器10の設置場所では,静止誘導電気機器10を開放することなく,気中ブッシング部30の取り付け,および交換ができる。このため,比較例と比べ現地組立作業時間が短縮されるだけでなく,静止誘導電気機器10が,前記作業により内部に侵入した塵埃により損傷する可能性を低減できる。
【0062】
さらに,静止誘導電気機器10が長期間の運転を経て,気中ブッシング部30の碍管32が損傷して交換を要する場合においても,作業性が良好である。即ち,静止誘導電気機器10内の絶縁媒体23の処理をすることなく,気中ブッシング部30を交換できる。比較例では,静止誘導電気機器本体部20x内の絶縁媒体23を抜いた後,静止誘導電気機器本体部20xの内部を気中に曝して交換する必要がある。
【0063】
4.経済性
静止誘導電気機器10は静止誘導電気機器10xに対して経済性が良好である。気中ブッシング部30は,先述のように高分子絶縁材料製であり,比較例の磁器製の碍管32x(気中ブッシング部30x)と比較して軽量である。このため,その交換に際して,特別な機材の使用が不要となり,かつ交換時間が短くなり,経済的に優れたものとなる。
【0064】
5.良好な絶縁性能
静止誘導電気機器10は静止誘導電気機器10xに対して絶縁性能が劣ることはない。高分子絶縁材料製の碍管32,およびスペーサ41は,静止誘導電気機器やガス絶縁開閉装置の絶縁に使用されている。このため,比較例と同等の絶縁性能を確保できる。
【0065】
以上のように,本実施形態の静止誘導電気機器は,送電線との接続側の碍管32に高分子絶縁材料を用い,静止誘導電気機器との接続側に樹脂等で製作したスペーサ41を備える。この結果,小形軽量で耐震性能の高い静止誘導電気機器を構成できる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが,これらの実施形態は,例として提示したものであり,発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は,その他の様々な形態で実施されることが可能であり,発明の要旨を逸脱しない範囲で,種々の省略,置き換え,変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は,発明の範囲や要旨に含まれるとともに,特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10 静止誘導電気機器
20 静止誘導電気機器本体部
21 静止誘導電気機器本体
22 ケーシング
22a 上板
22b 底板
22c 側板
22d 斜板
23 絶縁媒体
24 リード
25 端子
26 開口部
27 注入部
28 台座
29 蓋
30 気中ブッシング部
31 気中接続導体
32 碍管
32a 碍管本体
32b 連結部
33 絶縁媒体
34 導体
35 バネ機構
36 注入部
40 中間部
41 スペーサ
41a 連結部
41b 平板部
41c 移行部
42 電極
43 スライドコンタクト接合部
44 結合部
45 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
碍管と,
前記碍管の一端に配置され,送電線に接続される接続導体と,
前記碍管内に配置され,前記接続導体に接続される導体と,
静止誘導電気機器本体を覆い,前記碍管の他端と対応する開口部を有するケーシングと,
前記静止誘導電気機器本体から前記開口部に向かって伸びるリードと,
前記リードの端部に配置される端子と,
前記碍管の他端と前記開口部とを取り外し可能に封止するスペーサと,
前記端子と取り外し可能に接続される電極と,前記導体と取り外し可能に接続される接合部と,を有し,前記スペーサを貫通する電気接続部材と,
前記碍管内に充填される第1の絶縁媒体と,
前記ケーシング内に充填される第2の絶縁媒体と,
を具備する静止誘導電気機器。
【請求項2】
前記導体が,その一端に配置される凹部と,この凹部内に配置されるバネ機構と,を有し,
前記接合部が,前記凹部に挿入されて,前記バネ機構により押圧される
請求項1記載の静止誘導電気機器。
【請求項3】
前記碍管が,高分子絶縁材料からなる
請求項1または2に記載の静止誘導電気機器。
【請求項4】
前記第1,第2の絶縁媒体が,気体,液体,ジェル,および発泡性固体のいずれからなる,
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静止誘導電気機器。
【請求項5】
前記ケーシングが,上板,側板,斜板の少なくともいずれかを有し,この上板,側板,斜板の少なくともいずれかに,前記開口部が配置される
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の静止誘導電気機器。
【請求項6】
碍管と,前記碍管の一端に配置され,送電線に接続される接続導体と,前記碍管内に配置され,前記接続導体に接続される導体と,を備えるブッシングを用意する工程と,
静止誘導電気機器本体を覆い,開口部を有するケーシングと,前記静止誘導電気機器本体から前記開口部に向かって伸びるリードと,前記リードの端部に配置される端子と,前記開口部を取り外し可能に封止するスペーサと,接合部と前記端子と取り外し可能に接続される電極とを有し,前記スペーサを貫通する電気接続部材と,を備える静止誘導電気機器本体部を用意する工程と,
前記導体と前記接合部が接続され,前記スペーサが前記碍管の他端を封止するように,前記ブッシングと前記静止誘導電気機器本体部を連結する工程と,
前記碍管内に絶縁媒体を充填する工程と,
を具備する静止誘導電気機器の製造方法。
【請求項7】
碍管と,前記碍管の一端に配置され,送電線に接続される接続導体と,前記碍管内に配置され,前記接続導体に接続される導体と,前記碍管の他端を取り外し可能に封止するスペーサと,電極と前記導体と取り外し可能に接続される接合部とを有し,前記スペーサを貫通する電気接続部材と,を有するブッシングを用意する工程と,
静止誘導電気機器本体を覆い,開口部を有するケーシングと,前記静止誘導電気機器本体から前記開口部に向かって伸びるリードと,前記リードの端部に配置される端子と,を有する静止誘導電気機器本体部を用意する工程と,
前記スペーサで前記開口部を封止し,かつ前記電極と前記端子を電気的に接続するように,前記ブッシングと前記静止誘導電気機器本体部を連結する工程と,
前記碍管内,前記ケーシング内それぞれに絶縁媒体を充填する工程と,
を具備する静止誘導電気機器の製造方法。
【請求項8】
前記導体が,その一端に配置される凹部と,この凹部内に配置されるバネ機構と,を有し,
前記接合部が,前記凹部に挿入されて,前記バネ機構により押圧される
請求項6または7記載の静止誘導電気機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−33849(P2013−33849A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169074(P2011−169074)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】