説明

静的状態又は動的状態における姿勢の対称性のリハビリテーション及び/又は矯正のための方法及び装置

【解決手段】本発明は、静的状態又は動的状態における人の姿勢の対称性のリハビリテーション又は矯正の方法に関し、該方法は、少なくとも一つの身体部分の少なくとも一つのパラメータを監視するステップと、パラメータ及び/又はパラメータの組合せが閾値未満であるか又は超えているかを検出するステップと、超えている場合、電気的な舌刺激信号によって人に警告し、値を閾値に戻すべく実行するように姿勢反応を通知するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に静的姿勢又は動的姿勢を矯正する方法に関する。より具体的には、本発明は、姿勢の対称性を高めるための、不安定な姿勢の矯正又はリハビリテーションに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの活動では身体の平衡制御が、唯一の重要な要因と誤って見なされている。
【0003】
従って、スポーツでは、動作を最適化するための重要な要素が、安定した平衡姿勢の獲得というよりもむしろ、とりわけ、腕、前腕、手、胴、脚部…等の様々な身体の部分の外傷を生じない位置決めの最適化にある。最適化は、現在、姿勢がスポーツ選手本人以外の人によって多くの場合矯正されるトレーニングにより統計的データに基づいて得られる。しかしながら、スポーツ選手の生物体の反応をも考慮するこの矯正は、時間がかかり、長いトレーニングを意味する。更にこの矯正は、ゆっくりと個人に合わせて変更させることができるだけで、損傷がないことを保証しない。
【0004】
この問題は、腱断裂、肉離れ、関節又は骨の捻挫又は骨折のような外傷の後に更に深刻化し、その人が動くことを許可されない長い期間が過ぎた後、スポーツ選手は、外傷の前の自身の最適な姿勢とは異なっているかもしれない最適な姿勢を取り戻す必要がある。更に、スポーツ選手は、多くの場合無意識の内にその身体の部分を心理的に用いたくないことに対処しなければならない。
【0005】
一般的に、スポーツ選手であるか否かに関係なくあらゆる人は、外傷の後に、外傷を引き起こした姿勢を矯正すること、又は切断のような特に深刻な外傷の後に再び自身の身体を制御することを学ぶためのリハビリテーションを続ける必要がある。
【0006】
現在、そのようなリハビリテーション又は姿勢矯正は、人が転倒することを防ぐためにその人の安定性及び平衡を確保することを目的としている。そのようなリハビリテーション又は姿勢矯正では、時には外傷領域外で損傷が高い確率で発生していることは考慮されていない。
【0007】
外傷後の状況とは別に、スポーツ選手の場合に既に述べたように、身体の部分の良くない位置決めは、多くの専門活動の実践における損傷を引き起こすかもしれない。
【0008】
例えば外科医は、診察行為の間保持しなければならない安定した姿勢を場合によっては長時間とることが多い。外科医の姿勢の安定化は自然に行われるか、又は経験によって得られる。しかしながら、安定した平衡姿勢は、時には届きにくい手術部位の上での動作制約を考慮すると、特に脊椎又は上肢に外傷を引き起こす可能性がある。
【0009】
安定した平衡姿勢を得たにもかかわらず、損傷する可能性が高い別のカテゴリーの人々は、車椅子を用いる障害者である。そのような人々は、自分の椅子の中で特定の安定した姿勢を見つける必要がある。そのような姿勢は、かなり早く見つけられるかもしれない。しかしながら、たとえ医療スタッフによって勧められても、そのような姿勢が脊椎の変形を引き起こすことが頻繁に認められることがある。
【0010】
同様に、骨格の異常、特に脊柱側弯症、腰痛又は頚部痛のような脊柱の異常に冒された人々は、その異常の補償を妨げるか、又は異常を更に深刻化させる姿勢を無意識にとる傾向がある。そのような人々によってとられた無意識の姿勢は、しばしば他の異常、特に足底の潰瘍の形成の原因となる。
【0011】
姿勢の矯正を必要とする場合があるその他の人々は、平衡感覚に影響する感覚認知障害を有する人、例えば老人である。これらの人々が在宅のままで、歩行器を用いることを不要にするために、転倒検出システムが既に提供されている。しかしながら、そのようなシステムは、人が転倒したか又は危うく転倒しそうになっているかを検出することのみ可能にする。これらのシステムは、良くない姿勢が完全に安定していて、人が転倒する危険性を示していないけれども、良くない姿勢による損傷の発生又は損傷の発生の危険性を検出することが不可能である。更に、そのような良くない姿勢は、その人が日常の仕事を行なうことを可能にするために、その人にも医療スタッフを含むその人のまわりの人々にも最適であるように見えることがある。
【0012】
現在、あらゆるリハビリテーション又は姿勢矯正は、統計的に最適な位置に身体の部分を置くことを目的とするかさ高い専門の装置を用いることを強いる。逸脱した場合には、装置は、身体の部分をその位置に戻すか、又は看護人に、位置を矯正すべく介入する必要があることを警告する。これは、人間の介入の点からも手段の点からも特に多大の費用を要する。更に、必要な装置及び職員は、しばしば広い集積地に、多くの場合病院センタ内にのみ見つけられ得る。このため、良くない姿勢による損傷を回避するために、姿勢矯正のみを必要とする就業者に、多くの場合管理困難な制約を強いる。そのような人は、制約のために矯正をしばしば放棄する。外傷後のリハビリテーションの終了に達する人も、同様の問題に直面することがある。そのような物質的な制約は、病院の資材又は職員の不足により深刻化し、医療活動に関連しない人々又は医療活動にもはや関連しなくなった人々を、病院の組織に統合するのが困難であるかもしれない。
【0013】
例えばリハビリテーションによって、脊柱疾患を有する人は、転倒せずに移動すること又は日常生活の動作を行なうことを学び得る。しかしながら、そのようなリハビリテーションは、獲得した姿勢によって引き起こされる虞がある損傷を全く考慮に入れずに、平衡制御のみを問題にし、単に転倒を回避すべく最適化されているに過ぎない。
【0014】
実際には、目指された活動又は状況が何であれ、姿勢の矯正処置及びリハビリテーションシステムは、活動が転倒の危険性なく行われ得る安定した姿勢の獲得を可能にすること、或いは損傷した肢又は義肢の使用を学ぶことに制限されている。しかしながら、これらのシステムはどれも、とった平衡姿勢により、身体の他の部分に現われる虞がある損傷を考慮に入れておらず、その平衡姿勢は多くの場合転倒を回避するために勧められたものである。
【0015】
例えば患者は、下肢の人工装具を取り付けた後、安定した歩行を取り戻すまで、自分の体重を義肢で支えることを徐々に学ぶ。しかしながら、本能的に、一旦リハビリテーション期間が終わったならば、人工装具の保有者は、無意識に又は意識的に装備された側の使用を制限する傾向があり、人工装具が取り付けられていない側で更に体重及び活動を支え、このことが最終的には健全な肢の回復不能な損傷を引き起こす。しかしながら、この更なる外傷の結果は、周囲からは、医療専門家からでさえ、特に転倒していないため気付かれないでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/270295号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、損傷の発生を予防するための、姿勢のリハビリテーション及び矯正の装置を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、動的状態又は静的状態における姿勢の対称性のリハビリテーション及び矯正の装置を提供することを目的とする。
【0018】
本発明は、監督及び設備なしに、一人で用いることが可能な簡易な装置を提供することを目的とする。
【0019】
本発明は更に、人の身体的特性、感覚運動能力及び必要性に適合する装置を提供することを目的とする。
【0020】
本発明は更に、静的姿勢でも動的姿勢でも使用可能である装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
これら及び他の目的を達成するために、本発明は、静的状態又は動的状態における人の姿勢の対称性のリハビリテーション又は矯正の方法において、少なくとも一つの身体の部分の少なくとも一つのパラメータを監視するステップと、パラメータ及び/又はパラメータの組合せが高閾値又は低閾値を超過したか否かを検出するステップと、閾値を超過したことを電気的な舌刺激信号によって人に警告するステップとを備えることを特徴とする方法を提供する。
【0022】
本発明の実施形態によれば、電気的な舌刺激信号のコーディングは、超過領域の位置に応じて行なわれる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、電気的な舌刺激信号のコーディングは、超過する量に応じて行なわれる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、電気的な舌刺激信号のコーディングは、超過を補うために、少なくとも一つの身体の部分の移動のための指示に応じて行なわれる。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記方法は、超過の検出後に、超過に対する補償を引き起こすことが可能な少なくとも一つのアクチュエータを始動させるステップを更に備える。
【0026】
本発明の実施形態によれば、アクチュエータは、筋電計のアクチュエータ、或いは例えば触覚、腱又は筋肉の振動を与えることが可能な感覚刺激器具である。
【0027】
本発明は、更に、静的状態又は動的状態における人の姿勢の対称性のリハビリテーション又は矯正の装置において、人の少なくとも一つの身体の部分に配置された少なくとも一つのセンサと、センサによって与えられたパラメータ及び/又はパラメータの組合せが、少なくとも一つの所与の閾値を超過したか否かを検出し、少なくとも一つのアクチュエータに超過を表す信号を送ることが可能な処理部とを備えることを特徴とする装置を提供する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、アクチュエータは舌の電気刺激を与える装置である。
【0029】
本発明の実施形態によれば、アクチュエータは、筋電計のアクチュエータ又は感覚刺激器具のような姿勢反応を引き起こすことが可能なアクチュエータである。
【0030】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点が、動いている人を示す図1A,1B,1Cと関連して、本発明を限定するものではない特定の実施形態について以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】動いている人を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
全般的に、本発明者は、既存の異常に直接関連付けられていない、又は異常がない状態でのすべての損傷が、身体の部分の良くない位置決めに起因し、本来の姿勢の対称性を壊すことを明らかにした。
【0033】
確かに、人体が安定した平衡姿勢の状態にあるとき、人体は自然に姿勢の対称性を示す。例えば、上肢は、平衡位置で身体の重心を維持すべく互いに均衡を保つ。外傷の後、或いは専門活動又はスポーツの最中には、この対称平衡が壊れている。身体は安定した平衡位置を見つけるが、その後損傷される身体の部分の内のいくつかの損傷の原因になる。
【0034】
今までに開発されたリハビリテーション装置及び方法は、獲得した姿勢の対称性の程度、又はそれよりもむしろ非対称の程度を考慮に入れずに、単に平衡を保った姿勢の回復及び再学習を目的としている。
【0035】
本発明によれば、様々なセンサが人に取り付けられている。センサは、特に圧力センサ、傾斜計、角度計、ジャイロスコープ及び磁力計の中から選択される。処理部は、無線接続によってセンサからデータを受信し、様々な身体の部分の相対位置及びそれらの可能な移動を決定するためにデータを処理する。
【0036】
特に圧力センサは、人が静的か動的か、及びどのような姿勢にあるかを判定するために脚の底部に取り付けられている。確かに、人が静止して立っているとき、足の底部に加えられる圧力は人の体重に相当する。人が静止して座っている場合、身体の一部は座席に支持されてあり、足の底部に加えられる圧力はその人の体重の圧力よりかなり低い。人が歩いている場合、圧力は、各足が順に上げられているので、最小値から最大値まで略規則的に変わる。人の一般的な静的又は動的に立っている状態、或いは静的又は動的に座っている状態が判定される。センサは、人の活動に関する様々な他のデータを判定することを可能にする。用いられることが可能な他のセンサは、切断手術を受けた人の断端に配置された圧力センサである。
【0037】
図1A,1B,1Cに示されているように、人は、特に歩いているとき、自分の胸を側方(図1A)、前方(図1B)及び後方(図1C)に傾けるように、通常気づかない自然な方法で導かれている。これらの方向の各々での胸の傾斜の程度、継続時間及び速度は、基本的に移動の速度又は更にその加速度だけでなく、人の体重及び年齢によっても決まる。このような胸の傾斜は、姿勢の対称性を維持するために必要である。
【0038】
偶発性外傷の後、又は人工装具の使用中には、人は、無意識にこれらの傾斜の内のいくつかを低減するか、増すか又は抑制する。これらの調整は、転倒を回避するために、無意識に又はリハビリテーションにより、他の身体の部分の位置の調整によって補われる。従ってこれは、人の平衡及び安定性に影響しないが、姿勢の対称性の不均衡を引き起こす。この姿勢の対称性の不均衡はある身体の部分への過度の負担と解釈され、この過度の負担は時間と共に損傷を引き起こす。
【0039】
本発明の実施形態によれば、胸の位置、速度及び加速度を判定することを意図された運動センサが設けられている。これらのパラメータの組み合わせとそれらの繰り返しが人の身体的特性に特有の所与の閾値に達するとき、損傷が生じる場合がある。本発明の実施形態に係る装置の処理部は、センサによって集められたデータ又はこれらのデータの組合せを、プログラム可能な予め設定された閾値と比較する。例えば脊柱側弯症の人又は腰痛を有する老人について、処理部は、胸の角度を垂直方向とも下肢とも比較し、角速度を予め定められた振動範囲と比較し、これらのデータに応じて損傷の危険性を決定する。
【0040】
本発明の実施形態によれば、損傷の危険性が生じるとき、処理部は、人に利用可能な任意の視覚、音又は触覚警告装置によって、リハビリテーションを監督する人又は好ましくはその人にメッセージを送る。処理部と警告装置との間の通信は、無線システムによって行なわれることが好ましい。
【0041】
例えば、警告装置は、一般的には、口腔内に配置され、少なくとも舌の上面と接触する可能性がある配列電極を支持することを意図された少なくとも一つの人工口蓋を含む舌表示部TDU である。信号は、その後、配列電極の予め定められた範囲を作動させることが可能なコーディングを表す。コーディングによって、損傷の危険性の存在、場合によってはこの危険性を引き起こす部分及び必要な場合は損傷の危険性の程度、又は損傷の危険性を抑えるために講じられる処置を人に知らせることが可能である。コーディングモードは、身体的特性、感覚運動能力、患者の必要性及びその人の状況を分析する能力に応じて選択される。
【0042】
先に述べられた損傷の危険性が、近い危険性であるか遠い危険性であるか数量化されてもよいことは注目すべきである。従って、外科医又はハイ・レベルのスポーツ選手は、姿勢が保持される期間が、損傷を生じるにはあまりにも短過ぎることを考慮して、危険な姿勢を保持することを決めてもよい。本実施形態によれば、装置及び特に処理部は、人に損傷の危険性の増大を警告するために、保有者によってとられた姿勢の最近の履歴を考慮してもよい。従って、特に長い手術を行なう外科医は、長期的な危険性のための警告を無視してもよいが、外科医が姿勢を修正しない場合はその人の身体の部分の一つが損傷される段階に近づいていると警告される。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、損傷の危険性に関する情報がユーザに送られているか否かについて、損傷がある得るとき、処理部は、損傷の危険性を抑えることが可能なアクチュエータを始動させる。
【0044】
このようなアクチュエータは、筋電計のアクチュエータ、或いは例えば腱、触覚受信部又は筋肉の収縮の刺激又は振動を引き起こす感覚刺激器具である。この刺激は、人によって自分の身体の実際の動きとして無意識に感じられ、その人に反射運動として逆の移動を行なわせる。アクチュエータは、損傷の危険性を補うことが可能な移動をこのように引き起こす。
【0045】
本発明の実施形態によれば、処理部は、アクチュエータを始動するか、又は検出された超過に応じてユーザに警告するかを選択する。従って、閾値の超過が、危険性を補うのに十分な反射運動に対して十分に低い場合、処理部は、そのような補償を引き起こすために少なくとも一つのアクチュエータのみを始動する。閾値の超過が大き過ぎる場合、中央処理部は、既に述べた方法の内の一つによりTDU を用いてユーザに警告する。
【0046】
尚、閾値は、人によって著しく異なる。従って、腰痛又は脊柱側弯症の人にとって、垂直軸及び下肢に対して胸が著しく傾けられるのが普通である。
【0047】
更に本発明に係る装置は、一方では垂直軸に対して、他方では下肢に対して胴/頭の組立体の傾斜を監視することが可能である。腰痛又は脊柱側弯症の病状の程度に応じて、胸の傾斜が、下肢の損傷の病状に適合し、且つ下肢の損傷が生じないように適合する範囲内にあるように閾値は設定される。
【0048】
先に述べられたような損傷を予防する方法及び装置は、様々な場合に用いられてもよい。特に前記方法及び装置は、リハビリテーションの場面で又は回復段階の間に用いられてもよい。更に前記方法及び装置は、老人又は空間認知欠陥に苦しむ人がその人の家に住み続けることを可能にするために用いられてもよい。
【0049】
このような方法及び装置は多くの利点を有する。特に前記方法及び装置は、厳格な又は規則的な監視からその人を解放し、その人の自立性を高める。同様に前記方法及び装置は、職員及び装置を他の人の追跡治療のために解放することを可能にする。
【0050】
装置は、異なる構成要素間の無線通信プロトコルを用いた非可視警告装置の使用により特に目立たない。これにより、人の活動的な生活への組込みが改善される。
【0051】
例えば膝又は足首のような関節の外傷の後、その屈曲は制限されなければならない。可能な屈曲の角度は、その後リハビリテーションの間に徐々に増加される。これは現在、固定及び看護人の管理下での屈曲規制という非常に制約的なシステムにより達成される。本発明によれば現在、リハビリテーションを受ける人に、関節のどちらかの側にある部分の傾斜を判定することが可能なセンサを取り付けて、その人が認められた屈曲範囲からはずれると、警告装置によってその人に警告することが可能である。更に、警告装置を用いて、リハビリテーションを受ける人に、その人があまりにも早く屈曲を停止しており、閾値に達するために屈曲を行い続ける必要があることを示すことが可能である。リハビリテーション中に、閾値は、時間と共に関節の屈曲範囲を増大させるために徐々に修正される。
【0052】
別の適用として、特に下肢への人工装具の取り付け後のリハビリテーションのみならず、外傷、整形外科又はリューマチへの介入後のリハビリテーションがある。確かに、人工装具の取り付け後、人工装具に対する身体の残りの部分の傾斜角及び義肢によって支持されるべき体重は制限されている。この制限は、時間と共に緩和される。その後直面する従来の問題は、人工装具を取り付けた人が、治療の間はリハビリテーション閾値を尊重するが、治療の合間ではもはや尊重しなくなることである。このような順守の欠如は、人工装具の取り付け後の最初の間、義肢への超過重量及び/又は屈曲の適用として現れる。これに対して順守の別の欠如は、義肢の不十分な利用である。この後の場合では、義肢を装着していない肢があまりにも多くの圧力を受けて、損傷という結果を招くことがある。本発明によれば、適切なセンサ、処理部及び警告装置によって、義肢を着用している人が特定の治療の合間にリハビリテーション閾値を尊重するのに役立つことが可能である。
【0053】
損傷を回避するための姿勢の対称性の矯正は、外傷後のリハビリテーションという状況に限らない。本発明は更に、何の外傷の履歴もない、専門的状況又はレジャーでの状況における損傷の予防にも適合する。確かに、可能なアクチュエータに加えて、センサ、処理部及び警告装置の組合せは、日常的な活動に関連した姿勢を最適化するために用いられてもよい。従って、活動及びユーザの特性に応じて、活動が損傷なしで行なわれる最適な位置を決定することが可能である。例えば射撃手が、様々な身体の部分の互いに対する理想的な位置を決定し、射撃手に、武器との角度に加えて異なる部分間の角度を決定すべく特に意図されたセンサを与え、データを最適な範囲と比較し、警告装置によって射撃手に姿勢の対称性の矯正データを送ることが可能である。
【0054】
本発明は更に、スポーツへの適用以外の状況で予防的に用いられてもよい。従って、例えば、演奏、本文のタイピング又はコンピュータのキーボードによるデータ入力のような静的職務の実施における良くない作業姿勢に関連付けられた筋骨格疾病は、足部痛、脚部のむくみ、静脈瘤、一般的な筋肉疲労、腰痛、肩こり及び/又は肩関節のこり、…等の様々な症候群及び損傷の原因になる。 同様に、これらの活動が行なわれる座位は、脊椎の損傷を引き起こすかもしれない。本発明に係る姿勢の対称性の矯正は、損傷が生じる前に、正しくない姿勢を人間の観察者より更に良好に矯正するためにトレーニングの間に用いられてもよい。更に、本発明に係る装置は、かさ高くなくそれとわからない構成要素から形成されており、活動の実行の間に便利で差別されない方法で用いられてもよい。
【0055】
本発明は更に、半身不随の人の座位の制御に適用する。確かに、半身不随の人は損傷を受けた側に著しい感覚障害を有している。半身不随は、筋力の生成及び維持能力の減少、及び筋肉の反応時間の増大を伴う。現在のリハビリテーションによって、人が、欠陥を補うことが可能になり、立つこと、転倒せずに移動すること及び専門活動を含む様々な活動を行なうことを学び得る。しかしながら、今まで、半身不随の人に多数の損傷の発生を観察することができた。本発明の装置は、反射の刺激により、或いは保有者に常に又は危険性がある場合に、その人が自分の姿勢を修正する必要があることを示すことにより、そのような損傷を回避することを可能にする。
【0056】
一般的には、本発明に係る方法及び装置は、損傷の発生を回避するために、あらゆる座位の人、特に身体障害者の姿勢を矯正するために用いられてもよい。
【0057】
言うまでもなく本発明は、当業者に想起される様々な変更及び修正がなされ得る。特に、可能なアクチュエータの数及び性質に加えてセンサの数及び性質は、目的とされる適用に応じて選択される。センサは、検討される活動、及びリハビリテーションを施されるべき単一又は複数の部分又は矯正される必要がある位置を有する単一又は複数の部分に制限される。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的状態又は動的状態における人の姿勢の対称性のリハビリテーション又は矯正の方法において、
少なくとも一つの身体の部分の少なくとも一つのパラメータを監視するステップと、
前記パラメータ及び/又はパラメータの組合せが低閾値又は高閾値を超過したか否かを検出するステップと、
前記閾値を超過したことを電気的な舌刺激信号によって人に警告するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電気的な舌刺激信号のコーディングは、超過範囲の位置に応じて行なわれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気的な舌刺激信号のコーディングは、超過する量に応じて行なわれることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気的な舌刺激信号のコーディングは、前記超過を補うために、少なくとも一つの身体の部分の移動のための指示に応じて行なわれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記超過の検出の後に、前記超過に対する補償を引き起こすことが可能な少なくとも一つのアクチュエータを始動させるステップを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アクチュエータは、筋電計のアクチュエータ、又は例えば触覚、腱又は筋肉の振動を与えることが可能な感覚刺激器具であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
静的状態又は動的状態における人の姿勢の対称性のリハビリテーション又は矯正の装置において、
人の少なくとも一つの身体の部分に配置された少なくとも一つのセンサと、
前記センサによって与えられたパラメータ及び/又はパラメータの組合せが、少なくとも一つの所与の閾値を超過したか否かを検出し、少なくとも一つのアクチュエータに前記超過を表す信号を送ることが可能な処理部と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記アクチュエータは、舌の電気刺激を与える装置であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記アクチュエータは、筋電計のアクチュエータ又は感覚刺激器具のような姿勢反応を引き起こすことが可能なアクチュエータであることを特徴とする請求項7に記載の装置。

【公表番号】特表2009−539455(P2009−539455A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513742(P2009−513742)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051409
【国際公開番号】WO2007/141461
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(501354026)ユニヴェルシテ ジョセフ フーリエ (9)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】