静脈の全体直径を増大させるシステムと方法
末梢静脈(30)の全体直径および内腔直径を持続的に増大させるために、十分な期間に亘って末梢静脈(30)の血液速度および壁剪断応力(WSS)を上昇させる、システム(10)および方法(100)。この方法(100)は所望の流速および拍動で血液をポンプ輸送することを含む。末梢静脈(30)拡張の速度と程度を最適化するために、必要によりポンプ輸送のモニタと調節が行われ、末梢静脈(30)中の所望の血液速度、WSS、拍動が維持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は患者の静脈の全体直径および内腔直径を持続的に増大させるためのシステムと方法に関する。特に本発明は、血液ポンプを利用してある期間に亘り血液速度および末梢静脈の内皮にかかる壁剪断応力(WSS)を上昇させ、結果としてこれらの静脈の全体直径および内腔直径を持続的に増大させることに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎疾患を持つ患者の多くは、最終的には末期腎不全(ESRD)に至り、体内から体液や老廃物を除去し、生命を維持するために腎代替療法を必要とする。腎代替療法を必要とするESRD患者の殆どは、血液透析を受ける。血液透析中は、血液が循環系から取り出され、血液透析器で浄化されて循環系に戻される。外科医は、ESRD患者から迅速に血液を取り出しかつ戻すための“血管アクセス部位”を個別に形成する。血液透析器そのもの及び血液透析処置用のそのほかの部品に関しては大きな進歩が得られてきているが、血液透析時に患者から血液を取り出し、また戻すための、持続的で信頼性のある血管アクセス部位の形成に関しては非常にわずかな進歩しか見られず、腎代替療法のアキレス腱となっている。これはESRD患者の発病および死を招くことが多く、世界的に、健康管理者、支払者、および公的支援制度への大きな負担となっている。
【0003】
血液透析アクセス部位には一般に3つの形態がある。それは、動静脈フィステル(AVF)、動静脈グラフト(AVG)、カテーテルである。この部位のそれぞれのタイプは、以下で述べるように、失敗の比率が高かったり、複雑であったりする。
【0004】
AVFは動脈と静脈とを手術によって直接接続して構築される。機能的な手首AVFがもっとも長持ちのする、最も好ましい形態の血液透析アクセス形態であり、平均開通性は約3年である。接続部から離れてゆく静脈は“流出”静脈と呼ばれる。流出静脈の膨張はAVFが“熟成”して利用可能となるための重要な要素である。AVFで形成された流出静脈中の高速の血液流と、静脈内皮に作用するWSSとが、静脈を膨張させる主要因子であることが広く知られている。残念ながら患者の約80%は、手首へのAVF設置に適さない。それは一般に静脈の直径が適さないからである。AVF設置が試みられる適格な患者に関しても、その約50〜60%はさらなる医療処置なしではその部位を利用することができない。これは“熟成障害”問題として知られている。AVFの熟成障害における重要因子として、血管直径の小さいこと、特に静脈直径の小さいことが挙げられる。“内膜過形成”として知られる強度の静脈壁瘢痕の急速な出現も、AVF熟成障害の重要因子とされている。動脈から出て静脈に入る高速の血液流が作る乱流がこの静脈壁瘢痕の主因であることが一般に理解されている。また、拍動性の動脈血が入り込むことにより静脈が周期的に拡張されることも、AVFにおける内膜過形成と流出静脈の閉塞とを刺激する役割も果たしていると主張する研究者もいる。このように急速な流れは問題を含むことが分かり、バンドによって内腔直径を制限して、血液透析のアクセス部位での流れを抑えて不良率の最小化を図ろうとする試みがなされてきている。現時点においては、流れを媒介とする膨張という正の効果を維持しつつ、静脈壁瘢痕や閉塞という負の効果を排除する方法は存在しない。驚くことではないが、新たに末期腎不全で血液透析を必要とすると診断された患者が、血液透析を開始してから6か月以内に機能AVFを持つ可能性は50%に過ぎない。機能AVFを持たない患者は、より高価な血管アクセス方式での透析を余儀なくされ、合併症の併発、病状の進行、および死に対してより大きなリスクを持つ。
【0005】
血液透析のための血管アクセスの第2のタイプは、動静脈グラフト(AVG)として知られている。AVGは、通常腕または脚の動脈と静脈の間に合成導管セグメントを配置して構築される。合成導管部分が皮膚の直下に配置され、針でのアクセスに使用される。AVGは、皮膚表面上には見えない静脈を流出用に利用するので、より多くの患者に適用可能であり、初期不良率もAVFに比べてはるかに低い。残念なことは、AVG手段の一次開通性が約4〜6か月しかないことである。その殆どは、合成導管との接続部位近辺の静脈壁に強度の内膜過形成および瘢痕が急速に成長するためであり、それが狭窄および血栓症に繋がっている。AVFの不良の状態と同じように、AVGによって生成される血液の高速乱流が流出静脈壁に内膜過形成と瘢痕を進行させ、それがAVGの閉塞をもたらすことが多い。また、拍動性の動脈血が入り込むことにより静脈が周期的に拡張されることが、AVGにおける内膜過形成と流出静脈の閉塞の形成にある役割を果たしていると主張する研究者もいる。AVGはAVFよりも好ましくないものであるが、主としてAVFに適さないという理由で、約25%の患者がAVGで透析を行っている。
【0006】
AVFやAVGで血液透析を受けられない患者は、血液透析を受けるために大きなカテーテルを首、胸、または脚に挿入しなければならない。このカテーテルは汚染されて、患者に敗血症および死の高いリスクをもたらすことが多い。カテーテル敗血症になった患者は通常、入院してカテーテルを取り去り、仮のカテーテルを挿入して抗生物質の静脈内投与を受ける。そうして感染が解消されると、新しいカテーテルまたは別のタイプのアクセス部位の設置を行う。カテーテルはまた、その先端の周りに血栓やフィブリンの蓄積による閉塞を受けやすい。血液透析カテーテルの平均開通性は約6か月であり、一般的には、血液透析のアクセスとしては最も望ましくないものである。AVFやAVGに比べて望ましくないが、それでも約20%の患者はカテーテルで透析を行う。それは主として、その患者がまだ機能AVFまたはAVGを受けることができないか、AVFまたはAVGを受けるのに適していないことによる。
【0007】
血液透析アクセス部位不良の問題は、常套的に血液透析を受けるESRD患者の数が世界的に増加してきたために近年大きな注目を浴びるようになった。2004年に、メディケア&メディケイドサービスセンター(CMS)は、末期腎不全患者に対する血液透析へのアクセス提供においてAVFの利用を増やすための、“フィスチュラファースト”イニシアチブを発表した。この大きなイニシアチブは、AVFで血液透析を受ける患者は、AVGあるいはカテーテルによる患者に比べて罹病率と死亡率が減少していることを示すメディケアの公表データに応えるものである。AVF患者に関わる経費は、AVG患者に関わる経費よりも、透析の初年度及び次年度以降において大幅に低くなっている。AVFでの透析の経費節約は、カテーテルでの透析に比べてもはるかに大きい。
【0008】
AVFまたはAVGに適格となるためには、末梢静脈の内腔直径がそれぞれ少なくとも2.5mmと4mmでなければならない。しかし現状においては、静脈寸法が小さくてAVFまたはAVGに非適格であるESRD患者に対して末梢静脈の全体直径と内腔直径とを持続的に増大させる方法はない。したがって、静脈が小さすぎてAVFまたはAVGを試みることのできない患者は、カテーテルなどのあまり望ましくない血管アクセス形態をとらざるを得ない。同様に、静脈直径の小さい患者に特に多く起きるAVF熟成障害に対しても現在の処、処置の方法がない。したがって、AVFやAVGを形成する前に静脈の全体直径および内腔直径を拡大するためのシステムと方法が必要とされる。血液透析において、カテーテル法などの望ましくない血管アクセス形態を取らざるを得なかったESRD患者は、AVFまたはAVGを利用可能な患者に比べて罹病または死亡するリスクが大幅に高かったとする最近の研究によって、この必要性の重要度が強調されている。
【0009】
血管の直径を持続的に増大させるニーズは他の患者にもある。例えば、末梢バイパスグラフトを必要とする、末梢動脈のアテローム性動脈硬化閉塞の患者などである。脚部動脈に血流障害のある末梢動脈疾患(PAD)を持つ患者は、跛行や皮膚潰瘍や組織虚血となることが多く、これらの患者の多くは結果的に罹患している四肢部分の切断を必要とする。これらの患者の中には、バルーン血管形成または血管ステントの移植により、障害を適度に軽減することができる場合もある。しかし、多くの患者においては、このような侵襲性が最小の療法では障害に対処できない。したがって外科医はバイパスグラフトを形成して、障害のある動脈の周りに血液を分散させ、罹患している末端部分へ適切な血液流を回復させるようにすることが多い。しかしながら、末梢バイパスグラフトを必要とする患者の多くは、静脈直径が適切でないために、バイパス導管として自分自身の静脈を利用することができず、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、例えばゴアテックス(登録商標))やポリエチレンテレフタレート(PET、例えばダクロン(登録商標))などの材料でできた合成導管を利用せざるを得ない。研究結果によれば、バイパス導管として患者自身の静脈を使う方が、PTFEやダクロンなどの材料でできた合成バイパス導管を利用する場合に比べて長期間の開通性に優れていることが分かっている。合成バイパス導管の使用は、グラフトの遠位端における動脈狭窄および導管全体における血栓症のリスクが増大し、その結果バイパスグラフト障害が起きて、症状の再発または悪化を生じる。したがって、バイパスグラフト形成の前に静脈の全体直径および内腔直径を増大させるシステムおよび方法が必要とされる。これは静脈直径が不適当であるために自分自身の静脈をバイパスグラフト形成に利用することが適さない患者に特に必要とされている。
【0010】
上記の観点から、血液透析のアクセスサイトおよびバイパスグラフトの形成に利用できるようにするために、末梢静脈の内腔直径および全体直径を持続的に増大させるためのシステムおよび方法が必要とされることが、本開示から当業者には明らかであろう。本明細書で説明する本発明は、当技術分野のこの必要性並びに他の必要性に取り組むものであり、それらは本開示により当業者には明らかとなるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、末梢静脈の全体直径および内腔直径を増大させるために血液ポンプを利用する方法を含む。末梢静脈が拡張する結果が得られるのに十分な期間、末梢静脈の上流に血液ポンプを配置して、末梢静脈の内皮にかかる壁剪断応力(WSS)を増大させるシステムと方法が説明される。ポンプは、好ましくは末梢動脈中の血液の脈圧よりも低い脈圧にして、血液を末梢静脈中へ送る。
【0012】
静脈内での血流による力および血流による力の変化が、その静脈の全体直径および内腔直径の決定に極めて重要な役割を果たすことが研究により分かっている。たとえば、血液速度およびWSSの持続的な上昇によって静脈の拡張がもたらされ、その拡張量は、血液速度とWSSの上昇量と、血液速度とWSSが上昇している時間との両方に依存する。血液速度とWSSの上昇は内皮細胞によって検知され、それが信号機構にトリガをかけて、血管平滑筋細胞を刺激し、単球とマクロファージとを吸引させ、コラーゲンやエラスチンなどの細胞外マトリックス成分を劣化させるプロテアーゼを合成し放出させる。このように、本発明は、静脈の改造と拡張に至る十分な期間、好ましくは7日より長い期間に亘り、血液速度とWSSとを上昇させることに関する。本発明はまた、静脈の改造と拡張を最適化するためのポンプパラメータの周期的調整方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
壁剪断応力は、血流増加に対応する血管拡張の鍵となる因子であることが分かっている。血管内の血流がハーゲン−ポアズイユの法則に従う(すなわち、完全な放物線状の速度分布を有する層流である)とすると、WSSは次式で与えられる。
WSS(τ)=4Qμ/πR3
ここで、 Q=体積流量(mL/s)
μ=血液の粘性(ポアズ)
R=血管の半径(cm)
τ=壁剪断応力(dyne/cm2)
【0014】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈中のWSSレベルを上昇させる。静脈の通常のWSSは0.076Pa〜0.76Paの範囲である。本明細書で説明するシステムおよび方法は、WSSを0.76Pa〜23Pa、望ましくは2.5Pa〜7.5Paの範囲に上昇させる。好ましくは、WSSを7〜84日間、または好ましくは7〜42日間上昇させて、受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用できるようにする。これはまた、処置期間内に通常のWSSの期間をはさみながら間歇的にWSSを上昇させることによって達成することも可能である。
【0015】
本明細書で記述するシステムと方法はまた、末梢静脈中の、そして特定の場合には末梢動脈中の血液速度を上昇させる。休息時にヒトの橈側皮静脈内の平均血液速度は概ね5〜9cm/sであり、上腕動脈では概ね10〜15cm/sである。本明細書に記載のシステムと方法では、受容末梢静脈の直径とその受容末梢静脈へ血液をポンプ輸送する計画時間の長さとに依存するが、末梢静脈中の平均血液速度を15〜100cm/sの範囲、好ましくは25〜100cm/sの範囲に上昇させる。好ましくは、平均血液速度を7〜84日間、または好ましくは7〜42日の間上昇させて受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用可能とする。これはまた、処置期間内に通常の平均血液速度の期間をはさみながら間歇的に平均血液速度を上昇させることによって達成することも可能である。
【0016】
患者の末梢静脈の内腔直径および全体直径を増加させる方法を本明細書で説明する。この方法では、まず動脈または静脈(供与血管)と末梢静脈(受容静脈)とにアクセスする処置を実行し、供与血管を受容静脈へポンプシステムで接続する。次にポンプシステムを起動して、供与血管から受容静脈へ血液を人工的に流す。この方法では、ある期間の間、血液のポンプ輸送プロセスのモニタも行う。この方法ではさらに、ポンプの速度、ポンプ輸送される血液の速度、または受容静脈の内壁にかかるWSSの調節と、ポンプ輸送プロセスのモニタを再度行う。ある期間が経過して静脈が拡張すると、受容静脈の直径を測定して、その受容静脈の全体直径と内腔直径が適切に持続的な増大をしたかどうかを判定し、必要があればポンプ輸送プロセスを再調整する。受容静脈の全体直径と内腔直径が適切量の持続的増大をしていれば、第2の手術を行ってポンプを取り除く。この時、またはその後に、この持続的に拡張した受容静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVFまたはAVGなど)またはバイパスグラフトを形成することができる。
【0017】
一実施形態において、外科手術によって2つの静脈のセグメントが露出される。第1の合成導管の一端が、血液が取り出される静脈(供与静脈)へ“流体的に”接続される(すなわち内腔同士が接合されて両者の間の流体連通が可能となる)。第1の合成導管のもう一方の端がポンプの流入部に流体接続される。第2の合成導管の一端が、血液が送り込まれる静脈(受容静脈)に流体接続される。第2の合成導管のもう一方の端が同一ポンプの流出部に流体接続される。脱酸素化血液が供与静脈から受容静脈へポンプ輸送されて、静脈が最終的に所望の全体直径と内腔直径にまで持続的に拡張される。ここで“持続的に拡張”というのは、ポンプを切った後でも、血液のポンプ輸送をする前の静脈の直径に比べて、血管の全体直径または内腔直径が明確に増大していることを言う。つまり、ポンプからの圧力の有無に拘らず血管が大きくなっていることである。所望量の静脈の持続的拡張が起これば、第2の手術が実行されて、ポンプと合成導管とが取り除かれる。この時、またはその後に、この持続的に拡張した受容静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVFまたはAVGなど)またはバイパスグラフトを形成することができる。この実施形態において、中間に配置された合成導管を用いずに、ポンプ部を供与導管または受容静脈へ直接的に流体接続してもよい。本実施形態の一変形では、受容静脈は腕の橈側皮静脈などのような体のある場所に配置されていてもよいし、供与静脈は脚の大腿静脈などの別の位置にあってもよい。この例では、ポンプ−導管アセンブリの2つの端は体内に配置され、ポンプ−導管アセンブリのブリッジ部は体外(体の外部、例えば衣服の下に着用されるなど)、または体内(体の内部、例えば皮膚の下にトンネルとなっているなど)であってもよい。さらに、特定の場合においては、供与血管が受容静脈よりも体の位置で相対的により末梢部にあってもよい。
【0018】
別の実施形態では、この方法には末梢動脈の一部分と末梢静脈の一部分を露出させる外科手術が含まれる。第1の合成導管の一端が末梢動脈と流体接続される。第1の合成導管のもう一方の端がポンプの流入部に流体接続される。第2の合成導管の一端が末梢静脈と流体接続される。第2の合成導管のもう一方の端が同一ポンプの流出部に流体接続される。酸素化された血液が末梢動脈から末梢静脈へポンプ輸送されて、静脈は最終的に所望の全体直径と内腔直径にまで持続的に拡張される。所望量の静脈の持続的拡張が起こったあと、第2の手術が実行されて、ポンプと合成導管とが取り除かれる。この時、またはその後に、この持続的に拡張した受容静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVFまたはAVGなど)またはバイパスグラフトを形成することができる。この実施形態の一変形においては、中間に位置する合成導管を用いずにポンプの接続部が動脈または静脈に直接流体接続されてよい。
【0019】
さらに別の実施形態において、1対の特殊カテーテルが静脈系に挿入される。1つのカテーテルの第1の端がポンプの流入ポートに取り付けられ(以後“流入カテーテル”と称す)、もう一方のカテーテルの第1の端がポンプの流出ポートに取り付けられる(以後“流出カテーテル”と称す)。任意選択として、2つのカテーテルはダブルルーメンカテーテルのように一体となっていてもよい。カテーテルは静脈系の内腔へ挿入されるように構成されている。挿入後、流入カテーテルの第2の端の先端が、流入カテーテルに十分な量の血液が引き出される静脈系の任意の場所(例えば、右心房、上大静脈、鎖骨下静脈、または腕頭静脈)に配置される。挿入後、流出カテーテルの第2の端の先端が静脈系の末梢静脈(受容静脈)の一つへ配置され(例えば、橈側皮静脈)、そこへ流出カテーテルによって血液が送達される。次にポンプは供与静脈から流入カテーテルの内腔へ脱酸素化血液を吸引し、その血液を流出カテーテルから受容静脈の内腔へ放出する。この実施形態において、ポンプと、流入カテーテルと流出カテーテルの一部は患者の体外にある。ポンプは、受容静脈の全体直径と内腔直径に所望量の持続的拡大が生じるまで運転され、その後ポンプおよびカテーテルが取り除かれる。この時、またはその後に、この持続的に拡大した受容静脈の少なくとも一部を利用して血液透析のアクセスサイト(AVFまたはAVGなど)またはバイパスグラフトを形成することができる。
【0020】
それぞれが2つの端を持つ2つの合成導管と、血液ポンプと、制御ユニットと、電源とを備え、患者の供与静脈から受容静脈へ脱酸素化血液を送達することにより静脈内の血液速度とWSSを上昇させるシステムが提供される。このシステムは、1つまたは複数のセンサ―ユニットも含んでよい。システムの一実施形態において、全体として“ポンプ−導管アセンブリ”として知られる、合成導管とポンプは、供与静脈または右心房から脱酸素化血液を引き出し、その血液を受容静脈中へポンプ輸送する。ポンプ−導管アセンブリは脱酸素化血液をポンプ輸送するように構成されている。このシステムの別の実施形態においては、ポンプ−導管アセンブリは酸素化された血液を末梢動脈から引き出して、それを末梢静脈中へポンプ輸送するように構成されている。血液はポンプで動脈と静脈内での血液速度を上昇させ、動脈と静脈の内皮にかかるWSSを上昇させるように送り出される。そして末梢動脈と静脈の全体直径と内腔直径が持続的に増大するまでの期間、それが続けられる。好ましくは、末梢静脈中に送り込まれる血液は、例えば末梢動脈中の血液よりも低い拍動を有する。この実施形態の一変形においては、ポンプが中間に位置する合成導管なしで動脈または静脈(あるいはその両方)に直接流体接続される。ポンプには入口と出口とがあり、脱酸素化血液または酸素化された血液を末梢静脈に送達し、静脈内の血液速度と静脈の内皮にかかるWSSを上昇させて、末梢静脈の全体直径と内腔直径とを持続的に増大させるようにする。血液ポンプは、患者の体内に移植されてもよいし、体外にあってもよいし、または体内に移植された部分と体外にある部分とがあってもよい。合成導管のすべてまたは一部が、患者内に移植されてもよいし、皮下移植されてもよいし、静脈系の内腔内に移植されてもよいし、またはそれらの任意の組合せであってもよい。ポンプ−導管アセンブリの移植された部分は、モニタされて、周期的に、例えば7日毎に調節されてもよい。
【0021】
本発明は末梢静脈中の血液速度を上昇させる方法を含む。そして、血液透析のアクセスサイトまたはバイパスグラフトを必要とするヒトの患者の末梢静脈の内皮上にかかるWSSを上昇させることも提供される。心不全の処置のために動脈流を増大させるように設計された装置も、本目的に対して有益である。具体的には、低血流に最適化された心室補助装置(VAD)は供与血管から末梢静脈へ血液をポンプ輸送し、末梢静脈の全体直径および内腔直径を持続的に増大させることが可能である。様々な実施形態において、小児用VAD、あるいは成人の中程度の心不全処置用の小型VAD(Circulite社の Synergy pump(登録商標)など)を使用してもよい。LVADやRVADなどの低血流量用に最適化された他の装置も利用可能である。
【0022】
この方法は、低流量VADやその派生物または類似の装置を供与血管に流体接続し、その供与血管から血液を引き出し、それを受容静脈へ十分な時間に亘ってポンプ輸送し、末梢静脈の全体直径と内腔直径を所望量だけ持続的に増大させることを含む。血液ポンプは患者の体内に移植してもよいし、体外に維持してもよい。ポンプが患者の体外にある場合には、連続的にポンプ輸送するために患者に張り付けられてもよい。あるいはまた、ポンプは周期的及び/又は間歇的なポンプ輸送をするために、患者の供与血管または受容血管から取り外せるようになっていてもよい。
【0023】
受容末梢静脈の内腔直径は、血液が静脈内に送り込まれているときに、超音波または診断用血管造影法による可視化などの従来法を利用してモニタすることができる。ポンプ−導管アセンブリまたはポンプ−カテーテルアセンブリは、診断用血管造影法を容易にする放射線不透過マーカなどの特徴を組み込んでいてもよい。これはアセンブリに造影剤を注入する針がアクセスできるサイトを識別し、その造影剤がその後受容末梢静脈内に流れ込んで、従来型およびデジタルサブトラクション血管造影法の両方を利用した透視検査での可視化を可能とする。
【0024】
ポンプ−導管アセンブリまたはポンプ−カテーテルアセンブリの一部が体の外に配置されている場合、移植部品と外部部品とを接続する装置の部分に、抗菌コーティングまたはバンドが張り付けられてもよい。たとえば、コントローラ及び/又は電源が手首に結び付けられているか、ベルトに取り付けられているかまたはバッグまたはパックに入れられている場合に、装置が患者の体内に入る接続部及び/又は侵入点の上、またはその周りに抗菌コーティングが施される。
【0025】
本発明のこれらおよびその他の目的、特徴、態様および利点は、添付の図面と共に本発明の好適な実施形態を開示する以下の詳細な説明により、当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
次に、この新規な開示を構成する添付の図面を参照する。
【図1A】本発明の第1の実施形態によるシステムおよび方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図1B】本発明の第1の実施形態による、患者の循環系に適用された図1Aのポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図1C】図1Bの部分拡大図である。
【図2A】本発明の第2の実施形態によるシステムおよび方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図2B】本発明の第2の実施形態による、患者の循環系に適用された図2Aのポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図2C】図2Bの部分拡大図である。
【図3】本発明の第3の実施形態による、患者の循環系に適用されたシステムおよび方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図4A】本発明の第4の実施形態によるシステムおよび方法のポンプ−カテーテルアセンブリの概略図である。
【図4B】本発明の第4の実施形態による、患者の循環系に適用された図4Aのポンプ−カテーテルアセンブリの概略図である。
【図5A】本発明の第5の実施形態によるシステムおよび方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図5B】本発明の第5の実施形態による、患者の循環系に適用された図5Aのポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図6】上記実施形態のいずれかに利用される、制御ユニットと連動して運転されるポンプの模式図である。
【図7】本発明の第1および第3の実施形態による方法のフローチャートである。
【図8】本発明の第2および第4の実施形態による方法のフローチャートである。
【図9】本発明の第5の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。本発明の実施形態に関する以下の記述は、説明のためにのみ与えられるものであって、添付の特許請求の範囲及びその等価物により規定される本発明を制限するものではないことは、本開示から当業者には明らかであろう。
【0028】
先ず図1〜4を参照すると、静脈の全体直径を増大させるためのシステム10が患者20に適用される状態で示されている。システム10は脱酸素化された静脈血を患者の静脈系22から取り出して、その血液を受容末梢静脈30へ送り込む。システム10はまた受容末梢静脈30内の血液速度を上昇させ、かつその受容末梢静脈30の内皮にかかるWSSを上昇させて、例えば腕24や脚26にある受容末梢静脈30の直径を増大させようとする。末梢静脈などの血管の直径は、血管の中心部の血液が流れる開放空間である内腔の直径を計測することにより決定される。本出願において、この測定値を“内腔直径”と呼ぶ。血管の直径は、血管壁を含むようにして計測することでも決定される。本出願において、この測定値を“全体直径“と呼ぶ。本発明は、血液(好ましくは低拍動の血液)を末梢静脈に差し向け、それによって末梢静脈中の血液速度を上昇させ、かつ末梢静脈の内皮にかかるWSSを上昇させることによって、末梢静脈の全体直径および内腔直径を両方同時に、かつ持続的に増大させることに関する。末梢静脈中の血液速度と末梢静脈の内皮にかかるWSSをポンプを利用して上昇させるシステムと方法について説明する。好ましくは、ポンプは血液を末梢静脈中に流し、そこではポンプで送り出された血液は、末梢動脈内の血液よりも脈圧が低い場合のように、拍動が抑えられる。
【0029】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈中のWSSレベルを上昇させる。静脈の通常のWSSは0.076Pa〜0.76Paの範囲である。本明細書に記載のシステムと方法は、受容末梢静脈内のWSSの大きさを、0.76Pa〜23Paの範囲、好ましくは2.5Pa〜7.5Paの範囲に上昇させるように構成されている。0.76Paより低い、持続されたWSSは静脈を拡張させるがその速度は比較的小さい。23Paより大きな持続されたWSSは静脈内皮の剥離(欠損)を起こしやすい。これは血液速度とWSSの上昇に応じた、血管の遅延拡張として知られる。WSSを所望の範囲に、少なくとも7日間、より好ましくは14〜84日間にわたって上昇させるように血液をポンプ輸送することにより、受容末梢静脈内に例えばある量の持続的拡張を起こし、もともと静脈直径が小さくて血液透析のアクセスサイトとしてまたはバイパスグラフトとして不適であった静脈を、利用可能とする。血液のポンプ輸送プロセスは定期的にモニタして調節することができる。たとえば、所望の持続的拡張が達成される以前に、末梢静脈の変化の状況を考慮してポンプを7日毎に調整してもよい。
【0030】
本明細書で記述するシステムと方法はまた、末梢静脈中の、そして特定の場合には末梢動脈中の血液速度を上昇させる。休息時に、ヒトの橈側皮静脈内の平均血液速度は概ね5〜9cm/sであり、上腕動脈では概ね10〜15cm/sである。本明細書に記載のシステムと方法では、受容末梢静脈の直径およびその受容末梢静脈へ血液をポンプ輸送する計画時間の長さに依存して、末梢静脈中の平均血液速度は15〜100cm/sの範囲、好ましくは25〜100cm/sの範囲に上昇させられる。好ましくは、平均血液速度を7〜84日間、または好ましくは7〜42日の間上昇させて受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用可能とする。これはまた、処置期間内に通常の平均血液速度の期間をはさみながら間歇的に平均血液速度を上昇させることによって達成することも可能である。
【0031】
静脈内での血流による力および血流による力の変化が、その静脈の全体直径および内腔直径を決めるのに決定的な役割を果たすことが研究により分かっている。たとえば、血液速度とWSSの持続的な上昇は静脈の拡張をもたらすことができる。血流とWSSの上昇は内皮細胞によって検知され、それが信号機構にトリガをかけて、血管平滑筋細胞を刺激し、単球とマクロファージとを吸引させ、コラーゲンやエラスチンなどの細胞外マトリックス成分を劣化させるプロテアーゼを合成し放出させる。このように本発明は、静脈の改造と拡張に至るまでの期間、血液速度とWSSとを上昇させることに関する。
【0032】
血管内の血流がハーゲン−ポアズイユの法則に従う(すなわち、完全な放物線状の速度分布を有する層流である)とすると、WSSは次式で与えられる。
WSS(τ)=4Qμ/πR3
ここで、 Q=体積流量(mL/s)
μ=血液の粘性(ポアズ)
R=血管の半径(cm)
τ=壁剪断応力(dyne/cm2)
【0033】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈中のWSSレベルを上昇させる。静脈の通常のWSSは0.076Pa〜0.76Paの範囲である。本明細書で説明するシステムおよび方法は、WSSを0.76Pa〜23Pa、望ましくは2.5Pa〜7.5Paの範囲に上昇させる。好ましくは、WSSを7〜84日間、または好ましくは7〜42日間上昇させて、受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用できるようにする。これはまた、処置期間に通常のWSSの期間をはさみながら間歇的にWSSを上昇させることによって達成することも可能である。
【0034】
受容末梢静脈内のWSSの大きさが0.076Paより低い場合には、静脈の拡張は起きるが、それはゆっくりとしたものになりやすい。受容末梢静脈内のWSSの大きさが23Paより高い場合には、静脈内皮の剥離(欠損)を起こしやすい。血管内皮の剥離は血液速度とWSSが高い場合の、血管の遅延拡張として知られる。WSSが高いと、静脈に十分な持続的拡張をもたらす。そして、もともと静脈直径が小さくて血液透析のアクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適であった静脈が、利用可能となる。受容静脈の直径は、例えば7〜14日毎に間歇的に測定して、処置期間中の静脈の拡張を最適化するためにポンプ速度を調節することができる。
【0035】
本明細書で記述するシステムと方法はまた、末梢静脈中の、そして特定の場合には末梢動脈中の血液速度を上昇させる。休息時に、ヒトの橈側皮静脈内の平均血液速度は概ね5〜9cm/sであり、上腕動脈では概ね10〜15cm/sである。本明細書に記載のシステムと方法では、受容末梢静脈の直径およびその受容末梢静脈へ血液をポンプ輸送する計画時間の長さに依存して、末梢静脈中の平均血液速度は15〜100cm/sの範囲、好ましくは25〜100cm/sの範囲に上昇させられる。好ましくは、平均血液速度を7〜84日間、または好ましくは7〜42日上昇させて受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用可能とする。受容末梢静脈内の平均血液速度が15cm/sより低い場合には、静脈の拡張は起きるが、それはゆっくりとしたものになりやすい。受容末梢静脈内の平均血液速度が約100cm/sより大きい場合には、静脈内皮の剥離(欠損)を起こしやすい。血管内皮の剥離は血液速度が高い場合の、血管の遅延拡張として知られる。血液速度が高いと、静脈に十分な持続的拡張をもたらす。そして、もともと静脈直径が小さくて血液透析のアクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適であった静脈が、利用可能となる。受容静脈の直径は、例えば7〜14日毎に間歇的に測定して、処置期間中の静脈の拡張を最適化するためにポンプ速度を調節することができる。
【0036】
図1〜3を参照すると、システム10は、患者20の静脈系22の供与静脈29から脱酸素化された静脈血を末梢または受容静脈30へ差し向けるためのポンプ−導管アセンブリ12を含んでいる。様々な実施形態において、末梢または受容静脈30は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈であってよい。血液透析のアクセスサイトやバイパスグラフトの形成に有用なそのほかの静脈、または静脈の利用を必要とするその他の血管手術に有用な他の静脈が利用されてもよい。ポンプ−導管アセンブリ12は、脱酸素化血液を末梢または受容静脈30へ送達する。末梢静脈30内の高速の血液34と高いWSSとによって、末梢または受容静脈30が時間と共に拡大される。こうして有利には、例えば血液透析用のAVFまたはAVGアクセスサイトの構築のために、またはバイパスグラフトとして利用可能となるように、本発明のシステム10と方法100(図7〜9参照)とが末梢または受容静脈30の直径を増大させる。
【0037】
本明細書で用いられている脱酸素化血液とは、毛細血管系を通過して、その周辺の組織によって酸素を除去されてから静脈系22に入ってくる血液のことである。本明細書で言う末梢静脈30とは、胸部や腹部や骨盤以外の部分にある任意の静脈のことを指している。図1Aと2Aの実施形態においては、末梢または受容静脈30は橈側皮静脈である。しかし他の実施形態においては、末梢静脈30は、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈であってよい。末梢静脈の他に、血液透析のアクセスサイトやバイパスグラフトの形成に有用なそのほかの静脈、または静脈の利用を必要とするその他の血管手術に有用な他の静脈、例えば胸部、腹部、および骨盤にある静脈など、が利用されてもよい。
【0038】
拍動を下げるために、及び/又は低拍動流を提供するために、いくつかの拍動減衰技術を利用することができる。その技術の一例として、ただしこれに限定するものではないが、血液ポンプのヘッドフロー特性の調整、ポンプの流出に対するコンプライアンスの付加、及び/又はポンプ速度の変調、などがある。
【0039】
手首の橈側皮静脈を利用して形成されたAVFは、血液透析の血管アクセスとして好適な形態であるが、この静脈はその位置にAVFを形成するには不適当な直径であることが多い。したがって、本発明は、ESRD患者に手首AVFを形成し、血管アクセスサイトとして手首AVFを利用して血管透析を受けるESRD患者の割合を増加させることに最も有利である。
【0040】
ポンプ−導管アセンブリ12は、血液ポンプ14と、合成導管16、18、つまり流入導管16と流出導管18とを含んでいる。血液ポンプは心室補助装置(VAD)の一部品として開発されてきた。そして、中程度の心不全のある成人患者と、小児患者の両者の処置用に小型化されてきた。これらのポンプは、移植可能であり、また患者の体外に保持することも可能であって、通常コントローラと電源に接続されている。図6には、ポンプ−導管アセンブリ12の概略図が示されている。ポンプ14は、軸流ポンプ、混合流ポンプ、遠心力ポンプなどの回転ポンプであってよい。特定の制約を認識することなし、ポンプ14のベアリングは、磁界または流体力を利用して、またはダブルピン型ベアリングなどの機械接触式ベアリングを利用して構成することができる。小児用VADシステム、または低流量VADシステムに使われるポンプを利用することができる。あるいは、ポンプ14は米国特許第6,015,272号明細書および第6,244,835号明細書に表示、記載されているような心臓外ポンプであってもよい。参照によりこの両者を本願に援用する。これらのポンプは本発明のシステム10及び方法100への使用に好適である。ポンプ14には流入導管16を通して引き込まれる脱酸素化血液を受ける入口38と、ポンプ14から出る血液流34用の出口40とがある。本発明のポンプ14として使用するのに好適な小児用VADシステムまたはそのほかの低流量VADシステムに使用されるポンプに関しては、大きさが、ほぼ単3電池の大きさ、または米国の50セント硬貨または25セント硬貨の直径くらいとすることができ、重さは、25〜35グラムかそれ以下とすることができる。これらのポンプは、たとえば0.3〜1.5L/minまたは1〜2.5L/min程度を送出するように設計されている。これらのポンプを改良して、小径の静脈用に送出量を0.05L/min程度の範囲にまで下げることが可能である。呼び水の量は例えば約0.5〜0.6mLである。ポンプ14の血液に接触する面は、好ましくは、Ti6Al4VとCPチタンとの合金を含み、また射出成型可能なセラミックやポリマ、及びTi6Al7Nbなどの代替チタン合金を含むことも可能である。血液への接触面はまた、1つまたは複数の被覆または表面処理をされていることが好ましい。したがって、血管系に接続することが可能であり、かつ受容静脈内で所望のWSSを達成できるような十分の量の血液を送り出すことさえできれば、多種類あるポンプ装置の任意のものを利用することが可能である。
【0041】
ポンプ14は図6に示すように、さまざまな部品42とモータ44を含んでいる。さまざまな部品42とモータ44はVADと共通のものであってもよい。たとえば、部品42には1つまたは複数のシャフト、インペラーブレード、ベアリング、静翼、回転子や固定子が含まれる。回転子は磁気浮上することができる。モータ44は、固定子、回転子、コイルおよび磁石を含んでよい。モータ44は、パルス幅変調電流を介して制御される多相モータなどのような任意の好適な電気モータであってよい。
【0042】
システム10と方法100は以下の刊行物に記載されている1つまたは複数のポンプを利用することが可能である。
P. Wearden外、「小児用心室補助装置PediaFlow(登録商標)(The PediaFlow(TM) Pediatric Ventricular Assist Device)」、小児心臓外科年報(Pediatric Cardiac Surgery Annual)、p92−98、2006。
J.Wu外、「心臓に調和する設計(Designing with Heart)」、ANSYS Advantage、第1巻2号、p補2−3、2007。
J. Baldwin外、「米国心臓、肺、血液研究所における循環支援プログラム(The National Heart, Lung, and Blood Institute Pediatric Circulatory Support Program)」、 Circulation、第113号p.147−155、2006。
ポンプ14として利用可能なポンプの他の例としては、以下のものがある。
World Heart,Inc.社; Novacor、PediaFlow、Levacor、MiVAD
Micromed,Inc.社;Debakey Heart Assist 1−5
Thoratec,Inc.社; HeartMate XVE、HeartMate II、HeartMate III、IV AD、PVAD
Abiomed,Inc.社;Impella、BVS5000、AB5000、Symphony
CardiacAssist,Inc.社;TandemHeart
Ventracor,Inc.社;VentrAssist
独国Berlin Heart社; Incor、Excor
テルモ社;デュラハート
Heart Ware,Inc.社;HVAD、MVAD
Jarvik Heart,Inc.社;Jarvik 2000 Flowmaker、Pediatric Jarvik 2000 Flowmaker
京セラ社;ジャイロポンプC1E3
Cleveland Clinic財団;CorAide、PediPump
MEDOS Medizintechnik AG社;MEDOS HIA VAD
Ension,Inc社;pCAS
Circulite,Inc社;Synergy
Levitronix,LLC社;CentriMag、PediMag、UltraMag
Medtronic,Inc.社;BP−50、BP−80
ポンプは、手動またはソフトウェアプログラムやアプリケーションや他の自動システムで監視および調節が可能である。ソフトウェアプロラムでは、ポンプ速度を自動的に調節して、受容静脈中の血流量とWSSを所望の大きさに維持することができる。あるいはまた、静脈の直径と血流を手動で定期的にチェックすることができ、たとえば、ポンプのヘッド流特性を調節し、ポンプ出力流にコンプライアンスを付加し、及び/又はポンプ速度を変調することにより手動でポンプを調節することができる。それ以外の調節もまた可能である。
【0043】
合成導管16、18はPTFE及び/又はダクロン(登録商標)でできており、好ましくは、合成導管16、18がねじれや閉塞を受けにくいように強化されている。導管16、18の全てまたは一部は、血液透析カテーテルを作製するのに通常利用される、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、及び/又はシリコーンなどの材料でできていてもよい。導管16、18が、柔軟性、無菌性、捩じれ耐性などの必要特性を持ち、かつ必要に応じて吻合により血管に接続可能であるか、または血管の内腔に挿入可能でありさえすれば、合成導管16、18はいかなる材料または材料の組合せでできていてもよい。さらに、合成導管16、18は好ましくは(必要に応じて)トンネリング操作に必要な特性を示し、かつ血栓抗生のある内腔表面を有する。別の実施例として、合成導管16、18は、内腔層とは異なる材料でできた外層を持ってもよい。合成導管16、18はまたシリコンで被覆されて、体からの取り出しを容易にし、かつラテックスアレルギーを回避することができる。特定の実施形態において、合成導管16または18と静脈29または30との間の接続は、縫合糸を連続的または分割して使用する、従来の外科的吻合術を利用して行われる。これはこの後では“吻合接続”と呼ぶ。吻合接続は外科クリップとそのほかの吻合の標準的方法とにより行うことも可能である。
【0044】
図1〜3を参照すると、合成流入導管16には、供与静脈29あるいは心臓の右心房31とを流体接続するように構成された第1の端部46と、ポンプ14の入口38に接続された第2の端部48とがある。供与静脈29は、肘正中静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、上大静脈、下大静脈、または受容末梢静脈に持続的な拡張を起こさせるためにポンプへ十分血流を供給できるその他の静脈を含むことができる。合成流出導管18は、受容末梢静脈30と流体接続されるようになった第1の端部52と、ポンプ14の出口40に接続された第2の端部54とがある。ポンプ−導管アセンブリ12は、供与静脈29からの血液を受容静脈30に向かって流し、末梢静脈の全体直径および内腔直径が持続的に増大するように十分な期間に亘って末梢静脈中の血液速度とWSSを所望の大きさにまで上昇させるように構成されている。特定の実施形態において、合成導管16、18の一部は患者20の体外にあってよい。図1と3を参照すると、流入導管16の第1の端部46と、流出導管18の第1の端部52は吻合接続されるようになっている。図1Bと1Cに示すように、第1の端部46は吻合接続によって内頸静脈(これが供与静脈29となる)に流体接続され、流出導管18の第1の端部52は吻合接続によって橈側皮静脈(これが受容静脈30となる)に流体接続されている。
【0045】
図2A〜2Cを参照すると、合成流入導管16の第1の端部46はカテーテルとして構成されている。合成流入導管16と静脈系との間の流体接続は、合成流入導管のカテーテル部50の先端を上大静脈27の内部へ配置することで行われる。以後これを“カテーテル接続”と呼ぶ。供与静脈29(この場合は上大静脈27)との間でカテーテル接続がなされる場合、合成流入導管46のカテーテル部50は、静脈の内腔直径がカテーテル部50を受け容れるのに適当な大きさであれば、任意の場所で静脈系に入ることができる。カテーテル部50の先端は、所望の血液流34を受容静脈30に提供するために、カテーテルに十分な血液が引き出すことのできる任意の場所に配置してよい。カテーテル部50の先端の好適な場所としては、腕頭静脈、上大静脈27、および右心房31がある。ただしこれに限られるわけではない。図2B〜2Cに示す実施形態において、システム10は患者20の上大静脈27から脱酸素化血液を引き出し、腕24にある橈側皮静脈30に向けて送り出す。
【0046】
図3に示す別の実施形態においては、システム10は脚部26において、供与静脈29(この場合大伏在静脈のより中心部)から脱酸素化された静脈血を受容末梢静脈30(この場合大伏在静脈のより末梢部)に向かって流し、これによって、受容大伏在静脈30の内腔直径と全体直径が持続的に増大するように十分な期間に亘って末梢静脈中の血液速度とWSSを所望の大きさまで上昇させる。図3に示す実施形態において、流入導管16は、吻合接続によって患者20の大伏在静脈29に流体接続されている。実施例のあるものでは、血液は、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、流出導管との接続部付近の受容静脈内の平均脈圧はポンプの動作時に、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満である。末梢静脈への血液のポンプ輸送と、血液速度およびWSSの上昇は、受容大伏在静脈30の全体直径と内腔直径とが持続的に増大するように十分な期間に亘って継続され、心臓または末梢バイパスグラフト形成手術の一環としての患者の静脈の一部の摘出と自己移植、または患者の静脈の一部を自己移植する必要のあるそのほかの手術を支援する。
【0047】
図4Aの別の実施形態においては、2つの専用カテーテル、すなわち流入カテーテル55と流出カテーテル56に体外ポンプ114が取り付けられてカテーテル−ポンプアセンブリ13を形成している。ポンプ114は供与静脈29から脱酸素化血液を流入カテーテル55の内腔中へ引き込み、その血液を流出カテーテル56から受容末梢静脈30の内腔中へ放出する。これにより、受容末梢静脈30内の血液速度とWSSを上昇させる。
【0048】
図4Aと4Bはシステム10の別の実施形態を示す。ポンプ−カテーテルアセンブリ13は、静脈部分dの血液速度とWSSとを上昇させるように構成されている。流入カテーテル55と流出カテーテル56は任意選択で、その全部または一部が(ダブルルーメンカテーテルのように)一体となっていてもよい。そして受容末梢静脈30の内腔へ経皮挿入され、侵襲性の手術を不要とする。この実施形態に関しては、カテーテルの一部は感染リスクを低減するために、皮膚から出る前は皮下のトンネルとなっていてもよい。カテーテル119と120の体外部分および体外ポンプ114は、体に固定され、電源に接続されて、その受容末梢静脈30の部分dの全体直径と内腔直径とが持続的な増大を起こすのに十分な期間に亘り受容末梢静脈30の部分d内の血液34の速度とWSSとを上昇させるように作用する。受容末梢静脈30の部分dに所望量の直径の拡張が生じれば、ポンプ−カテーテルアセンブリ12は取り外されて、それと同時またはその後の操作のいずれかにおいて、その受容末梢静脈30の拡張した部分dの少なくとも一部を利用した血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトの形成手術を行うことができる。
【0049】
図5A、5Bを参照すると、患者20に対して使用される静脈の全体直径を増大させるためのシステム10が示されている。システム10は患者の末梢動脈221から酸素化された動脈血を取って、受容末梢静脈30の中へその血液を送り出す。そして、受容末梢静脈30の血液速度とWSSとをある期間に亘って上昇させて、例えば腕24または脚26にあるその受容末梢静脈30の直径を持続的に増大させるように構成されかつそのように作用する。ポンプ214が腕24の中に移植されているシステム10の一実施形態が図示されている。ポンプ214は、吻合接続によって腕24の動脈221へ接続された入口216を備えている。ポンプ214は、吻合接続によって末梢静脈30へ接続された出口218も備えている。ポンプ214は制御ユニット58により制御されかつ動力を与えられる。運転時には、ポンプ214は動脈221から血液を引き出し、末梢静脈30の中へポンプ輸送する。この実施形態は、長い合成導管を必要としない手術の実行が可能であり、末梢静脈30と末梢動脈221の両方において血液速度とWSSを上昇させることができる。そして十分な期間運転すれば、結果として静脈30と動脈221とを同時に拡張させることができる。具体的にはポンプ214は患者20の前腕内に移植される。受容末梢静脈30に所望量の直径の拡張が生じれば、ポンプ214は取り外されて、それと同時またはその後の手術のいずれかにおいて、その拡張した動脈221または静脈30の少なくとも一部を利用した血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトの形成手術を行うことができる。
【0050】
様々な実施形態において、酸素化された動脈血は供与動脈から引き出されてもよい。供与動脈としては、橈骨動脈、尺骨動脈、骨間動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、膝窩動脈、上腕深動脈、浅大腿動脈、または大腿動脈が含まれてよい。ただしこれに限るものではない。
【0051】
図6には、システム10の一実施形態の概略図が示されている。制御ユニット58はポンプ14に接続されていて、ポンプ14の速度を制御し、ポンプ14の機能上の情報を収集するようになっている。制御ユニット58は、患者20の体内に移植されてもよいし、患者20の体外にあってもよいし、または体内に移植された部分と体外にある部分とがあってもよい。電源は電源ユニット60の中に組み込まれていて、制御ユニット58とポンプ14に接続されている。電源ユニット60はポンプ14と制御ユニット58に定常動作用のエネルギを与える。電源ユニット60は、患者20の体内に移植されてもよいし、患者20の体外にあってもよいし、または体内に移植された部分と体外にある部分とがあってもよい。電源ユニット60は電池61を含んでもよい。電池61は好ましくは充電可能であり、AC電源へのコネクタ69を通して充電される。このような充電可能な電池は、リード線を利用してまたは経皮的なエネルギ伝達によって充電することも可能である。任意選択で、コネクタ69は電池61の助けなしに電力ユニット60へ電力を送達してもよい。この開示から、制御ユニット58は代替的な電力制御システムを利用するように構成できることが当業者には明らかであろう。
【0052】
センサ66、67は、合成導管17、18、またはポンプ14、または制御ユニット58の中に組み込まれてもよい。センサ66と67はケーブル68で制御ユニット58に接続されている。あるいは、制御ユニット58と無線で通信してもよい。センサ66と67は、血液流、血液速度、内腔内圧、および流れ抵抗をモニタすることが可能であり、信号を制御ユニット58に送ってポンプ速度を変更させることもできる。たとえば、ポンプで送り出された血液を受けて末梢静脈30が拡張すると、流出導管18からの血液流34への抵抗とともに、静脈内の血液速度が下がる。所望の血液速度とWSSを維持するためには、末梢静脈30が時間と共に拡張するにつれてポンプ速度を調節しなければならない。センサ66、67は末梢静脈30内の血液速度または血液流に対する抵抗を検出し、制御ユニット58へ信号を送る。それに応じて制御ユニットはポンプ14の速度を上昇させる。このように有利には、本発明は制御ユニット58とセンサ66、67からなる監視システムを提供し、ポンプ速度を調節して受容末梢静脈30が時間と共に拡張する間、所望の血液速度とWSSを維持するようにする。あるいはまた、制御ユニットは、血液流、血液速度、内腔内圧、または流れへの抵抗を評価する基準として、モータ44への電流の内部測定値を含む測定値に依存してもよく、そうしてセンサ66、67を不要とする。制御ユニット58は、ポンプ速度またはそのほかのポンプパラメータを調節するための手動制御を含んでいてもよい。
【0053】
制御ユニット58はポンプ−導管アセンブリ12とは動作上でつながっている。具体的には、制御ユニット58はポンプ14と1つまたは複数のケーブル62で動作的につながっている。電源ユニット60を利用して、制御ユニット58が好ましくはポンプへモータ制御電流を供給する。これは例えばケーブル62を通してポンプ14へ送られるパルス幅変調モータ制御電流である。制御ユニット58はポンプ14からのフィードバックやその他の信号を受信することもできる。制御ユニット58はさらに通信ユニット64も含んでおり、例えばテレメータ伝送を通じて、データの収集とデータの送信に利用される。さらに、通信ユニット64は制御ユニット58のプログラム更新のための命令またはデータを受信するようになっている。したがって、通信ユニット64はポンプ14を制御するための命令またはデータを受信するようになっている。
【0054】
有利には、本発明は制御ユニット58とセンサ66、67からなる監視システムを提供し、ポンプの運転を調節して受容末梢静脈30が時間と共に拡張する間、所望の血液速度とWSSを維持するようにする。
【0055】
ポンプ14は、血液流34を例えば約50〜1500mL/minの範囲で提供し、受容静脈内のWSSを0.76Pa〜23Paの範囲、好ましくは2.5Pa〜7.5Paの範囲に上昇させることが望ましい。ポンプ14は、例えば7〜84日の間、好ましくは例えば14〜42日の間、受容末梢静脈30内の血液流とWSSを所望水準に維持するようになっている。静脈を大幅に拡張する必要があるとか、または静脈の拡張がゆっくりしか起きないような特定の状況においては、ポンプ14は末梢静脈30内の血液流とWSSを42日よりも長い期間に亘って維持するようになっている。
【0056】
ポンプ−導管アセンブリ12は患者20の右側面に移植することができる。または必要があれば左側面に移植することも可能である。導管16と18の長さは、所望の配置に応じて調整することができる。具体的に図1Bと1Cに関しては、流入導管16の第1の端部46は右内頸静脈29内の位置29に流体接続されており、また流出導管18の第1の端部52は右前腕内の橈側皮静脈30に流体接続されている。具体的に図2Bと2Cに関しては、流入導管16の第1の端部46は上大静脈27の位置29に流体接続されており、また流出導管18の第1の端部52は右前腕24内の橈側皮静脈30に流体接続されている。接続された後にポンプ輸送が開始される。すなわち、制御ユニット58がモータ44の運転を開始する。ポンプ14は流出導管18を通して末梢静脈30へ血液34を送り出す。制御ユニット58は、時間経過の間中、センサ66と67により提供されるデータを利用してポンプ輸送を調節する。図1〜4は、システム10が脱酸素化血液をポンプ輸送する例を示している。図5は、システム10が酸素化された血液をポンプ輸送する例を示している。実施例のあるものでは、血液は、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、受容静脈内の平均脈圧はポンプが動作して血液を末梢静脈中に送達している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満である。別の実施形態では、血液は、末梢動脈内の血液の拍動に等しいかそれよりも高い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。これらの実施形態に関しては、流出導管との接続部付近の受容静脈内の平均脈圧はポンプの動作状態で、40mmHg以上である。
【0057】
図1Bと1Cに示した特定の実施形態においては、供与静脈29は頸静脈21、好ましくは内頸静脈21である。内頸静脈21は、内頸静脈21と右心房31との間に弁がなく、このために合成流入導管16が単位時間当たり多量の脱酸素化血液を吸引することが可能となり、特に供与静脈29として有用である。流入導管18は患者20の内頸静脈21に流体接続している。脱酸素化血液は内頸静脈21から吸引されて腕24もしくは脚26の受容末梢静脈30に送り込まれ、受容末梢静脈内の血液34の速度とWSSを上昇させる。実施形態のあるものでは、血液は、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、流出導管との接続部に近い受容静脈内の平均脈圧はポンプが動作している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満である。
【0058】
前述したように、図5Bはシステム10が酸素化された血液を吸引する例を示している。流入導管216は患者20の橈骨動脈221に流体接続され、流出導管218は橈側皮静脈に流体接続され、いずれも吻合接続を利用している。こうして、酸素化された血液が橈骨動脈221から吸引されて腕24の橈側皮静脈30にポンプ輸送されて、受容末梢静脈の全体直径および内腔直径が持続的に増大するまでの十分な期間に亘って橈側皮静脈中の血液速度とWSSを上昇させる。実施形態のあるものでは、血液は、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、流出導管との接続部付近の受容静脈内の平均脈圧はポンプが動作して受容末梢静脈中に血液を送達している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満である。
【0059】
図7〜9を参照すると、さまざまな実施形態及び方法100で、末梢静脈30の全体直径と内腔直径が増大される。図7に示すように、ステップ101において、医師または外科医が静脈または動脈にアクセスする処置を実行し、ポンプを接続して脱酸素化血液が流れている静脈と流体連通を行う。ステップ102において、ポンプが末梢静脈に接続される。この実施形態では、ポンプ−導管アセンブリ12は好ましくは患者20の首、胸および腕24内に移植される。末梢静脈30が伏在静脈36である別の実施形態では、ポンプ−導管アセンブリ12は脚26内に移植される。一実施例においては、医師は、ポンプ−導管アセンブリ12の第1の端部46を供与静脈29に流体接続し、ポンプ−導管アセンブリ12の第2の端部を受容末梢静脈30に流体接続する。この時2つの場所を皮下接続するために、(必要に応じて)トンネル方式を利用する。ステップ103において、脱酸素化血液が受容末梢静脈内にポンプ輸送される。ステップ104において、ポンプ輸送をある期間の間継続し、医師は受容末梢静脈が拡張するのを待つ。一実施形態において、ポンプのスイッチが入れられて脱酸素化血液がポンプ輸送され始めた後、必要に応じて、皮膚切開が閉じられる。
【0060】
別の実施形態では、合成導管16と18の一部、及び/又はポンプ14は体外に配置されている。この実施形態においては、ポンプ14がスイッチを入れられ、制御ユニット58で制御されてポンプ−導管アセンブリ12を通して脱酸素化血液を受容末梢静脈30へ送り出し、末梢静脈30中の血液速度とWSSを上昇させるようにする。ポンプ輸送工程は定期的にモニタされ、受容末梢静脈30の変化に応答して、制御ユニット58を利用してポンプ14を調節する。必要に応じて定期的に調整することで、ポンプは十分な期間に亘って運転し続けて、末梢静脈30の全体直径と内腔直径に持続的な拡張をもたらす。それに続いてステップ105において、ポンプ−導管アセンブリ12が切断されて取り外される。ステップ106において、持続的に拡張した末梢静脈30がAVF、AVGまたはバイパスグラフトの形成に利用される。
【0061】
図8に示すように方法100の別の実施形態において、医師または外科医はステップ107でポンプ−カテーテルアセンブリの1つまたは複数のカテーテル部50を静脈系に挿入し、供与静脈と末梢静脈30の中に配置する。ステップ108で、ポンプを運転して脱酸素化血液を脱酸素化血液中に送り出す。そうして、ステップ109で医師は末梢静脈の拡張を待つ。ステップ110とステップ111でそれぞれ、ポンプ−カテーテルアセンブリが取り外され、持続的に拡張した静脈を利用してAVF、またはAVG、またはバイパスグラフトが形成される。
【0062】
図9は、方法100のさらに別の実施形態を示す。ステップ112において、医師または外科医は静脈にアクセスしてポンプと末梢静脈を接続し、流体連通を確立する処置を実行する。ステップ113において、ポンプが末梢動脈に接続される。ステップ114でポンプが作動され、末梢動脈からの酸素化された血液が末梢静脈に送り込まれる。ステップ115において、ポンプ輸送をある期間継続して、医師は受容末梢静脈が拡張するのを待つ。ステップ116でポンプが取り外され、ステップ117で持続的に拡張した静脈を利用してAVF、AVG、またはバイパスグラフトが形成される。
【0063】
様々な実施形態において、方法100及び/又はシステム10は、連続的な処理ではなく、周期的、及び/又は間歇的に利用されてもよい。一般に、3〜5時間かかる血液透析処置は、1週間に最大3回まで、透析施設において行われる。したがって、システム10及び方法100の様々な実施形態を、4〜6週間の期間、同様のスケジュールで血液のポンプ輸送処理を行なうのに利用することができる。処置は、外来処置を含め、任意の好適な場所で実行することができる。
【0064】
一実施形態において、血液のポンプ輸送処置が、血液透析処置に併せて間歇的に行われる。この実施形態においては、低流量ポンプと、流入カテーテルとして機能する標準的な留置血液透析カテーテルと、流出カテーテルとして機能する末梢静脈中に配置された微小外傷性針またはカテーテルとを利用することができる。ベッドサイドの操作盤で運転される連続流血液ポンプ(たとえば、カテーテル方式のVADと小児用心肺バイパス(CPB)または体外膜型人工肺(ECMO)ポンプ)のいくつかにおいて本方法100の利用が容易に適応できる。
【0065】
血液のポンプ輸送を周期的に行う様々な実施形態においては、血管へのアクセスも1つまたは複数のポートすなわち外科的に形成したアクセスサイトを介して行われてもよい。これに限るものではないが一例として、アクセスは、針、末梢挿入中心静脈カテーテル、トンネル型カテーテル、非トンネル型カテーテル、及び/又は皮下移植可能ポート、などによって達成されてよい。
【0066】
システム10の別の実施形態においては、血管内のWSSと血液速度を上昇させるために低流量ポンプが使用される。低流量ポンプは、血管に流体接続された入口導管と、静脈に流体接続された出口導管とを持ち、7日〜84日の間の期間に亘って血管から静脈へ血液をポンプ輸送する。この低流量ポンプは、静脈の壁剪断応力が約0.076〜約23Paの間の範囲となるように血液を送り出す。低流量ポンプはまた調節装置も含んでいる。調節装置は、ソフトウェアベースの自動調節システムと通信してもよいし、手動制御になっていてもよい。入口導管と出口導管は、長さが約10cm〜約107cmの範囲であってよい。
【0067】
本発明はまた、ポンプ−導管ンシステム10の様々な実施形態を含む、血管ポンプシステムの組立および運転方法にも関する。この方法は、ポンプ−導管システム10と流体連通している第1の導管を動脈に取り付け、ポンプ−導管システムと流体連通している第2の導管を静脈に取り付けることを含む。そうしてポンプ−導管システム10が起動されて、動脈と静脈の間に血液をポンプ輸送する。
【0068】
本発明の範囲を理解する際に、本明細書において使用されている“備える”という用語、およびその派生語は、非限定用語であって、記述された特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を特定するが、他の記述されていない特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を除外しないことを意図している。このことは、“含む”、“有する”、などの用語およびその派生語などの、同様の意味を有する用語についてもあてはまる。本明細書で使用されている、たとえば“実質的に”、“約”、“ほぼ”、などの程度を表す用語は、最終的な結果が大きくは違わない程度に、修飾された用語の適度な偏倚を意味している。たとえばこれらの用語は、それが修飾する用語の意味を否定しない限りは、修飾される用語の少なくとも±5%の偏差を含むものと解釈される。
【0069】
本発明は選択された実施形態のみを用いて説明したが、当業者であればこの開示から、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行なえることが明らかであろう。たとえば、さまざまな部品の寸法、形状、位置、または配向は必要に応じて、及び/又は所望により変更することができる。直接接続する、または相互に接触するとして示された部品は、その間に中間構造物が配置されてもよい。1つの要素の機能は2つの要素で実行されてもよいし、その逆であってもよい。1つの実施形態の構造と機能は別の実施形態に取り入れられてもよい。特定の一実施形態に、すべての利点が同時に存在する必要はない。従来技術とは異なる固有の特徴はすべてそれ単独で、または他の特徴との組合せで、そのような特徴により具現化される構造及び/又は機能的概念を含めて、出願人によるさらなる発明の個別の記述であるとみなされるべきである。したがって、本発明による実施形態の上記の記述は、説明のためにのみ与えられたものであり、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される本発明を制限するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は患者の静脈の全体直径および内腔直径を持続的に増大させるためのシステムと方法に関する。特に本発明は、血液ポンプを利用してある期間に亘り血液速度および末梢静脈の内皮にかかる壁剪断応力(WSS)を上昇させ、結果としてこれらの静脈の全体直径および内腔直径を持続的に増大させることに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎疾患を持つ患者の多くは、最終的には末期腎不全(ESRD)に至り、体内から体液や老廃物を除去し、生命を維持するために腎代替療法を必要とする。腎代替療法を必要とするESRD患者の殆どは、血液透析を受ける。血液透析中は、血液が循環系から取り出され、血液透析器で浄化されて循環系に戻される。外科医は、ESRD患者から迅速に血液を取り出しかつ戻すための“血管アクセス部位”を個別に形成する。血液透析器そのもの及び血液透析処置用のそのほかの部品に関しては大きな進歩が得られてきているが、血液透析時に患者から血液を取り出し、また戻すための、持続的で信頼性のある血管アクセス部位の形成に関しては非常にわずかな進歩しか見られず、腎代替療法のアキレス腱となっている。これはESRD患者の発病および死を招くことが多く、世界的に、健康管理者、支払者、および公的支援制度への大きな負担となっている。
【0003】
血液透析アクセス部位には一般に3つの形態がある。それは、動静脈フィステル(AVF)、動静脈グラフト(AVG)、カテーテルである。この部位のそれぞれのタイプは、以下で述べるように、失敗の比率が高かったり、複雑であったりする。
【0004】
AVFは動脈と静脈とを手術によって直接接続して構築される。機能的な手首AVFがもっとも長持ちのする、最も好ましい形態の血液透析アクセス形態であり、平均開通性は約3年である。接続部から離れてゆく静脈は“流出”静脈と呼ばれる。流出静脈の膨張はAVFが“熟成”して利用可能となるための重要な要素である。AVFで形成された流出静脈中の高速の血液流と、静脈内皮に作用するWSSとが、静脈を膨張させる主要因子であることが広く知られている。残念ながら患者の約80%は、手首へのAVF設置に適さない。それは一般に静脈の直径が適さないからである。AVF設置が試みられる適格な患者に関しても、その約50〜60%はさらなる医療処置なしではその部位を利用することができない。これは“熟成障害”問題として知られている。AVFの熟成障害における重要因子として、血管直径の小さいこと、特に静脈直径の小さいことが挙げられる。“内膜過形成”として知られる強度の静脈壁瘢痕の急速な出現も、AVF熟成障害の重要因子とされている。動脈から出て静脈に入る高速の血液流が作る乱流がこの静脈壁瘢痕の主因であることが一般に理解されている。また、拍動性の動脈血が入り込むことにより静脈が周期的に拡張されることも、AVFにおける内膜過形成と流出静脈の閉塞とを刺激する役割も果たしていると主張する研究者もいる。このように急速な流れは問題を含むことが分かり、バンドによって内腔直径を制限して、血液透析のアクセス部位での流れを抑えて不良率の最小化を図ろうとする試みがなされてきている。現時点においては、流れを媒介とする膨張という正の効果を維持しつつ、静脈壁瘢痕や閉塞という負の効果を排除する方法は存在しない。驚くことではないが、新たに末期腎不全で血液透析を必要とすると診断された患者が、血液透析を開始してから6か月以内に機能AVFを持つ可能性は50%に過ぎない。機能AVFを持たない患者は、より高価な血管アクセス方式での透析を余儀なくされ、合併症の併発、病状の進行、および死に対してより大きなリスクを持つ。
【0005】
血液透析のための血管アクセスの第2のタイプは、動静脈グラフト(AVG)として知られている。AVGは、通常腕または脚の動脈と静脈の間に合成導管セグメントを配置して構築される。合成導管部分が皮膚の直下に配置され、針でのアクセスに使用される。AVGは、皮膚表面上には見えない静脈を流出用に利用するので、より多くの患者に適用可能であり、初期不良率もAVFに比べてはるかに低い。残念なことは、AVG手段の一次開通性が約4〜6か月しかないことである。その殆どは、合成導管との接続部位近辺の静脈壁に強度の内膜過形成および瘢痕が急速に成長するためであり、それが狭窄および血栓症に繋がっている。AVFの不良の状態と同じように、AVGによって生成される血液の高速乱流が流出静脈壁に内膜過形成と瘢痕を進行させ、それがAVGの閉塞をもたらすことが多い。また、拍動性の動脈血が入り込むことにより静脈が周期的に拡張されることが、AVGにおける内膜過形成と流出静脈の閉塞の形成にある役割を果たしていると主張する研究者もいる。AVGはAVFよりも好ましくないものであるが、主としてAVFに適さないという理由で、約25%の患者がAVGで透析を行っている。
【0006】
AVFやAVGで血液透析を受けられない患者は、血液透析を受けるために大きなカテーテルを首、胸、または脚に挿入しなければならない。このカテーテルは汚染されて、患者に敗血症および死の高いリスクをもたらすことが多い。カテーテル敗血症になった患者は通常、入院してカテーテルを取り去り、仮のカテーテルを挿入して抗生物質の静脈内投与を受ける。そうして感染が解消されると、新しいカテーテルまたは別のタイプのアクセス部位の設置を行う。カテーテルはまた、その先端の周りに血栓やフィブリンの蓄積による閉塞を受けやすい。血液透析カテーテルの平均開通性は約6か月であり、一般的には、血液透析のアクセスとしては最も望ましくないものである。AVFやAVGに比べて望ましくないが、それでも約20%の患者はカテーテルで透析を行う。それは主として、その患者がまだ機能AVFまたはAVGを受けることができないか、AVFまたはAVGを受けるのに適していないことによる。
【0007】
血液透析アクセス部位不良の問題は、常套的に血液透析を受けるESRD患者の数が世界的に増加してきたために近年大きな注目を浴びるようになった。2004年に、メディケア&メディケイドサービスセンター(CMS)は、末期腎不全患者に対する血液透析へのアクセス提供においてAVFの利用を増やすための、“フィスチュラファースト”イニシアチブを発表した。この大きなイニシアチブは、AVFで血液透析を受ける患者は、AVGあるいはカテーテルによる患者に比べて罹病率と死亡率が減少していることを示すメディケアの公表データに応えるものである。AVF患者に関わる経費は、AVG患者に関わる経費よりも、透析の初年度及び次年度以降において大幅に低くなっている。AVFでの透析の経費節約は、カテーテルでの透析に比べてもはるかに大きい。
【0008】
AVFまたはAVGに適格となるためには、末梢静脈の内腔直径がそれぞれ少なくとも2.5mmと4mmでなければならない。しかし現状においては、静脈寸法が小さくてAVFまたはAVGに非適格であるESRD患者に対して末梢静脈の全体直径と内腔直径とを持続的に増大させる方法はない。したがって、静脈が小さすぎてAVFまたはAVGを試みることのできない患者は、カテーテルなどのあまり望ましくない血管アクセス形態をとらざるを得ない。同様に、静脈直径の小さい患者に特に多く起きるAVF熟成障害に対しても現在の処、処置の方法がない。したがって、AVFやAVGを形成する前に静脈の全体直径および内腔直径を拡大するためのシステムと方法が必要とされる。血液透析において、カテーテル法などの望ましくない血管アクセス形態を取らざるを得なかったESRD患者は、AVFまたはAVGを利用可能な患者に比べて罹病または死亡するリスクが大幅に高かったとする最近の研究によって、この必要性の重要度が強調されている。
【0009】
血管の直径を持続的に増大させるニーズは他の患者にもある。例えば、末梢バイパスグラフトを必要とする、末梢動脈のアテローム性動脈硬化閉塞の患者などである。脚部動脈に血流障害のある末梢動脈疾患(PAD)を持つ患者は、跛行や皮膚潰瘍や組織虚血となることが多く、これらの患者の多くは結果的に罹患している四肢部分の切断を必要とする。これらの患者の中には、バルーン血管形成または血管ステントの移植により、障害を適度に軽減することができる場合もある。しかし、多くの患者においては、このような侵襲性が最小の療法では障害に対処できない。したがって外科医はバイパスグラフトを形成して、障害のある動脈の周りに血液を分散させ、罹患している末端部分へ適切な血液流を回復させるようにすることが多い。しかしながら、末梢バイパスグラフトを必要とする患者の多くは、静脈直径が適切でないために、バイパス導管として自分自身の静脈を利用することができず、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、例えばゴアテックス(登録商標))やポリエチレンテレフタレート(PET、例えばダクロン(登録商標))などの材料でできた合成導管を利用せざるを得ない。研究結果によれば、バイパス導管として患者自身の静脈を使う方が、PTFEやダクロンなどの材料でできた合成バイパス導管を利用する場合に比べて長期間の開通性に優れていることが分かっている。合成バイパス導管の使用は、グラフトの遠位端における動脈狭窄および導管全体における血栓症のリスクが増大し、その結果バイパスグラフト障害が起きて、症状の再発または悪化を生じる。したがって、バイパスグラフト形成の前に静脈の全体直径および内腔直径を増大させるシステムおよび方法が必要とされる。これは静脈直径が不適当であるために自分自身の静脈をバイパスグラフト形成に利用することが適さない患者に特に必要とされている。
【0010】
上記の観点から、血液透析のアクセスサイトおよびバイパスグラフトの形成に利用できるようにするために、末梢静脈の内腔直径および全体直径を持続的に増大させるためのシステムおよび方法が必要とされることが、本開示から当業者には明らかであろう。本明細書で説明する本発明は、当技術分野のこの必要性並びに他の必要性に取り組むものであり、それらは本開示により当業者には明らかとなるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、末梢静脈の全体直径および内腔直径を増大させるために血液ポンプを利用する方法を含む。末梢静脈が拡張する結果が得られるのに十分な期間、末梢静脈の上流に血液ポンプを配置して、末梢静脈の内皮にかかる壁剪断応力(WSS)を増大させるシステムと方法が説明される。ポンプは、好ましくは末梢動脈中の血液の脈圧よりも低い脈圧にして、血液を末梢静脈中へ送る。
【0012】
静脈内での血流による力および血流による力の変化が、その静脈の全体直径および内腔直径の決定に極めて重要な役割を果たすことが研究により分かっている。たとえば、血液速度およびWSSの持続的な上昇によって静脈の拡張がもたらされ、その拡張量は、血液速度とWSSの上昇量と、血液速度とWSSが上昇している時間との両方に依存する。血液速度とWSSの上昇は内皮細胞によって検知され、それが信号機構にトリガをかけて、血管平滑筋細胞を刺激し、単球とマクロファージとを吸引させ、コラーゲンやエラスチンなどの細胞外マトリックス成分を劣化させるプロテアーゼを合成し放出させる。このように、本発明は、静脈の改造と拡張に至る十分な期間、好ましくは7日より長い期間に亘り、血液速度とWSSとを上昇させることに関する。本発明はまた、静脈の改造と拡張を最適化するためのポンプパラメータの周期的調整方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
壁剪断応力は、血流増加に対応する血管拡張の鍵となる因子であることが分かっている。血管内の血流がハーゲン−ポアズイユの法則に従う(すなわち、完全な放物線状の速度分布を有する層流である)とすると、WSSは次式で与えられる。
WSS(τ)=4Qμ/πR3
ここで、 Q=体積流量(mL/s)
μ=血液の粘性(ポアズ)
R=血管の半径(cm)
τ=壁剪断応力(dyne/cm2)
【0014】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈中のWSSレベルを上昇させる。静脈の通常のWSSは0.076Pa〜0.76Paの範囲である。本明細書で説明するシステムおよび方法は、WSSを0.76Pa〜23Pa、望ましくは2.5Pa〜7.5Paの範囲に上昇させる。好ましくは、WSSを7〜84日間、または好ましくは7〜42日間上昇させて、受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用できるようにする。これはまた、処置期間内に通常のWSSの期間をはさみながら間歇的にWSSを上昇させることによって達成することも可能である。
【0015】
本明細書で記述するシステムと方法はまた、末梢静脈中の、そして特定の場合には末梢動脈中の血液速度を上昇させる。休息時にヒトの橈側皮静脈内の平均血液速度は概ね5〜9cm/sであり、上腕動脈では概ね10〜15cm/sである。本明細書に記載のシステムと方法では、受容末梢静脈の直径とその受容末梢静脈へ血液をポンプ輸送する計画時間の長さとに依存するが、末梢静脈中の平均血液速度を15〜100cm/sの範囲、好ましくは25〜100cm/sの範囲に上昇させる。好ましくは、平均血液速度を7〜84日間、または好ましくは7〜42日の間上昇させて受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用可能とする。これはまた、処置期間内に通常の平均血液速度の期間をはさみながら間歇的に平均血液速度を上昇させることによって達成することも可能である。
【0016】
患者の末梢静脈の内腔直径および全体直径を増加させる方法を本明細書で説明する。この方法では、まず動脈または静脈(供与血管)と末梢静脈(受容静脈)とにアクセスする処置を実行し、供与血管を受容静脈へポンプシステムで接続する。次にポンプシステムを起動して、供与血管から受容静脈へ血液を人工的に流す。この方法では、ある期間の間、血液のポンプ輸送プロセスのモニタも行う。この方法ではさらに、ポンプの速度、ポンプ輸送される血液の速度、または受容静脈の内壁にかかるWSSの調節と、ポンプ輸送プロセスのモニタを再度行う。ある期間が経過して静脈が拡張すると、受容静脈の直径を測定して、その受容静脈の全体直径と内腔直径が適切に持続的な増大をしたかどうかを判定し、必要があればポンプ輸送プロセスを再調整する。受容静脈の全体直径と内腔直径が適切量の持続的増大をしていれば、第2の手術を行ってポンプを取り除く。この時、またはその後に、この持続的に拡張した受容静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVFまたはAVGなど)またはバイパスグラフトを形成することができる。
【0017】
一実施形態において、外科手術によって2つの静脈のセグメントが露出される。第1の合成導管の一端が、血液が取り出される静脈(供与静脈)へ“流体的に”接続される(すなわち内腔同士が接合されて両者の間の流体連通が可能となる)。第1の合成導管のもう一方の端がポンプの流入部に流体接続される。第2の合成導管の一端が、血液が送り込まれる静脈(受容静脈)に流体接続される。第2の合成導管のもう一方の端が同一ポンプの流出部に流体接続される。脱酸素化血液が供与静脈から受容静脈へポンプ輸送されて、静脈が最終的に所望の全体直径と内腔直径にまで持続的に拡張される。ここで“持続的に拡張”というのは、ポンプを切った後でも、血液のポンプ輸送をする前の静脈の直径に比べて、血管の全体直径または内腔直径が明確に増大していることを言う。つまり、ポンプからの圧力の有無に拘らず血管が大きくなっていることである。所望量の静脈の持続的拡張が起これば、第2の手術が実行されて、ポンプと合成導管とが取り除かれる。この時、またはその後に、この持続的に拡張した受容静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVFまたはAVGなど)またはバイパスグラフトを形成することができる。この実施形態において、中間に配置された合成導管を用いずに、ポンプ部を供与導管または受容静脈へ直接的に流体接続してもよい。本実施形態の一変形では、受容静脈は腕の橈側皮静脈などのような体のある場所に配置されていてもよいし、供与静脈は脚の大腿静脈などの別の位置にあってもよい。この例では、ポンプ−導管アセンブリの2つの端は体内に配置され、ポンプ−導管アセンブリのブリッジ部は体外(体の外部、例えば衣服の下に着用されるなど)、または体内(体の内部、例えば皮膚の下にトンネルとなっているなど)であってもよい。さらに、特定の場合においては、供与血管が受容静脈よりも体の位置で相対的により末梢部にあってもよい。
【0018】
別の実施形態では、この方法には末梢動脈の一部分と末梢静脈の一部分を露出させる外科手術が含まれる。第1の合成導管の一端が末梢動脈と流体接続される。第1の合成導管のもう一方の端がポンプの流入部に流体接続される。第2の合成導管の一端が末梢静脈と流体接続される。第2の合成導管のもう一方の端が同一ポンプの流出部に流体接続される。酸素化された血液が末梢動脈から末梢静脈へポンプ輸送されて、静脈は最終的に所望の全体直径と内腔直径にまで持続的に拡張される。所望量の静脈の持続的拡張が起こったあと、第2の手術が実行されて、ポンプと合成導管とが取り除かれる。この時、またはその後に、この持続的に拡張した受容静脈の少なくとも一部を利用して、血液透析のアクセスサイト(AVFまたはAVGなど)またはバイパスグラフトを形成することができる。この実施形態の一変形においては、中間に位置する合成導管を用いずにポンプの接続部が動脈または静脈に直接流体接続されてよい。
【0019】
さらに別の実施形態において、1対の特殊カテーテルが静脈系に挿入される。1つのカテーテルの第1の端がポンプの流入ポートに取り付けられ(以後“流入カテーテル”と称す)、もう一方のカテーテルの第1の端がポンプの流出ポートに取り付けられる(以後“流出カテーテル”と称す)。任意選択として、2つのカテーテルはダブルルーメンカテーテルのように一体となっていてもよい。カテーテルは静脈系の内腔へ挿入されるように構成されている。挿入後、流入カテーテルの第2の端の先端が、流入カテーテルに十分な量の血液が引き出される静脈系の任意の場所(例えば、右心房、上大静脈、鎖骨下静脈、または腕頭静脈)に配置される。挿入後、流出カテーテルの第2の端の先端が静脈系の末梢静脈(受容静脈)の一つへ配置され(例えば、橈側皮静脈)、そこへ流出カテーテルによって血液が送達される。次にポンプは供与静脈から流入カテーテルの内腔へ脱酸素化血液を吸引し、その血液を流出カテーテルから受容静脈の内腔へ放出する。この実施形態において、ポンプと、流入カテーテルと流出カテーテルの一部は患者の体外にある。ポンプは、受容静脈の全体直径と内腔直径に所望量の持続的拡大が生じるまで運転され、その後ポンプおよびカテーテルが取り除かれる。この時、またはその後に、この持続的に拡大した受容静脈の少なくとも一部を利用して血液透析のアクセスサイト(AVFまたはAVGなど)またはバイパスグラフトを形成することができる。
【0020】
それぞれが2つの端を持つ2つの合成導管と、血液ポンプと、制御ユニットと、電源とを備え、患者の供与静脈から受容静脈へ脱酸素化血液を送達することにより静脈内の血液速度とWSSを上昇させるシステムが提供される。このシステムは、1つまたは複数のセンサ―ユニットも含んでよい。システムの一実施形態において、全体として“ポンプ−導管アセンブリ”として知られる、合成導管とポンプは、供与静脈または右心房から脱酸素化血液を引き出し、その血液を受容静脈中へポンプ輸送する。ポンプ−導管アセンブリは脱酸素化血液をポンプ輸送するように構成されている。このシステムの別の実施形態においては、ポンプ−導管アセンブリは酸素化された血液を末梢動脈から引き出して、それを末梢静脈中へポンプ輸送するように構成されている。血液はポンプで動脈と静脈内での血液速度を上昇させ、動脈と静脈の内皮にかかるWSSを上昇させるように送り出される。そして末梢動脈と静脈の全体直径と内腔直径が持続的に増大するまでの期間、それが続けられる。好ましくは、末梢静脈中に送り込まれる血液は、例えば末梢動脈中の血液よりも低い拍動を有する。この実施形態の一変形においては、ポンプが中間に位置する合成導管なしで動脈または静脈(あるいはその両方)に直接流体接続される。ポンプには入口と出口とがあり、脱酸素化血液または酸素化された血液を末梢静脈に送達し、静脈内の血液速度と静脈の内皮にかかるWSSを上昇させて、末梢静脈の全体直径と内腔直径とを持続的に増大させるようにする。血液ポンプは、患者の体内に移植されてもよいし、体外にあってもよいし、または体内に移植された部分と体外にある部分とがあってもよい。合成導管のすべてまたは一部が、患者内に移植されてもよいし、皮下移植されてもよいし、静脈系の内腔内に移植されてもよいし、またはそれらの任意の組合せであってもよい。ポンプ−導管アセンブリの移植された部分は、モニタされて、周期的に、例えば7日毎に調節されてもよい。
【0021】
本発明は末梢静脈中の血液速度を上昇させる方法を含む。そして、血液透析のアクセスサイトまたはバイパスグラフトを必要とするヒトの患者の末梢静脈の内皮上にかかるWSSを上昇させることも提供される。心不全の処置のために動脈流を増大させるように設計された装置も、本目的に対して有益である。具体的には、低血流に最適化された心室補助装置(VAD)は供与血管から末梢静脈へ血液をポンプ輸送し、末梢静脈の全体直径および内腔直径を持続的に増大させることが可能である。様々な実施形態において、小児用VAD、あるいは成人の中程度の心不全処置用の小型VAD(Circulite社の Synergy pump(登録商標)など)を使用してもよい。LVADやRVADなどの低血流量用に最適化された他の装置も利用可能である。
【0022】
この方法は、低流量VADやその派生物または類似の装置を供与血管に流体接続し、その供与血管から血液を引き出し、それを受容静脈へ十分な時間に亘ってポンプ輸送し、末梢静脈の全体直径と内腔直径を所望量だけ持続的に増大させることを含む。血液ポンプは患者の体内に移植してもよいし、体外に維持してもよい。ポンプが患者の体外にある場合には、連続的にポンプ輸送するために患者に張り付けられてもよい。あるいはまた、ポンプは周期的及び/又は間歇的なポンプ輸送をするために、患者の供与血管または受容血管から取り外せるようになっていてもよい。
【0023】
受容末梢静脈の内腔直径は、血液が静脈内に送り込まれているときに、超音波または診断用血管造影法による可視化などの従来法を利用してモニタすることができる。ポンプ−導管アセンブリまたはポンプ−カテーテルアセンブリは、診断用血管造影法を容易にする放射線不透過マーカなどの特徴を組み込んでいてもよい。これはアセンブリに造影剤を注入する針がアクセスできるサイトを識別し、その造影剤がその後受容末梢静脈内に流れ込んで、従来型およびデジタルサブトラクション血管造影法の両方を利用した透視検査での可視化を可能とする。
【0024】
ポンプ−導管アセンブリまたはポンプ−カテーテルアセンブリの一部が体の外に配置されている場合、移植部品と外部部品とを接続する装置の部分に、抗菌コーティングまたはバンドが張り付けられてもよい。たとえば、コントローラ及び/又は電源が手首に結び付けられているか、ベルトに取り付けられているかまたはバッグまたはパックに入れられている場合に、装置が患者の体内に入る接続部及び/又は侵入点の上、またはその周りに抗菌コーティングが施される。
【0025】
本発明のこれらおよびその他の目的、特徴、態様および利点は、添付の図面と共に本発明の好適な実施形態を開示する以下の詳細な説明により、当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
次に、この新規な開示を構成する添付の図面を参照する。
【図1A】本発明の第1の実施形態によるシステムおよび方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図1B】本発明の第1の実施形態による、患者の循環系に適用された図1Aのポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図1C】図1Bの部分拡大図である。
【図2A】本発明の第2の実施形態によるシステムおよび方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図2B】本発明の第2の実施形態による、患者の循環系に適用された図2Aのポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図2C】図2Bの部分拡大図である。
【図3】本発明の第3の実施形態による、患者の循環系に適用されたシステムおよび方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図4A】本発明の第4の実施形態によるシステムおよび方法のポンプ−カテーテルアセンブリの概略図である。
【図4B】本発明の第4の実施形態による、患者の循環系に適用された図4Aのポンプ−カテーテルアセンブリの概略図である。
【図5A】本発明の第5の実施形態によるシステムおよび方法のポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図5B】本発明の第5の実施形態による、患者の循環系に適用された図5Aのポンプ−導管アセンブリの概略図である。
【図6】上記実施形態のいずれかに利用される、制御ユニットと連動して運転されるポンプの模式図である。
【図7】本発明の第1および第3の実施形態による方法のフローチャートである。
【図8】本発明の第2および第4の実施形態による方法のフローチャートである。
【図9】本発明の第5の実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。本発明の実施形態に関する以下の記述は、説明のためにのみ与えられるものであって、添付の特許請求の範囲及びその等価物により規定される本発明を制限するものではないことは、本開示から当業者には明らかであろう。
【0028】
先ず図1〜4を参照すると、静脈の全体直径を増大させるためのシステム10が患者20に適用される状態で示されている。システム10は脱酸素化された静脈血を患者の静脈系22から取り出して、その血液を受容末梢静脈30へ送り込む。システム10はまた受容末梢静脈30内の血液速度を上昇させ、かつその受容末梢静脈30の内皮にかかるWSSを上昇させて、例えば腕24や脚26にある受容末梢静脈30の直径を増大させようとする。末梢静脈などの血管の直径は、血管の中心部の血液が流れる開放空間である内腔の直径を計測することにより決定される。本出願において、この測定値を“内腔直径”と呼ぶ。血管の直径は、血管壁を含むようにして計測することでも決定される。本出願において、この測定値を“全体直径“と呼ぶ。本発明は、血液(好ましくは低拍動の血液)を末梢静脈に差し向け、それによって末梢静脈中の血液速度を上昇させ、かつ末梢静脈の内皮にかかるWSSを上昇させることによって、末梢静脈の全体直径および内腔直径を両方同時に、かつ持続的に増大させることに関する。末梢静脈中の血液速度と末梢静脈の内皮にかかるWSSをポンプを利用して上昇させるシステムと方法について説明する。好ましくは、ポンプは血液を末梢静脈中に流し、そこではポンプで送り出された血液は、末梢動脈内の血液よりも脈圧が低い場合のように、拍動が抑えられる。
【0029】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈中のWSSレベルを上昇させる。静脈の通常のWSSは0.076Pa〜0.76Paの範囲である。本明細書に記載のシステムと方法は、受容末梢静脈内のWSSの大きさを、0.76Pa〜23Paの範囲、好ましくは2.5Pa〜7.5Paの範囲に上昇させるように構成されている。0.76Paより低い、持続されたWSSは静脈を拡張させるがその速度は比較的小さい。23Paより大きな持続されたWSSは静脈内皮の剥離(欠損)を起こしやすい。これは血液速度とWSSの上昇に応じた、血管の遅延拡張として知られる。WSSを所望の範囲に、少なくとも7日間、より好ましくは14〜84日間にわたって上昇させるように血液をポンプ輸送することにより、受容末梢静脈内に例えばある量の持続的拡張を起こし、もともと静脈直径が小さくて血液透析のアクセスサイトとしてまたはバイパスグラフトとして不適であった静脈を、利用可能とする。血液のポンプ輸送プロセスは定期的にモニタして調節することができる。たとえば、所望の持続的拡張が達成される以前に、末梢静脈の変化の状況を考慮してポンプを7日毎に調整してもよい。
【0030】
本明細書で記述するシステムと方法はまた、末梢静脈中の、そして特定の場合には末梢動脈中の血液速度を上昇させる。休息時に、ヒトの橈側皮静脈内の平均血液速度は概ね5〜9cm/sであり、上腕動脈では概ね10〜15cm/sである。本明細書に記載のシステムと方法では、受容末梢静脈の直径およびその受容末梢静脈へ血液をポンプ輸送する計画時間の長さに依存して、末梢静脈中の平均血液速度は15〜100cm/sの範囲、好ましくは25〜100cm/sの範囲に上昇させられる。好ましくは、平均血液速度を7〜84日間、または好ましくは7〜42日の間上昇させて受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用可能とする。これはまた、処置期間内に通常の平均血液速度の期間をはさみながら間歇的に平均血液速度を上昇させることによって達成することも可能である。
【0031】
静脈内での血流による力および血流による力の変化が、その静脈の全体直径および内腔直径を決めるのに決定的な役割を果たすことが研究により分かっている。たとえば、血液速度とWSSの持続的な上昇は静脈の拡張をもたらすことができる。血流とWSSの上昇は内皮細胞によって検知され、それが信号機構にトリガをかけて、血管平滑筋細胞を刺激し、単球とマクロファージとを吸引させ、コラーゲンやエラスチンなどの細胞外マトリックス成分を劣化させるプロテアーゼを合成し放出させる。このように本発明は、静脈の改造と拡張に至るまでの期間、血液速度とWSSとを上昇させることに関する。
【0032】
血管内の血流がハーゲン−ポアズイユの法則に従う(すなわち、完全な放物線状の速度分布を有する層流である)とすると、WSSは次式で与えられる。
WSS(τ)=4Qμ/πR3
ここで、 Q=体積流量(mL/s)
μ=血液の粘性(ポアズ)
R=血管の半径(cm)
τ=壁剪断応力(dyne/cm2)
【0033】
本明細書で説明するシステムおよび方法は、末梢静脈中のWSSレベルを上昇させる。静脈の通常のWSSは0.076Pa〜0.76Paの範囲である。本明細書で説明するシステムおよび方法は、WSSを0.76Pa〜23Pa、望ましくは2.5Pa〜7.5Paの範囲に上昇させる。好ましくは、WSSを7〜84日間、または好ましくは7〜42日間上昇させて、受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用できるようにする。これはまた、処置期間に通常のWSSの期間をはさみながら間歇的にWSSを上昇させることによって達成することも可能である。
【0034】
受容末梢静脈内のWSSの大きさが0.076Paより低い場合には、静脈の拡張は起きるが、それはゆっくりとしたものになりやすい。受容末梢静脈内のWSSの大きさが23Paより高い場合には、静脈内皮の剥離(欠損)を起こしやすい。血管内皮の剥離は血液速度とWSSが高い場合の、血管の遅延拡張として知られる。WSSが高いと、静脈に十分な持続的拡張をもたらす。そして、もともと静脈直径が小さくて血液透析のアクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適であった静脈が、利用可能となる。受容静脈の直径は、例えば7〜14日毎に間歇的に測定して、処置期間中の静脈の拡張を最適化するためにポンプ速度を調節することができる。
【0035】
本明細書で記述するシステムと方法はまた、末梢静脈中の、そして特定の場合には末梢動脈中の血液速度を上昇させる。休息時に、ヒトの橈側皮静脈内の平均血液速度は概ね5〜9cm/sであり、上腕動脈では概ね10〜15cm/sである。本明細書に記載のシステムと方法では、受容末梢静脈の直径およびその受容末梢静脈へ血液をポンプ輸送する計画時間の長さに依存して、末梢静脈中の平均血液速度は15〜100cm/sの範囲、好ましくは25〜100cm/sの範囲に上昇させられる。好ましくは、平均血液速度を7〜84日間、または好ましくは7〜42日上昇させて受容末梢静脈に持続的な拡張をもたらし、当初静脈径が小さいために血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適格であった静脈を利用可能とする。受容末梢静脈内の平均血液速度が15cm/sより低い場合には、静脈の拡張は起きるが、それはゆっくりとしたものになりやすい。受容末梢静脈内の平均血液速度が約100cm/sより大きい場合には、静脈内皮の剥離(欠損)を起こしやすい。血管内皮の剥離は血液速度が高い場合の、血管の遅延拡張として知られる。血液速度が高いと、静脈に十分な持続的拡張をもたらす。そして、もともと静脈直径が小さくて血液透析のアクセスサイトまたはバイパスグラフトとして不適であった静脈が、利用可能となる。受容静脈の直径は、例えば7〜14日毎に間歇的に測定して、処置期間中の静脈の拡張を最適化するためにポンプ速度を調節することができる。
【0036】
図1〜3を参照すると、システム10は、患者20の静脈系22の供与静脈29から脱酸素化された静脈血を末梢または受容静脈30へ差し向けるためのポンプ−導管アセンブリ12を含んでいる。様々な実施形態において、末梢または受容静脈30は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈であってよい。血液透析のアクセスサイトやバイパスグラフトの形成に有用なそのほかの静脈、または静脈の利用を必要とするその他の血管手術に有用な他の静脈が利用されてもよい。ポンプ−導管アセンブリ12は、脱酸素化血液を末梢または受容静脈30へ送達する。末梢静脈30内の高速の血液34と高いWSSとによって、末梢または受容静脈30が時間と共に拡大される。こうして有利には、例えば血液透析用のAVFまたはAVGアクセスサイトの構築のために、またはバイパスグラフトとして利用可能となるように、本発明のシステム10と方法100(図7〜9参照)とが末梢または受容静脈30の直径を増大させる。
【0037】
本明細書で用いられている脱酸素化血液とは、毛細血管系を通過して、その周辺の組織によって酸素を除去されてから静脈系22に入ってくる血液のことである。本明細書で言う末梢静脈30とは、胸部や腹部や骨盤以外の部分にある任意の静脈のことを指している。図1Aと2Aの実施形態においては、末梢または受容静脈30は橈側皮静脈である。しかし他の実施形態においては、末梢静脈30は、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈であってよい。末梢静脈の他に、血液透析のアクセスサイトやバイパスグラフトの形成に有用なそのほかの静脈、または静脈の利用を必要とするその他の血管手術に有用な他の静脈、例えば胸部、腹部、および骨盤にある静脈など、が利用されてもよい。
【0038】
拍動を下げるために、及び/又は低拍動流を提供するために、いくつかの拍動減衰技術を利用することができる。その技術の一例として、ただしこれに限定するものではないが、血液ポンプのヘッドフロー特性の調整、ポンプの流出に対するコンプライアンスの付加、及び/又はポンプ速度の変調、などがある。
【0039】
手首の橈側皮静脈を利用して形成されたAVFは、血液透析の血管アクセスとして好適な形態であるが、この静脈はその位置にAVFを形成するには不適当な直径であることが多い。したがって、本発明は、ESRD患者に手首AVFを形成し、血管アクセスサイトとして手首AVFを利用して血管透析を受けるESRD患者の割合を増加させることに最も有利である。
【0040】
ポンプ−導管アセンブリ12は、血液ポンプ14と、合成導管16、18、つまり流入導管16と流出導管18とを含んでいる。血液ポンプは心室補助装置(VAD)の一部品として開発されてきた。そして、中程度の心不全のある成人患者と、小児患者の両者の処置用に小型化されてきた。これらのポンプは、移植可能であり、また患者の体外に保持することも可能であって、通常コントローラと電源に接続されている。図6には、ポンプ−導管アセンブリ12の概略図が示されている。ポンプ14は、軸流ポンプ、混合流ポンプ、遠心力ポンプなどの回転ポンプであってよい。特定の制約を認識することなし、ポンプ14のベアリングは、磁界または流体力を利用して、またはダブルピン型ベアリングなどの機械接触式ベアリングを利用して構成することができる。小児用VADシステム、または低流量VADシステムに使われるポンプを利用することができる。あるいは、ポンプ14は米国特許第6,015,272号明細書および第6,244,835号明細書に表示、記載されているような心臓外ポンプであってもよい。参照によりこの両者を本願に援用する。これらのポンプは本発明のシステム10及び方法100への使用に好適である。ポンプ14には流入導管16を通して引き込まれる脱酸素化血液を受ける入口38と、ポンプ14から出る血液流34用の出口40とがある。本発明のポンプ14として使用するのに好適な小児用VADシステムまたはそのほかの低流量VADシステムに使用されるポンプに関しては、大きさが、ほぼ単3電池の大きさ、または米国の50セント硬貨または25セント硬貨の直径くらいとすることができ、重さは、25〜35グラムかそれ以下とすることができる。これらのポンプは、たとえば0.3〜1.5L/minまたは1〜2.5L/min程度を送出するように設計されている。これらのポンプを改良して、小径の静脈用に送出量を0.05L/min程度の範囲にまで下げることが可能である。呼び水の量は例えば約0.5〜0.6mLである。ポンプ14の血液に接触する面は、好ましくは、Ti6Al4VとCPチタンとの合金を含み、また射出成型可能なセラミックやポリマ、及びTi6Al7Nbなどの代替チタン合金を含むことも可能である。血液への接触面はまた、1つまたは複数の被覆または表面処理をされていることが好ましい。したがって、血管系に接続することが可能であり、かつ受容静脈内で所望のWSSを達成できるような十分の量の血液を送り出すことさえできれば、多種類あるポンプ装置の任意のものを利用することが可能である。
【0041】
ポンプ14は図6に示すように、さまざまな部品42とモータ44を含んでいる。さまざまな部品42とモータ44はVADと共通のものであってもよい。たとえば、部品42には1つまたは複数のシャフト、インペラーブレード、ベアリング、静翼、回転子や固定子が含まれる。回転子は磁気浮上することができる。モータ44は、固定子、回転子、コイルおよび磁石を含んでよい。モータ44は、パルス幅変調電流を介して制御される多相モータなどのような任意の好適な電気モータであってよい。
【0042】
システム10と方法100は以下の刊行物に記載されている1つまたは複数のポンプを利用することが可能である。
P. Wearden外、「小児用心室補助装置PediaFlow(登録商標)(The PediaFlow(TM) Pediatric Ventricular Assist Device)」、小児心臓外科年報(Pediatric Cardiac Surgery Annual)、p92−98、2006。
J.Wu外、「心臓に調和する設計(Designing with Heart)」、ANSYS Advantage、第1巻2号、p補2−3、2007。
J. Baldwin外、「米国心臓、肺、血液研究所における循環支援プログラム(The National Heart, Lung, and Blood Institute Pediatric Circulatory Support Program)」、 Circulation、第113号p.147−155、2006。
ポンプ14として利用可能なポンプの他の例としては、以下のものがある。
World Heart,Inc.社; Novacor、PediaFlow、Levacor、MiVAD
Micromed,Inc.社;Debakey Heart Assist 1−5
Thoratec,Inc.社; HeartMate XVE、HeartMate II、HeartMate III、IV AD、PVAD
Abiomed,Inc.社;Impella、BVS5000、AB5000、Symphony
CardiacAssist,Inc.社;TandemHeart
Ventracor,Inc.社;VentrAssist
独国Berlin Heart社; Incor、Excor
テルモ社;デュラハート
Heart Ware,Inc.社;HVAD、MVAD
Jarvik Heart,Inc.社;Jarvik 2000 Flowmaker、Pediatric Jarvik 2000 Flowmaker
京セラ社;ジャイロポンプC1E3
Cleveland Clinic財団;CorAide、PediPump
MEDOS Medizintechnik AG社;MEDOS HIA VAD
Ension,Inc社;pCAS
Circulite,Inc社;Synergy
Levitronix,LLC社;CentriMag、PediMag、UltraMag
Medtronic,Inc.社;BP−50、BP−80
ポンプは、手動またはソフトウェアプログラムやアプリケーションや他の自動システムで監視および調節が可能である。ソフトウェアプロラムでは、ポンプ速度を自動的に調節して、受容静脈中の血流量とWSSを所望の大きさに維持することができる。あるいはまた、静脈の直径と血流を手動で定期的にチェックすることができ、たとえば、ポンプのヘッド流特性を調節し、ポンプ出力流にコンプライアンスを付加し、及び/又はポンプ速度を変調することにより手動でポンプを調節することができる。それ以外の調節もまた可能である。
【0043】
合成導管16、18はPTFE及び/又はダクロン(登録商標)でできており、好ましくは、合成導管16、18がねじれや閉塞を受けにくいように強化されている。導管16、18の全てまたは一部は、血液透析カテーテルを作製するのに通常利用される、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、及び/又はシリコーンなどの材料でできていてもよい。導管16、18が、柔軟性、無菌性、捩じれ耐性などの必要特性を持ち、かつ必要に応じて吻合により血管に接続可能であるか、または血管の内腔に挿入可能でありさえすれば、合成導管16、18はいかなる材料または材料の組合せでできていてもよい。さらに、合成導管16、18は好ましくは(必要に応じて)トンネリング操作に必要な特性を示し、かつ血栓抗生のある内腔表面を有する。別の実施例として、合成導管16、18は、内腔層とは異なる材料でできた外層を持ってもよい。合成導管16、18はまたシリコンで被覆されて、体からの取り出しを容易にし、かつラテックスアレルギーを回避することができる。特定の実施形態において、合成導管16または18と静脈29または30との間の接続は、縫合糸を連続的または分割して使用する、従来の外科的吻合術を利用して行われる。これはこの後では“吻合接続”と呼ぶ。吻合接続は外科クリップとそのほかの吻合の標準的方法とにより行うことも可能である。
【0044】
図1〜3を参照すると、合成流入導管16には、供与静脈29あるいは心臓の右心房31とを流体接続するように構成された第1の端部46と、ポンプ14の入口38に接続された第2の端部48とがある。供与静脈29は、肘正中静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、上大静脈、下大静脈、または受容末梢静脈に持続的な拡張を起こさせるためにポンプへ十分血流を供給できるその他の静脈を含むことができる。合成流出導管18は、受容末梢静脈30と流体接続されるようになった第1の端部52と、ポンプ14の出口40に接続された第2の端部54とがある。ポンプ−導管アセンブリ12は、供与静脈29からの血液を受容静脈30に向かって流し、末梢静脈の全体直径および内腔直径が持続的に増大するように十分な期間に亘って末梢静脈中の血液速度とWSSを所望の大きさにまで上昇させるように構成されている。特定の実施形態において、合成導管16、18の一部は患者20の体外にあってよい。図1と3を参照すると、流入導管16の第1の端部46と、流出導管18の第1の端部52は吻合接続されるようになっている。図1Bと1Cに示すように、第1の端部46は吻合接続によって内頸静脈(これが供与静脈29となる)に流体接続され、流出導管18の第1の端部52は吻合接続によって橈側皮静脈(これが受容静脈30となる)に流体接続されている。
【0045】
図2A〜2Cを参照すると、合成流入導管16の第1の端部46はカテーテルとして構成されている。合成流入導管16と静脈系との間の流体接続は、合成流入導管のカテーテル部50の先端を上大静脈27の内部へ配置することで行われる。以後これを“カテーテル接続”と呼ぶ。供与静脈29(この場合は上大静脈27)との間でカテーテル接続がなされる場合、合成流入導管46のカテーテル部50は、静脈の内腔直径がカテーテル部50を受け容れるのに適当な大きさであれば、任意の場所で静脈系に入ることができる。カテーテル部50の先端は、所望の血液流34を受容静脈30に提供するために、カテーテルに十分な血液が引き出すことのできる任意の場所に配置してよい。カテーテル部50の先端の好適な場所としては、腕頭静脈、上大静脈27、および右心房31がある。ただしこれに限られるわけではない。図2B〜2Cに示す実施形態において、システム10は患者20の上大静脈27から脱酸素化血液を引き出し、腕24にある橈側皮静脈30に向けて送り出す。
【0046】
図3に示す別の実施形態においては、システム10は脚部26において、供与静脈29(この場合大伏在静脈のより中心部)から脱酸素化された静脈血を受容末梢静脈30(この場合大伏在静脈のより末梢部)に向かって流し、これによって、受容大伏在静脈30の内腔直径と全体直径が持続的に増大するように十分な期間に亘って末梢静脈中の血液速度とWSSを所望の大きさまで上昇させる。図3に示す実施形態において、流入導管16は、吻合接続によって患者20の大伏在静脈29に流体接続されている。実施例のあるものでは、血液は、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、流出導管との接続部付近の受容静脈内の平均脈圧はポンプの動作時に、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満である。末梢静脈への血液のポンプ輸送と、血液速度およびWSSの上昇は、受容大伏在静脈30の全体直径と内腔直径とが持続的に増大するように十分な期間に亘って継続され、心臓または末梢バイパスグラフト形成手術の一環としての患者の静脈の一部の摘出と自己移植、または患者の静脈の一部を自己移植する必要のあるそのほかの手術を支援する。
【0047】
図4Aの別の実施形態においては、2つの専用カテーテル、すなわち流入カテーテル55と流出カテーテル56に体外ポンプ114が取り付けられてカテーテル−ポンプアセンブリ13を形成している。ポンプ114は供与静脈29から脱酸素化血液を流入カテーテル55の内腔中へ引き込み、その血液を流出カテーテル56から受容末梢静脈30の内腔中へ放出する。これにより、受容末梢静脈30内の血液速度とWSSを上昇させる。
【0048】
図4Aと4Bはシステム10の別の実施形態を示す。ポンプ−カテーテルアセンブリ13は、静脈部分dの血液速度とWSSとを上昇させるように構成されている。流入カテーテル55と流出カテーテル56は任意選択で、その全部または一部が(ダブルルーメンカテーテルのように)一体となっていてもよい。そして受容末梢静脈30の内腔へ経皮挿入され、侵襲性の手術を不要とする。この実施形態に関しては、カテーテルの一部は感染リスクを低減するために、皮膚から出る前は皮下のトンネルとなっていてもよい。カテーテル119と120の体外部分および体外ポンプ114は、体に固定され、電源に接続されて、その受容末梢静脈30の部分dの全体直径と内腔直径とが持続的な増大を起こすのに十分な期間に亘り受容末梢静脈30の部分d内の血液34の速度とWSSとを上昇させるように作用する。受容末梢静脈30の部分dに所望量の直径の拡張が生じれば、ポンプ−カテーテルアセンブリ12は取り外されて、それと同時またはその後の操作のいずれかにおいて、その受容末梢静脈30の拡張した部分dの少なくとも一部を利用した血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトの形成手術を行うことができる。
【0049】
図5A、5Bを参照すると、患者20に対して使用される静脈の全体直径を増大させるためのシステム10が示されている。システム10は患者の末梢動脈221から酸素化された動脈血を取って、受容末梢静脈30の中へその血液を送り出す。そして、受容末梢静脈30の血液速度とWSSとをある期間に亘って上昇させて、例えば腕24または脚26にあるその受容末梢静脈30の直径を持続的に増大させるように構成されかつそのように作用する。ポンプ214が腕24の中に移植されているシステム10の一実施形態が図示されている。ポンプ214は、吻合接続によって腕24の動脈221へ接続された入口216を備えている。ポンプ214は、吻合接続によって末梢静脈30へ接続された出口218も備えている。ポンプ214は制御ユニット58により制御されかつ動力を与えられる。運転時には、ポンプ214は動脈221から血液を引き出し、末梢静脈30の中へポンプ輸送する。この実施形態は、長い合成導管を必要としない手術の実行が可能であり、末梢静脈30と末梢動脈221の両方において血液速度とWSSを上昇させることができる。そして十分な期間運転すれば、結果として静脈30と動脈221とを同時に拡張させることができる。具体的にはポンプ214は患者20の前腕内に移植される。受容末梢静脈30に所望量の直径の拡張が生じれば、ポンプ214は取り外されて、それと同時またはその後の手術のいずれかにおいて、その拡張した動脈221または静脈30の少なくとも一部を利用した血液透析アクセスサイトまたはバイパスグラフトの形成手術を行うことができる。
【0050】
様々な実施形態において、酸素化された動脈血は供与動脈から引き出されてもよい。供与動脈としては、橈骨動脈、尺骨動脈、骨間動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、膝窩動脈、上腕深動脈、浅大腿動脈、または大腿動脈が含まれてよい。ただしこれに限るものではない。
【0051】
図6には、システム10の一実施形態の概略図が示されている。制御ユニット58はポンプ14に接続されていて、ポンプ14の速度を制御し、ポンプ14の機能上の情報を収集するようになっている。制御ユニット58は、患者20の体内に移植されてもよいし、患者20の体外にあってもよいし、または体内に移植された部分と体外にある部分とがあってもよい。電源は電源ユニット60の中に組み込まれていて、制御ユニット58とポンプ14に接続されている。電源ユニット60はポンプ14と制御ユニット58に定常動作用のエネルギを与える。電源ユニット60は、患者20の体内に移植されてもよいし、患者20の体外にあってもよいし、または体内に移植された部分と体外にある部分とがあってもよい。電源ユニット60は電池61を含んでもよい。電池61は好ましくは充電可能であり、AC電源へのコネクタ69を通して充電される。このような充電可能な電池は、リード線を利用してまたは経皮的なエネルギ伝達によって充電することも可能である。任意選択で、コネクタ69は電池61の助けなしに電力ユニット60へ電力を送達してもよい。この開示から、制御ユニット58は代替的な電力制御システムを利用するように構成できることが当業者には明らかであろう。
【0052】
センサ66、67は、合成導管17、18、またはポンプ14、または制御ユニット58の中に組み込まれてもよい。センサ66と67はケーブル68で制御ユニット58に接続されている。あるいは、制御ユニット58と無線で通信してもよい。センサ66と67は、血液流、血液速度、内腔内圧、および流れ抵抗をモニタすることが可能であり、信号を制御ユニット58に送ってポンプ速度を変更させることもできる。たとえば、ポンプで送り出された血液を受けて末梢静脈30が拡張すると、流出導管18からの血液流34への抵抗とともに、静脈内の血液速度が下がる。所望の血液速度とWSSを維持するためには、末梢静脈30が時間と共に拡張するにつれてポンプ速度を調節しなければならない。センサ66、67は末梢静脈30内の血液速度または血液流に対する抵抗を検出し、制御ユニット58へ信号を送る。それに応じて制御ユニットはポンプ14の速度を上昇させる。このように有利には、本発明は制御ユニット58とセンサ66、67からなる監視システムを提供し、ポンプ速度を調節して受容末梢静脈30が時間と共に拡張する間、所望の血液速度とWSSを維持するようにする。あるいはまた、制御ユニットは、血液流、血液速度、内腔内圧、または流れへの抵抗を評価する基準として、モータ44への電流の内部測定値を含む測定値に依存してもよく、そうしてセンサ66、67を不要とする。制御ユニット58は、ポンプ速度またはそのほかのポンプパラメータを調節するための手動制御を含んでいてもよい。
【0053】
制御ユニット58はポンプ−導管アセンブリ12とは動作上でつながっている。具体的には、制御ユニット58はポンプ14と1つまたは複数のケーブル62で動作的につながっている。電源ユニット60を利用して、制御ユニット58が好ましくはポンプへモータ制御電流を供給する。これは例えばケーブル62を通してポンプ14へ送られるパルス幅変調モータ制御電流である。制御ユニット58はポンプ14からのフィードバックやその他の信号を受信することもできる。制御ユニット58はさらに通信ユニット64も含んでおり、例えばテレメータ伝送を通じて、データの収集とデータの送信に利用される。さらに、通信ユニット64は制御ユニット58のプログラム更新のための命令またはデータを受信するようになっている。したがって、通信ユニット64はポンプ14を制御するための命令またはデータを受信するようになっている。
【0054】
有利には、本発明は制御ユニット58とセンサ66、67からなる監視システムを提供し、ポンプの運転を調節して受容末梢静脈30が時間と共に拡張する間、所望の血液速度とWSSを維持するようにする。
【0055】
ポンプ14は、血液流34を例えば約50〜1500mL/minの範囲で提供し、受容静脈内のWSSを0.76Pa〜23Paの範囲、好ましくは2.5Pa〜7.5Paの範囲に上昇させることが望ましい。ポンプ14は、例えば7〜84日の間、好ましくは例えば14〜42日の間、受容末梢静脈30内の血液流とWSSを所望水準に維持するようになっている。静脈を大幅に拡張する必要があるとか、または静脈の拡張がゆっくりしか起きないような特定の状況においては、ポンプ14は末梢静脈30内の血液流とWSSを42日よりも長い期間に亘って維持するようになっている。
【0056】
ポンプ−導管アセンブリ12は患者20の右側面に移植することができる。または必要があれば左側面に移植することも可能である。導管16と18の長さは、所望の配置に応じて調整することができる。具体的に図1Bと1Cに関しては、流入導管16の第1の端部46は右内頸静脈29内の位置29に流体接続されており、また流出導管18の第1の端部52は右前腕内の橈側皮静脈30に流体接続されている。具体的に図2Bと2Cに関しては、流入導管16の第1の端部46は上大静脈27の位置29に流体接続されており、また流出導管18の第1の端部52は右前腕24内の橈側皮静脈30に流体接続されている。接続された後にポンプ輸送が開始される。すなわち、制御ユニット58がモータ44の運転を開始する。ポンプ14は流出導管18を通して末梢静脈30へ血液34を送り出す。制御ユニット58は、時間経過の間中、センサ66と67により提供されるデータを利用してポンプ輸送を調節する。図1〜4は、システム10が脱酸素化血液をポンプ輸送する例を示している。図5は、システム10が酸素化された血液をポンプ輸送する例を示している。実施例のあるものでは、血液は、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、受容静脈内の平均脈圧はポンプが動作して血液を末梢静脈中に送達している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満である。別の実施形態では、血液は、末梢動脈内の血液の拍動に等しいかそれよりも高い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。これらの実施形態に関しては、流出導管との接続部付近の受容静脈内の平均脈圧はポンプの動作状態で、40mmHg以上である。
【0057】
図1Bと1Cに示した特定の実施形態においては、供与静脈29は頸静脈21、好ましくは内頸静脈21である。内頸静脈21は、内頸静脈21と右心房31との間に弁がなく、このために合成流入導管16が単位時間当たり多量の脱酸素化血液を吸引することが可能となり、特に供与静脈29として有用である。流入導管18は患者20の内頸静脈21に流体接続している。脱酸素化血液は内頸静脈21から吸引されて腕24もしくは脚26の受容末梢静脈30に送り込まれ、受容末梢静脈内の血液34の速度とWSSを上昇させる。実施形態のあるものでは、血液は、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、流出導管との接続部に近い受容静脈内の平均脈圧はポンプが動作している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満である。
【0058】
前述したように、図5Bはシステム10が酸素化された血液を吸引する例を示している。流入導管216は患者20の橈骨動脈221に流体接続され、流出導管218は橈側皮静脈に流体接続され、いずれも吻合接続を利用している。こうして、酸素化された血液が橈骨動脈221から吸引されて腕24の橈側皮静脈30にポンプ輸送されて、受容末梢静脈の全体直径および内腔直径が持続的に増大するまでの十分な期間に亘って橈側皮静脈中の血液速度とWSSを上昇させる。実施形態のあるものでは、血液は、末梢動脈内の血液の拍動よりも低い拍動で受容静脈中へポンプ輸送される。たとえば、流出導管との接続部付近の受容静脈内の平均脈圧はポンプが動作して受容末梢静脈中に血液を送達している状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満である。
【0059】
図7〜9を参照すると、さまざまな実施形態及び方法100で、末梢静脈30の全体直径と内腔直径が増大される。図7に示すように、ステップ101において、医師または外科医が静脈または動脈にアクセスする処置を実行し、ポンプを接続して脱酸素化血液が流れている静脈と流体連通を行う。ステップ102において、ポンプが末梢静脈に接続される。この実施形態では、ポンプ−導管アセンブリ12は好ましくは患者20の首、胸および腕24内に移植される。末梢静脈30が伏在静脈36である別の実施形態では、ポンプ−導管アセンブリ12は脚26内に移植される。一実施例においては、医師は、ポンプ−導管アセンブリ12の第1の端部46を供与静脈29に流体接続し、ポンプ−導管アセンブリ12の第2の端部を受容末梢静脈30に流体接続する。この時2つの場所を皮下接続するために、(必要に応じて)トンネル方式を利用する。ステップ103において、脱酸素化血液が受容末梢静脈内にポンプ輸送される。ステップ104において、ポンプ輸送をある期間の間継続し、医師は受容末梢静脈が拡張するのを待つ。一実施形態において、ポンプのスイッチが入れられて脱酸素化血液がポンプ輸送され始めた後、必要に応じて、皮膚切開が閉じられる。
【0060】
別の実施形態では、合成導管16と18の一部、及び/又はポンプ14は体外に配置されている。この実施形態においては、ポンプ14がスイッチを入れられ、制御ユニット58で制御されてポンプ−導管アセンブリ12を通して脱酸素化血液を受容末梢静脈30へ送り出し、末梢静脈30中の血液速度とWSSを上昇させるようにする。ポンプ輸送工程は定期的にモニタされ、受容末梢静脈30の変化に応答して、制御ユニット58を利用してポンプ14を調節する。必要に応じて定期的に調整することで、ポンプは十分な期間に亘って運転し続けて、末梢静脈30の全体直径と内腔直径に持続的な拡張をもたらす。それに続いてステップ105において、ポンプ−導管アセンブリ12が切断されて取り外される。ステップ106において、持続的に拡張した末梢静脈30がAVF、AVGまたはバイパスグラフトの形成に利用される。
【0061】
図8に示すように方法100の別の実施形態において、医師または外科医はステップ107でポンプ−カテーテルアセンブリの1つまたは複数のカテーテル部50を静脈系に挿入し、供与静脈と末梢静脈30の中に配置する。ステップ108で、ポンプを運転して脱酸素化血液を脱酸素化血液中に送り出す。そうして、ステップ109で医師は末梢静脈の拡張を待つ。ステップ110とステップ111でそれぞれ、ポンプ−カテーテルアセンブリが取り外され、持続的に拡張した静脈を利用してAVF、またはAVG、またはバイパスグラフトが形成される。
【0062】
図9は、方法100のさらに別の実施形態を示す。ステップ112において、医師または外科医は静脈にアクセスしてポンプと末梢静脈を接続し、流体連通を確立する処置を実行する。ステップ113において、ポンプが末梢動脈に接続される。ステップ114でポンプが作動され、末梢動脈からの酸素化された血液が末梢静脈に送り込まれる。ステップ115において、ポンプ輸送をある期間継続して、医師は受容末梢静脈が拡張するのを待つ。ステップ116でポンプが取り外され、ステップ117で持続的に拡張した静脈を利用してAVF、AVG、またはバイパスグラフトが形成される。
【0063】
様々な実施形態において、方法100及び/又はシステム10は、連続的な処理ではなく、周期的、及び/又は間歇的に利用されてもよい。一般に、3〜5時間かかる血液透析処置は、1週間に最大3回まで、透析施設において行われる。したがって、システム10及び方法100の様々な実施形態を、4〜6週間の期間、同様のスケジュールで血液のポンプ輸送処理を行なうのに利用することができる。処置は、外来処置を含め、任意の好適な場所で実行することができる。
【0064】
一実施形態において、血液のポンプ輸送処置が、血液透析処置に併せて間歇的に行われる。この実施形態においては、低流量ポンプと、流入カテーテルとして機能する標準的な留置血液透析カテーテルと、流出カテーテルとして機能する末梢静脈中に配置された微小外傷性針またはカテーテルとを利用することができる。ベッドサイドの操作盤で運転される連続流血液ポンプ(たとえば、カテーテル方式のVADと小児用心肺バイパス(CPB)または体外膜型人工肺(ECMO)ポンプ)のいくつかにおいて本方法100の利用が容易に適応できる。
【0065】
血液のポンプ輸送を周期的に行う様々な実施形態においては、血管へのアクセスも1つまたは複数のポートすなわち外科的に形成したアクセスサイトを介して行われてもよい。これに限るものではないが一例として、アクセスは、針、末梢挿入中心静脈カテーテル、トンネル型カテーテル、非トンネル型カテーテル、及び/又は皮下移植可能ポート、などによって達成されてよい。
【0066】
システム10の別の実施形態においては、血管内のWSSと血液速度を上昇させるために低流量ポンプが使用される。低流量ポンプは、血管に流体接続された入口導管と、静脈に流体接続された出口導管とを持ち、7日〜84日の間の期間に亘って血管から静脈へ血液をポンプ輸送する。この低流量ポンプは、静脈の壁剪断応力が約0.076〜約23Paの間の範囲となるように血液を送り出す。低流量ポンプはまた調節装置も含んでいる。調節装置は、ソフトウェアベースの自動調節システムと通信してもよいし、手動制御になっていてもよい。入口導管と出口導管は、長さが約10cm〜約107cmの範囲であってよい。
【0067】
本発明はまた、ポンプ−導管ンシステム10の様々な実施形態を含む、血管ポンプシステムの組立および運転方法にも関する。この方法は、ポンプ−導管システム10と流体連通している第1の導管を動脈に取り付け、ポンプ−導管システムと流体連通している第2の導管を静脈に取り付けることを含む。そうしてポンプ−導管システム10が起動されて、動脈と静脈の間に血液をポンプ輸送する。
【0068】
本発明の範囲を理解する際に、本明細書において使用されている“備える”という用語、およびその派生語は、非限定用語であって、記述された特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を特定するが、他の記述されていない特徴、要素、成分、群、整数、及び/又はステップの存在を除外しないことを意図している。このことは、“含む”、“有する”、などの用語およびその派生語などの、同様の意味を有する用語についてもあてはまる。本明細書で使用されている、たとえば“実質的に”、“約”、“ほぼ”、などの程度を表す用語は、最終的な結果が大きくは違わない程度に、修飾された用語の適度な偏倚を意味している。たとえばこれらの用語は、それが修飾する用語の意味を否定しない限りは、修飾される用語の少なくとも±5%の偏差を含むものと解釈される。
【0069】
本発明は選択された実施形態のみを用いて説明したが、当業者であればこの開示から、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行なえることが明らかであろう。たとえば、さまざまな部品の寸法、形状、位置、または配向は必要に応じて、及び/又は所望により変更することができる。直接接続する、または相互に接触するとして示された部品は、その間に中間構造物が配置されてもよい。1つの要素の機能は2つの要素で実行されてもよいし、その逆であってもよい。1つの実施形態の構造と機能は別の実施形態に取り入れられてもよい。特定の一実施形態に、すべての利点が同時に存在する必要はない。従来技術とは異なる固有の特徴はすべてそれ単独で、または他の特徴との組合せで、そのような特徴により具現化される構造及び/又は機能的概念を含めて、出願人によるさらなる発明の個別の記述であるとみなされるべきである。したがって、本発明による実施形態の上記の記述は、説明のためにのみ与えられたものであり、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される本発明を制限するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢静脈における血液速度および壁剪断応力を上昇させる方法であって、
ポンプ−導管アセンブリの一端を前記末梢静脈に、そして前記ポンプ−導管アセンブリの別の端を別の静脈に流体接続し、
前記他の静脈から前記末梢静脈へ脱酸素化血液をポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項2】
末梢静脈の全体直径を増大させる方法であって、
ポンプ−導管アセンブリの一端を前記末梢静脈に、そして別の端を別の静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径を持続的に増大させる結果となるに十分な速度および時間の長さで脱酸素化血液を前記他方の端から前記末梢静脈へポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項3】
患者に動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成する方法であって、
ポンプ−導管アセンブリの一端を末梢静脈に、そして別の端を別の静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径および内腔直径を持続的に増大させる結果となるのに十分な量の脱酸素化血液を前記別の静脈から前記末梢静脈へポンプ輸送し、
患者への動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトの形成に、前記拡張された末梢静脈を用いる、
ことを含む方法。
【請求項4】
前記別の静脈は、肘正中静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、上大静脈、または下大静脈である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記もう一方の静脈は右心房である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポンプ−導管アセンブリは患者の体内に移植されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポンプ−導管アセンブリのポンプは、腕、首、胸、腹、脚、鼠蹊部、骨盤のいずれかに移植されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポンプ−導管アセンブリのポンプは、脈圧が40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満の血流を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈の壁剪断応力は0.76Paより大きい請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈の壁剪断応力は0.76Paと23Paの間、または好ましくは2.5Paと7.5Paの間である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記末梢静脈は腕または脚内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポンプ−導管アセンブリの少なくとも一部は、前記末梢静脈の内腔に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記末梢静脈でバイパスグラフトを形成することをさらに含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
制御ユニットをポンプに接続することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
電源ユニットをポンプに接続することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ポンプまたは合成導管は、血液速度、血液体積流量、前記受容静脈への血流抵抗、血圧、及びこれらの組合せに対するセンサを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポンプ輸送は、前記末梢静脈での平均脈圧がポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満となるように、脱酸素化血液をポンプで送出することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
末梢静脈における血液速度および壁剪断応力を上昇させる方法であって、
カテーテル−ポンプアセンブリのカテーテル部品の部分を静脈系の内腔に挿入し、
供与静脈から脱酸素化血液を前記末梢静脈中へポンプ輸送する、
ことを含む、方法。
【請求項22】
静脈の全体直径を増大させる方法であって、
カテーテル−ポンプアセンブリのカテーテル部品の部分を静脈系の内腔に挿入し、
血液を吸引している前記カテーテル部分の端部と、血液を放出している前記カテーテル部分の別の端部との間の末梢静脈の少なくとも一部の全体直径を増大させる結果となるに十分な速度および時間の長さに亘って、脱酸素化血液を供与静脈から前記末梢静脈中へポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項23】
患者に動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成する方法であって、
カテーテル−ポンプアセンブリのカテーテル部品の部分を静脈系の内腔に挿入し、
血液を吸引している前記カテーテル部分の端部と、血液を放出している前記カテーテル部分の別の端部との間の末梢静脈の少なくとも一部の全体直径を増大させる結果となるに十分な時間の長さに亘って、脱酸素化血液を供与静脈から前記末梢静脈中へポンプ輸送し、
患者への動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトの形成に、前記拡張された末梢静脈を用いる、
ことを含む、方法。
【請求項24】
前記供与静脈内に配置された前記カテーテルは、橈側皮静脈、肘正中静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、または下大静脈の内腔にある、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記供与静脈内に配置された前記カテーテル部分は右心房内にある、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記末梢静脈内に配置された前記カテーテル部分は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈の内腔にある、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ポンプ−カテーテルアセンブリのポンプは実質的に非拍動流を形成する、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
血液は前記ポンプ−カテーテルアセンブリを介して、50〜1500mL/minの速度で送り出される、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈のWSSは0.76Paより大きい、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈のWSSは0.076Paと23Paの間、好ましくは2.5Paと7.5Paの間である、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
血液は前記ポンプ−カテーテルアセンブリを介して、7〜84日間送り出される、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ポンプ−カテーテルアセンブリの前記カテーテル部の一部は、腕または脚の静脈内に挿入される、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項21〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用してバイパスグラフトを形成することをさらに含む、請求項21〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
制御ユニットをポンプに接続することをさらに含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
電源ユニットをポンプに接続することをさらに含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
電源ユニットは電池を含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法
【請求項38】
前記ポンプ−カテーテルアセンブリのポンプまたはカテーテルは、血液速度、血液体積流量、前記受容静脈への血流抵抗、血圧、及びこれらの組合せに対するセンサを含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ポンプ輸送は、前記末梢静脈での平均脈圧がポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満となるように、脱酸素化血液をポンプで送出することを含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
末梢静脈における血液速度およびWSSを上昇させる方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢動脈から前記末梢静脈へ酸素化された血液をポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項41】
末梢静脈の全体直径を増大させる方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径を増大させる結果となるような速度と時間の長さとで酸素化された血液を前記末梢動脈から前記末梢静脈へポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項42】
患者に動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成する方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径を増大させる結果となるような速度と時間の長さとで酸素化された血液を前記末梢動脈から前記末梢静脈へポンプ輸送し、
患者に前記動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成するのに、前記拡張された末梢静脈を用いる、
ことを含む方法。
【請求項43】
前記酸素化された血液をポンプ輸送することが前記末梢動脈の全体直径を増大させる結果となり、患者への動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトの形成に、前記拡張された末梢動脈を用いることをさらに含む、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ポンプは、合成導管を利用せずに、前記末梢動脈または前記末梢静脈へ直接接続されている、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記末梢動脈は、橈骨動脈、骨間動脈、尺骨動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、浅大腿動脈、上腕深動脈、または大腿動脈である、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、および大腿静脈である、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ポンプは患者に移植されている、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ポンプは首、胸、腕、または脚に移植されている、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ポンプは、前記末梢静脈内に、前記末梢動脈内の脈圧よりも低い脈圧の血流を形成する、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
血液は前記末梢動脈から前記末梢静脈へ50〜1500mL/minの速度で送り出される、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記ポンプが動作している状態で、前記受容静脈のWSSは0.076Paより大きい、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈のWSSは0.076Pa〜23Pa、好ましくは2.5Pa〜7.5Paである、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
血液は前記末梢動脈から前記末梢静脈へ7〜84日間送り出される、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記末梢静脈は腕または脚にある、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記末梢動脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記末梢動脈および前記末梢静脈の両者の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用してバイパスグラフトを形成することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記ポンプに制御ユニットを接続することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記ポンプに電源ユニットを接続することをさらに含む、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記ポンプまたは合成導管は、血液速度、血液体積流量、前記受容静脈への血流抵抗、血圧、及びこれらの組合せに対するセンサを含む、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記ポンプ輸送は、前記受容静脈での平均脈圧がポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満となるように、前記脱酸素化血液をポンプで送出することを含む、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
患者の末梢静脈における血液速度およびWSSを上昇させるシステムであって、
供与静脈から脱酸素化血液を引き出し、末梢静脈へ血液を送り出すように構成されたポンプ−導管アセンブリと、
前記ポンプを制御するように構成された制御ユニットと、
を備え、
前記ポンプ−導管アセンブリは、
入口と出口とを有し、脱酸素化血液を送り出すように構成され、脱酸素化血液を前記末梢静脈へ送達するように構成されたポンプと、
前記供与静脈と流体接続するように構成された第1の端と、前記ポンプの入口に接続された第2の端とを有する第1の導管と、
前記受容末梢静脈と流体接続するように構成された第1の端と、前記ポンプの出口に接続された第2の端とを有し、血液流を前記末梢静脈へ差し向ける第2の導管と、
を備えることを特徴とする、システム。
【請求項65】
前記ポンプは磁気浮上回転ポンプを含む、請求項64に記載のシステム。
【請求項66】
前記ポンプは、小児用心室補助装置の一部品である、請求項64に記載のシステム。
【請求項67】
前記制御ユニットは前記ポンプに電力を供給する電源ユニットを含む、請求項64に記載のシステム。
【請求項68】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記供与静脈のさらなるものは、橈側皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、内頸静脈、右心房、伏在静脈、または大腿静脈である、請求項64に記載のシステム。
【請求項70】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項64に記載のシステム。
【請求項71】
前記第1または第2の導管の少なくとも一部は前記供与静脈または末梢静脈の内腔内に配置されている、請求項64に記載のシステム。
【請求項72】
患者の末梢静脈における血液速度およびWSSを上昇させるシステムであって、
供与静脈から脱酸素化血液を引き出し、その血液を末梢静脈へ送り出すように構成されたポンプ−カテーテルアセンブリと、
前記ポンプを制御するように構成された制御ユニットと、
を備え、
前記ポンプ−カテーテルアセンブリは、
入口と出口とを有し、脱酸素化血液を送り出すように構成され、脱酸素化血液を前記末梢静脈へ送達するように構成された体外ポンプと、
静脈の内腔に挿入され、前記供与静脈と流体接続されるように構成された第1の端と、前記ポンプの入口へ接続されるように構成された第2の端とを有する第1のカテーテルと、
静脈の内腔へ挿入されるように構成され、前記受容末梢静脈と流体接続するように構成された第1の端と、前記ポンプの出口に接続された第2の端とを有し、前記第2の導管は血液流を前記末梢静脈へ差し向ける第2のカテーテルと、
を備えることを特徴とする、システム。
【請求項73】
前記ポンプは磁気浮上回転ポンプを含む、請求項72に記載のシステム。
【請求項74】
前記ポンプ筒は、小児用心室補助装置の一部品である、請求項72に記載のシステム。
【請求項75】
前記制御ユニットは前記ポンプに電力を供給する電源ユニットを含む、請求項72に記載のシステム。
【請求項76】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項75に記載のシステム。
【請求項77】
さらなる供与静脈は、橈側皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、または下大静脈である、請求項72項に記載のシステム。
【請求項78】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項72に記載のシステム。
【請求項79】
患者の末梢静脈における血液速度およびWSSを上昇させるシステムであって、
末梢動脈から血液を引き出し、前記血液を末梢静脈へ送り出すポンプ
を備え、
前記ポンプは、
末梢動脈と流体接続できるようになった入口と、
末梢静脈と流体接続できるようになった出口と、
前記ポンプを制御するように構成された制御ユニットと、
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項80】
前記ポンプは磁気浮上回転ポンプを含む、請求項79に記載のシステム。
【請求項81】
前記ポンプは、小児用心室補助装置の一部品である、請求項79に記載のシステム。
【請求項82】
前記制御ユニットは前記ポンプに電力を供給する電源ユニットを含む、請求項79に記載のシステム。
【請求項83】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項82に記載のシステム。
【請求項84】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項79に記載のシステム。
【請求項85】
前記末梢動脈は、橈骨静脈、尺骨動脈、骨間動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、膝窩動脈、浅大腿動脈、または大腿動脈である、請求項79に記載の方法。
【請求項86】
末梢動脈と末梢静脈において血液速度およびWSSを同時に上昇させる方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の一端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢動脈から前記末梢静脈へ酸素化血液をポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項87】
末梢動脈と末梢静脈の全体直径を同時に増大させる方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の一端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径を増大させる結果となるような速度と時間の長さで酸素化血液を前記末梢動脈から前記末梢静脈へポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項88】
前記末梢動脈および前記末梢静脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項86〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記ポンプ輸送は、前記受容静脈での平均脈圧がポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満となるように、前記脱酸素化血液をポンプで送出することを含む、請求項86〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
末梢血管の直径を増大させる方法であって、
第1の拍動の第1の血流を有する第1の血管にアクセスし、
前記第1の血管に血液ポンプの入口を接続して前記第1の血管と前記血液ポンプの間を流体連通させ、
第2の拍動の第2の血流を有する前記末梢静脈にアクセスし、
前記末梢血管に前記血液ポンプの出口を接続して前記末梢静脈と前記血液ポンプの間を流体連通させ、
前記末梢静脈内のWSSが0.076Pa〜23Paの範囲となるように、約7日〜84日の間、前記第1の血管から前記末梢静脈へ、連続的に血液をポンプ輸送し、前記末梢静脈に入る血液は、ポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満の平均脈圧を有し、
前記末梢静脈へ入る血液の少なくとも1つのパラメータを前記ポンプと通信する1つまたは複数のセンサで測定し、
前記血液ポンプを調節して前記末梢静脈中のWSSが0.076Pa〜23Paの範囲にあるようにポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項91】
前記末梢血管の直径を、血液をある期間ポンプ輸送した後に判定し、
前記末梢血管の直径が所望のレベルにまで増大していなければ、前記血液ポンプを再調整して、前記末梢血管内のWSSを0.076Pa〜23Paの範囲に維持する、
ことをさらに含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記血液ポンプは、前記血液ポンプの運転パラメータを調節可能な制御ユニットを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記血液ポンプは、前記制御ユニットを用いて手動で調整される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記制御ユニットは、前記血液ポンプをモニタするソフトウェアプログラムによって自動的に調整される、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記流出導管内または末梢静脈内の血液の少なくとも1つのパラメータは3〜14日ごとに測定される、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
前記末梢血管の直径は、血液をポンプ輸送している間、3〜14日毎に判定される、請求項90に記載の方法。
【請求項97】
持続的に増大した直径を有する前記末梢静脈の少なくとも一部で動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成することをさらに含む、請求項90に記載の方法。
【請求項98】
前記第1の血管と前記末梢静脈は外科手術によってアクセスされる、請求項90に記載の方法。
【請求項99】
前記血液ポンプを、腕、首、胸、腹、脚、鼠蹊部、骨盤からなる群から選択される1つの場所に移植することをさらに含む、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記第1の血管と前記末梢静脈は1つまたは複数のカテーテルを用いてアクセスされる、請求項90に記載の方法。
【請求項101】
前記第1の血管と前記末梢静脈は、末梢で挿入された中心カテーテル、トンネル型カテーテル、非トンネル型カテーテル、および皮下移植ポートのうちの1つまたは複数によってアクセスされる、請求項90に記載の方法。
【請求項102】
前記血液ポンプは低流量ポンプである、請求項90に記載の方法。
【請求項103】
前記血液ポンプは正変位型ポンプである、請求項90に記載の方法。
【請求項104】
前記血液は約50〜約1500mL/minの間の速度で前記末梢静脈中へポンプ輸送される、請求項90に記載の方法。
【請求項105】
前記血液は約14〜約84日の期間ポンプ輸送される、請求項90に記載の方法
【請求項106】
前記末梢静脈は腕または脚に配置される、請求項90に記載の方法。
【請求項107】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項90に記載の方法。
【請求項108】
前記第1の血管は、右心房、肘正中静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、上大静脈、下大静脈、橈骨動脈、骨間動脈、尺骨動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、浅大腿動脈、上腕深動脈、あるいは大腿動脈である、請求項90に記載の方法。
【請求項109】
前記センサにより測定される前記パラメータは、血液速度、血液体積流量、前記受容静脈中への血流抵抗、前記ポンプまたは流入導管または流出導管内の血圧、およびそれらの組合せ、からなる群から選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項110】
前記血液はポンプ輸送されて、前記末梢静脈内で40mmHg以下の平均脈圧を与える、請求項90に記載の方法。
【請求項111】
前記血液はポンプ輸送されて、前記末梢静脈内で5mmHg以下の平均脈圧を与える、請求項90に記載の方法。
【請求項112】
前記第1の血管と前記末梢静脈との間にポンプ輸送される血液は脱酸素化血液である、請求項90に記載の方法。
【請求項113】
前記第1の血管と前記末梢静脈との間にポンプ輸送される血液は酸素化血液である、請求項90に記載の方法。
【請求項114】
末梢静脈の直径を増大させる方法であって、
第1の拍動の第1の血流を有する第1の血管にアクセスし、
前記第1の血管に血液ポンプの入口を接続して前記第1の血管と前記血液ポンプとを流体連通させ、
第2の拍動の第2の血流を有する前記末梢静脈にアクセスし、
前記末梢血管に前記血液ポンプの出口を接続して前記末梢静脈と前記血液ポンプとを流体連通させ、
前記末梢静脈内のWSSが0.076〜23Paの範囲となるように、約7〜84日間に亘って、前記第1の血管から前記末梢静脈へ血液を連続的にポンプ輸送し、
前記血液ポンプを調節して前記末梢静脈中のWSSが0.076Pa〜23Paの範囲に維持する、
ことを含む方法。
【請求項115】
末梢静脈の直径を増大させる方法であって、
第1の拍動の第1の血流を有する第1の血管にアクセスし、
前記第1の血管に血液ポンプの入口を接続して前記第1の血管と前記血液ポンプとを流体連通させ、
第2の拍動の第2の血流を有する前記末梢静脈にアクセスし、
前記末梢血管に前記血液ポンプの出口を接続して前記末梢静脈と前記血液ポンプとを流体連通させ、
前記末梢静脈内のWSSが0.076〜23Paの範囲となるように、約7〜84日間に亘って、前記第1の血管から前記末梢静脈へ血液を連続的にポンプ輸送し、前記末梢静脈に入る血液は前記第1の拍動に比べて拍動が下がるようにし、
前記末梢静脈へ入る血液の少なくとも1つのパラメータを前記ポンプと通信する1つまたは複数のセンサで測定し、
前記血液ポンプを調節して、少なくとも1つの測定パラメータに基づいて前記末梢静脈中のWSSを0.076Pa〜23Paの範囲に維持する、
ことを含む方法。
【請求項116】
末梢静脈の全体直径を増大させるシステムであって、
供与静脈から脱酸素化血液を引き出し、前記脱酸素化血液を末梢静脈へポンプ輸送するためのポンプ−導管アセンブリであって、
前記脱酸素化血液を前記末梢静脈へ送達するための入口と出口とを有するポンプと、
前記供与静脈と流体接続する第1の端と、前記ポンプの入口に接続された第2の端とを有する第1の導管と、
前記受容末梢静脈と流体接続する第1の端と、前記ポンプの出口に接続された第2の端とを有し、血液流を前記末梢静脈へ差し向ける、第2の導管と、を備える前記ポンプ−導管アセンブリと、
制御ユニットであって、
前記ポンプへ電力を供給し、
前記脱酸素化血液によって前記末梢静脈に与えられる壁剪断応力を約0.076〜約23Paの間に制御し、
前記脱酸素化血液の脈圧を40mmHg未満でポンプ輸送するようにポンプ圧力を調整する制御ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項117】
前記制御ユニットは前記末梢静脈に入る前記脱酸素化血液の少なくとも1つのパラメータを測定するための1つまたは複数のセンサを含み、前記システムはさらに、前記末梢静脈の前記全体直径がまだ増大してない場合には、前記脱酸素化血液によって与えられる前記壁剪断応力を約0.076〜約23Paの間に調節して、拍動を低く維持するように前記制御ユニットを調節する、請求項116に記載のシステム。
【請求項118】
前記ポンプは磁気浮上回転ポンプである、請求項116に記載のシステム。
【請求項119】
前記ポンプは、小児用心室補助装置の一部品である、請求項116に記載のシステム。
【請求項120】
前記制御ユニットは前記ポンプに電力を供給するための再充電可能な電源ユニットを含む、請求項116に記載のシステム。
【請求項121】
前記供与静脈は、橈側皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、内頸静脈、右心房、伏在静脈、および大腿静脈からなる群から選択される、請求項116に記載のシステム。
【請求項122】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、および大腿静脈からなる群から選択される、請求項116に記載のシステム。
【請求項123】
末梢静脈中の壁剪断応力と血液速度を上昇させるためのシステムであって、
供与静脈から脱酸素化血液を引き出し、前記脱酸素化血液を末梢静脈へポンプ輸送するためのポンプ―カテーテルアセンブリと、
制御ユニットと、
を備え、
前記ポンプ―カテーテルアセンブリは、
前記脱酸素化血液を前記末梢静脈へポンプ輸送するための入口と出口とを有する体外ポンプと、
前記供与静脈と流体接続する第1の端と、前記ポンプの入口に流体接続する第2の端とを有する第1のカテーテルと、
前記末梢静脈と流体接続する第1の端と、前記ポンプの出口に接続し血液流を前記末梢静脈へ差し向ける第2の端とを有する第2のカテーテルとを備え、
前記制御ユニットは、
前記ポンプへ電力を供給し、
前記脱酸素化血液を15〜100cm/sの間でポンプ輸送するようにポンプ速度を制御し、
前記脱酸素化血液を40mmHg未満の脈圧でポンプ輸送するようにポンプ圧力を調整する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項124】
末梢静脈の血液速度を上昇させるシステムであって、
末梢動脈から血液を引き出し、前記血液を末梢静脈へ送り出すポンプと、
制御ユニットと、
を備え、
前記ポンプは、
前記末梢動脈に流体接続する入口と、
前記末梢静脈に流体接続する出口とを備え、
前記制御ユニットは、
前記ポンプへ電力を供給し、
脱酸素化血液を15〜100cm/sの間でポンプ輸送するようにポンプ速度を制御し、
脱酸素化血液の脈圧を40mmHg未満でポンプ輸送するようにポンプ圧力を調整する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項125】
前記末梢動脈は、橈骨静脈、尺骨動脈、骨間動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、膝窩動脈、浅大腿動脈、および大腿動脈からなる群から選択される、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
血管中の壁剪断応力と血液速度を上昇させるためのシステムであって、
低流量ポンプと、
ソフトウェアベースの自動調整システムと手動制御器からなる別の群から選択される調整装置と、
を備え、
前記低流量ポンプは、
動脈と静脈と、とからなる群から選択される1つの血管へ流体接続するための入口導管と、静脈に流体接続する出口導管とを有し、
前記血管から前記静脈へ約7〜84日間に亘り血液をポンプ輸送し、
前記静脈の前記壁剪断応力が約0.076〜約23Paの範囲となるように血液をポンプ輸送する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項127】
前記第1の導管と前記第2の導管の少なくとも1つは、約10cm〜約107cmの間の範囲の長さを有する、請求項126に記載のシステム。
【請求項128】
前記入口導管は20〜30cmの間の長さを有する、請求項126に記載のシステム。
【請求項129】
前記出口導管は35〜50cmの間の長さを有する、請求項126に記載のシステム。
【請求項130】
前記出口導管は60〜65cmの間の長さを有する、請求項126に記載のシステム。
【請求項131】
前記低流量ポンプは小児用ポンプである、請求項126に記載のシステム。
【請求項132】
血液ポンプシステムを組立てる方法であって、
血液ポンプに流体連通している第1の導管を動脈に取り付け、
血液ポンプに流体連通している第2の導管を静脈に取り付け、
前記血液ポンプを起動して前記動脈と前記静脈の間で血液をポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項1】
末梢静脈における血液速度および壁剪断応力を上昇させる方法であって、
ポンプ−導管アセンブリの一端を前記末梢静脈に、そして前記ポンプ−導管アセンブリの別の端を別の静脈に流体接続し、
前記他の静脈から前記末梢静脈へ脱酸素化血液をポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項2】
末梢静脈の全体直径を増大させる方法であって、
ポンプ−導管アセンブリの一端を前記末梢静脈に、そして別の端を別の静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径を持続的に増大させる結果となるに十分な速度および時間の長さで脱酸素化血液を前記他方の端から前記末梢静脈へポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項3】
患者に動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成する方法であって、
ポンプ−導管アセンブリの一端を末梢静脈に、そして別の端を別の静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径および内腔直径を持続的に増大させる結果となるのに十分な量の脱酸素化血液を前記別の静脈から前記末梢静脈へポンプ輸送し、
患者への動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトの形成に、前記拡張された末梢静脈を用いる、
ことを含む方法。
【請求項4】
前記別の静脈は、肘正中静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、上大静脈、または下大静脈である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記もう一方の静脈は右心房である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポンプ−導管アセンブリは患者の体内に移植されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポンプ−導管アセンブリのポンプは、腕、首、胸、腹、脚、鼠蹊部、骨盤のいずれかに移植されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポンプ−導管アセンブリのポンプは、脈圧が40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満の血流を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈の壁剪断応力は0.76Paより大きい請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈の壁剪断応力は0.76Paと23Paの間、または好ましくは2.5Paと7.5Paの間である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記末梢静脈は腕または脚内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポンプ−導管アセンブリの少なくとも一部は、前記末梢静脈の内腔に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記末梢静脈でバイパスグラフトを形成することをさらに含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
制御ユニットをポンプに接続することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
電源ユニットをポンプに接続することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ポンプまたは合成導管は、血液速度、血液体積流量、前記受容静脈への血流抵抗、血圧、及びこれらの組合せに対するセンサを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポンプ輸送は、前記末梢静脈での平均脈圧がポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満となるように、脱酸素化血液をポンプで送出することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
末梢静脈における血液速度および壁剪断応力を上昇させる方法であって、
カテーテル−ポンプアセンブリのカテーテル部品の部分を静脈系の内腔に挿入し、
供与静脈から脱酸素化血液を前記末梢静脈中へポンプ輸送する、
ことを含む、方法。
【請求項22】
静脈の全体直径を増大させる方法であって、
カテーテル−ポンプアセンブリのカテーテル部品の部分を静脈系の内腔に挿入し、
血液を吸引している前記カテーテル部分の端部と、血液を放出している前記カテーテル部分の別の端部との間の末梢静脈の少なくとも一部の全体直径を増大させる結果となるに十分な速度および時間の長さに亘って、脱酸素化血液を供与静脈から前記末梢静脈中へポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項23】
患者に動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成する方法であって、
カテーテル−ポンプアセンブリのカテーテル部品の部分を静脈系の内腔に挿入し、
血液を吸引している前記カテーテル部分の端部と、血液を放出している前記カテーテル部分の別の端部との間の末梢静脈の少なくとも一部の全体直径を増大させる結果となるに十分な時間の長さに亘って、脱酸素化血液を供与静脈から前記末梢静脈中へポンプ輸送し、
患者への動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトの形成に、前記拡張された末梢静脈を用いる、
ことを含む、方法。
【請求項24】
前記供与静脈内に配置された前記カテーテルは、橈側皮静脈、肘正中静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、または下大静脈の内腔にある、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記供与静脈内に配置された前記カテーテル部分は右心房内にある、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記末梢静脈内に配置された前記カテーテル部分は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈の内腔にある、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ポンプ−カテーテルアセンブリのポンプは実質的に非拍動流を形成する、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
血液は前記ポンプ−カテーテルアセンブリを介して、50〜1500mL/minの速度で送り出される、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈のWSSは0.76Paより大きい、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈のWSSは0.076Paと23Paの間、好ましくは2.5Paと7.5Paの間である、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
血液は前記ポンプ−カテーテルアセンブリを介して、7〜84日間送り出される、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ポンプ−カテーテルアセンブリの前記カテーテル部の一部は、腕または脚の静脈内に挿入される、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項21〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用してバイパスグラフトを形成することをさらに含む、請求項21〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
制御ユニットをポンプに接続することをさらに含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
電源ユニットをポンプに接続することをさらに含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
電源ユニットは電池を含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法
【請求項38】
前記ポンプ−カテーテルアセンブリのポンプまたはカテーテルは、血液速度、血液体積流量、前記受容静脈への血流抵抗、血圧、及びこれらの組合せに対するセンサを含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ポンプ輸送は、前記末梢静脈での平均脈圧がポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満となるように、脱酸素化血液をポンプで送出することを含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
末梢静脈における血液速度およびWSSを上昇させる方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢動脈から前記末梢静脈へ酸素化された血液をポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項41】
末梢静脈の全体直径を増大させる方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径を増大させる結果となるような速度と時間の長さとで酸素化された血液を前記末梢動脈から前記末梢静脈へポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項42】
患者に動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成する方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径を増大させる結果となるような速度と時間の長さとで酸素化された血液を前記末梢動脈から前記末梢静脈へポンプ輸送し、
患者に前記動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成するのに、前記拡張された末梢静脈を用いる、
ことを含む方法。
【請求項43】
前記酸素化された血液をポンプ輸送することが前記末梢動脈の全体直径を増大させる結果となり、患者への動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトの形成に、前記拡張された末梢動脈を用いることをさらに含む、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ポンプは、合成導管を利用せずに、前記末梢動脈または前記末梢静脈へ直接接続されている、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記末梢動脈は、橈骨動脈、骨間動脈、尺骨動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、浅大腿動脈、上腕深動脈、または大腿動脈である、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、および大腿静脈である、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ポンプは患者に移植されている、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ポンプは首、胸、腕、または脚に移植されている、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ポンプは、前記末梢静脈内に、前記末梢動脈内の脈圧よりも低い脈圧の血流を形成する、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
血液は前記末梢動脈から前記末梢静脈へ50〜1500mL/minの速度で送り出される、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記ポンプが動作している状態で、前記受容静脈のWSSは0.076Paより大きい、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記ポンプが動作している状態で、前記末梢静脈のWSSは0.076Pa〜23Pa、好ましくは2.5Pa〜7.5Paである、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
血液は前記末梢動脈から前記末梢静脈へ7〜84日間送り出される、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記末梢静脈は腕または脚にある、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記末梢動脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記末梢動脈および前記末梢静脈の両者の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記末梢静脈の少なくとも一部を利用してバイパスグラフトを形成することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記ポンプに制御ユニットを接続することをさらに含む、請求項40〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記ポンプに電源ユニットを接続することをさらに含む、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記ポンプまたは合成導管は、血液速度、血液体積流量、前記受容静脈への血流抵抗、血圧、及びこれらの組合せに対するセンサを含む、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記ポンプ輸送は、前記受容静脈での平均脈圧がポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満となるように、前記脱酸素化血液をポンプで送出することを含む、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
患者の末梢静脈における血液速度およびWSSを上昇させるシステムであって、
供与静脈から脱酸素化血液を引き出し、末梢静脈へ血液を送り出すように構成されたポンプ−導管アセンブリと、
前記ポンプを制御するように構成された制御ユニットと、
を備え、
前記ポンプ−導管アセンブリは、
入口と出口とを有し、脱酸素化血液を送り出すように構成され、脱酸素化血液を前記末梢静脈へ送達するように構成されたポンプと、
前記供与静脈と流体接続するように構成された第1の端と、前記ポンプの入口に接続された第2の端とを有する第1の導管と、
前記受容末梢静脈と流体接続するように構成された第1の端と、前記ポンプの出口に接続された第2の端とを有し、血液流を前記末梢静脈へ差し向ける第2の導管と、
を備えることを特徴とする、システム。
【請求項65】
前記ポンプは磁気浮上回転ポンプを含む、請求項64に記載のシステム。
【請求項66】
前記ポンプは、小児用心室補助装置の一部品である、請求項64に記載のシステム。
【請求項67】
前記制御ユニットは前記ポンプに電力を供給する電源ユニットを含む、請求項64に記載のシステム。
【請求項68】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記供与静脈のさらなるものは、橈側皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、内頸静脈、右心房、伏在静脈、または大腿静脈である、請求項64に記載のシステム。
【請求項70】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項64に記載のシステム。
【請求項71】
前記第1または第2の導管の少なくとも一部は前記供与静脈または末梢静脈の内腔内に配置されている、請求項64に記載のシステム。
【請求項72】
患者の末梢静脈における血液速度およびWSSを上昇させるシステムであって、
供与静脈から脱酸素化血液を引き出し、その血液を末梢静脈へ送り出すように構成されたポンプ−カテーテルアセンブリと、
前記ポンプを制御するように構成された制御ユニットと、
を備え、
前記ポンプ−カテーテルアセンブリは、
入口と出口とを有し、脱酸素化血液を送り出すように構成され、脱酸素化血液を前記末梢静脈へ送達するように構成された体外ポンプと、
静脈の内腔に挿入され、前記供与静脈と流体接続されるように構成された第1の端と、前記ポンプの入口へ接続されるように構成された第2の端とを有する第1のカテーテルと、
静脈の内腔へ挿入されるように構成され、前記受容末梢静脈と流体接続するように構成された第1の端と、前記ポンプの出口に接続された第2の端とを有し、前記第2の導管は血液流を前記末梢静脈へ差し向ける第2のカテーテルと、
を備えることを特徴とする、システム。
【請求項73】
前記ポンプは磁気浮上回転ポンプを含む、請求項72に記載のシステム。
【請求項74】
前記ポンプ筒は、小児用心室補助装置の一部品である、請求項72に記載のシステム。
【請求項75】
前記制御ユニットは前記ポンプに電力を供給する電源ユニットを含む、請求項72に記載のシステム。
【請求項76】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項75に記載のシステム。
【請求項77】
さらなる供与静脈は、橈側皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、または下大静脈である、請求項72項に記載のシステム。
【請求項78】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項72に記載のシステム。
【請求項79】
患者の末梢静脈における血液速度およびWSSを上昇させるシステムであって、
末梢動脈から血液を引き出し、前記血液を末梢静脈へ送り出すポンプ
を備え、
前記ポンプは、
末梢動脈と流体接続できるようになった入口と、
末梢静脈と流体接続できるようになった出口と、
前記ポンプを制御するように構成された制御ユニットと、
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項80】
前記ポンプは磁気浮上回転ポンプを含む、請求項79に記載のシステム。
【請求項81】
前記ポンプは、小児用心室補助装置の一部品である、請求項79に記載のシステム。
【請求項82】
前記制御ユニットは前記ポンプに電力を供給する電源ユニットを含む、請求項79に記載のシステム。
【請求項83】
前記電源ユニットは電池を含む、請求項82に記載のシステム。
【請求項84】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項79に記載のシステム。
【請求項85】
前記末梢動脈は、橈骨静脈、尺骨動脈、骨間動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、膝窩動脈、浅大腿動脈、または大腿動脈である、請求項79に記載の方法。
【請求項86】
末梢動脈と末梢静脈において血液速度およびWSSを同時に上昇させる方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の一端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢動脈から前記末梢静脈へ酸素化血液をポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項87】
末梢動脈と末梢静脈の全体直径を同時に増大させる方法であって、
ポンプの一端を末梢動脈に、そして別の一端を末梢静脈に流体接続し、
前記末梢静脈の全体直径を増大させる結果となるような速度と時間の長さで酸素化血液を前記末梢動脈から前記末梢静脈へポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項88】
前記末梢動脈および前記末梢静脈の少なくとも一部を利用して動静脈フィステルまたは動静脈グラフトを形成することをさらに含む、請求項86〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記ポンプ輸送は、前記受容静脈での平均脈圧がポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満となるように、前記脱酸素化血液をポンプで送出することを含む、請求項86〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
末梢血管の直径を増大させる方法であって、
第1の拍動の第1の血流を有する第1の血管にアクセスし、
前記第1の血管に血液ポンプの入口を接続して前記第1の血管と前記血液ポンプの間を流体連通させ、
第2の拍動の第2の血流を有する前記末梢静脈にアクセスし、
前記末梢血管に前記血液ポンプの出口を接続して前記末梢静脈と前記血液ポンプの間を流体連通させ、
前記末梢静脈内のWSSが0.076Pa〜23Paの範囲となるように、約7日〜84日の間、前記第1の血管から前記末梢静脈へ、連続的に血液をポンプ輸送し、前記末梢静脈に入る血液は、ポンプの動作状態で、40mmHg未満、30mmHg未満、20mmHg未満、10mmHg未満、または好ましくは5mmHg未満の平均脈圧を有し、
前記末梢静脈へ入る血液の少なくとも1つのパラメータを前記ポンプと通信する1つまたは複数のセンサで測定し、
前記血液ポンプを調節して前記末梢静脈中のWSSが0.076Pa〜23Paの範囲にあるようにポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【請求項91】
前記末梢血管の直径を、血液をある期間ポンプ輸送した後に判定し、
前記末梢血管の直径が所望のレベルにまで増大していなければ、前記血液ポンプを再調整して、前記末梢血管内のWSSを0.076Pa〜23Paの範囲に維持する、
ことをさらに含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記血液ポンプは、前記血液ポンプの運転パラメータを調節可能な制御ユニットを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記血液ポンプは、前記制御ユニットを用いて手動で調整される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記制御ユニットは、前記血液ポンプをモニタするソフトウェアプログラムによって自動的に調整される、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記流出導管内または末梢静脈内の血液の少なくとも1つのパラメータは3〜14日ごとに測定される、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
前記末梢血管の直径は、血液をポンプ輸送している間、3〜14日毎に判定される、請求項90に記載の方法。
【請求項97】
持続的に増大した直径を有する前記末梢静脈の少なくとも一部で動静脈フィステルや動静脈グラフトやバイパスグラフトを形成することをさらに含む、請求項90に記載の方法。
【請求項98】
前記第1の血管と前記末梢静脈は外科手術によってアクセスされる、請求項90に記載の方法。
【請求項99】
前記血液ポンプを、腕、首、胸、腹、脚、鼠蹊部、骨盤からなる群から選択される1つの場所に移植することをさらに含む、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記第1の血管と前記末梢静脈は1つまたは複数のカテーテルを用いてアクセスされる、請求項90に記載の方法。
【請求項101】
前記第1の血管と前記末梢静脈は、末梢で挿入された中心カテーテル、トンネル型カテーテル、非トンネル型カテーテル、および皮下移植ポートのうちの1つまたは複数によってアクセスされる、請求項90に記載の方法。
【請求項102】
前記血液ポンプは低流量ポンプである、請求項90に記載の方法。
【請求項103】
前記血液ポンプは正変位型ポンプである、請求項90に記載の方法。
【請求項104】
前記血液は約50〜約1500mL/minの間の速度で前記末梢静脈中へポンプ輸送される、請求項90に記載の方法。
【請求項105】
前記血液は約14〜約84日の期間ポンプ輸送される、請求項90に記載の方法
【請求項106】
前記末梢静脈は腕または脚に配置される、請求項90に記載の方法。
【請求項107】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、または大腿静脈である、請求項90に記載の方法。
【請求項108】
前記第1の血管は、右心房、肘正中静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、腕頭静脈、上大静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、大腿静脈、総腸骨静脈、外腸骨静脈、上大静脈、下大静脈、橈骨動脈、骨間動脈、尺骨動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、浅大腿動脈、上腕深動脈、あるいは大腿動脈である、請求項90に記載の方法。
【請求項109】
前記センサにより測定される前記パラメータは、血液速度、血液体積流量、前記受容静脈中への血流抵抗、前記ポンプまたは流入導管または流出導管内の血圧、およびそれらの組合せ、からなる群から選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項110】
前記血液はポンプ輸送されて、前記末梢静脈内で40mmHg以下の平均脈圧を与える、請求項90に記載の方法。
【請求項111】
前記血液はポンプ輸送されて、前記末梢静脈内で5mmHg以下の平均脈圧を与える、請求項90に記載の方法。
【請求項112】
前記第1の血管と前記末梢静脈との間にポンプ輸送される血液は脱酸素化血液である、請求項90に記載の方法。
【請求項113】
前記第1の血管と前記末梢静脈との間にポンプ輸送される血液は酸素化血液である、請求項90に記載の方法。
【請求項114】
末梢静脈の直径を増大させる方法であって、
第1の拍動の第1の血流を有する第1の血管にアクセスし、
前記第1の血管に血液ポンプの入口を接続して前記第1の血管と前記血液ポンプとを流体連通させ、
第2の拍動の第2の血流を有する前記末梢静脈にアクセスし、
前記末梢血管に前記血液ポンプの出口を接続して前記末梢静脈と前記血液ポンプとを流体連通させ、
前記末梢静脈内のWSSが0.076〜23Paの範囲となるように、約7〜84日間に亘って、前記第1の血管から前記末梢静脈へ血液を連続的にポンプ輸送し、
前記血液ポンプを調節して前記末梢静脈中のWSSが0.076Pa〜23Paの範囲に維持する、
ことを含む方法。
【請求項115】
末梢静脈の直径を増大させる方法であって、
第1の拍動の第1の血流を有する第1の血管にアクセスし、
前記第1の血管に血液ポンプの入口を接続して前記第1の血管と前記血液ポンプとを流体連通させ、
第2の拍動の第2の血流を有する前記末梢静脈にアクセスし、
前記末梢血管に前記血液ポンプの出口を接続して前記末梢静脈と前記血液ポンプとを流体連通させ、
前記末梢静脈内のWSSが0.076〜23Paの範囲となるように、約7〜84日間に亘って、前記第1の血管から前記末梢静脈へ血液を連続的にポンプ輸送し、前記末梢静脈に入る血液は前記第1の拍動に比べて拍動が下がるようにし、
前記末梢静脈へ入る血液の少なくとも1つのパラメータを前記ポンプと通信する1つまたは複数のセンサで測定し、
前記血液ポンプを調節して、少なくとも1つの測定パラメータに基づいて前記末梢静脈中のWSSを0.076Pa〜23Paの範囲に維持する、
ことを含む方法。
【請求項116】
末梢静脈の全体直径を増大させるシステムであって、
供与静脈から脱酸素化血液を引き出し、前記脱酸素化血液を末梢静脈へポンプ輸送するためのポンプ−導管アセンブリであって、
前記脱酸素化血液を前記末梢静脈へ送達するための入口と出口とを有するポンプと、
前記供与静脈と流体接続する第1の端と、前記ポンプの入口に接続された第2の端とを有する第1の導管と、
前記受容末梢静脈と流体接続する第1の端と、前記ポンプの出口に接続された第2の端とを有し、血液流を前記末梢静脈へ差し向ける、第2の導管と、を備える前記ポンプ−導管アセンブリと、
制御ユニットであって、
前記ポンプへ電力を供給し、
前記脱酸素化血液によって前記末梢静脈に与えられる壁剪断応力を約0.076〜約23Paの間に制御し、
前記脱酸素化血液の脈圧を40mmHg未満でポンプ輸送するようにポンプ圧力を調整する制御ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項117】
前記制御ユニットは前記末梢静脈に入る前記脱酸素化血液の少なくとも1つのパラメータを測定するための1つまたは複数のセンサを含み、前記システムはさらに、前記末梢静脈の前記全体直径がまだ増大してない場合には、前記脱酸素化血液によって与えられる前記壁剪断応力を約0.076〜約23Paの間に調節して、拍動を低く維持するように前記制御ユニットを調節する、請求項116に記載のシステム。
【請求項118】
前記ポンプは磁気浮上回転ポンプである、請求項116に記載のシステム。
【請求項119】
前記ポンプは、小児用心室補助装置の一部品である、請求項116に記載のシステム。
【請求項120】
前記制御ユニットは前記ポンプに電力を供給するための再充電可能な電源ユニットを含む、請求項116に記載のシステム。
【請求項121】
前記供与静脈は、橈側皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、腋窩静脈、内頸静脈、右心房、伏在静脈、および大腿静脈からなる群から選択される、請求項116に記載のシステム。
【請求項122】
前記末梢静脈は、橈側皮静脈、橈骨静脈、正中静脈、尺骨静脈、肘正中静脈、橈側正中皮静脈、尺側正中皮静脈、尺側皮静脈、上腕静脈、小伏在静脈、大伏在静脈、および大腿静脈からなる群から選択される、請求項116に記載のシステム。
【請求項123】
末梢静脈中の壁剪断応力と血液速度を上昇させるためのシステムであって、
供与静脈から脱酸素化血液を引き出し、前記脱酸素化血液を末梢静脈へポンプ輸送するためのポンプ―カテーテルアセンブリと、
制御ユニットと、
を備え、
前記ポンプ―カテーテルアセンブリは、
前記脱酸素化血液を前記末梢静脈へポンプ輸送するための入口と出口とを有する体外ポンプと、
前記供与静脈と流体接続する第1の端と、前記ポンプの入口に流体接続する第2の端とを有する第1のカテーテルと、
前記末梢静脈と流体接続する第1の端と、前記ポンプの出口に接続し血液流を前記末梢静脈へ差し向ける第2の端とを有する第2のカテーテルとを備え、
前記制御ユニットは、
前記ポンプへ電力を供給し、
前記脱酸素化血液を15〜100cm/sの間でポンプ輸送するようにポンプ速度を制御し、
前記脱酸素化血液を40mmHg未満の脈圧でポンプ輸送するようにポンプ圧力を調整する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項124】
末梢静脈の血液速度を上昇させるシステムであって、
末梢動脈から血液を引き出し、前記血液を末梢静脈へ送り出すポンプと、
制御ユニットと、
を備え、
前記ポンプは、
前記末梢動脈に流体接続する入口と、
前記末梢静脈に流体接続する出口とを備え、
前記制御ユニットは、
前記ポンプへ電力を供給し、
脱酸素化血液を15〜100cm/sの間でポンプ輸送するようにポンプ速度を制御し、
脱酸素化血液の脈圧を40mmHg未満でポンプ輸送するようにポンプ圧力を調整する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項125】
前記末梢動脈は、橈骨静脈、尺骨動脈、骨間動脈、上腕動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈、膝窩動脈、浅大腿動脈、および大腿動脈からなる群から選択される、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
血管中の壁剪断応力と血液速度を上昇させるためのシステムであって、
低流量ポンプと、
ソフトウェアベースの自動調整システムと手動制御器からなる別の群から選択される調整装置と、
を備え、
前記低流量ポンプは、
動脈と静脈と、とからなる群から選択される1つの血管へ流体接続するための入口導管と、静脈に流体接続する出口導管とを有し、
前記血管から前記静脈へ約7〜84日間に亘り血液をポンプ輸送し、
前記静脈の前記壁剪断応力が約0.076〜約23Paの範囲となるように血液をポンプ輸送する、
ことを特徴とする、システム。
【請求項127】
前記第1の導管と前記第2の導管の少なくとも1つは、約10cm〜約107cmの間の範囲の長さを有する、請求項126に記載のシステム。
【請求項128】
前記入口導管は20〜30cmの間の長さを有する、請求項126に記載のシステム。
【請求項129】
前記出口導管は35〜50cmの間の長さを有する、請求項126に記載のシステム。
【請求項130】
前記出口導管は60〜65cmの間の長さを有する、請求項126に記載のシステム。
【請求項131】
前記低流量ポンプは小児用ポンプである、請求項126に記載のシステム。
【請求項132】
血液ポンプシステムを組立てる方法であって、
血液ポンプに流体連通している第1の導管を動脈に取り付け、
血液ポンプに流体連通している第2の導管を静脈に取り付け、
前記血液ポンプを起動して前記動脈と前記静脈の間で血液をポンプ輸送する、
ことを含む方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2013−519497(P2013−519497A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554038(P2012−554038)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2011/025331
【国際公開番号】WO2011/103356
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512215004)ノビタ セラピューティクス エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2011/025331
【国際公開番号】WO2011/103356
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512215004)ノビタ セラピューティクス エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]