静脈認証装置
【課題】指の載置状態を検知することで更なる認証精度の向上を図ることが可能な静脈認証装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る静脈認証装置は、指の一部が載置されたか否かを検出する、所定の基板上に配設された複数の載置検出部と、載置された前記指の一部に対して所定波長の近赤外光を照射する、前記基板上に配設された複数の光源部と、前記近赤外光が照射された前記指の一部を撮像する撮像部と、を備え、前記基板を指の長手方向に対して直交する方向から見たときに、前記光源部及び前記載置検出部は、前記指の長手方向に沿って前記基板上に交互に配設されている。
【解決手段】本発明に係る静脈認証装置は、指の一部が載置されたか否かを検出する、所定の基板上に配設された複数の載置検出部と、載置された前記指の一部に対して所定波長の近赤外光を照射する、前記基板上に配設された複数の光源部と、前記近赤外光が照射された前記指の一部を撮像する撮像部と、を備え、前記基板を指の長手方向に対して直交する方向から見たときに、前記光源部及び前記載置検出部は、前記指の長手方向に沿って前記基板上に交互に配設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体個人認証は今後のネットワーク社会において、権利を守る為に非常に重要な技術である。特に、他人が本人になりすまして、金銭やコンテンツ、権利などをネット越しに盗むことが可能であるインターネット上での商取引では、暗号だけでは解決できない領域を守る技術として注目されている。しかし、指紋やアイリスなどは、偽造の問題が解決できない。この点、静脈のパターンで外部から容易に撮像できない部位を用いた個人認証技術は、判定精度の高さや偽造、成りすましが困難であるため、次世代の生体個人認証として期待されている。
【0003】
特に、指の内部に存在する静脈のパターンに着目した指静脈認証は、手のひらの内部に存在する静脈のパターンに着目した掌静脈認証と比べて認証装置を小型化できるという利点がある。しかしながら、近年、携帯電話やタッチパネルを利用した携帯機器など各種の携帯機器の普及に伴い、指静脈認証装置の更なる小型化や薄型化が求められている。そのため、以下の特許文献1では、指静脈認証装置の小型化・薄型化を実現するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−98935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、指静脈認証処理という一連の流れに関して本発明者が鋭意検討を行った結果、人がある平面上に一本の指を載置するという動作を行う場合、意識せずにかかる動作を行うと、指全体が平面に接している状態とならないことが多いという点に想到した。換言すれば、着目している平面から見た場合、指を載置するという動作を意識せずに行ったときには、平面と指との間の距離がほぼ一定とならないことが多いということである。
【0006】
上記特許文献1に記載されているような指静脈認証装置において、近赤外光を照射する光源と指との間の距離が略一定にならない場合には、指静脈認証処理の認証精度の低下を招く可能性があるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、指の載置状態を検知することで更なる認証精度の向上を図ることが可能な、静脈認証装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、指の一部が載置されたか否かを検出する、所定の基板上に配設された複数の載置検出部と、載置された前記指の一部に対して所定波長の近赤外光を照射する、前記基板上に配設された複数の光源部と、前記近赤外光が照射された前記指の一部を撮像する撮像部と、を備え、前記基板を指の長手方向に対して直交する方向から見たときに、前記光源部及び前記載置検出部は、前記指の長手方向に沿って前記基板上に交互に配設されている静脈認証装置が提供される。
【0009】
前記複数の載置検出部及び前記複数の光源部を覆う樹脂層を更に備え、前記樹脂層の厚み方向の前記載置検出部及び前記光源部が存在しない側の面は平坦となっており、前記樹脂層の平坦面上に指の一部が載置されることが好ましい。
【0010】
前記複数の光源部は、全ての前記載置検出部が指の載置を検出した場合に、前記近赤外光の照射を開始することが好ましい。
【0011】
前記指の長手方向に沿って隣り合う前記光源部の間隔は、指先が載置される側に向かうにつれて広くなってもよい。
【0012】
前記指の長手方向に沿って配設される前記光源部は、指の長手方向の位置が指の根元側に位置するほど、前記指の長手方向に対して直交する方向に配設される個数が増加するようにしてもよい。
【0013】
前記複数の載置検出部は、前記指の長手方向に沿って一列に配設されており、前記複数の光源部は、前記複数の載置検出部からなる列の両側に、当該列と平行となるように配設されてもよい。
【0014】
前記載置検出部及び前記光源部は、前記指の長手方向に沿って一列に並んで配設されており、複数の載置検出部及び光源部からなる列が、互いに平行に複数存在してもよい。
【0015】
前記撮像部は、隣り合う前記複数の載置検出部及び光源部からなる列の間に配設されてもよい。
【0016】
前記複数の載置検出部は、静電センサ、フォトセンサ、感圧センサ又はホールセンサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、指の載置状態を検知することで更なる認証精度の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る指静脈認証装置の外観を示した説明図である。
【図2】同実施形態に係る指静脈認証装置を上方から見た場合の上面図である。
【図3】図2のA−A切断線における断面を示した断面図である。
【図4】同実施形態に係る樹脂層を説明するための説明図である。
【図5A】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図5B】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図6A】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図6B】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図7A】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図7B】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図8】撮像画像及び静脈パターンについて説明するための説明図である。
【図9A】本実施形態に係る指静脈認証装置の第1変形例を示した説明図である。
【図9B】本実施形態に係る指静脈認証装置の第2変形例を示した説明図である。
【図9C】本実施形態に係る指静脈認証装置の第3変形例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
なお、説明は、以下の順序で行うものとする。
(1)第1の実施形態
(1−1)指静脈認証装置の構成について
(1−2)指静脈認証装置の断面構造について
(1−3)載置検出部及び光源部について
(1−4)変形例
【0021】
(第1の実施形態)
<指静脈認証装置の構成について>
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置1の構成について、簡単に説明する。図1は、本実施形態に係る指静脈認証装置の外観を示した説明図であり、図2は、本実施形態に係る指静脈認証装置を上方から見た場合の上面図である。
【0022】
本実施形態に係る指静脈認証装置1は、図1に示したように、ユーザの指Fの一部が載置される筐体と、筐体に設けられた撮像部101と、を備える。この筐体には、ユーザが指を載置する位置(載置位置)を表す印刷がなされていてもよく、指の載置位置を表す表示がされるようになっていてもよい。
【0023】
また、図2に示したように、指静脈認証装置1の筐体の内部には、指の長軸方向に沿って、複数の載置検出部103及び複数の光源部105が配設されている。更に、指静脈認証装置1の筐体のうち、少なくとも指が載置される位置には、樹脂層107が設けられており、この樹脂層107によって、複数の載置検出部103及び光源部105が覆われている。
【0024】
ユーザが指静脈認証装置1の載置位置に指Fを置くと、複数の載置検出部103それぞれが、指が載置されたか否かの検出を行って、検出結果を出力する。指静脈認証装置1の内部に設けられた制御部(図示せず。)は、各載置検出部103から出力された検出結果を参照して、以下で改めて説明する撮像開始条件が満たされたか否かの判断を行う。撮像開始条件が満たされると、制御部は、複数の光源部105に対して、所定の波長を有する近赤外光の照射開始を要請するとともに、撮像部101に対して指の撮像開始を要請する。また、制御部は、撮像部101により撮像された指の撮像画像から静脈パターンを抽出し、抽出した静脈パターンに基づいてユーザの認証を実施する。
【0025】
ここで、指静脈認証装置1の内部に設けられた制御部について、簡単に説明する。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。制御部は、指静脈認証装置1に設けられた記憶部(図示せず。)内に格納されている各種のプログラム、パラメータ、データベース等を利用して、指静脈認証装置1全体の動作を制御するとともに、ユーザの指静脈認証処理を実施する。
【0026】
また、撮像部101は、レンズ等の光学素子と撮像素子とを有している。
人体の皮膚は、表皮層、真皮層および皮下組織層の3層構造となっていることが知られているが、静脈の存在する静脈層は、真皮層に存在している。真皮層は、指表面に対して0.1mm〜0.3mm程度の位置から2mm〜3mm程度の厚みで存在している層である。したがって、このような真皮層の存在位置(例えば、指表面から1.5mm〜2.0mm程度の位置)にレンズ等の光学素子の焦点位置を設定することで、静脈層を透過した透過光を、効率よく集光することが可能となる。
【0027】
光学素子によって集光された静脈層を透過した透過光は、CCDやCMOS等の撮像素子に結像されて、静脈撮像画像となる。撮像部101は、静脈撮像画像を生成すると、生成した静脈撮像画像を制御部に出力する。
【0028】
載置検出部103は、ユーザの指Fが載置されたか否かを検出する。載置検出部103は、例えば、静電センサ、フォトセンサ、感圧センサ又はホールセンサを用いて形成されることが好ましい。これらのセンサは、ユーザの指Fがセンサ又は当該センサに接触している他の物体(例えば、樹脂層107)に触れる程度で、指の載置を検出することが可能となる。
【0029】
なお、載置検出部103として、各種のコンタクトスイッチを用いることも可能ではあるが、ユーザの指がコンタクトスイッチを押圧することで、指の内部に存在する静脈も圧迫されることとなって、静脈内部を流れる血液の量が低下する恐れがある。以下で説明するように、指静脈認証処理では、血液中のヘモグロビンによって吸収された近赤外光の光量の多少に応じて静脈撮像画像の濃淡が決まるため、血流量が低下することは好ましくない。従って、載置検出部103としてコンタクトスイッチを用いるよりかは、上記センサ類を使用することが好ましい。
【0030】
指静脈認証装置1に設けられる複数の載置検出部103は、以下で説明するように、ユーザの指が適切な位置に載置されているか否かの判断に利用されるものであるが、同時に、後述する光源部105が近赤外光を照射するためのスイッチとしても用いられる。
【0031】
指静脈認証装置1に設けられた複数の載置検出部103は、ユーザの指が載置されたことを検出した場合には、その検出結果を制御部に出力する。制御部は、指静脈認証装置1に設けられた全ての載置検出部103から指の載置を検出した旨の検出結果が得られた場合に、光源部105から近赤外光を照射させるとともに、撮像部101による指の撮像を開始させる。
【0032】
光源部105は、指静脈認証装置1に載置されたユーザの指Fに対して、所定の波長を有する近赤外光を照射する。この光源部105は、例えば、近赤外光を照射可能な発光ダイオードであってもよく、所定波長の光を照射する発光素子と発光素子からの光を近赤外光へと変換するフィルタとから構成されるユニットであってもよい。
【0033】
ここで、光源部105がユーザの指に対して近赤外光の照射を開始するタイミングは、指静脈認証装置1に設けられた全ての載置検出部103が指を検出した際であることが好ましい。かかるタイミングで近赤外光の照射を開始することで、近赤外光を常時照射し続けなくともよくなり、指静脈認証装置1の消費電力を抑制することが可能となる。
【0034】
近赤外光は、身体組織に対して透過性が高い一方で、血液中のヘモグロビン(還元ヘモグロビン)に吸収されるという特徴を有するため、近赤外光を指や手のひらや手の甲に照射すると、指や手のひらや手の甲の内部に分布している静脈が影となって画像に現れる。画像に表れる静脈の影を、静脈パターンという。このような静脈パターンを良好に撮像するために、発光ダイオード等の光源部105は、約600nm〜1300nm程度の波長、好ましくは、700nm〜900nm程度の波長を有する近赤外光を照射する。
【0035】
ここで、光源部105が照射する近赤外光の波長が600nm未満又は1300nm超過である場合には、血液中のヘモグロビンに吸収される割合が小さくなるため、良好な静脈パターンを得ることが困難となる。また、光源部105が照射する近赤外光の波長が700nm〜900nm程度である場合には、近赤外光は、脱酸素化ヘモグロビンと酸素化ヘモグロビンの双方に対して特異的に吸収されるため、良好な静脈パターンを得ることができる。
【0036】
光源部105から射出された近赤外光は、生体部位の表面に向かって伝搬し、直接光として、指の表面等から生体内部に入射する。ここで、人体は良好な近赤外光の散乱体であるため、生体内に入射した直接光は四方に散乱しながら伝搬する。生体内を透過した近赤外光は、撮像部101によって集光されて、静脈撮像画像となる。
【0037】
樹脂層107は、近赤外光を透過可能な材料により形成された層であり、近赤外光を透過する近赤外光透過フィルターそのものであってもよい。樹脂層107の形成に用いられる材料は、近赤外光を透過するものであれば特に限定されるものではなく、任意の材料を利用することが可能である。
【0038】
この樹脂層107は、以下で説明するように、載置検出部103及び光源部105を覆うように形成される。換言すれば、この樹脂層107は、樹脂モールドであるといえる。
【0039】
以上、図1及び図2を参照しながら、指静脈認証装置1の構成について簡単に説明したが、以下では、載置検出部103、光源部105及び樹脂層107について、改めて詳細に説明する。
【0040】
<指静脈認証装置の断面構造について>
続いて、図3を参照しながら、指静脈認証装置1の断面構造について説明する。図3は、図2に示した指静脈認証装置1をA−A切断線で切断した場合の断面を示した断面図である。
【0041】
本実施形態に係る指静脈認証装置1を図2のA−A切断線で切断して、指長軸方向に対して直交する方向から見ると、図3に示したように、複数の載置検出部103及び光源部105が、指長軸方向に沿ってそれぞれ交互に配設されている。また、図3に示したように、複数の載置検出部103及び光源部105は、基板11の同一面にマウントされている。
【0042】
この基板11は、載置検出部103及び光源部105を載置することが可能なものであれば、任意の材質のものを利用することが可能である。また、基板11上には、載置検出部103及び光源部105と、制御部(図示せず)との間における情報のやり取りを実現するための配線等がプリントされていてもよい。
【0043】
また、載置検出部103として利用される各種のセンサと、光源部105として利用される各種の発光ダイオードとは、図3に例示したように、各々の高さが異なっていることが多い。本実施形態に係る指静脈認証装置1では、載置検出部103と光源部105とを覆うように樹脂層107が形成されており、樹脂層107の厚み方向の載置検出部103及び光源部105が存在しない側の面は、図3に示したように、平坦面になっている。この平坦面上に、ユーザの指が載置される。
【0044】
図4は、樹脂層107の一部を拡大して示した模式図である。図4に示したように、樹脂層107の載置検出部103及び光源部105に対向する面には、載置検出部103及び光源部105の形状に対応する凹部109,111が形成されている。図4に示した例では、凹部109に載置検出部103が収容され、凹部111に光源部105が収容されることとなる。載置検出部103及び光源部105が対応する凹部に収容されることで、載置検出部103、光源部105及び樹脂層107からなるユニットの厚みを薄くすることができ、ユニットの小型化が実現できるとともに、指載置面を平坦面とすることが可能となる。また、指載置面を平坦面とすることが実現されることで、載置検出部103、光源部105及び樹脂層107からなるユニットの取り付け場所に関する制限が無くなる。
【0045】
また、凹部111の深さに対する凹部109の深さの差ΔDは、載置検出部103の高さと光源部105の高さの差となっている。凹部111の深さを調整することで、凹部111の底面から指が載置される樹脂層107の平坦面までの距離を調整することが可能となり、ひいては、指に照射される近赤外光の光量を調整することが可能となる。凹部111の深さは、静脈撮像画像の生成に適切な近赤外光の光量が実現できるように適宜調整すればよい。
【0046】
また、光源部105が凹部111に収容されるため、光源部105と平坦面に載置される指との間の距離が短くなり、近赤外光の透過効率を向上させることが可能となる。その結果、低出力の発光ダイオードであっても指に照射される近赤外光の光量を増加させることが可能となるため、より鮮明な静脈撮像画像を得ることが可能となる。また、低出力の(すなわち、小型の)発光ダイオードを使用可能となるということは、光源部105の消費電力の削減が可能であることを意味し、更に、装置の小型化をも図ることが可能となる。
【0047】
なお、載置検出部103及び光源部105を設ける領域の広さ(換言すれば、図3における長さLの大きさ)は、人間の一般的な指の長さを参考にして決定すればよく、特に限定されるわけではない。
【0048】
<載置検出部及び光源部について>
次に、本実施形態に係る指静脈認証装置1に設けられる載置検出部103の個数について、図5A〜図7Bを参照しながら説明する。図5A〜図7Bは、載置検出部について説明するための説明図である。なお、図5A〜図7Bでは、載置検出部103を図示したものであり、光源部105については図示していない。
【0049】
図5Aに示したように、載置検出部103が指静脈認証装置1に2つ設けられる場合を考える。かかる場合、2つの載置検出部103を設置する位置にもよるが、図5Aに示したように載置検出部103が設けられる場合、載置されるユーザの指Fが図5Aに示したように曲がっている場合であっても、2つの載置検出部103は指Fを検出することとなる。かかる場合に指Fの側方に位置する撮像部101が指Fを撮像すると、指先近傍と指の根元の近傍とでは撮像部101からの距離が異なることとなって、指先近傍は相対的に大きく撮像され、指の根元近傍は相対的に小さく撮像されることとなる。同一の指Fを撮像したにもかかわらず、撮像部101からの距離が大きくことなる部分が存在する場合には、正確に静脈パターンを抽出することが困難となるため、静脈撮像画像に対して拡大・縮小処理等といった画像処理を行わなければならなくなる。従って、撮像対象である指Fの長手方向は、光軸方向に対して直交する方向に近ければ近いほど好ましい。
【0050】
そこで、指静脈認証装置1に載置検出部103を3つ以上設け、例えば、指先近傍、指の中央部分、指の根元近傍それぞれにおいて指が載置されたか否かの検出を行うことが好ましい。例えば図5Bに示したように載置検出部103が設けられており、指Fが斜めに載置された場合には、中央部分の載置検出部103は指を検出するものの、指先近傍又は指の根元近傍に位置する載置検出部103は、指を検出しなくなる。その結果、指Fが斜めに載置された場合等には、撮像開始のための条件が満たされなくなって、認証精度が低下する可能性のある状況下では、指の撮像が行われないようにすることができる。
【0051】
また、ある部分の載置検出部103は指を検出しているものの、他の載置検出部103が指を検出していない場合、指Fが斜めに置かれている可能性があるとして、制御部(図示せず。)は、指を検出した旨の出力がない載置検出部103の位置を特定してもよい。制御部は、特定した載置検出部103の位置に基づいて、ユーザに、指が検出されなかった位置があることを通知して、指を置きなおしてもらう等のメッセージを表示してもよい。このように、ユーザに対して正しい指載置位置への誘導を行うことで、より正確に適切な静脈撮像画像を生成することが可能となり、ひいては、認証精度の向上を図ることが可能となる。
【0052】
なお、図5Bでは、載置検出部103を指静脈認証装置1に3つ設ける場合について図示しているが、載置検出部103を4つ以上指静脈認証装置1に設けてもよい。載置検出部103の数が増えるほど、載置された指の状況をより正確に把握することが可能となるからである。また、指静脈認証装置1に実装する載置検出部103の個数や、隣り合う載置検出部103間の距離(配設間隔)については、人間の一般的な指の長さや形状等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0053】
先に説明したように、人は、指の腹を下にして意識せずに指を平坦面に載置した場合、図6Aに示したように、指の一部が平坦面に接することなく浮いた状態になっていることが多い。かかる場合に、例えば指の下方から近赤外光が照射されると、浮いている部分に照射される近赤外光の光量は、平坦面に接している部分に照射される近赤外光の光量よりも少なくなるため、対応する部分の静脈撮像画像は暗い画像となってしまう。その結果、対応する部分の静脈撮像画像から正確な静脈パターンを抽出することが困難となり、認証精度が低下する可能性がある。また、指の側面から撮像部101が指を撮像する場合、図6Aに示したような状態では、指が曲がった状態で静脈撮像画像が生成されることとなるため、抽出される静脈パターンは、画像フレーム内で湾曲した状態となってしまう。このような静脈パターンの状態は、予め登録されており認証処理の際に照合される静脈パターン(登録静脈パターン)の形状と大きく異なることが予想されるため、認証精度の低下を招いてしまう可能性がある。
【0054】
そこで、例えば図6Aに示したように、指静脈認証装置1に複数(好ましくは3以上)の載置検出部103を設けることで、平坦面に接していない部分に対応する載置検出部103からは、指を検出した旨の出力が行われないこととなる。その結果、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、図6Aに示したような指の一部が平坦面に接していないという状況を、的確に把握することが可能となる。
【0055】
また、図6Bは、指静脈認証装置1を上方から見た場合の図であるが、図6Bに示したように、樹脂層107の指載置位置に指の側面を接触させて、指の腹を撮像部101により撮像するような場合も考えられる。かかる場合において、図6Bに示したように、指が湾曲した状態で指載置位置に載置されると、先に述べたような近赤外光の光量が部分的に低下する可能性があるという問題が生じる可能性がある。更に、図6Bに示した場合では、指の中央部分と指の先端及び根元近傍部分とでは、撮像部101からの距離が異なるため、指の中央部分に対応する画像サイズが、両端部分に対応する画像サイズに比べて小さくなる可能性がある。このような静脈撮像画像から抽出された静脈パターンは、部分的に縮尺が異なることとなるため、認証精度が低下する可能性がある。そこで、このような場合には、画像全体の縮尺をほぼ同一なものとするために、部分的に静脈撮像画像の拡大又は縮小処理を行うという、余分な画像処理が行われることとなる。
【0056】
だが、例えば図6Bに示したように、指静脈認証装置1に複数(好ましくは3以上)の載置検出部103を設けることで、湾曲している部分に対応する載置検出部103からは、指を検出した旨の出力が行われないこととなる。その結果、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、図6Bに示したような指が湾曲した状態で平坦面に接しているという状況を、的確に把握することが可能となる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、載置検出部103を複数設けることで、図7Aに示したように指Fが樹脂層107の平坦面に接しているかを的確に判断することが可能である。同様に、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、図7Bに示したように指Fが樹脂層107の平坦面にまっすぐに載置されているか(撮像部101の光軸方向と指長軸方向とがほぼ直交するような状態になっているか)を的確に判断することが可能である。
【0058】
本実施形態に係る指静脈認証装置1では、先に説明したように、全ての載置検出部103が指を検出した旨の出力を出力した場合に、光源部105が近赤外光の照射を開始して、指の撮像が開始される。図7A及び図7Bに示した状態において、載置された指Fと光源部105との間の距離はほぼ同一となっており、撮像部101と指Fとの間の距離もほぼ同一となっていると考えられる。このような状態にある指Fを撮像することで、指静脈認証処理に適した静脈撮像画像を得ることが可能となり、ひいては、指静脈認証処理の認証精度をより向上させることが可能となる。
【0059】
以上、本実施形態に係る指静脈認証装置1に設けられる載置検出部103の個数について、具体例を挙げながら説明した。
【0060】
また、光源部105の配置個数や配置位置については、光源部105として用いる発光ダイオード等の出力や、一般的な人間の指の形状等に応じて、適宜設定すればよい。例えば、着目している照射範囲に対して均等に近赤外光が照射されるように、複数の発光ダイオード等の光源を均等にして配設してもよい。また、一般的に人間の指は指先から指の根元へと向かって太くなるものである。そこで、指長軸方向に沿って隣り合う光源部間の間隔を、指先が載置される側に向かうにつれて広くなるように設定してもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、指Fが載置される樹脂層107の内部に載置検出部103及び光源部105が収納されているため、光源部105と指Fとの間の距離を短くすることが可能となる。そのため、従来に比べて少ない近赤外光の光量での静脈撮像画像の生成が可能となる。また、光源部105と指Fとの間の距離が短くなるということは、指Fに対してより多くの近赤外光を照射可能となることをも意味している。
【0062】
図8は、撮像画像及び静脈パターンと、照射される近赤外光の光量との関係を説明するための説明図である。撮像対象である指に照射される近赤外光の光量が少ない場合には、指内部で拡散する近赤外光の光量が減少するため、得られる撮像画像は、図8左側に示したように、暗い画像となる。暗い画像においては、静脈が存在する位置と静脈が存在しない位置との違いが明確ではなくなるため、抽出される静脈パターンには、ノイズが存在している可能性が高くなる。
【0063】
他方、撮像対象である指に適切な光量の近赤外光が照射されると、図8右側に示したように、静脈部分が黒く浮かび上がった明るい静脈撮像画像を生成することが可能となる。このような明るい静脈撮像画像では、静脈が存在する位置と静脈が存在しない位置とは、明るさ(輝度値)の違いとして明確に区別することが可能であるため、正確に静脈パターンを抽出することができる。
【0064】
図8に示した静脈撮像画像は、照射する近赤外光の光量を変化させて同一の指を撮像したものである。図8から明らかなように、適切な光量が照射された画像から抽出された静脈パターンと、光量が少ない場合の撮像画像から抽出された静脈パターンとは、その形状が大きく異なっていることがわかる。
【0065】
なお、図8では、照射される近赤外光の光量が少ない場合について説明したが、必要以上の光量が照射された場合にも、正確な静脈パターンを抽出することは困難となる。これは、必要以上の近赤外光が照射されると光量が飽和した状態となってしまい、白ヌケした静脈撮像画像が生成されてしまい、静脈が存在する位置と存在しない位置との輝度値の差が小さくなってしまうからである。
【0066】
以上、図1〜図8を参照しながら、本実施形態に係る指静脈認証装置1について、詳細に説明した。
【0067】
<変形例>
次に、図9A〜図9Cを参照しながら、本実施形態に係る指静脈認証装置1の変形例について、簡単に説明する。図9A〜図9Cは、本実施形態に係る指静脈認証装置の変形例を示した説明図である。図9A〜図9Cは、各変形例に係る指静脈認証装置を上方から見た場合の図となっている。
【0068】
以上説明した例では、複数の載置検出部103及び光源部105は、指長軸方向に沿って、交互に一列に並んでいるものであった。図9Aに示した本実施形態に係る指静脈認証装置1の第1変形例は、指Fの載置位置に沿って、複数の載置検出部103が一列に配置されており、この載置検出部103の列の両側に、複数の光源部105からなる光源部105の列が配置されている。かかる場合、指Fの下方に位置する載置検出部103によって指が載置されたか否かが検出され、指Fの側方に位置する光源部105から指Fに向かって近赤外光が照射されることとなる。
【0069】
図9Aに示した場合においても、載置検出部103及び光源部105が配設される基板11を指長軸方向に対して直交する方向から見た場合には、載置検出部103及び光源部105が交互に配設されている。
【0070】
なお、図9Aに示した場合において、各光源部105は、基板11に対して斜めに配設されることで近赤外光の照射方向が指の方向となるように調整されていてもよく、導光板等を利用することで、指Fに近赤外光が効率的に照射されるようにしてもよい。
【0071】
図9Bに示した本実施形態に係る指静脈認証装置1の第2変形例は、人間の指が指の根元に向かうほど太くなることに着目し、実装する光源部105の個数を調整したものである。前述のように、人間の指は指の根元に向かうほど太くなるものであり、太さが太くなるほど、近赤外光が指を透過する可能性が低くなっていく。そのため、指の太さが太い部位では、静脈撮像画像を生成するために要する光量が不足する可能性がある。
【0072】
そこで、図9Bに示した第2変形例では、指長軸方向に沿って配設される光源部は、指長軸方向の位置が指の根元側に位置するほど、指長軸方向に対して直交する方向に配設される個数が増加する。すなわち、図9Bに示した例では、指先近傍の部位では、光源部105は1つのみ配設されているが、指の中央部分では、光源部105は、横に2つ並んで配設されており、指の根元近傍の部位では、光源部105は、横に3つ並んで配設されている。
【0073】
図9Bに示した場合においても、載置検出部103及び光源部105が配設される基板11を指長軸方向に対して直交する方向から見た場合には、載置検出部103及び光源部105が交互に配設されている。
【0074】
図9Bに示したように、指の根元に位置するほど配設される光源部105の個数を増加させることで、指の太さが太い部位であっても、適切な光量で静脈撮像画像を撮像することが可能となる。
【0075】
なお、図9Bに示した変形例では、撮像に適した近赤外光の光量を得るために、指の根元に位置するほど配設する光源部105の個数を増加させる場合について説明した。しかしながら、光源部105の個数を増加させる代わりに、1つの発光ダイオードが出力可能な光量の最大値を変化させるようにしてもよい。すなわち、指の根元近傍に位置する光源部105ほど、高出力の近赤外光を照射可能な発光ダイオードを配設するようにすれば、指の太さが太い部位であっても、撮像に適した近赤外光の光量を得ることが可能となる。
【0076】
図9Cに示した本実施形態に係る指静脈認証装置1の第3変形例は、撮像部101を指Fの下方に配置した場合を示した変形例である。図9Cに示した変形例では、載置検出部103及び光源部105は、指長軸方向に沿って一列に並んで配設されており、複数の載置検出部103及び光源部105からなる列が、互いに平行となるように2列配設されている。また、載置検出部103及び光源部105からなる列と列との間には、撮像部101が配設されている。
【0077】
このような配置とすることで、載置検出部103及び光源部105だけでなく、撮像部101をも指の下方に配置することが可能となり、指静脈認証装置10の表面を平坦化することが可能となる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0079】
1 指静脈認証装置
11 基板
101 撮像部
103 載置検出部
105 光源部
107 樹脂層
109,111 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体個人認証は今後のネットワーク社会において、権利を守る為に非常に重要な技術である。特に、他人が本人になりすまして、金銭やコンテンツ、権利などをネット越しに盗むことが可能であるインターネット上での商取引では、暗号だけでは解決できない領域を守る技術として注目されている。しかし、指紋やアイリスなどは、偽造の問題が解決できない。この点、静脈のパターンで外部から容易に撮像できない部位を用いた個人認証技術は、判定精度の高さや偽造、成りすましが困難であるため、次世代の生体個人認証として期待されている。
【0003】
特に、指の内部に存在する静脈のパターンに着目した指静脈認証は、手のひらの内部に存在する静脈のパターンに着目した掌静脈認証と比べて認証装置を小型化できるという利点がある。しかしながら、近年、携帯電話やタッチパネルを利用した携帯機器など各種の携帯機器の普及に伴い、指静脈認証装置の更なる小型化や薄型化が求められている。そのため、以下の特許文献1では、指静脈認証装置の小型化・薄型化を実現するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−98935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、指静脈認証処理という一連の流れに関して本発明者が鋭意検討を行った結果、人がある平面上に一本の指を載置するという動作を行う場合、意識せずにかかる動作を行うと、指全体が平面に接している状態とならないことが多いという点に想到した。換言すれば、着目している平面から見た場合、指を載置するという動作を意識せずに行ったときには、平面と指との間の距離がほぼ一定とならないことが多いということである。
【0006】
上記特許文献1に記載されているような指静脈認証装置において、近赤外光を照射する光源と指との間の距離が略一定にならない場合には、指静脈認証処理の認証精度の低下を招く可能性があるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、指の載置状態を検知することで更なる認証精度の向上を図ることが可能な、静脈認証装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、指の一部が載置されたか否かを検出する、所定の基板上に配設された複数の載置検出部と、載置された前記指の一部に対して所定波長の近赤外光を照射する、前記基板上に配設された複数の光源部と、前記近赤外光が照射された前記指の一部を撮像する撮像部と、を備え、前記基板を指の長手方向に対して直交する方向から見たときに、前記光源部及び前記載置検出部は、前記指の長手方向に沿って前記基板上に交互に配設されている静脈認証装置が提供される。
【0009】
前記複数の載置検出部及び前記複数の光源部を覆う樹脂層を更に備え、前記樹脂層の厚み方向の前記載置検出部及び前記光源部が存在しない側の面は平坦となっており、前記樹脂層の平坦面上に指の一部が載置されることが好ましい。
【0010】
前記複数の光源部は、全ての前記載置検出部が指の載置を検出した場合に、前記近赤外光の照射を開始することが好ましい。
【0011】
前記指の長手方向に沿って隣り合う前記光源部の間隔は、指先が載置される側に向かうにつれて広くなってもよい。
【0012】
前記指の長手方向に沿って配設される前記光源部は、指の長手方向の位置が指の根元側に位置するほど、前記指の長手方向に対して直交する方向に配設される個数が増加するようにしてもよい。
【0013】
前記複数の載置検出部は、前記指の長手方向に沿って一列に配設されており、前記複数の光源部は、前記複数の載置検出部からなる列の両側に、当該列と平行となるように配設されてもよい。
【0014】
前記載置検出部及び前記光源部は、前記指の長手方向に沿って一列に並んで配設されており、複数の載置検出部及び光源部からなる列が、互いに平行に複数存在してもよい。
【0015】
前記撮像部は、隣り合う前記複数の載置検出部及び光源部からなる列の間に配設されてもよい。
【0016】
前記複数の載置検出部は、静電センサ、フォトセンサ、感圧センサ又はホールセンサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、指の載置状態を検知することで更なる認証精度の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る指静脈認証装置の外観を示した説明図である。
【図2】同実施形態に係る指静脈認証装置を上方から見た場合の上面図である。
【図3】図2のA−A切断線における断面を示した断面図である。
【図4】同実施形態に係る樹脂層を説明するための説明図である。
【図5A】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図5B】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図6A】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図6B】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図7A】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図7B】同実施形態に係る載置検出部について説明するための説明図である。
【図8】撮像画像及び静脈パターンについて説明するための説明図である。
【図9A】本実施形態に係る指静脈認証装置の第1変形例を示した説明図である。
【図9B】本実施形態に係る指静脈認証装置の第2変形例を示した説明図である。
【図9C】本実施形態に係る指静脈認証装置の第3変形例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
なお、説明は、以下の順序で行うものとする。
(1)第1の実施形態
(1−1)指静脈認証装置の構成について
(1−2)指静脈認証装置の断面構造について
(1−3)載置検出部及び光源部について
(1−4)変形例
【0021】
(第1の実施形態)
<指静脈認証装置の構成について>
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る指静脈認証装置1の構成について、簡単に説明する。図1は、本実施形態に係る指静脈認証装置の外観を示した説明図であり、図2は、本実施形態に係る指静脈認証装置を上方から見た場合の上面図である。
【0022】
本実施形態に係る指静脈認証装置1は、図1に示したように、ユーザの指Fの一部が載置される筐体と、筐体に設けられた撮像部101と、を備える。この筐体には、ユーザが指を載置する位置(載置位置)を表す印刷がなされていてもよく、指の載置位置を表す表示がされるようになっていてもよい。
【0023】
また、図2に示したように、指静脈認証装置1の筐体の内部には、指の長軸方向に沿って、複数の載置検出部103及び複数の光源部105が配設されている。更に、指静脈認証装置1の筐体のうち、少なくとも指が載置される位置には、樹脂層107が設けられており、この樹脂層107によって、複数の載置検出部103及び光源部105が覆われている。
【0024】
ユーザが指静脈認証装置1の載置位置に指Fを置くと、複数の載置検出部103それぞれが、指が載置されたか否かの検出を行って、検出結果を出力する。指静脈認証装置1の内部に設けられた制御部(図示せず。)は、各載置検出部103から出力された検出結果を参照して、以下で改めて説明する撮像開始条件が満たされたか否かの判断を行う。撮像開始条件が満たされると、制御部は、複数の光源部105に対して、所定の波長を有する近赤外光の照射開始を要請するとともに、撮像部101に対して指の撮像開始を要請する。また、制御部は、撮像部101により撮像された指の撮像画像から静脈パターンを抽出し、抽出した静脈パターンに基づいてユーザの認証を実施する。
【0025】
ここで、指静脈認証装置1の内部に設けられた制御部について、簡単に説明する。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。制御部は、指静脈認証装置1に設けられた記憶部(図示せず。)内に格納されている各種のプログラム、パラメータ、データベース等を利用して、指静脈認証装置1全体の動作を制御するとともに、ユーザの指静脈認証処理を実施する。
【0026】
また、撮像部101は、レンズ等の光学素子と撮像素子とを有している。
人体の皮膚は、表皮層、真皮層および皮下組織層の3層構造となっていることが知られているが、静脈の存在する静脈層は、真皮層に存在している。真皮層は、指表面に対して0.1mm〜0.3mm程度の位置から2mm〜3mm程度の厚みで存在している層である。したがって、このような真皮層の存在位置(例えば、指表面から1.5mm〜2.0mm程度の位置)にレンズ等の光学素子の焦点位置を設定することで、静脈層を透過した透過光を、効率よく集光することが可能となる。
【0027】
光学素子によって集光された静脈層を透過した透過光は、CCDやCMOS等の撮像素子に結像されて、静脈撮像画像となる。撮像部101は、静脈撮像画像を生成すると、生成した静脈撮像画像を制御部に出力する。
【0028】
載置検出部103は、ユーザの指Fが載置されたか否かを検出する。載置検出部103は、例えば、静電センサ、フォトセンサ、感圧センサ又はホールセンサを用いて形成されることが好ましい。これらのセンサは、ユーザの指Fがセンサ又は当該センサに接触している他の物体(例えば、樹脂層107)に触れる程度で、指の載置を検出することが可能となる。
【0029】
なお、載置検出部103として、各種のコンタクトスイッチを用いることも可能ではあるが、ユーザの指がコンタクトスイッチを押圧することで、指の内部に存在する静脈も圧迫されることとなって、静脈内部を流れる血液の量が低下する恐れがある。以下で説明するように、指静脈認証処理では、血液中のヘモグロビンによって吸収された近赤外光の光量の多少に応じて静脈撮像画像の濃淡が決まるため、血流量が低下することは好ましくない。従って、載置検出部103としてコンタクトスイッチを用いるよりかは、上記センサ類を使用することが好ましい。
【0030】
指静脈認証装置1に設けられる複数の載置検出部103は、以下で説明するように、ユーザの指が適切な位置に載置されているか否かの判断に利用されるものであるが、同時に、後述する光源部105が近赤外光を照射するためのスイッチとしても用いられる。
【0031】
指静脈認証装置1に設けられた複数の載置検出部103は、ユーザの指が載置されたことを検出した場合には、その検出結果を制御部に出力する。制御部は、指静脈認証装置1に設けられた全ての載置検出部103から指の載置を検出した旨の検出結果が得られた場合に、光源部105から近赤外光を照射させるとともに、撮像部101による指の撮像を開始させる。
【0032】
光源部105は、指静脈認証装置1に載置されたユーザの指Fに対して、所定の波長を有する近赤外光を照射する。この光源部105は、例えば、近赤外光を照射可能な発光ダイオードであってもよく、所定波長の光を照射する発光素子と発光素子からの光を近赤外光へと変換するフィルタとから構成されるユニットであってもよい。
【0033】
ここで、光源部105がユーザの指に対して近赤外光の照射を開始するタイミングは、指静脈認証装置1に設けられた全ての載置検出部103が指を検出した際であることが好ましい。かかるタイミングで近赤外光の照射を開始することで、近赤外光を常時照射し続けなくともよくなり、指静脈認証装置1の消費電力を抑制することが可能となる。
【0034】
近赤外光は、身体組織に対して透過性が高い一方で、血液中のヘモグロビン(還元ヘモグロビン)に吸収されるという特徴を有するため、近赤外光を指や手のひらや手の甲に照射すると、指や手のひらや手の甲の内部に分布している静脈が影となって画像に現れる。画像に表れる静脈の影を、静脈パターンという。このような静脈パターンを良好に撮像するために、発光ダイオード等の光源部105は、約600nm〜1300nm程度の波長、好ましくは、700nm〜900nm程度の波長を有する近赤外光を照射する。
【0035】
ここで、光源部105が照射する近赤外光の波長が600nm未満又は1300nm超過である場合には、血液中のヘモグロビンに吸収される割合が小さくなるため、良好な静脈パターンを得ることが困難となる。また、光源部105が照射する近赤外光の波長が700nm〜900nm程度である場合には、近赤外光は、脱酸素化ヘモグロビンと酸素化ヘモグロビンの双方に対して特異的に吸収されるため、良好な静脈パターンを得ることができる。
【0036】
光源部105から射出された近赤外光は、生体部位の表面に向かって伝搬し、直接光として、指の表面等から生体内部に入射する。ここで、人体は良好な近赤外光の散乱体であるため、生体内に入射した直接光は四方に散乱しながら伝搬する。生体内を透過した近赤外光は、撮像部101によって集光されて、静脈撮像画像となる。
【0037】
樹脂層107は、近赤外光を透過可能な材料により形成された層であり、近赤外光を透過する近赤外光透過フィルターそのものであってもよい。樹脂層107の形成に用いられる材料は、近赤外光を透過するものであれば特に限定されるものではなく、任意の材料を利用することが可能である。
【0038】
この樹脂層107は、以下で説明するように、載置検出部103及び光源部105を覆うように形成される。換言すれば、この樹脂層107は、樹脂モールドであるといえる。
【0039】
以上、図1及び図2を参照しながら、指静脈認証装置1の構成について簡単に説明したが、以下では、載置検出部103、光源部105及び樹脂層107について、改めて詳細に説明する。
【0040】
<指静脈認証装置の断面構造について>
続いて、図3を参照しながら、指静脈認証装置1の断面構造について説明する。図3は、図2に示した指静脈認証装置1をA−A切断線で切断した場合の断面を示した断面図である。
【0041】
本実施形態に係る指静脈認証装置1を図2のA−A切断線で切断して、指長軸方向に対して直交する方向から見ると、図3に示したように、複数の載置検出部103及び光源部105が、指長軸方向に沿ってそれぞれ交互に配設されている。また、図3に示したように、複数の載置検出部103及び光源部105は、基板11の同一面にマウントされている。
【0042】
この基板11は、載置検出部103及び光源部105を載置することが可能なものであれば、任意の材質のものを利用することが可能である。また、基板11上には、載置検出部103及び光源部105と、制御部(図示せず)との間における情報のやり取りを実現するための配線等がプリントされていてもよい。
【0043】
また、載置検出部103として利用される各種のセンサと、光源部105として利用される各種の発光ダイオードとは、図3に例示したように、各々の高さが異なっていることが多い。本実施形態に係る指静脈認証装置1では、載置検出部103と光源部105とを覆うように樹脂層107が形成されており、樹脂層107の厚み方向の載置検出部103及び光源部105が存在しない側の面は、図3に示したように、平坦面になっている。この平坦面上に、ユーザの指が載置される。
【0044】
図4は、樹脂層107の一部を拡大して示した模式図である。図4に示したように、樹脂層107の載置検出部103及び光源部105に対向する面には、載置検出部103及び光源部105の形状に対応する凹部109,111が形成されている。図4に示した例では、凹部109に載置検出部103が収容され、凹部111に光源部105が収容されることとなる。載置検出部103及び光源部105が対応する凹部に収容されることで、載置検出部103、光源部105及び樹脂層107からなるユニットの厚みを薄くすることができ、ユニットの小型化が実現できるとともに、指載置面を平坦面とすることが可能となる。また、指載置面を平坦面とすることが実現されることで、載置検出部103、光源部105及び樹脂層107からなるユニットの取り付け場所に関する制限が無くなる。
【0045】
また、凹部111の深さに対する凹部109の深さの差ΔDは、載置検出部103の高さと光源部105の高さの差となっている。凹部111の深さを調整することで、凹部111の底面から指が載置される樹脂層107の平坦面までの距離を調整することが可能となり、ひいては、指に照射される近赤外光の光量を調整することが可能となる。凹部111の深さは、静脈撮像画像の生成に適切な近赤外光の光量が実現できるように適宜調整すればよい。
【0046】
また、光源部105が凹部111に収容されるため、光源部105と平坦面に載置される指との間の距離が短くなり、近赤外光の透過効率を向上させることが可能となる。その結果、低出力の発光ダイオードであっても指に照射される近赤外光の光量を増加させることが可能となるため、より鮮明な静脈撮像画像を得ることが可能となる。また、低出力の(すなわち、小型の)発光ダイオードを使用可能となるということは、光源部105の消費電力の削減が可能であることを意味し、更に、装置の小型化をも図ることが可能となる。
【0047】
なお、載置検出部103及び光源部105を設ける領域の広さ(換言すれば、図3における長さLの大きさ)は、人間の一般的な指の長さを参考にして決定すればよく、特に限定されるわけではない。
【0048】
<載置検出部及び光源部について>
次に、本実施形態に係る指静脈認証装置1に設けられる載置検出部103の個数について、図5A〜図7Bを参照しながら説明する。図5A〜図7Bは、載置検出部について説明するための説明図である。なお、図5A〜図7Bでは、載置検出部103を図示したものであり、光源部105については図示していない。
【0049】
図5Aに示したように、載置検出部103が指静脈認証装置1に2つ設けられる場合を考える。かかる場合、2つの載置検出部103を設置する位置にもよるが、図5Aに示したように載置検出部103が設けられる場合、載置されるユーザの指Fが図5Aに示したように曲がっている場合であっても、2つの載置検出部103は指Fを検出することとなる。かかる場合に指Fの側方に位置する撮像部101が指Fを撮像すると、指先近傍と指の根元の近傍とでは撮像部101からの距離が異なることとなって、指先近傍は相対的に大きく撮像され、指の根元近傍は相対的に小さく撮像されることとなる。同一の指Fを撮像したにもかかわらず、撮像部101からの距離が大きくことなる部分が存在する場合には、正確に静脈パターンを抽出することが困難となるため、静脈撮像画像に対して拡大・縮小処理等といった画像処理を行わなければならなくなる。従って、撮像対象である指Fの長手方向は、光軸方向に対して直交する方向に近ければ近いほど好ましい。
【0050】
そこで、指静脈認証装置1に載置検出部103を3つ以上設け、例えば、指先近傍、指の中央部分、指の根元近傍それぞれにおいて指が載置されたか否かの検出を行うことが好ましい。例えば図5Bに示したように載置検出部103が設けられており、指Fが斜めに載置された場合には、中央部分の載置検出部103は指を検出するものの、指先近傍又は指の根元近傍に位置する載置検出部103は、指を検出しなくなる。その結果、指Fが斜めに載置された場合等には、撮像開始のための条件が満たされなくなって、認証精度が低下する可能性のある状況下では、指の撮像が行われないようにすることができる。
【0051】
また、ある部分の載置検出部103は指を検出しているものの、他の載置検出部103が指を検出していない場合、指Fが斜めに置かれている可能性があるとして、制御部(図示せず。)は、指を検出した旨の出力がない載置検出部103の位置を特定してもよい。制御部は、特定した載置検出部103の位置に基づいて、ユーザに、指が検出されなかった位置があることを通知して、指を置きなおしてもらう等のメッセージを表示してもよい。このように、ユーザに対して正しい指載置位置への誘導を行うことで、より正確に適切な静脈撮像画像を生成することが可能となり、ひいては、認証精度の向上を図ることが可能となる。
【0052】
なお、図5Bでは、載置検出部103を指静脈認証装置1に3つ設ける場合について図示しているが、載置検出部103を4つ以上指静脈認証装置1に設けてもよい。載置検出部103の数が増えるほど、載置された指の状況をより正確に把握することが可能となるからである。また、指静脈認証装置1に実装する載置検出部103の個数や、隣り合う載置検出部103間の距離(配設間隔)については、人間の一般的な指の長さや形状等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0053】
先に説明したように、人は、指の腹を下にして意識せずに指を平坦面に載置した場合、図6Aに示したように、指の一部が平坦面に接することなく浮いた状態になっていることが多い。かかる場合に、例えば指の下方から近赤外光が照射されると、浮いている部分に照射される近赤外光の光量は、平坦面に接している部分に照射される近赤外光の光量よりも少なくなるため、対応する部分の静脈撮像画像は暗い画像となってしまう。その結果、対応する部分の静脈撮像画像から正確な静脈パターンを抽出することが困難となり、認証精度が低下する可能性がある。また、指の側面から撮像部101が指を撮像する場合、図6Aに示したような状態では、指が曲がった状態で静脈撮像画像が生成されることとなるため、抽出される静脈パターンは、画像フレーム内で湾曲した状態となってしまう。このような静脈パターンの状態は、予め登録されており認証処理の際に照合される静脈パターン(登録静脈パターン)の形状と大きく異なることが予想されるため、認証精度の低下を招いてしまう可能性がある。
【0054】
そこで、例えば図6Aに示したように、指静脈認証装置1に複数(好ましくは3以上)の載置検出部103を設けることで、平坦面に接していない部分に対応する載置検出部103からは、指を検出した旨の出力が行われないこととなる。その結果、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、図6Aに示したような指の一部が平坦面に接していないという状況を、的確に把握することが可能となる。
【0055】
また、図6Bは、指静脈認証装置1を上方から見た場合の図であるが、図6Bに示したように、樹脂層107の指載置位置に指の側面を接触させて、指の腹を撮像部101により撮像するような場合も考えられる。かかる場合において、図6Bに示したように、指が湾曲した状態で指載置位置に載置されると、先に述べたような近赤外光の光量が部分的に低下する可能性があるという問題が生じる可能性がある。更に、図6Bに示した場合では、指の中央部分と指の先端及び根元近傍部分とでは、撮像部101からの距離が異なるため、指の中央部分に対応する画像サイズが、両端部分に対応する画像サイズに比べて小さくなる可能性がある。このような静脈撮像画像から抽出された静脈パターンは、部分的に縮尺が異なることとなるため、認証精度が低下する可能性がある。そこで、このような場合には、画像全体の縮尺をほぼ同一なものとするために、部分的に静脈撮像画像の拡大又は縮小処理を行うという、余分な画像処理が行われることとなる。
【0056】
だが、例えば図6Bに示したように、指静脈認証装置1に複数(好ましくは3以上)の載置検出部103を設けることで、湾曲している部分に対応する載置検出部103からは、指を検出した旨の出力が行われないこととなる。その結果、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、図6Bに示したような指が湾曲した状態で平坦面に接しているという状況を、的確に把握することが可能となる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、載置検出部103を複数設けることで、図7Aに示したように指Fが樹脂層107の平坦面に接しているかを的確に判断することが可能である。同様に、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、図7Bに示したように指Fが樹脂層107の平坦面にまっすぐに載置されているか(撮像部101の光軸方向と指長軸方向とがほぼ直交するような状態になっているか)を的確に判断することが可能である。
【0058】
本実施形態に係る指静脈認証装置1では、先に説明したように、全ての載置検出部103が指を検出した旨の出力を出力した場合に、光源部105が近赤外光の照射を開始して、指の撮像が開始される。図7A及び図7Bに示した状態において、載置された指Fと光源部105との間の距離はほぼ同一となっており、撮像部101と指Fとの間の距離もほぼ同一となっていると考えられる。このような状態にある指Fを撮像することで、指静脈認証処理に適した静脈撮像画像を得ることが可能となり、ひいては、指静脈認証処理の認証精度をより向上させることが可能となる。
【0059】
以上、本実施形態に係る指静脈認証装置1に設けられる載置検出部103の個数について、具体例を挙げながら説明した。
【0060】
また、光源部105の配置個数や配置位置については、光源部105として用いる発光ダイオード等の出力や、一般的な人間の指の形状等に応じて、適宜設定すればよい。例えば、着目している照射範囲に対して均等に近赤外光が照射されるように、複数の発光ダイオード等の光源を均等にして配設してもよい。また、一般的に人間の指は指先から指の根元へと向かって太くなるものである。そこで、指長軸方向に沿って隣り合う光源部間の間隔を、指先が載置される側に向かうにつれて広くなるように設定してもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る指静脈認証装置1では、指Fが載置される樹脂層107の内部に載置検出部103及び光源部105が収納されているため、光源部105と指Fとの間の距離を短くすることが可能となる。そのため、従来に比べて少ない近赤外光の光量での静脈撮像画像の生成が可能となる。また、光源部105と指Fとの間の距離が短くなるということは、指Fに対してより多くの近赤外光を照射可能となることをも意味している。
【0062】
図8は、撮像画像及び静脈パターンと、照射される近赤外光の光量との関係を説明するための説明図である。撮像対象である指に照射される近赤外光の光量が少ない場合には、指内部で拡散する近赤外光の光量が減少するため、得られる撮像画像は、図8左側に示したように、暗い画像となる。暗い画像においては、静脈が存在する位置と静脈が存在しない位置との違いが明確ではなくなるため、抽出される静脈パターンには、ノイズが存在している可能性が高くなる。
【0063】
他方、撮像対象である指に適切な光量の近赤外光が照射されると、図8右側に示したように、静脈部分が黒く浮かび上がった明るい静脈撮像画像を生成することが可能となる。このような明るい静脈撮像画像では、静脈が存在する位置と静脈が存在しない位置とは、明るさ(輝度値)の違いとして明確に区別することが可能であるため、正確に静脈パターンを抽出することができる。
【0064】
図8に示した静脈撮像画像は、照射する近赤外光の光量を変化させて同一の指を撮像したものである。図8から明らかなように、適切な光量が照射された画像から抽出された静脈パターンと、光量が少ない場合の撮像画像から抽出された静脈パターンとは、その形状が大きく異なっていることがわかる。
【0065】
なお、図8では、照射される近赤外光の光量が少ない場合について説明したが、必要以上の光量が照射された場合にも、正確な静脈パターンを抽出することは困難となる。これは、必要以上の近赤外光が照射されると光量が飽和した状態となってしまい、白ヌケした静脈撮像画像が生成されてしまい、静脈が存在する位置と存在しない位置との輝度値の差が小さくなってしまうからである。
【0066】
以上、図1〜図8を参照しながら、本実施形態に係る指静脈認証装置1について、詳細に説明した。
【0067】
<変形例>
次に、図9A〜図9Cを参照しながら、本実施形態に係る指静脈認証装置1の変形例について、簡単に説明する。図9A〜図9Cは、本実施形態に係る指静脈認証装置の変形例を示した説明図である。図9A〜図9Cは、各変形例に係る指静脈認証装置を上方から見た場合の図となっている。
【0068】
以上説明した例では、複数の載置検出部103及び光源部105は、指長軸方向に沿って、交互に一列に並んでいるものであった。図9Aに示した本実施形態に係る指静脈認証装置1の第1変形例は、指Fの載置位置に沿って、複数の載置検出部103が一列に配置されており、この載置検出部103の列の両側に、複数の光源部105からなる光源部105の列が配置されている。かかる場合、指Fの下方に位置する載置検出部103によって指が載置されたか否かが検出され、指Fの側方に位置する光源部105から指Fに向かって近赤外光が照射されることとなる。
【0069】
図9Aに示した場合においても、載置検出部103及び光源部105が配設される基板11を指長軸方向に対して直交する方向から見た場合には、載置検出部103及び光源部105が交互に配設されている。
【0070】
なお、図9Aに示した場合において、各光源部105は、基板11に対して斜めに配設されることで近赤外光の照射方向が指の方向となるように調整されていてもよく、導光板等を利用することで、指Fに近赤外光が効率的に照射されるようにしてもよい。
【0071】
図9Bに示した本実施形態に係る指静脈認証装置1の第2変形例は、人間の指が指の根元に向かうほど太くなることに着目し、実装する光源部105の個数を調整したものである。前述のように、人間の指は指の根元に向かうほど太くなるものであり、太さが太くなるほど、近赤外光が指を透過する可能性が低くなっていく。そのため、指の太さが太い部位では、静脈撮像画像を生成するために要する光量が不足する可能性がある。
【0072】
そこで、図9Bに示した第2変形例では、指長軸方向に沿って配設される光源部は、指長軸方向の位置が指の根元側に位置するほど、指長軸方向に対して直交する方向に配設される個数が増加する。すなわち、図9Bに示した例では、指先近傍の部位では、光源部105は1つのみ配設されているが、指の中央部分では、光源部105は、横に2つ並んで配設されており、指の根元近傍の部位では、光源部105は、横に3つ並んで配設されている。
【0073】
図9Bに示した場合においても、載置検出部103及び光源部105が配設される基板11を指長軸方向に対して直交する方向から見た場合には、載置検出部103及び光源部105が交互に配設されている。
【0074】
図9Bに示したように、指の根元に位置するほど配設される光源部105の個数を増加させることで、指の太さが太い部位であっても、適切な光量で静脈撮像画像を撮像することが可能となる。
【0075】
なお、図9Bに示した変形例では、撮像に適した近赤外光の光量を得るために、指の根元に位置するほど配設する光源部105の個数を増加させる場合について説明した。しかしながら、光源部105の個数を増加させる代わりに、1つの発光ダイオードが出力可能な光量の最大値を変化させるようにしてもよい。すなわち、指の根元近傍に位置する光源部105ほど、高出力の近赤外光を照射可能な発光ダイオードを配設するようにすれば、指の太さが太い部位であっても、撮像に適した近赤外光の光量を得ることが可能となる。
【0076】
図9Cに示した本実施形態に係る指静脈認証装置1の第3変形例は、撮像部101を指Fの下方に配置した場合を示した変形例である。図9Cに示した変形例では、載置検出部103及び光源部105は、指長軸方向に沿って一列に並んで配設されており、複数の載置検出部103及び光源部105からなる列が、互いに平行となるように2列配設されている。また、載置検出部103及び光源部105からなる列と列との間には、撮像部101が配設されている。
【0077】
このような配置とすることで、載置検出部103及び光源部105だけでなく、撮像部101をも指の下方に配置することが可能となり、指静脈認証装置10の表面を平坦化することが可能となる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0079】
1 指静脈認証装置
11 基板
101 撮像部
103 載置検出部
105 光源部
107 樹脂層
109,111 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指の一部が載置されたか否かを検出する、所定の基板上に配設された複数の載置検出部と、
載置された前記指の一部に対して所定波長の近赤外光を照射する、前記基板上に配設された複数の光源部と、
前記近赤外光が照射された前記指の一部を撮像する撮像部と、
を備え、
前記基板を指の長手方向に対して直交する方向から見たときに、前記光源部及び前記載置検出部は、前記指の長手方向に沿って前記基板上に交互に配設されている、静脈認証装置。
【請求項2】
前記複数の載置検出部及び前記複数の光源部を覆う樹脂層を更に備え、
前記樹脂層の厚み方向の前記載置検出部及び前記光源部が存在しない側の面は平坦となっており、
前記樹脂層の平坦面上に指の一部が載置される、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項3】
前記複数の光源部は、全ての前記載置検出部が指の載置を検出した場合に、前記近赤外光の照射を開始する、請求項2に記載の静脈認証装置。
【請求項4】
前記指の長手方向に沿って隣り合う前記光源部の間隔は、指先が載置される側に向かうにつれて広くなる、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項5】
前記指の長手方向に沿って配設される前記光源部は、指の長手方向の位置が指の根元側に位置するほど、前記指の長手方向に対して直交する方向に配設される個数が増加する、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項6】
前記複数の載置検出部は、前記指の長手方向に沿って一列に配設されており、
前記複数の光源部は、前記複数の載置検出部からなる列の両側に、当該列と平行となるように配設される、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項7】
前記載置検出部及び前記光源部は、前記指の長手方向に沿って一列に並んで配設されており、
複数の載置検出部及び光源部からなる列が、互いに平行に複数存在する、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項8】
前記撮像部は、隣り合う前記複数の載置検出部及び光源部からなる列の間に配設される、請求項7に記載の静脈認証装置。
【請求項9】
前記複数の載置検出部は、静電センサ、フォトセンサ、感圧センサ又はホールセンサである、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項1】
指の一部が載置されたか否かを検出する、所定の基板上に配設された複数の載置検出部と、
載置された前記指の一部に対して所定波長の近赤外光を照射する、前記基板上に配設された複数の光源部と、
前記近赤外光が照射された前記指の一部を撮像する撮像部と、
を備え、
前記基板を指の長手方向に対して直交する方向から見たときに、前記光源部及び前記載置検出部は、前記指の長手方向に沿って前記基板上に交互に配設されている、静脈認証装置。
【請求項2】
前記複数の載置検出部及び前記複数の光源部を覆う樹脂層を更に備え、
前記樹脂層の厚み方向の前記載置検出部及び前記光源部が存在しない側の面は平坦となっており、
前記樹脂層の平坦面上に指の一部が載置される、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項3】
前記複数の光源部は、全ての前記載置検出部が指の載置を検出した場合に、前記近赤外光の照射を開始する、請求項2に記載の静脈認証装置。
【請求項4】
前記指の長手方向に沿って隣り合う前記光源部の間隔は、指先が載置される側に向かうにつれて広くなる、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項5】
前記指の長手方向に沿って配設される前記光源部は、指の長手方向の位置が指の根元側に位置するほど、前記指の長手方向に対して直交する方向に配設される個数が増加する、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項6】
前記複数の載置検出部は、前記指の長手方向に沿って一列に配設されており、
前記複数の光源部は、前記複数の載置検出部からなる列の両側に、当該列と平行となるように配設される、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項7】
前記載置検出部及び前記光源部は、前記指の長手方向に沿って一列に並んで配設されており、
複数の載置検出部及び光源部からなる列が、互いに平行に複数存在する、請求項1に記載の静脈認証装置。
【請求項8】
前記撮像部は、隣り合う前記複数の載置検出部及び光源部からなる列の間に配設される、請求項7に記載の静脈認証装置。
【請求項9】
前記複数の載置検出部は、静電センサ、フォトセンサ、感圧センサ又はホールセンサである、請求項1に記載の静脈認証装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図8】
【公開番号】特開2011−258015(P2011−258015A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132324(P2010−132324)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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