説明

静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置並びにそれらの駆動方法

【課題】高電圧で静電アクチュエータを駆動させる場合でも、振動板と個別電極との貼り付きを防止することができる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置並びにそれらの駆動方法を得る。
【解決手段】本発明に係る静電アクチュエータは、個別電極10が形成された電極ガラス基板2と、個別電極10にギャップGを隔てて対向する振動板4が形成されたキャビティ基板1とを備え、振動板4と個別電極10との間に電圧を印加することにより発生する静電気力により振動板4を駆動する静電アクチュエータであって、ギャップGには、振動板4と個別電極10との間に電圧を印加することにより放電するガス50が注入されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置並びにそれらの駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェット記録装置に搭載される静電駆動方式のインクジェットヘッドが知られている。静電駆動方式のインクジェットヘッドは、一般に、ガラス基板上に形成された個別電極(固定電極)と、この個別電極に所定のギャップを介して対向配置されたシリコン製の振動板(可動電極)とから構成される静電アクチュエータを備えている。そして、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル基板との間で上記ノズル孔に連通する吐出室、リザーバ等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、上記静電アクチュエータに静電気力を発生させることにより吐出室に圧力を加えて、選択されたノズル孔よりインク滴を吐出するようになっている。
【0003】
このような静電方式による液滴吐出ヘッドの場合、長期にわたり静電アクチュエータを駆動していると、振動板及び個別電極が帯電し、振動板と個別電極との貼り付きが発生してしまうという課題があった。そこで、従来の静電アクチュエータでは、帯電に起因する振動板と個別電極との貼り付きを防止するため、振動板の個別電極接触面と個別電極の振動板接触面の双方に同種材料(例えばSiO2 )の絶縁膜を形成し、振動板及び個別電極の帯電量を減少させるものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−007735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の静電アクチュエータは、静電アクチュエータの駆動電圧の増加に伴って帯電量が増加してしまう。このため、高電圧で静電アクチュエータを駆動させる場合、依然として振動板と個別電極との貼り付きが発生してしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、高電圧で静電アクチュエータを駆動させる場合でも、振動板と個別電極との貼り付きを防止することができる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置並びにそれらの駆動方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る静電アクチュエータは、固定電極が形成された第1の基板と、固定電極にギャップを隔てて対向する可動電極が形成された第2の基板とを備え、可動電極と固定電極との間に電圧を印加することにより発生する静電気力により可動電極を駆動する静電アクチュエータであって、ギャップには、可動電極と固定電極との間に電圧を印加することにより放電するガスが注入されているものである。
本発明によれば、ギャップ内に注入されたガスは、可動電極と固定電極との間に電圧を印加することにより、放電してプラズマ状態となる。このため、高電圧で静電アクチュエータを駆動させることにより可動電極及び固定電極が帯電した場合でも、帯電している電荷とギャップ内のガスが反応して、可動電極及び固定電極の帯電を除去することができる。したがって、高電圧で静電アクチュエータを駆動させることにより可動電極及び固定電極が帯電した場合でも、可動電極及び固定電極との貼り付きを防止することができる。
【0008】
また、本発明に係る静電アクチュエータは、ギャップに注入されるガスとして希ガスを用いている。
放電してプラズマ状態となりやすい希ガスをギャップに注入することにより、可動電極及び固定電極の帯電除去効果が増加する。
例えば、ギャップに注入される希ガスとしては、アルゴン、ネオン、キセノン及びクリプトン等の希ガスを用いることができる。これらの希ガスは、単体でギャップ内に注入されてもよいし、複数を混合してギャップ内に注入されてもよい。
【0009】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、上記の静電アクチュエータを備えたものである。
本発明によれば、上記の静電アクチュエータを備えているので、可動電極及び固定電極との貼り付きを防止することができ、信頼性が高く液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッドが得られる。
【0010】
また、本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを搭載したものである。
本発明によれば、上記の液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッドを搭載しているので、例えば画像印刷等の用途の場合、高画質化を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る静電アクチュエータの駆動方法は、上記の静電アクチュエータの駆動方法であって、可動電極と固定電極との間へ、可動電極を駆動させるための駆動電圧の印加とは別に、ガスを放電させるための放電用電圧を印加するものである。
本発明によれば、ギャップ内のガスを放電してプラズマ状態とすることができる。このため、可動電極及び固定電極との貼り付きを防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る静電アクチュエータの駆動方法は、放電用電圧の印加時間が駆動パルスの印加時間よりも短いものである。
本発明によれば、可動電極及び固定電極との間に放電用電圧を印加した際に、可動電極が固定電極に当接することを防止できる。
【0013】
また、本発明に係る静電アクチュエータの駆動方法は、放電用電圧の電圧値が前記駆動パルスの電圧値よりも大きいものである。
本発明によれば、駆動電圧が小さい場合でも、ギャップ内のガスを放電してプラズマ状態とすることができる。このため、可動電極及び固定電極との貼り付きをより防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置の駆動方法は、上記の静電アクチュエータの駆動方法を適用したものである。
本発明によれば、可動電極及び固定電極との貼り付きを防止することができるので、信頼性が高く液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置の駆動方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、本発明に係る液滴吐出ヘッドの一例について説明する。本実施の形態1では、ノズル基板の表面に設けられたインクノズルからインク液滴を吐出するフェイス吐出型のインクジェットヘッドについて図1及び図2を参照して説明する。また、本発明は、以下の図に示す構造、形状に限定されるものではなく、基板の端部に設けられたインクノズルからインク液滴を吐出するエッジ吐出型のインクジェットヘッドにも適用できるものである。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態1に係るインクジェットヘッドを分解して表した図である。
本実施の形態のインクジェットヘッドは、第2の基板であるキャビティ基板1と、第1の基板である電極ガラス基板2と、ノズル基板3が積層された三層構造となっている。
【0017】
キャビティ基板1は例えば厚さ約50μmの(110)面方位のSi単結晶基板(以下、単にSi基板という)で構成されている。Si基板に異方性ウェットエッチングを施すことにより、吐出室5、各ノズル共通に吐出する液体を溜めておくためのリザーバ6が形成されている。この吐出室5の少なくとも1つの壁面(本実施形態1においては底壁)は、振動板4となっている。また、キャビティ基板1には電極端子7が形成され、後述の図2に示す発振回路17と接続される。ここで、キャビティ基板1の下面(電極ガラス基板2と対向する面)には、絶縁膜8が形成される。この絶縁膜8は、本例ではTEOS(Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、珪酸エチル)膜0.1μmでプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜している。これは、インクジェットヘッドを駆動させた時の絶縁膜破壊及び短絡を防止するためである。
【0018】
振動板4は、高濃度のボロンドープ層で構成されている。このボロンドープ層は、ボロンを高濃度(約5×1019atoms/cm3 以上)にドープして形成されており、例えばアルカリ性水溶液で単結晶シリコンをエッチングしたときに、エッチング速度が極端に遅くなるいわゆるエッチングストップ層となっている。そして、ボロンドープ層がエッチングストップ層として機能することにより、振動板4の厚み及び吐出室5の容積を高精度で形成することができるようになっている。
【0019】
電極ガラス基板2は厚さ約1mmであり、図1で見るとキャビティ基板1の下面に接合される。ここで電極ガラス基板2となるガラスにはホウ珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いることにする。電極ガラス基板2には、キャビティ基板1に形成される各吐出室5に対向する位置に、深さ約0.3μmの凹部9が設けられる。
【0020】
凹部9は、電極ガラス基板2の端部まで延びるように形成されており、凹部9の底面には、固定電極である個別電極10、リード部10a及び端子部10bが形成されている(以下、個別電極10、リード部10a、端子部10bを合わせて電極部と呼ぶ)。本実施の形態1では、凹部9の底面に形成する電極部の材料として、酸化錫を不純物としてドープした透明のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用い、凹部9内に例えば0.1μmの厚さにスパッタ法を用いて成膜する。ここで、電極部の材料はITOに限定するものではなく、クロム等の金属等を材料に用いてもよいが、本実施の形態では、透明であるので放電したかどうかの確認が行い易い等の理由でITOを用いることとする。
【0021】
また、少なくとも個別電極10の上面には、絶縁膜22であるTEOS膜が、プラズマCVD法により約0.1μm成膜されている(図2に示す)。これは、インクジェットヘッドを駆動させた時の絶縁膜破壊及び短絡を防止するためである。本実施の形態1では、振動板4の下面に形成された絶縁膜8と個別電極10の上面に形成された絶縁膜22とを同材質で形成している。これにより、絶縁膜8(振動板4)が絶縁膜22(個別電極10)に当接した際の帯電量を軽減することができる。
【0022】
絶縁膜8と個別電極10との間には、後述する図2に示すようにギャップGが形成されるが、このギャップGは、この凹部9の深さ、個別電極10の厚さ、及び絶縁膜22の厚さにより決まることになる。
【0023】
電極ガラス基板2には、各凹部9を相互に連通するように結ぶ気相処理溝12が凹部9と同様の深さ約0.3μmで形成されている。この気相処理溝12は、ギャップGに放電用のガス50を注入するためのものである。本実施の形態1では、放電用のガス50として、アルゴン、ネオン、キセノン及びクリプトン等の希ガスが、ギャップG内に注入されている(図2に示す)。これらの希ガスは、単体でギャップG内に注入されてもよいし、複数を混合してギャップG内に注入されてもよい。
【0024】
なお、ギャップG内にガス50を注入する前に、ギャップ内に水分除去のための親水処理を施してもよい。これにより、水分に起因する振動板4と個別電極10との貼り付きを防止することができる。
【0025】
また、電極ガラス基板2には、リザーバ6と連通するインク供給口13が設けられている。
【0026】
ノズル基板3は例えば厚さ約180μmのシリコン基板で構成されており、吐出室5と連通するノズル孔14が形成されている。また、ノズル基板3の図1において下面(キャビティ基板1と接合される接合側の面)には、吐出室5とリザーバ6とを連通させるためのオリフィス15が形成されている。また、ノズル基板3の両端には、キャビティ基板1に形成されているリザーバ6に対向してリザーバ6内の圧力変動を抑制するダイアフラム16が形成されている。
【0027】
図2は、図1の右半分のインクジェットヘッドの断面模式図である。この図2は吐出室5を長手方向に割断した部分の断面図である。
【0028】
キャビティ基板1の電極端子7は、FPC(Flexible Print Circuit)(図示せず)を介して発振回路17に接続されている。また、キャビティ基板1において端子部10bと対応する部分には貫通穴21が形成されており、その貫通穴21から端子部10bがFPC(図示せず)を介して発振回路17に接続されるようになっている。発振回路17は、端子部10bを介して個別電極10に電荷の供給及び停止を制御する。発振回路17は例えば24kHzで発振し、個別電極10に0Vと30Vのパルス電圧を印加して電荷供給を行う。このように発振回路17が駆動し、個別電極10に電荷を供給して正に帯電させると、振動板4は負に帯電し、静電気力により個別電極10に引き寄せられて撓む。これにより吐出室5の容積は広がる。そして個別電極10への電荷供給を止めると振動板4は元に戻る。このとき、吐出室5の容積も元に戻るため、その圧力により差分のインクが吐出し、例えば記録対象となる記録紙に着弾することによって印刷が行われる。そして、振動板4が再び下方へ撓むことにより、インクがリザーバ6よりオリフィス15を通じて吐出室5内に補給される。また、インクジェットヘッドへのインクの供給は、電極ガラス基板2上に形成したインク供給口13により行うようになっている。このように主に振動板4と個別電極10によって静電アクチュエータが構成されている。なお、このような方法は引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。
【0029】
また、ギャップGの端部には封止部18が形成され、個別電極10単位で封止が行われるようになっている。この封止部18は、キャビティ基板1に形成された貫通穴21を介して例えばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相法)、スパッタ、蒸着などの方法により、封止材を堆積することにより形成されるものである。本例では無機材料の封止材を成膜により堆積することにより形成するようにしている。なお、図示しないが、気相処理溝12もこの封止材により封止される。
【0030】
続いて、ギャップG内に注入されたガス50の作用について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係るインクジェットヘッドの駆動状態を示す短手方向断面模式図である。なお、比較のため、図4に従来のインクジェットヘッドの駆動状態を示す短手方向断面模式図を示す。
【0031】
個別電極10に印加して電荷供給を行うと、振動板4は負に帯電し、静電気力により個別電極10に引き寄せられて撓む(図3(a)から図3(b)の過程、及び図4(a)から図4(b)の過程)。個別電極10への電荷供給を止めると、振動板4は元に戻り、ノズル孔14からインクが吐出される(図3(c)及び図4(c))。この振動板4の駆動を繰り返すうち、振動板4及び個別電極10が帯電してしまう。これにより、従来のインクジェットヘッドでは、振動板4と個別電極10との貼り付きが発生してしまっていた(図4(c))。
【0032】
しかしながら、本実施の形態1に係るインクジェットヘッドは、ギャップG内にガス50が注入されている。このガス50は、個別電極10(個別電極10と振動板4との間)に駆動電圧が印加されるとき、放電してプラズマ状態となる。そして、ギャップG内には、イオン等の正電荷粒子や電子等の負電荷粒子が生成される。このため、これら正電荷粒子及び負電荷粒子が振動板4及び個別電極10の帯電を除去し、振動板4と個別電極10の貼り付きを防止することができる(図3(d))。
【0033】
このように構成された静電アクチュエータにおいては、ギャップG内に注入されたガス50は、個別電極10(個別電極10と振動板4との間)に印加される駆動電圧により、放電してプラズマ状態となる。このため、振動板4及び個別電極10の帯電を除去し、振動板4と個別電極10の貼り付きを防止することができる。
【0034】
また、ガス50として放電してプラズマ状態となりやすい希ガスを用いているので、振動板4及び個別電極10の帯電除去効果が増加する。
【0035】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、振動板4と個別電極10の貼り付きを防止することができるので、信頼性が高く液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッドが得られる。
【0036】
なお、本実施の形態1では駆動電圧によって放電しやすい希ガスをギャップGに注入したが、駆動電圧によって放電するガスであれば、ガス50の種類は任意である。
【0037】
また、本実施の形態1では振動板4(共通電極)の電圧について言及しなかったが、個別電極10との間に電圧差が生じれば任意である。振動板4(共通電極)の電圧が個別電極10の電圧よりも高電位となるようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態1では、キャビティ基板1、電極ガラス基板2、ノズル基板3からなる3層構造の液滴吐出ヘッドについて説明したが、リザーバ基板を用いた4層構造の液滴吐出ヘッドであっても同様の効果が得られる。
【0039】
実施の形態2.
実施の形態1では、ガス50を放電させるための印加電圧として、駆動電圧を用いた。駆動電圧とは別に、個別電極10(個別電極10と振動板4との間)にガス50を放電させるための放電用電圧を印加することによって、振動板4及び個別電極10の帯電を除去してもよい。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態2に係る静電アクチュエータの駆動方法の一例を示す特性図である。
本実施の形態2では、駆動電圧とガス50を放電させるための放電用電圧とを、別々に個別電極10(個別電極10と振動板4との間)へ印加している。これら駆動電圧及び放電用電圧は、パルス電圧として個別電極10(個別電極10と振動板4との間)へ印加している(図5(a))。そして、放電用電圧の印加時間(パルス幅)は、1[μsec]となっており、駆動電圧の印加時間(パルス幅)である10[μsec]よりも短くなっている。また、放電用電圧の電圧値は、100[V]となっており、駆動電圧の電圧値である50[V]よりも大きくなっている(図5(b))。
【0041】
このように構成された静電アクチュエータにおいては、駆動電圧とは別に、ガス50を放電させるための放電用電圧を個別電極10(個別電極10と振動板4との間)へ印加している。このため、確実にガス50を放電させることができ、振動板4及び個別電極10の帯電の除去効率が向上する。したがって、振動板4と個別電極10の貼り付きを防止しやすくなる。
【0042】
また、放電用電圧の印加時間は駆動電圧の印加時間よりも短くなっているので、振動板4が個別電極10に当接することを防止できる。つまり、放電用電圧の印加によってノズル孔14からインクが吐出されることを防止できる。
【0043】
また、放電用電圧は駆動電圧よりも大きくなっている。このため、駆動電圧がガス50を放電させるには不十分な小さな電圧の場合でも、放電用電圧によってガス50を放電させることができる。
【0044】
また、上記の静電アクチュエータの駆動方法を液滴吐出ヘッドや液滴吐出装置の駆動方法に適用することで、信頼性が高く液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置の駆動方法を得ることができる。
【0045】
実施の形態3.
図6は上述の実施の形態で製造した静電アクチュエータ(液滴吐出ヘッド)を搭載した液滴吐出装置(プリンタ100)の外観図である。また、図7は液滴吐出装置の主要な構成手段の一例を表す図である。図6及び図7の液滴吐出装置は液滴吐出方式(インクジェット方式)による印刷を目的とする。また、いわゆるシリアル型の装置である。図7において、被印刷物であるプリント紙110が支持されるドラム101と、プリント紙110にインクを吐出し、記録を行う液滴吐出ヘッド102とで主に構成される。また、図示していないが、液滴吐出ヘッド102にインクを供給するためのインク供給手段がある。プリント紙110は、ドラム101の軸方向に平行に設けられた紙圧着ローラ103により、ドラム101に圧着して保持される。そして、送りネジ104がドラム101の軸方向に平行に設けられ、液滴吐出ヘッド102が保持されている。送りネジ104が回転することによって液滴吐出ヘッド102がドラム101の軸方向に移動するようになっている。
【0046】
一方、ドラム101は、ベルト105等を介してモータ106により回転駆動される。また、駆動制御回路(図示せず)は、印刷用データ及び制御信号に基づいて送りネジ104、モータ106を駆動させる。また、ここでは図示していないが、実施の形態1で説明したように発振回路17から各電極部に対する電荷供給を制御して電圧を印加し、各振動板4を振動させ、吐出量を変化させながらプリント紙110に印刷を行わせる。
【0047】
このように構成された液滴吐出装置(プリンタ100)においては、上述の実施の形態で製造した静電アクチュエータ(液滴吐出ヘッド)を搭載しているので、液滴吐出特性に優れ、高画質化を図ることができる。
【0048】
なお、ここでは液体をインクとしてプリント紙110に吐出するようにしているが、液滴吐出ヘッドから吐出する液体はインクに限定されない。例えば、カラーフィルタとなる基板に吐出させる用途においては、カラーフィルタ用の顔料を含む液体、有機化合物等の電界発光素子を用いた表示パネル(OLED等)の基板に吐出させる用途においては、発光素子となる化合物を含む液体、基板上に配線する用途においては、例えば導電性金属を含む液体を、それぞれの装置において設けられた液滴吐出ヘッドから吐出させるようにしてもよい。また、液滴吐出ヘッドをディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids:デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。その他、布等の染料の吐出等にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るインクジェットヘッドの長手方向断面模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るインクジェットヘッドの駆動状態を示す短手方向断面模式図である。
【図4】従来のインクジェットヘッドの駆動状態を示す短手方向断面模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る静電アクチュエータの駆動方法の一例を示す特性図である。
【図6】液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置の外観図である。
【図7】液滴吐出装置の主要な構成手段の一例を表す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 キャビティ基板、2 電極ガラス基板、3 ノズル基板、4 振動板、5 吐出室、6 リザーバ、7 電極端子、8 絶縁膜、10 個別電極、10a リード部、10b 端子部、12 気相処理溝、13 インク供給口、14 ノズル孔、15 オリフィス、16 ダイアフラム、17 発振回路、18 封止部、21 貫通穴、22 絶縁膜、50 ガス、100 プリンタ、101 ドラム、102 液滴吐出ヘッド、103 紙圧着ローラ、104 送りネジ、105 ベルト、106 モータ、107 プリント制御手段、110 プリント紙、G ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極が形成された第1の基板と、
前記固定電極にギャップを隔てて対向する可動電極が形成された第2の基板とを備え、
前記可動電極と前記固定電極との間に電圧を印加することにより発生する静電気力により前記可動電極を駆動する静電アクチュエータであって、
前記ギャップには、
前記可動電極と前記固定電極との間に電圧を印加することにより放電するガスが注入されていることを特徴とする静電アクチュエータ。
【請求項2】
前記ガスは希ガスであることを特徴とする請求項1に記載の静電アクチュエータ。
【請求項3】
前記希ガスは、アルゴン、ネオン、キセノン及びクリプトンのうち少なくとも一つであることを特徴とする請求項2に記載の静電アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の静電アクチュエータを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の静電アクチュエータの駆動方法であって、
前記可動電極と前記固定電極との間へ、
前記可動電極を駆動させるための駆動電圧の印加とは別に、前記ガスを放電させるための放電用電圧を印加することを特徴とする静電アクチュエータの駆動方法。
【請求項7】
前記放電用電圧の印加時間は、前記駆動パルスの印加時間よりも短いことを特徴とする請求項6に記載の静電アクチュエータの駆動方法。
【請求項8】
前記放電用電圧の電圧値は、前記駆動パルスの電圧値よりも大きいことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の静電アクチュエータの駆動方法。
【請求項9】
請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載の静電アクチュエータの駆動方法を適用したことを特徴とする液滴吐出ヘッドの駆動方法。
【請求項10】
請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載の静電アクチュエータの駆動方法を適用したことを特徴とする液滴吐出装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−111042(P2010−111042A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286221(P2008−286221)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】