説明

静電フィルタ

本発明は、静電フィルタであって、少なくともほぼ円形の横断面の区分を備えたハウジングが設けられており、該区分が、粒子を案内するガス流を前記横断面に対して直角な長手方向(L)に導通させるために働き、ハウジング内に多数の集塵プレートが配置されており、該集塵プレートが、互いに平行に向けられて、長手方向に延びる複数の通路を形成しており、該通路のうちの少なくとも幾つかの通路内に、それぞれ少なくとも1つの電極フレーム(1)が配置されており、該電極フレーム(1)が、細長い多数の電極(8)を備えており、該電極(8)に高電圧を印加することにより、ガス流内で案内された粒子が集塵プレート上に分離されるようになっている形式の静電フィルタに関する。本発明の構成では、前記電極(8)が、電極フレーム(1)に設けられた支持ビーム(3)にのみ位置固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の静電フィルタ(Elektrofilter)、すなわち少なくともほぼ円形の横断面の区分を備えたハウジングが設けられており、該区分が、粒子を案内するガス流を前記横断面に対して直角な長手方向に導通させるために働き、ハウジング内に多数の集塵プレートが配置されており、該集塵プレートが、互いに平行に向けられて、長手方向に延びる複数の通路を形成しており、該通路のうちの少なくとも幾つかの通路内に、それぞれ少なくとも1つの電極フレームが配置されており、該電極フレームが、細長い多数の電極を備えており、該電極に高電圧を印加することにより、ガス流内で案内された粒子が集塵プレート上に分離されるようになっている形式の静電フィルタに関する。
【0002】
欧州特許出願公開第0252371号明細書には、静電気式の集塵器の形の静電フィルタが記載されている。この静電気式の集塵器では、粒子もしくはダストを含んだガス流が、平行な集塵プレートの間で、ほぼ円筒状のハウジング区分に案内される。平行に位置調整された集塵プレートの間には、長手方向に延びる複数の通路が設けられており、これらの通路内には、フレームに張設された放電極(Spruehelektrode)が配置されている。フレームに張設されたこのような放電極は、線材として形成されていて、温度変化時には相応する機械的な応力を受ける。短絡を生ぜしめる恐れのある電極線材の裂断可能性の他に、機械的な応力により、さらに電極フレームに歪みが生じる恐れがある。この歪みにより、高電圧を印加されている電極フレームの、隣接した集塵プレートに対する間隔が変えられてしまうという不都合も生じる。このような構造の静電フィルタの実際の運転においては、電極線材が裂断した場合に、保守に手間がかかるという理由からしばしば、裂断された個々の電極線材だけが取り除かれるので、このような静電フィルタの性能は、完全な保守が行われるまで、段階的に減じられることになる。
【0003】
本発明の課題は、簡単な製造可能性を有すると同時に高い運転安全性および効率を有するような静電フィルタを提供することである。
【0004】
この課題は、本発明によれば、冒頭で述べた形式の静電フィルタにおいて、請求項1の特徴部に記載の特徴、すなわち前記電極が、電極フレームに設けられた支持ビームにのみ位置固定されていることにより解決される。
【0005】
電極フレームの支持ビームの1個所にのみ電極を位置固定することにより、電極の緊締もしくは張設が不要となるので、より大きな温度変化の場合にも、ひいては電極フレームの相応する機械的な膨張の場合にも、電極の損傷やフレームの歪みが回避される。本発明の特に有利な具体的構成では(ただしこれに限定されるものではない)では、電極が、支持ビームを起点として下方へも上方へも突出している。これにより、ほぼ円形の横断面を有するハウジング構造への適合を簡単に行うことができる。
【0006】
主要使用領域は、転炉ガスの除塵である。転炉の不連続的な運転形式に基づき、ガス浄化設備は、ダストを含んだ可燃性の転炉ガスと、軽度にしかダストを含有していない周辺空気とによって交互に貫流される。転炉の吹込み段階の間、発生した可燃性の転炉ガスはダスト分離の後にガス容器内に捕集される。静電フィルタの下流側に据え付けられた切換ステーションにより、不燃性の排空気を、煙道を介して環境へ変向させることが可能になる。吹込み休止中に転炉ガスと、酸素含有の排空気とが混合し合うと、爆発性のガス混合物が発生する恐れがある。このような爆発性のガス混合物は静電フィルタ内で着火して、爆発を招く恐れがある。このような爆発は、静電フィルタの分離能力を損なうダスト衝撃(Staubstoessen)を招く恐れがある。さらに、ダスト衝撃は転炉の運転を妨げる。なぜならば、ダスト衝撃は吹込みプロセスの中断を招く恐れがあるからである。したがって、本発明による静電フィルタは、その特徴の総和によってこのような使用領域のために特に適しており、このことは、円形のハウジング形状が特に好都合な通流を可能にすると同時に、静電フィルタ全体の良好な機械的強度を可能にするのでなおさらである。
【0007】
本発明の特に有利な実施態様では、前記電極が、少なくとも鉛直方向の向きで自己支持性を持って形状剛性的(剛性を高める形状)に形成されているので、電極の緊締もしくは張設を簡単に不要にすることができる。有利な具体的構成では(必ずしもこれに限定されるものではない)、前記電極が、たとえば自体公知の管形放電極として、四角形横断面を有する電極として、または十字形の横断面を有する電極として形成されていてよい。
【0008】
一般に有利には、電極フレームが、支持ビームの他に、少なくとも1つの別の補剛ビームを有しており、これにより電極フレームは一層良好な支持を得る。特に有利な具体的構成では、補剛ビームに前記電極が案内されており、ただしこの場合、電極は補剛ビームに位置固定には取り付けられていない。これにより、電極がその長さにわたり、大きな熱応力の際に機械的な応力を生ぜしめる複数点の位置固定部を有することなしに、電極の過剰揺動または機械的な歪みを回避することができる。
【0009】
一般に有利な実施態様では、円形の横断面のハウジング内に与えられた構成スペースを利用するために、電極フレームのうちの少なくとも幾つかの電極フレームが、ハウジングのほぼ円形の横断面におけるその位置に関連した、互いに異なる高さを有している。
【0010】
簡単な手段でハウジングの幅を、電極と集塵プレートとで埋めるために利用するために、支持ビームが、高さ方向でそれぞれハウジングの上端部および下端部からの間隔として、ハウジング横断面の直径の少なくとも1/4、特に有利には少なくとも1/3に相当する間隔を有していると有利である。
【0011】
一般に有利には、支持ビームが、電極フレームの槌打ちロッドとして形成されている。これにより、脱塵のための電極の打撃が簡単に可能となる。しかし、電極の本発明における支承に基づき、たいていは、槌打ちロッドの打撃を片側からのみ行うだけで十分となる。
【0012】
本発明による静電フィルタの単純でかつ有効な構成では、多数の電極フレームの支持ビームが、長手方向で相前後して配置された少なくとも2つの、特に正確に2つのクロスメンバ(横方向支持体)の間に延びていて、該クロスメンバによって保持されている。有利な改良形では、クロスメンバが、電気的な絶縁体を介してハウジング内に取り付けられている。この場合、クロスメンバは、それぞれハウジングの補強リングに懸吊されていると特に有利である。このような補強リングは特に円形の横断面を有する静電フィルタの構造において知られており、この場合、ハウジングの2つの補強リングの間には、複数の集塵プレートおよび複数の電極フレームのそれぞれ1つのフィールドが配置されている。
【0013】
一般に有利な実施態様では、電極フレームのうちの少なくとも2つの電極フレームが、自由に浮動する位置固定用横桁を介して横方向で互いに結合されており、有利な具体的構成では長手方向で見て集塵プレートのフィールドの手前および/または背後で結合されている。このような位置固定用横桁は、重量または構成上の手間が著しく増大されることなしに、個々の電極フレームの互いに相対的な揺動を簡単な手段によって減少させる。
【0014】
本発明のさらに別の利点および特徴は、以下に説明する実施形態および請求項2以下から明らかである。
【0015】
以下に、本発明の有利な実施形態を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による静電フィルタの電極フレームを、挿入された電極なしの状態で側方から見た図である。
【図2】図1に示した電極フレームの配置を、電極が挿入された状態で端面側から見た図である。
【0017】
本発明による静電フィルタもしくは電気集塵装置は、円筒状の区分にほぼ一定でかつほぼ円形の横断面を有するハウジング(図示しない)を有している。この場合、静電フィルタの長手方向Lは円筒体軸線の方向に延びており、この方向に向かって、粒子またはダストを含んだガスによる静電フィルタの通流も行われる。
【0018】
円筒状のハウジング区分には、長手方向Lにおいて互いに間隔を置いて配置された2つまたは2つ以上の補強リング(図示しない)が設けられている。これらの補強リングは第1にハウジングを支持し、第2に複数の集塵プレートのフィールド(集塵プレート域)を保持するために働く。さらに、補強リングには、複数の電極フレーム1が取り付けられている。これらの電極フレーム1は、横方向でハウジングを貫いて延びるクロスメンバ2に互いに平行に位置固定されている。クロスメンバ2における位置固定は、各電極フレーム1の支持ビーム3のそれぞれ1つの端範囲によって行われる。支持ビーム3の各端範囲はこの場合、2つのクロスメンバ2のそれぞれ1つに載置されていて、このクロスメンバ2に別の手段により位置固定されている。
【0019】
電極フレーム1は、ハウジングの長手方向Lに延びる支持ビーム3の他に、鉛直方向もしくは高さ方向Hに延びる鉛直な2つのビーム4ならびに長手方向Lで支持ビーム3に対して平行に、鉛直な前記両ビーム4の間に延びる複数の別の補剛ビーム5を有している。補剛ビーム5と、鉛直なビーム4と、支持ビーム3とは、互いに位置不動に固定されているので、1つの梯子状のフレームが形成される(図1参照)。
【0020】
この梯子状フレームの形の電極フレーム1は、支持ビーム3の端範囲を介してクロスメンバ2に取り付けられている。クロスメンバ2自体は鉛直なアンカ6において、絶縁体7を介してハウジングの補強リング(図示しない)に懸吊されている。電極フレーム1全体は運転時に電圧を印加され、この場合、隣接した集塵プレート(図示しない)はアースされている。
【0021】
図1に示した電極フレーム1は、図面を分かり易くするために、取り付けられた電極なしで図示されている。電極を取り付けるためには、支持ビーム3に、相応する付設部3aが示されている。特に図2の横断面図から判るように、電極フレーム1の支持ビーム3の付設部3aにのみ位置固定されている電極8は、上方へも下方へも支持ビーム3から垂直に突出している。これらの電極8は、たとえば補剛ビーム5に配置された複数の孔または長手方向スリットによって、補剛ビーム5に案内されている。補剛ビーム5における位置固定は行われない。電極8は図示の実施形態では、高さ方向で電極フレーム1の端部を越えて突出しており、これにより、ガス通流される円筒状の空間の特に良好な利用が得られる。
【0022】
図2には、静電フィルタのハウジング(図示しない)内に懸吊されている、クロスメンバ2と電極フレーム1とから成る装置全体を端面側から見た図が示されている。図面には、自由浮動式の位置固定用横桁9が示されている。位置固定用横桁9は、それぞれ幾つかの電極フレーム1を互いに結合しており、これにより静電フィルタの運転時に電極フレーム1が互いに離れる方向へ揺動してしまうことが阻止される。この静電フィルタの、電極フレーム1の間に延びる集塵プレートは図示されていない。互いに対して平行に位置調整されている集塵プレートの間には、自由な通路が残されており、これらの通路内に電極フレーム1が配置されている。
【0023】
電極8はこの場合、管形放電極として形成されている。電極8は特に、少なくとも図示の鉛直方向の向きにおいて自己支持性を持って形状剛性的(剛性を高める形状)に保持されるようにするために十分な大きさの横断面を有している。電極長さにわたる電極の緊締もしくは張設は行われない。また、支持ビーム3から下方へ延びる電極8にウェイトを装備させることも必要にならない。なぜならば、このような電極8は一方では形状剛性的(剛性を高める形状)に形成され、他方では補剛ビーム5に案内されているからである。
【0024】
電極フレーム1と電極8とに沈積された粒子を叩き落とすためには、各支持ビーム3が、自体公知のメカニズムによって槌打ち軸とハンマとを用いて打撃される。この場合、本実施形態の構造に基づき、支持ビーム3を片側からのみ打撃するだけで十分となる。しかし、もちろん両側からの打撃を設定することもできる。
【0025】
図2に示した、縮尺通りの図面から判るように、クロスメンバ2は高さ方向Hにおいて、ハウジング(図示しない)の上端部から、ほぼ円形のハウジングの直径全体の少なくとも約1/3に相当するような大きさの間隔を置いて配置されている。これにより、クロスメンバ2は横方向Qにおいて、互いに平行な多数の電極フレーム1を収容し、かつハウジング幅を最適に利用するために十分な長さに形成されている。これにより、クロスメンバ2は横方向Qにおいて、互いに平行な多数の電極フレーム1を収容し、かつハウジング幅を最適に利用するために十分な長さを有している。図2から直接判るように、電極フレーム1は横方向Qにおける配置に応じて、種々異なる高さを有しており、この場合、電極フレーム1の合計3種類の構成高さが設定されている。横方向Qにおける位置に応じた、挿入された電極8の長さの段階付けは、静電フィルタの構成スペースを粒子分離のために最適に利用するために、フレーム高さの段階付けよりも一層細密に形成されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電フィルタであって、少なくともほぼ円形の横断面の区分を備えたハウジングが設けられており、該区分が、粒子を案内するガス流を前記横断面に対して直角な長手方向(L)に導通させるために働き、ハウジング内に多数の集塵プレートが配置されており、該集塵プレートが、互いに平行に向けられて、長手方向に延びる複数の通路を形成しており、該通路のうちの少なくとも幾つかの通路内に、それぞれ少なくとも1つの電極フレーム(1)が配置されており、該電極フレーム(1)が、細長い多数の電極(8)を備えており、該電極(8)に高電圧を印加することにより、ガス流内で案内された粒子が集塵プレート上に分離されるようになっている形式の静電フィルタにおいて、前記電極(8)が、電極フレーム(1)に設けられた支持ビーム(3)にのみ位置固定されていることを特徴とする静電フィルタ。
【請求項2】
前記電極(8)が、支持ビーム(3)を起点として下方へも上方へも突出している、請求項1記載の静電フィルタ。
【請求項3】
前記電極(8)が、少なくとも鉛直方向の向きで自己支持性を持って形状剛性的に形成されている、請求項1または2記載の静電フィルタ。
【請求項4】
前記電極(8)が、管形放電極として、四角形横断面を有する電極として、または十字形の横断面を有する電極として形成されている、請求項3記載の静電フィルタ。
【請求項5】
電極フレーム(1)が、支持ビーム(3)の他に、少なくとも1つの別の補剛ビーム(5)を有しており、該補剛ビーム(5)に特に前記電極が案内されており、ただし前記電極は該補剛ビーム(5)に位置固定はされていない、請求項1から4までのいずれか1項記載の静電フィルタ。
【請求項6】
電極フレーム(1)の少なくとも幾つかの電極フレーム(1)が、ハウジングのほぼ円形の横断面におけるその位置に関連した、互いに異なる高さを有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の静電フィルタ。
【請求項7】
支持ビーム(3)が、高さ方向(H)でそれぞれハウジングの上端部および下端部からの間隔として、ハウジング横断面の直径の少なくとも1/4、特に少なくとも1/3に相当する間隔を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の静電フィルタ。
【請求項8】
支持ビーム(3)が、電極フレーム(1)の槌打ちロッドとして形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の静電フィルタ。
【請求項9】
多数の電極フレーム(1)の支持ビーム(3)が、長手方向で相前後して配置された少なくとも2つの、特に正確に2つのクロスメンバ(2)の間に延びていて、該クロスメンバ(2)によって保持されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の静電フィルタ。
【請求項10】
クロスメンバ(2)が、電気的な絶縁体(7)を介してハウジング内に取り付けられている、請求項9記載の静電フィルタ。
【請求項11】
クロスメンバ(2)が、それぞれハウジングの補強リングに懸吊されている、請求項10記載の静電フィルタ。
【請求項12】
電極フレーム(1)のうちの少なくとも2つの電極フレーム(1)が、自由浮動式の位置固定用横桁(9)を介して横方向で互いに結合されており、特に長手方向(L)で見て集塵プレートのフィールドの手前および/または背後で結合されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の静電フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−532017(P2012−532017A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518824(P2012−518824)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004169
【国際公開番号】WO2011/003610
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512007421)エスエムエス エレックス アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】SMS Elex AG
【住所又は居所原語表記】Eschenstrasse 6, CH−8603 Schwerzenbach, Switzerland
【Fターム(参考)】