説明

静電噴霧装置、および当該静電噴霧装置を用いて静電噴霧を行う方法

【課題】低価格でかつ複雑さを抑えつつ、配置・構成上の変動が許容される静電噴霧装置を提供する。
【解決手段】静電噴霧装置は、スプレー部位と、スプレー部位と電気的に接続可能なスプレー電極と、基準電極と、電源装置とを備える。基準電極は、スプレー電極と当該基準電極との間に電圧が印加されたときに、静電噴霧される物質がスプレー部位から噴霧されるように配置されている。電源装置は、スプレー電極と基準電極との間に電圧を印加し、スプレー部位の電気的特性を監視できるとともに、監視されたスプレー部位の電気的特性および所定の指標に基づいてスプレー電極と基準電極との間に印加される電圧を調節する。さらに、静電噴霧装置では、スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の極性の電荷が基準電極において生成されることにより平衡化されるように、スプレー電極および基準電極が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電噴霧装置、および静電噴霧装置を使用するための方法に関する。特に、本発明は、静電噴霧のために電力供給する電源装置を有する静電噴霧装置に関するものであるが、本発明はこれに限定されない。
【背景技術】
【0002】
静電噴霧とは、噴霧される物質に好適な電場を与え、その物質を分散させる技術をいい、多くの場合、その物質を液体から微細液滴として分散させる。噴霧される物質に近接する電極(スプレー電極)と、そのスプレー電極の近傍の少なくとももう1つの電極との間に電圧が印加される。好適な条件下において、電場領域を流れる液体は、おおむね単分散粒子のしぶき液滴となって霧散する。そのような電場を液体メニスカスに与えると、そのメニスカスは、テイラーコーンを形成し、そこから液滴流が放出される。
【0003】
本技術分野における静電噴霧の一般的な形態は、いわゆる“point-to-plain(点から面)”の静電噴霧を含む。ここでは、噴霧される対象物を液体と逆(反対の極性)に帯電し、その対象物そのものが対向電極または放電電極となる。この構成は、例えば米国特許第7,150、412号に例示されるように、静電噴霧された帯電液滴が液体と対象物との間に生成された電場経路をたどるため、液体の全てまたは大部分が、ターゲットに達して、そのターゲットを覆うことができる。同様の原理に基づいて、噴霧される対象物はアースまたは設置されていてもよく、その構成が、米国特許第4,801,086号および米国特許第3,735,925号に開示されている。
【0004】
また、噴霧装置の内部に配置された2つ以上の電極間で電場が生成されるように、3つ以上の電極が備えられた構成であってもよい。対向電極が近接していることから、噴霧される液体の帯電が部分的なものもあるが、帯電された液滴の大部分は、装置から放出され、予め決められていない対象物に達する。この構成は、例えば米国特許第6、302、331号に開示されている。
【0005】
静電噴霧装置から噴霧される液滴の大きさ、電荷、および流量は、その一部が、噴霧される物体の物理的特性と、噴霧位置における電界強度とによって決まる。噴霧される物質が導電性、粘性、表面張力に関する好適な物理的特性を有する場合、とくに液体の場合、電荷および大きさがおおむね均一な粒子の噴霧が、第1電極と第2電極との間に存在する特定の電場に対して実現する。その特定の電場は、通常、第1電極と第2電極との間に特定の電圧を印加することで得られる。
【0006】
電場は電極配置によって変化するため、特定の電圧は、種々の要因の中で、電極間の距離(つまり、噴霧装置(スプレー電極であってもよい)から放出される物質の放出位置の間の距離)と第2電極(基準電極)とによって決まる。例えば、液体組成が適切な物理的特性を有する場合、特定の電圧は、スプレー電極および基準電極の配置の変化を補償するための調整が必要となる。なお、その配置の変化は、例えば、製造誤差の範囲内のばらつきに起因して生じる。
【0007】
また、噴霧液体の製造誤差の範囲内でばらつきが存在する場合には、好適な噴霧を実現するために特定の電圧を調整する必要が生じる。なお、そのばらつきは、例えば、液体の物理的特性に係るバッチごとのばらつきや、あらゆる種類の製剤原料の物理的特性に係るバッチごとのばらつきなどがある場合に生じる。
【0008】
それゆえ、噴霧装置から物質を適切に放出するために、噴霧部品の配置の変化、噴霧される製剤や物質のバッチごとの違い、および、噴霧される物質の特性に影響を及ぼす環境条件の変化にかかわらず、あらゆる噴霧装置の状態および性能を監視できることが望ましい。
【0009】
さらに、物質の噴霧に関して、噴霧装置が、物質を貯蔵し、かつ、その物質を噴霧位置に供給するためのリザーバーを有する場合に、リザーバー内の物質の残存量を判断できることが望ましく、特に、そのリザーバーが空であるか、ほぼ空であるかを判断できることが望ましい。これにより、噴霧装置のユーザは、リザーバーを交換するタイミングを判別することができ、かつ、噴霧されるものが残っていないときに、物質を噴霧しようとすることによりエネルギーを浪費することがない。
【0010】
噴霧状態を監視する必要性から、数多くの解決方法が開示されている。例えば、国際公開第2005/097339号の装置は、電圧監視回路および電流監視回路を備える。その電圧監視回路および電流監視回路は、供給される電圧、およびエミッタ(スプレー)電極と放電“対向”電極との間の電流を監視する。米国特許第2009/0134249号に開示される装置は、噴霧電極と対向電極との間の電流を測定する。これにより、当該装置は、噴霧電極上の水分凝縮物が静電噴霧によって分散されるように、電極間に好適な電圧を印加する状態を確立する。国際公開第2007/144649号に開示される電源装置では、当該装置の第1電極と第2電極との間を流れる放電電流を監視し、それに応じて、電極間に印加される電圧を順応させる。国際公開第2008/072770号の静電噴霧装置は、自励発振型のDC/DCコンバータに適応することで、噴霧電極の“上流”の電圧を監視する。
【0011】
電流を監視し、かつ、装置または周囲環境条件の変化に応じて噴霧条件を適応させるこれらの手段および他の手段では、放電電極の電流値を測定することで第1電極(通常はスプレー電極)と第2電極(通常は放電電極)との間の放電電流を検出するという点において不利益が生じる。このような場合、スプレー電極で生成される粒子の全て、または一定の割合が、電極間に印加される電場によって放電電極の方向に方向付けされる必要がある。場合によっては、1つ以上の追加的な電極または他の手段を用いて、噴霧される粒子の大部分が放電電極を汚染することなく、かつ、物質の過剰な浪費が回避されるように、その粒子の方向付けが行われる。
【0012】
放電電極の放電電流を測定することでなされる静電噴霧の推定監視は、これまでのところ正確性に欠ける。というのも、そのような監視は、静電スプレー部位で荷電される、放電電極に達する荷電物質の代表的な量が仮定に基づくものだからである。この量は、装置の配置の変化、噴霧される物質の有無や物性、および周辺環境条件に対してとりわけ敏感である。
【0013】
一方、スプレー電極の電流を測定すると、荷電粒子により伝達される電流値が正確に反映される。しかしながら、この測定方法は、静電噴霧装置には適さない。というのも、静電噴霧装置は、高電圧信号(通常は、数kV)で流れる極めて低い電流(通常は、高圧スプレー電極により引き出される1−100μA)を正確に検出することを要求するためである。
【0014】
多くの場合、噴霧される物質を貯蔵するリザーバーは静電噴霧装置のユーザからは見えず、そのリザーバーの充填量はすぐには分からない。このことは、静電噴霧装置がしばらくの間使用されているのであれば尚更である。静電噴霧装置であるかどうかにかかわらず、液面を検出、監視、測定する様々な装置および方法が当業者には知られている。例えば、米国特許第5,627,522号には、ピペット・プローブを定期的に液中に下ろしてリザーバーの液面を検知し、液体中プローブと空気中プローブとの間の静電容量の変化を検出する構成が開示されている。他の周知の方法が欧州特許第0887658号に開示されている。ここでは、リザーバー中の液面に反射する電磁波の位相シフトを基準値と比較し、それにより、リザーバーの残存液体の液面に関する情報が提供される。米国特許第6,796,303号に開示される方法で使用量をカウントしてリザーバーの充填量を推測することもできる。その方法では、所定の数になるまで使用量をカウントして、容器の中身が空であることを装置が知らせる。しかしながら、1回分の使用量が装置の性能変動により変化する場合に、このようなシステムは適切ではない。装置の性能は、例えば周囲の環境条件の変化によって変動する。同様の技術が、米国特許第4,817,822号に開示されている。リザーバーを監視する他の間接的な方法は、流量測定装置を使用することで行われてもよい。例えば、国際公開第2008/142393A1の装置は、間隔を置いて配置された一対の圧力センサ間の圧力降下を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7,150、412号
【特許文献2】米国特許第4,801,086号
【特許文献3】米国特許第3,735,925号
【特許文献4】米国特許第6、302、331号
【特許文献5】国際公開第2005/097339号
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0134249号
【特許文献7】国際公開第2007/144649号
【特許文献8】国際公開第2008/072770号
【特許文献9】米国特許第5,627,522号
【特許文献10】欧州特許第0887658号
【特許文献11】米国特許第6,796,303号
【特許文献12】米国特許第4,817,822号
【特許文献13】国際公開第2008/142393A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した技術はすべて、次の点において満足のいくものではない。すなわち、それらの技術は、電気部品または機械部品を追加する必要がある。また、それら部品は、複雑な機構を有しており、通常、消費電力の点で大量生産に向いていない。これは、特に、一般消費者向けまたは低コストビジネスのマーケットについて該当する。また、上記技術は、製造時または使用時において、故障または汚染に対して脆弱である。
【0017】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、静電噴霧の対象となる物質を安定的に装置の外部に放出できる、簡単な構成の静電噴霧装置を提供することを目的とする。また、周辺の環境条件および静電噴霧そのものの状態に応じて静電噴霧の出力を調整することが可能な静電噴霧装置等を提供することも本発明の副次的な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
余裕のある製造誤差を持たせるために、低価格でかつ複雑さを抑えつつ、配置・構成上の変動が許容される静電噴霧装置、および、周辺の環境条件および静電噴霧そのものの状態に応じて静電噴霧の出力を調整することが可能な静電噴霧装置の提供が望まれる。
【0019】
本発明の第1の実施形態において、静電噴霧される物質に対して電気的に作用することにより、当該物質を静電噴霧するスプレー部位と、上記スプレー部位と電気的に接続可能なスプレー電極と、基準電極と、電源装置とを備え、上記基準電極は、上記スプレー電極と当該基準電極との間に電圧が印加されたときに、上記静電噴霧される物質が上記スプレー部位から噴霧されるように配置されており、上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電圧を印加し、上記スプレー部位の電気的特性を監視できるとともに、監視された上記スプレー部位の電気的特性に基づいて上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される電圧を調節することができ、さらに、上記スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の極性の電荷が上記基準電極において生成されることによって電荷のバランスをとるように、上記スプレー電極および上記基準電極が配置されている静電噴霧装置が提供される。
【0020】
上記のように電荷のバランスを取ることにより、電荷が平衡された静電噴霧システムが提供される。電荷平衡システム(電荷の平衡化されたシステム)において、静電噴霧された荷電種が安定的に装置の外部に放出されるためには、逆の極性を有する電荷が基準電極によって等量生成され、それにより電荷を平衡化することが好ましい。
【0021】
静電噴霧される物質は1種またはそれ以上の液体、気体、固体またはそれらの組み合わせであってよい。
【0022】
典型例として、基準電極は、例えば、当該電極の近傍に強い電場を生成するために鋭い端部または先端部を有することによって、空気粒子をイオン化し、逆の極性を有する粒子を容易に生成する。スプレー電極および基準電極から放出された逆の極性を有する粒子はそれぞれ、部分的に、または全てが、互いに放電する可能性があるが、これは本装置にとって重要な要素である必要はない。また、スプレー部位で生成した荷電粒子の一部が基準電極に達し、そこで放電されるというのも、電荷平衡システムの原理の1つとして挙げられる。この場合、基準電極に到達しなかった荷電粒子のみが、逆の極性を有するイオン化された大気粒子と平衡化する。しかしながら、高い電力効率で荷電粒子を生成するためには、基準電極における粒子の部分的放電は行われない方が望ましい。
【0023】
装置が絶縁されているとき、あるいは電源に接続されていないとき、すなわち、装置が主電源などの大型の電荷蓄積装置と電気的に接続していないとき、電荷平衡システムを実現することができる。電池で稼動する装置であれば、装置全体が絶縁されているため、電荷平衡は可能であろう。主電源で稼動する装置では、例えば十分な電気的絶縁によって、主電源のコンセントへの正味の電荷の流れをゼロとすることが重要である。
【0024】
電荷平衡システムでは、荷電粒子の種類は問われない。というのも、本装置では、印加される高電圧の極性によって、負帯電した大気イオンと確実に平衡となるように正帯電した荷電粒子を生成することができ、また、正帯電した大気イオンと確実に平衡するように負帯電した荷電粒子を生成することができるためである。しかしながら、逆の極性に帯電した粒子を効率的に電荷平衡させるために、好適な電圧を印加するか、あるいは、電極および/または誘電体の配置を変更することによって、電場を変化させる必要がある。
【0025】
第1の観点に係る噴霧装置の電荷平衡原理には多くの利点がある。スプレー電流は、逆の極性に帯電したイオンの放出に反映されるため、基準電極において正確なスプレー電流の測定が可能である。また、好適な形状に形成された基準電極によって、静電噴霧により生成される荷電粒子の数を制限することができる。これは、本システムでは、基準電極によって平衡化できる数の、静電噴霧される荷電粒子しか生成しないためである。その結果、安定な静電噴霧が行われる。基準電極における電流がスプレー電極によって放出される総電流に相当するため、静電噴霧以外の要因に起因する、スプレー電極における荷電損失を最小限に抑えることが重要である。荷電損失は、例えばスプレー電極における電気化学反応により生じる。
【0026】
上記電源装置は、上記基準電極における電流を測定することにより上記スプレー部位における電流を監視することができることが好ましい。一実施形態において、上記電源装置は、変流器によって上記基準電極における電流を測定できる。他の実施形態において、上記電源装置は、上記基準電極に直列に接続された抵抗器における電圧を測定することによって、上記基準電極における電流を測定できる。
【0027】
上記電源装置は、主電源または1つ以上のバッテリーを含む電源からの電圧を印加することが好ましい。
【0028】
また、上記電源装置は、当該電源装置によって上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される上記電圧を供給する高電圧発生装置をさらに備えることが好ましい。一実施形態において、上記高電圧発生装置は、発振回路、コンバータおよび整流回路を備えている。他の実施形態において、上記電源装置は、さらに、上記発振回路における発振の大きさ、周波数またはデューティーサイクルを制御することにより印加電圧を調節することができる制御手段を備えている。
【0029】
さらに他の実施形態において、上記電源装置は、さらに、所定の周波数で上記整流回路に交流バーストを発生させることにより印加電圧を調節することができ、上記交流バーストの継続時間および/またはデューティーサイクルによって上記印加電圧の値が決定される。バーストを印加する継続時間は、マイクロプロセッサによって供給されるパルス幅変調信号を用いることで制御され、上記マイクロプロセッサは、アナログ/デジタル変換器を介して電流および電圧測定を行うことができることが好ましい。このように、フィードバック情報に対する所定の出力電力は、マイクロプロセッサのファームウェアの一部であってよく、必要であれば、電源装置回路ハードウェアを変更することなく、変更することができる。
【0030】
さらに他の実施形態において、荷電粒子の少なくとも一部が上記基準電極に到達しないように、上記スプレー部位から噴霧される物質を、上記静電噴霧装置から遠ざける方向制御手段をさらに備える。上記方向制御手段は、上記スプレー部位の近傍に配置された誘電体をさらに備え、噴霧時に、噴霧される物質の極性と同じ電荷が、上記誘電体の側面における上記スプレー部位の近傍に蓄積され、その電荷は、上記スプレー部位から噴霧される物質を、上記静電噴霧装置から遠ざけることが好ましい。上記誘電体は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に配置されていることが好ましい。一実施形態において、上記誘電体は、さらに、上記スプレー部位と上記基準電極とを結ぶ線分を遮るように配置されている。
【0031】
このように、本発明の実施形態では、第1電極および第2電極の周囲、特に、電極間に誘電物質を配置することで、第1電極と第2電極との間に形成される電場の形状を変化させることができる。誘電物質は荷電粒子を引き付け、それにより電極間に存在する電場が変化する。特に望ましい電極および誘電体の構成では、スプレー電極と平行に(つまり装置から離れる方向に)帯電した液滴に対して強力な力が及ぶように電場が形成される。理想的には、静電噴霧によって装置から噴霧された帯電物質により得られる運動量は基準電極に引き寄せられる力を十分に上回り、帯電した静電噴霧粒子の安定的な流れが得られる。
【0032】
上記の誘電体の使用は、装置から離れる方向に荷電粒子の流れを生成するうえで最も対費用効果に優れることが分かった。しかしながら、他の手段を用いることも可能である。一実施例では、荷電粒子の動きを偏向させるために磁界が印加され、所望の方向に荷電粒子の流れが形成される。例えば、磁石をスプレー電極近くの適切な位置にセットすることで、荷電粒子が動くように作用させて、装置から離れるように方向付けることができる。他の実施形態では、同様の効果を得るために、気流(例えばファンによって発生させられる)が用いられる。さらに他の実施形態では、最適なスプレー性能を得るために、上述した技術の好適な組み合わせが用いられる。例えば、そのような気流の発生源をスプレー電極と並べて設置することによって装置から離れるように方向付けることができる。
【0033】
このように、他の実施形態において、上記方向制御手段は、上記スプレー部位から噴霧された荷電物質の動きを偏向させる磁界を発生させる磁界発生器を備える。
【0034】
他の実施形態において、上記方向制御手段は、上記スプレー部位から噴霧された荷電物質の動きを偏向させる気流を発生させるために配置されたファンなどの気流発生手段を備えている。
【0035】
さらに他の実施形態において、上記電源装置は、正および負の電荷を有する物質が交互に上記スプレー部位から噴霧されるように、上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される電圧の極性を周期的に変化させる。例えば、このような電極の極性変化は正および負の高電圧に変換できる適切な高電圧発生装置を使用することで達成できる。
【0036】
一実施形態において、噴霧される物質は液体であり、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電荷が印加されていないときには、上記噴霧される物質の少なくとも一部が上記液体の表面張力によって上記スプレー部位に保持されるように、上記スプレー部位の寸法が規定されている。
【0037】
幾つかの実施形態において、上記スプレー電極は、上記スプレー部位の位置および当該スプレー部位と隣接する位置には配置されていない。例えば、一実施形態において、噴霧される物質を保持するキャビティをさらに備え、上記スプレー電極の少なくとも一部が上記キャビティ内に配置されている。上記スプレー部位は、上記キャビティの突出部であり、上記突出部は、キャピラリ、ノズルまたは開口部を備える導管を備えていることが好ましい。一実施形態において、上記スプレー電極は、上記噴霧される物質を介して上記スプレー部位と電気的に接続される。
【0038】
他の実施形態において、上記スプレー電極は、上記スプレー部位に配置されるか、または、当該スプレー部位に隣接されることにより、当該スプレー部位と電気的に接続される。一実施形態において、上記スプレー電極は、外側末端を有する導管を備え、上記スプレー部位は、上記外側末端における先端を備えている。上記導管は、キャビティと通じており、上記キャビティは、リザーバーと通じるように配置されており、噴霧時に、噴霧される物質が上記リザーバーから上記キャビティへ送られることが好ましい。上記リザーバーは、噴霧時に、噴霧される物質が重力によって上記キャビティに移動するように配置されていることが好ましい。例えば、リザーバーをキャビティの上に設置し、リザーバーとキャビティの間に流路を設けておくことが挙げられる。一実施形態において、上記リザーバーおよび上記キャビティは、上記静電噴霧の1回の動作において噴霧される物質の容量が、上記リザーバーに残っている物質によって上記キャビティ内に補填される。他の実施形態において、ポンプ供給手段をさらに備え、上記ポンプ供給手段は、好ましくは電気的に作動するものであり、噴霧される物質を上記リザーバーから上記キャビティへ供給するものである。例えば、ポンプはリザーバーとキャビティの間に設置される。
【0039】
他の実施形態において、上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される上記電圧を監視する電圧監視手段をさらに備えている。一実施形態において、上記スプレー電極と上記基準電極との間に接続され、分圧器を形成する2つの抵抗器をさらに備え、上記電圧監視手段は、上記2つの抵抗器の接合部における電圧を測定することができる。他の実施形態において、上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電圧を印加することができる高電圧発生装置をさらに備え、上記電圧監視手段は、高電圧発生回路内のノードにおいて生成された電圧を測定することができる。他の実施形態において、上記電圧監視手段は、上記高電圧発生回路からの電力消費に関する情報とともに、上記スプレー部位におけるスプレー電流を監視することにより間接的に上記電圧を監視することができる。本実施形態は、特に、低コストの用途に好適である。出力電圧は、高電圧発生回路において、スプレー電流フィードバック情報と共に消費電力に関する情報を用いることにより、間接的に出力電圧を監視することができる。しかしながら、出力電圧の間接的な監視は、正確性が大幅に損なわれる場合があるため、高電圧出力の正確な値が重要ではない場合には有用である。
【0040】
他の実施形態において、上記電力装置は、制御回路をさらに備え、上記制御回路は、好ましくは、少なくとも1つの電圧制御信号を供給することができるマイクロプロセッサを備え、上記電圧制御信号は、上記電源装置によって上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される電圧の特性を決定するものであり、上記マイクロプロセッサは、上記電源装置によって監視された電流または電圧の値を処理することにより上記電圧制御信号を供給する。一実施形態において、上記制御回路による処理は、周囲の環境条件に関する少なくとも1つの電圧制御信号を補償するように設定されており、上記環境条件には、例えば、温度、湿度および/または大気圧、および/または噴霧量が含まれる。一実施形態において、上記電源装置は、周囲の温度を監視する温度センサをさらに備え、その温度情報は、上記制御回路に供給され、上記少なくとも1つの電圧制御信号を補償するために使用される。他の実施形態において、上記電源装置は、周囲の湿度を監視する湿度センサをさらに備え、その湿度情報は、上記制御回路に供給され、上記少なくとも1つの電圧制御信号を補償するために使用される。さらに他の実施形態において、上記電源装置は、周囲の圧力を監視する圧力センサをさらに備え、その圧力情報は、上記制御回路に供給され、上記少なくとも1つの電圧制御信号を補償するために使用される。
【0041】
典型例として、検査回路は、例えばRFタグのためのRFID回路や不揮発性メモリ(NVM)を読む適切な伝達プロトコルなど適切な回路を使用することによって識別子を検出する、例えばRFタグや不揮発性メモリ(NVM)、マイクロプロセッサなどの電気識別子によって構成される。電気識別子はキャビティまたは液体を含むリザーバーと接続され、適切な回路と十分に近接しており、この適切な回路によって検出・識別されることが好ましい。その時、この適切な回路は電気識別子のアイデンティティを伝えることができ、それゆえ、噴霧される物質の情報を電源装置の制御回路へ伝えることができる。
【0042】
一実施形態において、上記電源装置は、噴霧される物質の特性を検出し、上記噴霧される物質の特性に関する情報を決定する検査回路をさらに備え、上記噴霧される物質の特性に関する決定された情報は、上記制御回路に供給され、上記少なくとも1つの電圧制御信号を補償するために使用される。
【0043】
上記制御回路は、上記電源装置によって印加される電圧の間隔、デューティーサイクル、振幅またはオンーオフ時間のいずれか、またはその組み合わせを変化させることにより補償を行うことができることが好ましい。
【0044】
それゆえ、制御回路は、安定的な量の荷電種を供給するために、環境に関するフィードバック信号を処理し、所定の指標に基づいて補償することができるため、有利である。マイクロプロセッサは、安定的な量の荷電種を供給するために、入力情報を処理し、所定の指標に基づいて補償することが好ましい。上記補償は、上述したように、出力電圧を調整する形式か、スプレー時間およびデューティーサイクルを調整する形式か、あるいはその両方の組み合わせが可能である。好ましい実施形態において、所定の指標はマイクロプロセッサのファームウェアの一部であり、調整は、上記マイクロプロセッサの出力ポートを介して行われる。間隔およびパルス幅変調信号を調整することにより、出力電圧が変更される。一方で、パルス幅変調のオンーオフ時間を調整すると、スプレー間隔およびデューティーサイクルが変更される。
【0045】
さらに他の実施形態において、上記電源装置は、上記基準電極における電流を測定することにより、上記噴霧される物質の残液量の閾値を監視できる監視回路をさらに備えている。静電噴霧の電流を監視する1つの方法は、静電噴霧できる残液量の閾値を下回ったときの電流低下を見ることであり、本発明によると電流フィードバック回路を使用することによって、マイクロプロセッサが応答することができる。
【0046】
さらに他の実施形態において、第1スプレー部位において噴霧される物質の極性とは逆の極性の電荷を有する物質を噴霧する第2スプレー部位をさらに備え、上記基準電極は、上記第2スプレー部位と電気的に接続され、上記第1スプレー部位は、上記スプレー電極によって第1の極性に帯電されており、上記第2スプレー部位は、上記基準電極によって上記第1の極性とは逆の極性に帯電されており、上記スプレー電極および上記基準電極は、1つの電源によって電気的な偏倚をかけている。
【0047】
さらに他の実施形態において、静電噴霧される第2の物質に対して電気的に作用することにより、当該第2の物質を静電噴霧する第2スプレー部位をさらに備え、上記基準電極は、上記第2スプレー部位と電気的に接続可能に配置されており、噴霧時に上記基準電極と上記スプレー電極との間に電圧が印加されたときに、第1スプレー部位から物質が噴霧され、上記第2スプレー部位から上記第2の物質が噴霧される。
【0048】
さらに他の実施形態において、上記噴霧される物質を貯蔵する第1リザーバーと、上記噴霧される第2の物質を貯蔵する第2リザーバーとをさらに備え、上記スプレー電極および上記スプレー部位は、上記第1リザーバーに貯蔵された上記噴霧される物質に対して流体を介して電気的に作用し、上記基準電極および上記第2スプレー部位は、上記第2リザーバーに貯蔵された上記噴霧される第2の物質に対して流体を介して電気的に作用する。
【0049】
本発明の第2の実施形態において、物質を噴霧する第1スプレー部位および第2スプレー部位と、上記第1スプレー部位と電気的に接続される第1電極と、上記第2スプレー部位と電気的に接続される第2電極と、電源装置とを備え、上記第1スプレー部位および上記第2スプレー部位は、第1および第2リザーバーにそれぞれ貯蔵された、噴霧される物質に対して噴霧時に電気的に作用するように配置されており、上記第1および第2電極間に電圧が印加されたときに、上記第1リザーバー内の噴霧される物質が上記第1スプレー部位から噴霧され、上記第2リザーバー内の噴霧される物質が上記第2スプレー部位から噴霧され、上記電源装置は、上記第1電極と上記第2電極との間に電圧を印加することができ、上記第1または第2スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の電荷が上記第1または第2スプレー部位においてそれぞれ生成されることにより平衡化されるように、上記第1および第2電極が配置されている。上記電源装置は、さらに、上記第1または第2スプレー部位の電気特性を監視することができるとともに、監視された上記第1および上記第2スプレー部位の電気特性および所定の指標に従って上記第1電極と上記第2電極との間にそれぞれ印加される電圧を調節することができることが好ましい。好ましい実施形態において、上記電源装置は、上記第1または第2電極における電流をそれぞれ測定することにより上記第1または第2スプレー部位における電流を監視する。
【0050】
本発明に係る第3の実施形態において、静電噴霧される物質に対して噴霧時に電気的に作用することにより、当該物質を静電噴霧するスプレー部位と、上記スプレー部位と電気的に接続されるスプレー電極と、基準電極と、電源装置とを備え、上記基準電極は、上記スプレー電極と当該基準電極との間に電圧が印加されたときに、上記静電噴霧される物質が上記スプレー部位から噴霧されるように配置されており、上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電圧を印加し、間接的に上記スプレー部位におけるスプレー電流を監視するとともに、上記スプレー電流が閾値よりも低下したことを検出することができ、さらに、上記スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の極性の電荷が上記基準電極において生成されることにより平衡化されるように、上記スプレー電極および上記基準電極が配置されている。
【0051】
それゆえ、本発明の第3の実施形態において、電源装置は最後まで、つまり、液体リザーバーが空になるまで監視を行う。一実施形態において、その最後の状態は、基準電極における電流の測定によるスプレー電極の監視によって検出される。電荷平衡の原理に基づき、スプレー部位が荷電粒子を生成しないのであれば、基準電極における対応電流もゼロまで下がる。このことは、上記の電流監視回路を介して検出される。他の実施形態において、別の“監視”電極が液体リザーバーに浸っており、例えば、監視電極と基準電極との間に接続する分圧器を形成する2つの抵抗器の接合部における電圧を測定することによって、上記電圧値が監視される。好適な形状の監視電極を用いることにより、監視電極が液面の中または上側に位置するかによって、上記電圧値は変化する。さらに他の実施形態において、リザーバーの液面は、例えば、光学センサまたは容量センサによって監視される。
【0052】
本発明のさらに他の態様において、スプレー部位の電気的特性を監視する工程と、上記第1電極と上記第2電極との間に印加される電圧を調節する工程とを含む、静電噴霧装置を用いて静電噴霧を行う方法が提供される。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係る静電噴霧装置は、以上のように、静電噴霧される物質に対して電気的に作用することにより、当該物質を静電噴霧するスプレー部位と、上記スプレー部位と電気的に接続可能なスプレー電極と、基準電極と、電源装置とを備え、上記基準電極は、上記スプレー電極と当該基準電極との間に電圧が印加されたときに、上記静電噴霧される物質が上記スプレー部位から噴霧されるように配置されており、上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電圧を印加し、上記スプレー部位の電気的特性を監視できるとともに、監視された上記スプレー部位の電気的特性に基づいて上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される電圧を調節することができ、さらに、上記スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の極性の電荷が上記基準電極において生成されることにより平衡化されるように、上記スプレー電極および上記基準電極が配置されている構成である。
【0054】
また、本発明に係る静電噴霧装置は、以上のように、物質を噴霧する第1スプレー部位および第2スプレー部位と、上記第1スプレー部位と電気的に接続される第1電極と、上記第2スプレー部位と電気的に接続される第2電極と、電源装置とを備え、上記第1スプレー部位および上記第2スプレー部位は、第1および第2リザーバーにそれぞれ貯蔵された、噴霧される物質に対して噴霧時に電気的に作用するように配置されており、上記第1および第2電極間に電圧が印加されたときに、上記第1リザーバー内の噴霧される物質が上記第1スプレー部位から噴霧され、上記第2リザーバー内の噴霧される物質が上記第2スプレー部位から噴霧され、上記電源装置は、上記第1電極と上記第2電極との間に電圧を印加することができ、上記第1または第2スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の電荷が上記第1または第2スプレー部位においてそれぞれ生成されることにより平衡化されるように、上記第1および第2電極が配置されている。
【0055】
本発明に係る静電噴霧装置は、以上のように、静電噴霧される物質に対して噴霧時に電気的に作用することにより、当該物質を静電噴霧するスプレー部位と、上記スプレー部位と電気的に接続されるスプレー電極と、基準電極と、電源装置とを備え、上記基準電極は、上記スプレー電極と当該基準電極との間に電圧が印加されたときに、上記静電噴霧される物質が上記スプレー部位から噴霧されるように配置されており、上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電圧を印加し、間接的に上記スプレー部位におけるスプレー電流を監視するとともに、上記スプレー電流が閾値よりも低下したことを検出することができ、さらに、上記スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の極性の電荷が上記基準電極において生成されることにより平衡化されるように、上記スプレー電極および上記基準電極が配置されている構成である。
【0056】
それゆえ、簡単な構成により、静電噴霧の対象となる物質を安定的に装置の外部に放出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して説明される。
【図1】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態に係る、電荷平衡の静電噴霧装置を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係る、電源装置の一例を示す。
【図3】本発明の一実施形態に係る、第1電極、第2電極、キャビティ、電源装置のさらに他の例を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係る、第1電極、第2電極、キャビティ、電源装置の他の例を示す。
【図5】本発明の一実施形態に係る静電噴霧装置の他の例を示す。
【図6】本発明の一実施形態に係る静電噴霧装置の他の例を示し、2つのキャビティ、2つの電極、および2つのスプレー部位を有し、1つのスプレー部位に対するスプレー電極は他のスプレー部位に対する基準電極でもあり、その逆も成り立つことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1(a)〜(d)は、本発明に係る静電噴霧装置の第1の実施形態を示す。第1電極1および第2電極2は、誘電体3によって分離されており、互いが直接に見える位置関係にはない。第1電極1および第2電極2は、動作可能な状態で電源装置4に接続されている。本実施形態において、第1電極(スプレー電極)1は、静電スプレー部位5を有し、そこから物質(噴霧物質)が噴霧される。第1電極1は、スプレー電極1と称されてもよい。スプレー電極1は、静電スプレー部位5と電気的に接続可能である。同様に、第2電極2は、基準電極2と称されてもよく、先端部6を有する。
【0059】
図1(a)が示す例では、動作中に、電源装置4によってスプレー電極1と基準電極2との間に高電圧が印加される。この例では、スプレー電極1は、金属性キャピラリ(つまり、ステンレス鋼キャピラリ、例えば、304型ステンレス鋼)などの導電性導管と、噴霧される物質、つまり、好適な液体とを含む。基準電極2は、金属ピン(ステンレス鋼製のピン、例えば、304型スチールピン)などの導電性ロッドを有する。好ましくは、誘電体3は、非導電性であり、すなわち非導電性材料からなる。また、誘電体3は、先端部7を有する。誘電体3の好適な材料にはナイロン、ポリプロピレンが含まれる。誘電体3は、スプレー電極1および基準電極2に近接している。
【0060】
図1(b)は、例えば1−30kVの間の高電圧(例えば、3−7kV)がスプレー電極1と基準電極2との間に印加されたときの静電噴霧装置を示す。この場合、電極間に電場が形成され、誘電体3内部に電気双極子が生じる。この限定されない例において、スプレー電極1は正に帯電しており、基準電極は負に帯電している。ただし、その逆でもよい。負の双極子が、正のスプレー電極1に最も近い誘電体の表面に生じる。そして、正の双極子が、負の第2電極2に最も近い誘電体3の表面に生じる。帯電したガスおよび物質種が、スプレー電極1および基準電極2によって放出される。
【0061】
スプレー電極1の静電スプレー部位5から噴霧される噴霧物質の電荷と少なくとも同量の電荷が基準電極2において生成され、基準電極2において生成される電荷は、噴霧物質の極性とは逆の極性の電荷である。それゆえ、噴霧物質の電荷は、基準電極2において生成される電荷によって平衡化される。
【0062】
図1(c)は、正に帯電したスプレー電極1から生じる正帯電種が、スプレー電極1に近接する誘電体3の表面に蓄積する様子を示す。同様に、負に帯電した基準電極から生じる負帯電種が、基準電極2に近接する誘電体3の表面(側面)に蓄積する様子が示されている。図1(d)に示すように、この電荷蓄積により、電場が再形成され、正に帯電したスプレー電極1から生じる正帯電種は、静電スプレー部位5およびスプレー電極1に近接する誘電体3の表面で跳ね返され、最終的に静電噴霧装置から放出される。それゆえ、誘電体3は、荷電粒子の少なくとも一部が基準電極2に到達しないように、静電スプレー部位5から噴霧される物質を、静電噴霧装置から遠ざける方向制御手段として機能する。
【0063】
通常、スプレー電極から生じる帯電種は、帯電したガス、および微粒子種を含む。帯電したガス種は、スプレー電極で生成され、帯電した微粒子種は、静電スプレー部位5で生成される。同様に、負に帯電した基準電極2から生じる帯電種が、基準電極2に近接する誘電体3の表面で跳ね返され、最終的に静電噴霧装置から放出される。このようにして、1つの電極から他の電極へ移動する帯電種の流れは、まったく存在しないか、あるいは殆ど存在しない。この例において、スプレー電極1および基準電極2は、電極間に高電圧を印加することによって形成される電場の中心が静電スプレー部位5および基準電極の先端部6に集中するように配置される。
【0064】
ここで、上記の誘電体の使用は、装置から離れる方向に荷電粒子の流れを生成するうえで最も対費用効果に優れることが分かった。しかしながら、他の手段を用いることも可能である。例えば、荷電粒子の動きを偏向させる磁界発生器(方向制御手段)を設け、この磁界発生器によって磁界を印加することで、所望の方向に荷電粒子の流れを形成してもよい。または、同様の効果を得るために、気流を発生させる装置(気流発生手段)(例えばファン)を設け、気流によって荷電粒子の流れを生じさせてもよい。さらに、最適なスプレー性能を得るために、上述した技術を好適に組み合わせてもよい。
【0065】
さらに、電源装置4は、正および負の電荷を有する物質が交互にスプレー部位5から噴霧されるように、スプレー電極1と基準電極2との間に印加される電圧の極性を周期的に変化させてもよい。
【0066】
図1に示す例において、スプレー部位5と基準電極2の先端部6とは、8mmほど分離されていることが好ましい。通常、静電スプレー部位5および基準電極2の先端部6は、誘電体3の先端部7から1mmほど奥まった位置にある。他の導電性材料および形状であっても上述の電極に好適に用いることができ、上記導電性材料には、チタン、金、銀、および他の金属が含まれ、半導体も利用可能である。
【0067】
図2は、本発明の実施形態に係る電源装置4の構成図の一例を示す。電源装置4は、電源21と、出力値を有する高電圧発生装置22と、基準電極262の電流およびスプレー電極261における出力電圧を監視する監視回路(電圧監視手段)23と、高電圧発生装置22の出力電圧が所望の値となるように高電圧発生装置22を制御する制御回路(制御手段)24とを備える。様々な用途に対応するために、制御回路24はマイクロプロセッサ241を備え、そのマイクロプロセッサ241は、他のフィードバック情報25に基づいて、出力電圧およびスプレー時間をさらに調整できるように設計されている。フィードバック情報25には、環境条件(気温、湿度、および/または、大気圧)、液体量、液面、ユーザによる任意の設定などが含まれる。
【0068】
電源21は周知であり、主電源または1つ以上のバッテリーを含む。この電源21は、低電圧電源、直流(DC)電源が好ましく、例えば、1つ以上のボルタ電池を組み合わせて1つの電池を構成する。好適な電池には単3電池、単1電池が含まれる。電池の個数は、必要な電圧レベルと電源の消費電力とによって決まる。われわれは、3Vの電圧を供給する2つの単3電池によって、マイクロプロセッサの動作に必要な電圧を十分にまかなえること、そして、スプレー電流0.8μAおよび出力電圧5.5kV(典型的な値)で12.5%のスプレー・デューティーサイクルという条件で2ヶ月まで静電噴霧装置を動作させるのに十分であることを見出した。
【0069】
通常、高電圧発生装置22は、自励発振回路221と、変圧器222と、コンバータ回路223とを備える。自励発振回路221は直流を交流に変換し、変圧器222は交流で駆動する。コンバータ回路223は、この変圧器222に接続される。極めて電力効率が高く、かつ対費用効果が高いトランス駆動回路は、電流供給が制限される給電プッシュプルトポロジーであることをわれわれは見出した。上記駆動回路の電流制限は、変圧器の飽和状態を回避するために行われる。通常、コンバータ回路は、チャージポンプと整流回路とを備える。コンバータ回路は、所望の電圧を生成し、交流を直流に変換する。典型的なコンバータ回路は、コックロフト・ウォルトン回路である。
【0070】
監視回路23は、電流フィードバック回路231を備え、用途によっては、電圧フィードバック回路232を備えてもよい。電流フィードバック回路231は、基準電極262の電流値を測定する。静電噴霧装置は電荷平衡されるため、この電流値を測定し、参照することにより、静電スプレー部位5での電流を正確に監視することができる。この方法によれば、高価で、複雑で、混乱を生じさせる測定手段を静電スプレー部位5に設ける必要はなく、また、測定電流に対する放電電流の寄与を推定する必要もない。電流フィードバック回路231は、例えば変流器などの従来のいかなる電流測定装置を含んでもよい。
【0071】
好ましい実施形態において、基準電極における電流は、基準電極と直列に接続されたセットレジスタ(フィードバック抵抗器)における電圧を測定することにより測定される。ある実施形態において、セットレジスタにおける測定電圧は、アナログ・デジタル(A/D)変換器を用いて読み取られる。なお、一般的に、アナログ・デジタル変換器は、マイクロプロセッサの一部である。アナログ・デジタル変換器を備えた好適なマイクロプロセッサは、Microchip社製のPIC16F18**ファミリー製品のマイクロプロセッサである。デジタル情報は、制御回路24に出力を供給するためにマイクロプロセッサにより処理される。
【0072】
A/D変換回路の欠点は、A/D変換により、A/D変換時間に起因する制御反応の遅れが生じうるという点にある。また、静電噴霧処理の電流値は極めて低い(数マイクロアンペア)ことが多く、A/D変換するのに十分な電流を供給するためには、電流をさらに増幅する必要がある。これは、演算増幅器を用いることで実現しうるが、電源装置のコストおよび総消費電流を増やすことになる。
【0073】
好ましい実施形態において、セットレジスタで測定された電圧は、比較器を用いて、所定の一定基準電圧値と比較される。比較器は、極めて低い電流(一般に、ナノアンペアかそれ以下)しか必要とせず、かつ、応答速度が速い。多くの場合、マイクロプロセッサには、その目的のために比較器が組み込まれている。例えば、上述したマイクロチップファミリーのPIC16F1824は、入力電流値が極めて低く、かつ一定の基準電圧を有する好適な比較器を提供する。比較器に入力される基準電圧値は、このマイクロプロセッサに含まれるD/A変換器を用いて設定され、選択可能な32の基準電圧値が用意されている。通常動作では、この回路は、基準電圧の大きさおよびフィードバック抵抗器によって決定される要求値よりも測定電流が高いか低いかを検出することができ、その情報を制御回路に供給する。
【0074】
正確な電圧値が要求される用途において、監視回路23はまた、電圧フィードバック回路232を備え、スプレー電極261に印加される電圧を測定する。一般に、印加電圧は、第1電極と第2電極とを接続する分圧器を形成する2つの抵抗器の接合部における電圧を測定することによって直接監視される。あるいは、印加電圧は、同様の分圧器の原理を用いて、コックロフト・ウォルトン回路内のノードで生成される電圧を測定することによって監視される。同様に、電流フィードバックに関して、フィードバック情報は、A/D交換器を介して、あるいは、比較器を用いてフィードバック信号を基準電圧値と比較することによって、処理される。
【0075】
制御回路24は、発振器221の振幅の大きさ、周波数、またはデューティーサイクル、電圧のオンーオフ時間(あるいは、これらの組み合わせ)を制御することによって、高電圧発生装置22の出力電圧を制御する。この例において、制御回路24は、所定の周波数で交流バーストを生成することを発振器221に指示することで高電圧発生装置22の出力電圧を制御する。その出力電圧は、交流バーストの継続時間、および/または、デューティーサイクルにより決まる。制御回路24は、比較器からの出力として、静電スプレー部位5の監視電流を示す信号を受信する。そして、制御回路24は、高電圧発生装置の出力値を所望の値に変更するために、所定の指標に従って交流バーストの継続時間、および/または、デューティーサイクルを調整する。制御回路24は、パルス幅変調(PWM)スキームを使用する(パルス幅変調信号を用いる)構成であってよい。これにより、制御回路24は、PWMデューティーサイクルに対する制限値を設定することで、高電圧発生装置の出力電圧に対する制限を調節可能に設けることができる。通常、制御回路24は、マイクロプロセッサ241の出力ポートであり、PWM信号を供給できる。スプレー・デューティーサイクルおよびスプレー間隔もまた、同じPWM出力ポートを介して制御されうる。スプレーの間、PWM信号が出力される。上記電圧は、PWM信号のデューティーサイクルを変更することによって、または、フィードバック信号に基づいてPWM信号を瞬時にON、OFFすることによって、調整されうる。制御回路24のファームウェアの実装は、要求される補償スキームによって決まる。例えば、スプレー電流を一定に保つために出力電圧が調整されなければならないときに、比較器から出力される電流フィードバックに関する出力値に基づいてPWM信号を自動シャットダウンおよび自動スタートすることのみによって、単純なフィードバック制御を実現できる。こういった構成は、上述したPIC16F1824マイクロコントローラに用意されている。
【0076】
高電圧発生装置の最小出力電圧Vmを高精度に制御する必要がない場合、制御回路24は、例えば、高電圧発生装置22に供給される電流を測定することによって、高電圧発生装置22に供給される電力を監視することによりVmを設定するよう構成される。好都合なことに、この方法により電圧を制御することで、交流バーストの平均継続時間を高電圧発生装置22による電力消費の指標として用いることができる。例えば、電力消費が10%減少することは、スプレー電極261と基準電極262との間の抵抗が10%減少することを意味し、これは、高電圧発生装置22の出力を所望のレベルで維持するためにフィードバック電流を約10%増加することにより補償される。それゆえ、さもなければ高価な部品、および/または、さらなる電力消費が必要になるところ、高電圧発生装置22の出力電圧を監視する必要なく、Vmの最小電圧限界を知ることができる。電力消費の測定に関する欠点は、その正確性が、高電圧回路における電力損失に影響されるという点にある。
【0077】
大気温度、湿度、大気圧、噴霧物質の液体量、噴霧物質の液面に基づいて電圧またはデューティーサイクル/スプレー間隔を補償する必要から、マイクロプロセッサ241に他の入力25が入力されうる。その情報は、アナログ情報またはデジタル情報として与えられ、マイクロプロセッサにより処理される。通常、アナログ信号に対してはA/D変換が行われ、デジタル信号に対しては、データ種(例えば、IC)に基づいて通信ポートが与えられる。マイクロプロセッサは、上記PWM出力ポートを介して所定のスキームを使用し、入力情報に基づいて、スプレー間隔、スプレーをオンにする時間、または印加電圧の何れかを変更することよってスプレーの品質および安定性を高めるための補償を行うことができる。
【0078】
一例として、電源装置は、温度補償のために使用されるサーミスタなどの温度検知素子(温度センサ)を備える。ある実施形態において、電源装置は、温度検知素子により検知された温度の変化に従ってスプレー間隔を変化させる。スプレー間隔は、電源のオン、オフ時間の総計である。例えば、電源がスプレーを35秒間オンとし(その間、電源は第1電極と第2電極との間に高電圧を印加する)、145秒間オフとする(その間、電源は第1電極と第2電極との間に高電圧を印加しない)周期的なスプレー間隔の場合、そのスプレー間隔は35+145=180秒である。スプレー間隔は、電源のマイクロプロセッサに内蔵されたソフトウエアにより変更することができ、温度が上昇すると設定点から増加し、温度が低下すると設定点から減少する。スプレー間隔の増加および短縮は、噴霧される物質の特性によって定まる所定の指標に従うことが好ましい。便宜上、スプレー間隔の補償変化量は、スプレー間隔が0−60℃(例えば、10−45℃)の間でのみ変化するよう制限されていてもよい。そのため、温度検知素子によって記録された極端な温度は誤りとみなされ、考慮されず、高温および低温に対しては、最適ではないものの容認しうるスプレー間隔が設定される。あるいは、スプレー間隔のオン、オフ間隔は、スプレー間隔を一定にするように調整され、気温が上下したときにスプレー間隔内でスプレー時間を増減させてもよい。
【0079】
なお、電源装置4は、噴霧される物質の特性を検出し、当該物質の特性を示す特性情報を生成する検査回路をさらに備えてもよい。検査回路が生成した特性情報は、制御回路24に供給される。制御回路24は、この特性情報を用いて、少なくとも1つの電圧制御信号を補償する。上記電圧制御信号とは、周囲の環境条件(例えば、温度、湿度および/または大気圧、および/または噴霧量)の検出結果に基づいて生成された信号であり、出力電圧またはスプレー時間を調整するための信号である。電源装置4は、周囲の圧力(大気圧)を監視するために、圧力センサを備えていてもよい。
【0080】
多くの用途において、液体リザーバーが空になるとユーザに警告が発せられることが好ましい。好適な警告は、LED表示またはLCD表示などの視覚信号やブザーやスピーカなどの音声信号の形式である。液面情報は、上記液面センサにより提供される。発明者は、対費用効果に優れた解決方法は、既存の電流フィードバック情報を活用することであることを見出した。液体リザーバーが空のとき、静電噴霧プロセスは停止し、その結果、電流はゼロとなる。ゼロ電流状態が検知された後、マイクロプロセッサは、所定のスキームに従って反応する。例えば、マイクロプロセッサは、高電圧信号を停止し、上記の警告をユーザに与える。
【0081】
例えば、基準電極2における電流を測定することにより、噴霧される物質の、液体リザーバーにおける残液量の閾値を監視できる監視回路を電源装置4に設けてもよい。
【0082】
そのようなスキームはシンプルかつ対費用効果に優れるが、その有用性は、環境条件および電極配置によって決まる。発明者は、液体を静電噴霧プロセスに使用できないときに、ある電極構成の組み合わせ(例えば、両方の電極が鋭い先端部を有し、強力な電場を形成するなど)、および環境条件(例えば高湿)により両方の電極から大気イオンが生成されうることを見出した。電荷平衡の原理に基づき、本システムでは、生成される正および負の大気イオンの量は同じであるため、フィードバック回路に電流が存在することになる。その結果、本システムでは、リザーバーの空を検知することができない。この問題を解決するため、第2の監視システムが導入される。対費用効果に優れた第2のシステムは、液体リザーバーに浸る別の“監視”電極を有する。その電極の電圧値は、例えば、監視電極と基準電極との間に接続する分圧器を形成する2つの抵抗器の接合部における電圧を測定することによって監視される。そして、その情報は、マイクロプロセッサに供給され、そこで処理される。監視電極が液体中に侵っているときは、その電位は、スプレー電極と同じである。一方、監視電極が液体から出ているとき、その電位はスプレー電極よりも低く、実際の値は、監視電極と液体との間の大気の導電性によって決まる。監視電極の先端部は、本システムの不安定要因となりうるイオンが発生する影響を低減するために丸みを帯びた十分に小さい形状を有することが理想的である。分圧器回路は静電噴霧プロセスに比べて大量の電力を消費するため、監視電極は、噴霧プロセスの最初の段階で液面を確認するように接続されており、残りのスプレー時間には非接続となるよう設計されていることが好ましい。一般に、そのような接続は、好適なリレーにより実現される。
【0083】
便宜上、監視電極およびスプレー電極は、図3に記載されるように、一致してよい。すなわち、スプレー電極1を監視電極として利用してもよい。図3は、本発明に係る静電噴霧装置の第2の実施形態を示す。静電噴霧装置は、第1電極1および第2電極2を有する。第1電極1および第2電極2は、導電性を有し、第1電極1および第2電極2のいかなる部分からも互いが直接に見える位置関係にない範囲内で、互いが離れた位置にある。第1電極1および第2電極2は、誘電体3によって分離されている。便宜上、第1電極1および第2電極2の少なくとも何れかがロッドを備える。第2電極2は、ピンを備え、ピン電極であることが好ましい。この例において、ピン電極は、鋭く、ステンレス鋼製のピンであり、例えば、304型ステンレス鋼製のピンであり、直径は0.6mmである。ピン電極は、第1電極1および第2電極2のうちの他方の電極に対して基準電極であり、その他方の電極はスプレー電極である。スプレー電極1は、キャビティ9に貯蔵される噴霧物質8に対して電気的に作用する。ここで、噴霧される物質8は液体であり、スプレー電極1は、上記液体を貯蔵するキャビティ9と当該液体を介して電気的に接続される。
【0084】
本実施形態において、スプレー電極1は、キャビティ9内に配置される。スプレー電極1は、ステンレス製のピンであり、例えば、304型ステンレス鋼製のピンであり、直径は0.6mmである。少なくともスプレー電極1の導電部がキャビティ9内に配置されている限りにおいて、スプレー電極1は、他の材質、他の形状であってもよい。この例では、キャビティ9が充填され、装置が動作しているときに、スプレー電極1の露出された導電部の少なくとも一部が噴霧される液体8に浸るように、スプレー電極1の一部がキャビティ9内に配置される。スプレー電極1はキャビティ9の壁を貫通し、キャビティ9の外側に位置するスプレー電極9の一部は高電圧発生装置4と電通している。この例において、キャビティ9内に位置するスプレー電極1の一部は鋭い先端部を有し、その先端部は、キャビティ9の内空間に突出している。キャビティ9内に位置するスプレー電極の先端部は、他の構成であってもよい。他の構成には、鋭くはない先端部がキャビティ9内に突出する構成、あるいは、鋭くはない先端部がキャビティの内面10と同一平面上に位置する構成が含まれる。ある実施形態において、少なくとも1つの露出導電面は、スプレー電極の直径よりも大きい。例えば、導電面はプレートを備え、そのプレートは、キャビティ9の壁を貫通するスプレー電極の一部と電通する。便宜上、そのプレートは、キャビティ10の壁に埋め込まれていてよい。他の実施形態において、スプレー電極は、キャビティの内面10に沿って水平方向に配置される部分を備えてよい。この部分は、少なくとも1つの部分、好ましくは複数の部分を備えてよく、最も好ましくは、その表面の全体がキャビティと対向しているものである。これらの部分は、導電性を有し、かつ、キャビティ9の内部において露出される。そのように配置された上記部分は、全体または部分的に、キャビティの内面10と結合部を形成する。このようにして、静電噴霧装置のキャビティ9が理想的な直立状態で配置されていないとき、すなわち、傾いて配置されていてもキャビティ9内の液体8は、スプレー電極1の導電部に接触する。
【0085】
本実施形態において、キャビティ9は、開口部11を介して、キャビティ9の外部への流体の供給が可能である。開口部11は、開口部11と連通するキャビティ9内のあらゆる液体が、未使用時において、液体の表面張力によって開口部11内に保持されるように、その大きさが規定され、設けられる。この例において、開口部11は、幅狭のノズルのような細管12を有し、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PFT)、あるいは他の耐薬品性材料などのキャビティ9と同じ材質で成形される。開口部11は、他の形態であってよく、その形態には、短管、キャピラリ、オリフィスなどが含まれる。液体が噴霧される部位(スプレー部位)は、開口部11と共に配置されることが好ましい。スプレー部位は、誘電体3によって基準電極2から分離されていることが好ましい。スプレー部位も、基準電極2と互いが直接に見える位置関係にないことが特に好ましい。
【0086】
キャビティ9の内面10は、特別の処理を必要としない。しかしながら、キャビティ9の内面10は、ほぼ非水性の液体が噴霧されるのであれば、撥油処理を施されていることが望ましく、ほぼ水性の液体が噴霧されるのであれば、疎水処理を施されていることが望ましいであろう。その場合、スプレー電極1の導電部が露出されているのであれば、スプレー電極1にも処理が施されていてもよい。
【0087】
また、キャビティ9がリザーバー13と流体の授受が可能であることにより、使用中に、静電噴霧装置から液体が噴霧されるに従い、リザーバー13からキャビティ9に流体が流れ込む構成としてもよい。例えば、静電噴霧の1回の動作において噴霧される容量の物質が、リザーバー13に残っている物質によってキャビティ9内に補填される構成としてもよい。キャビティ9は、リザーバー13に取り付けられてもよい。キャビティ9および任意に設けられるリザーバー13が大気に対して直接的に開放されていないのであれば、液体が静電噴霧装置から噴霧されるときに、ポンプ、組立式リザーバー(米国特許出願11/582674の組立式リザーバーなど)、ウィックシステム、エア抜きシステムが必要になる。これは、消費された液体の容積分を補填するためであり、静電噴霧装置による液体の長時間噴霧が真空力によって妨げられることを回避するためである。長時間の液体噴霧とは、例えば、連続して1時間以上である。消費された液体の容積を補うシステムは公知である。
【0088】
図3に示すように、ユーザが静電噴霧装置を使用するために当該静電噴霧装置を保持した状態において、リザーバー13は、キャビティ9よりも鉛直上方に位置している。そのため、噴霧時に、噴霧される物質が重力によってリザーバー13からキャビティ9へ移動する。
【0089】
また、噴霧される物質をリザーバー13からキャビティ9へ供給するポンプ供給手段がさらに備えられていてもよい。このポンプ供給手段は、好ましくは電気的に作動するものであり、例えば、電動ポンプである。
【0090】
図4は、本発明に係る静電噴霧装置の第3の実施形態を示す。本実施形態では、第1電極1は、キャビティ9の壁を貫通している。そして、第1電極1は、(i)キャビティ内に配置され、キャビティ9内で液体8と電通するように露出される少なくとも1つの部分と、(ii)キャビティ9の外部に配置され、スプレー部位5に隣接して配置される部分と、(iii)キャビティ9の外部に配置され、電源装置4に電通する部分と、を備えることを特徴としている。スプレー部位5は、キャビティ9の外側開口部に位置することを特徴とする。この例において、キャビティ9の開口は、キャビティ9からの突出部として実現されている。第1電極1はスプレー電極であり、第2電極2は基準電極である。スプレー電極1および基準電極2は、互いに離れた位置にある。言い換えれば、スプレー電極1および基準電極2は、互いが直接に見える位置関係にはない。
【0091】
図5は、本発明に係る静電噴霧装置の第4の実施形態を示し、本発明に係るスプレー電極(第1電極)1、基準電極(第2電極)2、キャビティ9、電源装置4を示す。この例において、スプレー電極1は、キャピラリを含む。スプレー電極1としてのキャピラリは、導電性を有し、キャビティ9に貯蔵された噴霧される物質に対して流体(液体)を介して電気的に作用する。スプレー電極1のキャピラリおよび基準電極2は、電源装置4と電通する。
【0092】
噴霧される物質は、毛管現象により、キャピラリの先端部(スプレー部位)まで移動し、上述の実施形態と同様の原理により、当該先端部から静電噴霧される。
【0093】
図6は、本発明に係る静電噴霧装置の第5の実施形態を示す。本実施例において、第1電極1はキャビティ(第1リザーバー)9aと通じており、第2電極2はキャビティ(第2リザーバー)9bと通じている。そして、第1電極1および第2電極2は、電源装置4と電通している。第1キャビティは開口部11aを備え、その開口部11aは、外側末端部を有する細管を有する。第1キャビティ9aの細管は、スプレー部位5a(第1スプレー部位)を有する。同様に、第2キャビティ9bは開口部11bを備え、その開口部11bは、外側末端部を有する細管を有する。第2キャビティ9bの細管は、スプレー部位5b(第2スプレー部位)を有する。使用中(噴霧時)に、第1キャビティ9aおよび第2キャビティ9bの何れかに噴霧される物質が貯蔵される。しかしながら、第1キャビティ9aおよび第2キャビティ9bの両方に、同じ噴霧物質、または異なる噴霧物質(第2の物質)が貯蔵されてもよい。少なくともキャビティの一方には噴霧される物質として液体があることが好ましい。
【0094】
すなわち、第1電極1および第1スプレー部位5aは、第1キャビティ(第1リザーバー)9aに貯蔵された噴霧物質(液体)を介して電気的に接続されるとともに、当該噴霧物質に対して電気的に作用する。また、第2電極および第2スプレー部位5bは、第2キャビティ(第2リザーバー)9bに貯蔵された第2の噴霧物質を介して電気的に接続されるとともに、当該第2の噴霧物質に対して電気的に作用する。
【0095】
図6に係る電荷平衡装置において、第1電極1および第2電極2の何れかの電気的特性が測定され、スプレー部位5aまたはスプレー部位5bが監視される。例えば、第1電極1および第2電極2の何れかの電流が測定され、スプレー部位5aまたはスプレー部位5bでのスプレー電流が監視される。しかしながら、現実には、電源のマイクロプロセッサのアース端子に最も近い電位にある、第1電極1および第2電極2の電流が測定される。このようにして、高電圧信号の低電流の測定におけるノイズが避けられる。
【0096】
また、第1電極1および第2電極2は、1つの電源によって電気的にバイアスをかけられていてもよい。
【0097】
本願発明者は、本発明に係る静電噴霧装置によって、Atrium Innovation Ltd社(Pipe House, Lupton Road, Wallingford, United Kingdom)のフレンチ・ラベンダーの芳香剤を30日間連続して噴霧することに成功した。その静電噴霧装置は、第1電極と第2電極との間に印加する高電圧が約5.2kV+/−0.2kVであり、ON/OFF時間について12.5%のデューティーサイクルで動作した。本発明の実施形態に係る装置により静電噴霧を行うために他の数値を使うこともできるであろう。なお、その使用される数値は、例えば、環境要因、装置構成、噴霧される物質によって決まる。好適な液体には、20℃における抵抗が1×10−1×10Ω・mであり、表面張力が20−40mN・m−1の範囲の液体が含まれる。
【0098】
噴霧される物質には、芳香剤、殺虫剤、薬品などの活性成分や、これら活性成分を組み合わせたものが含まれる。
【0099】
なお、本発明は、次のようにも表現できる。すなわち、本発明の静電噴霧装置は、物質をスプレーし、静電噴霧される物質と使用時に通じるように配置されるスプレー部位と、上記スプレー部位と通じるスプレー電極と、基準電極と、電源装置とを備え、上記基準電極は、上記スプレー電極と当該基準電極との間に電圧が印加されたときに、上記静電噴霧される物質が上記スプレー部位から噴霧されるように配置されており、上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電圧を印加し、上記スプレー部位の電気的特性を監視できるとともに、監視された上記スプレー部位の電気的特性および所定の指標に基づいて上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される電圧を調節することができ、さらに、上記スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の極性の電荷が上記基準電極において生成されることにより平衡化されるように、上記スプレー電極および上記基準電極が配置されている。
【0100】
また、第1スプレー部位において噴霧される物質の極性とは逆の極性の電荷を有する物質を噴霧する第2スプレー部位をさらに備え、上記基準電極は、上記第2スプレー部位とさらに通じる電極であり、上記第1スプレー部位は、上記スプレー電極によって第1の極性に帯電されており、上記第2スプレー部位は、上記さらに通じる電極によって上記第1の極性とは逆の極性に帯電されており、上記スプレー電極および上記さらに通じる電極は、1つの電源によって電気的な偏倚をかけていることが好ましい。
【0101】
また、第2の物質をスプレーし、静電噴霧される第2の物質と使用時に通じるように配置される第2スプレー部位をさらに備え、上記基準電極は、上記第2スプレー部位と通じるように配置されており、使用時に上記基準電極と上記スプレー電極との間に電圧が印加されたときに、第1スプレー部位から物質が噴霧され、上記第2スプレー部位から上記第2の物質が噴霧されることが好ましい。
【0102】
また、上記噴霧される物質を貯蔵する第1リザーバーと、上記噴霧される第2の物質を貯蔵する第2リザーバーとをさらに備え、上記スプレー電極および上記スプレー部位は、上記第1リザーバーに貯蔵された上記噴霧される物質と流体を介して通じており、上記基準電極および上記第2スプレー部位は、上記第2リザーバーに貯蔵された上記噴霧される第2の物質と流体を介して通じていることが好ましい。
【0103】
また、本発明の静電噴霧装置は、物質を噴霧する第1スプレー部位および第2スプレー部位と、上記第1スプレー部位と通じている第1電極と、上記第2スプレー部位と通じている第2電極と、電源装置とを備え、上記第1スプレー部位および上記第2スプレー部位は、第1および第2リザーバーにそれぞれ貯蔵された、噴霧される物質と使用時に通じるように配置されており、上記第1および第2電極間に電圧が印加されたときに、上記第1リザーバー内の噴霧される物質が上記第1スプレー部位から噴霧され、上記第2リザーバー内の噴霧される物質が上記第2スプレー部位から噴霧され、上記電源装置は、上記第1電極と上記第2電極との間に電圧を印加することができ、上記第1または第2スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の電荷が上記第1または第2スプレー部位においてそれぞれ生成されることにより平衡化されるように、上記第1および第2電極が配置されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電噴霧される物質に対して電気的に作用することにより、当該物質を静電噴霧するスプレー部位と、
上記スプレー部位と電気的に接続可能なスプレー電極と、基準電極と、電源装置とを備え、
上記基準電極は、上記スプレー電極と当該基準電極との間に電圧が印加されたときに、上記静電噴霧される物質が上記スプレー部位から噴霧されるように配置されており、
上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電圧を印加し、上記スプレー部位の電気的特性を監視できるとともに、監視された上記スプレー部位の電気的特性に基づいて上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される電圧を調節することができ、
さらに、上記スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の極性の電荷が上記基準電極において生成されることにより平衡化されるように、上記スプレー電極および上記基準電極が配置されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項2】
上記電源装置は、上記基準電極における電流を測定することにより上記スプレー部位における電流を監視することを特徴とする請求項1に記載の静電噴霧装置。
【請求項3】
上記電源装置は、変流器によって上記基準電極における電流を測定することを特徴とする請求項2に記載の静電噴霧装置。
【請求項4】
上記電源装置は、上記基準電極に直列に接続された抵抗器における電圧を測定することによって、上記基準電極における電流を測定することを特徴とする請求項2に記載の静電噴霧装置。
【請求項5】
上記電源装置は、主電源または1つ以上のバッテリーを含む電源からの電圧を印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項6】
上記電源装置は、当該電源装置によって上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される上記電圧を供給する高電圧発生装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項7】
上記高電圧発生装置は、発振回路、コンバータおよび整流回路を備えていることを特徴とする請求項6に記載の静電噴霧装置。
【請求項8】
上記電源装置は、さらに、上記発振回路における発振の大きさ、周波数またはデューティーサイクルを制御することにより印加電圧を調節する制御手段を備えていることを特徴とする請求項7に記載の静電噴霧装置。
【請求項9】
上記電源装置は、さらに、所定の周波数で上記整流回路に交流バーストを発生させることにより印加電圧を調節し、上記交流バーストの継続時間および/またはデューティーサイクルによって上記印加電圧の値が決定されることを特徴とする請求項7または8に記載の静電噴霧装置。
【請求項10】
バーストを印加する継続時間は、マイクロプロセッサによって供給されるパルス幅変調信号を用いることで制御され、
上記マイクロプロセッサは、アナログ/デジタル変換器を介して電流および電圧測定を行うことを特徴とする請求項9に記載の静電噴霧装置。
【請求項11】
荷電粒子の少なくとも一部が上記基準電極に到達しないように、上記スプレー部位から噴霧される物質を、上記静電噴霧装置から遠ざける方向制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項12】
上記方向制御手段は、上記スプレー部位の近傍に配置された誘電体をさらに備え、噴霧時に、噴霧される物質の極性と同じ電荷が、上記誘電体の側面における上記スプレー部位の近傍に蓄積され、その電荷は、上記スプレー部位から噴霧される物質を、上記静電噴霧装置から遠ざけることを特徴とする請求項11に記載の静電噴霧装置。
【請求項13】
上記誘電体は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の静電噴霧装置。
【請求項14】
上記誘電体は、さらに、上記スプレー部位と上記基準電極とを結ぶ線分を遮るように配置されていることを特徴とする請求項12または13に記載の静電噴霧装置。
【請求項15】
上記方向制御手段は、上記スプレー部位から噴霧された荷電物質の動きを偏向させる磁界を発生させる磁界発生器を備えることを特徴とする請求項11に記載の静電噴霧装置。
【請求項16】
上記方向制御手段は、上記スプレー部位から噴霧された荷電物質の動きを偏向させる気流を発生させるために配置された気流発生手段を備えていることを特徴とする請求項11に記載の静電噴霧装置。
【請求項17】
上記電源装置は、正および負の電荷を有する物質が交互に上記スプレー部位から噴霧されるように、上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される電圧の極性を周期的に変化させることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項18】
噴霧される物質は液体であり、
上記スプレー電極と上記基準電極との間に電荷が印加されていないときには、上記噴霧される物質の少なくとも一部が上記液体の表面張力によって上記スプレー部位に保持されるように、上記スプレー部位の寸法が規定されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項19】
上記スプレー電極は、上記スプレー部位の位置および当該スプレー部位と隣接する位置には配置されていないことを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項20】
噴霧される物質を保持するキャビティをさらに備え、
上記スプレー電極の少なくとも一部が上記キャビティ内に配置されていることを特徴とする請求項19に記載の静電噴霧装置。
【請求項21】
上記スプレー部位は、上記キャビティの突出部であり、
上記突出部は、キャピラリ、ノズルまたは開口部を備える導管を備えていることを特徴とする請求項20に記載の静電噴霧装置。
【請求項22】
上記スプレー電極は、上記噴霧される物質を介して上記スプレー部位と電気的に接続されることを特徴とする請求項19〜21のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項23】
上記スプレー電極は、上記スプレー部位に配置されるか、または、当該スプレー部位に隣接されることにより、当該スプレー部位と電気的に接続されることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項24】
上記スプレー電極は、外側末端部を有する導管を備え、
上記スプレー部位は、上記外側末端部における先端を含んでいることを特徴とする請求項23に記載の静電噴霧装置。
【請求項25】
上記導管は、キャビティと通じており、
上記キャビティは、リザーバーと通じるように配置されており、
噴霧時に、噴霧される物質が上記リザーバーから上記キャビティへ送られることを特徴とする請求項24に記載の静電噴霧装置。
【請求項26】
上記リザーバーは、噴霧時に、噴霧される物質が重力によって上記キャビティに移動するように配置されていることを特徴とする請求項25に記載の静電噴霧装置。
【請求項27】
上記リザーバーおよび上記キャビティは、上記静電噴霧の1回の動作において噴霧される物質の容量が、上記リザーバーに残っている物質によって上記キャビティ内に補填されることを特徴とする請求項26に記載の静電噴霧装置。
【請求項28】
噴霧される物質を上記リザーバーから上記キャビティへ供給するポンプ供給手段をさらに備えることを特徴とする請求項26に記載の静電噴霧装置。
【請求項29】
上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される上記電圧を監視する電圧監視手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜28のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項30】
上記スプレー電極と上記基準電極との間に接続され、分圧器を形成する2つの抵抗器をさらに備え、
上記電圧監視手段は、上記2つの抵抗器の接合部における電圧を測定することを特徴とする請求項29に記載の静電噴霧装置。
【請求項31】
上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電圧を印加する高電圧発生装置をさらに備え、
上記電圧監視手段は、高電圧発生回路内のノードにおいて生成された電圧を測定することを特徴とする請求項29に記載の静電噴霧装置。
【請求項32】
上記電圧監視手段は、高電圧発生回路からの電力消費に関する情報とともに、上記スプレー部位におけるスプレー電流を監視することにより間接的に上記電圧を監視することを特徴とする請求項29に記載の静電噴霧装置。
【請求項33】
上記電源装置は、制御回路をさらに備え、
上記制御回路は、少なくとも1つの電圧制御信号を供給するマイクロプロセッサを備え、
上記電圧制御信号は、上記電源装置によって上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される電圧の特性を決定するものであり、
上記マイクロプロセッサは、上記電源装置によって監視された電流または電圧の値を処理することにより上記電圧制御信号を供給することを特徴とする請求項1〜32のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項34】
上記制御回路による処理は、周囲の環境条件に関する少なくとも1つの電圧制御信号を補償するように設定されており、
上記環境条件には、温度、湿度および/または大気圧、および/または噴霧量が含まれることを特徴とする請求項33に記載の静電噴霧装置。
【請求項35】
上記電源装置は、周囲の温度を監視する温度センサをさらに備え、
その温度情報は、上記制御回路に供給され、上記少なくとも1つの電圧制御信号を補償するために使用されることを特徴とする請求項34に記載の静電噴霧装置。
【請求項36】
上記電源装置は、周囲の湿度を監視する湿度センサをさらに備え、
その湿度情報は、上記制御回路に供給され、上記少なくとも1つの電圧制御信号を補償するために使用されることを特徴とする請求項34または35に記載の静電噴霧装置。
【請求項37】
上記電源装置は、周囲の圧力を監視する圧力センサをさらに備え、
その圧力情報は、上記制御回路に供給され、上記少なくとも1つの電圧制御信号を補償するために使用されることを特徴とする請求項34〜36のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項38】
上記電源装置は、噴霧される物質の特性を検出し、上記噴霧される物質の特性に関する情報を決定する検査回路をさらに備え、
上記噴霧される物質の特性に関する決定された情報は、上記制御回路に供給され、上記少なくとも1つの電圧制御信号を補償するために使用されることを特徴とする請求項34〜37のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項39】
上記制御回路は、上記電源装置によって印加される電圧の間隔、デューティーサイクル、振幅またはオンーオフ時間のいずれか、またはその組み合わせを変化させることにより補償を行うことができることを特徴とする請求項34〜38のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項40】
上記電源装置は、上記基準電極における電流を測定することにより、上記噴霧される物質の残液量の閾値を監視できる監視回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜39のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項41】
第1スプレー部位において噴霧される物質の極性とは逆の極性の電荷を有する物質を噴霧する第2スプレー部位をさらに備え、
上記基準電極は、上記第2スプレー部位と電気的に接続され、
上記第1スプレー部位は、上記スプレー電極によって第1の極性に帯電されており、
上記第2スプレー部位は、上記基準電極によって上記第1の極性とは逆の極性に帯電されており、
上記スプレー電極および上記基準電極は、1つの電源によって電気的にバイアスをかけられていることを特徴とする請求項1〜40のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項42】
静電噴霧される第2の物質に対して電気的に作用することにより、当該第2の物質を静電噴霧する第2スプレー部位をさらに備え、
上記基準電極は、上記第2スプレー部位と電気的に接続可能に配置されており、噴霧時に上記基準電極と上記スプレー電極との間に電圧が印加されたときに、第1スプレー部位から物質が噴霧され、上記第2スプレー部位から上記第2の物質が噴霧されることを特徴とする請求項1〜40のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項43】
上記噴霧される物質を貯蔵する第1リザーバーと、
上記噴霧される第2の物質を貯蔵する第2リザーバーとをさらに備え、
上記スプレー電極および上記スプレー部位は、上記第1リザーバーに貯蔵された上記噴霧される物質に対して流体を介して電気的に作用し、
上記基準電極および上記第2スプレー部位は、上記第2リザーバーに貯蔵された上記噴霧される第2の物質に対して流体を介して電気的に作用することを特徴とする請求項42に記載の静電噴霧装置。
【請求項44】
物質を噴霧する第1スプレー部位および第2スプレー部位と、
上記第1スプレー部位と電気的に接続される第1電極と、
上記第2スプレー部位と電気的に接続される第2電極と、
電源装置とを備え、
上記第1スプレー部位および上記第2スプレー部位は、第1および第2リザーバーにそれぞれ貯蔵された、噴霧される物質に対して噴霧時に電気的に作用するように配置されており、
上記第1および第2電極間に電圧が印加されたときに、上記第1リザーバー内の噴霧される物質が上記第1スプレー部位から噴霧され、上記第2リザーバー内の噴霧される物質が上記第2スプレー部位から噴霧され、
上記電源装置は、上記第1電極と上記第2電極との間に電圧を印加することができ、
上記第1または第2スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の電荷が上記第1または第2スプレー部位においてそれぞれ生成されることにより平衡化されるように、上記第1および第2電極が配置されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項45】
上記電源装置は、さらに、上記第1または第2スプレー部位の電気特性を監視することができるとともに、監視された上記第1および上記第2スプレー部位の電気特性および所定の指標に従って上記第1電極と上記第2電極との間にそれぞれ印加される第1または第2電圧を調節することを特徴とする請求項44に記載の静電噴霧装置。
【請求項46】
上記電源装置は、上記第1または第2電極における電流をそれぞれ測定することにより上記第1または第2スプレー部位における電流を監視することを特徴とする請求項44または45に記載の静電噴霧装置。
【請求項47】
物質をスプレーし、静電噴霧される物質に対して噴霧時に電気的に作用するように配置されたスプレー部位と、
上記スプレー部位と電気的に接続されるスプレー電極と、基準電極と、電源装置とを備え、
上記基準電極は、上記スプレー電極と当該基準電極との間に電圧が印加されたときに、上記静電噴霧される物質が上記スプレー部位から噴霧されるように配置されており、
上記電源装置は、上記スプレー電極と上記基準電極との間に電圧を印加し、間接的に上記スプレー部位におけるスプレー電流を監視できるとともに、上記スプレー電流が閾値よりも低下したことを検出し、
さらに、上記スプレー部位から噴霧される物質の電荷が、少なくとも同量の逆の極性の電荷が上記基準電極において生成されることにより平衡化されるように、上記スプレー電極および上記基準電極が配置されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項48】
上記スプレー部位における上記スプレー電流は、上記基準電極における電流を測定することにより間接的に監視されることを特徴とする請求項47に記載の静電噴霧装置。
【請求項49】
使用時に少なくとも一部を、噴霧される物質の中に浸す監視電極をさらに備え、
上記スプレー電流は、上記監視電極の電圧を測定することによって間接的に監視されることを特徴とする請求項47に記載の静電噴霧装置。
【請求項50】
上記監視電極と上記基準電極との間に接続され、分圧器を形成する2つの抵抗器をさらに備え、
上記監視電極の電圧は、上記2つの抵抗器の接合部における電圧を測定することによって測定されることを特徴とする請求項49に記載の静電噴霧装置。
【請求項51】
上記監視電極は、上記電極が上記噴霧される物質内に浸っているかどうかに応じて電圧レベルが変化するように形成されていることを特徴とする請求項49または50に記載の静電噴霧装置。
【請求項52】
上記電源装置は、間接的に監視された上記スプレー部位の電気特定および所定の指標に従って上記スプレー電極と上記基準電極との間に印加される電圧を調節することを特徴とする請求項47〜51のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【請求項53】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の静電噴霧装置を用いて静電噴霧を行うことを特徴とする方法。
【請求項54】
スプレー部位の電気的特性を監視する工程と、
上記スプレー電極または第1電極と上記基準電極または第2電極との間に印加される電圧を調節する工程とを含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27832(P2013−27832A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166816(P2011−166816)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】