説明

静電型スピーカ

【課題】静電型スピーカから人体へ流れる電流を抑える。
【解決手段】静電型スピーカ1には、変圧器50、外部から音響信号が入力される入力部60、振動体10に対して直流バイアスを与えるバイアス電源70を備えた駆動部100が接続される。一つの電極20U,20Lには、一つの抵抗器が接続されており、電極20Uには抵抗器RUが接続され、電極20Lには抵抗器RLが接続されている。各抵抗器RUにおいて電極20Uに接続されている側と反対側の端子は、一点で接続されて変圧器50の出力側の端子T1に接続される。また、各抵抗器RLにおいて電極20Lに接続されている側と反対側の端子は、一点で接続されて変圧器50の出力側のもう一方の端子T2に接続される。また、振動体10は、抵抗器Rcを介してバイアス電源70に接続される。変圧器50の中点の端子T3は、グランドに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟性があり、折ったり曲げたりすることの可能な静電型スピーカとして、例えば、特許文献1に開示された静電型スピーカがある。この静電型スピーカは、アルミニウムが蒸着されたポリエステルのフィルムを、導電性を有する糸により織られた2枚の布の間に挟み、フィルムと布との間にエステルウールが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−54154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたスピーカにおいては、電極として機能する布が露出しているため、この布が人体に触れやすくなっており、布に人体が触れると電流がスピーカから人体へ流れて感電する虞がある。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、静電型スピーカから人体へ流れる電流を抑える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、導電性を有するシート状の振動体と、前記振動体と対向し、互いに間隔をあけて配置された複数の第1電極と、前記振動体と前記第1電極との間に位置して前記振動体と前記第1電極の間隔をあける第1部材と、前記振動体を挟んで前記第1電極と対向し、互いに間隔をあけて配置された複数の第2電極と、前記振動体と前記第2電極との間に位置して前記振動体と前記第2電極の間隔をあける第2部材と、前記複数の第1電極毎に設けられ、前記第1電極に接続されて音響信号が供給され、前記音響信号の電圧値が予め定められた電圧値の時に前記第1電極に流れる電流の電流値を予め定められた値未満にする複数の抵抗器と、前記複数の第2電極毎に設けられ、前記第2電極に接続されて音響信号が供給され、前記音響信号の電圧値が予め定められた電圧値の時に前記第2電極に流れる電流の電流値を予め定められた値未満にする複数の抵抗器と、を有する静電型スピーカを提供する。
【0007】
本発明において、前記複数の第1電極は、絶縁物で覆われ、前記複数の第2電極は、絶縁物で覆われている構成でもよい。
また、本発明において、前記第1電極に接続されている複数の抵抗器は、前記第1電極と接続されている側と反対側の端子が互いに接続され、前記第2電極に接続されている複数の抵抗器は、前記第2電極と接続されている側と反対側の端子が互いに接続されている構成でもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、静電型スピーカから人体へ流れる電流を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る静電型スピーカ1の外観図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】静電型スピーカ1の分解図。
【図4】静電型スピーカ1の電気的構成を示した図。
【図5】本発明の変形例に係る静電型スピーカ1の側面の拡大図。
【図6】本発明の変形例に係る静電型スピーカ1の側面の拡大図。
【図7】本発明の変形例に係る電極20UAの下面図。
【図8】本発明の変形例に係る静電型スピーカ1の上面図。
【図9】変形例に係る静電型スピーカ1の分解図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る静電型スピーカ1の外観図、図2は、静電型スピーカ1のA−A線断面図である。また図3は、静電型スピーカ1の分解図、図4は、静電型スピーカ1の電気的構成を示した図である。なお、図においては、直交するx軸、y軸およびz軸で方向を示しており、静電型スピーカ1を正面から見たときの左右方向をx軸の方向、奥行き方向をy軸の方向、高さ方向をz軸の方向としている。また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは図面の裏から表に向かう矢印を意味するものとする。また、図中、「○」の中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0011】
図に示したように、静電型スピーカ1は、振動体10、n個の電極20U、n個の電極20L(nは整数)、および弾性部材30U,30Lで構成されている(図においてはn=20)。なお、本実施形態においては、電極20Uと電極20Lの構成は同じであり、弾性部材30U(第1部材)と弾性部材30L(第2部材)の構成は同じである。このため、各部材において両者を区別する必要が特に無い場合は、「L」および「U」などの記載を省略する。また、図中の振動体、電極等の各構成要素の寸法は、構成要素の形状を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。
【0012】
(静電型スピーカ1の各部の構成)
まず、静電型スピーカ1を構成する各部について説明する。z軸上の点から見て矩形の振動体10は、PET(polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)またはPP(polypropylene:ポリプロピレン)などの絶縁性および柔軟性を有する合成樹脂のフィルム(絶縁層)を基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜(導電層)を形成したシート状の構成となっている。なお、本実施形態においては、導電膜は、フィルムの一方の面に形成されているが、フィルムの両面に形成されていてもよい。
【0013】
弾性部材30は、本実施形態においては不織布であって電気を通さず空気および音の通過が可能となっており、その形状はz軸上の点から見て矩形となっている。また、弾性部材30は、弾性を有しており、外部から力を加えられると変形し、外部から加えられた力が取り除かれると元の形状に戻る。なお、弾性部材30は、絶縁性があり、音が透過し、弾性がある部材であればよく、中綿に熱を加えて圧縮したもの、織られた布、合成樹脂を海綿状にしたものなどであってもよい。なお、本実施形態においては、弾性部材30Uと弾性部材30Lの寸法は同じとなっている。また、弾性部材30は、左右方向の幅(x軸方向の幅)が振動体10の左右方向の幅より広く、奥行き方向の幅(y軸方向の幅)が振動体10の奥行き方向の幅より広くなっている。
【0014】
電極20は、PETまたはPPなどの絶縁性を有する合成樹脂のフィルム(絶縁層)を基材とし、フィルムの一方の面に導電性のある金属を蒸着して導電膜(導電層)を形成した構成となっている。各電極20は、z軸上の点から見て矩形となっており、左右方向の幅はいずれも同じであり、また、奥行き方向の幅も同じとなっている。また、電極20は、表面から裏面に貫通する孔を複数有しており、空気および音の通過が可能となっている。なお、図面においては、この孔の図示を省略している。電極20Uの個数と、電極20Lの個数は同じとなっている。電極20Uの個数と、電極20Lの個数については後述する。
【0015】
(静電型スピーカ1の構造)
次に静電型スピーカ1の構造について説明する。静電型スピーカ1においては、振動体10は、弾性部材30Uの下面と弾性部材30Lの上面との間に配置されている。なお、振動体10は、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて弾性部材30Uと弾性部材30Lに接着されており、接着剤が塗布された部分より内側は弾性部材30Uと弾性部材30Lに固着されていない状態となっている。
【0016】
電極20Uは、奥行き方向(y軸方向)へ予め定められた間隔を開けて弾性部材30Uの上面に並べられ、弾性部材30Uに接着されている。また、電極20Lは、弾性部材30Lの下面側において奥行き方向へ予め定められた間隔を開けて並べられ、弾性部材30Lに接着されている。なお、電極20Uは、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて弾性部材30Uに接着されており、接着剤が塗布された部分より内側は弾性部材30Uに固着されていない状態となっている。また、電極20Lも、左右方向の縁と奥行き方向の縁から内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されて弾性部材30Lに接着されており、接着剤が塗布された部分より内側は弾性部材30Lに固着されていない状態となっている。また、電極20Uは、導電膜のある側が弾性部材30Uに接しており、電極20Lは、導電膜のある側が弾性部材30Lに接している。
【0017】
なお、電極20Uと電極20Lは、一の電極20Uと一の電極20Lが振動体10を挟んで対向するように配置されている。具体的には、電極20Uと電極20Lは、z軸上の点から見ると左右方向の位置と奥行き方向の位置が同じとなっている。
【0018】
(静電型スピーカ1の電気的構成)
次に、静電型スピーカ1の電気的構成について説明する。
図4に示したように、静電型スピーカ1には、変圧器50、外部から音響信号が入力される入力部60、振動体10に対して直流バイアスを与えるバイアス電源70を備えた駆動部100が接続される。また、静電型スピーカ1は、複数の抵抗器を有している(抵抗器の抵抗値については後述する)。
一つの電極20には、一つの抵抗器が接続されており、電極20Uには抵抗器RUが接続され、電極20Lには抵抗器RLが接続される。各抵抗器RUにおいて電極20Uに接続されている側と反対側の端子は、一点で接続されて変圧器50の出力側の端子T1に接続される。また、各抵抗器RLにおいて電極20Lに接続されている側と反対側の端子は、一点で接続されて変圧器50の出力側のもう一方の端子T2に接続される。
また、振動体10は、抵抗器Rcを介してバイアス電源70に接続される。変圧器50の中点の端子T3は、グランドに接続される。
【0019】
この構成においては、静電型スピーカ1は、プッシュプル型の静電型スピーカとして機能する。入力部60に音響信号が入力されると、入力された音響信号に応じた電圧が変圧器50から抵抗器RU,RLを介して電極20U,20Lに印加される。具体的には、端子T1から出力された信号は、抵抗器RUに供給され、各抵抗器RUから電極20Uへ供給される。また、端子T2から出力された信号は、抵抗器RLに供給され、各抵抗器RLから電極20Lへ供給される。
そして、印加された電圧によって電極20Uの導電膜と、電極20Lの導電膜との間に電位差が生じると、振動体10の導電膜には電極20Uと電極20Lのいずれかの側へ引き寄せられるような静電力が働き、振動体10は、この静電力に応じて電極20Uと電極20Lのいずれかの方向に変位する。そして、音響信号に応じて振動体10の変位方向や変位量が逐次変わることによって振動体10が振動し、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音が振動体10から発生する。なお、発生した音は、少なくとも一方の弾性部材30および電極20を通り抜けて静電型スピーカ1の外部に放射される。
【0020】
なお、本実施形態によれば、変圧器50から電極20に流れる電流は抵抗器RU,RLで制限されるため、静電型スピーカから人体へ流れる電流を抑えることができる。また、本実施形態においては、複数の電極20Uと電極20Lの対に同位相で音響信号が供給されるため、振動体10全体を振動させることができる。また、本実施形態においては、抵抗器RUは一点で接続され、抵抗器RLも一点で接続されるため、変圧器50に容易に接続することができる。
【0021】
(抵抗器RU,抵抗器RLの抵抗値)
電極20は、静電型スピーカ1において外部に面しているため、人体が触れると人体へ電流が流れて感電する虞がある。そこで、本発明においては、電極に人体が触れても安全なように、抵抗器RUと抵抗器RLで電極20に流れる電流を制限する。
【0022】
まず、JIS C 6065(オーディオ,ビデオ及び類似の電子機器−安全性要求事項)に鑑み、電極20が危険な活電部とならないようにするために、電極20に流れる電流のピーク値を予め0.7 mAに設定した場合について説明する。
ここで、各電極20に印加される予め定められた最大電圧(実効値)を100 Vとし、音響信号が供給されて通常の動作をしている状態において、最大電圧の1/√8の電圧が各電極20に印加される状態を想定する。抵抗値は、電圧/電流で求められるため、抵抗値=(100 V/√8)/0.7 mAで求められ、各抵抗器RUと各抵抗器RLの抵抗値は、約51 kΩとなる。なお、電極20に印加される最大電圧(実効値)を予め200 Vとした場合には、抵抗値は、抵抗値=(200 V/√8)/0.7 mAで求められ、各抵抗器RUと各抵抗器RLの抵抗値は、約101 kΩとなる。
【0023】
次に、JIS C 6065に鑑み、故障状態で流れてはいけない電流値として、電極20に流れる電流のピーク値を予め3.5 mAに設定した場合について説明する。ここで、各電極20に印加される最大電圧(実効値)を100 Vとし、音響信号が供給されて通常の動作をしている状態において、最大電圧の1/√8の電圧が各電極20に印加される状態を想定する。抵抗値は、抵抗値=(100 V/√8)/3.5 mAで求められ、各抵抗器RUと各抵抗器RLの抵抗値は、約10 kΩとなる。なお、電極20に印加される最大電圧(実効値)を200 Vとした場合には、抵抗値は、抵抗値=(200 V/√8)/3.5 mAで求められ、各抵抗器RUと各抵抗器RLの抵抗値は、約20 kΩとなる。
【0024】
(電極20の数)
次に、電極20Uの個数と電極20Lの個数について説明する。
静電型スピーカ1においては、電極20に接続される抵抗器と電極20の静電容量により、抵抗とコンデンサーの直列回路(RC回路)が形成される。このため、静電型スピーカ1においては、RC回路の時定数がスピーカとして所望の周波数特性を満足するように静電容量を設定する。
例えば、電極20に印加される最大電圧(実効値)を200 Vとし、上述した演算により抵抗器の抵抗値を101 kΩとした場合を想定する。RC回路のカットオフ周波数f0は、f0=1/2πRCで得られるため、10 kHzをカットオフ周波数とすると、10 kHz=1/(2π×101 kΩ×C)となる。この式から一つの電極20の静電容量Cを求めると、Cは約158 pFとなる。ここで、1 m当たりの静電容量が1.2×10 pFである電極がある場合、この1 mの電極を分割して複数の電極20Uを形成する場合には、1つの電極の静電容量が158 pFとなるように、1 mの電極を分割すればよい。つまり、1.2×10 pF/158 pF=76となり、1 m当たりの静電容量が1.2×10pFである電極を分割して76個の電極20Uを形成し、同様に1 m当たりの静電容量が1.2×10 pFである電極を分割して76個の電極20Lを形成する。
【0025】
なお、上記カットオフ周波数は一例であり、静電型スピーカ1に要求される性能によってカットオフ周波数は変更される。また、分割前の電極の静電容量についても一例であり、上記の数値に限定されるものではない。
【0026】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0027】
電極20Uと電極20Lは、隣接する電極同士が電気的に接続されないように、電極20同士の間に絶縁物を配置するようにしてもよい。図5は、本変形例に係る静電型スピーカ1の側面の一部を拡大した図である。図5に示したように、電極20と電極20の間に弾性部材30と同じ素材の弾性部材35を配置してもよい。
【0028】
本発明においては、電極20において導電膜の全面を、絶縁性を有する合成樹脂のフィルムで覆い、全面を絶縁物のフィルムで覆われた電極20を弾性部材30の表面に配置するようにしてもよい。
また、本発明においては、静電型スピーカ1の高さ方向の外面に絶縁物を配置するようにしてもよい。図6は、本変形例に係る静電型スピーカ1の側面の一部を拡大した図である。図6に示したように、静電型スピーカ1の外面を、弾性部材30と同じ素材の弾性部材36で覆うようにしてもよい。
これらの構成によれば、電極20の導電膜に人体が触れる可能性がさらに低くなるので、人体が感電する可能性をさらに低くすることができる。
【0029】
上述した実施形態においては、一の電極20は、一のフィルム上に導電膜が形成された構成となっているが、電極20の構成は、この構成に限定されるものではない。図7は、本変形例に係る電極20UAの下面図である。図7に示したように、電極20UAにおいては、PETまたはPPなどの絶縁性を有する合成樹脂のフィルム21の一方の面に導電性のある金属を蒸着し、複数の導電膜(導電層)の領域22を間隔を開けて形成した構成となっている。なお、電極20UAにおいては、一の領域22が上述した実施形態における一の電極20Uに対応する。この構成によれば、複数の領域22が形成されたフィルムを弾性部材30の表面に配置するだけで、予め定められた間隔で導電膜が並ぶため、上述した実施形態のように、複数の電極20を弾性部材30上に並べる場合と比較して、音響信号が供給される電極を、間隔を開けて容易に配置できる。なお、電極20Lについても、図7に示した構成としてもよい。
【0030】
上述した実施形態においては、電極20Uと電極20Lは、フィルムの表面に導電膜を形成した構成となっているが、電極20Uと電極20Lの構成は、この構成に限定されるものではない。例えば、導電性を有する金属板を電極20U及び電極20Lとしてもよい。また、導電性を有する糸で織られた布を矩形の形状にし、矩形の形状にされたこの布を電極20U及び電極20Lとしてもよい。また、絶縁性を有する素材(例えば、ガラスやフェノール樹脂)を板状に形成した基板上に導電膜を形成して電極20U,20Lとしてもよい。
【0031】
上述した実施形態においては、電極20U及び電極20Lは、z軸上の点から見た形状が矩形となっているが、電極20U及び電極20Lの形状は、矩形に限定されるものではない。例えば、円形、楕円形または多角形など、他の形状であってもよい。また、振動体10についても、高さ方向から見た形状は矩形に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形または多角形など、他の形状であってもよい。また、静電型スピーカ1の形状についても、高さ方向から見た形状は矩形に限定されるものではなく、
【0032】
上述した実施形態においては、電極20U,20Lは、表面から裏面に貫通する孔を複数備える構成となっているが、この孔を備えていない構成であってもよい。電極20U,20Lは、隣接する電極と間隔を開けて配置されているため、振動体10により発生した音は、電極20同士の間の隙間から外部へ放射される。
【0033】
本発明においては、電極20の左右方向の幅は、弾性部材30の左右方向の幅より狭い構成であってもよい。また、電極20は、高さ方向から見て、弾性部材30より内側に位置するように配置してもよい。
【0034】
上述した実施形態においては、電極20U,20Lは、奥行き方向へ複数行で配置されているが、左右方向へ複数行で配置されていてもよい。また、電極20Uは、図8に示したように左右方向と奥行き方向へ行列で配置されていてもよい。また、図8においては、電極20Uは、左右方向へ2列の配置となっているが、3列以上で配置されていてもよい。なお、電極20Lについても、図8に示した電極20Uと同様に左右方向と奥行き方向へ行列で配置されていてもよい。
【0035】
上述した実施形態においては、抵抗器RU,RLは、静電型スピーカ1が備える構成となっているが、抵抗器RU,RLを駆動部100に設ける構成としてもよい。また、バイアス電源70に接続される抵抗器Rcについては、上述した実施形態においては駆動部100に設けられているが、静電型スピーカ1が備えるようにしてもよい。
【0036】
上述した実施形態においては、電極20に流す電流値を設定し、設定した電流値から抵抗器RU,RLの抵抗値を決定しているが、抵抗器RU,RLの抵抗値は、上述した計算により得られた抵抗値に限定されるものではない。電極20に流れる電流の電流値が設定した電流値未満となるのであれば、計算により得られた抵抗値より大きな抵抗値であってもよい。
【0037】
上述した実施形態においては、振動体10の数は一つとなっているが、振動体10の数は、電極20Uと同じ数としてもよい。この場合、各振動体10の左右方向の幅はいずれも同じとし、また、奥行き方向の幅も同じとする。なお、一の振動体10の左右方向の幅を一の電極20の左右方向の幅と同じとし、奥行き方向の幅も電極20の奥行き方向の幅と同じとしてもよく、このように振動体10と電極20のサイズが同じである場合には、一の振動体10を、一の電極20Uと一の電極20Lとで挟む構成としてもよい。
【0038】
上述した実施形態においては、一の変圧器50の端子T1が複数の抵抗器RUに接続され、一の変圧器50の端子T2が複数の抵抗器RLに接続されているが、変圧器50と抵抗器RU,RLとの接続は、この構成に限定されるものではない。
例えば、一組の電極20U,20Lに接続された抵抗器RU,RLについて、一の変圧器50が接続される構成、即ち、一組の抵抗器RU,RL毎に一つの駆動部100を接続する構成であってもよい。
また、この構成においては、各駆動部100に入力する音響信号を同じにするのではなく、各駆動部100に各々異なる音響信号を入力してもよい。また、複数の駆動部100を二組に分け、一方の組と他方の組とで異なる音響信号を入力するようにしてもよい。
【0039】
上述した実施形態においては、静電型スピーカ1は、振動体10を電極20Uと電極20Lで挟む構成となっているが、静電型スピーカ1は、振動体10の表面(または裏面)の一方の側にのみ複数の電極20が配置されるシングルエンドの構成であってもよい。なお、シングルエンドの構成においても、複数の電極20毎に一の抵抗器が接続される。
【0040】
上述した実施形態においては、一の電極20に一の抵抗器が接続される構成となっているが、複数の抵抗器の直列接続、並列接続、または直列と並列を組み合わせた接続により、上述した計算で得た抵抗値の抵抗器を得るようにしてもよい。また、抵抗器は、固定抵抗器に限定されるものではなく、可変抵抗器または半固定抵抗器であってもよい。
【0041】
上述した実施形態においては、電極20と振動体10との間に弾性部材30を配置することにより電極20と振動体10とが接触しないようにされているが、電極20と振動体10とが接触しないようにする構成は、上述した実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、絶縁体で形成されたスペーサを電極20と振動体10との間に配置することにより、電極20と振動体10とが接触しないようにしてもよい。図9は、本変形例に係る静電型スピーカの分解図である。スペーサ37U,37Lは、絶縁体で形成されており、その形状は図9に示したように矩形の枠の形状となっている。なお、本実施形態においては、スペーサ37U(第1部材)とスペーサ37L(第2部材)の高さは、いずれも同じとなっている。
静電型スピーカ1においては、電極20Lは、互いに接触しないように間隔を開けてスペーサ37Lの下面に固定され、電極20Uは、互いに接触しないように間隔を開けてスペーサ37Uの上面に固定されている。そして、スペーサ37Lの上面に振動体10が固着され、振動体10の上にスペーサ37Uの下面が固着されている。
なお、本変形例においては、振動体10はたるみが生じないように張力を掛けられた状態でスペーサ37Uとスペーサ37Lの枠の間に固定される。また、電極20Uは、各長辺が互いに平行になるようにしてスペーサ37Uに固定される。また、電極20Lは、振動体10を挟んで電極20Uと対向し、長辺が互いに平行になるようにしてスペーサ37Lに固定される。この構成によれば、電極20と振動体10との間は、スペーサ37U,37Lにより距離が保たれ、振動体10が振動しても電極20に接触することがない。
【0042】
上述した実施形態においては、対向する一の電極20Uと一の電極20Lは、高さ方向から見ると左右方向の位置と奥行き方向の位置が同じとなっているが、位置が同じ構成に限定されるものではなく、奥行き方向、左右方向、またはその両方の方向にずれていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1・・・静電型スピーカ、10・・・振動体、20,20U,20L,20UA・・・電極、30,30U,30L・・・弾性部材、35,36・・・弾性部材、50・・・変圧器、60・・・入力部、70・・・バイアス電源、100・・・駆動部、RU,RL・・・抵抗器、T1〜T3・・・端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するシート状の振動体と、
前記振動体と対向し、互いに間隔をあけて配置された複数の第1電極と、
前記振動体と前記第1電極との間に位置して前記振動体と前記第1電極の間隔をあける第1部材と、
前記振動体を挟んで前記第1電極と対向し、互いに間隔をあけて配置された複数の第2電極と、
前記振動体と前記第2電極との間に位置して前記振動体と前記第2電極の間隔をあける第2部材と、
前記複数の第1電極毎に設けられ、前記第1電極に接続されて音響信号が供給され、前記音響信号の電圧値が予め定められた電圧値の時に前記第1電極に流れる電流の電流値を予め定められた値未満にする複数の抵抗器と、
前記複数の第2電極毎に設けられ、前記第2電極に接続されて音響信号が供給され、前記音響信号の電圧値が予め定められた電圧値の時に前記第2電極に流れる電流の電流値を予め定められた値未満にする複数の抵抗器と、
を有する静電型スピーカ。
【請求項2】
前記複数の第1電極は、絶縁物で覆われ、前記複数の第2電極は、絶縁物で覆われていること
を特徴とする請求項1に記載の静電型スピーカ。
【請求項3】
前記第1電極に接続されている複数の抵抗器は、前記第1電極と接続されている側と反対側の端子が互いに接続され、
前記第2電極に接続されている複数の抵抗器は、前記第2電極と接続されている側と反対側の端子が互いに接続されていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電型スピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−4875(P2012−4875A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138259(P2010−138259)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】