説明

静電塗油装置

【課題】ワークの静電塗油時の塗油剤の消費量を抑制することのできる静電塗油装置を提供する。
【解決手段】被塗油部材としてのワークWを一方向に案内するガイド部材15と、上記ガイド部材15上の正電位の前記ワークWに塗油する塗油剤を負帯電させると共に霧油化して前記ワークWに静電吸着させるためのノズルブレード7U,7Lと、霧油化した前記塗油剤を分散するためのインダクトバー25と、を備え、前記ガイド部材15が前記ワークWを案内するガイド溝17は、上側が広くなるV字形状に形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の機械部品としてのワークに例えば潤滑油、防錆油などの油剤を静電塗油する静電塗油装置に係り、さらに詳細には、例えば内周面及び外周面を備えた筒状のごとき機械部品に対して静電塗油を行う静電塗油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品の出荷に際しては、潤滑油又は防錆油などの油剤内に機械部品を浸し、その後に包装紙によって包み込んでいる。したがって、油剤の消費量が多いと共に、前記包装紙に多量の油剤が付着するので、処理に問題がある。そこで、機械部品をコンベア等によって搬送中に、周囲から油剤を噴霧することも可能であるが、機械部品における内周面及び外周面の全面に均一に塗油するには、周囲の複数箇所から油剤を噴霧する必要があり、油剤の消費量を少なくすることは難しいものである。なお、本発明に関係あると思われる特許文献としては、例えば特許文献1〜3などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−102467号公報
【特許文献2】特開2001−129442号公報
【特許文献3】特許第4188940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1〜3は、静電塗油対象として、例えば鋼板などを対象とするものであり、例えば筒状のごとき機械部品に静電塗油を行う構成としては採用不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、被塗油部材としてのワークを一方向に案内するガイド部材と、上記ガイド部材上の正電位の前記ワークに塗油する塗油剤を負帯電させると共に霧油化して前記ワークに静電吸着させるためのノズルブレードと、霧油化した前記塗油剤を分散するためのインダクトバーと、を備え、前記ガイド部材が前記ワークを案内するガイド溝は、上側が広くなるV字形状に形成してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ガイド部材のガイド溝内をワークが移動するとき、ガイド溝内のワークとガイド溝の壁面との間に入り込んだ微粒子の塗油剤はワークに静電吸着されることになる。したがって、ワークに対する静電塗油を効果的に行うことができ、塗油剤の消費量を抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る静電塗油装置を概念的、概略的に示した正面説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る静電塗油装置を概念的、概略的に示した右側面説明図である。
【図3】ガイド部材の平面説明図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿った拡大断面図である。
【図5】ガイド部材の別形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1、2に概念的、概略的に示すように、本発明の実施形態に係る静電塗油装置1は、枠体構造のフレーム3を備えている。より詳細には、フレーム3は左右の支柱5L,5Rの上部を、左右方向に長い上部梁7Uによって一体的に連結し、かつ前記支柱5L,5Rの下部を下部梁7Lによって一体的に連結した構成である。上記上部梁7U及び下部梁7Lは、ノズルブレードを兼ねた構成である。
【0009】
このノズルブレード(上下の梁7U,7L)は、前記特許文献3に記載のノズルヘッドと同様の構成であって、一対の絶縁ブレードの間に、微細なスリットを複数備えると共に当該スリットに連通した油溜めを備えたシム9を挟み込んだ構成である。なお上記シムは、前記フレーム3の側面に備えた高電圧発生器11の負極が接続してある。
【0010】
前記支柱5L,5Rの上下方向の中央高さ位置にはガイドホルダ13L,13Rが備えられており、このガイドホルダ13L,13Rには、被塗油部材の1例としての例えば筒形状のワークWの軸心を上下方向に保持して案内するガイド部材15が着脱交換可能に支持されている。このガイド部材15は、例えばナイロン樹脂のごとき絶縁樹脂材(誘電部材)から構成してあって、前後方向(図1においては紙面に垂直な方向、図2においては左右方向)に長く設けてある。
【0011】
上記ガイド部材15の幅方向(図1において左右方向、図3において上下方向)の中央部には、前記ワークWを前後方向に案内するガイド溝17が形成してある。そして、このガイド溝17の左右の壁面17L,17Rは、図4に示すように、上側が互いに離反するように傾斜してある。すなわちガイド溝17は上側が広くなるV字形状に形成してある。
【0012】
上記ガイド部材15におけるガイド溝17の長手方向の中間部(中央部)、すなわち上下の前記ノズルブレード7U,7Lに対応した位置には、図3に示すよう、上下に貫通した貫通孔19が形成してあり、この貫通孔19には、前記ワークWを支持する金属製のワーク支持部材21が備えられている。このワーク支持部材21はワークWの一部と接触する接触部材を構成するものであって接続線(図示省略)を介して接地してある。したがって、前記ワーク支持部材21に支持されたワークWは前記シム9に対して正極となるものである。
【0013】
前記フレーム3における適宜一方の支柱5Rの上下には、それぞれ上下のブラケット23U,23Lが備えられており、この上下のブラケット23U,23Lには、上下のノズルブレード7U,7Lからガイド部材15上のワークWへ向けて飛散される霧油化状態の塗油剤を前後方向(ガイド部材15の長手方向)に分散(拡散)するために前後一対のインダクトバー(誘電棒)25が左右方向に水平に備えられている。
【0014】
以上のごとき構成において、例えばパーツフィーダなどのごとき適宜のワーク供給手段(図示省略)によって、被塗油部材の1例としてのワークWをガイド部材15のガイド溝17内へ次々に供給し送り出すと、ワークWは互いに接触して(図3にはワークWは離して図示してある)、前記ガイド溝17内を前後方向(図2,3において左右方向)へ移送される。
【0015】
上述のように、ガイド部材15におけるガイド溝17内を、ワークWを前後方向に移動するとき、上下のノズルブレード7U,7L(又は上部のノズルブレード7Uのみ)に、例えば潤滑油又は防錆油などのごとき塗油剤を供給すると、塗油剤はノズルブレード7U,7L内において直接帯電される。そして、前記シム9のスリットからノズルブレード7U,7Lの先端に流出されて薄い塗膜を形成すると、静電荷により帯電粒子を形成し互いに反発してノズルブレード7U,7Lの先端から飛び出す。飛び出した油粒子は互いの反発により微粒子に分解して霧化されることになる。
【0016】
上述のように霧油化された塗油剤は、異電極(正電極)であるワークW方向へ飛散しワークWに静電吸着されて、ワークWを静電塗油することになる。霧油化した塗油剤がノズルブレード7U,7L側からワークW方向へ飛散するとき、塗油剤は誘電棒25によって前後方向(図2において左右方向)へ拡散されることになる。そして、ワークWに達した霧油化した塗油剤は、ワークWの表面に静電吸着されるものであるから、ワークWの垂直な内周面及び垂直な外周面に満遍なく静電吸着され、かつ内周面と外周面との間にスリットや間隙がある場合には、上側から下側へにじむこととなる。
【0017】
また、前記ガイド部材15におけるガイド溝17がV字形状であることにより、ワークWとガイド溝17の壁面17L,17Rとの間に入り込み易く、壁面17L,17RとワークWの外周面との間に入り込んだ霧油化状の塗油剤は、ガイド部材15が絶縁樹脂部材(誘電部材)から構成してあることにより反発されて、ワークWの外周面に静電吸着されることになる。したがって、霧油化した塗油剤の利用率が向上し、消費量を抑制することができるものである。
【0018】
ところで、本発明は、前述したごとき実施形態のみに限るものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能である。すなわち、前記ガイド溝17の壁面17L,17Rからの霧油化状の塗油剤の反発を無視する場合には、ガイド部材15を金属製とすることも可能である。
【0019】
また、例えば、前記ガイド部材15に複数列のガイド溝17を備えて、複数のワークWに同時に静電塗油を行うことも可能である。この場合、複数のガイド溝17の幅寸法を異にして、大きさの異なるワークWを同時に処理することも可能である。
【0020】
また、図5(A),(B)に示すように、左右方向に分割した複数のガイド部材15A,15B,15Cのそれぞれにワーク支持部材21を備えると共に、各ガイド部材15A,15B,15Cの両端側をガイドバー27に位置調節可能に支持する構成とすることも可能である。すなわち、ワークWを案内するガイド溝17の幅寸法を、ワークWの大きさに対応して調節可能に構成することも可能である。このような構成とすることにより、種々のワークWの大きさに対応できることとなり汎用性が向上するものである。
【0021】
なお、前記ガイド部材15におけるガイド溝17内を、ワークWを前後方向に移動する構成としては、例えばガイド部材15を前後方向に傾斜する構成や、振動コンベアのごとくガイド部材15を振動する構成や、例えばエアーシリンダなどのアクチュエータによってガイド溝17内のワークWを次々に前後方向に押す構成など、種々の構成を採用することができる。
【0022】
また、上下のノズルブレード7U,7Lの間においてワークWを前後方向に案内移動する構成としては、エンドレスチエンやベルト等のごときエンドレス搬送帯を採用することも可能であり、この種のエンドレス搬送帯も一種のガイド部材を構成するものである。
【0023】
また、前記ノズルブレード7U,7Lに対する塗油剤の供給は、給油ポンプからの連続的な供給であっても、前記ノズルブレード7U,7Lに対応する位置にワークWが移動したことをセンサにより検出したときに、例えば前記給油ポンプを駆動したり、又は給油ポンプとノズルブレード7U,7Lとの接続管に備えた開閉弁を開閉することにより、前記供給ポンプから間欠的に供給する構成とすることも可能である。
【0024】
すなわち、本発明は種々の形態でもって実施可能なものである。
【符号の説明】
【0025】
1 静電塗油装置
3 フレーム
7U 上部梁(ノズルブレード)
7L 下部梁(ノズルブレード)
9 シム
13L,13R ガイドホルダ
15 ガイド部材
17 ガイド溝
17L,17R 壁面
19 貫通孔
21 ワーク支持部材
25 インダクトバー(誘電棒)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗油部材としてのワークを一方向に案内するガイド部材と、上記ガイド部材上の正電位の前記ワークに塗油する塗油剤を負帯電させると共に霧油化して前記ワークに静電吸着させるためのノズルブレードと、霧油化した前記塗油剤を分散するためのインダクトバーと、を備え、前記ガイド部材が前記ワークを案内するガイド溝は、上側が広くなるV字形状に形成してあることを特徴とする静電塗油装置。
【請求項2】
請求項1に記載の静電塗油装置において、前記ガイド部材は絶縁樹脂により構成してあることを特徴とする静電塗油装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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