説明

静電塗装システム

【課題】ボデイ内の圧力室から外部への塗料の液漏れを防止すること。
【解決手段】ボデイ56に固定される中空のエア配管50と、可撓性を有する材料によって螺旋状に形成され、一端部がエア配管50に接続されると共に他端部がベローバルブ100に接続されてエア配管50からのエアをベローズ102内に供給するスパイラルチューブ86と、フロート88に装着されたベローズ102を緊締する磁性体からなるバンド部材90と、ボデイ56の外周面を囲繞するマグネットリング30とを有し、ベローズ102は、エア配管50及びスパイラルチューブ86を介して、ベローズ102の空間部106内にエアが供給され、又は、空間部106内のエアが外部へ排出されることによって伸縮作用が営まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のボデイ等の被塗装物に対して、導電性塗料を吐出し塗装することが可能な静電塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導電性塗料に高電圧を印加して自動車のボデイ等の被塗装物に静電塗装を施す方法が知られている。この方法では、導電性塗料が、接地電位から絶縁されている中間貯留槽に一旦導入された後、前記中間貯留槽と塗料供給源とを連通している供給通路が洗浄及び乾燥されて電圧ブロックが形成される。この状態で、高電圧が印加された導電性塗料を中間貯留槽から塗装ガンに供給することにより、被塗装物に対する静電塗装作業が遂行される。
【0003】
ところで、従来の静電塗装システム(静電塗装装置)では、例えば、自動車のボデイのコーナー曲面部分、平面部分等の被塗装面の条件変化に応じて塗装ガンの塗料吐出量を変化させる塗料制御、塗装ガンから所定距離離間した送出ポンプの送出量制御によって行っているため、その塗料制御を高精度に制御することができず、オーバースプレーやスプレー不足が発生するという不具合があった。
【0004】
そこで、本出願人は、前記不具合を解消するために、吐出ピストンの一方又は他方へのストロークに対応させてベローバルブのベローズを伸縮させ、第1圧力室と第2圧力室の非連通状態と連通状態とを適宜切り換えることにより、単一の塗料排出ポートから塗装ガンに対して一定量の塗料を安定して且つ連続して供給することができる定量吐出ポンプを備えた静電塗装システムを提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−207806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記提案を改良したものであり、ボデイ内の圧力室から外部への塗料の液漏れを防止することが可能な静電塗装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、塗料供給部から塗装ガンに供給される塗料に高電圧を印加して被塗装物に対して塗装を行う静電塗装システムであって、前記塗料供給部と前記塗装ガンとの間に設けられ、前記塗装ガンに対して一定量の塗料を連続して送給する塗料定量供給手段を備え、前記塗料定量供給手段は、少なくとも単一の塗料排出ポートが設けられたボデイと、前記ボデイ内に収装される吐出ピストンとを有し、前記ボデイ内を前記吐出ピストンが往復動作することにより、一定量の塗料を前記単一の塗料排出ポートから吐出させる定量吐出ポンプを含み、前記吐出ピストンは、前記ボデイの軸線と直交する径方向に向かって伸縮可能に設けられたベローズを有するベローバルブからなり、前記ベローズの伸縮作用によって、前記ベローズで分割された第1圧力室と第2圧力室との非連通状態と連通状態が切り換えられ、前記ボデイは、該ボデイに固定される中空のエア配管と、可撓性を有する材料によって螺旋状に形成され、一端部が前記エア配管に接続されると共に他端部が前記ベローバルブに接続されて前記エア配管からのエアを前記ベローズ内に供給するスパイラルチューブと、前記ベローズに付設される磁性体と、前記ボデイの外周面を囲繞するマグネットリングとを有し、前記ベローズは、前記エア配管及び前記スパイラルチューブを介して、前記ベローズ内にエアが供給され、又は、前記ベローズ内のエアが外部へ排出されることによって前記伸縮作用が営まれ、前記マグネットリングを前記ボデイの軸方向に沿って変位させ、前記マグネットリングの磁力によって吸着される前記磁性体を介して、前記ベローバルブを前記マグネットリングと一体的に前記ボデイの軸方向に沿って変位させることで前記スパイラルチューブが伸縮可能に設けられることを特徴とする。
【0008】
この場合、ベローズとスパイラルチューブとの間には、テーパ状のフロートが設けられ、磁性体は、前記フロートの拡径部に装着されて前記ベローズを緊締するバンド部材で構成することにより、簡素な機構によって簡便に製造することができる。
【0009】
本発明によれば、ボデイに固定されたエア配管及び前記エア配管に接続され伸縮可能なスパイラルチューブを介して、ベローズ内にエアが供給され、又は、ベローズ内のエアを外部へ排出することによってベローズの伸縮作用が営まれる。さらに、マグネットリングをボデイの軸方向に沿って変位させ、マグネットリングの磁力によって吸着される磁性体を介して、ベローバルブをマグネットリングと一体的にボデイの軸方向に沿って変位させることでスパイラルチューブを伸縮させることができる。
【0010】
このように、本発明では、エア配管がボデイに固定され前記エア配管からのエアが伸縮可能なスパイラルチューブを介してベローバルブに供給されるように構成されることで、塗料の液漏れを発生させる蓋然性を有する摺動部位が何ら設けられておらず、ボデイ内の圧力室に充填された塗料が外部に漏洩することを好適に防止することができる。この結果、本発明では、塗料が外部へ液漏れすることによって通電するおそれを好適に回避して、静電塗装システムにおける完全絶縁性を確保することができる。なお、ベローバルブは、ボデイ内の密閉された圧力室で往復して摺動変位するだけであるため、漏洩の蓋然性は全くなく前記摺動部位から除外される。
【0011】
また、本発明によれば、ベローズを径方向に収縮(縮径)させてベローズとボデイの内壁との間で間隙を形成することにより、第1圧力室と第2圧力室とが前記間隙を通じて連通状態となり、一方、ベローズを径方向に伸張(拡径)させてボデイの内壁に当接させることにより、第1圧力室と第2圧力室とが非連通状態となる。従って、本発明では、ベローバルブのベローズを伸縮させ、第1圧力室と第2圧力室の非連通状態と連通状態とを適宜切り換えることにより、単一の塗料排出ポートから塗装ガンに対して一定量の塗料を安定して且つ連続して供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボデイ内の圧力室から塗料の外部への液漏れを防止することが可能な静電塗装システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自動車ボデイの静電塗装に適用される本発明の実施形態に係る静電塗装システムのブロック構成図である。
【図2】前記静電塗装システムを構成する定量吐出ポンプの概略構造縦断面図である。
【図3】図2の定量吐出ポンプを構成するベローズが縮径して第1圧力室と第2圧力室が連通した状態を示す概略構造縦断面図である。
【図4】(a)、(b)は、図2の定量吐出ポンプのベローバルブが前進ストロークに沿って変位する状態を示す動作説明図である。
【図5】(a)、(b)は、図2の定量吐出ポンプのベローバルブが後進ストロークに沿って変位する状態を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1に示されるように、静電塗装システム10は、図示しない色塗料槽から供給された塗料を供給する塗料供給部20を含む。なお、塗料としては、有機溶剤型塗料を含む導電性塗料が用いられるが、好適には水溶性塗料が用いられるとよい。
【0016】
また、前記静電塗装システム10は、前記塗料供給部20から送給された塗料が導入される単一の塗料供給ポート24a及び後記する塗装ガン42に対して塗料を吐出(排出)する単一の塗料排出ポート24bが設けられ、後記する吐出ピストン(可動体)26の往復動作によって一定量の塗料を連続して供給する定量吐出ポンプ(塗料定量供給手段)28と、前記定量吐出ポンプ28の外周面を囲繞するマグネットリング30を矢印X方向に沿って変位させることで、後記する吐出ピストン26を駆動する駆動シリンダ32とを備える。
【0017】
さらに、前記静電塗装システム10は、前記駆動シリンダ32の図示しないピストン及びピストンロッドの変位(ストローク)を所望の速度に制御する電空ポジショナ36と、前記電空ポジショナ36に対して制御信号を導出するコントローラ38と、図示しないキーボード等からなり前記コントローラ38に所望の制御信号を入力・設定する入力部40と、前記定量吐出ポンプ28から供給された塗料を図示しない自動車ボデイ(被塗装物)に向かって吐出する塗装ガン42とを有する。
【0018】
駆動シリンダ32は、金属製シリンダチューブに形成されたシリンダ室内に収装された図示しないピストンと、前記ピストンに連結された自由端が外部に露呈するピストンロッドとを有する周知のエアシリンダから構成される。この場合、後記するエア供給源114から供給された圧縮エアがシリンダ室内に供給されてピストンを押圧することにより前記ピストンが一方の変位終端から他方の変位終端まで変位し、ピストンロッドが前記ピストンと一体的に変位して進退動作(往復動作)するように設けられる。
【0019】
従って、駆動シリンダ32が駆動されてピストンロッドが進退動作することにより、前記ピストンロッドの直線運動が定量吐出ポンプ28の外周面を囲繞するマグネットリング30に伝達され、前記マグネットリング30の磁力作用によってボデイ56の軸線方向に沿って吐出ピストン26が直線状に往復動作するように設けられている。
【0020】
この場合、定量吐出ポンプ28の吐出ピストン26が1ストローク(一方の変位終端位置から他方の変位終端位置までの変位)変位することによって、吐出ピストン26による塗料の押し出し作用(排出作用)と塗料の吸入充填作用(吸引充填作用)とが同時に遂行される。
【0021】
従って、駆動シリンダ32の駆動作用下に定量吐出ポンプ28の吐出ピストン26が複数回往復動作して前記ストロークが連続することにより、充填された塗料の押し出し作用及び塗料の吸入充填作用が連続し塗装ガン42に対して塗料を継続的に供給することができる。
【0022】
前記駆動シリンダ32のピストンの変位速度は、例えば、電気信号を空気圧信号に変換する電空変換機構を内部に有する公知の電空ポジショナ36によって制御される。この電空ポジショナ36では、予め入力(設定)される電気信号(入力信号)に比例した圧力エアを出力側から得ることができ、前記圧力エアを駆動シリンダ32のシリンダ室に供給することにより、ピストンの変位速度を所望の速度に制御することができる。
【0023】
塗料に対する高電圧印加方法としては、外部印加方式(塗装ガン42で噴霧状態にした塗料に対して高電圧を印加する方式)と、内部印加方式(塗装ガン42内で流動状態の塗料に対して高電圧を印加する方式)とが知られており、本実施形態では、いずれの方式も可能であるが、好適には塗装効率が高い水溶性塗料に対する内部印加方式を用いるとよい。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係る定量吐出ポンプの概略構造縦断面図、図3は、図2の定量吐出ポンプを構成するベローズが縮径して第1圧力室と第2圧力室が連通した状態を示す概略構造縦断面図である。
【0025】
定量吐出ポンプ28は、図2及び図3に示されるように、前記塗料供給部20から塗料が供給されると共に、前記供給された塗料を塗装ガン42に対して吐出する塗料吐出部48を有するボデイ56と、前記ボデイ56と一体的に結合されるケーシング82とを備える。
【0026】
前記ボデイ56は、非磁性材料によって形成され、第1圧力室58aに連通する単一の塗料供給ポート24aを有する。前記ケーシング82は、単一の塗料排出ポート24bを有し、前記塗料排出ポート24bには、ボールが着座部に着座することにより、塗装ガン42への塗料の吐出を遮断する第1チェック弁60aが配設される。
【0027】
また、ケーシング82を軸方向に沿って貫通しボデイ56に固定された中空のエア配管50が設けられ、前記エア配管50には、第2チェック弁60bが配設される。なお、前記第1、第2チェック弁60a、60bでは、ボールのみを設けているが、図示しないコイルスプリングや板ばね等の弾性部材によって前記ボールを係着し、ばね力によって前記ボールを着座部に押圧するようにしてもよい。
【0028】
定量吐出ポンプ28は、ボデイ56内の圧力室を第1圧力室58aと第2圧力室58bとに分割する吐出ピストン26として、ボデイ56の軸線と直交する径方向に向かって伸縮可能なベローズ102を有するベローバルブ100が設けられている。
【0029】
この定量吐出ポンプ28は、内部にエアが流通するエア通路(図示せず)が形成され、螺旋状に周回する一端部がエア配管50に連通接続されると共に、他端部が後記するフロート84(ベローズ102)の内部と連通接続されたスパイラルチューブ86と、縦断面が円錐台形状(テーパ状)に形成され前記スパイラルチューブ86を介して内部にエアが供給されるフロート88と、開口する前記フロート88の拡径部88aに対して気密に装着されるベローバルブ100と、フロート88の拡径部88aに対して前記ベローバルブ100を緊締するバンド部材90と、ボデイ56の外周面を囲繞すると共に、駆動シリンダ32によって矢印X方向に沿って変位可能に設けられるマグネットリング30とを備える。
【0030】
前記スパイラルチューブ86は、所定の耐溶剤性を有する可撓性材料で形成される。また、金属製のバンド部材90は、磁性体(例えば、強磁性体)によって形成され、磁力作用によってマグネットリング30に吸引されマグネットリング30の変位に対して追従してバンド部材90、ベローバルブ100及びフロート88が一体的に変位するように設けられる。
【0031】
このベローバルブ100は、所定の耐溶剤性を有し、例えば、シリコーンゴム等のゴム材料や金属材料によって形成されたベローズ102を備える。前記ベローズ102は、外径側の山部と内径側の谷部とが交互に連続して伸縮自在に形成された蛇腹部102aと、前記蛇腹部102aの一方に設けられバンド部材90によってフロート88の拡径部88aの外周面に緊締される環状の緊締部102bと、前記蛇腹部102aの他方に設けられて蛇腹部102a内の空間部106を閉塞する閉塞部102cとから構成される。
【0032】
エア配管50の軸方向に沿った端部には、排気ポート108aを介してベローズ102の空間部106内のエアを急速に排気する急速排気弁(クイックエキゾーストバルブ)108が設けられと共に、配管チューブ110を介して切換弁112及びエア供給源114がそれぞれ接続される。切換弁112は、図1に示すコントローラ38からの切換信号によってオフ状態とオン状態とが切り換えられる(図3参照)。急速排気弁108を設けることにより、後記するベローズ102の縮径状態と拡径状態とを迅速に且つ容易に切り換えることができる。前記急速排気弁108としては、例えば、ダイヤフラムタイプ又はプランジャ弁タイプ等が用いられるとよい。
【0033】
ボデイ56の一端部側壁には、第1圧力室58aに連通する塗料供給ポート24aが設けられ、前記塗料供給ポート24aから供給された塗料は、一端部側壁に形成された連通路118を介して第1圧力室58a内に導入される。なお、ボデイ56の一端部側壁の連通路118には、第1圧力室58a内に導入された塗料の逆流を防止する図示しない逆流防止弁が設けられる。また、ケーシング82には、塗装ガン42に連通する単一の塗料排出ポート24bが設けられ、前記塗料排出ポート24bは、室119及び連通路120を介して第2圧力室58bと連通するように設けられる。
【0034】
塗料排出ポート24bと塗装ガン42との間には、ベローバルブ100のベローズ102の疲労度(疲労状態)を検知する光センサ122が設けられる。この光センサ122は、例えば、光ファイバセンサによって構成され、加圧されたベローズ102の伸縮状態を反射光の光量変化として検知されるとよい。具体的には、塗料排出ポート24bから排出される塗料の流通圧力が上昇することによって反射光の光量が減少し、前記流通圧力が降下することにより反射光の光量が増大することによって、ベローズ102の疲労度を検知することができる。
【0035】
ベローバルブ100を構成するベローズ102は、空間部106内にエアが供給されていないとき、図2に示されるように拡径状態にあり、ベローズ102の蛇腹部102aがボデイ56の内壁に摺接(摺動)するように設けられる。換言すると、空間部106内がエアで加圧されていない状態では、ベローズ102を構成する蛇腹部102aの隣接する山部同士及び谷部同士が弾性力によって相互に接近して、蛇腹部102aが密に屈曲した状態に折り畳まれるため、ベローズ102の蛇腹部102a(外径部)が径方向に伸張(拡径)してボデイ56の内壁に当接した状態となる。この場合、ボデイ56内の圧力室がベローバルブ100(ベローズ102)によって気密に分割され、前記分割された第1圧力室58aと第2圧力室58bとが非連通状態となる。
【0036】
一方、切換弁112の弁位置をOFF状態からON状態に切り換えることによってエア供給源114から供給されたエア(圧縮エア)は、エア配管50、スパイラルチューブ86及びフロート88を介してベローズ102の空間部106内に導入され、ベローズ102の閉塞部102cをボデイ56の軸方向に沿って押圧する(図3の矢印参照)。
【0037】
従って、図3に示されるように、ベローズ102の蛇腹部102aがボデイ56の内壁から離間した縮径状態となり、ベローズ102の蛇腹部102aとボデイ56の内壁との間で周方向に沿った間隙124が設けられる。この結果、ボデイ56内の第1圧力室58aと第2圧力室58bとが前記間隙124を通じて連通状態となる。このように、ベローバルブ100を構成するベローズ102の径方向への伸張動作(拡径動作)又は収縮動作(縮径動作)によって、第1圧力室58aと第2圧力室58bとの非連通状態と連通状態とを切り換えることができる。
【0038】
本発明の実施形態に係る定量吐出ポンプ28は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
図4(a)、(b)は、本実施形態に係る定量吐出ポンプのベローバルブ(吐出ピストン)が前進ストロークに沿って変位する状態を示す動作説明図、図5(a)、(b)は、他の実施形態に係る定量吐出ポンプのベローバルブ(吐出ピストン)が後進ストロークに沿って変位する状態を示す動作説明図である。
【0039】
先ず、ベローバルブ100及びフロート88が一体的に第1圧力室58a側(前進ストローク方向)に向かって変位する場合について説明する。なお、第1圧力室58a、第2圧力室58b及び塗料排出ポート24bに連通する室119内には、予め塗料が充填されているものとする。
【0040】
吐出ピストン26aとして機能するベローバルブ100が第1圧力室58a側に向って変位(前進ストローク)を開始すると同時に、切換弁112の切換作用下にエア供給源114から供給されたエアがエア配管50及びスパイラルチューブ86を介してベローズ102の空間部106内に導入される。前記空間部106内に導入されたエアによって閉塞部102cがエア配管50の軸方向に沿って押圧され(図4参照)、蛇腹部102aが径方向に収縮(縮径)しボデイ56の内壁との間で形成された間隙124を通じて第1圧力室58aと第2圧力室58bとが連通状態となる。なお、第1圧力室58a内に充填されている塗料は、図示しない逆流防止弁によって塗料供給ポート24aからの漏出(逆流)が阻止されている。
【0041】
この場合、予め、第1圧力室58a内に充填されて第1圧力室58aを満たしていた塗料は、ベローバルブ100の前進ストロークによって加圧され、図4(a)に示されるように、前記間隙124を通過して第1圧力室58aから第2圧力室58bに向って流動する。従って、ベローバルブ100(吐出ピストン26a)の前進ストローク量に対応する容量からなる塗料が、間隙124を通過して第1圧力室58aから第2圧力室58bへ供給されると共に、前記前進ストローク量に対応する容量からなる塗料が塗料排出ポート24bから塗装ガン42へ向って吐出される。
【0042】
吐出ピストン26aとして機能するベローバルブ100の前進ストロークは、図4(b)に示されるように、ベローバルブ100がボデイ56の一端部側壁に到達することによって変位終端位置となる。なお、前進ストロークの変位終端位置は、例えば、図示しないストッパを用いて、ベローバルブ100がボデイ56の一端部側壁に到達する手前の位置で停止するようにしてもよい。
【0043】
次に、ベローバルブ100の変位を前進ストロークから後進ストロークに切り換えて、ベローバルブ100を第2圧力室58b側に向って変位させる場合について説明する。
【0044】
ベローバルブ100の変位を前進ストロークから後進ストロークに切り換えると同時に、切換弁112の弁位置をオン状態からオフ状態へ切り換えてエア供給源114から空間部106内へのエアの供給を停止する。また、同時に、急速切換弁108を作動させて、空間部106に残存するエアを、スパイラルチューブ86及びエア配管50を介して急速排気弁108の排気ポート108aから外部へ排出する。
【0045】
従って、ベローバルブ100の蛇腹部102aは、エアによる内部加圧状態が解除されてその弾性力によって元の状態に復帰しようとする力が作用し、蛇腹部102aが連続して屈曲した原形状に復帰する(図2参照)。このため、ベローズ102の蛇腹部102aは、径方向に沿って伸張(拡径)した状態となり、蛇腹部102aの外径部がボデイ56の内壁に摺接した状態となる。この結果、ベローバルブ100が第2圧力室58b側に向って変位する後進ストロークでは、図5(a)に示されるように、第1圧力室58aと第2圧力室58bとの非連通状態が保持されたまま、蛇腹部102aの外径部がボデイ56の内壁に沿って摺動する。
【0046】
ベローバルブ100が第2圧力室58b側に向って変位する後進ストロークの場合、吐出ピストン26aとして機能するベローバルブ100によって第2圧力室58b内に充填されていた塗料が加圧され、ベローバルブ100の後進ストローク量に対応する容量から第2圧力室58b内に臨むスパイラルチューブ86の容積分を減算した容量が塗料排出ポート24bから吐出される。前進ストロークの変位終端位置から後進ストロークを開始する際、同時に、塗料供給ポート24aから塗料が供給されて第1圧力室58a内に導入される。なお、第1圧力室58aの容積と第2圧力室58bとの容積との比は、塗料排出ポート24bから吐出される塗料の吐出量に対応して、図示しないストッパで予め所定の容量比に設定されているものとする。
【0047】
このようにして、ボデイ56の圧力室に沿ってベローバルブ100を往復動作させ、ベローバルブ100の前進ストローク及び後進ストロークを連続して繰り返すことにより、塗料排出ポート24bから一定量の塗料を連続して吐出することができる。
【0048】
本実施形態では、ボデイ56に固定されたエア配管50及び前記エア配管50に接続され伸縮可能なスパイラルチューブ86を介して、ベローズ102内にエアが供給され、又は、ベローズ102内のエアを外部へ排出することによってベローズ102の伸縮作用が営まれる。
【0049】
また、本実施形態では、マグネットリング30をボデイ56の軸方向に沿って変位させ、マグネットリング30の磁力によって吸着される磁性体からなるバンド部材90を介して、ベローバルブ100をマグネットリング30と一体的にボデイ56の軸方向に沿って変位させることでスパイラルチューブ86を伸縮させるようにしている。
【0050】
このように、本実施形態では、エア配管50の一端部がボデイ86に固定され前記エア配管50からのエアが伸縮可能なスパイラルチューブ86を介してベローバルブ100に供給されるように構成されることで、塗料の液漏れを発生させる蓋然性を有する摺動部位が何ら設けられておらず、ボデイ56内の圧力室に充填された塗料が外部に漏洩することを好適に防止することができる。なお、ベローバルブ100は、ボデイ56内の密閉された圧力室で往復して摺動変位するだけであるため、漏洩の蓋然性は全くなく前記摺動部位から除外される。
【0051】
換言すると、吐出ピストン26として機能するベローバルブ100を除いて圧力室に沿って摺動する他の部材が何ら設けられておらず、しかも外部に連通可能な摺動部位が何ら設けられていないため、ボデイ56内の気密性乃至液密性が好適に確保され、外部への液漏れを防止することができる。
【0052】
この結果、本実施形態では、塗料が外部へ液漏れすることによって通電するおそれを好適に回避して、静電塗装システム10における完全絶縁性を確保することができる。
【0053】
また、本実施形態では、吐出ピストン26aとして機能するベローバルブ100を、第1圧力室58aと第2圧力室58bとの連通状態と非連通状態を切り換える切換手段としての機能をも併有させることにより、構造が簡素化され部品点数を削減して製造コストを低減することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、圧力室内にスパイラルチューブ86に接続されたベローバルブ100を設けることにより、塗料排出ポート24bから塗料を安定して吐出することができる。さらにまた、本実施形態では、塗料供給通路を切り換えて洗浄液供給源80から塗料供給ポート24aを介して洗浄液を供給することにより、第1圧力室58aを好適に洗浄することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 静電塗装システム
20 塗料供給部
24a 塗料供給ポート
24b 塗料排出ポート
26 吐出ピストン
28 定量吐出ポンプ
30 マグネットリング
42 塗装ガン
50 エア配管
56 ボデイ
58a、58b 圧力室
86 スパイラルチューブ
88 フロート
88a 拡径部
90 バンド部材(磁性体)
100 ベローバルブ
102 ベローズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料供給部から塗装ガンに供給される塗料に高電圧を印加して被塗装物に対して塗装を行う静電塗装システムであって、
前記塗料供給部と前記塗装ガンとの間に設けられ、前記塗装ガンに対して一定量の塗料を連続して送給する塗料定量供給手段を備え、
前記塗料定量供給手段は、少なくとも単一の塗料排出ポートが設けられたボデイと、前記ボデイ内に収装される吐出ピストンとを有し、前記ボデイ内を前記吐出ピストンが往復動作することにより、一定量の塗料を前記単一の塗料排出ポートから吐出させる定量吐出ポンプを含み、
前記吐出ピストンは、前記ボデイの軸線と直交する径方向に向かって伸縮可能に設けられたベローズを有するベローバルブからなり、前記ベローズの伸縮作用によって、前記ベローズで分割された第1圧力室と第2圧力室との非連通状態と連通状態が切り換えられ、
前記ボデイは、該ボデイに固定される中空のエア配管と、可撓性を有する材料によって螺旋状に形成され、一端部が前記エア配管に接続されると共に他端部が前記ベローバルブに接続されて前記エア配管からのエアを前記ベローズ内に供給するスパイラルチューブと、前記ベローズに付設される磁性体と、前記ボデイの外周面を囲繞するマグネットリングとを有し、
前記ベローズは、前記エア配管及び前記スパイラルチューブを介して、前記ベローズ内にエアが供給され、又は、前記ベローズ内のエアが外部へ排出されることによって前記伸縮作用が営まれ、
前記マグネットリングを前記ボデイの軸方向に沿って変位させ、前記マグネットリングの磁力によって吸着される前記磁性体を介して、前記ベローバルブを前記マグネットリングと一体的に前記ボデイの軸方向に沿って変位させることで前記スパイラルチューブが伸縮可能に設けられることを特徴とする静電塗装システム。
【請求項2】
請求項1記載の静電塗装システムにおいて、
前記ベローズと前記スパイラルチューブとの間には、テーパ状のフロートが設けられ、
前記磁性体は、前記フロートの拡径部に装着されて前記ベローズを緊締するバンド部材からなることを特徴とする静電塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86065(P2013−86065A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231367(P2011−231367)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(592007575)東メンシステム株式会社 (7)
【Fターム(参考)】