説明

静電塗装方法

【課題】塗布パターンを所望の形状に設定して塗装効率を向上できる静電塗装方法を提供すること。
【解決手段】回転霧化式塗装装置1を用いて、被塗装物Wを静電塗装する静電塗装方法であって、前記回転霧化式塗装装置1の回転霧化頭22の先端縁から帯電した塗料を霧化して噴出するとともに、当該回転霧化頭22の回転軸Xを中心とする円周方向に区分けされた第1区域410と第2区域420とで塗料の噴出角度を規制する規制力が異なるシェーピングエアを、前記回転霧化頭22の先端縁近傍に向けて噴出することで、非対称な形状の塗布パターンPAを形成し、被塗装物Wの端部を塗装する際には、前記塗布パターンPAのうちパターン幅の狭い領域が被塗装物Wの外側に向くようにして塗装することを特徴とする静電塗装方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電塗装方法に関する。詳しくは、回転霧化頭の先端から塗料を噴霧して静電塗装を行う静電塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディなどを塗装する塗装方法として、回転霧化式の静電塗装方法が知られている。この静電塗装方法では、回転霧化頭に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で、回転霧化頭に導電性の液体塗料を供給する。これにより、液体塗料を帯電させて霧化し、回転霧化頭の先端縁から噴霧して、静電塗装を行う。
【0003】
上記の静電塗装方法では、回転霧化頭から噴霧される塗料の塗布パターンの径は、ほとんど変化しない。このため、被塗装物の形状が複雑化すると、この被塗装物に対して塗料を確実に塗布することができない場合があった。
【0004】
そこで、円弧状に形成した複数のエア穴やエアスリットを回転霧化頭の回転軸に対して対称に設け、これらのエア穴またはエアスリットからエアを噴出する手法が提案されている(特許文献1参照)。この手法によれば、エア穴またはエアスリットから噴出されたエアにより、回転霧化頭から噴霧された塗料の塗布パターン形状を変形できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−54754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法では、回転霧化頭の回転軸に対して対称に配置された各エア穴または各エアスリットの形状は同一であるうえ、エア供給源から各エア穴または各エアスリットに供給されるエアの流量も同一であるため、塗布パターンの形状を正対称に変形させることしかできなかった。このため、被塗装物の端部を塗装する際には、オーバースプレーが生じ、塗装効率の低下を招いていた。
【0007】
本発明の目的は、塗布パターンを所望の形状に設定して塗装効率を向上できる静電塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転霧化式塗装装置(例えば、後述の回転霧化式塗装装置1)を用いて、被塗装物(例えば、後述の被塗装物W)を静電塗装する静電塗装方法であって、前記回転霧化式塗装装置の回転霧化頭(例えば、後述の回転霧化頭22)の先端縁から帯電した塗料を噴霧するとともに、当該回転霧化頭の回転軸(例えば、後述の回転軸X)を中心とする円周方向に区分けされた区域(例えば、後述の第1区域410,410A,第2区域420,420A)ごとに塗料の噴出角度を規制する規制力が異なるシェーピングエアを、前記回転霧化頭の先端縁近傍に向けて噴出することで、非対称な形状の塗布パターン(例えば、後述の塗布パターンPA)を形成し、前記被塗装物の端部を塗装する際には、前記塗布パターンのうちパターン幅の狭い領域が前記被塗装物の外側に向くようにして塗装することを特徴とする。
【0009】
この発明では、帯電した塗料が噴霧される回転霧化頭の先端縁近傍に向けて、回転軸を中心とする円周方向に区分けされた区域ごとに塗料の噴出角度を規制する規制力が異なるシェーピングエアを噴出することで、非対称な形状の塗布パターンを形成した。そして、被塗装物の端部を塗装する際に、パターン幅が狭い領域を被塗装物の外側に向けて塗装を行うようにした。
これにより、パターン幅が狭い領域を被塗装物の外側に向けて塗装できるため、従来問題となっていたオーバースプレーを抑制できる。従って、この発明によれば、塗着効率、即ち塗装効率を向上できる。
【0010】
ここで、本発明において、「塗料の噴出角度を規制する規制力」とは、回転霧化頭の先端縁から外方に向かって噴出される塗料を、内方に指向させようとする力を意味する。かかる規制力に相関のあるパラメータとしては、シェーピングエアのねじれ角度、流速または流量などが挙げられる。
また、本発明において、「塗布パターン」とは、要求される塗料としての品質を確保できる塗膜厚が得られる塗布範囲を意味する。例えば、塗膜厚が極大となる回転霧化頭の回転軸延長線上に位置する領域の塗膜厚に対して、1/2の塗膜厚が得られる塗布範囲を、塗布パターンと定義することができる。
【0011】
この場合、前記回転霧化式塗装装置として、前記回転霧化頭と、前記回転霧化頭を囲繞して形成され、前記シェーピングエアを噴出するエア噴出口(例えば、後述の第1エア噴出口411,第2エア噴出口421)を開口部とするエア噴出孔(例えば、後述の第1エア噴出孔41,第2エア噴出孔42)と、を備え、前記エア噴出口が、前記回転軸を中心とする同一円周上に複数配設され、前記エア噴出孔が、前記区域(例えば、後述の第1区域410,第2区域420)ごとに異なる傾斜角度で前記円周方向に傾斜して複数配設された回転霧化式塗装装置を用いることが好ましい。
【0012】
この発明では、回転霧化頭の回転軸を中心とする同一円周上にエア噴出口を設けるとともに、このエア噴出口を開口部とするエア噴出孔を、円周方向に区分けされた区域ごとに異なる傾斜角度で円周方向に傾斜させて設けた回転霧化式塗装装置を用いた。
これにより、エア噴出口から噴出されるシェーピングエアは、回転霧化頭の回転軸に対して、区域ごとに異なるねじれ角度をもって、ねじれた方向に噴出される。ここで、シェーピングエアのねじれ角度と、回転霧化頭で霧化された塗料の噴出角度を規制する規制力とは相関関係にあり、エアのねじれ角度を調整することによって塗布パターン幅を調整できることが本発明者らの研究により見出されている。
従って、この発明によれば、回転霧化頭で霧化された塗料の噴出角度を規制する規制力を区域ごとに異なるものとすることができるため、塗布パターンの形状を非対称に変形させることができる。よって、上記発明の効果が確実に奏される。
【0013】
また、前記回転霧化式塗装装置として、前記回転霧化頭と、前記回転霧化頭を囲繞して形成され、前記シェーピングエアを噴出するエア噴出口(例えば、後述の第1エア噴出口411A,第2エア噴出口421A)と、を備え、前記エア噴出口が、前記回転軸を中心とする同一円周上に複数配設され、前記エア噴出口の開口面積が、前記区域(例えば、後述の第1区域410A,第2区域420A)ごとに異なる回転霧化式塗装装置を用いることが好ましい。
【0014】
この発明では、回転霧化頭の回転軸を中心とする同一円周上にエア噴出口を設けるとともに、このエア噴出口の開口面積を、区域ごとに異なるように設定した回転霧化式塗装装置を用いた。
ここで、エア噴出口に供給されるエアの流量が一定のときに、エア噴出口の開口面積を大きくすると、噴出されるエアの流速が低下して、回転霧化頭で霧化された塗料の噴出角度を規制する規制力が弱くなる。一方、エア噴出口の開口面積を小さくすると、噴出されるエアの流速が上昇して、かかる規制力が強くなる。
従って、この発明によれば、区域ごとに異なる流速でエアを噴出できるので、区域ごとに異なる規制力で塗料の噴出角度を規制できる。即ち、区域ごとに異なる噴出角度で塗料を噴出でき、塗布パターンの形状を非対称に変形させることができる。よって、上記発明の効果が確実に奏される。
【0015】
また、前記回転霧化式塗装装置として、前記エア噴出口が、前記区域ごとに個別のエア供給手段(例えば、後述の第1エア供給部51,第2エア供給部52)に接続された回転霧化式塗装装置を用いることが好ましい。
【0016】
この発明では、エア噴出口を、円周方向の区域ごとに個別のエア供給手段に接続させ、区域ごとにエアを供給するように構成した回転霧化式塗装装置を用いた。
ここで、エア噴出口から噴出されるエアの流量を大きくすると、回転霧化頭で霧化された塗料の噴出角度を規制する規制力が強くなる。一方、エア噴出口から噴出されるエアの流量を小さくすると、かかる規制力が弱くなる。
従って、この発明によれば、区域ごとに異なる流量でエアを噴出できるので、区域ごとに異なる規制力で塗料の噴出角度を規制できる。即ち、区域ごとに異なる噴出角度で塗料を噴出でき、塗布パターンの形状を非対称に変形させることができる。特に、円周方向の傾斜角度が大きいエア噴出孔や開口面積が大きいエア噴出口に対してエアの供給量を小さくし、円周方向の傾斜角度が小さいエア噴出孔や開口面積の小さいエア噴出口に対してエアの供給量を大きくすることにより、塗布パターンの形状をさらに非対称に変形させることができる。よって、上記発明の効果がより確実に奏される。
【0017】
また、被塗装物の端部以外の一般部分を塗装する際には、円周方向の傾斜角度が大きいエア噴出孔や開口面積が大きいエア噴出口に対してエアの供給量を大きくし、円周方向の傾斜角度が小さいエア噴出孔や開口面積の小さいエア噴出口に対してエアの供給量を小さくすることにより、塗布パターンの形状を対称の円形状に変形させることができ、効率良く塗装できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、塗布パターンを所望の形状に設定して塗装効率を向上できる静電塗装方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る静電塗装方法で用いる回転霧化式塗装装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】前記回転霧化式塗装装置の側面図である。
【図3】前記回転霧化式塗装装置の先端部分の断面図およびエア供給部の概略構成図である。
【図4】前記回転霧化式塗装装置のエアキャップを先端側から見たときの平面図である。
【図5】前記回転霧化式塗装装置の第2エア噴出孔の側断面模式図である。
【図6】前記回転霧化式塗装装置の第2エア噴出孔の平面模式図である。
【図7】前記回転霧化式塗装装置を用いて静電塗装を行ったときに形成される塗布パターンを示す図である。
【図8】前記実施形態に係る静電塗装方法の第1の例を適用して塗装を行ったときの様子を示す平面図である。
【図9】前記回転霧化式塗装装置を用いて被塗装物の右上端部の近傍を塗装するときの様子を示す図である。
【図10】前記実施形態に係る静電塗装方法の第2の例を適用して塗装を行ったときの様子を示す平面図である。
【図11】前記実施形態に係る静電塗装方法の第3の例を適用して塗装を行ったときの様子を示す平面図である。
【図12】第2実施形態に係る静電塗装方法で用いる回転霧化式塗装装置のエアキャップを先端側から見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る静電塗装方法で用いる回転霧化式塗装装置1の概略構成を示す斜視図である。図2は、回転霧化式塗装装置1の側面図である。
回転霧化式塗装装置1は、自動車のボディ2を静電塗装するものであり、ロボットアーム3の先端に取り付けられた円柱状のボディ部10と、先端部分が屈曲した略くの字形状でかつこのボディ部10の先端に着脱可能に設けられたヘッド部20と、を備える。
【0022】
図3は、ヘッド部20の先端部分の断面図およびエア供給部50の概略構成図である。
ヘッド部20は、図示しないエアモータと、このエアモータにより回転駆動される回転霧化頭22と、回転霧化頭22に塗料を供給する図示しない塗料供給部と、回転霧化頭22を囲繞するエアキャップ40と、これらを収容するハウジング25と、を備える。
【0023】
回転霧化頭22は、先端側に向かうに従って内径が大きくなる略円錐形状であり、ヘッド部20の先端に設けられる。回転霧化頭22は、回転軸Xを回転軸として回転可能に設けられている。
【0024】
エアキャップ40は、先端側に向かうに従って内径が大きくなる略円錐形状であり、ハウジング25に取り付けられる。エアキャップ40は、回転霧化頭22を囲繞して形成されており、このエアキャップ40の先端面400は、塗料の噴霧方向に対して回転霧化頭22の先端縁よりも後方側で、回転霧化頭22の途中に位置している。
【0025】
エアキャップ40の先端面400には、回転霧化頭22を囲繞して形成された第1エア噴出孔41および第2エア噴出孔42が、それぞれ複数設けられている。第1エア噴出孔41は、第1エア噴出口411を開口部として形成され、第2エア噴出孔42は、第2エア噴出口421を開口部として形成されている。これら第1エア噴出口411および第2エア噴出口421から、回転霧化頭22の回転方向とは反対の反回転方向に、シェーピングエアが噴出される。
【0026】
第1エア噴出孔41および第2エア噴出孔42について、図4を参照して詳しく説明する。
図4は、エアキャップ40を先端側から見たときの平面図である。図4に示すように、エアキャップ40の先端面400は環状であり、この環状の先端面400上には、回転霧化頭22の回転軸Xを中心とする同一円周上に配置された複数の第1エア噴出孔41および第2エア噴出孔42が穿設されている。
【0027】
複数の第1エア噴出孔41は、環状の先端面400を、回転軸Xを通る仮想線Yで均等に区分けしたときの一方の半環状部分(図4の上側部分)に、円周方向に等間隔に配置されている。これら複数の第1エア噴出孔41は、第1区域410を形成する。
複数の第2エア噴出孔42は、他方の半環状部分(図4の下側部分)に、円周方向に等間隔に配置されている。これら複数の第2エア噴出孔42は、第2区域420を形成する。
【0028】
第1エア噴出孔41の開口部である第1エア噴出口411の口径と、第2エア噴出孔42の開口部である第2エア噴出口421の口径は、同一に設定されている。
【0029】
図4に示すように、第1区域410の第1エア噴出孔41および第2区域420の第2エア噴出孔42は、いずれも、円周方向に傾斜して設けられている。
また、第1エア噴出孔41の円周方向の傾斜角度は、第2エア噴出孔42の円周方向の傾斜角度と異なったものとなっている。
【0030】
図5は、第2エア噴出孔42の側断面模式図である。説明の便宜上、図5では、第2エア噴出孔42を実線で示す。
図5に示すように、第2エア噴出孔42は、円周方向、具体的には回転霧化頭22の回転方向(図5の矢印R方向)とは反対の反回転方向に傾斜して設けられている。即ち、第2エア噴出孔42は、ヘッド部20の基端側から先端側に向かうに従い、回転霧化頭22の回転方向とは反対の反回転方向に傾斜して設けられている。
【0031】
図5において、第2エア噴出孔42の中心軸Cと、回転霧化頭22の回転軸Xと平行でかつエアキャップ40の先端面400に垂直な垂線Vとのなす角θc2は、第2エア噴出孔42の円周方向の傾斜角度を表している。本実施形態では、第2エア噴出孔42の円周方向の傾斜角度θc2は40°に設定されている。
また、図示はしないが、第1エア噴出孔41も第2エア噴出孔42と同様に、ヘッド部20の基端側から先端側に向かうに従い、回転霧化頭22の回転方向とは反対の反回転方向に傾斜して設けられている。また、第1エア噴出孔41の円周方向の傾斜角度θc1は、第2エア噴出孔42の傾斜角度θc2とは異なっており、本実施形態では15°に設定されている。
【0032】
図4に戻って、第1区域410の第1エア噴出孔41および第2区域420の第2エア噴出孔42は、いずれも、径方向にも傾斜して設けられている。
また、第1エア噴出孔41の径方向の傾斜角度は、第2エア噴出孔42の径方向の傾斜角度と異なったものとなっている。
【0033】
図6は、第2エア噴出孔42の平面模式図である。
図6に示すように、第2エア噴出孔42は、径方向、具体的には径方向内方に傾斜して設けられている。即ち、第2エア噴出孔42は、ヘッド部20の基端側から先端側に向かうに従い、径方向内方に傾斜して設けられている。
【0034】
図6において、第2エア噴出孔42の中心軸Cと、第2エア噴出口421が設けられている円周の接線Tとのなす角θd2は、第2エア噴出孔42の径方向の傾斜角度を表している。
また、図示はしないが、第1エア噴出孔41も第2エア噴出孔42と同様に、ヘッド部20の基端側から先端側に向かうに従い、径方向内方に傾斜して設けられている。また、第1エア噴出孔41の径方向の傾斜角度θd1は、第2エア噴出孔42の傾斜角度θd2とは異なったものとなっている。
【0035】
なお、径方向の傾斜角度は、エア噴出口の位置やエア噴出孔の円周方向の傾斜角度に応じて、回転霧化頭22の先端縁近傍に向かってエアが噴出されるように、適宜設定される。
【0036】
図3に戻って、エアキャップ40の内部には、第1エア噴出孔41に連通する複数の第1エア通路412と、第2エア噴出孔42に連通する複数の第2エア通路422が設けられている。
第1エア通路412は、後述する第1エア供給部51と接続され、この第1エア供給部51からエアが供給される。
第2エア通路422は、後述する第2エア供給部52と接続され、この第2エア供給部52からエアが供給される。
【0037】
エア供給部50は、第1エア供給部51と、第2エア供給部52と、エア供給源としてのエアコンプレッサ53と、を含んで構成される。
第1エア供給部51は、エアコンプレッサ53で圧縮された所定流量のエアを、エア噴出孔41に連通する第1エア通路412に供給する。
第2エア供給部52は、エアコンプレッサ53で圧縮された所定流量のエアを、エア噴出孔42に連通する第2エア通路422に供給する。
【0038】
第1エア供給部51は、第1エアバルブ511と、第1エア流量計512と、第1エアコントロールユニット(CU)513と、を備える。
第1エアバルブ511は、空気圧により駆動するエアバルブであり、図示しない電空変換機を介して第1エアコントロールユニット513に電気的に接続されている。
第1エア流量計512は、第1エアコントロールユニット513に電気的に接続されている。この第1エア流量計512は、第1エア通路412に供給するエアの流量を検出し、その検出信号を第1エアコントロールユニット513に出力する。
第1エアコントロールユニット513は、第1エア流量計512により検出されたエアの流量に基づいて、第1エアバルブ511の開度を制御する。
【0039】
第1エアコントロールユニット513は、図示しない電空変換機に電気信号を出力する。この電気信号は、電空変換機で空気圧信号に変換されて第1エアバルブ511に出力される。これにより、第1エアバルブ511の開度が正確に制御され、第1エア通路412に供給するエアの流量が正確に制御される。
【0040】
第2エア供給部52は、第2エアバルブ521と、第2エア流量計522と、第2エアコントロールユニット(CU)523と、を備える。
第2エアバルブ521は、空気圧により駆動するエアバルブであり、図示しない電空変換機を介して第2エアコントロールユニット523に電気的に接続されている。
第2エア流量計522は、第2エアコントロールユニット523に電気的に接続されている。この第2エア流量計522は、第2エア通路422に供給するエアの流量を検出し、その検出信号を第2エアコントロールユニット523に出力する。
第2エアコントロールユニット523は、第2エア流量計522により検出されたエアの流量に基づいて、第2エアバルブ521の開度を制御する。
【0041】
第2エアコントロールユニット523は、図示しない電空変換機に電気信号を出力する。この電気信号は、電空変換機で空気圧信号に変換されて第2エアバルブ521に出力される。これにより、第2エアバルブ521の開度が正確に制御され、第2エア通路422に供給するエアの流量が正確に制御される。
【0042】
第1エア供給部51から第1エア通路412にエアを供給すると、供給されたエアは、第1エア噴出孔41から回転霧化頭22の先端縁近傍に向かって噴出され、シェーピングエアとなる。このシェーピングエアは、回転霧化頭22の先端縁から噴霧される塗料の飛行パターン、即ち塗料の塗布パターンを変形させる。
同様に、第2エア供給部52から第2エア通路422にエアを供給すると、供給されたエアは、第2エア噴出孔42から回転霧化頭22の先端縁に向かって噴出され、シェーピングエアとなる。このシェーピングエアは、回転霧化頭22の先端縁から噴霧される塗料の飛行パターン、即ち塗料の塗布パターンを変形させる。
【0043】
次に、本実施形態で用いる回転霧化式塗装装置1の動作について説明する。
まず、エアコンプレッサ53から図示しないエアモータにエアを供給して、回転霧化頭22を高速で回転させる。さらに、図示しない電源からの電流を昇圧して、回転霧化頭22に高電圧の電流を印加する。
【0044】
次いで、図示しない塗料供給部から回転霧化頭22に塗料を供給する。すると、回転霧化頭22の内周面に塗料が吐出され、吐出された塗料は高電圧が印加されて帯電し、回転霧化頭22の遠心力によって霧化状態となり、回転霧化頭22から被塗装物に向かって噴霧される。
【0045】
また、塗料の噴霧と同時に、第1エア供給部51から第1エア通路412を介して第1エア噴出孔41にエアを供給し、第2エア供給部52から第2エア通路422を介して第2エア噴出孔42にエアを供給する。すると、第1エア噴出口411および第2エア噴出口421から、シェーピングエアが回転霧化頭22の先端縁に向かって噴出される。
【0046】
このとき、第1エア噴出口411から噴出されるエアと、第2エア噴出口421から噴出されるエアは、回転軸Xに対して異なるねじれ角度をもって、回転霧化頭22の回転方向とは反対の反回転方向に噴出される。反回転方向に噴出されたエアは、回転霧化頭22の先端縁から噴霧された塗料と衝突し、塗料の微粒子化が促進される。また、これにより、回転霧化頭22の先端縁から噴霧される塗料の飛行パターン、即ち塗料の塗布パターンが、非対称に変形される。
【0047】
また、第1エア供給部51から第1エア通路412を介して第1エア噴出孔41に供給するエアの流量と、第2エア供給部52から第2エア通路422を介して第2エア噴出孔42に供給するエアの流量を、個別に適宜調整する。特に、円周方向の傾斜角度の小さい第1エア噴出孔41に供給するエアの流量を大きくし、傾斜角度の大きい第2エア噴出孔42に供給するエアの流量を小さくすると、塗布パターンがより非対称に変形される。
以上のようにして、静電塗装が行われる。
【0048】
以上のように動作する回転霧化式塗装装置1を用いた本実施形態に係る静電塗装方法について、具体例を挙げて説明する。
図7は、回転霧化式塗装装置1を用いて静電塗装を行ったときに形成される塗布パターンを示す図である。
図7(a)は、第1区域410を構成する第1エア噴出孔41へのエアの供給量と、第2区域420を構成する第2エア噴出孔42へのエアの供給量を同一の流量に設定したときの塗布パターンPAを示す図である。図7(a)に示すように、第1区域410を構成する第1エア噴出孔41の円周方向の傾斜角度(15°)は、第2区域420を構成する第2エア噴出孔42の円周方向の傾斜角度(40°)よりも小さく設定されているため、第1区域410側の塗布パターン幅が狭く、非対称の塗布パターンPAが形成される。
【0049】
これに対して、図7(b)は、円周方向の傾斜角度の小さい第1エア噴出孔41に供給するエアの流量を小さくし、円周方向の傾斜角度の大きい第2エア噴出孔42に供給するエアの流量を大きく設定したときに形成される塗布パターンPSを示す図である。具体的には、略円形状の対称な塗布パターンPSが形成されるように、予め実験を行うことによって設定されたエア供給量に調整したものである。
このように、回転霧化式塗装装置1では、第1区域410を構成する第1エア噴出孔41へのエアの供給量と、第2区域420を構成する第2エア噴出孔42へのエアの供給量とを個別に制御することにより、塗布パターンを所望の形状に変形できることが判る。
【0050】
図8は、略矩形状の板状部材である被塗装物Wに対して、本実施形態に係る静電塗装方法の第1の例を適用して塗装を行ったときの様子を示す平面図である。この第1の例は、回転霧化式塗装装置1を、被塗装物Wの左右方向に直線的に往復移動させながら塗装を行う例である。
【0051】
先ず、被塗装物Wの左上端部から塗装を開始する際には、第1エア噴出孔41で構成された第1区域410を、上方、即ち被塗装物Wの外側に向ける。このとき、第1エア噴出孔41へのエアの供給量と、第2エア噴出孔42へのエアの供給量を同一の流量に設定する。これにより、非対称の塗布パターンPAが形成されるとともに、パターン幅の狭い領域が被塗装物Wの外側に向いた状態で塗装が行われる。そして、この状態のまま、回転霧化式塗装装置1を右方向に直線的に移動させ、被塗装物Wの右上端部の近傍まで移動させる。
【0052】
図9(a)〜(e)は、被塗装物Wの右上端部の近傍を塗装するときの様子を示す図である。なお、図9では、回転霧化式塗装装置1の記載を便宜上省略する。
上述したように、上記の状態を保ったまま、回転霧化式塗装装置1を右方向に移動させ(図9(a)参照)、右上端部の近傍に達したときには、回転霧化式塗装装置1を右回転させて(図9(b)参照)、第1区域410を右方向に向ける。これにより、パターン幅の狭い領域が右方向、即ち被塗装物Wの外側に向いた状態で塗装が行われる。
【0053】
次いで、第1区域410を右方向に向けたまま、パターン幅の狭い領域が被塗装物Wの外側に向いた状態で、下方に所定距離移動させる(図9(c)参照)。このとき、第1エア噴出孔41へのエアの供給量と第2エア噴出孔42へのエアの供給量は、同一の流量のままとする。
【0054】
次いで、回転霧化式塗装装置1を左方向に直線的に移動させ(図9(d)参照)、略円形状の対称な塗布パターンPSが形成されるように、予め実験を行うことによって設定されたエア供給量に従って、円周方向の傾斜角度の小さい第1エア噴出孔41へのエアの供給量を小さくし、円周方向の傾斜角度の大きい第2エア噴出孔42へのエアの供給量を大きくする(図9(e)参照)。これにより、略円形状の対称な塗布パターンPSが形成されて、被塗装物Wの端部以外の一般部分が効率良く塗装される。
【0055】
図8に戻って、回転霧化式塗装装置1が被塗装物Wの左端部の近傍に達したときには、回転霧化式塗装装置1を左回転させて第1区域410を左方向に向けつつ、下方に所定距離移動させる。このとき、第1エア噴出孔41へのエアの供給量と第2エア噴出孔42へのエア供給量は、同一の流量に設定する。これにより、非対称の塗布パターンPAが形成されるとともに、パターン幅の狭い領域が左方向、即ち被塗装物Wの外側に向いた状態で塗装が行われる。
【0056】
以上のように、被塗装物Wの端部においては、非対称の塗布パターンPAを形成して、パターン幅の狭い領域が被塗装物Wの外側に向くようにして塗装を行い、被塗装物Wの端部以外の一般部分においては、略円形状の対称な塗布パターンPSを形成して塗装を行う。このような操作を繰り返すことで、被塗装物Wの形状に対する追従性が向上し、オーバースプレーが抑制された効率の良い塗装が行われる。
【0057】
また、図10は、略矩形状の板状部材である被塗装物Wに対して、本実施形態に係る静電塗装方法の第2の例を適用して塗装を行ったときの様子を示す平面図である。この第2の例は、回転霧化式塗装装置1を、被塗装物Wの端縁に沿って移動させ、四方の端部を塗装した後、端部以外の一般部分を、左右方向に直線的に往復移動させながら塗装を行う例である。
この第2の例においても、上記第1の例と同様に、被塗装物Wの端部においては、非対称の塗布パターンPAを形成して、パターン幅の狭い領域が被塗装物Wの外側に向くようにして塗装を行い、被塗装物Wの端部以外の一般部分においては、略円形状の対称な塗布パターンPSを形成して塗装を行う。このような操作を繰り返すことで、被塗装物Wの形状に対する追従性が向上し、オーバースプレーが抑制された効率の良い塗装が行われる。
また、この第2の例は、被塗装物Wの四方の端部を先に塗装するため、上記の第1の例と比較して、塗布パターン形状の切り換え、即ちエア供給量の切り換えの回数を低減できる点で有効な塗装方法である。
【0058】
また、図11は、略矩形状の板状部材である被塗装物Wに対して、本実施形態に係る静電塗装方法の第3の例を適用して塗装を行ったときの様子を示す平面図である。この第3の例は、回転霧化式塗装装置1を、被塗装物Wの端縁に沿って移動させ、四方の端部を塗装した後、端部以外の一般部分を、上下方向に直線的に往復移動させながら塗装を行う例である。
この第3の例においても、上記第1の例および第2の例と同様に、被塗装物Wの端部においては、非対称の塗布パターンPAを形成して、パターン幅の狭い領域が被塗装物Wの外側に向くようにして塗装を行い、被塗装物Wの端部以外の一般部分においては、略円形状の対称な塗布パターンPSを形成して塗装を行う。このような操作を繰り返すことで、被塗装物Wの形状に対する追従性が向上し、オーバースプレーが抑制された効率の良い塗装が行われる。
また、この第3の例は、上記の第2の例と同様に、被塗装物Wの四方の端部を先に塗装するため、上記の第1の例に比して、塗布パターン形状の切り換え、即ちエア供給量の切り換えの回数を低減できる点で有効な塗装方法である。
【0059】
本実施形態に係る静電塗装方法によれば、以下の効果が奏される。
(1)本実施形態では、先ず、帯電した塗料が噴霧される回転霧化頭22の先端縁近傍に向けて、回転軸Xを中心とする円周方向に区分けされた第1区域410と第2区域420とで塗料の噴出角度を規制する規制力が異なるシェーピングエアを噴出することにより、非対称な形状の塗布パターンPAを形成した。そして、被塗装物Wの端部を塗装する際に、塗布パターン幅が狭い領域を被塗装物Wの外側に向けて塗装を行うようにした。
これにより、パターン幅が狭い領域を被塗装物Wの外側に向けて塗装できるため、従来問題となっていたオーバースプレーを抑制できる。従って、本実施形態によれば、塗着効率、即ち塗装効率を向上できる。
【0060】
(2)また、本実施形態では、回転霧化頭22の回転軸Xを中心とする同一円周上に第1エア噴出口411および第2エア噴出口421を設けるとともに、第1エア噴出口411を開口部とする第1エア噴出孔41を第1区域、第2エア噴出口421を開口部とする第2エア噴出孔42を第2区域として、これらのエア噴出孔を円周方向に区分けした区域ごとに異なる傾斜角度で円周方向に傾斜させて設けた回転霧化式塗装装置1を用いた。
これにより、第1エア噴出口411および第2エア噴出口421から噴出されるシェーピングエアは、回転霧化頭22の回転軸Xに対して異なるねじれ角度をもって、ねじれた方向に噴出される。ここで、シェーピングエアのねじれ角度と、回転霧化頭22で霧化された塗料の噴出角度を規制する規制力とは相関関係にあり、エアのねじれ角度を調整することによって、塗布パターン幅を調整できることが本発明者らの今回の研究により見出されている。
従って、本実施形態によれば、回転霧化頭22で霧化された塗料の噴出角度を規制する規制力を第1区域410と第2区域420とで異なるものとすることができるため、塗布パターンの形状を非対称に変形させることができる。よって、上記の効果が確実に奏される。
【0061】
(3)また、本実施形態によれば、第1エア噴出口411に第1エア供給部51を接続し、第2エア噴出口421に第2エア供給部52を接続することで、第1区域410と第2区域420とで個別にエアを供給するように構成した回転霧化式塗装装置1を用いた。
ここで、エア噴出口から噴出されるエアの流量を大きくすると、回転霧化頭22で霧化された塗料の噴出角度を規制する規制力が強くなる。一方、エア噴出口から噴出されるエアの流量を小さくすると、かかる規制力が弱くなる。
従って、本実施形態によれば、第1区域410と第2区域420とで異なる流量でエアを噴出できるので、区域ごとに異なる規制力で塗料の噴出角度を規制できる。即ち、区域ごとに異なる噴出角度で塗料を噴出でき、塗布パターンの形状を非対称に変形させることができる。特に、円周方向の傾斜角度が大きい第2エア噴出孔42に対してエアの供給量を小さくし、円周方向の傾斜角度が小さい第1エア噴出孔41に対してエアの供給量を大きくすることにより、塗布パターンの形状をさらに非対称に変形させることができる。よって、上記の効果がより確実に奏される。
【0062】
また、被塗装物Wの端部以外の一般部分を塗装する際には、円周方向の傾斜角度が大きい第2エア噴出孔42に対してエアの供給量を大きくし、円周方向の傾斜角度が小さい第1エア噴出孔41に対してエアの供給量を小さくすることにより、塗布パターンの形状を対称の円形状に変形させることができ、効率良く塗装できる。
【0063】
なお、本発明は上記第1実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【0064】
例えば、上記第1実施形態では第1区域および第2区域の2つの区域を設けたが、これに限定されない。具体的には、第1エア噴出孔41や第2エア噴出孔42とは円周方向の傾斜角度が異なる第3エア噴出孔および第4エア噴出孔を設け、第3エア噴出孔から形成される第3区域および第4エア噴出孔から形成される第4区域を設けてもよい。
【0065】
また、上記第1実施形態では、第1エア噴出孔41および第2エア噴出孔42を、回転霧化頭22の反回転方向に傾斜させたが、これに限定されない。これらのエア噴出孔を、回転霧化頭22の回転方向に傾斜させてもよい。
【0066】
また、上記第1実施形態では、第1エア噴出孔41および第2エア噴出孔42を、径方向内方に傾斜させたが、これに限定されない。例えば、これらのエア噴出孔を、径方向外方に傾斜させてもよい。
【0067】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る静電塗装方法では、第1実施形態に係る静電塗装方法で用いる回転霧化式塗装装置1のエア噴出口およびエア噴出孔の構成を変更した回転霧化式塗装装置を用いる。具体的には、本実施形態では、第1エア噴出孔の円周方向の傾斜角度と第2エア噴出孔の円周方向の傾斜角度を同一の傾斜角度とし、第1エア噴出口の口径を第2エア噴出口の口径よりも小さく形成した回転霧化式塗装装置を用いる。
【0068】
図12は、第2実施形態に係る静電塗装方法で用いる回転霧化式塗装装置のエアキャップ40Aを先端側から見たときの平面図である。
第1区域410Aの第1エア噴出口411Aの口径と、第2区域420Aの第2エア噴出口421Aの口径は、互いに異なる大きさに設定されている。具体的には、第2エア噴出口421Aの口径は、第1エア噴出口411Aの口径Cの1.50倍の1.50Cに設定されている。従って、第2区域420Aの第2エア噴出口421Aは、第1区域410Aの第1エア噴出口411Aに比して、その開口面積が大きく設定されている。
【0069】
第1エア噴出孔41Aおよび第2エア噴出孔42Aは、いずれも、円周方向、具体的には回転霧化頭22の回転方向(図12の矢印R方向)とは反対の反回転方向に傾斜して設けられている。即ち、これら第1エア噴出孔41Aおよび第2エア噴出孔42Aは、ヘッド部20の基端側から先端側に向かうに従い、回転霧化頭22の反回転方向に傾斜して設けられている。
また、第1エア噴出孔41Aの反回転方向の傾斜角度と、第2エア噴出孔42Aの反回転方向の傾斜角度は、同一の大きさに設定されている。この反回転方向の傾斜角度は、エア噴出口から噴出されるエアの回転軸Xに対するねじれ角度を表しており、所望の角度に適宜設定される。
【0070】
第1エア噴出孔41Aおよび第2エア噴出孔42Aは、いずれも、径方向、具体的には径方向内方にも傾斜して設けられている。即ち、これら第1エア噴出孔41Aおよび第2エア噴出孔42Aは、ヘッド部20の基端側から先端側に向かうに従い、径方向内方に傾斜して設けられている。
また、第1エア噴出孔41Aの径方向の傾斜角度と、第2エア噴出孔42Aの径方向の傾斜角度は、同一の大きさに設定されている。この径方向の傾斜角度は、エア噴出口の位置やエア噴出孔の円周方向の傾斜角度に応じて、回転霧化頭22の先端縁近傍に向かってエアが噴出されるように、適宜設定される。
【0071】
次に、本実施形態に係る回転霧化式塗装装置の動作について説明する。
まず、エアコンプレッサ53からエアモータにエアを供給して、回転霧化頭22を高速で回転させる。さらに、電源からの電流を昇圧して、回転霧化頭22に高電圧の電流を印加する。
【0072】
次いで、塗料供給部から回転霧化頭22に塗料を供給する。すると、回転霧化頭22の内周面に塗料が吐出され、吐出された塗料は高電圧が印加されて帯電し、回転霧化頭22の遠心力によって霧化状態となり、回転霧化頭22から被塗装物に向かって噴霧される。
【0073】
また、塗料の噴霧と同時に、第1エア供給部51から第1エア通路412を介して第1エア噴出孔41Aにエアを供給し、第2エア供給部52から第2エア通路422を介して第2エア噴出孔42Aにエアを供給する。すると、第1エア噴出口411Aおよび第2エア噴出口421Aから、シェーピングエアが回転霧化頭22の先端縁に向かって噴出される。
【0074】
このとき、第1エア噴出口411Aから噴出されるエアと、第2エア噴出口421Aから噴出されるエアは、回転軸Xに対して同一のねじれ角度をもって、回転霧化頭22の回転方向とは反対の反回転方向に噴出される。反回転方向に噴出されたエアは、回転霧化頭22の先端縁から噴霧された塗料と衝突し、これにより、塗料の微粒子化が促進される。
【0075】
また、第1エア噴出口411Aに供給するエアの流量と、第2エア噴出口421Aに供給するエアの流量とを、個別に制御する。第1エア噴出口411Aに供給されるエアの流量と第2エア噴出口421Aに供給されるエアの流量とを同一に設定すると、開口面積の小さい第1エア噴出口411Aから噴出されるエアは、開口面積の大きい第2エア噴出口421Aから噴出されるエアよりも、大きな流速をもって噴出される。これにより、回転霧化頭22の先端縁から噴霧される塗料の飛行パターン、即ち塗料の塗布パターンが非対称に変形される。
【0076】
特に、開口面積の小さい第1エア噴出口411Aに供給するエアの流量を大きくし、開口面積の大きい第2エア噴出口421Aに供給するエアの流量を小さく設定すると、塗布パターンがより非対称に変形される。
以上のようにして、静電塗装が行われる。
【0077】
以上のように動作する回転霧化式塗装装置を用いた第2実施形態に係る静電塗装方法では、第1実施形態と同様に、上記第1の例から第3の例を適用して塗装を行うことができる。
【0078】
本実施形態に係る静電塗装方法によれば、上述した第1実施形態に係る静電塗装方法の効果(2)および(3)の代わりに、以下の(2A)および(3A)の効果が奏される。
【0079】
(2A)本実施形態によれば、回転霧化頭22の回転軸Xを中心とする同一円周上に第1エア噴出口411Aおよび第2エア噴出口421Aを設けるとともに、これら第1エア噴出口411Aの開口面積と第2エア噴出口421Aの開口面積が異なるように設定した回転霧化式塗装装置を用いた。
ここで、エア噴出口に供給されるエアの流量が一定のときに、エア噴出口の開口面積を大きくすると、噴出されるエアの流速が低下して、回転霧化頭で霧化された塗料の噴出角度を規制する規制力が弱くなる。一方、エア噴出口の開口面積を小さくすると、噴出されるエアの流速が上昇して、かかる規制力が強くなる。
従って、本実施形態によれば、第1区域410Aと第2区域420Aとで異なる流速でエアを噴出できるので、区域ごとに異なる規制力で塗料の噴出角度を規制できる。即ち、区域ごとに異なる噴出角度で塗料を噴出でき、塗布パターンの形状を非対称に変形させることができる。よって、被塗装物Wの端部を塗装する際に、パターン幅が狭い領域を被塗装物Wの外側に向けて塗装できるため、従来問題となっていたオーバースプレーを抑制でき、塗装効率を向上できる。
【0080】
(3A)また、本実施形態によれば、第1エア噴出口411Aに第1エア供給部51を接続し、第2エア噴出口421Aに第2エア供給部52を接続することで、第1区域410Aと第2区域420Aとで個別にエアを供給するように構成した回転霧化式塗装装置を用いた。
ここで、エア噴出口から噴出されるエアの流量を大きくすると、回転霧化頭22で霧化された塗料の噴出角度を規制する規制力が強くなる。一方、エア噴出口から噴出されるエアの流量を小さくすると、かかる規制力が弱くなる。
従って、本実施形態によれば、第1区域410Aと第2区域420Aとで異なる流量でエアを噴出できるので、区域ごとに異なる規制力で塗料の噴出角度を規制できる。即ち、区域ごとに異なる噴出角度で塗料を噴出でき、塗布パターンの形状を非対称に変形させることができる。特に、開口面積が大きい第2エア噴出孔42Aに対してエアの供給量を小さくし、開口面積が小さい第1エア噴出孔41Aに対してエアの供給量を大きくすることにより、塗布パターンの形状をさらに非対称に変形させることができる。よって、上記の効果がより確実に奏される。
【0081】
また、被塗装物Wの端部以外の一般部分を塗装する際には、開口面積が大きい第2エア噴出孔42Aに対してエアの供給量を大きくし、開口面積が小さい第1エア噴出孔41Aに対してエアの供給量を小さくすることにより、塗布パターンの形状を対称の円形状に変形させることができ、効率良く塗装できる。
【0082】
なお、本発明は上記第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【0083】
例えば、上記第2実施形態では第1区域410Aおよび第2区域420Aの2つの区域を設けたが、これに限定されない。具体的には、第1エア噴出口411Aや第2エア噴出口421Aとは開口面積の異なる第3エア噴出口および第4エア噴出口を設け、第3エア噴出口から形成される第3区域および第4エア噴出口から形成される第4区域を設けてもよい。
【0084】
また、上記第2実施形態では、第1エア噴出孔41Aおよび第2エア噴出孔42Aを、回転霧化頭22の反回転方向に傾斜させたが、これに限定されない。これらのエア噴出孔を、回転霧化頭22の回転方向に傾斜させてもよい。
【0085】
また、上記第2実施形態では、第1エア噴出孔41Aおよび第2エア噴出孔42Aを、径方向内方に傾斜させたが、これに限定されない。例えば、これらのエア噴出孔を、径方向外方に傾斜させてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…回転霧化式塗装装置
22…回転霧化頭
41,41A…第1エア噴出孔(エア噴出孔)
42,42A…第2エア噴出孔(エア噴出孔)
51…第1エア供給部(エア供給手段)
52…第2エア供給部(エア供給手段)
410,410A…第1区域(区域)
420,420A…第2区域(区域)
411,411A…第1エア噴出口(エア噴出口)
421,421A…第2エア噴出口(エア噴出口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転霧化式塗装装置を用いて、被塗装物を静電塗装する静電塗装方法であって、
前記回転霧化式塗装装置の回転霧化頭の先端縁から帯電した塗料を霧化して噴出するとともに、当該回転霧化頭の回転軸を中心とする円周方向に区分けされた区域ごとに塗料の噴出角度を規制する規制力が異なるシェーピングエアを、前記回転霧化頭の先端縁近傍に向けて噴出することで、非対称な形状の塗布パターンを形成し、
前記被塗装物の端部を塗装する際には、前記塗布パターンのうちパターン幅の狭い領域が前記被塗装物の外側に向くようにして塗装することを特徴とする静電塗装方法。
【請求項2】
請求項1記載の静電塗装方法において、前記回転霧化式塗装装置として、
前記回転霧化頭と、前記回転霧化頭を囲繞して形成され、前記シェーピングエアを噴出するエア噴出口を開口部とするエア噴出孔と、を備え、
前記エア噴出口が、前記回転軸を中心とする同一円周上に複数配設され、
前記エア噴出孔が、前記区域ごとに異なる傾斜角度で前記円周方向に傾斜して複数配設された回転霧化式塗装装置を用いることを特徴とする静電塗装方法。
【請求項3】
請求項1記載の静電塗装方法において、前記回転霧化式塗装装置として、
前記回転霧化頭と、前記回転霧化頭を囲繞して形成され、前記シェーピングエアを噴出するエア噴出口と、を備え、
前記エア噴出口が、前記回転軸を中心とする同一円周上に複数配設され、
前記エア噴出口の開口面積が、前記区域ごとに異なる回転霧化式塗装装置を用いることを特徴とする静電塗装方法。
【請求項4】
請求項2または3記載の静電塗装方法において、前記回転霧化式塗装装置として、
前記エア噴出口が、前記区域ごとに個別のエア供給手段に接続された回転霧化式塗装装置を用いることを特徴とする静電塗装方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−212632(P2011−212632A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85413(P2010−85413)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】