説明

静電塗装装置

【課題】 導電性塗料の塗装時に廃棄される塗料の量、洗浄液体の使用量を削減し、洗浄時間の短縮、塗装効率の向上を図る。
【解決手段】 塗装終了後に第1,第2の吐出流路29,32に残存する塗料を、それぞれのタンク6,18に回収する回収弁51を設ける構成とした。従って、例えば回収弁51によって加圧エア源25からの加圧エアを第1の吐出流路29に供給し、この第1の吐出流路29内の残存塗料を、第1のタンク6に回収して内部を空にして絶縁状態にする。同様に、第2の吐出流路32内の残存塗料も、第2のタンク18に回収することができる。一方、供給流路45、ポンプユニット47、塗装機3等からなる塗料ライン60は、塗装終了後に洗浄弁57により洗浄する。これにより、廃棄される塗料の量を削減し、洗浄する範囲を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水性塗料等のような導電性塗料に高電圧を印加し、被塗物に噴霧するのに用いて好適な静電塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被塗物を塗装する静電塗装装置は、直接帯電により高電圧が印加された帯電塗料を噴霧する塗装機を備え、塗料源から塗料を該塗装機に向け供給する構成となっている。この場合、水性塗料のように電気抵抗値が低い導電性塗料に高電圧を直接的に印加する直接帯電式の静電塗装装置では、塗料に印加した高電圧がアース電位にリークするのを防止する必要がある。従って、この種の静電塗装装置では、塗装作業中には塗装機と塗料源との途中部位をアース電位に対して開成(切断)する構成としている。即ち、塗装作業時には、タンク等の塗料源側をアース電位に対して浮かせた状態とする。
【0003】
ここで、従来技術の静電塗装装置は、塗料源からの塗料を一時的に貯える液体リザーバと、この液体リザーバから塗料を吐出するホースとからなる塗料の供給系統を2系統設け、該各ホースは、コイル選択マニホールドにより他のホースを介して静電スプレーガンに選択的に接続する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−2885号公報
【0005】
この特許文献1による静電塗装装置を使用して塗装する場合には、コイル選択マニホールドにより一方の液体リザーバを他のホースを介して静電スプレーガンに接続する。この状態で、一方の液体リザーバ内の塗料をホース、他のホース等を介して静電スプレーガンに供給し、該静電スプレーガンから被塗物に向けて噴霧する。
【0006】
また、一方の液体リザーバを使用して塗装しているときには、並行して他方の液体リザーバに次色の塗料を充填することができる。この場合には、液体リザーバとコイル選択マニホールドとの間のホース内等に残存した塗料を排出し、付着塗料を洗浄する。これにより、他方の液体リザーバは、一方の液体リザーバから静電スプレーガンに至る塗料供給ラインと電気的に開成(切断)できるから、塗料に印加した高電圧が他方の液体リザーバからアース電位にリークするのを防止することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1による静電塗装装置は、一方の液体リザーバと他方の液体リザーバとを切換える度に、液体リザーバとコイル選択マニホールドとの間のホース内に残存した塗料を排出しなくてはならない。しかも、ホース内に付着した塗料も切換える度に洗浄溶剤を用いて洗浄しなくてはならない。
【0008】
このために、特許文献1の静電塗装装置は、ホースから無駄に廃棄される塗料の量が増大し、洗浄溶剤の使用量も増大してしまう。これにより、洗浄作業に時間がかかる上に、洗浄溶剤の使用量も増えるから、塗装効率の低下、塗装コストの上昇を招くという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、水性塗料等の導電性塗料を用いて塗装作業を行うに際し、塗料の廃棄量、洗浄液体の使用量を削減することにより、洗浄時間を短縮して塗装効率を向上できるようにした静電塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による静電塗装装置は、供給される塗料に高電圧を印加し被塗物に向けて噴霧する噴霧手段と、塗料を貯える2つの独立した容器からなる第1,第2のタンクと、該第1,第2のタンクに塗料源からの塗料を充填する第1,第2の充填流路と、前記第1,第2のタンクに貯えられた塗料を吐出する第1,第2の吐出流路と、一端が該第1,第2の吐出流路に合流して接続され他端が前記噴霧手段に接続された供給流路と、前記第1,第2の吐出流路と供給流路とに接続して設けられ、前記第1,第2の吐出流路を供給流路に切換えて接続する吐出流路切換弁と、前記第1,第2の吐出流路に接続して設けられ、該吐出流路切換弁により一方の吐出流路から他方の吐出流路に切換えた後に前記一方の吐出流路内の残存塗料を一方のタンクに回収するために、加圧エア源からの加圧エアを前記一方の吐出流路に供給する回収弁と、前記供給流路に接続して設けられ、前記噴霧手段による塗装作業の終了後に、前記供給流路と噴霧手段とに残存する塗料を洗浄するために、加圧エア源からの加圧エアと洗浄液体源からの洗浄液体を供給する洗浄弁と、前記第1,第2のタンクにそれぞれ設けられ、塗装作業のために前記噴霧手段に向け塗料を供給している前記一方のタンクをアースに対して開成するアーススイッチとにより構成してなる。
【0011】
請求項2の発明は、前記回収弁は、前記加圧エア源と前記第1の吐出流路との間に設けられた第1の回収エア供給弁と、前記加圧エア源と第2の吐出流路との間に設けられた第2の回収エア供給弁とを備えてなる。
【0012】
請求項3の発明は、前記第1,第2の充填流路には、前記吐出流路切換弁により前記一方の吐出流路から他方の吐出流路に切換えられた後に、前記一方のタンクに塗料を充填する充填弁と、該充填弁により前記タンクに塗料を充填するときにタンク内のエアを排出する排気弁とをそれぞれ設ける構成としている。
【0013】
請求項4の発明は、前記第1,第2のタンク内に加圧エア源からの加圧エアを供給し前記第1,第2のタンクに充填された塗料を押出す塗料押出し弁を設ける構成としている。
【0014】
請求項5の発明は、前記第1,第2のタンクは、絶縁性材料を用いた容器として形成し、該容器には、塗料流通孔を有する二室画成板によって上側の高電圧遮断室と下側の塗料収容室とに画成し、前記容器の上部側には該二室画成板の塗料流通孔を介して高電圧遮断室から塗料収容室に塗料を流入する塗料流入口を設け、前記容器の下部側には前記塗料収容室内の塗料を流出する塗料流出口を設ける構成としている。
【0015】
請求項6の発明は、一端が前記吐出流路の途中から分岐し他端が前記タンクの塗料収容室に連通した回収流路を設け、前記吐出流路には、前記回収流路の分岐位置とタンクとの間に位置して前記噴霧手段に向けて塗料を供給するときに開弁するタンク流出弁を設け、前記回収流路には、前記タンクに向けて塗料を回収するときに開弁するタンク回収弁を設ける構成としている。
【0016】
また、請求項7の発明による静電塗装装置は、供給される塗料に高電圧を印加し被塗物に向けて噴霧する噴霧手段と、二液型塗料の主剤を貯える2つの独立した容器からなる第1,第2のタンクと、該第1,第2のタンクに主剤源からの主剤を充填する第1,第2の充填流路と、前記第1,第2のタンクに貯えられた主剤を吐出する第1,第2の吐出流路と、一端が該第1,第2の吐出流路に合流して接続され他端が前記噴霧手段に接続された主剤供給流路と、前記第1,第2の吐出流路と主剤供給流路とに接続して設けられ、前記第1,第2の吐出流路を主剤供給流路に切換えて接続する吐出流路切換弁と、前記第1,第2の吐出流路に接続して設けられ、該吐出流路切換弁により一方の吐出流路から他方の吐出流路に切換えた後に前記一方の吐出流路内の残存主剤を一方のタンクに回収するために、加圧エア源からの加圧エアを前記一方の吐出流路に供給する回収弁と、前記主剤供給流路に接続して設けられ、前記噴霧手段による塗装作業の終了後に、前記主剤供給流路と噴霧手段とに残存する主剤を洗浄するために、加圧エア源からの加圧エアと洗浄液体源からの洗浄液体を供給する主剤側洗浄弁と、前記第1,第2のタンクにそれぞれ設けられ、塗装作業のために前記噴霧手段に向け主剤を供給している前記一方のタンクをアースに対して開成(切断)するアーススイッチと、一端が二液型塗料の硬化剤源に接続され他端が前記供給流路に合流した硬化剤供給流路と、該硬化剤供給流路に設けられ、硬化剤源からの硬化剤と洗浄用の加圧エア、洗浄液体とを選択して前記噴霧手段に向け供給する選択供給弁とにより構成してなる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、まず、第1のタンクを使用した塗装工程では、塗料源からの塗料を第1の充填流路を通じて第1のタンクに充填する。次に、第1の吐出流路を供給流路に接続するように吐出流路切換弁を切換える。この状態で、第1のタンクから第1の吐出流路、供給流路を経由して噴霧手段に塗料を供給し、該噴霧手段から被塗物に向けて塗料を噴霧する。
【0018】
また、第1のタンクを使用した塗装工程では、第1のアーススイッチにより第1のタンクをアース電位に対して開成(切断)し、この上で、噴霧手段から噴霧する塗料に高電圧を印加する。これにより、例えば電気抵抗値が低い水性塗料、メタリック塗料を塗装する場合でも、塗料を伝わって高電圧がリークするのを防止でき、良好な静電塗装を行うことができる。一方、第1のタンクを使用した塗装工程では、第2のタンクに塗料を充填することができる。
【0019】
そして、第1のタンクに充填した塗料の塗装が終了したら、第1の吐出流路内を電気的に絶縁するために、第1の吐出流路に残存した塗料を回収する。この回収作業では、吐出流路切換弁により第2の吐出流路を供給流路に接続した後に、回収弁により加圧エア源からの加圧エアを第1の吐出流路に供給する。これにより、第1の吐出流路内の残存塗料は、第1のタンクに回収でき、第1の吐出流路を空にして絶縁状態にすることができる。また、この回収作業と並行し、第2のタンクに充填された塗料を供給流路に供給することにより、塗装の準備をする。
【0020】
次に、第2のタンクを使用した塗装工程では、第2のアーススイッチにより第2のタンクをアース電位に対して開成(切断)し、噴霧手段から噴霧する塗料に高電圧を印加する。この状態で、第2のタンク内の塗料を第2の吐出流路、供給流路を経由して噴霧手段に供給することにより、該噴霧手段から被塗物に向けて塗料を噴霧することができる。
【0021】
次に、塗装作業の終了後には、供給流路と噴霧手段とに残存した塗料を洗浄する。この洗浄作業では、洗浄弁により加圧エア源からの加圧エアと洗浄液体源からの洗浄液体を供給流路と噴霧手段とに供給する。これにより、供給流路と噴霧手段に残存した塗料を洗浄することができる。
【0022】
この結果、吐出流路内の塗料は、加圧エア源からの加圧エアによりタンク内に押し戻して回収することができるから、廃棄される塗料の量を削減することができる。また、洗浄する範囲は、供給流路と噴霧手段の接液面だけであるから、洗浄液体の使用量を削減でき、また洗浄時間を短縮することができる。これにより、塗装効率の向上、塗装コストの低減等を図ることができる。
【0023】
請求項2の発明では、第1の吐出流路に残存した塗料を回収する場合には、第1の回収エア供給弁を開弁する。これにより、加圧エア源からの加圧エアを第1の吐出流路に供給することができ、この加圧エアにより第1の吐出流路内の塗料を押動して第1のタンク内に回収することができる。
【0024】
また、第2の吐出流路に残存した塗料を回収する場合には、第2の回収エア供給弁を開弁し、第2の吐出流路に加圧エアを供給することにより、第2の吐出流路内の塗料を第2のタンク内に回収することができる。
【0025】
請求項3の発明では、第1,第2のタンクのうち、一方のタンクに塗料を充填する場合には、吐出流路切換弁が他方の吐出流路を供給流路に切換えた後、充填流路に設けた充填弁を開弁する。これにより、塗料源からの塗料を、充填流路を通じて一方のタンクに充填することができる。また、塗料を充填するときには、排気弁を開弁することにより、塗料の充填量に対応したエアをタンクから排出することができ、塗料の充填作業を円滑に行うことができる。
【0026】
請求項4の発明では、塗料を塗装する場合には、塗料押出し弁により加圧エア源からの加圧エアをタンク内に供給する。これにより、タンク内の塗料を加圧エアによって押出し、噴霧手段側に供給することができる。
【0027】
請求項5の発明では、塗料源からの塗料は、塗料流入口からタンク内に流入し、上側の高電圧遮断室を通り抜け、二室画成板の塗料流通孔を通って下側の塗料収容室に充填される。また、塗料収容室に塗料を収容したタンクは、絶縁性材料を用いた容器として形成している。これにより、塗料収容室に充填された塗料は、その塗料源との間を高電圧遮断室により絶縁することができ、塗料に印加した高電圧が充填流路、塗料源を介してアース電位にリークするのを防止することができる。
【0028】
また、容器内を仕切る二室画成板は、塗料収容室内の塗料が高電圧遮断室に流入するのを防止することができるから、高電圧遮断室による絶縁性能を維持することができる。そして、塗料収容室内の塗料は、下側の塗料流出口から吐出流路等を介して噴霧手段に供給することができる。
【0029】
請求項6の発明では、タンクの塗料収容室に収容した塗料を塗装する場合には、タンク流出弁を開弁し、吐出流路を介して噴霧手段に向け塗料を供給する。一方、タンク回収弁を開弁したときには、吐出流路に残存した塗料をタンク内に回収することができ、塗料の廃棄量を削減することができる。しかも、吐出流路内の塗料を回収した後は、タンクは噴霧手段側に対して電気的に切離すことができるから、タンクをアースした状態で次に使用する塗料を充填することができる。
【0030】
請求項7の発明では、選択供給弁から供給する硬化剤を顔料を含む主剤に混合することができ、二液型塗料を塗装することができる。また、選択供給弁は、洗浄用の加圧エアと洗浄液体とを噴霧手段に向け供給することにより、残存する二液型塗料を洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態による静電塗装装置として、回転霧化頭型の塗装機を備えた静電塗装装置を代表例とし、添付図面に従って詳細に説明する。
【0032】
まず、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。
【0033】
図1において、1は第1の実施の形態による直接帯電式の静電塗装装置を示している。この静電塗装装置1は、例えば水性塗料、金属顔料を含む溶剤系メタリック塗料等に直接的に高電圧を印加して塗装を行うものである。また、静電塗装装置1は、後述の塗装用ロボット2、塗装機3、各タンク6,18、各充填流路21,22、各吐出流路29,32、供給流路45、吐出流路切換弁48、回収弁51、洗浄弁57、各アーススイッチ58,59等により大略構成されている。
【0034】
ここで、各タンク6,18と、塗料源19と、加圧エア源25と、洗浄液体源55と、各タンク6,18に付随する後述の各充填弁35,38、各排気弁36,39、各塗料押出し弁37,40、各タンク流出弁41,43および各タンク回収弁42,44とは、塗装の邪魔にならないように塗装用ロボット2の動作範囲から外れた位置、例えば塗装ラインの壁面等に纏めて配設されている。また、ポンプユニット47、吐出流路切換弁48、回収弁51および洗浄弁57は、塗料や洗浄液体の無駄を抑えるために、塗装機3に近い位置、例えば塗装用ロボット2の水平アーム2C上に纏めて配設されている。
【0035】
2は静電塗装装置1の動作部をなす塗装用ロボットである。この塗装用ロボット2は、基台2Aと、該基台2A上に回転可能かつ揺動可能に設けられた垂直アーム2Bと、該垂直アーム2Bの先端に揺動可能に設けられた水平アーム2Cと、該水平アーム2Cの先端に設けられた手首2Dとにより大略構成されている。
【0036】
3は塗装用ロボット2の手首2Dに設けられた回転霧化頭型の塗装機で、該塗装機3は、本発明による噴霧手段を構成している。ここで、塗装機3は内部にエアモータを備えた本体部3Aと、該本体部3Aの先端に設けられた回転霧化頭3Bとにより構成されている。この回転霧化頭3Bには、後述の供給流路45を経由して塗料が供給される。また、塗装機3には、図2に示す如く、高電圧ケーブル4を介して高電圧発生器5(図2、図3に「HV」と記載)が接続され、これにより、塗装機3から噴霧される塗料に直接的に高電圧を印加することができる。
【0037】
次に、第1,第2のタンク6,18の具体的な内部構造を含む全体構成について述べる。
【0038】
即ち、6は静電塗装装置1を構成する第1のタンクである。この第1のタンク6は、図2、図3に示すように、後述する第2のタンク18とは独立して設けられ、塗料源19から供給される塗料を貯えるものである。この場合、第1のタンク6が貯える塗料の量は、例えば1台の自動車車体の外板に対し、複数台の塗装装置で分担して塗装するのに必要な1台分の貯留量、例えば200〜1000cc程度の貯留量となっている。また、第1のタンク6は、塗料源19側に高電圧がリークするのを防止するために絶縁性材料、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料、ガラス材料、セラミックス材料等を用いた容器として形成されている。
【0039】
詳しくは、第1のタンク6は、図4に示す如く、上,下方向に延びた円筒状の筒部7A、上側の蓋部7Bおよび下側の底部7Cからなる容器本体7と、該容器本体7の筒部7Aの上,下方向の中間部位を縮径して設けられた二室画成板8とにより、内部が上,下に区分けされた容器として構成されている。そして、容器本体7内は、二室画成板8により、上側の高電圧遮断室9と下側の塗料収容室10とに画成されている。
【0040】
ここで、後述するように、第1の吐出流路29内の塗料を回収するときには、加圧エアを用いているから、二室画成板8は、後述の回収塗料通路17から流入する加圧エアを含んだ塗料の中から加圧エアを分離するものである。即ち、二室画成板8は、加圧エアが分離された塗料を下側の塗料収容室10に戻し、分離した加圧エアだけを中央の塗料流通孔8Aを通して高電圧遮断室9側に流通させるものである。
【0041】
また、容器本体7の蓋部7Bには、塗料収容室10に塗料を流入させる塗料流入口11と、塗料が流入した分の空気を外部に排出する排気口12と、塗料収容室10から塗料を押出すための加圧エアを流入させるエア流入口13とが設けられている。また、蓋部7Bの下面側には、塗料流入口11から下向きに延びた充填ノズル14と、該充填ノズル14を取囲む環状突起15とが設けられている。この環状突起15は、塗料収容室10と充填ノズル14の先端との間の絶縁距離を長くし、沿面放電を防止している。一方、容器本体7の底部7Cは、中央部が下がったロート状をなし、その中央部に塗料流出口16が設けられている。
【0042】
さらに、容器本体7の筒部7Aには、塗料収容室10の上側位置で、二室画成板8の近くに回収塗料通路17が設けられている。この回収塗料通路17は、図5に示す如く、筒部7Aの内周面に接線方向で連通するように形成され、塗料収容室10に流入する塗料は筒部7Aの内面に沿って該塗料収容室10に戻すことができる。
【0043】
18は第1のタンク6と独立して設けられた第2のタンクである。この第2のタンク18は、その構成が前述した第1のタンク6と同一となっていることから、該第1のタンク6と同一の符号を付して説明を省略するものとする。
【0044】
次に、塗料源19、塗料制御弁20、第1,第2の充填流路21,22、第1,第2のエア排出流路23,24等の充填系統について述べる。
【0045】
19は静電塗装装置1に塗料を供給する塗料源である。また、20は該塗料源19から圧送供給される塗料の供給圧を制御する塗料制御弁(図2、図3に「CV1」と記載)を示している。これらの塗料源19と塗料制御弁20は、第1のタンク6と第2のタンク18との両方に共通して用いられている。
【0046】
21は第1のタンク6に塗料を充填するための第1の充填流路である。この第1の充填流路21は、一端が塗料制御弁20を介して塗料源19に接続されている。一方、第1の充填流路21の他端は、後述する第1の充填弁35を介して第1のタンク6の塗料流入口11に接続されている。
【0047】
また、22は第2のタンク18に塗料を充填するための第2の充填流路である。この第2の充填流路22は、一端が第1の充填流路21と合流して塗料制御弁20を介して塗料源19に接続されている。一方、第2の充填流路22の他端は、後述する第2の充填弁38を介して第2のタンク18の塗料流入口11に接続されている。
【0048】
23は第1のタンク6から空気を排出させるための第1のエア排出流路である。この第1のエア排出流路23は、一端が後述する第1の排気弁36を介して第1のタンク6の排気口12に接続され、他端が大気に開放されている。
【0049】
また、24は第2のタンク18から空気を排出させるための第2のエア排出流路である。この第2のエア排出流路24は、一端が後述する第2の排気弁39を介して第2のタンク18の排気口12に接続され、他端が大気に開放されている。
【0050】
次に、第1,第2のタンク6,18に加圧エアを供給する加圧エア源25、第1の圧力レギュレータ26、第1,第2の押出しエア流路27,28等について述べる。
【0051】
25は静電塗装装置1の各部位に加圧エアを供給する共通の加圧エア源である。また、26は該加圧エア源25から圧送供給される加圧エアの供給圧を調整する第1の圧力レギュレータ(図2、図3に「PR1」と記載)を示している。ここで、加圧エア源25から供給される加圧エアは、第1,第2のタンク6,18内の塗料を供給流路45側へ押出す押出しエアと、後述する第1,第2の吐出流路29,32内の塗料を第1,第2のタンク6,18に回収する回収エアと、供給流路45、塗装機3を洗浄する洗浄エアとに共通して用いられている。また、第1の圧力レギュレータ26は、第1のタンク6と第2のタンク18との両方に共通して用いられている。
【0052】
27は第1のタンク6から塗料を押出す加圧エア(押出しエア)を供給するための第1の押出しエア流路である。この第1の押出しエア流路27は、一端が第1の圧力レギュレータ26を介して加圧エア源25に接続されている。一方、第1の押出しエア流路27の他端は、後述する第1の塗料押出し弁37を介して第1のタンク6のエア流入口13に接続されている。
【0053】
また、28は第2のタンク18から塗料を押出す加圧エア(押出しエア)を供給するための第2の押出しエア流路である。この第2の押出しエア流路28は、一端が第1の押出しエア流路27と合流し第1の圧力レギュレータ26を介して加圧エア源25に接続されている。一方、第2の押出しエア流路28の他端は、後述する第2の塗料押出し弁40を介して第2のタンク18のエア流入口13に接続されている。
【0054】
次に、第1,第2の吐出流路29,32、第1,第2の回収流路30,33等について述べる。
【0055】
29は第1のタンク6に貯えられた塗料を吐出するための第1の吐出流路である。この第1の吐出流路29は、一端が第1のタンク6の塗料流出口16に後述する第1のタンク流出弁41を介して接続されている。一方、第1の吐出流路29の他端は、後述する吐出流路切換弁48を介して供給流路45に接続されている。
【0056】
30は第1の回収流路で、該第1の回収流路30は、一端が第1の吐出流路29の分岐位置31から分岐し、第1のタンク回収弁42を介して他端が第1のタンク6に設けられた回収塗料通路17に接続されている。
【0057】
また、32は第2のタンク18に貯えられた塗料を吐出するための第2の吐出流路である。この第2の吐出流路32は、一端が第2のタンク18の塗料流出口16に後述する第2のタンク流出弁43を介して接続されている。一方、第2の吐出流路32の他端は、後述する吐出流路切換弁48を介して供給流路45に接続されている。
【0058】
33は第2の回収流路で、該第2の回収流路33は、一端が第2の吐出流路32の分岐位置34から分岐し、第2のタンク回収弁44を介して他端が第2のタンク18に設けられた回収塗料通路17に接続されている。
【0059】
次に、第1のタンク6の上部に設けられ塗料の充填と吐出を行うための各種の弁の構成について述べる。
【0060】
35は第1の充填流路21に設けられた第1の充填弁である。この第1の充填弁35は、第1のタンク流出弁41を閉弁し、第1の排気弁36を開弁した後に開弁することにより、塗料源19からの塗料を第1の充填流路21を通じて第1のタンク6内に充填するものである。なお、第1のタンク6を用いた塗装に連続して第2のタンク18を用いた塗装を行う場合、第1の充填弁35の開弁に先立ち、後述の吐出流路切換弁48により、供給流路45は、第1の吐出流路29から第2の吐出流路32に切換えられている。
【0061】
36は第1のエア排出流路23に設けられた第1の排気弁である。この第1の排気弁36は、第1の充填弁35が開弁して第1のタンク6内に塗料を充填しているときに、一緒に開弁することにより、塗料が流入した分のエアを外部に排出するものである。また、排気弁36は、第1のタンク6内に塗料を回収するときにも開弁する。
【0062】
また、37は第1の押出しエア流路27に設けられた第1の塗料押出し弁である。この第1の塗料押出し弁37は、第1のタンク6内の塗料を用いて塗装を行うときに、開弁して加圧エア源25からの加圧エアを第1のタンク6に供給し、その内部に充填された塗料を第1の吐出流路29側に押出すものである。
【0063】
ここで、上述した第1の充填弁35と第1の排気弁36と第1の塗料押出し弁37は、図1に示すように、例えば第1のタンク6の上側に纏めて配置されている。
【0064】
次に、第2のタンク18の上部に設けられ塗料の充填と吐出を行うための各種の弁の構成について述べる。
【0065】
38は第2の充填流路22に設けられた第2の充填弁である。39は第2のエア排出流路24に設けられた第2の排気弁である。さらに、40は第2の押出しエア流路28に設けられた第2の塗料押出し弁である。これらの第2の充填弁38、第2の排気弁39、第2の塗料押出し弁40は、前述した第1の充填弁35、第1の排気弁36、第1の塗料押出し弁37と同様に構成され、例えば第2のタンク18の上側に纏めて配置されている。
【0066】
次に、第1のタンク6の下部に設けられ塗料の供給と回収を行うための各種の弁の構成について述べる。
【0067】
41は第1の回収流路30との分岐位置31と第1のタンク6との間に位置して第1の吐出流路29に設けられた第1のタンク流出弁(図2に「タンク」を省略して「T流出弁」と記載)である。この第1のタンク流出弁41は、第1のタンク6の塗料収容室10に貯えた塗料を塗装機3に向けて供給するときに開弁するものである。
【0068】
42は第1の回収流路30に設けられた第1のタンク回収弁(図2に「タンク」を省略して「T回収弁」と記載)である。この第1のタンク回収弁42は、第1の吐出流路29に残存した塗料を第1のタンク6に向けて回収するときに、第1の排気弁36と共に開弁するものである。
【0069】
次に、第2のタンク18の下部に設けられ塗料の供給と回収を行うための各種の弁の構成について述べる。
【0070】
43は第2の回収流路33との分岐位置34と第2のタンク18との間に位置して第2の吐出流路32に設けられた第2のタンク流出弁(図2に「T流出弁」と記載)である。44は第2の回収流路33に設けられた第2のタンク回収弁(図2に「T回収弁」と記載)である。これらの第2のタンク流出弁43、第2のタンク回収弁44は、前述した第1のタンク流出弁41、第1のタンク回収弁42と同様に構成されている。
【0071】
次に、第1,第2の吐出流路29,32から塗装機3までの吐出系統について述べる。
【0072】
45は一端が第1の吐出流路29と第2の吐出流路32との合流位置46に接続された供給流路である。この供給流路45の他端は、後述のポンプユニット47等を介して塗装機3に延びている。ここで、供給流路45は、電気絶縁性の高い合成樹脂製チューブ等が用いられ、この合成樹脂製チューブの外周に金属線を編み込んでシールドアースが施されている。このシールドアースは、静電塗装中に供給流路45内を流通する塗料に高電圧を印加したときに、この高電圧が原因となって供給流路45が絶縁破壊したときに、アースに放電するものである。
【0073】
47は供給流路45に設けられたポンプユニットである。このポンプユニット47は、塗料を定量供給する容積型のギヤポンプ47A(図3に「GP」と記載)と、該ギヤポンプ47Aと同期して開閉動作し、塗装機3の回転霧化頭3Bに対する塗料の供給と停止とを行うトリガ弁47Bとにより構成されている。また、ギヤポンプ47Aは、回転駆動用のサーボモータと絶縁性材料からなるシャフト(いずれも図示せず)を介して接続され、アース電位に接続されたサーボモータと電気的に切離されている。
【0074】
次に、2つの塗料の供給系統を切換えるための吐出流路切換弁48について述べる。
【0075】
この吐出流路切換弁48は、第1,第2の吐出流路29,32と供給流路45との合流位置46に設けられている。この吐出流路切換弁48は、第1の吐出流路29と第2の吐出流路32の一方を供給流路45に切換えて接続するものである。そして、吐出流路切換弁48は、第1の吐出流路29に設けられた第1の弁体48Aと、第2の吐出流路32に設けられた第2の弁体48Bとにより構成されている。ここで、各弁体48A,48Bは、後述する回収弁51の各回収エア供給弁51B,51Cと各吐出流路29,32とをバイパス通路を介して常時連通している。
【0076】
次に、各吐出流路29,32内に残存する塗料をタンク6,18に回収するための回収系統について述べる。
【0077】
49は各吐出流路29,32に回収エアを供給するための回収エア流路である。この回収エア流路49は、一端が第2の圧力レギュレータ50(図2、図3に「PR2」と記載)を介して加圧エア源25に接続されている。一方、回収エア流路49の他端は、分岐位置49Aで第1のエア流路49Bと第2のエア流路49Cに分岐している。そして、第1のエア流路49Bは、回収弁51の回収エア供給弁51B、吐出流路切換弁48の第1の弁体48Aを介して第1の吐出流路29に接続されている。また、第2のエア流路49Cは、回収弁51の回収エア供給弁51C、吐出流路切換弁48の第2の弁体48Bを介して第2の吐出流路32に接続されている。
【0078】
51は回収エア流路49の分岐位置49Aに設けられた回収弁を示している。この回収弁51は、吐出流路切換弁48を介して第1,第2の吐出流路29,32に接続している。また、回収弁51は、吐出流路切換弁48により供給流路45を第1の吐出流路29に切換えた後に、加圧エア源25からの加圧エアを第2の吐出流路32に供給する。一方、回収弁51は、吐出流路切換弁48により供給流路45を第2の吐出流路32に切換えた後に、加圧エア源25からの加圧エアを第1の吐出流路29に供給する。
【0079】
そして、回収弁51は、分岐位置49Aの上流側で回収エア流路49に設けられたゲート弁51Aと、第1のエア流路49Bに設けられた第1の回収エア供給弁51Bと、第2のエア流路49Cに設けられた第2の回収エア供給弁51Cとにより構成されている。
【0080】
次に、洗浄流体切換弁52と塗装機3との間を洗浄する洗浄系統について述べる。
【0081】
52は加圧エア(洗浄エア)と洗浄液体とを選択して供給する洗浄流体切換弁である。この洗浄流体切換弁52は、第3の圧力レギュレータ53(図2、図3に「PR3」と記載)を介して加圧エア源25に接続された洗浄エア供給弁52Aと、洗浄液体制御弁54(図2、図3に「CV2」と記載)を介して洗浄液体源55に接続された洗浄液体供給弁52Bとにより構成されている。
【0082】
また、56は一端が洗浄流体切換弁52に接続された洗浄流体流路である。この洗浄流体流路56の他端は、各吐出流路29,32と供給流路45との合流位置46に接続されている。
【0083】
57は洗浄流体流路56の途中に設けられた洗浄弁である。この洗浄弁57は、塗装機3による塗装作業の終了後に、供給流路45、ポンプユニット47、塗装機3等からなる後述の塗料ライン60に残存し、付着した塗料を洗浄するものである。そして、洗浄弁57は、開弁することにより、加圧エア源25からの加圧エア(洗浄エア)と洗浄液体源55からの洗浄液体を供給流路45、塗装機3等に向けて供給することができる。
【0084】
さらに、塗装作業時に第1,第2のタンク6,18をアース電位に対して開成するための第1,第2のアーススイッチ58,59について述べる。
【0085】
58は第1のタンク6に電気的に接続して設けられた第1のアーススイッチである。このアーススイッチ58は、常閉接点として構成され、外部から信号が入力されることにより開成するものである。そして、この第1のアーススイッチ58は、常時は閉成(接続)状態にある。一方、吐出流路切換弁48によって第1のタンク6が第1の吐出流路29を介して供給流路45に接続され、第1のタンク6を使用した塗装工程では開成(切断)され、この第1のタンク6をアースに対して電気的に切離した状態とする。これにより、塗装機3の本体部3Aを介して塗料に印加されした高電圧が、第1のタンク6内の塗料に伝わった場合でも、アースにリークするのを防止することができる。また、第1のアーススイッチ58は、塗装作業以外では閉成し、第1のタンク6をアースに接続することができる。
【0086】
59は第2のタンク18に電気的に接続して設けられた第2のアーススイッチである。この第2のアーススイッチ59は、前述した第1のアーススイッチ58と同様の構成と、第2のタンク18に対する同様の機能を有している。
【0087】
また、60は供給流路45とポンプユニット47と塗装機3等からなる塗料ラインを示している。この塗料ライン60は、塗装時に第1,第2の吐出流路29,32からの塗料を流通することにより、この塗料を塗装機3の回転霧化頭3Bから噴霧させる。一方、洗浄時には、内部に残存する塗料を洗浄エア、洗浄液体によって洗浄することができる。
【0088】
第1の実施の形態による静電塗装装置1は上述の如き構成を有するもので、次に、静電塗装装置1による塗装作業と洗浄作業について、図6に示すタイムチャートを参照しつつ説明する。
【0089】
まず、第1,第2のタンク6,18を交互に用いた塗装作業について説明する。説明の都合上、第1のタンク6には塗料が充填されており、第2のタンク18は使用済みで空となっており、この第2のタンク18への塗料充填工程が並行して行われることを条件に説明する。
【0090】
そして、第1のタンク6による塗装工程では、塗料の流通経路を確保するために、第1のタンク流出弁41を開弁し、吐出流路切換弁48によって第1のタンク6(第1の吐出流路29)を供給流路45に接続する。また、第1のタンク6内の塗料を押出すために第1の塗料押出し弁37を開弁すると共に第1の排気弁36を開弁する。さらに、第1のアーススイッチ58を開成することにより、第1のタンク6、第1のタンク流出弁41、第1のタンク回収弁42等をアース電位に対して切離した遮断状態にする。また、第1のタンク6では、高電圧遮断室9が塗料収容室10の塗料と第1の充填流路21(塗料源19側)とを電気的に遮断している。
【0091】
また、塗装機3の回転霧化頭3Bを回転駆動し、高電圧発生器5によって塗料に高電圧を印加し、ポンプユニット47のトリガ弁47Bを開弁し、ギヤポンプ47Aを駆動する。これにより、塗装機3は、供給流路45から供給される塗料を微粒化しつつ、被塗物(図示せず)との間に形成される電気力線に沿って塗料粒子を飛行させ、被塗物を塗装することができる。
【0092】
一方、上述した第1のタンク6による塗装工程と並行して行われる第2のタンク18への塗料充填工程は、前回の塗装工程で塗料が減少した第2のタンク18内に塗料を充填するものである。この第2のタンク18への塗料充填工程では、第2の充填弁38と第2の排気弁39とを開弁する。これにより、塗料源19からの塗料は、第2の充填流路22を介して第2のタンク18内に充填される。また、この塗料の充填時には、第2の排気弁39を開弁しており充填量に応じた空気を第2のエア排出流路24から放出できるから、塗料を短時間で効率よく充填することができる。
【0093】
次に、第1のタンク6による塗装工程が終了したら、第1の吐出流路29に残存した塗料を第1のタンク6に回収する塗料回収工程に移る。この第1のタンク6への塗料回収工程では、回収弁51を切換えて回収エア流路49を吐出流路切換弁48の第1の弁体48Aを介して第1の吐出流路29(第1のタンク6)に接続する。この状態で、第1のタンク回収弁42と第1の排気弁36とを開弁する。これにより、加圧エア源25から供給される加圧エアにより、第1の吐出流路29内に残存した塗料を第1のタンク6に向けて押動するから、この塗料は第1の回収流路30を通じて回収塗料通路17から第1のタンク6内に回収することができる。そして、第1の吐出流路29内の塗料を回収した後には、第1の吐出流路29内には導電性の塗料が残留していないから、第1のタンク6内の塗料を、塗装機3に印加される高電圧と遮断することができる。
【0094】
この塗料回収時に、回収塗料通路17は、第1のタンク6の内面に沿って接線方向に流れるから、この内面への衝突による飛散、気泡の発生等を防止できる。また、回収される塗料には、加圧エアが混入しているが、二室画成板8によって加圧エアが分離され、塗料は塗料収容室10に流下し、加圧エアは塗料流通孔8Aを通じて高電圧遮断室9側に流出し、さらに、加圧エアは第1のエア排出流路23から外部に放出することができる。
【0095】
ここで、前述した第1のタンク6への塗料回収工程を行っているときには、並行して第2のタンク18を用いた塗装の準備工程が行われる。この第2のタンク18の塗装準備工程では、吐出流路切換弁48によって第2のタンク18(第2の吐出流路32)を供給流路45に接続する。また、第2のタンク18内の塗料を押出すために第2の塗料押出し弁40と第2のタンク流出弁43とを開弁し、ポンプユニット47と塗装機3の回転霧化頭3Bを所定時間駆動する。そして、第2のタンク18内の塗料を第2の吐出流路32と供給流路45を通して回転霧化頭3Bに供給する。これにより、ポンプユニット47のギヤポンプ47Aを駆動したときには、所定量の塗料が回転霧化頭3Bまで供給されているから、直ちに次の塗装作業を開始することができる。
【0096】
次に、第2のタンク18の塗装準備工程が終了したら、第2のタンク18を用いた塗装工程を行う。この第2のタンク18による塗装工程は、前述した第1のタンク6による塗装工程とほぼ同様となっている。即ち、第2のタンク18による塗装工程では、第2のタンク流出弁43を開弁し、吐出流路切換弁48によって第2のタンク18(第2の吐出流路32)を供給流路45に接続し、第2の塗料押出し弁40を開弁する。また、第2のアーススイッチ59を開成し、第2のタンク18、第2のタンク流出弁43、第2のタンク回収弁44等をアース電位に対して切離した遮断状態にする。
【0097】
そして、塗装機3の回転霧化頭3Bを回転駆動し、高電圧発生器5によって塗料に高電圧を印加し、ポンプユニット47のギヤポンプ47Aを駆動し、トリガ弁47Bを開弁する。これにより、第2のタンク18の塗料を用いて被塗物に塗装を施すことができる。
【0098】
一方、上述した第2のタンク18による塗装工程と並行して行われる第1のタンク6への塗料充填工程では、第1の充填弁35と第1の排気弁36とを開弁し、塗料源19からの塗料を第1の吐出流路29を介して第1のタンク6内に充填する。
【0099】
次に、第2のタンク18による塗装工程が終了したら、第2の吐出流路32に残存した塗料を第2のタンク18に回収する塗料回収工程に移る。この第2のタンク18への塗料回収工程では、回収弁51を切換えて回収エア流路49を第2の吐出流路32に接続し、第2のタンク回収弁44と第2の排気弁39とを開弁する。これにより、加圧エア源25から供給される加圧エアにより、第2の吐出流路32内に残存した塗料を第2のタンク18内に回収することができる。
【0100】
一方、第1,第2のタンク6,18を交互に用いた塗装作業が終了した場合には、前述した第2のタンク18への塗料回収工程と並行し、供給流路45、ポンプユニット47、塗装機3等からなる塗料ライン60の洗浄工程を行う。この塗料ライン60の洗浄工程では、洗浄弁57を開弁し、洗浄流体切換弁52の洗浄エア供給弁52Aと洗浄液体供給弁52Bを交互に開弁する。そして、回転霧化頭3Bとポンプユニット47とを駆動する。これにより、洗浄エア、洗浄液体を用いて供給流路45、ポンプユニット47、回転霧化頭3Bからなる塗料ライン60に残存、付着した塗料を洗浄することができる。
【0101】
なお、図6に示す実施の形態によるタイムチャートでは、第1,第2のタンク6,18を1回ずつ用いて塗装を行った場合を例示している。しかし、塗装面の形状、塗装面積等に応じ第1,第2のタンク6,18を、2回、3回と繰返して使用した後に、洗浄工程に移ってもよいことは勿論である。
【0102】
以上のように、第1の実施の形態によれば、第1,第2のタンク6,18による塗装工程終了後に第1,第2の吐出流路29,32に残存する塗料を、それぞれのタンク6,18に回収する回収弁51を設ける構成としている。従って、例えば回収弁51によって加圧エア源25からの加圧エアを第1の吐出流路29に供給することにより、この第1の吐出流路29内の残存塗料は、第1のタンク6に回収することができ、第1の吐出流路29内の導電性塗料を空にして電気的に絶縁状態にすることができる。同様に、第2の吐出流路32内の残存塗料も、第2のタンク18に回収し、この第2の吐出流路32を電気的に絶縁状態にすることができる。また、塗装作業後の洗浄作業では、吐出流路切換弁48よりも下流側、即ち、供給流路45、ポンプユニット47、塗装機3からなる塗料ライン60に残存した塗料を洗浄するだけでよい。
【0103】
この結果、第1,第2の吐出流路29,32に残存した塗料は、加圧エア源25からの加圧エアにより第1,第2のタンク6,18内に押し戻して回収することができるから、廃棄される塗料の量を削減することができる。また、洗浄する範囲は、供給流路45、ポンプユニット47、塗装機3だけであるから、洗浄液体の使用量を削減でき、また洗浄時間を短縮することができる。これにより、塗装効率の向上、塗装コストの低減等を図ることができる。
【0104】
また、各タンク6,18が貯える塗料の量は、例えば1台の静電塗装装置1が1回の塗装作業で使用する量、例えば200〜1000cc程度と少量に設定している。これにより、全体を小型、軽量に形成することができるから、自由に設置することができ、また設計の自由度を向上することができる。しかも、各タンク6,18は、貯える塗料が少量であるから、帯電容量が小さく、電撃等に対する安全性を高めることができる。
【0105】
また、回収弁51は、加圧エア源25と第1の吐出流路29との間に設けられた第1の回収エア供給弁51Bと、加圧エア源25と第2の吐出流路32に設けられた第2の回収エア供給弁51Cとを備えている。従って、第1の回収エア供給弁51Bまたは第2の回収エア供給弁51Cを開弁することにより、加圧エア源25からの加圧エアにより第1の吐出流路29または第2の吐出流路32に残存した塗料を回収することができる。
【0106】
一方、各充填流路21,22には、それぞれのタンク6,18に塗料を充填する充填弁35,38と、タンク6,18内のエアを排出する排気弁36,39とを設ける構成としている。これにより、充填弁35,38を開弁するだけで塗料源19からの塗料をタンク6,18に充填することができる。また、塗料を充填するときには、排気弁36,39を開弁することにより、塗料の充填量に対応したエアをタンク6,18から排出することができ、内部の圧力上昇を抑制して塗料の充填作業を円滑に行うことができる。
【0107】
また、第1,第2のタンク6,18に接続して加圧エア源25からの加圧エアを供給する塗料押出し弁37,40を設ける構成としている。従って、塗装する場合には、塗料押出し弁37,40により加圧エア源25からの加圧エアをタンク6,18内に供給することにより、タンク6,18内の塗料を加圧エアによって押出すことができる。これにより、塗料を供給流路45、塗装機3側に積極的に供給することができる。
【0108】
また、絶縁性材料からなる第1,第2のタンク6,18は、二室画成板8によって上側の高電圧遮断室9と下側の塗料収容室10とに画成し、上部側には塗料収容室10に塗料を流入する塗料流入口11を設け、下部側には塗料収容室10内の塗料を流出する塗料流出口16を設ける構成とした。
【0109】
従って、塗料収容室10に充填された塗料は、その塗料源19との間を高電圧遮断室9により絶縁できるから、塗料に印加した高電圧が充填流路21,22、塗料源19を介してアース電位にリークするのを防止することができ、良好な静電塗装を行うことができる。しかも、各タンク6,18内に設けた二室画成板8は、塗料収容室10内の塗料が高電圧遮断室9に流入するのを防止することができるから、高電圧遮断室9による絶縁性能を維持することができる。
【0110】
さらに、第1のタンク6側の系統についてみると、吐出流路29の途中から分岐してタンク6の塗料収容室10に連通した回収流路30を設け、吐出流路29には、前記回収流路30の分岐位置31とタンク6との間に位置してタンク流出弁41を設け、前記回収流路30にはタンク回収弁42を設ける構成としている。
【0111】
これにより、第1のタンク6の塗料収容室10に収容した塗料を塗装する場合には、タンク流出弁41を開弁することにより、吐出流路29を介して塗装機3に向け塗料を供給することができる。また、タンク回収弁42を開弁したときには、吐出流路29に残存した塗料をタンク6内に回収することができ、塗料の廃棄量を削減することができる。さらに、第1のタンク6は、塗装機3側に対して電気的に切離すことができるから、タンク6をアース電位に接続した状態で次回分の塗料を充填することができ、火花放電等を防止した状態で塗料の充填作業を行うことができる。
【0112】
一方、第2のタンク18側の系統についても、前述と同様に、タンク回収弁44を開弁したときには、残存塗料をタンク18内に回収することができる。また、第2のタンク18は、塗装機3側に対して電気的に切離すことができ、また、アース電位に接続した状態で次回分の塗料を充填することができる。
【0113】
次に、図7は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、静電塗装装置により主剤と硬化剤からなる二液型塗料を塗装する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態による静電塗装装置の主要部が同じであるから、同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0114】
図7において、61は第2の実施の形態による静電塗装装置を示している。この静電塗装装置61は、顔料を含む主剤とこの主剤を硬化させる硬化触媒としての硬化剤とを所定の比率で混合して用いる所謂二液型塗料を塗装するものである。そこで、第2の実施の形態による静電塗装装置61は、前述した第1の実施の形態による静電塗装装置1に該当する部位の構成を主剤供給装置62として用い、この主剤供給装置とは別個に硬化剤供給装置64を設ける構成としている。
【0115】
62は二液型塗料の主剤を供給する主剤供給装置で、該主剤供給装置62は、前述した第1の実施の形態による塗料源19に換えて主剤源63に接続されている点を除いて、第1の実施の形態による静電塗装装置1と同様の構成となっている。なお、主剤としては、第1の実施の形態と同様に導電性塗料を用いることができる。
【0116】
次に、64は静電塗装装置61の硬化剤供給装置を示している。この硬化剤供給装置64は、主剤を硬化させる硬化触媒としての硬化剤を、主剤の流量に応じた所定の比率で塗装機3に供給するものである。そして、硬化剤供給装置64は、後述の硬化剤源65、硬化剤制御弁66、硬化剤供給流路67、洗浄流体切換弁68、洗浄流体流路69、硬化剤ライン70、ポンプユニット72、選択供給弁73等により大略構成されている。
【0117】
65は硬化剤供給装置64に硬化剤を供給する硬化剤源である。また、66は該硬化剤源65から圧送供給される硬化剤の供給圧を調整する硬化剤制御弁(図7に「CV3」と記載)を示している。
【0118】
67は硬化剤を塗装機3に向けて供給するための硬化剤供給流路である。この硬化剤供給流路67は、一端が硬化剤制御弁66を介して硬化剤源65に接続されている。一方、硬化剤供給流路67の他端は、後述する選択供給弁73の硬化剤弁73Aに接続されている。
【0119】
68は加圧エア(洗浄エア)と洗浄液体とを選択して供給する洗浄流体切換弁である。この洗浄流体切換弁68は、第1の実施の形態による洗浄流体切換弁52とほぼ同様に、第3の圧力レギュレータ53を介して加圧エア源25に接続された洗浄エア供給弁68Aと、洗浄液体制御弁54を介して洗浄液体源55に接続された洗浄液体供給弁68Bとにより構成されている。
【0120】
また、69は一端が洗浄流体切換弁68に接続された洗浄流体流路である。この洗浄流体流路69の他端は、後述する選択供給弁73の洗浄弁73Bに接続されている。
【0121】
70は一端が硬化剤供給流路67と洗浄流体流路69との合流位置71に接続された硬化剤ラインである。この硬化剤ライン70の他端は、ギヤポンプ72Aとトリガ弁72Bからなるポンプユニット72等を介して主剤供給装置62側の供給流路45と合流している。
【0122】
73は硬化剤供給流路67に接続して設けられた選択供給弁である。この選択供給弁73は、硬化剤源65からの硬化剤と、洗浄流体切換弁68からの加圧エア、洗浄液体とを選択し、塗装機3に向け供給するものである。この選択供給弁73は、硬化剤供給流路67に設けられた硬化剤弁73Aと、洗浄流体流路69に設けられた洗浄弁73Bとにより構成されている。
【0123】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、選択供給弁73は、硬化剤供給装置64からの硬化剤を主剤供給装置62からの主剤に混合することができ、塗装機3から二液型塗料を塗装することができる。また、選択供給弁73は、洗浄用の加圧エアと洗浄液体とを塗装機3に向け供給することにより、塗装終了後に残存する二液型塗料を洗浄することができる。
【0124】
次に、図8および図9は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、タンク内に充填ノズルと塗料受突起とを上,下方向で対向して設ける構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。また、第3の実施の形態では、第1のタンクについて説明し、第2のタンクは第1のタンクと同一形状であるために、その説明を省略するものとする。
【0125】
図8において、81は第3の実施の形態による第1のタンクを示している。82は容器本体7内に位置して塗料流入口11に接続された充填ノズルである。この充填ノズル82は、下端部が尖った略円錐形状に形成され、その上部が蓋部7Bの下面側に取付けられている。また、充填ノズル82の上部には、塗料流入口11からの塗料を略円錐形状の外面に沿って流通させる複数の塗料通路82Aが設けられている。
【0126】
そして、充填ノズル82は、容器本体7内に流入する塗料が塗料収容室10に継続的に落下供給されるときに、略円錐形状の先端部の1点に集中させ、この塗料を後述する塗料受突起83の上端部に向けて落下させるものである。
【0127】
83は容器本体7の底部7Cに設けられた塗料受突起である。この塗料受突起83は、例えば塗料収容室10に充填された塗料よりも上側に突出した円錐形状をなしている。また、塗料受突起83は、尖った上端部が充填ノズル82の先端の真下となるように配置されている。一方、塗料受突起83の下部は、図8、図9に示すように、塗料が流通する空間を確保するために、複数本の脚部83Aを介して底部7Cに取付けられている。
【0128】
そして、塗料受突起83は、充填ノズル82から落下供給される塗料を、上端部で受けて円錐形状の外面に沿って流動させる。これにより、塗料受突起83は、落下する塗料が塗料収容室10の液面と直接衝突しないようにして、塗料中に気泡を巻き込まないようにすることができる。
【0129】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、充填ノズル82から塗料受突起83に塗料を落下供給することにより、塗料中の気泡の巻き込みを防止でき、塗装品質を向上することができる。
【0130】
次に、図10は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、充填ノズルを塗料収容室まで延長する構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。また、第4の実施の形態では、第1のタンクについて説明し、第2のタンクは第1のタンクと同一形状であるために、その説明を省略するものとする。
【0131】
図10において、91は第4の実施の形態による第1のタンクを示している。92は容器本体7内に位置して塗料流入口11に接続された充填ノズルである。この充填ノズル92は、上,下方向に延びたチューブ状をなし、その上部が塗料流入口11に連通するように蓋部7Bの下面側に取付けられている。また、充填ノズル92の下部は、塗料収容室10の底部側(塗料流出口16の近傍)まで延びている。これにより、充填ノズル92は、塗料が塗料収容室10の液面に衝突するのを防止でき、塗料中に気泡を巻き込まないようにできる。
【0132】
また、充填ノズル92の下側には、スリット92Aが形成され、該スリット92Aは、塗料収容室10の液面よりも高い位置、例えば二室画成板8の近傍まで高く延びている。このスリット92Aは、塗料収容室10への塗料の供給を停止したときに、充填ノズル92内の塗料を全量流出させるためのものである。さらに、充填ノズル92は、高い電気絶縁性と高い撥水性(高い表面張力)を有する材料、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を用いて形成している。これにより、塗料収容室10への塗料の供給を停止したときには、充填ノズル92の内面に付着した塗料を表面張力によって分離することができ、付着塗料を伝って高電圧がリークするのを防止することができる。
【0133】
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態によれば、塗料収容室10まで延ばした充填ノズル92により、塗料中への気泡の巻き込みを防止でき、塗装品質を向上することができる。
【0134】
次に、図11は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、充填ノズルを塗料収容室まで延長すると共に、螺旋状に形成して絶縁距離を延ばす構成としたことにある。なお、第5の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。また、第5の実施の形態では、第1のタンクについて説明し、第2のタンクは第1のタンクと同一形状であるために、その説明を省略するものとする。
【0135】
図11において、101は第5の実施の形態による第1のタンクを示している。102は容器本体7内に位置して塗料流入口11に接続された充填ノズルである。この充填ノズル102は、上,下方向に延びたチューブ状をなし、その上部が塗料流入口11に連通するように蓋部7Bの下面側に取付けられている。また、充填ノズル102の下部は、塗料収容室10の底部側(塗料流出口16の近傍)まで延びている。また、充填ノズル102の下側には、スリット102Aが形成され、該スリット102Aは、例えば二室画成板8の近傍まで高く延びている。
【0136】
一方、充填ノズル102の上側は、高電圧遮断室9内で螺旋状部102Bとなっている。この螺旋状部102Bは、高電圧遮断室9内で充填ノズル102の通路長さを長く形成することにより、充填ノズル102の内面、外面の絶縁距離を長くするものである。さらに、充填ノズル102は、第4の実施の形態による充填ノズル92と同様に、高い電気絶縁性と高い撥水性(高い表面張力)を有する材料を用いて形成している。
【0137】
かくして、このように構成された第5の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第5の実施の形態によれば、前述した第4の実施の形態による作用効果に加え、充填ノズル102の螺旋状部102Bにより高い電気絶縁性で高電圧のリークを確実に防止することができる。
【0138】
次に、図12は本発明の第6の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、容器本体の筒部に沿面距離を延ばすための凹凸状内面を設け、充填ノズルの下側を塗料収容室まで延長し上側を螺旋状に形成する構成としたことにある。なお、第6の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。また、第6の実施の形態では、第1のタンクについて説明し、第2のタンクは第1のタンクと同一形状であるために、その説明を省略するものとする。
【0139】
図12において、111は第6の実施の形態による第1のタンクを示している。112は第1のタンク111の外形を形成する容器本体である。ここで、容器本体112は、筒部112A、蓋部112B、底部112Cにより形成されている。また、筒部112Aの内周側は、高電圧遮断室9側に位置して凹凸状内面113となっている。この凹凸状内面113は、縮径部と拡径部とを交互に配置することで、高電圧遮断室9の内面の沿面距離を延ばし、電気的な絶縁距離を長くしている。
【0140】
114は容器本体112内に位置して塗料流入口11に接続された充填ノズルである。この充填ノズル114は、上,下方向に延びたチューブ状をなし、その上部が塗料流入口11に連通するように蓋部112Bの下面側に取付けられている。また、充填ノズル114は、塗料収容室10の底部側まで延び、その下側にはスリット114Aが形成されている。
【0141】
一方、充填ノズル114の上側は、高電圧遮断室9内で螺旋状部114Bとなっている。この螺旋状部114Bは、高電圧遮断室9内で充填ノズル114の通路長さを長く形成することにより、充填ノズル114の内面、外面の絶縁距離を長くしている。さらに、充填ノズル114は、第4の実施の形態による充填ノズル92と同様に、高い電気絶縁性と高い撥水性(高い表面張力)を有する材料を用いて形成している。
【0142】
かくして、このように構成された第6の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第6の実施の形態によれば、前述した第5の実施の形態による作用効果に加え、容器本体112の筒部112Aには、沿面距離を延ばすための凹凸状内面113を設けているから、容器本体112の絶縁性能を高めることができる。
【0143】
なお、第1の実施の形態では、回収エア流路49の第1のエア流路49Bを、第1の回収エア供給弁51B、吐出流路切換弁48の第1の弁体48Aを通して第1の吐出流路29に接続し、第2のエア流路49Cを、第2の回収エア供給弁51C、吐出流路切換弁48の第2の弁体48Bを通して第2の吐出流路32に接続した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば回収エア流路49の各エア流路49B,49Cを、吐出流路切換弁48の各弁体48A,48B内を通さずに、第1,第2の回収エア供給弁51B,51Cの流出側を各吐出流路29,32に直接的に接続する構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0144】
また、アーススイッチ58,59として常閉接点をもった常閉スイッチを例示したが、常開スイッチを用いてもよい。また、半導体スイッチ、電子スイッチ、光学スイッチ等の無接点スイッチを用いてもよいことは勿論である。
【0145】
さらに、各実施の形態では、噴霧手段として回転霧化頭3Bを備えた塗装機3を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばエア霧化ノズル、液圧霧化ノズル等を備えた塗装機を噴霧手段として用いる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の第1の実施の形態による静電塗装装置を示す外観図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による静電塗装装置を示す全体構成図である。
【図3】図2の静電塗装装置を具体的な回路で示す回路構成図である。
【図4】第1のタンクを拡大して示す縦断面図である。
【図5】第1のタンクを図4中の矢示V−V方向からみた横断面図である。
【図6】第1の実施の形態による静電塗装装置の動作を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の第2の実施の形態による静電塗装装置を示す回路構成図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態による第1のタンクを示す縦断面図である。
【図9】第1のタンクを図8中の矢示IX−IX方向からみた横断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態による第1のタンクを示す縦断面図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態による第1のタンクを示す縦断面図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態による第1のタンクを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0147】
1,61 静電塗装装置
2 塗装用ロボット
3 塗装機(噴霧手段)
5 高電圧発生器
6,81,91,101,111 第1のタンク
7,112 容器本体
8 二室画成板
9 高電圧遮断室
10 塗料収容室
14,82,92,102,114 充填ノズル
17 回収塗料通路
18 第2のタンク
19 塗料源
21 第1の充填流路
22 第2の充填流路
23 第1のエア排出流路
24 第2のエア排出流路
25 加圧エア源
27 第1の押出しエア流路
28 第2の押出しエア流路
29 第1の吐出流路
30 第1の回収流路
31,34 分岐位置
32 第2の吐出流路
33 第2の回収流路
35 第1の充填弁
36 第1の排気弁
37 第1の塗料押出し弁
38 第2の充填弁
39 第2の排気弁
40 第2の塗料押出し弁
41 第1のタンク流出弁
42 第1のタンク回収弁
43 第2のタンク流出弁
44 第2のタンク回収弁
45 供給流路
46,71 合流位置
47,72 ポンプユニット
48 吐出流路切換弁
51 回収弁
55 洗浄液体源
57 洗浄弁
58 第1のアーススイッチ
59 第2のアーススイッチ
60 塗料ライン
62 主剤供給装置
63 主剤源
64 硬化剤供給装置
65 硬化剤源
67 硬化剤供給流路
70 硬化剤ライン
73 選択供給弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される塗料に高電圧を印加し被塗物に向けて噴霧する噴霧手段と、
塗料を貯える2つの独立した容器からなる第1,第2のタンクと、
該第1,第2のタンクに塗料源からの塗料を充填する第1,第2の充填流路と、
前記第1,第2のタンクに貯えられた塗料を吐出する第1,第2の吐出流路と、
一端が該第1,第2の吐出流路に合流して接続され他端が前記噴霧手段に接続された供給流路と、
前記第1,第2の吐出流路と供給流路とに接続して設けられ、前記第1,第2の吐出流路を供給流路に切換えて接続する吐出流路切換弁と、
前記第1,第2の吐出流路に接続して設けられ、該吐出流路切換弁により一方の吐出流路から他方の吐出流路に切換えた後に前記一方の吐出流路内の残存塗料を一方のタンクに回収するために、加圧エア源からの加圧エアを前記一方の吐出流路に供給する回収弁と、
前記供給流路に接続して設けられ、前記噴霧手段による塗装作業の終了後に、前記供給流路と噴霧手段とに残存する塗料を洗浄するために、加圧エア源からの加圧エアと洗浄液体源からの洗浄液体を供給する洗浄弁と、
前記第1,第2のタンクにそれぞれ設けられ、塗装作業のために前記噴霧手段に向け塗料を供給している前記一方のタンクをアースに対して開成するアーススイッチとにより構成してなる静電塗装装置。
【請求項2】
前記回収弁は、前記加圧エア源と前記第1の吐出流路との間に設けられた第1の回収エア供給弁と、前記加圧エア源と第2の吐出流路との間に設けられた第2の回収エア供給弁とを備えてなる請求項1に記載の静電塗装装置。
【請求項3】
前記第1,第2の充填流路には、前記吐出流路切換弁により前記一方の吐出流路から他方の吐出流路に切換えられた後に、前記一方のタンクに塗料を充填する充填弁と、該充填弁により前記タンクに塗料を充填するときにタンク内のエアを排出する排気弁とをそれぞれ設ける構成としてなる請求項1または2に記載の静電塗装装置。
【請求項4】
前記第1,第2のタンク内に加圧エア源からの加圧エアを供給し前記第1,第2のタンクに充填された塗料を押出す塗料押出し弁を設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の静電塗装装置。
【請求項5】
前記第1,第2のタンクは、絶縁性材料を用いた容器として形成し、
該容器には、塗料流通孔を有する二室画成板によって上側の高電圧遮断室と下側の塗料収容室とに画成し、
前記容器の上部側には該二室画成板の塗料流通孔を介して高電圧遮断室から塗料収容室に塗料を流入する塗料流入口を設け、
前記容器の下部側には前記塗料収容室内の塗料を流出する塗料流出口を設ける構成としてなる請求項1,2,3または4に記載の静電塗装装置。
【請求項6】
一端が前記吐出流路の途中から分岐し他端が前記タンクの塗料収容室に連通した回収流路を設け、
前記吐出流路には、前記回収流路の分岐位置とタンクとの間に位置して前記噴霧手段に向けて塗料を供給するときに開弁するタンク流出弁を設け、
前記回収流路には、前記タンクに向けて塗料を回収するときに開弁するタンク回収弁を設ける構成としてなる請求項5に記載の静電塗装装置。
【請求項7】
供給される塗料に高電圧を印加し被塗物に向けて噴霧する噴霧手段と、
二液型塗料の主剤を貯える2つの独立した容器からなる第1,第2のタンクと、
該第1,第2のタンクに主剤源からの主剤を充填する第1,第2の充填流路と、
前記第1,第2のタンクに貯えられた主剤を吐出する第1,第2の吐出流路と、
一端が該第1,第2の吐出流路に合流して接続され他端が前記噴霧手段に接続された主剤供給流路と、
前記第1,第2の吐出流路と主剤供給流路とに接続して設けられ、前記第1,第2の吐出流路を主剤供給流路に切換えて接続する吐出流路切換弁と、
前記第1,第2の吐出流路に接続して設けられ、該吐出流路切換弁により一方の吐出流路から他方の吐出流路に切換えた後に前記一方の吐出流路内の残存主剤を一方のタンクに回収するために、加圧エア源からの加圧エアを前記一方の吐出流路に供給する回収弁と、
前記主剤供給流路に接続して設けられ、前記噴霧手段による塗装作業の終了後に、前記主剤供給流路と噴霧手段とに残存する主剤を洗浄するために、加圧エア源からの加圧エアと洗浄液体源からの洗浄液体を供給する主剤側洗浄弁と、
前記第1,第2のタンクにそれぞれ設けられ、塗装作業のために前記噴霧手段に向け主剤を供給している前記一方のタンクをアースに対して開成するアーススイッチと、
一端が二液型塗料の硬化剤源に接続され他端が前記供給流路に合流した硬化剤供給流路と、
該硬化剤供給流路に設けられ、硬化剤源からの硬化剤と洗浄用の加圧エア、洗浄液体とを選択して前記噴霧手段に向け供給する選択供給弁とにより構成してなる静電塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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