説明

静電塗装装置

【課題】絶縁体で構成される霧化部を有する回転霧化式の静電塗装装置を用いて、水性塗料等の導電性塗料を使用して静電塗装を行う場合において、外部電極と被塗物の間で形成される電界の強度および塗料粒子の帯電量を増大させて、塗着効率の向上を図ることができる静電塗装装置を提供する。
【解決手段】絶縁体で構成されるベルカップ4aと、シェーピングエアを噴出させるエアノズル6と、を有する塗装ガンと、ワークとの間で電界を形成するための、ベルカップ4aと電気的に絶縁される外部電極7と、外部電極7に高電圧を印加する高電圧発生装置5と、高電圧を制御する制御装置と、を備え、水性塗料を使用して静電塗装を行うための静電塗装装置1であって、外部電極7の先端部7aを、ベルカップ4aの背後におけるシェーピングエアの誘引領域に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性塗料を使用して静電塗装を行う回転霧化式の静電塗装装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗装分野においては、環境負荷低減等のために、溶剤系塗料から水性塗料への転換を図る取り組みがなされており、静電塗装の分野においても、水性塗料を採用することが一般的になっている。
水性塗料等の導電性塗料を用いて静電塗装を行う場合、従来から一般的に採用されている塗装ガンに高電圧を印加するタイプの静電塗装装置では、塗料を介して塗料の供給経路等に電流がリークしてしまうため、静電塗装が成立せず、従来の静電塗装装置をそのまま使用することができなかった。
【0003】
そこで、導電性塗料を用いて静電塗装を行う場合には、塗装ガンの周囲に外部電極を配置した、所謂外部電極タイプの静電塗装装置が一般的に使用されている。
外部電極を有する静電塗装装置では、塗装ガンと外部電極を電気的に絶縁しており、外部電極と被塗物との間で電界を形成するとともに、噴霧された塗料粒子に外部電極から放出された負の電荷(電子)を与えることによって、塗料粒子を帯電させて、静電塗装を成立させるようにしている。
そして、導電性塗料を使用する静電塗装装置の改良を図るべく、種々の技術が検討されており、例えば、以下に示す特許文献1および特許文献2にその技術が開示され公知となっている。
【0004】
特許文献1に開示されている従来技術では、導電性塗料を噴霧する塗装機がアースに接続され、該塗装機の周囲に沿って平行に電気的絶縁状態で配設した複数本の外部電極に、塗装機から噴霧した塗料粒子を荷電する高電圧が印加されるとともに、外部電極との間に静電界を形成する被塗物に、外部電極とは逆極性の高電圧を印加する静電塗装装置が示されている。
このような構成とすることにより、外部電極に印加する電圧を低く抑えることができるため、塗装機と外部電極の保持すべき絶縁距離を小さくすることができ、外部電極から塗装機に電流がリークしにくい構成としている。
【0005】
また、特許文献2に開示されている従来技術では、回転する噴霧頭(ベルカップ)を有し、かつベルカップの前面上に塗料を供給する手段を備えた回転霧化塗装装置において、ベルカップが電気絶縁材料で構成され、かつベルカップの後面側に、ベルカップの中心部側よりベルカップの後面形状に概略沿って外方に延長されてなる略帯状の電極を、ベルカップの回転軸回りに相互に位相差を有するように複数本配置してなり、この複数本の放電電極が、ベルカップとともに回転する回転霧化静電塗装装置が示されている。
このような構成とすることにより、外部電極と被塗物との間で生じる放電電流を増大させることができ、塗着効率の向上を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−134451号公報
【特許文献2】特開平9−131551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に示される静電塗装装置等の、導電性塗料を使用するための従来の回転霧化式の静電塗装装置では、塗装機(塗装ガン)から略円形等の所定の拡散パターンで塗料が噴霧され、また、外部電極と被塗物の間で形成される電界が、当該拡散パターンの外周部分を通過する構成としている。
【0008】
当該拡散パターンの外周部分において拡散する塗料粒子は、電界から電荷を容易に取得することができるが、電界から離間している当該拡散パターンの中心寄りの部位において拡散する塗料粒子は、電界から電荷を取得することが困難であるため、塗装機から噴霧される塗料粒子全体としては、帯電量が低くなっていた。
このため、導電性塗料を使用して静電塗装を行う場合には、非導電性塗料を使用する静電塗装装置を用いた場合に比して、塗料の塗着効率が悪くなるという問題があった。尚、ここでいう「塗着効率」とは、噴霧した塗料量に対する被塗物に塗着した塗料量の比を示す値である。
【0009】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、絶縁体で構成される霧化部を有する回転霧化式の静電塗装装置を用いて、水性塗料等の導電性塗料を使用して静電塗装を行う場合において、外部電極と被塗物の間で形成される電界の強度および塗料粒子の帯電量を増大させて、塗着効率の向上を図ることができる静電塗装装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、回転により塗料を微粒化させるための絶縁体で構成されるベルカップと、微粒化した塗料の拡散パターンを制御するためのシェーピングエアを噴出させるエア噴出部と、を有する塗装ガンと、被塗物との間で電界を形成するための、前記ベルカップと電気的に絶縁される外部電極と、前記外部電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、を備え、導電性塗料を使用して静電塗装を行うための静電塗装装置であって、前記外部電極の先端部を、前記ベルカップの背後における、前記シェーピングエアによる誘引作用が生じる領域に配置するものである。
【0012】
請求項2においては、回転により塗料を微粒化させるための絶縁体で構成されるベルカップと、微粒化した塗料の拡散パターンを制御するためのシェーピングエアを噴出させるエア噴出部と、を有する塗装ガンと、被塗物との間で電界を形成するための、前記ベルカップと電気的に絶縁される外部電極と、前記外部電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、を備え、導電性塗料を使用して静電塗装を行うための静電塗装装置であって、前記外部電極の先端部を、前記ベルカップの背後における、前記シェーピングエアの流れ中に配置するものである。
【0013】
請求項3においては、前記外部電極を、前記エア噴出部の内部に配設するものである。
【0014】
請求項4においては、前記ベルカップの背後における、前記シェーピングエアによる誘引作用が生じる領域に先端部を配置した前記外部電極を、さらに追加するものである。
【0015】
請求項5においては、前記制御装置は、前記高電圧発生装置により印加する高電圧として、静電塗装に適した電圧である第一の印加電圧と、該第一の印加電圧に比して低い電圧である第二の印加電圧が設定されるとともに、前記第一の印加電圧と前記第二の印加電圧を、所定のパルス幅、パルス間隔、振幅でパルス状に切り換え可能とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、噴霧直後の塗料粒子に電荷を与えることでき、また、塗料の拡散パターンの中心寄りに存在する塗料粒子に電荷を与えることができる。
これにより、塗着時における塗料の帯電量および塗料に作用するクーロン力を増大させて、塗着効率の向上を図ることができる。
【0018】
請求項2においては、噴霧直後の塗料粒子に電荷を与えることでき、また、塗料の拡散パターンの中心寄りに存在する塗料粒子に電荷を与えることができる。
これにより、塗着時における塗料の帯電量および塗料に作用するクーロン力を増大させて、塗着効率の向上を図ることができる。
【0019】
請求項3においては、噴霧直後の塗料粒子に確実に電荷を与えることでき、また、塗料の拡散パターンの中心寄りに存在する塗料粒子に確実に電荷を与えることができる。
これにより、塗着時における塗料の帯電量および塗料に作用するクーロン力を確実に増大させて、確実に塗着効率の向上を図ることができる。
【0020】
請求項4においては、噴霧直後の塗料粒子により多くの電荷を与えることでき、また、塗料の拡散パターンの中心寄りに存在する塗料粒子により多くの電荷を与えることができる。
これにより、塗着時における塗料の帯電量および塗料に作用するクーロン力をさらに増大させて、塗着効率のさらなる向上を図ることができる。
【0021】
請求項5においては、外部電極と被塗物との間で形成する電界の強度を高めることができる。これにより、塗着時において塗料に作用するクーロン力を増大させて、塗着効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置の全体構成を示す模式図。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置による塗料粒子の噴霧状況、シェーピングエアの噴出状況、および電界の形成状況を示す模式図。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置におけるシェーピングエア回りに形成される誘引領域を示す模式図。
【図4】外部電極から放出される電荷の拡散状況を示す模式図、(a)本発明の一実施形態に係る静電塗装装置の外部電極から放出される電荷の拡散状況を示す模式図、(b)従来の静電塗装装置の外部電極から放出される電荷の拡散状況を示す模式図。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る外部電極の配置が異なる静電塗装装置における電荷の拡散状況を示す模式図。
【図6】外部電極から放出される電荷の拡散状況を示す模式図、(a)本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置の外部電極から放出される電荷の拡散状況を示す模式図、(b)本発明の第二の実施形態に係る外部電極の配置が異なる静電塗装装置における電荷の拡散状況を示す模式図。
【図7】本発明の第三の実施形態に係る静電塗装装置による静電塗装の状況を示す模式図。
【図8】印加電圧の時間変化と放電電流の時間変化の関係を示す図、(a)従来の静電塗装装置の場合を示す図、(b)本発明の第三の実施形態に係る静電塗装装置の場合を示す図。
【図9】従来の静電塗装装置による電界の形成状況を示す模式図、(a)電圧Vを定常的に印加した場合を示す模式図、(b)電圧Vを定常的に印加した場合を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、塗着効率の向上を実現する静電塗装装置の第一の実施形態について、図1〜図3を用いて説明をする。
尚、本説明では、図1〜図3中に示す矢印Aの方向を、塗装方向たる前方として規定し、その反対方向を後方とする。
図1に示す如く、本発明に係る静電塗装装置の第一の実施形態である静電塗装装置1は、水性塗料を使用して、被塗物たるワーク2に静電塗装を行うための装置であって、ロボット3、塗装ガン4、高電圧発生装置5、エアノズル6・6、外部電極7・7、制御装置10等からなる構成としている。ここで、ワーク2は接地(アースGに接続)されており、電位を「0」としている。
尚、本実施形態では、水性塗料を使用して静電塗装を行う静電塗装装置1を例示しているが、本発明に係る静電塗装装置において使用する塗料を水性塗料に限定するものではなく、導電性を有する塗料を使用する静電塗装装置全般に本発明を適用することが可能である。
【0024】
ロボット3は、ワーク2に対して、塗装ガン4を所望する速度および姿勢で変位させることができる多関節型ロボットであり、アーム3a、基台部3b等からなる構成としている。そして、アーム3a先端の手先部3cにおいて、塗装ガン4を支持している。
尚、本実施形態では、静電塗装装置1を構成するロボット3が多関節型ロボットである場合を例示しているが、本発明に係る静電塗装装置を構成するロボットの態様をこれに限定するものではない。
【0025】
塗装ガン4は、ワーク2に向けて塗料を噴霧して、ワーク2に塗料を塗布することができる塗装装置であって、ベルカップ4a、ガン本体4b等からなる構成としている。ベルカップ4aはガン本体4bの塗装方向側端面に取り付けられている。
塗装ガン4は、ベルカップ4aをエアモータ4cからなる駆動手段により回転させて、ベルカップ4aの内面4dに展延させた液状の塗料を遠心力により微粒化させることができる回転霧化型の塗装装置である。またベルカップ4aの回転軸心上に、ベルカップ4aの内面4dに液状の塗料を供給するための貫通孔4eが形成されており、当該貫通孔4eには塗料を供給するための塗料配管8を接続している。このような構成により、塗料配管8からベルカップ4aの内面4dに塗料を供給するようにしている。
【0026】
エアノズル6は、塗料の拡散パターンを調整するシェーピングエアを噴出するためのノズル部であり、該エアノズル6には、エアを供給するための手段であるエア配管9・9を接続している。そして、エアノズル6の噴出部の形状や、エア配管9・9から供給するエアの供給圧力等を適宜調整することによって、塗料の拡散パターンを調整する。
【0027】
また、エアノズル6は、ベルカップ4aの背面に向けてシェーピングエアを噴出することができるように、ガン本体4bの前端面において、ベルカップ4aに噴出方向を向けて配置されており、エアノズル6から噴出させるシェーピングエアの拡散パターンを、ベルカップ4aを取り囲むようなパターンとしている。
尚、本実施形態では、シェーピングエアを噴出するためのエア噴出部がノズル状の態様である場合を例示しているが、本発明に係る静電塗装装置を構成するエア噴出部の態様をこれに限定するものではなく、例えば、エア噴出部を、リング状のエア噴出部を形成する、所謂シェーピングエアリングの態様とすることも可能である。
【0028】
高電圧発生装置5は、所謂カスケードと呼ばれる昇圧回路5aと、電圧を発生させることができる電源部5bを備え、電源部5bにより発生させた電圧を、昇圧回路5aにより昇圧して、数十kV程度の静電高電圧を発生させることができる装置である。
尚、以下の説明では、高電圧発生装置5により印加する静電高電圧の値を電圧Vとして規定し、電圧Vを印加したときに生じる放電電流の値を電流Iとして規定する。また、放電電流Iが流れることによって形成される静電界を電界Eとして規定する。また、以下の説明では、発生させる静電高電圧の極性が負である場合を例示して説明をする。
【0029】
そして、高電圧発生装置5は、ケーブルによりガン本体4bに内蔵される外部電極7と電気的に接続しており、外部電極7に対して電圧Vを印加することができる。
高電圧発生装置5によって、外部電極7に負の電圧Vを印加すると、外部電極7からアースGに接地された(即ち、電位が0Vである)ワーク2に向けて放電電流Iが流れる。
そして、外部電極7からワーク2に向かって電位の勾配を有する静電界たる電界Eが形成され、この電界Eを利用して、ワーク2に対する静電塗装を行うことができる。
【0030】
図1および図2に示す如く、外部電極7は、導電性材料により形成される線状の部材であり、塗装ガン4と電気的に絶縁された状態を保持しつつ、塗装ガン4のガン本体4bに内蔵されている。即ち、外部電極7と塗装ガン4の間では、電界が形成されることがない。
また、外部電極7は、エアノズル6の軸心に対して、ベルカップ4aの回転中心から離間する側に設けており、外部電極7のコロナ放電を生じさせる側の一端部には、尖らせた態様の先端部7aを形成している。
そして、高電圧発生装置5によって、外部電極7に電圧を印加することにより、先端部7aから電荷(電子)が放出される。
【0031】
また、高電圧発生装置5には、制御装置10が接続されている。
制御装置10は、高電圧発生装置5によって発生させる静電高電圧(即ち、電圧V)をコントロールするための装置である。
静電塗装装置1は、制御装置10から出力される指令信号に基づいて、高電圧発生装置5によって発生させる電圧Vを制御する構成としている。
【0032】
次に、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1におけるシェーピングエアによる誘引領域の形成状況について、図3を用いて説明をする。
尚、以下の説明では、図3に示すように、ベルカップ4aの前面(塗装方向側の端面)位置を基準として、その後方(ガン本体4b側)に該当する部位を、ベルカップ4aの「背後」と呼ぶものとする。また、説明の便宜上、図3中における電界Eの記載を省略している(図4、図5、図6においても同様)。
【0033】
図3に示す如く、静電塗装装置1では、エアノズル6・6からベルカップ4aに向けて所定の拡散パターンでシェーピングエアを噴出させると、シェーピングエアの周囲において、空気を誘引する領域(以下、「誘引領域」と呼ぶ)が形成される。当該誘引領域の形成状態は、シェーピングエアの拡散パターンや噴出速度等の各要素を変更することによって、適宜設定することができる。
【0034】
そして、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1では、図3に示すように外部電極7の先端部7aを、ベルカップ4aの背後におけるシェーピングエアの誘引領域に配置する構成としている。
このような構成により、先端部7aから放出される電荷を、ベルカップ4aの背後におけるシェーピングエアに誘引させることができ、当該電荷をシェーピングエアの流れに乗せて拡散させることができる。
尚、本実施形態では、塗装ガン4と電気的に絶縁された外部電極7をガン本体4bに内蔵する態様を例示しているが、外部電極7は、必ずしもガン本体4bに内蔵する必要はなく、先端部7aをベルカップ4aの後部におけるシェーピングエアの誘引領域に配置することができる態様であればよい。
【0035】
次に、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1による静電塗装状況について、図4を用いて説明をする。
従来の静電塗装装置51では、シェーピングエアの誘引領域を意識せずに、外部電極7を配置していた。従って、図4(b)に示すように、外部電極7の先端部7aが、シェーピングエアの誘引領域から外れた配置となる場合が多かった。
この場合、ベルカップ4aから噴霧される塗料粒子xが、噴霧直後に接触するシェーピングエアには電荷がほとんど含まれておらず、塗料粒子xの噴霧後、該塗料粒子xに対する電荷の蓄積が始まるまでにタイムラグがあった。このため、塗料粒子xが噴霧されてから塗着するまでの時間における、電荷の蓄積に利用される時間が短かくなっていた。
【0036】
また、外部電極7から放出された電荷は、拡散パターンの中心(即ち、ベルカップ4aの回転軸心上)付近に到達することなく拡散パターンの外側方向に拡散してしまうため、拡散パターンの中心付近に存在する塗料粒子xを確実に帯電させることができなかった。
【0037】
さらに、外部電極7から放出された電荷の一部分は、シェーピングエアの誘引作用によりシェーピングエアに取り込まれて、ベルカップ4aから噴霧される塗料粒子xを帯電させるのに寄与するが、その他の部分は、シェーピングエアに取り込まれることなく拡散してしまうため、塗料粒子xを確実に帯電させることができなかった。
【0038】
一方、図4(a)に示す如く、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1では、外部電極7の先端部7aを、意識的にベルカップ4aの背後におけるシェーピングエアの誘引領域に配置している。
このため、外部電極7から放出された電荷は、シェーピングエアによる誘引作用によって、シェーピングエアに取り込まれて、ベルカップ4aから噴霧される塗料粒子xを帯電させるのに寄与するため、塗料粒子xを確実に帯電させることができる。
【0039】
また、塗料粒子xは、噴霧直後において、シェーピングエアと接触する。当該シェーピングエアには、ベルカップ4aの背後において、既に電荷が取り込まれているため、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1では、噴霧直後の塗料粒子xに対して、すぐに電荷を与えることができる。
このため、塗料粒子xが噴霧されてから塗着するまでの時間において、より長い時間を電荷の蓄積に利用することができるため、塗着時における塗料粒子xの電荷量が増大する。
【0040】
さらに、外部電極7から放出された電荷は、シェーピングエアの流れ中を十分に拡散して、拡散パターンの中心(即ち、ベルカップ4aの回転軸心上)付近にも到達するため、拡散パターンのより中心部に存在する塗料粒子xについても確実に帯電させることができる。
【0041】
電界中の塗料粒子xに作用するクーロン力Fは、塗料粒子xの帯電量をq、電界(強度)をEとするとき、F=qEとして表される。
つまり、帯電量qが増大すると、塗料粒子xには、従来に比してより大きいクーロン力Fが作用するため、ワーク2により強い力で引き付けられ、その結果、塗着効率を向上させることができる。
【0042】
即ち、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1は、回転により塗料を微粒化させるための絶縁体で構成されるベルカップ4aと、微粒化した塗料の拡散パターンを制御するためのシェーピングエアを噴出させるエア噴出部であるエアノズル6・6と、を有する塗装ガン4と、被塗物たるワーク2との間で電界を形成するための、ベルカップ4aと電気的に絶縁される外部電極7と、外部電極7に高電圧を印加する高電圧発生装置5と、該高電圧発生装置5により印加する高電圧を制御する制御装置10と、を備え、導電性塗料たる水性塗料を使用して静電塗装を行うための静電塗装装置1であって、外部電極7の先端部7aを、ベルカップ4aの背後において、シェーピングエアによる誘引作用が生じる領域(誘引領域)に配置するものである。
このような構成により、噴霧直後の塗料粒子xに電荷を与えることでき、また、塗料の拡散パターンにおける中心(即ち、ベルカップ4aの回転軸心上)寄りに存在する塗料粒子xに電荷を与えることができる。
これにより、塗着時における塗料の帯電量qおよび塗料に作用するクーロン力Fを増大させて、塗着効率の向上を図ることができる。
【0043】
次に、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1を改良した態様について、図5を用いて説明をする。
図5に示す如く、静電塗装装置11は、さらなる塗着効率の向上を図るべく、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1を改良したものであり、静電塗装装置1に対して、さらに外部電極7を一系統追加する構成としている。
【0044】
静電塗装装置11において、追加した外部電極7は、エアノズル6の軸心位置に対して、ベルカップ4aの回転中心寄りに設けており、当該外部電極7の先端部7aを、ベルカップ4aの回転中心寄りに形成されるシェーピングエアの誘引領域に配置する構成としている。
【0045】
このため、静電塗装装置11では、一つのエアノズル6(即ち、一単位のシェーピングエア)に対して、合計二系統の各外部電極7・7から電荷を放出させることができるため、静電塗装装置1に比して、より多くの電荷を放出することができる。そして、シェーピングエアの誘引作用により、ベルカップ4aの背後において、より多くの電荷をシェーピングエアに取り込むことができる。
これにより、塗料粒子xが噴霧されてから塗着するまでの時間において、各塗料粒子x・x・・・により多くの電荷を蓄積させることができるため、塗着時における塗料の帯電量qをより確実に増大させることができる。
【0046】
次に、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置21による静電塗装状況について、図6を用いて説明をする。
図6(a)に示す如く、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置21では、外部電極7の先端部7aを、シェーピングエアの誘引領域ではなく、ベルカップ4aの背後におけるシェーピングエアの流れ中に直接配置する構成としており、具体的には、先端部7aをシェーピングエアの流れ中に直接配置するために、外部電極7をエアノズル6に内蔵する構成としている。
このため、外部電極7から放出された電荷は、シェーピングエアによる誘引作用を利用しなくとも、その全てが確実にシェーピングエアに取り込まれて、ベルカップ4aから噴霧される塗料粒子xを帯電させるのに寄与するため、塗料粒子xを確実に帯電させることができる。
【0047】
また、塗料粒子xは、噴霧直後において、シェーピングエアと接触する。当該シェーピングエアには、ベルカップ4aの背後において、既に電荷が取り込まれているため、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置21では、噴霧直後の塗料粒子xに対して、すぐに電荷を与えることができる。
このため、塗料粒子xが噴霧されてから塗着するまでの時間において、より長い時間を電荷の蓄積に利用することができるため、塗着時における塗料粒子xの電荷量が増大する。
【0048】
さらに、外部電極7から放出された電荷は、シェーピングエアの流れ中を十分に拡散して、拡散パターンの中心(即ち、ベルカップ4aの回転軸心上)付近にも到達するため、拡散パターンのより中心部に存在する塗料粒子xについても確実に帯電させることができる。
【0049】
そして、外部電極7から放出された電荷が、全てベルカップ4aから噴霧される塗料粒子xを帯電させるのに寄与するため、塗料粒子xをより確実に帯電させることができる。
尚、本実施形態では、外部電極7の先端部7aを、ベルカップ4aの背後においてシェーピングエアの流れ中に配置するための態様として、外部電極7をエアノズル6に内蔵する構成を例示しているが、これに限定するものではなく、エアノズルの外部において、その先端部をベルカップの背後におけるシェーピングエアの流れ中に差し込むようにして外部電極を配設する態様とすることも可能である。
【0050】
即ち、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置21は、回転により塗料を微粒化させるための絶縁体で構成されるベルカップ4aと、微粒化した塗料の拡散パターンを制御するためのシェーピングエアを噴出させるエア噴出部であるエアノズル6・6と、を有する塗装ガン4と、被塗物たるワーク2との間で電界を形成するための、ベルカップ4aと電気的に絶縁される外部電極7と、外部電極7に高電圧を印加する高電圧発生装置5と、該高電圧発生装置5により印加する高電圧を制御する制御装置10と、を備え、導電性塗料たる水性塗料を使用して静電塗装を行うための静電塗装装置21であって、外部電極7の先端部7aを、ベルカップ4aの背後における、シェーピングエアの流れ中に配置するものである。
このような構成により、噴霧直後の塗料粒子xに電荷を与えることでき、また、塗料の拡散パターンにおける中心(即ち、ベルカップ4aの回転軸心上)寄りに存在する塗料粒子xに電荷を与えることができる。
これにより、塗着時における塗料の帯電量qおよび塗料に作用するクーロン力Fを増大させて、塗着効率の向上を図ることができる。
【0051】
また、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置21においては、ベルカップ4aの背後におけるシェーピングエアの流れ中に、先端部7aを配置する外部電極7を、エアノズル6の内部に配設するものである。
このような構成により、噴霧直後の塗料粒子xに確実に電荷を与えることでき、また、塗料の拡散パターンの中心(即ち、ベルカップ4aの回転軸心上)寄りに存在する塗料粒子xに確実に電荷を与えることができる。
これにより、塗着時における塗料の帯電量qおよび塗料に作用するクーロン力Fを確実に増大させて、確実に塗着効率の向上を図ることができる。
【0052】
次に、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置21を改良した態様について、説明をする。
図6(b)に示す如く、静電塗装装置31は、さらなる塗着効率の向上を図るべく、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置21を改良したものであり、静電塗装装置21に対して、さらに二系統の外部電極7・7を追加する構成としている。
【0053】
静電塗装装置31において、追加した各外部電極7・7は、エアノズル6の軸心位置に対して、ベルカップ4aの回転中心寄りと外側寄りにそれぞれ設けており、追加した各外部電極7・7の各先端部7a・7aを、ベルカップ4aの背後においてベルカップ4aの回転中心寄りおよび外側寄りに形成されるシェーピングエアの誘引領域に配置する構成としている。
【0054】
このように静電塗装装置31では、一つのエアノズル6(即ち、一単位のシェーピングエア)に対して、合計三系統の各外部電極7・7・7から電荷を放出させることができるため、静電塗装装置21に比して、より多くの電荷を放出することができる。そして、エアノズル6に内蔵する外部電極7によって、シェーピングエアの流れ中に直接電荷を放出するとともに、さらに追加した各外部電極7・7によって、シェーピングエアの誘引領域にも電荷を放出することにより、ベルカップ4aの背後においてシェーピングエアにさらに多くの電荷を取り込むことができる。
これにより、塗料粒子xが噴霧されてから塗着するまでの時間において、各塗料粒子x・x・・・にさらに多くの電荷を蓄積させることができるため、塗着時における塗料の帯電量qを増大させることができる。
【0055】
即ち、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置31は、ベルカップ4aの背後における誘引領域に先端部7aを配置した外部電極7を、さらに追加するものである。
このような構成により、噴霧直後の塗料粒子xにより多くの電荷を与えることでき、また、塗料の拡散パターンの中心(即ち、ベルカップ4aの回転軸心上)寄りに存在する塗料粒子xにより多くの電荷を与えることができる。
これにより、塗着時における塗料の帯電量qおよび塗料に作用するクーロン力Fをさらに増大させて、塗着効率のさらなる向上を図ることができる。
【0056】
次に、塗着効率の向上を実現する静電塗装装置の第三の実施形態について、図7〜図9を用いて説明をする。
図7に示す如く、本発明に係る静電塗装装置の第三の実施形態である静電塗装装置41は、制御装置30を備えている。
制御装置30は、高電圧発生装置5によって発生させる静電高電圧(即ち、電圧V)をパルス状に変化させることができる制御装置であり、この点において、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1が備える制御装置10と相違している。尚、制御装置30以外のその他の構成は静電塗装装置1と共通であるため、説明は省略する。
尚、本実施形態では、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装装置1の制御装置10を制御装置30に置換して改良する場合を例示しているが、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装装置21の制御装置10を制御装置30に置換して改良することも可能である。
【0057】
制御装置30は、高電圧発生装置5によって発生させる静電高電圧(即ち、電圧V)をコントロールするための装置であり、高電圧発生装置5に対してパルス条件を含む信号を出力することができる。
静電塗装装置41では、制御装置30から出力される指令信号に基づいて、高電圧発生装置5によって発生させる電圧Vをパルス状に切り換える構成としている。
尚、ここで言う「パルス状」とは、最大値か最小値のどちらかをとるように周期的に振幅が変化する状態を言い、矩形波状や正弦波状の変化等を含む概念である。
また、ここで言う「パルス条件」とは、パルス波形を決定するための各要素であって、振幅(電圧差)とパルス周期(パルス幅およびパルス間隔)を含んでいる。
【0058】
制御装置30は、ロボット3と接続されており、該ロボット3から塗装ガン4の動作状態(変位位置、姿勢、変位速度等)を示す信号がリアルタイムで入力される構成としている。
また、制御装置30には、ワーク2の仕様や塗装条件(使用する塗料の種類、噴霧量、等の各種条件)に係る情報が予め記憶されており、ワーク2の仕様や塗装条件に係る情報と塗装ガン4の動作状態を示す信号に基づいて、制御装置30によって、静電塗装状況を判断するとともに、そのときの最適なパルス条件をリアルタイムで演算して求める構成としている。
そして、制御装置30は、リアルタイムで求めたそのときの最適なパルス条件に係る指令信号を、高電圧発生装置5に出力する構成としている。
【0059】
尚、ここで言う「塗料の種類」とは、含有成分の相違により帯電性能や導電率が異なる塗料を、種類が異なる塗料として扱う概念であり、例えば、クリア塗料とベース塗料を異なる種類の塗料として扱うようにしている。
【0060】
尚、本実施形態では、制御装置30によって、そのときの静電塗装状況に応じてリアルタイムで指令信号を求める場合を例示しているが、あるいは、塗装開始から塗装終了までの一連の静電塗装工程に応じたパルス条件を予め制御装置30にティーチングしておき、ティーチング内容に従って、制御装置30により高電圧発生装置5に指令信号を出力する態様とすることも可能である。
【0061】
ここで、静電塗装装置による電界Eの形成状況について、説明をする。
図8(a)に示す如く、静電塗装を行う場合において、外部電極7に印加する電圧として従来から一般的に採用されてきた第一の電圧Vを電圧Vとして規定し、電圧Vを定常的に印加したときに生じる放電電流Iの値を電流Iと規定する。また、外部電極7に印加する電圧として従来から一般的に採用されている電圧Vに比して低い第二の電圧Vを電圧Vとして規定し、電圧Vを定常的に印加したときに生じる放電電流Iの値を電流Iと規定する。
そして、電圧Vを印加するときと電圧Vを印加するときの各放電電流I・Iの差をΔI(即ち、ΔI=I−I)と規定する。
【0062】
一方、図8(b)に示す如く、静電塗装装置41では、高電圧発生装置5によって外部電極7に印加する電圧Vの値は、従来と同じ各電圧V・Vとしつつ、制御装置30から出力される信号に従って、各電圧V・Vをパルス状に切り換えて印加するようにしている。
また、パルス状に各電圧V・Vを切り換えて印加すると、このときに生じる放電電流Iは尖鋭部を有する略三角波のパルス状に変化する。そして、このとき生じる放電電流Iのピーク値をピーク電流Iとして規定する。
【0063】
各電圧V・Vを切り換えて印加するパルスの態様は、各電圧V・Vの電圧差である振幅ΔV、高圧側の電圧Vを印加する一単位の時間であるパルス幅tと、低圧側の電圧Vを印加する一単位の時間であるパルス間隔t、によって規定することができる。また、このように規定すると、パルス周期Tは、T=t+tと表すことができる。
【0064】
そして、このピーク電流Iは、制御装置30から出力される信号に従って、パルス条件を調整することによって、定常的に電圧Vを印加するときの放電電流Iに比して大きい値とすることができる。
即ち、静電塗装装置41により静電塗装を行えば、高電圧発生装置5により発生させる電圧Vの値は従来と同じ各電圧V・Vとしながら、より高い放電電流I(ピーク電流I)を得ることが可能になる。
【0065】
ピーク電流Iが放電電流Iに比して高くなる原因は、定常的に各電圧V・Vを印加している場合には、電界Eの領域が既に電子で満たされているため大きな電子の流れが生じないが、一方、各電圧V・Vをパルス状に切り換えて印加する場合には、電界Eの領域に急激な電子の流れが生じるため、定常的に各電圧V・Vを印加している場合に比して大きな電流が流れるものと考えられる。
【0066】
また、電界Eの強度は、放電電流Iの強さに応じて変化するため、従来に比して高いピーク電流Iが流れたときには、より高い強度を有する電界Eを形成することができる。
ここで、各電圧V・Vをパルス状に印加するときの放電電流Iの差をΔI(即ち、ΔI=I−I)として規定する。
【0067】
次に、本発明の第三の実施形態に係る静電塗装装置41を用いて、印加電圧をパルス状に変化させた場合における静電塗装の状況について、説明をする。
図9に示す如く、静電塗装装置1を用いて、高電圧発生装置5により、従来のように定常的な電圧Vを外部電極7に印加する(図8(a)参照)と、ワーク2と外部電極7の間で、図9(a)に示すような電気力線で表される電界Eが形成される。尚、電気力線の間隔がより密になっている部分においては、電界Eの強度がより強くなっている。
【0068】
電界Eの有効範囲Wは、塗装ガン4から噴霧される塗料の拡散パターン等を考慮して、全ての塗料粒子xが電界Eの有効範囲Wに包含されながらワーク2に到達できる範囲となるように、電圧Vを設定している。
尚、ここで言う「電界の範囲」とは、塗料を塗着させるために必要なクーロン力Fを付与し得る強度を有する電界の範囲を意味しており、電界が存在する範囲を意味しているものではない。
【0069】
また、高電圧発生装置5により、定常的に電圧Vを外部電極7に印加する(図8(a)参照)と、ワーク2と外部電極7の間で、図9(b)に示すような電気力線で表される電界Eが形成される。
印加電圧が低い(例えば、電圧Vを印加する)場合、電界Eの有効範囲Wに比してさらに電界Eの有効範囲Wが狭くなっている。また電界Eでは、電気力線の間隔が、電界Eの電気力線の間隔に比してより疎になっており、電界Eの強度は電界Eに比して弱くなっている。
【0070】
一方、静電塗装装置41を用いて、制御装置30および高電圧発生装置5により、パルス状に各電圧V・Vを切り換えて外部電極7に印加する(図8(b)参照)と、ワーク2と外部電極7の間で、図7に示すような電界Eが形成される。
電界Eの有効範囲Wは、電界Eの有効範囲Wに比して、さらに広範囲となっている。また電界Eでは、電気力線の間隔が、電界Eの電気力線の間隔に比してより密になっており、電界Eの強度は、電界Eに比してより高くなっている。
つまり、静電塗装装置41では、制御装置30から出力される信号に従って、パルス条件(即ち、パルス幅t、パルス間隔t、振幅ΔV)を変更することによって、電界Eの強度や有効範囲Wを調整するようにしている。
【0071】
ワーク2と外部電極7の間に形成される電界Eの強度が増大すると、塗料粒子xが電界Eから取得する負の電荷が増えるため、塗料粒子xの帯電量qも増大する。
このため、電界Eを通過して塗着される塗料粒子xには、電界Eの強度の増大および帯電量qの増大による相乗効果によって、従来に比してより大きいクーロン力Fが作用するため、ワーク2により強い力で引き付けられ、その結果、塗着効率を向上させることができる。
【0072】
このように、本発明の第三の実施形態に係る静電塗装装置41を用いて静電塗装を行えば、低圧側の電圧Vを低く設定することにより、振幅ΔVを増大させることができるため、電圧Vをさらに高電圧化しなくても、容易に塗着効率の向上を図ることができる。
【0073】
即ち、本発明の第三の実施形態に係る静電塗装装置41において、制御装置30は、高電圧発生装置5により印加する高電圧として、静電塗装に適した印加電圧である第一の電圧Vと、該第一の電圧Vに比して低い印加電圧である第二の電圧Vが設定されるとともに、各電圧V・Vを、所定のパルス幅t、パルス間隔t、振幅ΔVでパルス状に切り換え可能とするものである。
このような構成により、外部電極7とワーク2との間で形成する電界Eの強度を高めることができる。これにより、塗着時において塗料粒子xに作用するクーロン力Fを増大させて、塗着効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 静電塗装装置
2 ワーク
4 塗装ガン
4a ベルカップ
5 高電圧発生装置
6 エアノズル
7 外部電極
7a 先端部
10 制御装置
30 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転により塗料を微粒化させるための絶縁体で構成されるベルカップと、微粒化した塗料の拡散パターンを制御するためのシェーピングエアを噴出させるエア噴出部と、を有する塗装ガンと、
被塗物との間で電界を形成するための、前記ベルカップと電気的に絶縁される外部電極と、
前記外部電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、
該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、
を備え、
導電性塗料を使用して静電塗装を行うための静電塗装装置であって、
前記外部電極の先端部を、
前記ベルカップの背後における、
前記シェーピングエアによる誘引作用が生じる領域に配置する、
ことを特徴とする静電塗装装置。
【請求項2】
回転により塗料を微粒化させるための絶縁体で構成されるベルカップと、微粒化した塗料の拡散パターンを制御するためのシェーピングエアを噴出させるエア噴出部と、を有する塗装ガンと、
被塗物との間で電界を形成するための、前記ベルカップと電気的に絶縁される外部電極と、
前記外部電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、
該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、
を備え、
導電性塗料を使用して静電塗装を行うための静電塗装装置であって、
前記外部電極の先端部を、
前記ベルカップの背後における、
前記シェーピングエアの流れ中に配置する、
ことを特徴とする静電塗装装置。
【請求項3】
前記外部電極を、
前記エア噴出部の内部に配設する、
ことを特徴とする請求項2記載の静電塗装装置。
【請求項4】
前記ベルカップの背後における、
前記シェーピングエアによる誘引作用が生じる領域に先端部を配置した前記外部電極を、
さらに追加する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の静電塗装装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記高電圧発生装置により印加する高電圧として、静電塗装に適した電圧である第一の印加電圧と、該第一の印加電圧に比して低い電圧である第二の印加電圧が設定されるとともに、
前記第一の印加電圧と前記第二の印加電圧を、所定のパルス幅、パルス間隔、振幅でパルス状に切り換え可能とする、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の静電塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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