説明

静電容量センサ

【課題】導体の誤検出のおそれを抑制し、カバー保護層の表面を平坦化して操作性や機能美を向上させることのできる静電容量センサを提供する。
【解決手段】誘電基材層1と、誘電基材層1の裏面に積層されるX電極パターン層3と、誘電基材層1の表面に積層されるY電極パターン層6と、X電極パターン層3と外部の電子回路とを接続する複数本のX電極用導電接続ライン9と、Y電極パターン層6と外部の電子回路とを接続する複数本のY電極用導電接続ラインと、誘電基材層1の表面に積層されてY電極パターン層6と複数本のY電極用導電接続ラインとを被覆するカバー保護層20と、誘電基材層1とカバー保護層20との間に介在され、複数本のX電極用導電接続ライン9の少なくとも一部に対向する低密度層30とを備える。低密度層30が低誘電率層として静電容量の変化を抑制するので、カバー保護層20の表面を部分的に肉厚に形成する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器、コンピュータ機器、情報機器等に使用される静電容量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における静電容量センサは、図示しない誘電基材層と、この誘電基材層の裏面に複数のX電極がそれぞれ配列されるX電極パターン層と、誘電基材層の表面に複数のY電極がそれぞれ配列されるY電極パターン層と、X電極パターン層と外部の電子回路とを接続する複数本のX電極用導電接続ラインと、Y電極パターン層と外部の電子回路とを接続する複数本のY電極用導電接続ラインと、誘電基材層の表面に積層されてY電極パターン層と複数本のY電極用導電接続ラインとを被覆するカバー保護層とを備えて構成されている(特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
誘電基材層は、所定の材料を使用して平面矩形に形成され、後部周縁に細長いテールが延長形成されて外部の電子回路に電気コネクタを介し嵌合接続される。
X電極パターン層は、誘電基材層の裏面Y方向に複数本のX軸が配列形成され、各X軸のX方向に複数のX電極が配列されている。また、Y電極パターン層は、誘電基材層の表面X方向に複数本のY軸が配列形成され、各Y軸のY方向に複数のX電極が配列されている。
【0004】
複数本のX電極用導電接続ラインは、複数本のX軸の端部に先端部が接続され、X軸の端部や一部のX電極に近接しながら誘電基材層の周縁に沿って屈曲形成されるとともに、末端部が誘電基材層のテールに一列に配列されており、この末端部が電子回路に電気コネクタを介し電気的に接続される。また、複数本のY電極用導電接続ラインは、複数本のY軸の端部に先端部が接続され、誘電基材層のテール方向に伸長形成されるとともに、末端部が誘電基材層のテールに一列に配列されており、この末端部が電子回路に電気コネクタを介し電気的に接続される。
【0005】
カバー保護層は、所定のフィルムやシートを用いて平面矩形に形成され、Y電極パターン層のY軸やY電極、及び複数本のY電極用導電接続ラインを被覆して指にタッチされる。
【0006】
このような静電容量センサは、カバー保護層に導体である指が接触し、任意のX電極やY電極に指が接近すると、指との間にキャパシタを形成して静電容量の変化を検出し、電子機器の入力操作に資するよう機能する。
【0007】
ところで、X電極パターン層とX電極用導電接続ラインとは、例えばX軸の端部や一部のX電極に複数本のX電極用導電接続ラインが引き回されて部分的に近接するので、X電極ではなく、X電極に近接したX電極用導電接続ラインの近接部に指が誤って接近すると、静電容量の変化を誤検出するおそれがある。この点に鑑み、従来においては、X電極に近接したX電極用導電接続ラインの近接部を被覆するカバー保護層の対向領域を部分的に肉厚に形成し、静電容量センサの検出感度を部分的に低下させることにより、静電容量の誤検出のおそれを排除するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003‐99185号公報
【特許文献2】特許第4435622号公報
【特許文献3】特開2009‐154479号公報
【特許文献4】特開2009‐283181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来における静電容量センサは、以上のように構成され、X電極用導電接続ラインの近接部を被覆するカバー保護層の対向領域が肉厚に形成されているので、誤検出のおそれを排除することができる。
しかしながら、カバー保護層の表面を部分的に肉厚に形成すると、カバー保護層の表面に凹凸や段差が生じるので、指の動きに支障を来たし、操作性の低下や機能美の劣化を招くという大きな問題が新たに生じる。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、導体の誤検出のおそれを抑制し、カバー保護層の表面を平坦化して操作性や機能美を向上させることのできる静電容量センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、誘電基材層と、この誘電基材層の裏面に複数の第一の電極が配列される第一の電極パターン層と、誘電基材層の表面に複数の第二の電極が配列される第二の電極パターン層と、第一の電極パターン層と外部の電子回路とを接続する複数の第一の導電接続ラインと、第二の電極パターン層と外部の電子回路とを接続する複数の第二の導電接続ラインとを備え、第一、第二の電極に導体が接近した場合に静電容量の変化を検出するものであって、
誘電基材層の表面に、第二の電極パターン層と複数の第二の導電接続ラインとを被覆するカバー保護層を積層し、誘電基材層とカバー保護層との間あるいはカバー保護層内に、複数の第一の導電接続ラインの少なくとも一部に対向する低密度層を設けたことを特徴としている。
【0012】
なお、第一の電極パターン層に近接する複数の第一の導電接続ラインの近接部に低密度層を対向させることができる。
また、低密度層に微細発泡セルを形成してその誘電率を低くすることが好ましい。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における誘電基材層とカバー保護層との間、又は第二の電極パターン層とカバー保護層との間には、絶縁性の加飾層や模様層が必要に応じて介在される。第一、第二の電極は、規則的に並んでも良いし、不規則に並んでも良い。第一の電極は、X方向に並ぶX電極やY方向に並ぶY電極のいずれでも良い。また、低密度層は、誘電率の低い平面略矩形、多角形、L字形等に形成することができ、単数複数を特に問うものではない。
【0014】
本発明によれば、第一、第二の電極パターン層の第一、第二の電極ではなく、第一の導電接続ラインの少なくとも一部に導体が接近しても、第一の導電接続ラインの少なくとも一部に対向する低誘電の低密度層が導体の接近に伴う静電容量の変化を抑制するので、静電容量の変化を誤検出するおそれが少ない。したがって、カバー保護層を部分的に肉厚に形成する必要がない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導体の誤検出のおそれを抑制し、カバー保護層の表面を平坦化して操作性や機能美を向上させることができるという効果がある。
【0016】
また、請求項2記載の発明によれば、第一の電極パターン層の検出に影響を及ぼし易い第一の導電接続ラインの近接部に低密度層が対向して導体接近時の静電容量の変化を抑制するので、例え第一、第二の電極ではなく、第一の導電接続ラインの近接部に導体が接近しても、静電容量の変化を誤検出するおそれが実に少ない。
さらに、請求項3記載の発明によれば、低密度層内に空気孔や空洞を設けることができるので、低密度層の誘電率を十分に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る静電容量センサの実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る静電容量センサの実施形態におけるX電極パターン層を模式的に示す平面説明図である。
【図3】本発明に係る静電容量センサの実施形態におけるY電極パターン層を模式的に示す平面説明図である。
【図4】本発明に係る静電容量センサの第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における静電容量センサは、図1ないし図3に示すように、平坦な薄い誘電基材層1と、この誘電基材層1の裏面に積層されるX電極パターン層3と、誘電基材層1の表面に積層されるY電極パターン層6と、X電極パターン層3と外部の電子回路とを接続する複数本のX電極用導電接続ライン9と、Y電極パターン層6と外部の電子回路とを接続する複数本のY電極用導電接続ライン12と、Y電極パターン層6とY電極用導電接続ライン12とを被覆するカバー保護層20と、X電極用導電接続ライン9の少なくとも一部に対向する低密度層30とを備えるようにしている。
【0019】
誘電基材層1、X電極パターン層3、Y電極パターン層6、複数本のX電極用導電接続ライン9とY電極用導電接続ライン12、及び低密度層30には、必要に応じて光透過性等が付与される。
【0020】
誘電基材層1は、図1ないし図3に示すように、可撓性を有する所定の材料を使用して基本的には平面矩形に形成され、後部周縁に細長いテール2が延長形成されており、このテール2が図示しない電子回路に電気コネクタを介し着脱自在に嵌合接続される。この誘電基材層1の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば寸法安定性や強度に優れるポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等からなるフィルムがあげられる。
【0021】
X電極パターン層3とY電極パターン層6とは、導電性を有する材料を使用して誘電基材層1の表裏両面にそれぞれ配列形成される。これらX電極パターン層3とY電極パターン層6の材料としては、特に限定されるものではないが、スクリーン印刷法に適する導電性インクや導電性ポリマー、エッチング法に適する銅箔等があげられる。
【0022】
X電極パターン層3は、図2に示すように、誘電基材層1の裏面Y方向に所定の間隔で配列される複数本のX軸4と、各X軸4のX方向に所定の間隔で配列される複数のX電極5とを備えて形成される。各X電極5は、平面菱形に形成されて指のタッチ操作の対象とされる。
【0023】
Y電極パターン層6は、図3に示すように、誘電基材層1の表面X方向に所定の間隔で配列される複数本のY軸7と、各Y軸7のY方向に所定の間隔で配列されて指のタッチ操作の対象となる複数のY電極8とを備えて形成されている。各Y電極8は、平面菱形に形成され、複数のX電極5間に誘電基材層1を介して位置したり、端のX電極5に誘電基材層1を介して隣接しており、指のタッチ操作の対象とされる。
【0024】
複数本のX電極用導電接続ライン9とY電極用導電接続ライン12とは、X電極パターン層3やY電極パターン層6と同様の材料を使用して誘電基材層1に形成される。
【0025】
複数本のX電極用導電接続ライン9は、図2に示すように、複数本のX軸4の端部に先端部が接続されて隣接し、X軸4の端部や一部のX電極5に近接部10が近接しながら誘電基材層1の側部周縁と後部周縁に沿って屈曲形成されるとともに、末端部11が誘電基材層1のテール2裏面に一列に配列されており、この末端部11が電子回路に電気コネクタを介し電気的に接続される。各X電極用導電接続ライン9は、細長い線条に形成される。
【0026】
複数本のY電極用導電接続ライン12は、図3に示すように、複数本のY軸7の端部に先端部が接続され、誘電基材層1のテール2方向に屈曲しながら伸長形成されるとともに、末端部13が誘電基材層1のテール2表面に一列に配列されており、この末端部13が電子回路に電気コネクタを介し電気的に接続される。各Y電極用導電接続ライン12は、X電極用導電接続ライン9同様、細長い線条に形成される。
【0027】
カバー保護層20は、図1に示すように、所定の材料を用いて基本的には誘電基材層1に対応する平面略矩形に形成され、誘電基材層1の表面に積層接着されることにより、Y電極パターン層6、及びY電極用導電接続ライン12の末端部13以外の大部分を被覆して指にタッチされる。このカバー保護層20の材料としては、例えば光透過性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ウレタン樹脂製等のフィルムが該当する。
【0028】
カバー保護層20の側部には対向領域21が区画されるが、この対向領域21は、図1に示すように、複数本のX電極用導電接続ライン9の一部である近接部10に誘電基材層1や低密度層30を介し間接的に対向する。カバー保護層20の対向領域21は、必要に応じて増減変更され、好ましくは複数本のX電極用導電接続ライン9の略全てに間接的に対向するのが良い。
【0029】
低密度層30は、図1に示すように、例えば各種の薄い樹脂フィルムやシート等からなり、誘電基材層1の表面とカバー保護層20の対向領域21との間に介在配備されるとともに、少なくとも複数本のX電極用導電接続ライン9の近接部10に誘電基材層1を介し間接的に対向し、X電極用導電接続ライン9に対する指の誤った接近で静電容量が変化するのを抑制するよう機能する。
【0030】
低密度層30は、限定されるものではないが、例えば(1)ガスの発生に基づく微細発泡セル(ナノセル)の形成、(2)中空のマイクロカプセルの充填、あるいは(3)材料を透過するレーザ光線によるインナーマーキング法により全体としての誘電率が低く調整され、所定の形に整えられた後、低誘電率層として誘電基材層1の表面に後付けされる。この低密度層30の誘電率は、静電容量センサの誘電率と比較して適宜設定される。また、低密度層30の厚さは、Y電極パターン層6のY軸7やY電極8の厚さと略等しくなるよう揃えられる。
【0031】
上記構成において、静電容量センサを製造する場合には、先ず、誘電基材層1の両面にX電極パターン層3、Y電極パターン層6、複数本のX電極用導電接続ライン9とY電極用導電接続ライン12をそれぞれ形成し、誘電基材層1の表面に所定の形の低密度層30を位置決め接着して複数本のX電極用導電接続ライン9の少なくとも近接部10に誘電基材層1を介し間接的に対向させ、その後、誘電基材層1の表面にカバー保護層20を接着層や接着剤により平坦に接着してY電極パターン層6と複数本のY電極用導電接続ライン12とを被覆すれば、静電容量センサを製造することができる。
【0032】
このような静電容量センサは、カバー保護層20の表面に導体である指が接触し、任意のX電極5やY電極8の直上に指が接近すると、指との間にキャパシタを形成し、静電容量の変化を検出して搭載された電子機器の入力操作に資する。この際、カバー保護層20の対向領域21に指がずれ、X電極5やY電極8ではなく、X電極用導電接続ライン9の引き回された近接部10直上に指が誤って接近しても、X電極用導電接続ライン9の近接部10を覆う低密度層30が静電容量の変化を抑制するので、静電容量の変化を誤検出するおそれがない。
【0033】
上記構成によれば、誘電基材層1とカバー保護層20の対向領域21との間に介在された低密度層30が低誘電率層として静電容量の変化を抑制するので、カバー保護層20の表面を部分的に肉厚に形成する必要がない。したがって、カバー保護層20の表面に凹凸や段差が生じることがなく、カバー保護層20に接触する指の滑らかな動きを確保することができるので、操作性が低下したり、機能美が劣化するのを有効に抑制防止することができる。
【0034】
また、低密度層30中に微細発泡セルを形成すれば、低密度層30の薄型化を実現したり、部分断熱性を付与することができる。また、光散乱性が向上するので、低密度層30を光反射フィルムとして利用することも可能になる。さらに、低密度層30の厚さをY電極パターン層6の厚さに揃えることができるので、カバー保護層20に凹凸や段差が生じることがない。
【0035】
次に、図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、誘電基材層1とカバー保護層20の対向領域21との間に別体の低密度層30を介在するのではなく、カバー保護層20の内部に低密度層30を部分的に形成するようにしている。
【0036】
低密度層30は、例えば(1)ガスの発生に基づく微細発泡セル(ナノセル)の形成、(2)材料を透過するレーザ光線によるインナーマーキング法により誘電率が低く調整され、低誘電率層としてカバー保護層20の対向領域21内に一体形成される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、カバー保護層20と低密度層30とが一体なので、製造方法の簡素化や材料の削減が期待できるのは明らかである。
【0037】
なお、上記実施形態では誘電基材層1の裏面にX電極パターン層3とX電極用導電接続ライン9とを配設したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、X電極パターン層3とY電極パターン層6の形成面を表裏逆にし、誘電基材層1の表面にX電極パターン層3とX電極用導電接続ライン9を配設しても良い。また、誘電基材層1の裏面に、X電極パターン層3とX電極用導電接続ライン9とを被覆する別のカバー保護層を積層しても良い。さらに、X電極5とY電極8とは、必要に応じ、平面円形、矩形、多角形等の形状に適宜形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る静電容量センサは、医療機器、家電機器、携帯機器、ゲーム機器、コンピュータ機器、車載機器、情報機器、ディスプレイ装置等の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 誘電基材層
3 X電極パターン層(第一の電極パターン層)
4 X軸
5 X電極(第一の電極)
6 Y電極パターン層(第二の電極パターン層)
7 Y軸
8 Y電極(第二の電極)
9 X電極用導電接続ライン(第一の導電接続ライン)
10 近接部(一部)
12 Y電極用導電接続ライン(第二の導電接続ライン)
20 カバー保護層
21 対向領域
30 低密度層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電基材層と、この誘電基材層の裏面に複数の第一の電極が配列される第一の電極パターン層と、誘電基材層の表面に複数の第二の電極が配列される第二の電極パターン層と、第一の電極パターン層と外部の電子回路とを接続する複数の第一の導電接続ラインと、第二の電極パターン層と外部の電子回路とを接続する複数の第二の導電接続ラインとを備え、第一、第二の電極に導体が接近した場合に静電容量の変化を検出する静電容量センサであって、
誘電基材層の表面に、第二の電極パターン層と複数の第二の導電接続ラインとを被覆するカバー保護層を積層し、誘電基材層とカバー保護層との間あるいはカバー保護層内に、複数の第一の導電接続ラインの少なくとも一部に対向する低密度層を設けたことを特徴とする静電容量センサ。
【請求項2】
第一の電極パターン層に近接する複数の第一の導電接続ラインの近接部に低密度層を対向させた請求項1記載の静電容量センサ。
【請求項3】
低密度層に微細発泡セルを形成してその誘電率を低くした請求項1又は2記載の静電容量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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