説明

静電容量型センサの取付け構造およびその組付け方法

【課題】本発明の課題は、伝い水による静電容量型センサの誤動作をより確実に防止することができるとともに外力が加わっても変形しにくく、静電容量型センサの取付け工程が簡単で、取付け工程に要する時間の短縮化を図ることができる静電容量型センサの取付け構造を提供することにある。
【解決手段】近接した物体を検知する静電容量型センサの車両のドアへの取付け構造であって、ドアヘム5の端縁における車内側に配置された静電容量型センサ2とドアヘム5との間に設けられるスペーサ1を備え、スペーサ1の外表面には、ドアヘム5から静電容量型センサ2への伝い水を防止するための水滴防止部11が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに使用して近接した物体を検知する静電容量型センサの取付け構造およびその組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のパワースライドドアと、このパワースライドドアを受け止めるピラーとの間に手や指などが挟まれることを防止するための挟み込み防止装置が知られている。このような挟み込み防止装置としては、静電容量型センサを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで参照する図6(a)は、従来の静電容量型センサの取付け構造を示す断面図であり、車両の水平方向に沿う断面を示した図、図6(b)は、静電容量型センサに物体が近接した際に、静電容量型センサを使用して検出される差分値の推移を示すグラフである。なお、図6(a)の上側は車外側であり、下側は車内側である。また、図6(b)の縦軸は、差分値の電圧(V)を表し、横軸は、時間(秒)を表している。
【0003】
図6(a)に示すように、この取付け構造Spにおいては、静電容量型センサ52は、ドアヘム55の車内側でドアヘム55との間に所定の間隔が確保されるようにブラケット53で取り付けられている。そして、静電容量型センサ52は、閉じようとしているドア50に人体等の物体が近接した際に、静電容量型センサ52と人体等との間の静電容量の変化に基づいて人体等を検知する。ちなみに、差分式の静電容量型センサ(例えば、特許文献1参照)は、例えば、近づく人体等との間の距離が相互に異なるように配置された第1検出電極と第2検出電極とを設けて構成することができる。このような静電容量型センサでは、第1検出電極の電位と、第2検出電極の電位との差分値としての電圧が、予め設定された閾値以上であれば、人体等が静電容量型センサに近接したとみなしている。つまり、図6(b)に示すように、差分値としての電圧(V)が、所定の基準電圧から予め設定した閾値を超えたときに人体等が静電容量型センサに近接したとみなしている。
【特許文献1】特開2004−219311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の静電容量型センサ52の取付け構造Spでは、図6(a)に示すように、静電容量型センサ52がドアヘム55の端縁部55aの近傍に取り付けられていることから、例えば、降雨時に車両を下り勾配の坂道に駐車すると、伝い水Wは、ドアヘム55の車外側の面から端縁部55a側に向かう方向D2に流れる。そして、伝い水Wは、静電容量型センサ52の検出面57と、接地電位に設定されているドアヘム55とを電気的に繋げる場合がある。その結果、静電容量型センサ52は、図6(b)に示すように、あたかも人体等を検知したかのように誤動作することとなる。
【0005】
また、従来の取付け構造Spでは、前記したように、静電容量型センサ52がドアヘム55との間に所定の間隔が確保されるように取り付けられているが、例えば、車両への乗降者が静電容量型センサ52と接触した際に、ブラケット53が塑性変形して静電容量型センサ52がドアヘム55と接近するように位置ズレを起こす場合がある。つまり、外力によって静電容量型センサ52の取付け構造Spが変形しやすいという問題がある。ちなみに、静電容量型センサ52とドアヘム55とが接近するように取付け構造Spが変形すると、前記した伝い水Wによる静電容量型センサ52の誤動作がさらに生じやすくなる。
【0006】
また、従来の静電容量型センサ52の取付け構造Spにおいては、ドアヘム55と静電容量型センサ52との距離が高い精度で調整される。そのために、静電容量型センサ52の取付けを行う際に、ドアヘム55と静電容量型センサ52との距離の測定や、静電容量型センサ52の位置の調整等で、取付け工程が煩雑になるとともに取付け工程に要する時間が長くなるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、伝い水による静電容量型センサの誤動作をより確実に防止することができるとともに外力が加わっても変形しにくく、静電容量型センサの取付け工程が簡単で、取付け工程に要する時間の短縮化を図ることができる静電容量型センサの取付け構造およびその組付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する発明は、近接した物体を検知する静電容量型センサの、車両のドアへの取付け構造であって、前記ドアの端縁における車内側に配置された前記静電容量型センサと前記ドアとの間に設けられるスペーサを備え、前記スペーサの外表面には、前記ドアから前記静電容量型センサへの伝い水を防止するための水滴防止部が形成されていることを特徴とする。
この取付け構造では、スペーサの水滴防止部が、ドアから静電容量型センサへの伝い水でドアと静電容量型センサとが電気的に繋がることを防止するので、この取付け構造は、静電容量型センサの誤動作を防止する。
また、この取付け構造は、ドアと静電容量型センサとの間にスペーサを有しているので、ドアと静電容量型センサとの間隔を適切に保つ。したがって、車外側に向けて静電容量型センサに外力が加わったとしても、静電容量型センサがドア側寄りに位置ズレを起こすこともないので、この取付け構造は、伝い水による静電容量型センサの誤動作をより確実に防止する。
また、この取付け構造は、前記したように、スペーサでドアと静電容量型センサとの間隔を適切に保つので、静電容量型センサをドアに取り付ける際に、ドアに対する静電容量型センサの距離等の寸法管理を行う必要がない。したがって、この取付け構造は、ドアへの取付け作業性を向上させる。
【0009】
また、このような静電容量型センサの取付け構造においては、前記水滴防止部は、前記ドアの外表面から前記静電容量型センサ側に伝い水が向かう方向に対して反対方向に折り返して形成されるリップ形状となっているものが望ましい。
この取付け構造では、水滴防止部が、伝い水が向かう方向に対して反対方向に折り返されたリップ形状となっているので、この取付け構造は、伝い水でドアと静電容量型センサとが電気的に繋がることをより確実に防止する。したがって、この取付け構造は、静電容量型センサの誤動作をより確実に防止する。
【0010】
また、このような静電容量型センサの取付け構造においては、前記スペーサは、前記ドアおよび前記静電容量型センサと当接する間隔形成部と、前記ドアおよび前記静電容量型センサの少なくともいずれか一方と離間する退避部とを有するものが望ましい。
この取付け構造は、スペーサに退避部と間隔形成部とを有しているので、スペーサの弾性変形を許容する。したがって、この取付け構造は、ドアに対する静電容量型センサの取付け状態を安定させる。
【0011】
また、このような静電容量型センサの取付け構造においては、前記スペーサは、前記ドアの縁部に係合するドア側係合部と、前記静電容量型センサを前記ドアの車内側に取り付けるブラケットに係合するブラケット側係合部とを有するように構成することができる。
この取付け構造は、スペーサがドア側係合部と、ブラケット側係合部とを有しているので、スペーサを安定してドアと静電容量型センサとの間に固定する。
【0012】
また、この静電容量型センサの取付け構造においては、前記スペーサは、前記静電容量型センサの外皮部と一体に成形されていてもよい。
この取付け構造では、静電容量型センサとスペーサとが一体に成形されているので、静電容量型センサがドアに取り付けられた際に、スペーサが同時にドアに取り付けられることとなる。したがって、この取付け構造は、ドアへの取付け作業性を向上させる。
【0013】
そして、前記課題を解決する発明は、車両のドアの端縁における車内側にブラケットを介して取り付けられた静電容量型センサが、前記ドアとの間にスペーサを挟持しており、このスペーサが、前記ドアの縁部に係合するドア側係合部と、前記ブラケットに係合するブラケット側係合部と、前記ドアから前記静電容量型センサへの伝い水を防止するための水滴防止部とを備える静電容量型センサの取付け構造の組付け方法であって、前記ブラケットに前記静電容量型センサを取り付けるとともに、前記ブラケットに前記ブラケット側係合部を係合させて、前記静電容量型センサ、前記スペーサ、および前記ブラケットからなるセンサユニットを形成する工程と、前記センサユニットを構成する前記スペーサの前記ドア側係合部を、前記ドアの縁部に係合させる工程と、前記センサユニットを構成する前記ブラケットを前記ドアの車内側に取り付ける工程とを備えることを特徴とする。
この組付け方法では、静電容量型センサ、スペーサ、およびブラケットからなるセンサユニットが予め形成されるとともに、このセンサユニットがドアに取り付けられることとなる。したがって、組付け方法は、静電容量型センサ、スペーサ、およびブラケットのそれぞれをドアに組み付けていく方法と比較して、ドアに対する静電容量型センサの取付け作業性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の静電容量型センサの取付け構造およびその組付け方法によれば、伝い水による静電容量型センサの誤動作をより確実に防止することができるとともに外力が加わっても変形しにくく、静電容量型センサの取付け工程が簡単で、取付け工程に要する時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の静電容量型センサの取付け構造における一実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は、本発明の実施形態に係る静電容量型センサの取付け構造の外観を示す斜視図である。図2は、図1中のA−A断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る静電容量型センサの取付け構造S1(以下、単に「取付け構造S1」という場合がある)は、車両(自動車)Cのパワースライドドア4に適用されたものであり、差分式の静電容量型センサ2を備えている。この静電容量型センサ2(以下、単に「センサ2」という場合がある)は、周知のとおり、1対の検出電極(図示省略)の各電位の差分値に基づいてこのセンサ2に近づく人体等の物体を検出するものである。そして、センサ2は、長尺に形成されており、パワースライドドア4の閉方向D1側の端縁の上端から下端にわたって取り付けられている。さらに詳しくは、センサ2は、図2に示すように、ドアヘム5の車内側に配置されており、その検出面7側が図1に示すパワースライドドア4の閉方向D1側に向いている。
【0017】
この取付け構造S1は、図2に示すように、センサ2とドアヘム5との間に配置されるスペーサ1と、センサ2をドアヘム5に取り付けるブラケット3とを主に備えている。
【0018】
スペーサ1は、ドアヘム5とセンサ2との間に挟み込まれることで、ドアヘム5とセンサ2との間に所定の間隔をあけるように配置されている。ちなみに、このスペーサ1は、長尺に形成されており、センサ2の長手方向に沿うように配置されている。つまり、図1に示すパワースライドドア4の閉方向D1側の端縁の上端から下端にわたって延びている。本実施形態でのスペーサ1は、合成ゴム、その他の樹脂材料等の弾性材料で形成されている。
【0019】
このスペーサ1は、図2に示すように、ドアヘム5の端縁部5aが係合するドア側係合部12と、ブラケット3が係合するブラケット側係合部15とを備えている。なお、ドアヘム5の端縁部5aは、特許請求の範囲にいう「ドアの縁部」に相当する。
ドア側係合部12は、断面視で略U字状に形成されており、ドアヘム5の端縁部5aをその内側に挟み込んでいる。また、ブラケット側係合部15は、センサ2の後記する接合部8の近傍でブラケット3に挟み込まれている。つまり、スペーサ1は、ドア側係合部12でドアヘム5の端縁部5a側に支持されるとともに、ブラケット側係合部15でブラケット3側に支持されている。
【0020】
そして、スペーサ1は、本発明の主な特徴点である水滴防止部11と、間隔形成部13と、退避部14とを備えている。
水滴防止部11は、ドア側係合部12から車外側に向かって断面視でリップ形状に延びるように形成されている。この水滴防止部11は、ドアヘム5側に倒れるように形成されている。言い換えれば、水滴防止部11は、ドアヘム5の外表面(車外側の面)からセンサ2に向かって伝い水が向かう方向D2に対して反対方向に折り返されるように形成されている。
【0021】
本実施形態での間隔形成部13は、ドア側係合部12とブラケット側係合部15との間で、ドアヘム5とセンサ2とに当接するように2箇所形成されている。スペーサ1は、この間隔形成部13によって、ドアヘム5とセンサ2との間に所定の間隔をあけるようになっている。なお、この間隔形成部13は、スペーサ1に1箇所または3箇所以上形成されていてもよい。
【0022】
本実施形態での退避部14は、ドア側係合部12とブラケット側係合部15との間で、ドアヘム5とスペーサ1とを離間させる隙間と、センサ2とスペーサ1とを離間させる隙間とで形成されている。言い換えれば、本実施形態での退避部14は、間隔形成部13に隣接するように形成されている。この退避部14は、後記するように、車内側からセンサ2に外力F(図3(a)参照)が加わった際に、スペーサ1(間隔形成部13)の弾性変形を容易にするものである。ちなみに、退避部14は、ドアヘム5とスペーサ1のみを離間させるものであってもよいし、センサ2とスペーサ1のみを離間させるものであってもよい。
【0023】
ブラケット3は、主ブラケット9と補助ブラケット10とで主に構成されており、主ブラケット9および補助ブラケット10のそれぞれは、センサ2の長手方向、つまり図1に示すパワースライドドア4の閉方向D1側の端縁の上端から下端にわたって延びる長尺の板状部材で形成されている。
【0024】
主ブラケット9は、前記したように、センサ2をドアヘム5のインナパネル6側に取り付けている。本実施形態での主ブラケット9は、断面視で略クランク状を呈しており、その一端側がセンサ2の接合部8に差し込まれて接合されている。ちなみに、主ブラケット9の一端側が差し込まれたセンサ2の接合部8は、ドアヘム5との間に少なくとも1箇所の間隔形成部13を挟み込むこととなる。つまり、この間隔形成部13は、センサ2の接合部8に当接することとなる。
また、主ブラケット9は、接合部8側からインナパネル6側に延びた他端側がボルトBでインナパネル6と締結されている。なお、このボルトBによる締結は、主ブラケット9の長手方向に沿って複数個所に施される。ちなみに、主ブラケット9は、インナパネル6に溶接等によって接合されていてもよい。
【0025】
補助ブラケット10は、平板で形成されており、スペーサ1(ブラケット側係合部15)を主ブラケット9との間で挟持するように主ブラケット9に接合されている。その結果、前記したように、ブラケット側係合部15は、センサ2の接合部8の近傍でブラケット3に支持されることとなる。
【0026】
次に、本実施形態に係る取付け構造S1の作用効果について適宜図面を参照しながら説明する。ここで参照する図3(a)は、実施形態に係る静電容量型センサの取付け構造において、伝い水の流れる様子を示す断面図であり、車両の水平方向に沿う断面を示した図、図3(b)は、伝い水の流れる際に静電容量型センサを使用して検出される差分値の推移を示すグラフである。なお、図3(a)の上側は車外側であり、下側は車内側である。また、図3(b)の縦軸は、差分値の電圧(V)を表し、横軸は、時間(秒)を表している。
【0027】
図2に示すように、この取付け構造S1では、前記したように、水滴防止部11は、ドアヘム5の外表面(車外側の面)からセンサ2へ伝い水Wが向かう方向D2に対して反対方向に折り返されるように形成されている。したがって、この取付け構造S1では、例えば、降雨時に車両C(図1参照)を下り勾配の坂道に駐車した際に、ドアヘム5の外表面(車外側の面)を方向D2に向かって流れる伝い水Wは、図3(a)に示すように、水滴防止部11でその流れが断ち切られる。その結果、この取付け構造S1は、静電容量型センサ2の検出面7と、接地電位に設定されているドアヘム5とが伝い水Wで電気的に繋げられることを防止する。つまり、図3(b)に示すように、センサ2を使用して検出される差分値は、閾値を超えることなく基準電圧を維持することとなって、取付け構造S1は、センサ2の誤動作を防止する。
【0028】
そして、この取付け構造S1では、水滴防止部11が、伝い水Wが向かう方向D2に対して反対方向に折り返されたリップ形状となっている。したがって、この取付け構造S1は、伝い水Wでドアヘム5とセンサ2とが電気的に繋がることをより確実に防止する。その結果、この取付け構造S1は、センサ2の誤動作をより確実に防止する。
【0029】
また、取付け構造S1では、ドアヘム5とセンサ2との間にスペーサ1が配置されており、スペーサ1の間隔形成部13が、ドアヘム5とセンサ2とに当接することで、ドアヘム5とセンサ2との間に適切な所定の間隔を維持している。その結果、この取付け構造S1は、例えば、車内側からセンサ2に外力Fが加わったとしても、センサ2がドアヘム5寄りに位置ズレを起こすこともない。したがって、この取付け構造S1は、センサ2による物体の検知性能を安定させるとともに、前記した伝い水Wによるセンサ2の誤動作をより確実に防止する。
【0030】
また、この取付け構造S1は、前記したように、スペーサ1でドアヘム5とセンサ2との間隔を適切に保つので、センサ2をドアヘム5に取り付ける際に、ドアヘム5とセンサ2との距離の測定や、センサ2の位置の調整等の寸法管理を行う必要がない。したがって、この取付け構造S1は、センサ2の取付け工程を簡単にするとともに、取付け工程に要する時間の短縮化を図ることができる。つまり、この取付け構造S1は、ドアヘム5への取付け作業性を向上させる。
【0031】
また、この取付け構造S1では、スペーサ1に設けられた少なくとも1箇所の間隔形成部13が、主ブラケット9の一端側が差し込まれたセンサ2の接合部8に当接している。つまり、この取付け構造S1は、センサ2で剛性の高い部分である接合部8に間隔形成部13を当接させているので、ドアヘム5と、センサ2との間隔がより確実に保持されるとともに、センサ2の取付け強度も大きく設定することができる。
【0032】
また、この取付け構造S1は、スペーサ1に退避部14と間隔形成部13とを有しているので、スペーサ1の弾性変形を許容する。したがって、この取付け構造S1は、ドアヘム5に対するセンサ2の取付け状態を安定させることができる。
【0033】
また、取付け構造S1では、スペーサ1が間隔形成部13の弾性変形を容易にするように退避部14を有しているので、車内側からセンサ2に外力Fが作用した際にセンサ2自体がこの外力Fで損傷することが防止される。
【0034】
また、取付け構造S1は、センサ2と、スペーサ1と、ブラケット3とを予め組み付けたセンサユニットU(図2参照)としておくことで、この取付け構造S1の組付け工程をより効率化することができる。
【0035】
また、取付け構造S1では、スペーサ1がドア側係合部12でドアヘム5の端縁部5a側に支持されるとともに、ブラケット側係合部15でブラケット3側に支持されている。したがって、この取付け構造S1は、スペーサ1を安定してドアヘム5とセンサ2との間に固定することができる。
【0036】
また、取付け構造S1では、主ブラケット9の一端側が差し込まれたセンサ2の接合部8が、ドアヘム5との間に少なくとも1箇所の間隔形成部13を挟み込むこととなるので、この取付け構造S1は、スペーサ1が設けられていない従来の取付け構造と異なって、ドアヘム5に対してより強固にセンサ2を取り付けることができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る取付け構造S1の組付け方法について適宜図面を参照しながら説明する。ここで参照する図4(a)から(c)は、静電容量型センサの取付け構造の組付け方法を説明するための工程図である。
この組付け方法では、図4(a)に示すように、センサ2、主ブラケット9、補助ブラケット10、およびスペーサ1がそれぞれ準備される。
まず、この組付け方法では、図4(b)に示すように、主ブラケット9と補助ブラケット10とが、例えば、溶接等による溶着や、ボルト、リベット等の締結によって接合されてブラケット3が形成される。
【0038】
次に、この組付け方法では、図4(c)に示すように、主ブラケット9の一端側にセンサ2の接合部8が取り付けられるとともに、スペーサ1のブラケット側係合部15が主ブラケット9と補助ブラケット10との間に挟み込まれて、センサユニットUが形成される。
【0039】
そして、この組付け方法では、センサユニットUを構成するスペーサ1のドア側係合部12に、図2に示すように、ドアヘム5の端縁部5aが嵌め入れられるとともに、主ブラケット9の他端側が車内側からドアヘム5にボルトBで取り付けられることで、センサ2の取付け構造S1が完成する。
【0040】
このような組付け方法では、センサ2、スペーサ1、およびブラケット3からなるセンサユニットUが予め形成されるとともに、このセンサユニットUがドアヘム5に取り付けられることとなるので、この組付け方法は、センサ2、スペーサ1、およびブラケット3のそれぞれをドアヘム5に組み付けていく方法と比較して、ドアヘム5に対するセンサ2の取付け作業性が向上する。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。
前記実施形態では、スペーサ1とセンサ2とが別部材で形成されているが、本発明はスペーサ1がセンサ2と一体に成形されたものであってもよい。ここで参照する図5は、他の実施形態に係る静電容量型センサの取付け構造を示す断面図であり、図1中のA−A断面に対応する断面を示す図である。なお、ここでの他の実施形態に係る取付け構造において、前記実施形態に係る取付け構造S1と同一の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0042】
図5に示すように、この取付け構造S2は、静電容量型センサ22(以下、単に「センサ22」ということがある)のセンサ本体22aを被覆する被覆部材22bにスペーサ21が一体に成形されている。さらに詳しくいうと、この取付け構造S2は、センサ本体22aとドアヘム5の端縁部5aとの間に配置されるスペーサ21が、被覆部材22bと一体に成形されている。この被覆部材22bは、特許請求の範囲にいう「外皮部」に相当する。そして、水滴防止部31は、ドアヘム5の端縁部5aに覆いかぶさるように延びてリップ形状となっている。言い換えれば、水滴防止部31は、ドアヘム5の外表面(車外側の面)から静電容量型センサ22の検出面7に向かって伝い水が流れる方向D2に対して反対方向に折り返されるように形成されている。なお、ここでの被覆部材22bおよびスペーサ21は、合成ゴム、その他の樹脂材料等の弾性材料で形成されている。
【0043】
このような取付け構造S2では、センサ22とスペーサ1とが一体に成形されているので、前記実施形態に係る取付け構造S1と異なって、スペーサ21をブラケット3に別途に組み付ける必要がない。つまり、この取付け構造S2では、センサ22がドアヘム5に取り付けられた際に、スペーサ1が同時にドアヘム5に取り付けられることとなる。したがって、この取付け構造S2は、部品点数を少なくすることができるとともに、ドアヘム5への取付け作業性を向上させることができる。
【0044】
ちなみに、この取付け構造S2では、スペーサ21におけるドアヘム5の端縁部5aとの当接面に溝、穴等(図示省略)を形成することで、前記実施形態に係る取付け構造S1と同様の間隔形成部13および退避部14(図2参照)を形成してもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、センサ2がパワースライドドア4の挟み込み防止装置に使用されることを想定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、この取付け構造S1は、ヒンジ式開閉ドアに使用されてもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、スペーサ1が合成ゴム、その他の樹脂材料等の弾性材料で形成されているが、退避部14が形成されていない場合には、スペーサ1は非弾性材料で形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る静電容量型センサの取付け構造の外観を示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A断面図である。
【図3】(a)は、実施形態に係る静電容量型センサの取付け構造において、伝い水の流れる様子を示す断面図であり、車両の水平方向に沿う断面を示した図、(b)は、伝い水の流れる際に静電容量型センサを使用して検出される差分値の推移を示すグラフである。なお、(b)の縦軸は、差分値の電圧(V)を表し、横軸は、時間(秒)を表している。
【図4】(a)から(c)は、静電容量型センサの取付け構造の組付け方法を説明するための工程図である。
【図5】他の実施形態に係る静電容量型センサの取付け構造を示す断面図であり、図1中のA−A断面に対応する断面を示す図である。
【図6】(a)は、従来の静電容量型センサの取付け構造を示す断面図であり、車両の水平方向に沿う断面を示した図、(b)は、静電容量型センサに物体が近接した際に、静電容量型センサを使用して検出される差分値の推移を示すグラフである。なお、(b)の縦軸は、差分値の電圧(V)を表し、横軸は、時間(秒)を表している。
【符号の説明】
【0048】
1 スペーサ
2 静電容量型センサ(センサ)
3 ブラケット
5 ドアヘム(ドア)
5a ドアヘムの端縁部(ドアの端部)
7 検出面
11 水滴防止部
12 ドア側係合部
13 間隔形成部
14 退避部
15 ブラケット側係合部
21 スペーサ
22 静電容量型センサ
22b 被覆部材(外皮部)
31 水滴防止部
C 車両
D2 伝い水が向かう方向
S1 静電容量型センサの取付け構造
S2 静電容量型センサの取付け構造
U センサユニット
W 伝い水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接した物体を検知する静電容量型センサの、車両のドアへの取付け構造であって、
前記ドアの端縁における車内側に配置された前記静電容量型センサと前記ドアとの間に設けられるスペーサを備え、
前記スペーサの外表面には、前記ドアから前記静電容量型センサへの伝い水を防止するための水滴防止部が形成されていることを特徴とする静電容量型センサの取付け構造。
【請求項2】
前記水滴防止部は、前記ドアの外表面から前記静電容量型センサ側に伝い水が向かう方向に対して反対方向に折り返して形成されるリップ形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型センサの取付け構造。
【請求項3】
前記スペーサは、前記ドアおよび前記静電容量型センサと当接する間隔形成部と、
前記ドアおよび前記静電容量型センサの少なくともいずれか一方と離間する退避部と、
を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電容量型センサの取付け構造。
【請求項4】
前記スペーサは、前記ドアの縁部に係合するドア側係合部と、
前記静電容量型センサを前記ドアの車内側に取り付けるブラケットに係合するブラケット側係合部と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電容量型センサの取付け構造。
【請求項5】
前記スペーサは、前記静電容量型センサの外皮部と一体に成形されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の静電容量型センサの取付け構造。
【請求項6】
車両のドアの端縁における車内側にブラケットを介して取り付けられた静電容量型センサが、前記ドアとの間にスペーサを挟持しており、このスペーサが、前記ドアの縁部に係合するドア側係合部と、前記ブラケットに係合するブラケット側係合部と、前記ドアから前記静電容量型センサへの伝い水を防止するための水滴防止部とを備える静電容量型センサの取付け構造の組付け方法であって、
前記ブラケットに前記静電容量型センサを取り付けるとともに、前記ブラケットに前記ブラケット側係合部を係合させて、前記静電容量型センサ、前記スペーサ、および前記ブラケットからなるセンサユニットを形成する工程と、
前記センサユニットを構成する前記スペーサの前記ドア側係合部を、前記ドアの縁部に係合させる工程と、
前記センサユニットを構成する前記ブラケットを前記ドアの車内側に取り付ける工程と、
を備えることを特徴とする静電容量型センサの取付け構造の組付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−238992(P2008−238992A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83577(P2007−83577)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】