説明

静電容量型入力デバイス

【課題】操作パッドの操作方向の自由度を向上させ、触れるだけで操作でき、しかも、設計の自由度を向上させることのできる静電容量型入力デバイスを提供する。
【解決手段】表面に複数の電極2を備えた携帯電話の回路基板1と、回路基板1に接着されてその表面の複数の電極2を覆う誘電操作パッド10とを備え、誘電操作パッド10を絶縁性の成形材料により変形可能に成形し、誘電操作パッド10に指が接触した場合に生じる静電容量の変化を検出することにより、入力デバイスとして機能する静電容量型入力デバイスで、誘電操作パッド10は、表面が指に接触される操作部11と、操作部11の周縁から回路基板1の表面方向に伸びる伸長部12とを備えて4以上の比誘電率を有し、操作部11の裏面に、複数の電極2の一部に間隔をおいて接離可能に対向する複数の突出部15を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話や自動車の操作スイッチ等に利用される静電容量型入力デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯電話は、図示しないが、筐体の操作面に各種の操作キーと操作パッドとが複数配設され、これら操作キーや操作パッドの選択的な操作により、電話の送受信機能、メールの送受信機能、カメラの撮像機能等の所定の機能を実現する(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
操作パッドは、一般的にはカーソルキーと呼ばれ、硬質の成形材料を使用して平面円形や十字形等に形成されるとともに、中央部にセンターキーが一体形成されており、筐体に支持されて前後左右の四方向に揺動する。このような操作パッドは、前後左右の任意の方向に強く押圧して揺動操作されることにより、携帯電話の表示画面に表示されたメインメニューから所定のメニュー項目を選択し、センターキーが強く押圧して決定操作されることにより、選択されたメニュー項目の機能を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8‐222070号公報
【特許文献2】特公表2001‐503586号公報
【特許文献3】特開平6‐309992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における携帯電話は、以上のように筐体に硬質の厚い操作パッドが機械的な可動部として単に支持されるに止まるので、操作パッドの操作方向に制限がある。また、操作パッドに軽く触れるだけでは操作できず、選択した機能を確実に実現することができないので、操作性や設計の自由度の点で問題がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、操作パッドの操作方向の自由度を向上させ、触れるだけで操作することができ、しかも、設計の自由度を向上させることのできる静電容量型入力デバイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、表面に複数の電極を備えた回路基板と、この回路基板に取り付けられてその表面の複数の電極を覆う誘電操作パッドとを備え、この誘電操作パッドを絶縁性の成形材料により変形可能に成形し、誘電操作パッドに導電体が接触した場合に生じる静電容量の変化を検出することにより、入力デバイスとして機能するものであって、
誘電操作パッドは、表面が導電体に接触される操作部と、この操作部から回路基板の表面方向に伸びる伸長部とを含んで高い比誘電率を有し、操作部の裏面に、複数の電極の一部に間隔をおいて接離可能に対向する複数の突出部を形成し、
複数の電極の一部と導電体との距離の変化、及び複数の電極の一部に接触して変形した突出部の接触面積の変化による静電容量の変化を検出し、この静電容量の変化に基づいて導電体の押し込み量を検出するようにしたことを特徴としている。
【0008】
なお、回路基板の複数の電極は、回路基板の表面に配列されて誘電操作パッドの複数の突出部と対向する複数の第一電極を備え、この第一電極と導電体との間の距離の短縮、及び第一電極に接触して変形した突出部の接触面積の拡大による静電容量の変化を検出し、この静電容量の変化により、導電体の押し込み量を検出することができる。
【0009】
また、回路基板の複数の電極は、複数の第一電極の外側に位置する第二電極を備え、
誘電操作パッドの伸長部に、回路基板の表面と第二電極に接触する接触片を形成し、誘電操作パッドの操作部に導電体が接触した場合に、第二電極と導電体との間にコンデンサを形成して導電体の接触を検出することができる。
【0010】
また、誘電操作パッドを、シリコーンゴムに少なくとも酸化亜鉛が配合されて比誘電率が4以上の成形材料より成形することが可能である。
さらに、誘電操作パッドの突出部の少なくとも先端を、電極に圧接変形する略半球面に形成することも可能である。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における複数の電極の第二電極は、単数複数を特に問うものではない。また、誘電操作パッドの操作部は、平面円形、楕円形、矩形、多角形等に適宜形成することができる。この誘電操作パッドの突出部は、例えば円柱形、半球形、半楕球形等に形成することができる。本発明に係る静電容量型入力デバイスは、少なくとも携帯電話等のモバイル機器、コンピュータ機器、ゲーム機器、家電機器、自動車の操作スイッチ等として利用することができる。
【0012】
本発明によれば、静電容量型入力デバイスを携帯機器や車載装置の入力デバイスとして使用する場合には、誘電操作パッドの操作部に導電体を接触させ、押圧して操作すれば良い。
すると、回路基板の複数の電極の一部に操作部の突出部が接触して電極の一部と導電体との間にコンデンサを形成する。このコンデンサは、電極の一部と導電体間の距離の変化、及び電極の一部に接触した突出部の面積の変化により静電容量が変化し、この静電容量の変化により、操作時の導電体の押し込み量が読み取られる。このような静電容量の変化により、携帯機器や車載装置の所定の機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操作パッドの操作方向の自由度を向上させ、しかも、触れるだけで操作することができるので、操作性が向上するという効果がある。また、耐久性や設計の自由度を確保することができる。
【0014】
また、誘電操作パッドを、シリコーンゴムに少なくとも酸化亜鉛が配合されて比誘電率が4以上の成形材料より成形すれば、大きな静電容量を獲得したり、抵抗値のバラツキを抑制することができる。
さらに、誘電操作パッドの突出部の少なくとも先端を、電極に圧接変形する略球面に形成すれば、簡易な構成で突出部と電極との接触面積を増大させ、大きな静電容量を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る静電容量型入力デバイスの実施形態を模式的に示す一部切り欠き斜視説明図である。
【図2】本発明に係る静電容量型入力デバイスの実施形態における誘電操作パッドを模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る静電容量型入力デバイスの実施形態における誘電操作パッドの裏面側を模式的に示す斜視説明図である。
【図4】本発明に係る静電容量型入力デバイスの実施形態における誘電操作パッドを模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における静電容量型入力デバイスは、図1ないし図4に示すように、複数の電極2を備えた携帯電話の回路基板1と、この回路基板1に接着されてその複数の電極2を覆う操作パッドである誘電操作パッド10とを備え、この誘電操作パッド10を絶縁性の成形材料により成形し、誘電操作パッド10に導電体である指が接触した場合に生じる静電容量の変化を検出することにより、携帯電話の入力デバイス、具体的にはカーソルキーとして機能する。
【0017】
回路基板1は、図1に示すように、例えば高密度フレキシブル基板、フレキシブルプリント配線板、ガラスエポキシ製の配線板、あるいはプリント配線板等からなり、表面に複数の電極2と図示しない所定の導電パターンとがエッチング法やスクリーン印刷法等によりそれぞれ形成されており、図示しないCPUを含む制御装置に電気的に接続される。
【0018】
複数の電極2は、回路基板1の表面に平面リング形に間隔をおき配列されて誘電操作パッド10の内部に対向する複数の第一電極3と、この複数の第一電極3の外側に間隔をおいて配列される複数の第二電極4とを備え、誘電操作パッド10や指と共にコンデンサを形成する。第一電極3は平面円形に形成され、第二電極4は平面矩形に形成される。
【0019】
誘電操作パッド10は、所定の成形材料により少なくとも上下前後左右方向に弾性変形可能に成形され、大容量の静電容量型入力デバイスを得る観点から、比誘電率が4以上、好ましくは7以上、より好ましくは8以上の誘電体として機能する。
【0020】
誘電操作パッド10の所定の成形材料としては、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、シリコーンゴム、シリコーンゴムに少なくとも酸化亜鉛とチタン酸バリウムとが配合された成形材料等があげられるが、高誘電率を得る観点から、シリコーンゴムに少なくとも酸化亜鉛とチタン酸バリウムとが配合された成形材料(例えば、信越化学工業社製)が最適である。誘電率を高めたい場合には、酸化亜鉛とチタン酸バリウムとの配合量を適宜増加すれば良い。
【0021】
誘電操作パッド10は、図1ないし図4に示すように、表面が指先に接触される円板形の操作部11と、この操作部11の周縁から回路基板1の表面方向に伸長する円筒形の短い伸長部12と、この伸長部12の自由端に一体的に屈曲形成されて回路基板1の表面に接着される接触片13とを備え、背の低い断面略ハット形に形成される。
【0022】
操作部11は、複数の第一電極3を覆う大きさに形成され、裏面の中心部に、先端が半球形に湾曲した突起14が回路基板1の表面方向に突出形成されており、裏面の周縁部付近には、複数の電極2の一部、具体的には複数の第一電極3に間隔をおいて接離可能に対向する複数の突出部15が平面リング形に並べて一体形成される。各突出部15は、第一電極3に潰れて圧接変形する半球面に面取りして湾曲形成され、この湾曲形成により、第一電極3との接触時に接触面積が増大する。
【0023】
誘電操作パッド10の接触片13は水平横方向に伸びる平坦な板形に形成されて第二電極4に常時接触するが、この接触により、操作部11の表面に指先が接触した場合に、第二電極4と指先との間にコンデンサが形成されて指の接触を検出する。
【0024】
上記構成において、誘電操作パッド10を携帯電話のカーソルキーとして使用する場合には、誘電操作パッド10の操作部11における任意の箇所を指先で触れ、軽く押圧して操作すれば、携帯電話の表示画面に表示されたメインメニューから所定のメニュー項目を選択したり、選択されたメニュー項目の機能を実現することができる。
【0025】
係る操作の際、操作部11の表面に指先が触れると、回路基板1の第二電極4と誘電操作パッド10の接触片13とが常時接触状態にあるので、第二電極4と指との間にコンデンサが形成され、静電容量の微弱な変化により携帯電話の制御装置が指の接触を検出し、携帯電話がスリープモードから通常のノーマルモードや入力モードに復帰したり、操作キーが発光等する。
【0026】
また、誘電操作パッド10の操作部11が軽く押圧操作されると、回路基板1の第一電極3に操作部11の突出部15が接触して第一電極3と指との間にコンデンサを形成する。このコンデンサは、第一電極3と指との間の距離の短縮、及び第一電極3に圧接した突出部15の接触面積の拡大により静電容量が変化し、しかも、この静電容量の変化により、操作時の指の押し込み量(動作ストローク)もが適切に検出される。
【0027】
このとき、指先の操作圧力に応じ、操作部11の湾曲した突出部15が潰れて圧接変形し、第一電極3と指との距離を短縮し、かつ第一電極3に対する接触面積を拡大するので、静電容量の増大が大いに期待できる。このような静電容量の変化により、携帯電話の制御装置が所定のメニュー項目を選択したり、選択されたメニュー項目の機能を実現する。
【0028】
上記構成によれば、機械的な誘電操作パッド10を使用するのではなく、静電容量式の変形可能な薄い誘電操作パッド10を使用するので、誘電操作パッド10を360°の全方向に操作することができ、誘電操作パッド10の操作方向に制限が生じるのを有効に抑制防止することができる。また、誘電操作パッド10に軽く触れるだけで指の接触を簡単に検出し、容易に操作することができるので、設計の自由度や長寿命化を図ることができる。
【0029】
また、操作部11の押圧操作の際の静電容量の変化を利用すれば、第一電極3に対する指の押し込み量をも有効に検出し、操作に資することができる。さらに、シリコーンゴムに少なくとも酸化亜鉛とチタン酸バリウムとが配合された成形材料を使用して誘電操作パッド10を成形すれば、高誘電率を得るだけでなく、小型で大容量の入力デバイスを製造したり、高い検出精度を獲得したり、抵抗値や高周波、品質のバラツキ防止を図ることが可能になる。
【0030】
なお、上記実施形態の回路基板1の複数の電極2は、銅箔製でも良いし、導電ゴム製でも良い。また、上記実施形態では断面略ハット形の誘電操作パッド10を単に示したが、誘電操作パッド10の操作部11表面に金属製のキートップを設けても良いし、誘電体からなるキートップを設けても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 回路基板
2 電極
3 第一電極(複数の電極の一部)
4 第二電極
10 誘電操作パッド
11 操作部
12 伸長部
13 接触片
15 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の電極を備えた回路基板と、この回路基板に取り付けられてその表面の複数の電極を覆う誘電操作パッドとを備え、この誘電操作パッドを絶縁性の成形材料により変形可能に成形し、誘電操作パッドに導電体が接触した場合に生じる静電容量の変化を検出することにより、入力デバイスとして機能する静電容量型入力デバイスであって、
誘電操作パッドは、表面が導電体に接触される操作部と、この操作部から回路基板の表面方向に伸びる伸長部とを含んで高い比誘電率を有し、操作部の裏面に、複数の電極の一部に間隔をおいて接離可能に対向する複数の突出部を形成し、
複数の電極の一部と導電体との距離の変化、及び複数の電極の一部に接触して変形した突出部の接触面積の変化による静電容量の変化を検出し、この静電容量の変化に基づいて導電体の押し込み量を検出するようにしたことを特徴とする静電容量型入力デバイス。
【請求項2】
回路基板の複数の電極は、回路基板の表面に配列されて誘電操作パッドの複数の突出部と対向する複数の第一電極を備え、この第一電極と導電体との間の距離の短縮、及び第一電極に接触して変形した突出部の接触面積の拡大による静電容量の変化を検出し、この静電容量の変化により、導電体の押し込み量を検出するようにした請求項1記載の静電容量型入力デバイス。
【請求項3】
回路基板の複数の電極は、複数の第一電極の外側に位置する第二電極を備え、
誘電操作パッドの伸長部に、回路基板の表面と第二電極に接触する接触片を形成し、誘電操作パッドの操作部に導電体が接触した場合に、第二電極と導電体との間にコンデンサを形成して導電体の接触を検出するようにした請求項2記載の静電容量型入力デバイス。
【請求項4】
誘電操作パッドを、シリコーンゴムに少なくとも酸化亜鉛が配合されて比誘電率が4以上の成形材料より成形した請求項1、2、又は3記載の静電容量型入力デバイス。
【請求項5】
誘電操作パッドの突出部の少なくとも先端を、電極に圧接変形する略半球面に形成した請求項1ないし4いずれかに記載の静電容量型入力デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−277914(P2010−277914A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130748(P2009−130748)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】