静電容量式タッチセンサ
【課題】操作性を向上させる。
【解決手段】2行2列に配置された4つのセンサ電極121〜124を有するセンサ基板11と、センサ電極121〜124上に配置され、上面13aが操作面とされる絶縁層13と、絶縁層13上に設けられた操作基準14とよりなり、操作基準14は4つのセンサ電極121〜124の中心に配置され、触覚により認識可能とされる。操作基準14の存在により、ブラインド操作が可能となり、操作中に入力エリアから指が外れにくいようにすることができる。
【解決手段】2行2列に配置された4つのセンサ電極121〜124を有するセンサ基板11と、センサ電極121〜124上に配置され、上面13aが操作面とされる絶縁層13と、絶縁層13上に設けられた操作基準14とよりなり、操作基準14は4つのセンサ電極121〜124の中心に配置され、触覚により認識可能とされる。操作基準14の存在により、ブラインド操作が可能となり、操作中に入力エリアから指が外れにくいようにすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は小型携帯機器等に用いて好適な静電容量式タッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機やデジタルスチルカメラ等の小型携帯機器では、カーソル操作や画面のスクロール等に4方向キーが用いられており、広くユーザに慣れ親しまれている。4方向キーの操作部は一般的に平坦ではなく、何らかの造形を有しているので、触覚により指の位置を把握することができ、逐一操作部を視認することなく、操作することができる。
【0003】
しかしながら、従来の4方向キーは操作時にクリック感触を発生させるために、操作ノブの下にメタルドームスイッチと検出用の電極とを配置しており、よって小型化には限界がある。一般的な小型携帯機器では、4方向キーの操作部の外形は概ねφ18mm程度となっており、このような大きさでは例えば携帯電話機の筐体側面に配置することはできず、無理に配置しようとすると筐体が極めて厚くなってしまう。また、例えば表示器の脇に配置しようとすると、表示画面の狭小化を余儀なくされる。
【0004】
なお、非常に小さなメタルドームスイッチを利用して操作部外形を小さくしたものも一部で実現されているが、操作部が小さいためにメタルドームスイッチを変形させるだけの力を加えづらくなり、その点で操作性が悪いといった問題がある。
一方、ジョイスティックやトラックボール等の入力装置も利用されている。ジョイスティックは操作レバーを傾動させるもの、トラックボールはボールを回転させるものであり、これらの入力装置は操作部を動かすことで直感的な操作が行えることを特徴としている。しかしながら、操作部を動かす都合上、その分のスペースが必要となり、薄型化は図りづらい。
【0005】
また、近年、静電容量式タッチセンサを用いた入力装置が各種小型携帯機器に搭載されてきている。静電容量式タッチセンサは機器筐体等の絶縁物を介してセンサ電極とユーザの指との間に形成される静電容量を検出し、その静電容量の変化を示す信号により入力操作を行うものである。
【0006】
ここで、センサ電極とユーザの指との間に形成される静電容量は実質的に平行平板コンデンサとみなせるので、静電容量の大きさはセンサ電極の大きさと絶縁物の厚さに依存する。絶縁物の厚さを薄くすれば、センサ電極を小さくすることができ、よって入力装置自体を小さくすることができる可能性がある。加えて、センサ電極はPWBやFPC、メンブレン印刷配線板等に形成された配線を所望の形状にすることで構成することができるので、薄型化にも適する。
【0007】
ところで、入力装置にはその装置の位置と操作部位を認識するための指標が一般に必要であり、静電容量式タッチセンサを用いた入力装置において、センサ裏面に配置した照明手段により操作部位を表示させるものが特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2006−260971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、小型携帯機器等に搭載する入力装置に静電容量式タッチセンサを用いれば、小型・薄型化を図ることが可能となるものの、入力装置の位置・操作部位を認識するための指標として照明手段を用いる構成では、操作の度に操作部位を視認しなければならず、いわゆるブラインド操作ができない。
また、操作部が平坦なため、入力装置を小さく構成した場合に、操作中に指が入力エリアから外れてしまうといった問題が発生する。
操作中に指が入力エリアから外れないようにするためには、入力エリアに操作基準を設ければよいが、従来の静電容量式タッチセンサでは操作基準を中心としたさらに小さい入力エリア内での操作はできなかった。
この発明の目的はこのような問題に鑑み、指先操作が可能なエリアでもブラインド操作を可能とし、操作中に入力エリアから指が外れにくいようにした静電容量式タッチセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明による静電容量式タッチセンサによれば、2行2列に配置された4つのセンサ電極を有するセンサ基板と、センサ電極上に配置され、上面が操作面とされる絶縁層と、その絶縁層上に設けられた操作基準とよりなり、操作基準は4つのセンサ電極の中心に配置され、触覚により認識可能とされる。
請求項2の発明では請求項1の発明において、操作基準が突起状とされる。
請求項3の発明では請求項1又は2の発明において、4つのセンサ電極のうちの2つ以上のセンサ電極の出力の組み合わせで、4つのタッチ位置を判別する構成とされる。
【0010】
請求項4の発明では請求項1又は2の発明において、4つのセンサ電極のうちの2つ以上のセンサ電極の出力の組み合わせで、4方向の撫でる方向を判別する構成とされる。
請求項5の発明では請求項1又は2の発明において、4つのセンサ電極を2列にグルーピングし、各列のセンサ電極の出力から加重平均により第1の方向のタッチ位置座標を算出し、4つのセンサ電極を2行にグルーピングし、各行のセンサ電極の出力から加重平均により第2の方向のタッチ位置座標を算出し、第1及び第2のタッチ位置座標に基づいて、4つ以上のタッチ位置を判別する構成とされる。
【0011】
請求項6の発明では請求項1又は2の発明において、4つのセンサ電極を2列にグルーピングし、各列のセンサ電極の出力から加重平均により第1の方向のタッチ位置座標を算出し、4つのセンサ電極を2行にグルーピングし、各行のセンサ電極の出力から加重平均により第2の方向のタッチ位置座標を算出し、第1及び第2のタッチ位置座標の変化に基づいて、撫でる方向を判別する構成とされる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、触覚により認識可能な操作基準が4つのセンサ電極の中心に位置して絶縁層上に設けられているため、この操作基準によって静電容量式タッチセンサの位置を把握することができ、操作中にどの操作部位を操作しているかが触覚により認識できるため、ブラインド操作が可能となる。また、この操作基準を基準とすることにより、操作中に指が入力エリアから外れにくいものとすることができ、さらにその入力エリア内で指の移動を認識できるセンサ電極の配置を実現したものであり、これらの点で操作性の向上を図ることができ、かつ小型・薄型な静電容量式タッチセンサを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
図1はこの発明による静電容量式タッチセンサの一実施例の構成を示したものである。センサ基板11上には4つのセンサ電極12(121〜124)が2行2列に配置されて形成されており、この例ではこれらセンサ電極121〜124はそれぞれ中心角90°の扇形をなすものとされ、一つの円形領域内に配列されて配置されている。
【0014】
センサ基板11のセンサ電極121〜124上には絶縁層13が配置され、この絶縁層13の上面(センサ基板11と反対側の面)13aがタッチ操作される操作面とされる。絶縁層13の上面13aには半球状の突起をなす操作基準14が設けられており、操作基準14は4つのセンサ電極121〜124の中心に位置するように配置されている。なお、4つのセンサ電極121〜124はそれぞれ配線15を介して制御部16に接続されている。
【0015】
センサ基板11はPWBやFPC、メンブレン印刷配線板等によって構成され、センサ電極121〜124はセンサ基板11がPWBやFPCの場合には銅箔等で形成され、メンブレン印刷配線板の場合には銀インクやITOなどの透明抵抗体等で形成される。
【0016】
絶縁層13はこの静電容量式タッチセンサ10が小型携帯機器等の筐体に配置される場合はその筐体に相当し、構成材はポリカーボネートやABS、アクリル等の樹脂やガラス等、筐体の仕様に応じた仕様となる。このような絶縁層13に対するセンサ基板11の固定は例えば両面テープ(図示せず)を用いてセンサ基板11を絶縁層13に貼り付けることによって行うことができる。また、例えば図示しない構造物によりセンサ基板11の裏面から絶縁層13に押し付けるようにして固定することもできる。
【0017】
半球状をなす操作基準14の大きさは例えば径がφ1mm〜φ2mm程度とされ、高さは0.3mm〜0.5mm程度とされる。
制御部16は図示を省略しているが、スイッチ部と静電容量検出部とデータ処理部からなるものとされる。スイッチ部はセンサ電極12の中から1つ以上のセンサ電極12を選択し、静電容量検出部に接続する。静電容量検出部は接続されたセンサ電極12と指の間の静電容量を検出し、静電容量を示す情報を出力する。この出力はデータ処理部に送られ、適当なデジタル値に変換されて、図示しないホストコンピュータに送られる。
【0018】
静電容量検出部には特に制限はなく、発振回路、論理演算回路による遅延測定、チャージアンプ、スイッチトキャパシタ回路等、各種公知の技術が適用できる。データ処理部はデジタル回路で構成してもよいし、マイコン等のCPUで構成してもよい。データ処理部からホストコンピュータに渡すデータは静電容量をデジタル変換した値(生データ)でもよいし、ホスト側のアプリケーションに適した形に変換したデータでもよい。
【0019】
図2は上記のような構成を有する静電容量式タッチセンサ10に対する4方向操作の例を示したものであり、図中、21は指を示す。
図2(a)は静電容量式タッチセンサ10の上をタッチした場合、図2(b)は下をタッチした場合の正面図及び側面図をそれぞれ示したものであり、図2(c)は左をタッチした場合、図2(d)は右をタッチした場合の正面図をそれぞれ示したものである。
【0020】
突起状の操作基準14の存在により、指21がどの位置を触れているかが触覚によりわかる。また、操作基準14を起点にして操作することにより、指21が静電容量式タッチセンサ10のセンサ領域から外れることがない。なお、操作基準14は十分に小さいので、操作の妨げにならず、センサ感度も犠牲になることはない。
【0021】
次に、静電容量式タッチセンサ10を4方向キーとして利用する場合の検出例として、4つのセンサ電極12(121〜124)のうちの2つ以上のセンサ電極12のオン情報(出力)の組み合わせで、4つのタッチ位置を判別する方法を、図3〜5を参照して説明する。
図3は4方向キーの操作方向とセンサ電極121〜124の位置関係を示しており、指21は下から上の方向に伸びているものとする。
図4(a)〜(d)では、それぞれハッチングを施したところが、センサがオンしている状態(タッチ状態)を示している。センサがオンしているか否かを判別するには、出力がオン判定しきい値を上回ったかどうかで判定する(但し、負論理出力の場合は、出力がオン判定しきい値を下回ったかどうかで判定する)。
【0022】
上2つのセンサ(121,122)がオンした時は、4方向キーの上が押されていると判定する。同様に、下2つのセンサ(123,124)がオンした時は下、左2つのセンサ(121,123)がオンした時は左、右2つのセンサ(122,124)がオンした時は右が押されたと判定する。これにより、4方向操作が実現できる。
【0023】
このように、2つのオン情報で判定することにより、1つのオン情報で判定する場合と比較してセンサ感度が大きくなり、タッチ位置検出の信頼性が増す。なお、センサがオンしてから所定時間(例えば50ms程度)経過してから、アプリケーション(カーソル移動やスクロール)を動作させるようにすれば、さらに信頼性が増す。
【0024】
オンしている間はカーソルを連続して動かす、スクロールし続ける等、リピート動作するようにしてもよい。決定動作は静電容量式タッチセンサで従来使われているタップ、ダブルタップ等により行うことができる。また、別の場所に静電容量式タッチセンサやメカニカルスイッチ等を設けて決定スイッチとしてもよい。
【0025】
ところで、図5(a)に示したように下方から指21を伸ばして上の2つのセンサ(121,122)を触ろうとした場合、指21を寝かせて触ると全てのセンサ(121〜124)を触ってしまうことがある(図5(b))。これは、指先は上の2つのセンサの位置にあるが、指の中心(腹の部分)は静電容量式タッチセンサ10のほぼ中心位置にあり、操作基準14が指21にめり込んで下の2つのセンサも触ってしまうことによる。
【0026】
このような場合に備えて、4つのセンサがオンした時にも上と判定すると、上が入力しにくいということがなくなる。よって、上の2つがオンした時、4つがオンした時、いずれも上と判定すれば、より操作性が向上する。この場合、下、左、右の判定は図4(b)〜(d)の判定方法と同様とする。
【0027】
次に、静電容量式タッチセンサ10を撫でて動作させる場合の、撫でる方向(上下左右方向)の判定方法を図6(a)〜(d)を参照して説明する。
ハッチングを施したところがセンサがオンしている状態を示している。図6(a)〜(d)の各図において、左側の図は時間的に前の状態、右側の図は時間的に後の状態を示す。
【0028】
図6(a)に示したように、所定時間内に下2つから上2つに変化した場合には上に撫でたと判定する。この時、例えば4方向キーの上が押された時と同様のアプリケーション動作をする。前後の時間間隔は操作性を考慮して設定する。なお、下2つから上2つに変化する間に、経過的に例えば3つのセンサがオンする可能性があるが、このような状態は無視することとする。
【0029】
上以外の方向については、図6(b)〜(d)に示したように判定することで、上下左右の撫でる方向を判別することができ、4方向キーと同様の操作が可能になる。なお、例えば左から右に撫でた場合に、左2つがオンしている状態から右2つがオンしている状態に変化する間に、全部のセンサがオンになる可能性がある。このような状態は上述の3つのセンサがオンした場合と同様、無視することとする。
【0030】
このように、撫でて動作させる場合、2つの情報を用いることで曖昧さを排除することができるので、操作者が意図しない方向に動作することがない。
リピート動作については、例えば上に撫でる場合を例にすると、下の2つがオンになり、所定時間内に上の2つがオンとなって上に撫でていると判定された後、さらに別の所定時間継続して上の2つがオンしている場合にはリピート動作させるようにしてもよい。
撫でる動作により判定する場合、前述した図5のように全部のセンサがオンする可能性があり、このような全部のセンサがオンする状態を撫でる方向の判別にとり込むことによって、さらに操作性を向上させることができる。
【0031】
上に撫でる場合を例にとると、図7(a)に示したように、下2つがオンした後、所定時間内に全部がオンした時に上に撫でたと判定する。同様に図7(b)に示したように、全部がオンした後、上2つがオン(下2つがオフ)になった時に上に撫でたと判定する。
図7(c)〜(h)は下、左、右に撫でた場合の判定方法を示したものであり、これら図7(a)〜(h)に示したように判定すると、指を大きく動かす必要がなくなるので操作性が向上する。
【0032】
次に、加重平均法によるタッチ座標から、4つ以上のタッチ位置を判別する方法を説明する。
まず、従来の2次元平面内のタッチ座標を加重平均法により求める方法について図8を参照して説明する。
センサ電極は図8(a)に示したように、x座標検出電極X1,X2,…,Xn、y座標検出電極Y1,Y2,…,Ynを略直交配置させて形成される。x座標検出電極とy座標検出電極は互いに独立している。これら電極の数は操作領域に合わせて適宜選択される。
【0033】
各x座標検出電極の座標をxk(k=1〜n)、出力をDk(k=1〜n)とすると、タッチ位置のx座標は下記(1)式で表される。
【数1】
y座標も同様にして算出することができ、ノートパソコンに搭載されているタッチパッドでは、このようにして求めたタッチ位置のx座標とy座標により、マウスカーソルの移動を制御している。
【0034】
次に、この発明による静電容量式タッチセンサ10における加重平均法を図9を参照して説明する。
各センサ電極121〜124からの出力を図9(a)中に示したようにS1〜S4とする。出力S1〜S4は指がオーバーラップする面積に比例して変化する。
この例ではx座標検出フェーズ(Phase1)、y座標検出フェーズ(Phase2)に分けて、x座標とy座標を検出する。なお、Phase1とPhase2は時分割して交互に行う。
【0035】
Phase1では図9(b)に示したように、左側の2つのセンサ電極121,123を合わせてX1電極(座標はx1)とし、右側の2つのセンサ電極122,124を合わせてX2電極(座標はx2)とする。
Phase2では図9(c)に示したように、上側の2つのセンサ電極121,122を合わせてY1電極(座標はy1)とし、下側の2つのセンサ電極123,124を合わせてY2電極(座標はy2)とする。
【0036】
・x座標の算出(Phase1)
X1電極の出力は2つのセンサ電極121,123の出力の和S1+S3となり、X2電極の出力は2つのセンサ電極122,124の出力の和S2+S4となる。加重平均法によるx座標は下記(2)式で表される。
【数2】
・y座標の算出(Phase2)
Y1電極の出力は2つのセンサ電極121,122の出力の和S1+S2となり、Y2電極の出力は2つのセンサ電極123,124の出力の和S3+S4となる。加重平均法によるy座標は下記(3)式で表される。
【数3】
上記のようにしてタッチ位置のx座標とy座標が求められる。
【0037】
ここで、上記の加重平均法による座標算出を具体的数値例を用いて説明する。
図10(a)はタッチする指21とセンサ電極121〜124の位置関係の一例を示したものである。また、図10(b)におけるハッチング部はセンサ電極121〜124と指21が対向している部分を示し、各センサ電極121〜124に関連付けられた数値([ ]内の数値)は、各センサ電極121〜124と指21が対向している面積を表す。これらの数値は出力の大きさを意味する。なお、この例では便宜上、1つのセンサ電極に完全にタッチした時の出力を10としている。
【0038】
X1電極の座標x1を0、X2電極の座標x2を1とし、Y1電極の座標y1を0、Y2電極の座標y2を1とする。加重平均法によりタッチ座標を計算すると、x座標、y座標ともに、0から1の値をとり得ることになり、中心を触ると0.5となる。
上記の数値を用い、前述の(2)式、(3)式に当てはめると、
【数4】
となる。この数値から指21の重心座標が静電容量式タッチセンサ10の左下寄りに位置していることがわかる。このようにして求めたx座標とy座標により、タッチ位置を判別することができる。
【0039】
4方向キーとして用いる場合には、例えば、xが0.5以下、yが0.5の時に左、xが0.5以上、yが0.5の時に右、xが0.5、yが0.5以上の時に下、xが0.5、yが0.5以下の時に上と判定するとよい。
なお、上記例は上下方向のいずれかと判定されるためにはyの値が0.5としているが、タッチ位置のずれを許容して幅をもたせてもよい。但し、あまり幅をもたせると、誤動作する(意図した方向と違う方向に動く)ことがあるので、適宜、実験により決定するのが好ましい。
【0040】
上述した検出方法の効果は、従来のセンサ電極構成による加重平均法よりも、デバイス面積を有効に利用することができることである。図8に示した従来のセンサ電極構成では、x座標検出電極とy座標検出電極とを別個に設けているため、例えば2行2列のマトリクスにした場合に、各センサ電極の面積はデバイス面積の1/4になる。これに対し、この発明における検出方法ではそれぞれのセンサ電極121〜124をx座標検出電極としてもy座標検出電極としても利用するため、実質的にセンサ電極の面積はデバイス面積の1/2となる。よって、同じ面積でセンサ感度を大きくしたような効果があり、検出の信頼性が向上する。また、上述のようにして加重平均法によって求めた座標データを用いて、撫でる動作による操作も可能になる。なお、上記においては4方向操作を例に説明しているが、例えば4方向以上の分解能を得ることも可能である。
【0041】
図11(a),(b)はセンサ電極121〜124の他の形状及び配置例を示したものである。円形領域内に4つ配置する構成に限らず、長方形や楕円形領域内に4つ配置する構成としてもよく、センシング領域の形状は用途に応じて適宜、決定される。
図12(a),(b)は操作基準14の他の形状例を示したものであり、操作基準14は半球状の突起(平面形状が円形をなす突起)に限らず、これら長円形や紡錘形の平面形状をなす突起とすることもできる。
【0042】
図13はこの発明による静電容量式タッチセンサ10を小型携帯機器に搭載した例を示したものであり、図13(a)はいわゆるスライド式の携帯電話機30に搭載した例を示し、図13(b)は2軸ヒンジ式の携帯電話機40に搭載した例を示す。
図13(a)では通常の4方向スイッチ部に搭載することができ、φ10mm程度の大きさで静電容量式タッチセンサ10を構成することができるので、表示器31の画面サイズを大きくすることができる。なお、図に示したように筐体32の側面に配置することもできる。
一方、図13(b)に示したように表示器41の脇に配置すると、表示器41を表側にして折りたたんだ場合に、デジタルスチルカメラのように操作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明による静電容量式タッチセンサの一実施例の構成を示す図、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)におけるセンサ基板の正面図。
【図2】図1に示した静電容量式タッチセンサの4方向操作例を示す図。
【図3】4方向キーの操作方向とセンサ電極の位置関係を示す図。
【図4】オン情報の組み合わせで4つのタッチ位置を判別する方法を説明するための図。
【図5】全てのセンサがオンした時の判別を説明するための図。
【図6】撫でる動作の場合の判別を説明するための図。
【図7】撫でる動作において全てのセンサがオンする状態をとり込んだ場合の判別を説明するための図。
【図8】従来の加重平均法を説明するための図。
【図9】この発明における加重平均法を説明するための図。
【図10】この発明における加重平均法を具体的数値例によって説明するための図。
【図11】センサ電極の他の形状及び配置例を示す図。
【図12】操作基準の他の形状例を示す図。
【図13】この発明による静電容量式タッチセンサの搭載例を示す図。
【技術分野】
【0001】
この発明は小型携帯機器等に用いて好適な静電容量式タッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機やデジタルスチルカメラ等の小型携帯機器では、カーソル操作や画面のスクロール等に4方向キーが用いられており、広くユーザに慣れ親しまれている。4方向キーの操作部は一般的に平坦ではなく、何らかの造形を有しているので、触覚により指の位置を把握することができ、逐一操作部を視認することなく、操作することができる。
【0003】
しかしながら、従来の4方向キーは操作時にクリック感触を発生させるために、操作ノブの下にメタルドームスイッチと検出用の電極とを配置しており、よって小型化には限界がある。一般的な小型携帯機器では、4方向キーの操作部の外形は概ねφ18mm程度となっており、このような大きさでは例えば携帯電話機の筐体側面に配置することはできず、無理に配置しようとすると筐体が極めて厚くなってしまう。また、例えば表示器の脇に配置しようとすると、表示画面の狭小化を余儀なくされる。
【0004】
なお、非常に小さなメタルドームスイッチを利用して操作部外形を小さくしたものも一部で実現されているが、操作部が小さいためにメタルドームスイッチを変形させるだけの力を加えづらくなり、その点で操作性が悪いといった問題がある。
一方、ジョイスティックやトラックボール等の入力装置も利用されている。ジョイスティックは操作レバーを傾動させるもの、トラックボールはボールを回転させるものであり、これらの入力装置は操作部を動かすことで直感的な操作が行えることを特徴としている。しかしながら、操作部を動かす都合上、その分のスペースが必要となり、薄型化は図りづらい。
【0005】
また、近年、静電容量式タッチセンサを用いた入力装置が各種小型携帯機器に搭載されてきている。静電容量式タッチセンサは機器筐体等の絶縁物を介してセンサ電極とユーザの指との間に形成される静電容量を検出し、その静電容量の変化を示す信号により入力操作を行うものである。
【0006】
ここで、センサ電極とユーザの指との間に形成される静電容量は実質的に平行平板コンデンサとみなせるので、静電容量の大きさはセンサ電極の大きさと絶縁物の厚さに依存する。絶縁物の厚さを薄くすれば、センサ電極を小さくすることができ、よって入力装置自体を小さくすることができる可能性がある。加えて、センサ電極はPWBやFPC、メンブレン印刷配線板等に形成された配線を所望の形状にすることで構成することができるので、薄型化にも適する。
【0007】
ところで、入力装置にはその装置の位置と操作部位を認識するための指標が一般に必要であり、静電容量式タッチセンサを用いた入力装置において、センサ裏面に配置した照明手段により操作部位を表示させるものが特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2006−260971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、小型携帯機器等に搭載する入力装置に静電容量式タッチセンサを用いれば、小型・薄型化を図ることが可能となるものの、入力装置の位置・操作部位を認識するための指標として照明手段を用いる構成では、操作の度に操作部位を視認しなければならず、いわゆるブラインド操作ができない。
また、操作部が平坦なため、入力装置を小さく構成した場合に、操作中に指が入力エリアから外れてしまうといった問題が発生する。
操作中に指が入力エリアから外れないようにするためには、入力エリアに操作基準を設ければよいが、従来の静電容量式タッチセンサでは操作基準を中心としたさらに小さい入力エリア内での操作はできなかった。
この発明の目的はこのような問題に鑑み、指先操作が可能なエリアでもブラインド操作を可能とし、操作中に入力エリアから指が外れにくいようにした静電容量式タッチセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明による静電容量式タッチセンサによれば、2行2列に配置された4つのセンサ電極を有するセンサ基板と、センサ電極上に配置され、上面が操作面とされる絶縁層と、その絶縁層上に設けられた操作基準とよりなり、操作基準は4つのセンサ電極の中心に配置され、触覚により認識可能とされる。
請求項2の発明では請求項1の発明において、操作基準が突起状とされる。
請求項3の発明では請求項1又は2の発明において、4つのセンサ電極のうちの2つ以上のセンサ電極の出力の組み合わせで、4つのタッチ位置を判別する構成とされる。
【0010】
請求項4の発明では請求項1又は2の発明において、4つのセンサ電極のうちの2つ以上のセンサ電極の出力の組み合わせで、4方向の撫でる方向を判別する構成とされる。
請求項5の発明では請求項1又は2の発明において、4つのセンサ電極を2列にグルーピングし、各列のセンサ電極の出力から加重平均により第1の方向のタッチ位置座標を算出し、4つのセンサ電極を2行にグルーピングし、各行のセンサ電極の出力から加重平均により第2の方向のタッチ位置座標を算出し、第1及び第2のタッチ位置座標に基づいて、4つ以上のタッチ位置を判別する構成とされる。
【0011】
請求項6の発明では請求項1又は2の発明において、4つのセンサ電極を2列にグルーピングし、各列のセンサ電極の出力から加重平均により第1の方向のタッチ位置座標を算出し、4つのセンサ電極を2行にグルーピングし、各行のセンサ電極の出力から加重平均により第2の方向のタッチ位置座標を算出し、第1及び第2のタッチ位置座標の変化に基づいて、撫でる方向を判別する構成とされる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、触覚により認識可能な操作基準が4つのセンサ電極の中心に位置して絶縁層上に設けられているため、この操作基準によって静電容量式タッチセンサの位置を把握することができ、操作中にどの操作部位を操作しているかが触覚により認識できるため、ブラインド操作が可能となる。また、この操作基準を基準とすることにより、操作中に指が入力エリアから外れにくいものとすることができ、さらにその入力エリア内で指の移動を認識できるセンサ電極の配置を実現したものであり、これらの点で操作性の向上を図ることができ、かつ小型・薄型な静電容量式タッチセンサを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
図1はこの発明による静電容量式タッチセンサの一実施例の構成を示したものである。センサ基板11上には4つのセンサ電極12(121〜124)が2行2列に配置されて形成されており、この例ではこれらセンサ電極121〜124はそれぞれ中心角90°の扇形をなすものとされ、一つの円形領域内に配列されて配置されている。
【0014】
センサ基板11のセンサ電極121〜124上には絶縁層13が配置され、この絶縁層13の上面(センサ基板11と反対側の面)13aがタッチ操作される操作面とされる。絶縁層13の上面13aには半球状の突起をなす操作基準14が設けられており、操作基準14は4つのセンサ電極121〜124の中心に位置するように配置されている。なお、4つのセンサ電極121〜124はそれぞれ配線15を介して制御部16に接続されている。
【0015】
センサ基板11はPWBやFPC、メンブレン印刷配線板等によって構成され、センサ電極121〜124はセンサ基板11がPWBやFPCの場合には銅箔等で形成され、メンブレン印刷配線板の場合には銀インクやITOなどの透明抵抗体等で形成される。
【0016】
絶縁層13はこの静電容量式タッチセンサ10が小型携帯機器等の筐体に配置される場合はその筐体に相当し、構成材はポリカーボネートやABS、アクリル等の樹脂やガラス等、筐体の仕様に応じた仕様となる。このような絶縁層13に対するセンサ基板11の固定は例えば両面テープ(図示せず)を用いてセンサ基板11を絶縁層13に貼り付けることによって行うことができる。また、例えば図示しない構造物によりセンサ基板11の裏面から絶縁層13に押し付けるようにして固定することもできる。
【0017】
半球状をなす操作基準14の大きさは例えば径がφ1mm〜φ2mm程度とされ、高さは0.3mm〜0.5mm程度とされる。
制御部16は図示を省略しているが、スイッチ部と静電容量検出部とデータ処理部からなるものとされる。スイッチ部はセンサ電極12の中から1つ以上のセンサ電極12を選択し、静電容量検出部に接続する。静電容量検出部は接続されたセンサ電極12と指の間の静電容量を検出し、静電容量を示す情報を出力する。この出力はデータ処理部に送られ、適当なデジタル値に変換されて、図示しないホストコンピュータに送られる。
【0018】
静電容量検出部には特に制限はなく、発振回路、論理演算回路による遅延測定、チャージアンプ、スイッチトキャパシタ回路等、各種公知の技術が適用できる。データ処理部はデジタル回路で構成してもよいし、マイコン等のCPUで構成してもよい。データ処理部からホストコンピュータに渡すデータは静電容量をデジタル変換した値(生データ)でもよいし、ホスト側のアプリケーションに適した形に変換したデータでもよい。
【0019】
図2は上記のような構成を有する静電容量式タッチセンサ10に対する4方向操作の例を示したものであり、図中、21は指を示す。
図2(a)は静電容量式タッチセンサ10の上をタッチした場合、図2(b)は下をタッチした場合の正面図及び側面図をそれぞれ示したものであり、図2(c)は左をタッチした場合、図2(d)は右をタッチした場合の正面図をそれぞれ示したものである。
【0020】
突起状の操作基準14の存在により、指21がどの位置を触れているかが触覚によりわかる。また、操作基準14を起点にして操作することにより、指21が静電容量式タッチセンサ10のセンサ領域から外れることがない。なお、操作基準14は十分に小さいので、操作の妨げにならず、センサ感度も犠牲になることはない。
【0021】
次に、静電容量式タッチセンサ10を4方向キーとして利用する場合の検出例として、4つのセンサ電極12(121〜124)のうちの2つ以上のセンサ電極12のオン情報(出力)の組み合わせで、4つのタッチ位置を判別する方法を、図3〜5を参照して説明する。
図3は4方向キーの操作方向とセンサ電極121〜124の位置関係を示しており、指21は下から上の方向に伸びているものとする。
図4(a)〜(d)では、それぞれハッチングを施したところが、センサがオンしている状態(タッチ状態)を示している。センサがオンしているか否かを判別するには、出力がオン判定しきい値を上回ったかどうかで判定する(但し、負論理出力の場合は、出力がオン判定しきい値を下回ったかどうかで判定する)。
【0022】
上2つのセンサ(121,122)がオンした時は、4方向キーの上が押されていると判定する。同様に、下2つのセンサ(123,124)がオンした時は下、左2つのセンサ(121,123)がオンした時は左、右2つのセンサ(122,124)がオンした時は右が押されたと判定する。これにより、4方向操作が実現できる。
【0023】
このように、2つのオン情報で判定することにより、1つのオン情報で判定する場合と比較してセンサ感度が大きくなり、タッチ位置検出の信頼性が増す。なお、センサがオンしてから所定時間(例えば50ms程度)経過してから、アプリケーション(カーソル移動やスクロール)を動作させるようにすれば、さらに信頼性が増す。
【0024】
オンしている間はカーソルを連続して動かす、スクロールし続ける等、リピート動作するようにしてもよい。決定動作は静電容量式タッチセンサで従来使われているタップ、ダブルタップ等により行うことができる。また、別の場所に静電容量式タッチセンサやメカニカルスイッチ等を設けて決定スイッチとしてもよい。
【0025】
ところで、図5(a)に示したように下方から指21を伸ばして上の2つのセンサ(121,122)を触ろうとした場合、指21を寝かせて触ると全てのセンサ(121〜124)を触ってしまうことがある(図5(b))。これは、指先は上の2つのセンサの位置にあるが、指の中心(腹の部分)は静電容量式タッチセンサ10のほぼ中心位置にあり、操作基準14が指21にめり込んで下の2つのセンサも触ってしまうことによる。
【0026】
このような場合に備えて、4つのセンサがオンした時にも上と判定すると、上が入力しにくいということがなくなる。よって、上の2つがオンした時、4つがオンした時、いずれも上と判定すれば、より操作性が向上する。この場合、下、左、右の判定は図4(b)〜(d)の判定方法と同様とする。
【0027】
次に、静電容量式タッチセンサ10を撫でて動作させる場合の、撫でる方向(上下左右方向)の判定方法を図6(a)〜(d)を参照して説明する。
ハッチングを施したところがセンサがオンしている状態を示している。図6(a)〜(d)の各図において、左側の図は時間的に前の状態、右側の図は時間的に後の状態を示す。
【0028】
図6(a)に示したように、所定時間内に下2つから上2つに変化した場合には上に撫でたと判定する。この時、例えば4方向キーの上が押された時と同様のアプリケーション動作をする。前後の時間間隔は操作性を考慮して設定する。なお、下2つから上2つに変化する間に、経過的に例えば3つのセンサがオンする可能性があるが、このような状態は無視することとする。
【0029】
上以外の方向については、図6(b)〜(d)に示したように判定することで、上下左右の撫でる方向を判別することができ、4方向キーと同様の操作が可能になる。なお、例えば左から右に撫でた場合に、左2つがオンしている状態から右2つがオンしている状態に変化する間に、全部のセンサがオンになる可能性がある。このような状態は上述の3つのセンサがオンした場合と同様、無視することとする。
【0030】
このように、撫でて動作させる場合、2つの情報を用いることで曖昧さを排除することができるので、操作者が意図しない方向に動作することがない。
リピート動作については、例えば上に撫でる場合を例にすると、下の2つがオンになり、所定時間内に上の2つがオンとなって上に撫でていると判定された後、さらに別の所定時間継続して上の2つがオンしている場合にはリピート動作させるようにしてもよい。
撫でる動作により判定する場合、前述した図5のように全部のセンサがオンする可能性があり、このような全部のセンサがオンする状態を撫でる方向の判別にとり込むことによって、さらに操作性を向上させることができる。
【0031】
上に撫でる場合を例にとると、図7(a)に示したように、下2つがオンした後、所定時間内に全部がオンした時に上に撫でたと判定する。同様に図7(b)に示したように、全部がオンした後、上2つがオン(下2つがオフ)になった時に上に撫でたと判定する。
図7(c)〜(h)は下、左、右に撫でた場合の判定方法を示したものであり、これら図7(a)〜(h)に示したように判定すると、指を大きく動かす必要がなくなるので操作性が向上する。
【0032】
次に、加重平均法によるタッチ座標から、4つ以上のタッチ位置を判別する方法を説明する。
まず、従来の2次元平面内のタッチ座標を加重平均法により求める方法について図8を参照して説明する。
センサ電極は図8(a)に示したように、x座標検出電極X1,X2,…,Xn、y座標検出電極Y1,Y2,…,Ynを略直交配置させて形成される。x座標検出電極とy座標検出電極は互いに独立している。これら電極の数は操作領域に合わせて適宜選択される。
【0033】
各x座標検出電極の座標をxk(k=1〜n)、出力をDk(k=1〜n)とすると、タッチ位置のx座標は下記(1)式で表される。
【数1】
y座標も同様にして算出することができ、ノートパソコンに搭載されているタッチパッドでは、このようにして求めたタッチ位置のx座標とy座標により、マウスカーソルの移動を制御している。
【0034】
次に、この発明による静電容量式タッチセンサ10における加重平均法を図9を参照して説明する。
各センサ電極121〜124からの出力を図9(a)中に示したようにS1〜S4とする。出力S1〜S4は指がオーバーラップする面積に比例して変化する。
この例ではx座標検出フェーズ(Phase1)、y座標検出フェーズ(Phase2)に分けて、x座標とy座標を検出する。なお、Phase1とPhase2は時分割して交互に行う。
【0035】
Phase1では図9(b)に示したように、左側の2つのセンサ電極121,123を合わせてX1電極(座標はx1)とし、右側の2つのセンサ電極122,124を合わせてX2電極(座標はx2)とする。
Phase2では図9(c)に示したように、上側の2つのセンサ電極121,122を合わせてY1電極(座標はy1)とし、下側の2つのセンサ電極123,124を合わせてY2電極(座標はy2)とする。
【0036】
・x座標の算出(Phase1)
X1電極の出力は2つのセンサ電極121,123の出力の和S1+S3となり、X2電極の出力は2つのセンサ電極122,124の出力の和S2+S4となる。加重平均法によるx座標は下記(2)式で表される。
【数2】
・y座標の算出(Phase2)
Y1電極の出力は2つのセンサ電極121,122の出力の和S1+S2となり、Y2電極の出力は2つのセンサ電極123,124の出力の和S3+S4となる。加重平均法によるy座標は下記(3)式で表される。
【数3】
上記のようにしてタッチ位置のx座標とy座標が求められる。
【0037】
ここで、上記の加重平均法による座標算出を具体的数値例を用いて説明する。
図10(a)はタッチする指21とセンサ電極121〜124の位置関係の一例を示したものである。また、図10(b)におけるハッチング部はセンサ電極121〜124と指21が対向している部分を示し、各センサ電極121〜124に関連付けられた数値([ ]内の数値)は、各センサ電極121〜124と指21が対向している面積を表す。これらの数値は出力の大きさを意味する。なお、この例では便宜上、1つのセンサ電極に完全にタッチした時の出力を10としている。
【0038】
X1電極の座標x1を0、X2電極の座標x2を1とし、Y1電極の座標y1を0、Y2電極の座標y2を1とする。加重平均法によりタッチ座標を計算すると、x座標、y座標ともに、0から1の値をとり得ることになり、中心を触ると0.5となる。
上記の数値を用い、前述の(2)式、(3)式に当てはめると、
【数4】
となる。この数値から指21の重心座標が静電容量式タッチセンサ10の左下寄りに位置していることがわかる。このようにして求めたx座標とy座標により、タッチ位置を判別することができる。
【0039】
4方向キーとして用いる場合には、例えば、xが0.5以下、yが0.5の時に左、xが0.5以上、yが0.5の時に右、xが0.5、yが0.5以上の時に下、xが0.5、yが0.5以下の時に上と判定するとよい。
なお、上記例は上下方向のいずれかと判定されるためにはyの値が0.5としているが、タッチ位置のずれを許容して幅をもたせてもよい。但し、あまり幅をもたせると、誤動作する(意図した方向と違う方向に動く)ことがあるので、適宜、実験により決定するのが好ましい。
【0040】
上述した検出方法の効果は、従来のセンサ電極構成による加重平均法よりも、デバイス面積を有効に利用することができることである。図8に示した従来のセンサ電極構成では、x座標検出電極とy座標検出電極とを別個に設けているため、例えば2行2列のマトリクスにした場合に、各センサ電極の面積はデバイス面積の1/4になる。これに対し、この発明における検出方法ではそれぞれのセンサ電極121〜124をx座標検出電極としてもy座標検出電極としても利用するため、実質的にセンサ電極の面積はデバイス面積の1/2となる。よって、同じ面積でセンサ感度を大きくしたような効果があり、検出の信頼性が向上する。また、上述のようにして加重平均法によって求めた座標データを用いて、撫でる動作による操作も可能になる。なお、上記においては4方向操作を例に説明しているが、例えば4方向以上の分解能を得ることも可能である。
【0041】
図11(a),(b)はセンサ電極121〜124の他の形状及び配置例を示したものである。円形領域内に4つ配置する構成に限らず、長方形や楕円形領域内に4つ配置する構成としてもよく、センシング領域の形状は用途に応じて適宜、決定される。
図12(a),(b)は操作基準14の他の形状例を示したものであり、操作基準14は半球状の突起(平面形状が円形をなす突起)に限らず、これら長円形や紡錘形の平面形状をなす突起とすることもできる。
【0042】
図13はこの発明による静電容量式タッチセンサ10を小型携帯機器に搭載した例を示したものであり、図13(a)はいわゆるスライド式の携帯電話機30に搭載した例を示し、図13(b)は2軸ヒンジ式の携帯電話機40に搭載した例を示す。
図13(a)では通常の4方向スイッチ部に搭載することができ、φ10mm程度の大きさで静電容量式タッチセンサ10を構成することができるので、表示器31の画面サイズを大きくすることができる。なお、図に示したように筐体32の側面に配置することもできる。
一方、図13(b)に示したように表示器41の脇に配置すると、表示器41を表側にして折りたたんだ場合に、デジタルスチルカメラのように操作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明による静電容量式タッチセンサの一実施例の構成を示す図、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)におけるセンサ基板の正面図。
【図2】図1に示した静電容量式タッチセンサの4方向操作例を示す図。
【図3】4方向キーの操作方向とセンサ電極の位置関係を示す図。
【図4】オン情報の組み合わせで4つのタッチ位置を判別する方法を説明するための図。
【図5】全てのセンサがオンした時の判別を説明するための図。
【図6】撫でる動作の場合の判別を説明するための図。
【図7】撫でる動作において全てのセンサがオンする状態をとり込んだ場合の判別を説明するための図。
【図8】従来の加重平均法を説明するための図。
【図9】この発明における加重平均法を説明するための図。
【図10】この発明における加重平均法を具体的数値例によって説明するための図。
【図11】センサ電極の他の形状及び配置例を示す図。
【図12】操作基準の他の形状例を示す図。
【図13】この発明による静電容量式タッチセンサの搭載例を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2行2列に配置された4つのセンサ電極を有するセンサ基板と、
前記センサ電極上に配置され、上面が操作面とされる絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた操作基準とよりなり、
前記操作基準は前記4つのセンサ電極の中心に配置され、触覚により認識可能とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項2】
請求項1記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記操作基準は突起状とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記4つのセンサ電極のうちの2つ以上のセンサ電極の出力の組み合わせで、4つのタッチ位置を判別する構成とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項4】
請求項1又は2記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記4つのセンサ電極のうちの2つ以上のセンサ電極の出力の組み合わせで、4方向の撫でる方向を判別する構成とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項5】
請求項1又は2記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記4つのセンサ電極を2列にグルーピングし、各列のセンサ電極の出力から加重平均により第1の方向のタッチ位置座標を算出し、
前記4つのセンサ電極を2行にグルーピングし、各行のセンサ電極の出力から加重平均により第2の方向のタッチ位置座標を算出し、
前記第1及び第2のタッチ位置座標に基づいて、4つ以上のタッチ位置を判別する構成とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項6】
請求項1又は2記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記4つのセンサ電極を2列にグルーピングし、各列のセンサ電極の出力から加重平均により第1の方向のタッチ位置座標を算出し、
前記4つのセンサ電極を2行にグルーピングし、各行のセンサ電極の出力から加重平均により第2の方向のタッチ位置座標を算出し、
前記第1及び第2のタッチ位置座標の変化に基づいて、撫でる方向を判別する構成とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項1】
2行2列に配置された4つのセンサ電極を有するセンサ基板と、
前記センサ電極上に配置され、上面が操作面とされる絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた操作基準とよりなり、
前記操作基準は前記4つのセンサ電極の中心に配置され、触覚により認識可能とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項2】
請求項1記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記操作基準は突起状とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記4つのセンサ電極のうちの2つ以上のセンサ電極の出力の組み合わせで、4つのタッチ位置を判別する構成とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項4】
請求項1又は2記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記4つのセンサ電極のうちの2つ以上のセンサ電極の出力の組み合わせで、4方向の撫でる方向を判別する構成とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項5】
請求項1又は2記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記4つのセンサ電極を2列にグルーピングし、各列のセンサ電極の出力から加重平均により第1の方向のタッチ位置座標を算出し、
前記4つのセンサ電極を2行にグルーピングし、各行のセンサ電極の出力から加重平均により第2の方向のタッチ位置座標を算出し、
前記第1及び第2のタッチ位置座標に基づいて、4つ以上のタッチ位置を判別する構成とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【請求項6】
請求項1又は2記載の静電容量式タッチセンサにおいて、
前記4つのセンサ電極を2列にグルーピングし、各列のセンサ電極の出力から加重平均により第1の方向のタッチ位置座標を算出し、
前記4つのセンサ電極を2行にグルーピングし、各行のセンサ電極の出力から加重平均により第2の方向のタッチ位置座標を算出し、
前記第1及び第2のタッチ位置座標の変化に基づいて、撫でる方向を判別する構成とされていることを特徴とする静電容量式タッチセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−258946(P2009−258946A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106480(P2008−106480)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]