説明

静電式集塵装置に供給される電力を制御する方法及び装置

静電式集塵装置(6)の動作を制御する方法は、電力範囲及び/又は電力上昇率を直接的又は間接的に制御することを含む制御方式を、少なくとも1つの集電電極(28)と少なくとも1つの放電電極(26)との間に印加される電力に対して用いることを含む。上記プロセスガスの温度が測定される。上記制御方式が電力範囲を制御することを含む場合、電力範囲の上限値が、上記プロセスガスの温度が低い場合よりも高い場合の方が低くなるように、上記電力範囲は上記測定された温度に基づいて選択される。上記制御方式が電力上昇率を制御することを含む場合、電力上昇率が、上記プロセスガスの温度が低い場合よりも高い場合の方が低くなるように、上記電力上昇率は上記測定された温度に基づいて選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの集電電極と少なくとも1つの放電電極とを備え、プロセスガスから塵埃粒子を除去する静電式集塵装置の動作を、塵埃粒子が除去されるプロセスガスの状態に対応して制御する方法に関するものである。
【0002】
本発明は、さらに、静電式集塵装置の動作を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
発電プラントなどの燃焼プラントでの石炭、石油、泥炭、廃棄物などの燃料の燃焼では、高温のプロセスガスが発生し、このプロセスガスには、とりわけフライアッシュとも呼ばれる塵埃粒子を含んでいる。この塵埃粒子は、例えば、米国特許第4,502,872号に例示されている種類の、ESPとも呼ばれる静電式集塵装置によってプロセスガスから除去されることが多い。
【0004】
一般的に、燃焼プラントは、高温プロセスガスの熱を蒸気の発生に用いるボイラーを備えている。ボイラーの動作状態は、熱伝達面の汚れ具合や供給される燃料の種類や量などによりその時々によって異なる。ボイラーの状態変動により、ボイラーから流出しESPに流入するプロセスガスの状態も変動する。米国特許第4,624,685号は、ESPの制御においてプロセスガスの状態変動を考慮する試みを記載している。米国特許第4,624,685号によると、燃料ガスの温度が高いほど体積流量が大きくなることが見出されており、燃料ガスの温度が考慮される。つまり、ESPの電力は、プロセスガスの体積流量の変動を考慮して、測定された温度に応じて制御されている。従って、燃料ガス温度の上昇は、ESPへの電力の増加を要する体積流量の増加に対応すると考えられる。
【0005】
米国特許第4,624,685号に基づくESPの運転は、放出制限が変動するプロセスガスの状態に応じて行われるという点において成功しているといえる。しかしながら、EPSの電気部品に対する電気的歪みがかなり高くなる傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、静電式集塵装置ESP、特にその電気部品の寿命を延ばすことができるESP運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、
少なくとも1つの集電電極と少なくとも1つの放電電極とを備え、プロセスガスから塵埃粒子を除去する静電式集塵装置の動作を、前記塵埃粒子が除去される前記プロセスガスの状態に応じて制御する方法であって、
電力範囲と電力上昇率のうち少なくとも1つを直接的又は間接的に制御することを含む制御方式を、前記少なくとも1つの集電電極と前記少なくとも1つの放電電極との間に印加される電力に対して用い、
前記プロセスガスの温度を測定しと、
前記制御方式が前記電力範囲を制御することを含む場合、電力範囲の上限値が、前記プロセスガスが低い温度の場合よりも前記プロセスガスが高い温度の場合に低くなるように、前記測定された温度に基づいて前記電力範囲を選択し、
前記制御方式が前記電力上昇率を制御することを含む場合、電力上昇率が、前記プロセスガスが低い温度の場合よりも高い温度の場合に低くなるように、前記測定された温度に基づいて前記電力上昇率を選択し、
前記制御方式に基づいて、前記少なくとも1つの集電電極と前記少なくとも1つの放電電力との間に印加される電力を制御することを特徴とする方法によって、達成される。
【0008】
この方法の利点は、少なくとも1つの集電電極と少なくとも1つの放電電極との間に印加される電力を燃料ガスの温度に応じて制御することにある。そうすることで、プロセスガスの温度がより高い場合には、静電式集塵装置の電気部品の磨耗が少なくなるように電力制御を行うことができる。
【0009】
本発明の一実施形態によると、前記電力範囲及び/又は前記電力上昇率を選択する際に、前記プロセスガスの温度と、前記少なくとも1つの集電電極と前記少なくとも1つの放電電極との間に印加される電力との関係を用いる。本実施形態の利点は、プロセスガスの温度を利用することで、電力範囲及び/又は電力上昇率をほぼ連続的に変化させることができることにある。静電式集塵装置の除去効率も考慮に入れた関係を用いる方が好ましい場合もある。
【0010】
本発明の一実施形態によると、前記制御方式は前記電力上昇率を制御することを含む。電力上昇率は、電力供給停止の頻度に大きな影響を与えることが多い。従って、プロセスガスの温度を考慮した電力上昇率の制御がESPの電気部品の磨耗を著しく低減する傾向がある。
【0011】
本発明の一実施形態によると、前記制御方式は前記電力範囲と前記電力上昇率の両方を制御することを含む。本実施形態の利点は、従来技術の方法と比べて、ESPの電気部品にかかる歪みを大きく軽減することにある。
【0012】
本発明の一実施形態によると、前記制御方式は、同一の上昇シーケンスにおいて、少なくとも2つの異なる電力上昇率を適用することを含む。本実施形態の利点の1つは、静電式集塵装置により高い電力を投入することができることにある。該少なくとも2つの異なる電力上昇率のうち初めに用いる電力上昇率が、後に続く電力上昇率のうち少なくとも1つの値よりも高くなる方が好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態によると、前記制御方式は、同一の上昇シーケンスにおいて、少なくとも2つの異なる電力範囲を適用することを含む。
【0014】
本発明の更なる目的は、静電式集塵装置、特にその電気部品の寿命を延ばすように静電式集塵装置への電力供給を制御する装置を提供することにある。
【0015】
この目的は、
少なくとも1つの集電電極と少なくとも1つの放電電極とを備え、プロセスガスから塵埃粒子を除去する静電式集塵装置の動作を、前記塵埃粒子が除去される前記プロセスガスの状態に応じて制御する装置であって、
前記少なくとも1つの集電電極と前記少なくとも1つの放電電極との間に印加される電力に対する制御方式に従って、前記少なくとも1つの集電電極と前記少なくとも1つの放電電極との間に印加される電力を制御する制御装置を備え、前記制御方式は電力範囲及び/又は電力上昇率を直接的又は間接的に制御することを含み、前記制御装置は、前記プロセスガスの温度を示す信号を受信し、前記制御方式が電力範囲を制御することを含む場合、前記電力範囲の上限値が、前記プロセスガスが低い温度の場合よりも前記プロセスガスが高い温度の場合に低くなるように、前記測定された温度に基づいて前記電力範囲を選択し、及び/又は前記制御方式が前記電力上昇率を制御することを含む場合、電力上昇率が、前記プロセスガスが低い温度の場合よりも高い温度の場合に低くなるように、前記測定された温度に基づいて前記電力上昇率を選択することを特徴とする装置によって、達成される。
【0016】
この装置の利点は、静電式集塵装置の電気部品の磨耗が少なくなるように、少なくとも1つの集電電極と少なくとも1つの放電電極との間に印加される電力を制御するように働くことにある。
【0017】
本発明の更なる目的及び特徴は明細書及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】発電プラントの側面概略図である。
【図2】印加電圧に対する静電式集塵装置のフィールドの塵埃粒子除去効率を示す概略図である。
【図3】従来技術に係る電圧制御方法を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態に係る静電式集塵装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図5】燃焼ガスの温度とターゲット電圧との関係を示す概略図である。
【図6】燃焼ガスの温度と電圧上昇率との関係を示す概略図である。
【図7】燃焼ガスの温度が低い場合の静電式集塵装置の動作を示す概略図である。
【図8】燃焼ガスの温度が高い場合の静電式集塵装置の動作を示す概略図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る静電式集塵装置の動作を示す概略図である。
【図10】本発明の更なる他の実施形態に係る静電式集塵装置の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の更なる目的及び特徴は明細書及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0020】
図1は概略図であり、側面から見た発電プラント1を示している。発電プラント1は石炭燃焼ボイラー2を備える。石炭燃焼ボイラー2では、空気の存在下で石炭が燃焼し、いわゆる燃料ガスと呼ばれる高温のプロセスガスが発生し、該燃料ガスはダクト4を通って石炭燃焼ボイラー2から出る。石炭燃焼ボイラー2で発生した燃料ガスは、環境空気に放出される前に除去されなければならない塵埃粒子を含んでいる。ダクト4は、燃料ガスの流れ方向に対してボイラー2の下流に位置する静電式集塵装置ESP6に燃料ガスを送る。ESP6は、燃料ガスの流れ方向で見て直列に配置された、一般に第1のフィールド8、第2のフィールド10、第3のフィールド12と呼ばれるものを備える。この3つのフィールド8,10,12はそれぞれ、整流器20,22,24の機能をそれぞれ制御する制御装置14,16,18を備える。
【0021】
図の明瞭さを保つため、図1には第1のフィールド8の1つの放電電極26と1つの集電電極28しか示していないが、フィールド8,10,12はそれぞれ複数の放電電極と複数の集電電極を備える。図1は、整流器20が第1のフィールド8の放電電極26と集電電極28との間に電力、つまり電圧と電流を印加し、燃料ガスに含まれる塵埃粒子を帯電させる様子を概略的に示している。帯電された塵埃粒子は集電電極板28上に集められる。同様の処理が第2、第3のフィールド10,12でも行われる。集められた塵埃は、図1には示されていないいわゆるハンマリング装置で集電電極板28から除去され、最終的にホッパ30,32,34に集められる。
【0022】
少なくとも一部の塵埃粒子が除去された燃料ガスをESP6から煙突38に送るように設計されたダクト36が設けられている。煙突38は燃料ガスを大気に放出する。
【0023】
温度センサ40は、ダクト4を通ってきた燃料ガスの温度を測定する。温度センサ40は、プラント制御コンピュータ42に、測定された燃料ガス温度に関する情報を含む信号を送信する。プラント制御コンピュータ42は、次に、各制御装置14,16,18に測定された燃料ガス温度に関する情報を含む信号を送信する。制御装置14,16,18はそれぞれ、以下により詳細に説明する原則に従って整流器20,22,24の動作を制御する。
【0024】
図2は概略図であり、本発明の元になっている発見の1つを示している。図中のy軸は、図1示された整流器20が第1のフィールド8の放電電極26と集電電極28との間に印加した電圧を示している。図2中のx軸は、図1に示された温度センサ40によって測定された燃料ガス温度を示している。図2は3つの曲線を示し、各曲線は第1のフィールド8の特定の塵埃粒子除去効率に対応している。図2では、該3つの曲線は、第1のフィールド8の60%、70%、80%の塵埃粒子除去効率に対応している。予想できる通り、高い除去効率ほど高い電圧を必要とする。図2が示すように、一定の除去効率を達成するために必要とされる電力、つまり電圧は、燃料ガス温度が低い場合よりも高い場合の方が低いことが分かる。従って、例えば、第1の温度T1において60%の除去効率を得るために必要とされる電圧V1は、第1の温度T1より高い第2の温度T2において同様の除去効率を得るのに必要とされる電圧V2より高い。
【0025】
静電式集塵装置6での塵埃粒子の除去は、特に、放電電極26周辺に発生するコロナ放電の程度に依存する。一定の塵埃粒子除去効率は一定のコロナの程度に対応する。図2に示す性質について考えられる説明の1つとしては、燃料ガス温度が低い場合よりも高い場合の方が、ある一定程度のコロナを発生するのに要する電圧が低いということである。
【0026】
図3は、従来技術に基づく電力制御方法を示す。図3では第1のフィールドの電力制御が示されているが、従来技術の方法によると、当然のことながら静電式集電装置の全てのフィールドに同様の手法が用いられている。
【0027】
図3に示されている方法では、第1のフィールドの整流器を制御する制御装置は、設定された電圧範囲VR内で電圧を制御する。電圧範囲VRは下位レベルV0とターゲット電圧レベルVTを含む。制御装置は、整流器がスタート電圧つまり電圧V0を印加し、その後一定の電圧上昇率RRで電圧を増加するよう促す。結果、図3の電圧曲線が示すようになる。従来技術に基づく該制御方法の目的は、電圧レベルV0を印加し電圧上昇率RRで電圧を増加することでターゲット電圧レベルVTに達することであり、意図される電圧の傾向は図3に矢印で示されている。しかしながら、電圧VSで、放電電極と集電電極板との間で火花放電が起こり、制御装置が整流器に電力供給を停止するよう促す場合もある。その後短時間、例えば1〜30秒で、制御装置は、整流器が再び電圧V0を印加しターゲット電圧VTに達するように電圧上昇率RRで電圧を増加するよう促す。静電式集塵装置の塵埃粒子などの負荷に関する動作状態が変化するため、当然のことながら火花放電率が限界に達する電圧VSは時間とともに変化する。
【0028】
図4は本発明の実施形態を示す。本実施形態は図2に示す発見に基づいており、燃料ガス温度は、十分な塵埃粒子除去効率を得るために必要となる電力に影響する。図4を参照して説明される本実施形態では、図1に示す整流器20が印加する電力は、電圧を制御することで間接的に制御されている。
【0029】
図4に50で示される第1のステップでは、例えば図1に示した温度センサ40によって燃料ガス温度を測定する。図4に52で示される第2のステップでは、第1のステップで測定された温度に基づいて電圧範囲が選択される。図4に54で示される第3のステップでは、第1のステップで測定された温度に基づいて電圧上昇率が選択される。図4に56で示される第4のステップでは、例えば放電電極26と集電電極28との間の整流器20などの整流器によって印加される電圧を、選択された電圧範囲及び選択された電圧上昇率に従って制御する。さらに、図4に示すように、ループなっているため、燃料ガス温度が再び測定され、新しい電圧範囲と新しい電圧上昇率が選択される。新しい電圧範囲と新しい電圧上昇率を選択する頻度は予測される燃料ガス温度の安定性に基づいて設定することができる。1時間おきに新しい電圧範囲と新しい電圧上昇率を選択すればよいプラントもあるし、燃料ガス温度が頻繁に変化するためはるかに頻繁に新しい電圧範囲と新しい電圧上昇率を選択する必要があるプラントもある。
【0030】
当然のことながら、図4に示す制御方法は制御装置14,16,18それぞれに用いても、1つ又は2つだけに用いてもよい。
【0031】
図5は、燃料ガス温度に基づいて選択されるターゲット電圧値の様子を概略的に示している。図5中に示される曲線は、所望の塵埃除去効率、例えば70%を示している。図5に示すように、第1の温度T1、例えば150℃では、ターゲット電圧値VT1が選択される。図5に示すように、第2の温度T2、例えば200℃では、ターゲット電圧値VT2が選択される。図5に示すように、温度T2で選択されるターゲット電圧値VT2は、温度T2よりも低い温度T1で選択されるターゲット電圧値VT1よりも低い。選択されたターゲット電圧値に基づいて電圧範囲が選択される。温度T1での電圧範囲は、下位電圧V0から始まって選択されたターゲット電圧値VT1までと選択することができる。温度T2での電圧範囲は、同じ下位電圧V0から始まって選択されたターゲット電圧値VT2までと選択することができる。このように、電圧範囲は温度T2においてより狭くなっている。
【0032】
図6は、燃料ガス温度に基づいて選択される電圧上昇率の様子を概略的に示している。図6中の曲線は、経験的に見出した電圧上昇率の適切な値と燃料ガス温度の比較を示している。電圧上昇率値とは選択された電圧範囲の中で電圧が増加する割合である。電圧上昇率の単位はV/秒である。図6に示すように、温度T1、例えば150℃では、電圧上昇率値RR1が選択される。図6に示すように、温度T2、例えば200℃では、電圧上昇率RR2が選択される。図6に示すように、温度T2で選択される電圧上昇率値RR2は、温度T2よりも低い温度T1で選択される電圧上昇率値RR1よりも低い。
【0033】
図7は、温度T1、例えば150℃での本発明の実施形態に基づく電力制御方法を示す。ここでもまた、整流器20が印加する電力は、電圧を制御することによって間接的に制御される。図7は第1のフィールド8の電圧制御を示しているが、当然のことながら第2、第3のフィールド10,12も同様の原則に従って制御することができる。
【0034】
図7に示す方法では、第1のフィールド8の整流器20を制御する制御装置14が、図5を参照して上述したように選択された電圧範囲VR1内で電圧を制御する。ここで、電圧範囲は下位電圧V0から選択されたターゲット電圧値VT1までである。制御装置14は、整流器が下位電圧V0である開始電圧を印加し、図6を参照して上述したように選択された電圧上昇率値RR1で電圧を増加するよう促す。制御装置14の目的は、電圧上昇率値RR1で電圧を増加してターゲット電圧値VT1に達することであり、意図される電圧の傾向は図7に破線矢印で示されている。しかしながら、値VS1付近の電圧で、放電電極26と集電電極板28との間で火花放電が起こり、制御装置14が整流器20に電力供給を停止するよう促す場合もある。その後短時間、例えば1〜30秒で、制御装置14は整流器20が再び電圧V0を印加し、ターゲット電圧VT1に達するように電圧上昇率RR1で電圧を増加するよう促す。図7に示す時間tの間に合計3回の電圧印加停止が発生している。
【0035】
図8は、温度T2、例えば200℃での本発明の実施形態に基づく電力制御方法を示す。図7に示す場合と同様、整流器20が印加する電力は、電圧を制御することによって間接的に制御される。図8では第1のフィールド8の電圧制御を示しているが、当然のことながら第2、第3のフィールド10,12も同様の原則に従って制御することができる。
【0036】
図8に示す方法では、第1のフィールド8の整流器20を制御する制御装置14が、図5を参照して上述したように選択された電圧範囲VR2内で電圧を制御する。ここで、電圧範囲は下位電圧V0から選択されたターゲット電圧値VT2までである。制御装置14は、整流器20が下位電圧V0である開始電圧を印加し、図6を参照して上述したように選択された電圧上昇率値RR2で電圧を増加するよう促す。制御装置14の目的は、電圧上昇率値RR2で電圧を増加してターゲット電圧値VT2に達することであり、意図される電圧の傾向は図8に破線矢印で示されている。しかしながら、値VS2付近の電圧で、放電電極26と集電電極板28との間で火花放電が起こり、制御装置14が整流器20に電力供給を停止するよう促す場合もある。その後短時間、例えば1〜30秒で、制御装置14は整流器20が再び電圧V0を印加し、ターゲット電圧VT2に達するように電圧上昇率RR2で電圧を増加するよう促す。図7に示す時間tと同じ時間tの間に合計2回の電圧印加停止が発生している。
【0037】
図7と図8との比較によると、図7に示す低い方の温度T1よりも図8に示すように高い方の温度T2の場合の方が、単位時間で発生する電力供給停止の回数が少ない。その結果、高い方の温度T2では、整流器20や他の電気装置への機械的、電気的歪みが軽減され、静電式集塵装置6の寿命が延びる。また、フィールド8に供給される電気エネルギーは、電力供給停止の回数が少ないほど増加する。ここで、電気エネルギーの供給は時間を乗算した電圧に比例、つまり図8の電圧曲線の下に相当する部分に比例する。燃料ガス温度T2で供給される増加した電気エネルギーは、静電式集塵装置の除去効率を増加する。
【0038】
このように、静電式集塵装置の制御における燃料ガス温度を考慮することで、該制御の有効性を高め、火花放電の回数を減らし且つアーク放電を最小限に抑えることで機械、電気部品の磨耗を軽減することができる。また、総電源入力も増加し、塵埃粒子除去効率の増加につながる。
【0039】
図9は本発明の他の実施形態を示す。本実施形態によると、燃料ガス温度は、燃料ガス温度とは無関係に一定に保たれる電圧範囲の選択に関してではなく、電圧上昇率値の選択に関してのみ考慮されている。図9は高温T2での状態を示す。低温動作時は、選択されるターゲット電圧値VT1と選択される電圧範囲VR1は図7に示される状態と同じである。高温T2での電圧上昇率値RR2は、図6に示す図に基づいて選択される。図9の電圧曲線を図8に示すものと比べると、電源供給の停止回数及び供給される電気エネルギーに関してはどちらの場合も比較的同様であることが明らかである。しかしながら、図8に示す方法での電圧範囲VR2と比べ、図9に示す方法での電圧範囲VR2は幅広く、これにより、図7及び図8に示す方法に基づいて動作する場合と比べ図9に示す方法に基づいて動作する場合には、整流器20により増大な電気的歪みが生じる場合がある。
【0040】
図10は本発明の更なる他の実施形態を示す。図10に示す状態は図8に示すものと同様であり、低い燃料ガス温度で用いられる値より低い電力上昇率を用いることで、電力制御が高温、例えば200℃の場合に適用される。電圧上昇率が上昇段階中一貫して一定に保たれるのではないという点が図8の状態と異なる。従って、図10に示すように、電圧上昇率は、最初、電圧上昇率Aに示すように比較的高い。その後、電圧上昇率Bに示すように低くなる。最終的に、最終電圧上昇率Cに示すように電圧上昇率は再び増加する。同一の上昇シーケンスで電圧上昇率が変化することの利点の1つは、初期の高い電圧上昇率Aによって電力を急速に高レベルに引き上げることができるため、より高い電力が静電式集塵装置に投入されることである。その後、長い期間、この高い電力レベルが低い電圧上昇率Bによって保たれる。最終的に、高い電圧上昇率Cによって火花放電状態に急速に達することが可能となる。当然のことながら、同一の上昇シーケンスにおける上昇率は、上記とは異なる変化をたどり、他の効果を得ることも可能である。
【0041】
更なる他の実施形態によると、同一の上昇シーケンスの間に、選択される電圧範囲VR2を変化させ、静電式集塵装置に投入される電力量の制御を改善することが可能である。従って、図10に示すように、選択される電圧範囲VR2は、同一の上昇シーケンスの前半では第1の値をとる。該上昇シーケンスの後半では選択されるターゲット電圧値がVT2からVT2’に上昇し、初期に選択された電圧範囲VR2よりも幅広い新しく選択された電圧範囲VR2’となる。
【0042】
つまり、図10に示すように、同一の上昇シーケンスにおいて、電圧上昇率と電圧範囲のどちらかを変化させることも、電圧上昇率と電圧範囲の両方を変化させることも可能である。後者の場合、同一の上昇シーケンスにおける電圧上昇率の選択と電圧範囲の選択は互いに依存していても独立していてもよい。
【0043】
当然のことながら、添付の特許請求の範囲内で上記実施形態の数多くの変形例が可能である。
【0044】
図4〜10を参照した上述の説明では、印加される電流と電圧からなる整流器が印加する電力は、印加される電圧を制御すること、つまり、電圧範囲と電圧上昇率を制御することによって間接的に制御される。一方、電流は一定に保たれても変化してもよい。後者の場合、通常、電流は制御されるパラメータ、つまり電圧が上昇するのと同時に上昇し、その結果電流と電圧からなる電力が増加する。当然のことながら、他の変形例も可能である。そのような変形例の1つとしては、電圧範囲及び電圧上昇率に関して図4〜10を参照して上述したのと同様の原則に従って電流範囲及び/又は電流上昇率を制御することによって、整流器が印加する電力を間接的に制御することがある。さらに、電圧と電流を同時に制御すること、つまり、電圧と電流範囲及び/又は電圧と電流上昇率を制御することで、該電力を間接的に制御することもできる。さらに他の実施形態によると、電圧範囲及び電圧上昇率に関して図4〜10を参照して上述したのと同様の原則に従って電流範囲及び/又は電流上昇率を制御することによって、制御装置42が電力を直接制御することも可能である。このように、電力は直接的にも間接的にも制御することができ、間接的制御の場合、電圧及び/又は電流を制御することを含む。
【0045】
以上、燃料ガス温度が静電式集塵装置6の上流に位置するダクト4で測定される場合を説明した。当然のことながら、燃料ガス温度は、他の位置、例えばダクト36や静電式集塵装置6の内部において測定することも可能である。重要なことは、測定結果は、静電式集塵装置6内の燃料ガスの温度に関する状態の適切な目安を提示しなければならないという点である。
【0046】
以上、図4〜8及び10を参照し、電圧範囲と電圧上昇率の両方を燃料ガス温度に基づいて選択することができると説明した。また、図9を参照し、電圧上昇率だけを燃料ガス温度に基づいて選択し、燃料ガス温度とは無関係に電圧範囲を一定に保つことができると説明した。当然のことながら、さらに他の実施形態によると、電圧範囲のみを燃料ガス温度に基づいて選択し、燃料ガス温度とは無関係に電圧上昇率を一定に保つことも可能である。このように、静電式集塵装置6が動作している燃料ガス温度に対応して電圧上昇率と電圧範囲のどちらか又は両方を選択することができる。これは、電流が電圧の代わりに又は一緒に制御される場合や電力が直接制御される場合にも同様に適用することができる。従って、燃料ガス温度に対応して、電力上昇率と電力範囲のどちらか又は両方を選択してもよい。
【0047】
上述したように、制御装置14,16,18はそれぞれ燃料ガス温度に関する情報を含む信号を受信し、それに従って、電力範囲及び電力上昇率を選択する。変形例の1つとしては、プラント制御コンピュータ42などの中央装置が燃料ガス温度に関する情報を含む信号を受信し、電力範囲及び/又は電力上昇率を選択し、選択の結果を各制御装置14,16,18に送信してもよい。
【0048】
本発明は、ほとんどの種類の塵埃粒子に対して効果的であることが分かっているが、いわゆる低導電性塵埃、つまり、例えばIEEE Std 548-1984: “IEEE Standard Criteria and Guidelines for the Laboratory Measurement and Reporting of Fly Ash Resistivity”, of The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc, New York, USAに従って測定された1*10E10ohm*cm以下のバルク抵抗を有する塵埃に対して特に効果的であることが分かった。
【0049】
ターゲット電圧値は燃料ガス温度に基づいて選択され、選択されたターゲット電圧値は電圧が制御される電圧範囲の選択に用いられることを上述した。上述した例では、選択された電圧範囲の下位電圧V0は燃料ガス温度とは無関係に常に固定されていた。しかしながら、下限値、つまり電圧範囲の下位電圧V0も測定された燃料ガス温度などの動作パラメータに基づいて選択することができる。後者の場合、各電圧範囲の下位電圧V0は、燃料ガス温度が低い場合よりも高い場合の方が低くなってもよい。
【0050】
要約すると、静電式集塵装置の動作を制御する方法は、電力範囲及び/又は電力上昇率を直接的又は間接的に制御することを含む制御方式を、少なくとも1つの集電電極28と少なくとも1つの放電電極26との間に印加される電力に対して用いることを含む。上記プロセスガスの温度が測定される。上記制御方式が電力範囲を制御することを含む場合、電力範囲の上限値VT1,VT2が、上記プロセスガスの低い温度T1場合よりも高い温度T2の場合の方が低くなるように、上記電力範囲は上記測定された温度に基づいて選択される。上記制御方式が電力上昇率を制御することを含む場合、電力上昇率RR1,RR2が、上記プロセスガスの低い温度T1の場合よりも高い温度T2の場合の方が低くなるように、上記電力上昇率は上記測定された温度に基づいて選択される。上記少なくとも1つの集電電極28と放電電極26との間に印加される電力は上記制御方式によって制御される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの集電電極(28)と少なくとも1つの放電電極(26)とを備え、プロセスガスから塵埃粒子を除去する静電式集塵装置(6)の動作を、前記塵埃粒子が除去される前記プロセスガスの状態に応じて制御する方法であって、
電力範囲(VR1,VR2)と電力上昇率(RR1,RR2)のうち少なくとも1つを直接的又は間接的に制御することを含む制御方式を、前記少なくとも1つの集電電極(28)と前記少なくとも1つの放電電極(26)との間に印加される電力に対して用い、
前記プロセスガスの温度(T1,T2)を測定し、
前記制御方式が前記電力範囲を制御することを含む場合、電力範囲(VR1,VR2)の上限値(VT1,VT2)が、前記プロセスガスが低い温度(T1)の場合よりも前記プロセスガスが高い温度(T2)の場合に低くなるように、前記測定された温度(T1,T2)に基づいて前記電力範囲(VR1,VR2)を選択し、
前記制御方式が前記電力上昇率を制御することを含む場合、電力上昇率(RR1,RR2)が、前記プロセスガスが低い温度(T1)の場合よりも前記プロセスガスが高い温度(T2)の場合に低くなるように、前記測定された温度(T1,T2)に基づいて前記電力上昇率(RR1,RR2)を選択し、
前記制御方式に基づいて、前記少なくとも1つの集電電極(28)と前記少なくとも1つの放電電力(26)との間に印加される電力を制御することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電力範囲(VR1,VR2)及び/又は前記電力上昇率(RR1,RR2)を選択する際に、前記プロセスガスの温度(T1,T2)と、前記少なくとも1つの集電電極(28)と前記少なくとも1つの放電電極(26)との間に印加される電力との関係を用いることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記制御方式は前記電力上昇率(RR1,RR2)を制御することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御方式は前記電力範囲(VR1,VR2)と前記電力上昇率(RR1,RR2)の両方を制御することを含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記制御方式は、同一の上昇シーケンスにおいて、少なくとも2つの異なる電力上昇率(A,B,C)を適用することを含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記制御方式、同一の上昇シーケンスにおいて、少なくとも2つの異なる電力範囲(VR2,VR2’)を適用することを含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの集電電極(28)と少なくとも1つの放電電極(26)とを備え、プロセスガスから塵埃粒子を除去する静電式集塵装置(6)の動作を、前記塵埃粒子が除去される前記プロセスガスの状態に応じて制御する装置であって、
前記少なくとも1つの集電電極(28)と前記少なくとも1つの放電電極(26)との間に印加される電力に対する制御方式に従って、前記少なくとも1つの集電電極(28)と前記少なくとも1つの放電電極(26)との間に印加される電力を制御する制御装置(14,16,18)を備え、前記制御方式は電力範囲(VR1,VR2)と電力上昇率(RR1,RR2)のうち少なくとも1つを直接的又は間接的に制御することを含み、前記制御装置(14,16,18)は、前記プロセスガスの温度(T1,T2)を示す信号を受信し、前記制御方式が前記電力範囲を制御することを含む場合、電力範囲(VR1,VR2)の上限値(VT1,VT2)が、前記プロセスガスが低い温度(T1)の場合よりも前記プロセスガスが高い温度(T2)の場合に低くなるように、前記測定された温度(T1,T2)に基づいて前記電力範囲(VR1,VR2)を選択し、及び/又は前記制御方式が前記電力上昇率を制御することを含む場合、電力上昇率(RR1,RR2)が、前記プロセスガスが低い温度(T1)の場合よりも前記プロセスガスが高い温度(T2)の場合に低くなるように、前記測定された温度(T1,T2)に基づいて前記電力上昇率(RR1,RR2)を選択することを特徴とする装置。
【請求項8】
前記電力範囲(VR1,VR2)及び/又は前記電力上昇率(RR1,RR2)を選択する際に、前記プロセスガスの温度(T1,T2)と、前記少なくとも1つの集電電極(28)と前記少なくとも1つの放電電極(26)との間に印加される電力との関係を用いる、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記制御方式は前記電力上昇率(RR1,RR2)を制御することを含む、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御方式は前記電力範囲(VR1,VR2)と前記電力上昇率(RR1,RR2)の両方を制御することを含む、請求項7ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御方式は、同一の上昇シーケンスにおいて、少なくとも2つの異なる電力上昇率(A,B,C)を適用することを含む、請求項7ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記制御方式は、同一の上昇シーケンスにおいて、少なくとも2つの異なる電力範囲(VR2,VR2’)を適用することを含む、請求項7ないし11のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−504485(P2012−504485A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529531(P2011−529531)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062603
【国際公開番号】WO2010/037737
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】