説明

静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材

【目的】 静電気滞溜を防止した熱保護のために使用される軽量断熱コーティング材に関する。
【構成】 軽量断熱コーティング材表面に導電コーティングを介して導電性フイラを含有した表面シールコートを施してなる静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は宇宙・航空機製品のエンジンからの輻射熱や空力加熱を受ける部分の熱保護のため適用される軽量断熱コーティング材に関し、特に静電気滞溜を防止した同軽量断熱コーティング材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、宇宙・航空機製品の構造材等を熱保護するための優れた断熱材として軽量断熱コーティング材がある。これらの軽量断熱コーティング材は、図2に示す如く、エポキシ樹脂3に無機質微小中空体4、無機繊維補強材5を含有し、軽量/断熱性に優れ、表面シールコーティング6により耐候性にも優れた断熱材である(特願昭60−216182号参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の軽量断熱コーティングは優れた断熱材料であると共に優れた絶縁材料であるため、表面に静電気を滞溜しやすく、そのため可燃性のガス等にスパークすれば爆発する可能性がある(たとえば、ロケットの液体燃料として使用される液体水素など)。しかし、断熱材表面をすべて導電性材料に置き換えてしまっては表面付近のすべての金属と導電して電気が流れるため、上記の可燃性ガス爆発の危険性が増加し、又断熱性能についても入熱量が増加するため不利となる。
【0004】本発明は上記技術水準に鑑み、従来のものがもつ以上のような問題点を解消するため通常の状態(無負荷)では絶縁材料で電気が導通せず、静電気が滞溜して電圧が高くなったときのみ静電気を安全に逃す構造をもった静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は(1)軽量断熱コーティング材表面に導電コーティングを介して導電性フイラを含有した表面シールコートを施してなる静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材。
【0006】(2)導電コーティングが銀またはカーボンよりなる導電性フイラを50〜90重量%含み、かつ10〜100μm厚さである上記(1)記載の静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材。
【0007】(3)表面シールコートが銀またはカーボンよりなる導電性フイラを5〜20重量%含み、かつ0.05〜0.15mm厚さである上記(1)または上記(2)記載の静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材。である。
【0008】
【作用】本発明による静電気滞溜防止軽量コーティング材の構造にいて、導電コーティングは抵抗値が1Ω以下の良導体であり、表面シールコートは通常は絶縁材料である。しかし、表面静電気の滞溜により、高電圧となると表面シールコートの厚さ方向に電気が流れ導電コーティングを通ってアースに至る。
【0009】本発明の静電気滞溜防止軽量コーティング材の導電コーティング、表面シールコートに導電性フイラとして銀またはカーボンを選定したのは、これらは電気電導性がよく、しかも安価であり、また化学的に安定で入手しやすいからである。
【0010】また、本発明の静電気滞溜防止軽量コーティング材の導電コーティングに含まれる導電性フイラ(銀またはカーボン)が50重量%未満では電気伝導性に劣り、90重量%を超えると導電材の量が多すぎ密着性が劣り層間剥離を起こして十分な連続層とならないので、導電コーティングの導電性フイラの量は50〜90重量%の範囲にするのがよい。また、導電コーティングの厚さが10μm未満では十分な連続層になりにくく電気抵抗が大きくなり、また100μmを超えると電気抵抗は変らないが重量が大きくなり材料としては不利となるので、導電コーティングの厚さは10〜100μmの範囲にするのがよい。
【0011】さらに、本発明の静電気滞溜防止軽量コーティング材の表面シールコートの電気の流れる方向は、その厚さ方向で導電コーティングに通じるようになっているもので、この表面シールコートに含まれる導電性フイラが5重量%未満では電気抵抗が大きくなりすぎ静電滞溜防止効果が劣り、20重量%を超えると表面シールコートの本来のシール性(耐候性)、柔軟性が損なわれ、その上シールコートの表面方向にも電気が流れる状態となり、付近のすべての金属と通電してしまい、可燃性ガス等での爆発の危険性を増すので、表面シールコートの導電性フイラの量は5〜20重量%の範囲にするのがよい。また、表面シールコートの厚さが0.05mm未満ではシール性(耐候性)、柔軟性が劣り、0.15mmを超えると電気抵抗が大きくなるばかりでなく重量増となるので、表面シールコートの厚さは0.05〜0.15mmの範囲にするのがよい。
【0012】
【実施例】本発明の静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材の一実施例を図1によって説明する。図1の宇宙・航空機機体構造体1の表面にプライマ7を介して、下記組成の材料を塗布、乾燥させて軽量断熱コーティング材2を形成させた。
軽量断熱コーティング材の材料〇エポキシ樹脂3(ビスフェノールA系エポキシ樹脂:商品名“スミエポキシ ELA−128”) :50部〇硬化剤(ポリアミド系硬化剤:商品名“スキキュアP−725”):50部〇無機質微小中空体4(シリカまたはマイクロバルーン) :34部〇無機繊維補強材5(チタン酸カリ繊維またはアスベスト繊維) : 2部〇添加剤(顔料、分散剤、消泡剤など) :14部〇溶剤(トルエン、メチルエチルなど:乾燥後消失) :50部
【0013】上記軽量断熱コーティング材2の上に、銀またはカーボンよりなる導電性フイラを50〜90重量%を含む導電コーティング9を10〜100μmの厚さで形成し、さらにその表面に銀またはカーボンよりなる導電性フイラ8を5〜20重量%を含む表面シールコート6を0.05〜0.15mm厚さに形成させた。
【0014】このようにして形成させた静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材は通常(無負荷状態)では絶縁材料であるが、電荷500V以上では1〜2×108 Ω抵抗体となり電気が流れる。
【0015】表1に、表面シールコートの配合例を、表2に電気抵抗の測定結果を示し、図3に電気抵抗の測定条件の説明図を示す。
【0016】
【表1】


【0017】
【表2】


【0018】図3において、図1と同一符号は図1と同一部分を示すので説明は省略する。10はアルミニウム合金板、11はリベット(アルミニウム合金製)、12は抵抗計、13はプローブである。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、従来の軽量断熱コーティングの表面シールコート上での静電気の滞溜を防ぎ、かつ通常無負荷(電圧が掛っていない状態)では絶縁性を保つことができる静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材の一実施例の断面模式図。
【図2】従来の軽量断熱コーティング材の一態様の断面模式図。
【図3】本発明の静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材の電気抵抗測定条件の説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 軽量断熱コーティング材表面に導電コーティングを介して導電性フイラを含有した表面シールコートを施してなる静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材。
【請求項2】 導電コーティングが銀またはカーボンよりなる導電性フイラを50〜90重量%含み、かつ10〜100μm厚さである請求項1記載の静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材。
【請求項3】 表面シールコートが銀またはカーボンよりなる導電性フイラを5〜20重量%含み、かつ0.05〜0.15mm厚さである請求項1または請求項2記載の静電気滞溜防止軽量断熱コーティング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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