説明

静電気防止性能に優れた離型フィルム及びその製造方法

【課題】離型力及び残留接着率などの離型特性が良好であり、且つ静電気防止性能に優れた離型フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材フィルム10及び離型層20を含む離型フィルムであって、バインダーと静電気防止剤を含有した静電気防止層30を含む離型フィルム及びその製造方法が提供される。前記離型フィルムは、離型力及び残留接着率などの離型特性が良好であり、且つ静電気防止性能に優れ、IT分野の製品などに有効に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気防止性能に優れた離型フィルム及びその製造方法に関し、より詳しくは、良好な離型特性を有し、且つ静電気防止性能に優れた離型フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、離型フィルムは、粘着剤層(または、接着剤層)の保護を主な目的として使用される。離型フィルムは、一般の産業用粘着(または、接着)テープなどに多用されており、近年、携帯電話、LCD、半導体、ディスプレイなどのIT分野などにおいてもその使用が急増している。
【0003】
離型フィルムは、基材フィルムと離型層を含む。基材フィルムとしては、紙やプラスチックフィルムが多用され、離型層は、主にシリコーン組成物からなる。離型フィルムは、離型力とともに残留接着率などの離型特性が要求される。具体的に、粘(接)着剤層からの適切な離型力(剥離力)とともに、離型層の成分が粘(接)着剤層に転写されることで粘(接)着力を低下させることのない残留接着率などが要求される。
【0004】
一方、近年、IT分野の製品において合成樹脂や合成繊維の使用が急増するに伴い、静電気の問題が台頭してきている。これに伴い、IT製品に使用される離型フィルム対しても静電気防止性能が要求されてきている。
【0005】
しかしながら、従来の離型フィルムは、所望の静電気防止性能を持っておらず、静電気の発生により離型フィルムが損傷したり、特に静電気の発生量の多いIT分野の製品への適用の際、粘(接)着剤層から剥離する際に静電気により汚れが発生したりするなどの問題が提起されていた。特に、周囲の異物が静電気により粘(接)着剤に混入したりすることが発生し、製品の不良を誘発させるという問題が深刻に台頭してきている。
【0006】
このため、従来は、離型フィルムの離型層に静電気防止物質を添加する技術が試みられていたが、この場合、離型フィルムにおいて要求される離型力や残留接着率などの離型特性が劣化し、且つ静電気防止性能も良好ではなく、IT分野の製品への適用には不向きであるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】KR2005-0034776
【特許文献2】KR1999-0019010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、離型力及び残留接着率などの離型特性が良好であり、且つ静電気防止性能に優れた離型フィルム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の具現例では、基材フィルム及び離型層を含む離型フィルムであって、前記離型フィルムは、バインダーと静電気防止剤を含有した静電気防止層を含む離型フィルムを提供する。
【0010】
また、本発明の他の具現例では、基材フィルム及び離型層を含む離型フィルムの製造方法であって、前記基材フィルムの片面または両面に、バインダーと静電気防止剤を含有した静電気防止組成物をコーティングするステップを含む離型フィルムの製造方法を提供する。
【0011】
本発明の一具現例において、前記静電気防止層には、前記バインダー5〜25重量部に対し、前記静電気防止剤が1〜30重量部含有される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の具現例に係る離型フィルムは、離型力及び残留接着率などの離型特性が良好であり、且つ優れた静電気防止性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一つの例示的な具現例に係る離型フィルムの断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の例示的な具現例に係る離型フィルムの断面図である。
【図3】図3は、本発明のまた他の例示的な具現例に係る離型フィルムの断面図である。
【図4】図4は、本発明の具現例に使用される静電気防止剤としての伝導性高分子の一般式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しつつ、本発明の具現例を詳しく説明する。
【0015】
本発明の具現例に係る離型フィルムは、基材フィルムと離型層を含み、さらに、静電気防止層を含む。前記静電気防止層は、基材フィルムの片面または両面に形成されていてよく、前記離型層は、前記静電気防止層上に形成されるか、または前記静電気防止層が片面に形成された基材フィルムの片面と反対側面に形成されていてよい。
【0016】
図1ないし図3を参照して説明すると、本発明の具現例に係る離型フィルムは、基材フィルム10と離型層20を含む。また、本発明の具現例に係る離型フィルムは、別体の層として静電気防止層30をさらに含む。本発明の具現例において、前記静電気防止層30は、離型層20の離型特性を損なうことなく、優れた静電気防止性能を与えるべく、基材フィルム10及び離型層20とは別体の層として形成される。
【0017】
本発明の具現例に係る離型フィルムにおいて、前記静電気防止層10は、1層または2層以上含まれていてよい。図1ないし図3においては、例示的な具現例を示している。図1ないし図3に示すように、前記静電気防止層30は、基材フィルム10の下面に形成(図1)されるか、または基材フィルム10と離型層20との間に形成(図2)されていてよい。また、静電気防止層30は、基材フィルム10の下面に加え、基材フィルム10と離型層20との間にも形成(図3)されていてよい。
【0018】
具体的に詳述すると、本発明の例示的な具現例に係る離型フィルムは、静電気防止層30を含み、図1に示すように、表面(図中、上面)から離型層20、基材フィルム10、及び静電気防止層30が順次積層されてなる構造を有していてよい。または、図2に示すように、表面(図中、上面)から離型層20、静電気防止層30、及び基材フィルム10が順次積層されてなる構造を有していてよい。または、図3に示すように、表面(図中、上面)から離型層20、静電気防止層30、基材フィルム10、及び静電気防止層30が順次積層されてなる、2層の静電気防止層30を含む構造を有していてよい。
【0019】
前記基材フィルム10は支持力を有するものであればよい。基材フィルム10は、例えば、紙、不織布、及びプラスチックフィルムなどから選択されるものであればよい。例示的な具現例において、前記基材フィルム10は、プラスチックフィルムであり、例えば、ポリエステル系及び/またはポリオレフィン系を含むフィルムであってよい。基材フィルム10は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate;PET)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutyleneterephthalate;PBT)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylenenaphthalate;PEN)、ポリブチレンナフタレート(Polybutylenenaphthalate;PBN)、ポリエチレン(polyetylene;PE)、及びポリプロピレン(Polypropylene;PP)などからなる群より選択された1種以上の樹脂を含むフィルムが使用されてよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0020】
前記離型層20は、良好な離型力(剥離力)と残留接着率などの離型特性を有するものであればよい。離型層20は、好ましくは、シリコーン組成物がコーティングされたシリコーン離型層であればよい。離型層20としてのシリコーン離型層は、例えば、分子内にSi−H結合を持つ化合物とポリシロキサンとの重合体を含むものであればよい。商業用製品としては、例えば3705(商標)(信越社製)または7226(商標)(ダウコーニング社製)などを使用してよい。例示的な具現例において、前記離型層20は、オルガノポリシロキサン、オルガノヒドロポリシロキサン、白金キレート、及び溶媒を含むシリコーン組成物がコーティング、硬化されて形成されたものであればよい。より具体的に、前記離型層20は、オルガノポリシロキサン100重量部を基準にして、オルガノヒドロポリシロキサン0.1ないし10重量部、百金キレート0.1ないし3重量部、及び溶媒100ないし2000重量部を含むシリコーン組成物がコーティング、硬化されて形成されたものであればよい。
【0021】
このとき、シリコーン組成物を構成する前記溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、及びn−ヘキサンなどから選択された1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を使用すればよい。
【0022】
離型層20が、前記のような成分及び適正含量の組成を有するシリコーン組成物からなる場合、離型力(剥離力)及び残留接着率などの離型特性において有利である。前記離型層20は、離型性組成物、好ましくは、前記したようなシリコーン組成物が基材フィルム10上にコーティング(図1の場合)されるか、または静電気防止層30上にコーティング(図2及び図3の場合)されてなるものであればよい。
【0023】
ここで、コーティング方法は、例えば、グラビア(Gravure)コーティング、マイクログラビア(Micro Gravure)コーティング、キスグラビア(kiss Gravure)コーティング、コンマナイフ(Comma Knife)コーティング、ロール(Roll)コーティング、スプレー(Spray)コーティング、メイヤーバー(Meyer Bar)コーティング、スロットダイ(Slot Die)コーティング、及びリバース(Reverse)コーティング方法から選択されたいずれかを利用してよいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0024】
また、前記離型層20は、0.05〜1μmのコーティング厚さを有していてよい。このとき、離型層20のコーティング厚さが0.05μm未満であれば、良好な離型特性が得られにくく、1μmを超過すれば、ブロッキングの発生可能性が高くなる。離型層20は、好ましくは、0.1〜0.3μmのコーティング厚さを有していてよい。
【0025】
前記静電気防止層30は、バインダーと静電気防止剤を含む。前記バインダーは、静電気防止剤同士はもちろん、層間接着力、すなわち静電気防止層30と基材フィルム10及び/または離型層20との間の層間接着力のために使用される。バインダーは、接着力を有するものであれば特に制限されない。前記バインダーは、水溶性または不水溶性(有機溶剤タイプ)などを含み、例えば、アクリル基、ウレタン基、エポキシ基、アミド基、水酸基、及びシラン基などから選択された1種以上の官能基を有する高分子化合物を単独または2種以上混合して使用してよい。非制限的な例示として、バインダーは、ポリアクリル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエポキシ、ポリアミド、ポリエステル、エチルビニルアセテート、ポリシロキサン、及びこれらの共重合体などから選択された1種以上を使用してよい。
【0026】
前記静電気防止剤は、静電気防止(帯電防止)性能を有するものであれば特に制限されない。前記静電気防止剤は、例えば、伝導性高分子、炭素素材及び界面活性剤などからなる群より選択された1種以上を使用してよい。
【0027】
本発明の例示的な具現例において使用される前記伝導性高分子の例として、ポリアセチレン(Polyacetylene)、ポリ(p−フェニレンビニレン)(Poly(p−phenylene vinylene))、ポリ(p−フェニレン)(Poly(p−phenylene))、ポリ(チエニレンビニレン)(Poly(thienylene vinylene))、ポリチオフェン(Polythiophene)、ポリアニリン(Polyaniline)、ポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylene dioxythiophene)、ポリイソチアナフテン(Polyisothianaphthene)、ポリピロール(Polypyrrole)、及びポリ(p−フェニレンスルフィド)(Poly(p−phenylene sulfide)などからなる群より選択された1種以上が挙げられる。参考として、図4は、前記伝導性高分子の一般式を示す図である。
【0028】
前記炭素素材として、カーボンブラック(carbon black)、グラファイト(graphite)、グラフェン(graphene)、炭素ナノチューブ(CNT、carbon nano tube)、及び炭素ナノ繊維(CNF、carbon nano fiber)などからなる群より選択された1種以上が例として挙げられる。また、前記界面活性剤としては、スルホン酸塩、第4級アンモニウム塩、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩などが例として挙げられる。
【0029】
前記静電気防止剤は、前記したような伝導性高分子、炭素素材、及び界面活性剤などを使用してよいが、好ましくは、ポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylene dioxythiophene;PEDOT)を含むものであればよい。具体的に、前記静電気防止剤としては、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)単独を使用するか、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)と前記挙げられた静電気防止剤のうち1種以上を混合してなるものを使用してよい。前記ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)は、可視光線透過率が高く、重合の際にドーパントとしてポリスチレンスルホン酸(Polystyrenesulfonate)を使用することから、基材フィルム10上へのコーティングの際に他の伝導性高分子に比べてコーティング安定性に優れ、バインダーとの混合特性に優れ、且つ高い静電気防止性能を発揮するため、本発明に有用である。
【0030】
本発明の好適な具現例において、静電気防止層30には、バインダー5〜25重量部に対し、静電気防止剤が1〜30重量部含有されていてよい。すなわち、前記バインダーと静電気防止剤とは、5〜25:1〜30の重量比の組成を有してよい(バインダー重量:静電気防止剤重量=5〜25:1〜30)。ここで、バインダーの含量が5重量部と低すぎると接着力が弱化するため基材フィルム10などとの層間接着力が劣化し、25重量部を超過して含量が多すぎると相対的に静電気防止剤の含量が低くなるため、良好な静電気防止性能が得られにくい。また、静電気防止剤の含量が1重量部未満であるとそれを含有することによる静電気防止性能が微弱であり、30重量部を超過すると相対的にバインダーの含量が低くなるため、層間接着力が劣化し、好ましくない。
【0031】
より好適な具現例において、バインダー10〜20重量部に対し、静電気防止剤は、5〜25重量部含有されていてよい(すなわち、バインダー重量:静電気防止剤重量=10〜20:5〜25)。このような重量部の組成からなる場合、層間接着力に優れ、且つ離型フィルムの表面抵抗が108Ω/cm2以下、好ましくは、105Ω/cm2以下であって、IT分野の製品に有用に適用可能な優れた静電気防止性能を有する。
【0032】
本発明の例示的な具現例において、前記静電気防止層30は、基材フィルム10の片面または両面に静電気防止組成物がコーティングされて形成される。このとき、静電気防止組成物は、前述のように、バインダーと静電気防止剤を含有し、好ましくは、静電気防止組成物の全100重量部のうち、バインダー5〜25重量部及び静電気防止剤130重量部を含有していてよい。そしてコーティング性のために溶媒をさらに含有していてよい。このとき、溶媒は、アルコールと水とからなるものであってよく、前記アルコールは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、及びプロフィルアルコールなどから選択されたものであってよい。
【0033】
好適な具現例において、前記静電気防止組成物は、静電気防止組成物の全100重量部のうち、バインダー5〜25重量部、静電気防止剤1〜30重量部、アルコール5〜30重量部、及び水10〜50重量部を含んでいてよい。このとき、溶媒として、アルコールと水の含量が前記範囲よりも小さいと、コーティング性が劣化し、前記範囲よりも多いと、相対的にバインダー及び静電気防止剤の含量が低くなるため、層間接着力及び/または静電気防止性能が微弱なものとなることがある。そして、前記静電気防止組成物は、各成分の均一な分散のための分散剤や顔料などの添加剤0.01〜1重量部をさらに含んでいてよい。
【0034】
また、前記静電気防止組成物は、例えばグラビア(Gravure)コーティング、マイクログラビア(Micro Gravure)コーティング、キスグラビア(kiss Gravure)コーティング、コンマナイフ(Comma Knife)コーティング、ロール(Roll)コーティング、スプレー(Spray)コーティング、メイヤーバー(Meyer Bar)コーティング、スロットダイ(Slot Die)コーティング、及びリバース(Reverse)コーティング方法から選択されたいずれかの方法によりコーティングされていてよいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0035】
さらに、前記静電気防止層30は、10nm〜10μmのコーティング厚さを有していてよい。このとき、静電気防止層30のコーティング厚さが10nm未満であれば、良好な静電気防止性能が得られにくく、10μmを超過すれば、硬化不足及び密着力が劣化し、層間剥離が発生することがある。静電気防止層30は、好ましくは、50nm〜1000nmのコーティング厚さを有していてよい。
【0036】
一方、本発明の具現例に係る離型フィルムの製造方法は、前述したような本発明の具現例の離型フィルム、すなわち、基材フィルム10、離型層20、及び静電気防止層30を含む離型フィルムの製造方法であって、基材フィルム10の片面または両面に、バインダーと静電気防止剤を含有した静電気防止組成物をコーティングするステップを含む。
【0037】
このとき、前記静電気防止組成物の構成は、前述したとおりである。前述したように、静電気防止組成物は、組成物全100重量部のうち、バインダー5〜25重量部及び静電気防止剤1〜30重量部を含むものであればよい。バインダー及び静電気防止剤の具体的な種類は前記のとおりである。より具体的に、前記静電気防止組成物は、前述したように、組成物全体100重量部のうち、バインダー5〜25重量部、静電気防止剤1〜30重量部、アルコール5〜30重量部、及び水10〜50重量部を含有するものであればよい。
【0038】
また、前記離型層20は、前述したようにオルガノポリシロキサン100重量部を基準にして、オルガノヒドロポリシロキサン0.1ないし10重量部、百金キレート0.1ないし3重量部、及び溶媒100ないし2000重量部を含むシリコーン組成物をコーティング、硬化させてなるものであればよい。
【0039】
以上で説明した本発明の具現例に係る離型フィルムは、離型力及び残留接着率などの離型特性が良好であり、且つ優れた静電気防止性能を有する。静電気防止性能を与えるために、従来のように静電気防止剤を離型層20を構成する組成物に含有させた場合、離型層20の離型力(剥離力)及び残留接着率などの離型特性を妨害(阻害)する。また、離型層20の離型特性を妨害しないようにするために静電気防止物質の含量を小さくした場合、静電気防止性能が劣化し、特に静電気発生量の多いIT分野の製品には使用が困難となる。しかし、本発明の具現例によれば、離型層20とは別体で静電気防止層30を基材フィルム10上にコーティングして形成させた場合、離型層20の離型特性を損なわずに、優れた静電気防止性能を有するようになる。
【0040】
本発明の具現例に係る離型フィルムは、粘(接)着剤層の保護を目的として一般の産業用粘着(または、接着)テープなどにはもちろん、IT分野の製品などに有効に使用することができる。例えば、携帯電話、LCD、半導体、ディスプレイなどのIT分野の製品などに有効に使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例及び比較例を例示する。下記実施例は、本発明の具現例に対する理解を助けるために例示的に提供されるものであるに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にはシリコーン離型層を形成させ、もう片面には静電気防止層を形成させ、図1に示すような3層構造の離型フィルム試片を作製した。前記シリコーン離型層は、オルガノポリシロキサン10重量部、オルガノヒドロポリシロキサン0.01重量部、百金キレート0.1重量部、及び溶媒(トルエン)100重量部から構成されている。
【0043】
そして、前記静電気防止層は、バインダーとしてアクリル樹脂15重量部、静電気防止剤としてポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)10重量部、アルコール(エチルアルコール)30重量部、及び水45重量部を含有する静電気防止組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにコーティングして形成した。
【0044】
[実施例2]
前記実施例1と同様に実施するが、静電気防止層をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとシリコーン離型層との間に形成し、図2に示すような3層構造を有するようにした。具体的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に実施例1と同様な組成の静電気防止組成物をコーティングして静電気防止層を形成させ、しかる後、静電気防止層上にシリコーン離型層を形成させた。
【0045】
[実施例3]
前記実施例1と比較して、静電気防止層をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの両面に形成させ、図3に示すような4層構造を有するようにした。具体的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの両面に静電気防止組成物をコーティングして2層の静電気防止層を形成させ、しかる後、片面にシリコーン離型層を形成させた。このとき、2層の静電気防止層は、前記実施例1において使用したものと同じ静電気防止組成物を使用してなるものを使用した。
【0046】
[比較例1]
前記実施例1と比較して、静電気防止層を形成させないことを除いては、同様に実施した。具体的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン離型層を形成させて2層構造を有するようにした。
【0047】
[比較例2〜4]
前記比較例1と比較して、シリコーン離型層に静電気防止剤を添加したことを除いては、同様に実施した。具体的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン離型層を形成させて2層構造を有するようにしたが、シリコーン離型層のコーティングの際、コーティング組成物(オルガノポリシロキサン10重量部、オルガノヒドロポリシロキサン0.01重量部、百金キレート0.1重量部、及び溶媒(トルエン)100重量部)に、静電気防止剤としてポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を0.05 重量部(比較例2)、0.1 重量部 (比較例3)、及び0.5 重量部 (比較例4)になるように添加してコーティングさせた。
【0048】
前記各実施例及び比較例に従い製造された離型フィルム試片に対し、次のように表面抵抗、離型力及び残留接着率を測定し、その結果を下記表に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1中の積層構造の項目における、「AS」は静電気防止層を意味し、「PET」は基材フィルムとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを意味し、「Si」はシリコーン離型層を意味する。
【0051】
表面抵抗
各試片の内側と外側に対し、ディスコ社の表面抵抗測定器(Surface Resistance meter、モデル番号−19781)を使用し、22℃、55%RHの恒温・恒湿条件下で測定した。
【0052】
離型力
離型力(剥離力)は、FINAT−10に基づき、先ず、各試片のシリコーン離型層に幅50mm×長さ175mmの標準テープ(TESA7475−アクリル系)を付着した。そして、FINAT試験ローラー(2Kg荷重)を利用し、10mm/secの速度で2回往復して標準テープを試片に圧着させた後、シリコーン離型層と標準テープとの十分な圧着のために平らな2枚の金属板で試片を挟め、70g/cm2の圧力をかけながら、温度約23℃で20時間保持した。しかる後、圧力を除去し、4時間後に試片を治具に固定させた後、標準テープを180度の方向から300mm/minの速度で剥離して測定した。このとき、各試片に対して5回繰り返し測定し、その平均値(g/25mm)を表1に示した。
【0053】
残留接着率(%)
各試片のシリコーン離型層に標準粘着テープ(No.31B)を付着した後、22℃、55%RHの恒温・恒湿条件下で、次のように残留接着力と基礎接着力を測定した。
【0054】
−残留接着力:試片のシリコーン離型層にNo.31B粘着テープを2kgゴムローラーで1回往復圧着し、100℃で1時間加熱処理した後、圧着したサンプルから試片を剥離し、前記No.31B粘着テープに対する接着力を測定した。すなわち、試片を剥離して除去した前記No.31B粘着テープを金属板に圧着して付着した後、180度の方向から引っ張って剥離する方法にて接着力を測定し、測定された値を残留接着力とした。
【0055】
−基礎接着力:残留接着力の場合と同様な粘着テープ(No.31B)を使用するが、前記粘着テープを金属板に圧着して付着した後、180度の方向から引っ張る方法にて接着力を測定し、このときの測定された値を基礎接着力とした。
【0056】
前記測定された残留接着力と基礎接着力を次の式によって残留接着率(%)を計算し、その結果を下表表1に示した。
【0057】
残留接着率(%)=(残留接着力/基礎接着力)×100
表1に示すように、本発明の実施例の場合、静電気防止層の形成により、従来の一般的な離型フィルムである比較例1に比べて、表面抵抗が極めて低く、優れた静電気防止性能を有することが分かる。また、離型力及び残留接着率の離型特性の場合においても、従来の一般の離型フィルム製品である比較例1と等しい水準であって、静電気防止層の形成による離型特性の低下がないことが分かる。しかし、比較例2ないし比較例4のように、静電気防止性能を与えるために離型層に静電気防止剤を含有させた場合、その含量に比例して離型特性(離型力及び残留接着率)が顕著に低下することが分かる。さらに、比較例2の場合のように含量を小さくした場合には、静電気防止性能も微弱であることが分かる。
【0058】
一方、静電気防止層を形成するに際し、バインダーと静電気防止剤の含量による表面抵抗及び層間接着力(剥離強度)を調べるために、次のように実施した。
【0059】
[実施例4ないし9]
前記実施例2と同様に実施するが、静電気防止層のバインダーと静電気防止剤の含量が異なるようにして実施した。具体的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとシリコーン離型層との間に静電気防止層を形成し、図2に示すような3層構造を有するようにしたが、静電気防止層を構成する静電気防止組成物の組成に関し、バインダー(アクリル樹脂)と静電気防止剤(ポリエチレンジオキシチオフェン、PEDOT)の含量を下記表2のように異なるようにした。
【0060】
【表2】

【0061】
表2において、バインダーと静電気防止剤の含量は、組成物全100重量部中の各重量部であり、残部はアルコールと水である(アルコールと水の重量比は1:1である)。
【0062】
また、前記各実施例(4ないし9)に従い製造された離型フィルム試片に対し、前記のような方法にて表面抵抗を測定し、その結果を表2に示した。
【0063】
前記表2に示したように、バインダー(アクリル樹脂)の含量が高いほど、相対的に静電気防止剤(PEDOT)の含量が低くなり、静電気防止性能が劣化することが分かる。また、シリコーン離型層と静電気防止層との層間接着力(剥離強度)を測定してみた結果、 バインダー(アクリル樹脂)の含量に比例して層間接着力(剥離強度)が増加することが分かった。
【0064】
このとき、前記表2に示したように、バインダーと静電気防止剤の重量比が5〜25:1〜30の場合に約109Ω/cm2以下の表面抵抗を有することが分かり、特にバインダーと静電気防止剤の重量比が10〜20:5〜20の場合には、108Ω/cm2以下、好ましくは、105Ω/cm2以下の表面抵抗であって、優れた静電気防止性能を有することが分かった。そして、前記含量の範囲、特に10〜20:5〜20の重量比では、層間接着力(剥離強度)も極めて優れていることが分かった。
【0065】
したがって、以上のことから確認できるように、本発明の具現例のように別体の層として静電気防止層を含む場合、離型力及び残留接着率などの離型特性が良好であり、且つ優れた静電気防止性能を有することが分かる。また、静電気防止層の接着のためにバインダーを使用し、バインダーと静電気防止剤の含量が、好ましくは、5〜25:1〜30、より好ましくは、10〜20:5〜20の重量比の組成を有するようにした場合、優れた静電気防止性能を有し且つ静電気防止層と離型層(及び基材フィルム)との間の良好な層間接着力が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0066】
10 基材フィルム
20 離型層
30 静電気防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム及び離型層を含む離型フィルムであって、
前記離型フィルムは、バインダーと静電気防止剤を含有した静電気防止層を含む、離型フィルム。
【請求項2】
前記静電気防止層は、バインダー5〜25重量部に対し、静電気防止剤を1〜30重量部含有する、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記静電気防止剤は、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(チエニレンビニレン)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリピロール、及びポリ(p−フェニレンスルフィド)からなる群より選択された1種以上である、請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記静電気防止層は、10nm〜10μmの厚さを有する、請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記離型層は、シリコーン離型層である、請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記離型層は、0.05〜1μmの厚さを有する、請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記静電気防止層は、基材フィルムの片面または両面に形成され、前記離型層は、前記静電気防止層上に形成されるか、または前記静電気防止層が片面に形成された基材フィルムの片面と反対側面に形成される、請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項8】
基材フィルム及び離型層を含む離型フィルムの製造方法であって、
基材フィルムの片面または両面に、バインダーと静電気防止剤を含有した静電気防止組成物をコーティングして静電気防止層を形成するステップを含む、離型フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記静電気防止組成物は、組成物全100重量部に対し、バインダー5〜25重量部、静電気防止剤1〜30重量部、アルコール5〜30重量部、及び水10〜50重量部を含有する、請求項8に記載の離型フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−140008(P2012−140008A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286501(P2011−286501)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(504466616)ヨウル チョン ケミカル カンパニー, リミテッド (16)
【Fターム(参考)】