静電気除去装置付きメガネ
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、メガネに組み込んだ静電気除去装置内で内部放電を行い、かつ70V程度の静電気帯電にも対応できる除電を可能とする静電気除去装置付きメガネを開発することである。
【解決手段】 人体に帯電した静電気の除去において、サージアブソーバ、バリスタ、放電管などの静電気を熱や光に変える素子からなる静電気除去回路を組み込み、該回路の入力端子に導電性物質を用い、メガネフレームのテンプル、モダン、パッドなどの内側に前記入力端子を人体に接するように設置し、該回路の出力端子をテンプルの金属芯やコイル状の金属あるいは導電性繊維にして、人体に接しないように取り付けたことを特徴として備えた静電気除去装置付きメガネとする。
【解決手段】 人体に帯電した静電気の除去において、サージアブソーバ、バリスタ、放電管などの静電気を熱や光に変える素子からなる静電気除去回路を組み込み、該回路の入力端子に導電性物質を用い、メガネフレームのテンプル、モダン、パッドなどの内側に前記入力端子を人体に接するように設置し、該回路の出力端子をテンプルの金属芯やコイル状の金属あるいは導電性繊維にして、人体に接しないように取り付けたことを特徴として備えた静電気除去装置付きメガネとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メガネフレームに静電気除去装置を組み込み、メガネを装着しているだけで自然に静電気が除去でき、人体からの放電時の痛み防止や放電による引火・爆発、ICチップの破損、電子回路のノイズ発生等の静電気被害を防止することを目的とした静電気除去装置付きメガネに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、セルフサービスのガソリンスタンドで客が自動給油するときに、静電気が気化したガソリンに引火するという事故が増えている。給油前に静電気除去装置に触れて静電気を除去する必要があるが、多くはその防止作業を忘れたことによって起きている。なかには静電気除去装置に触れた後、忘れ物を取りに車に戻って座席に触れ、再び自動給油を始めようとしたときに引火したという例もある。この例では、静電気が帯電した座席から人体に移っている。
【0003】
化学繊維は衣類をはじめ、様々な所で使用されている。物にもよるが、一般に化学繊維は、自然繊維(例えば木綿)に比べて静電気が発生しやすい。夏場のように湿度が高いときは静電気が発生しても大気中に自然放電され、静電気被害はほとんどない。しかし冬場のように湿度が低いと大気中に放電しにくく、衣類の摩擦による人体帯電や帯電した物体に触れることによる人体帯電が発生しやすくなっている。例えば摩擦によってナイロンはプラスの電荷が帯電し、テフロン(登録商標)はマイナス電荷が帯電する。
【0004】
図1の(1)に示すようにいびつな物体が帯電したとき、尖った部分は幅の広い部分に比べて静電気が多く集まり、電界が強くなる。このために電気量が増加すると、尖った部分で放電が起こり、周りの空気をイオン化する。これがコロナ放電である。放電を起こすと、物体の電気量は減少し、放電が止まる。このような状況下、帯電した物質にアースした金属フレームを近づけると、金属フレームの表面に物体の電荷とは異種の電気が発生する。(2)に示すように金属フレームを近づけると、さらに多くの電荷が先端部に集まり、より放電がしやすくなる。コロナ放電が起こると、イオン化した空気が金属フレームの異種極の電荷と結び付き、中和される。放電が起きると、放電した電気量分が物体から放出されたことになるから、物体の総電気量が減少することになる。このようなメカニズムで除電を行う装置が自己放電式除電器である。
【0005】
乾燥した日、ドアノブや自動車のドアに指を近づけたときに放電が起き、ショックを感じるのも、コロナ放電が生じているためである。とくに指などの尖った部分は放電が起きやすい。電圧が小さければ電界も小さいから、放電は起こらず、ドアノブに触れた時点で人体の電荷がドアノブに移り、人体から除電されることになる。人体帯電電圧と人体に感じる度合いは以下に示すような関係にある。
1kV以下 … まったく感じない
2kV … 微かな放電を、指の外側に感じる
3kV … 針で刺されたような痛みを感じる
5kV … 掌、前腕までに、電撃と痛みを感じる
10kV … 手全体に電撃と痛みを感じる
なお、kVは1000ボルト(キロボルト)を表す。ドアノブや自動車のドアの金属部分に触れた際の電気ショックは2kV〜3kVで起きていると言われている(静電気の場合、電圧は高くても電流は小さいから一般に感電死することはない)。半導体の劣化や破損は数100V以下でも起きる。
【0006】
コロナ放電を利用した除電として放電索(スタティック・ディスチャージャ:static discharger)がある。これは静電気の電荷を空中に放電する装置で、導体の先端部から放電を行うものである。例えば飛行機の場合、一般に直径数ミリメートル、長さ10数センチ程度の棒状で、抵抗値が比較的大きなタイプ(高抵抗タイプ)と比較的小さなタイプ(低抵抗タイプ)がある。前者は大型機、後者は小型機で使用されている。放電索の先端部は尖っていて、放電しやすくしている。
【0007】
人体の帯電防止に導電性繊維でできた糸が使われることがある。導電性繊維は電気の流れやすい金属やカーボンなどの物質を混入した特殊な糸でできていて、金属のように電気を通すために、半導体や揮発性の高い薬品を扱う工場などの作業服に使われている。またスカート、ストッキング、ワンピースなどの衣類などに織り込んだ製品もある。これらの製品は、導電性物質が静電気を起こしにくいという性質を利用している。仮に人体が帯電しても、導電性繊維を通して低電圧のうちに外部に放出することができる。
【0008】
アースすることによって除電できるが、通常の生活の中で意識的に常時アースすることは難しい。そのためにアースなしに除電するために、様々な工夫がなされている。特許文献1の『静電気除去装置』では、静電気帯電体を接触させ、一対の導電体片を絶縁物を介して固定し、前記一対の導電体片間に、バリスター、放電管、エアーギャップを、単独、或いは組み合わせによって導電接続させ、回路内で静電気を放電、吸収させることで、静電気を除去している。電子機器などに該装置を装着することで機器の電子回路のノイズ防止や破損防止を行っている。また携帯電話機に装着することで人体の静電気除去を可能にしている。放電はバリスタ素子内部での放電であるために、外部への影響がないというのが、該発明の特徴となっている。
【0009】
特許文献2の『静電気帯電防止装置』では、発生する静電気を電池に放電する方法を取っている。また電池、トランジスタ、ダイオードおよび静電気帯電体とからなる閉回路を作成し、低電圧で静電気を放電させ、静電気の高圧化を防いでいる。起電力を有する電池を用いているという点で、特許文献1の静電気除去装置と大きく異なる。
【0010】
メガネに施した静電気帯電防止策としては、特許文献3の『除電装置』がある。この方法では、導電性物質からなる繊維状の静電気中和部材をテンプルに取り付け、アースすることなく自己放電によって除電を行う。基本的には導電性繊維による衣類と同じ原理による除電である。
【0011】
人体静電気の除電を目的とした製品としては、静電気除去リング、静電気除去キーホルダー、携帯電話用光子静電気除去ストライプなどがある。これらの製品は、導電性繊維による空気中放電タイプや、放電管タイプなどが多い。中にはイオン発生器でイオンを発生させたり、大気中のイオンを集めて、帯電した静電気を除去するタイプのものもある。
【0012】
なお、サージアブソーバ(サージ吸収素子)はマイクロギャップを有する放電タイプの素子である。例えば、電極(両端子:導体)間に絶縁体(芯となるもの)を挟み、絶縁体の表面を導電性被膜で被い、導電性被膜に螺旋形の溝(ヘリカルギャップ)を彫り、また電極方向に平行に何本かの溝(リニアギャップ)を彫ってマイクロギャップを作ったものである。ヘリカルギャップとリニアギャップの交差する部分で導体が切れているために、通常は絶縁体として働く。しかし、ある電圧を超えるとギャップ間で放電が起きて電流が流れる。交差する部分を多くすれば多くするほど、放電開始電圧を高くすることができる。端子の内部に特殊ガスを封じ込めてマイクロギャップを形成したサージアブソーバもある。ヘリカルギャップとリニアギャップを用いたものよりも、後者の方が構造的には単純であり、放電開始電圧(動作電圧)の制御が容易である。
【0013】
バリスタはある電圧を超えると急激に抵抗値が下がり、電流が流れる特性を持つ素子である。この特性によって、サージ電圧を一定に保つことができる。この特性を持つ素材として、希土類添加酸化亜鉛系の材料が用いられている。サージ電圧を制御することができることから、バリスタもサージアブソーバの一種として位置づけられている。
【特許文献1】特開2004−047475号公報
【特許文献2】特開平8−180996号公報
【特許文献3】特開平9−260091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
人体には6kV程度の静電気が帯電する。この電圧になると、放電による電気ショックだけでなく、ICチップや半導体などの電子回路の破損の原因となる。また静電気の放電によるノイズの発生は、OA機器、コンピュータ、電子機器のエラーや誤作動の原因となる。また化学工場、製薬工場、ガソリンスタンドなどの現場で、静電気放電で発生する火花により揮発性ガス・有機溶剤への着火や粉体爆発などから火災の原因ともなる。このようなことから、静電気除電防止対策が盛んになっている。
【0015】
導体による大気中への自然放電は最も簡単な除電方法であり、高電圧の静電気の場合に有効である。しかし、自然放電による他への被害の危険性があり、また低電圧に対しては有効な方法とは言えない。しかも、数100V以下の低電圧の静電気でも半導体を劣化させたり、破損させることがある。特許文献3の『除電装置』で提唱されている、フレームに導電性物質を組み込んだメガネの場合には、導電性物質を介して大気中に自然放電させるものであり、放電による揮発性ガスや粉体への着火の原因を防ぐことはできない。
【0016】
そこで本発明が解決しようとする課題は、メガネに組み込んだ静電気除去装置内で内部放電を行い、かつ70V程度の静電気帯電にも対応できる除電を可能とする静電気除去装置付きメガネを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の発明が解決しようとする課題を解決するために、放電タイプのサージアブソーバ、バリスタ、放電管を用いて除電を行う。前記の素子を単独または組み合わせて電子回路として組み立て、絶縁体のケースで被う。電子回路には入力端子と出力端子を設け、入力端子側は導線などの導体を介して導電性物質に接続させ、かつ該導電性物質が人体に触れるようにメガネに設置する。例えば、テンプルのモダン部分の耳に掛ける部分や、パッドの内側(鼻に当たる部分)に設置する。一方、出力端子側は導体からなるコイルや導電性繊維に接続させ、放電用アンテナとする。また金属フレームを使用しているときは、メガネの金属フレームに出力端子を接続させる方法が可能である。ただし、放電用アンテナは人体に触れない位置に設置しなければならない。以上が請求項1の静電気除去装置付きメガネである。
【0018】
請求項2は、請求項1に記載の静電気除去装置付きメガネの電子回路において、サージアブソーバ、バリスタ、放電管、コンデンサ等のうち、作動電圧の異なる二つ以上の素子を並列回路として構成することを特徴としたものである。サージアブソーバやバリスタもコンデンサの一種として働くから、これらの素子を並列回路にすることによって、1個の回路で大きな容量のコンデンサとして利用できる。しかも、異なる作動電圧に対応した素子を使うことによって、幅広い電圧に対応できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明ではメガネに静電気除去装置を組み込んでいる。このため、メガネを掛けているだけで、体に帯電している静電気を自然に除去できる。しかも、静電気の放電吸収をメガネ内の静電気除去装置で行っているために、外部での火花放電を制御できる。従って、本発明を用いることによって得られる効果は以下のようなものである。
【0020】
1)メガネを掛けているだけで、気付かないうちに除電が行える。このため、冬場の乾燥時期に頻繁に起きる静電気の放電に伴う電気ショックなどの不快感を回避できる。
2)イオンによる静電気除去装置のように電源を必要としないために、小型化が可能であり、安価で軽量なメガネとすることができる。
3)放電吸収による静電気除去装置をすべてメガネフレーム内に封入することも可能であり、従来のメガネと同じ形態で製品を加工できる。また、装置内での放電であるために、ガソリンなどの引火性化学物質への引火の危険性を取り除くことができる。また電子回路の破損・誤作動・ノイズの混入等の防止にもなっている。
4)コンデンサ、サージアブソーバ、バリスタ、放電管等の素子を並列回路につなぎ、かつ作動電圧(放電開始電圧)の異なる素子を用いることによって、小さな電圧から大きな電圧まで対応が迅速に行える。とくに70V程度でも放電作動するサージアブソーバを用いることによって、低電圧のサージに対しても対応できる。
5)サージアブソーバやバリスタは、作動電圧以下ではコンデンサとして働くから、コンデンサや該素子を並列につなぐことによって高い電気容量のコンデンサとなり、大きな電気量を同時に蓄えられる。ただし、作動電圧を超えた素子から放電が開始され、静電気除去に関与していく。このため、素子に無理がかからず、素子を破損することなく、繰り返し安定して該装置が利用できる。すなわち、寿命の長い回路とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を図を用いて説明する。まず。本発明で用いる素子は、サージアブソーバ、バリスタ、放電管である。先にも述べたように、バリスタも放電管も、ある意味ではサージアブソーバである。サージとは「短時間に一時的に電圧が上昇すること」を意味し、サージアブソーバは「サージを吸収するもの」ということになる。本発明で扱っている電圧を上げるサージとは、すなわち静電気である。本発明では、それを放電・吸収することが目的である。静電気は大地のように大きな物体に流すことができるが、乾燥した大気や絶縁体の上では帯電した物体に留まり続ける。静電気に帯電した状態でドアノブなどに触れると、触れる瞬間に放電が起こり、体に電気ショックが伝わる。これを避けるために、静電気によって生じる電圧を引き下げる素子がサージアブソーバである。背景技術でも触れたように、いくつかのタイプはあるが、本発明では図2で示すようなマイクロギャップ放電タイプのものを使用する。サージアブソーバ1の基本構造は、絶縁体であるガラスケース101の中に導体でできた電極103があり、両電極間には隙間があり、その隙間に特殊ガス102が詰められている。この隙間がマイクロギャップ102である。すなわち、基本構造と機能はコンデンサと同じものである。電気容量を超える強い電圧が掛かると両電極間で放電が起こり、放電後、再び電圧が下がる。この放電を開始するときの電圧を「作動電圧」または「耐電圧」という。
【0022】
図3は、サージアブソーバを使った回路の一例である。1はサージアブソーバ、2はコンデンサ、Rは抵抗である。それぞれの電気容量をC1、C2とし、電気抵抗をRとすると、合成電気容量Cは
C=C1+C2
となり、コンデンサが充電するまでの時間Tは
T=kRC (kは定数)
である。一方、電圧は図4のように上昇する。図4のV0は入力側iから受ける電圧である。ところが、電圧V0がサージアブソーバ1の作動電圧Vmax以上であるとすると、図5のようにV0に達する前に放電が開始する。このときの放電周期T´がkRC1に比例すると予測される。充電までの電圧上昇がカーブを描くように回路を組むことによって、直接高電圧の素子へ加えられることが防止でき、素子の破損を防いでいる。
【0023】
図6は、サージアブソーバとコンデンサを絶縁体のケースに納めたときの構成と寸法例を示している。抵抗器および配線は省略してある。静電気除去装置9は絶縁体ケースに納められている。端子接続パターン部901(入力端子)、902(出力端子)は導体で、前者は体に触れる側、後者はアンテナや導電性繊維に接続する側である。図6の装置は、回路を7.0×4.0×0.8mmの長方形のケースに納めた例である。この例では、サージアブソーバ1が長さ3.4mm、半径1.5mmの円筒形のものを使用し、コンデンサ2は1.6×0.8×0.5mmのものを使用している。また図7はL字形に曲げて長さを詰めた例である。どのようにメガネにセットするかは後で触れるとして、素子と回路についてもう少し説明する。
【0024】
バリスタは低電圧では高い抵抗値を持ち、作動電圧以上の電圧がかかると抵抗値が下がって電流が流れるという特性を持っている。この作動電圧をバリスタ電圧と呼び、バリスタ電圧に達すると一気に電流が流れ、図8のような形で電圧を下げて一定にする。バリスタには希土類添加酸化亜鉛系などの素材が使われ、バリスタ電圧以下ではバリスタは高い抵抗値を持った素材として働くため、バリスタ電圧以下では一種のコンデンサとして働く。ちなみにコンデンサの場合には、図9のように不規則であり、電圧を下げる反応が遅い。そこに、バリスタを使う意味がある。なおバリスタに電流が流れるとき、抵抗器に電流が流れる場合と同じなので、発熱する。すなわち、電気エネルギーが熱エネルギーに変換される。
【0025】
一方、ネオン管(ネオンランプ)のような放電管は電気エネルギーを光に換えるものである。放電管はある一定以上の電圧になると、放電が始まり、光を発する。従って、放電管もサージ電圧を下げることができる。このようなことから、バリスタや放電管もサージアブソーバの一種である。ただし本発明では便宜上、サージアブソーバとバリスタ、放電管を区別している。とくに本発明で扱っているサージアブソーバと放電管はスイッチングタイプと呼ばれるもので、いったん電流が流れる(放電する)と、急激に電圧を下げるタイプである。ただし、作動電圧は安定していない。これに対してバリスタはクランピングタイプと呼ばれるもので、一定の作動電圧(バリスタ電圧)を保つことが特徴的である。基本回路として、図3のサージアブソーバ1をバリスタや放電管に代えた回路も使える。ただし、それぞれの特性があるために、一概にこれとは決められないところがある。そこで、それぞれの特性を利用した回路として、図10のようにそれぞれ特性の違う素子を並列につないだものもできる。1aは作動電圧70Vのサージアブソーバ、1bは作動電圧100Vのサージアブソーバ、1cは作動電圧300Vのサージアブソーバ、4はバリスタ、5は放電管(ネオン管)である。帯電した物質に触って高電圧が瞬間的に加えられた場合など、短時間では70Vサージアブソーバでは処理しきれないとき、100Vサージアブソーバ、300Vサージアブソーバ、バリスタなどが同時作動して短時間に静電気の吸収・放電を行うことができる。
【0026】
図11は、メタルフレームのメガネである。メタルフレームメガネ8の場合、通常、パッド803とモダン806は肌に触れる部分であり、肌への当たりを和らげるためにプラスチックなどの素材が使われている。プラスチックは絶縁体でもあり、また本発明の静電気除去装置を埋め込む所として適している。またリムレスメガネ(リムは図の802の部分)の場合にも、パッドとモダンは通常図11と同じように使われる。プラスチックフレームの場合にはモダンは使われないが、モダン部分はテンプルの一部であり、プラスチックでできている。メガネを掛けたとき、基本的に肌に当たる所はモダンとパッド部分であり、他は肌から離れている。ただし、パッドレスやパッドが小さい場合は、ブリッジ804、パッド803およびその周辺が肌に触れることもある。またサイズが合わないメガネの場合、モダンが短くてテンプル805の一部が肌に触れることもある。メタルフレームのメガネで、メタル部分をアンテナとして使うときには、設計上注意が必要になる。具体例を見ていくことにしよう。
【0027】
図12は、モダン806に静電気除去装置9を取り付けた例である。このとき、出力端子oはメタル(導電)性のテンプル805に接続しており、入力端子iはプラスチック性のモダン806の内側すなわち肌に触れるように取り付けられている。これによって、メタルフレーム全体がアンテナとして働く。アンテナ部分は大きいほど安定した働きをする。従って、メタルフレームメガネには適した形態である。ただし先にも触れたように、出力側が常時人体に触れている状態になっていると除電効果が得られないので、モダンの長さやパッドの大きさ・取付位置に気を付け、メガネを掛けたときにメタルが肌に触れないようにしておく必要がある。
【0028】
図13はプラスチックフレームのメガネで、テンプルに静電気除去装置を組み込んだ例である。(1)はプラスチック製テンプル810の側面図である。テンプルエンド811に静電気除去装置9が組み込まれている。出力端子oからリード線o1を通して導電性コイルo2に接続してある。このコイルがアンテナの役割をする。一方、入力端子iからリード線i1を通して、接触入力板i2に接続されている。接触入力板は金属や電導性繊維などの導体でできていて、肌に触れる部分になる。図12の入力端子iと同じ働きをするものである。肌に接触する部分が静電気除去装置9と離れて設計されているために、このような構成にしている。接触入力板以外はテンプル内部に埋め込まれている。図13の(2)は(1)図のl線で切断したときのテンプルの断面図である。接触入力板i2はメガネを掛けたときの、耳に触れる部分である。ここから体に帯電した電荷を静電気除去装置9に引き込むことができる。導電性コイルo2(アンテナ)は、静電気除去装置の素子を通過した後の静電気の吸収(中和)・放電を行う部分である。アンテナから静電気を放電する場合にも、アンテナがテンプル内にあり、かつ電気エネルギーの大半は静電気除去装置で消費するから、外部への影響はほとんどない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】静電気の性質を説明するための帯電物質の断面図である。
【図2】マイクロギャップに特殊ガスを封入した放電タイプのサージアブソーバの断面図である。
【図3】サージアブソーバを用いた静電気除去回路の構成図である。
【図4】コンデンサを充電するときの電圧の上昇曲線である。
【図5】サージアブソーバの充電と放電が繰り返されるときの、電圧の時間変化曲線である。
【図6】本発明の静電気除去装置の構成と寸法を説明するための斜視図である。
【図7】本発明の静電気除去装置の構成と寸法を説明するための断面図である。
【図8】バリスタの電圧変化を示す電圧・時間グラフである。
【図9】放電を伴うコンデンサの電圧変化を示す電圧・時間グラフである。
【図10】本発明の静電気除去装置付きメガネの回路図である。
【図11】メタルメガネの名称と構造を説明するための斜視図である。
【図12】本発明の静電気除去装置付きメガネにおいて、モダンに該装置を組み込んだときのメタルフレームメガネのモダン部の断面図である。
【図13】本発明の静電気除去装置付きメガネにおいて、プラスチックフレームメガネのテンプルに該装置を組み込んだときの断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 サージアブソーバ
(特殊ガス封入マイクロギャップ放電タイプ)
1a 作動電圧70Vのサージアブソーバ
1b 作動電圧100Vのサージアブソーバ
1c 作動電圧300Vのサージアブソーバ
101 ガラスケース
102 特殊ガス入りマイクロギャップ
103 電極
2 コンデンサ
4 バリスタ
5 放電管
8 メガネ
801 レンズ
802 リム
803 パッド
804 ブリッジ
805 テンプル
806 モダン
810 プラスチック製テンプル
811 テンプルエンド(テンプル後部)
812 テンプル前部
9 静電気除去装置
901 端子接続パターン部(入力端子i)
902 端子接続パターン部(出力端子o)
i 入力端子
i1 入力端子用リード線
i2 接触入力板
o 出力端子
o1 出力端子用リード線
o2 導電性コイル(アンテナ)
R 抵抗(抵抗器)
【技術分野】
【0001】
本発明は、メガネフレームに静電気除去装置を組み込み、メガネを装着しているだけで自然に静電気が除去でき、人体からの放電時の痛み防止や放電による引火・爆発、ICチップの破損、電子回路のノイズ発生等の静電気被害を防止することを目的とした静電気除去装置付きメガネに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、セルフサービスのガソリンスタンドで客が自動給油するときに、静電気が気化したガソリンに引火するという事故が増えている。給油前に静電気除去装置に触れて静電気を除去する必要があるが、多くはその防止作業を忘れたことによって起きている。なかには静電気除去装置に触れた後、忘れ物を取りに車に戻って座席に触れ、再び自動給油を始めようとしたときに引火したという例もある。この例では、静電気が帯電した座席から人体に移っている。
【0003】
化学繊維は衣類をはじめ、様々な所で使用されている。物にもよるが、一般に化学繊維は、自然繊維(例えば木綿)に比べて静電気が発生しやすい。夏場のように湿度が高いときは静電気が発生しても大気中に自然放電され、静電気被害はほとんどない。しかし冬場のように湿度が低いと大気中に放電しにくく、衣類の摩擦による人体帯電や帯電した物体に触れることによる人体帯電が発生しやすくなっている。例えば摩擦によってナイロンはプラスの電荷が帯電し、テフロン(登録商標)はマイナス電荷が帯電する。
【0004】
図1の(1)に示すようにいびつな物体が帯電したとき、尖った部分は幅の広い部分に比べて静電気が多く集まり、電界が強くなる。このために電気量が増加すると、尖った部分で放電が起こり、周りの空気をイオン化する。これがコロナ放電である。放電を起こすと、物体の電気量は減少し、放電が止まる。このような状況下、帯電した物質にアースした金属フレームを近づけると、金属フレームの表面に物体の電荷とは異種の電気が発生する。(2)に示すように金属フレームを近づけると、さらに多くの電荷が先端部に集まり、より放電がしやすくなる。コロナ放電が起こると、イオン化した空気が金属フレームの異種極の電荷と結び付き、中和される。放電が起きると、放電した電気量分が物体から放出されたことになるから、物体の総電気量が減少することになる。このようなメカニズムで除電を行う装置が自己放電式除電器である。
【0005】
乾燥した日、ドアノブや自動車のドアに指を近づけたときに放電が起き、ショックを感じるのも、コロナ放電が生じているためである。とくに指などの尖った部分は放電が起きやすい。電圧が小さければ電界も小さいから、放電は起こらず、ドアノブに触れた時点で人体の電荷がドアノブに移り、人体から除電されることになる。人体帯電電圧と人体に感じる度合いは以下に示すような関係にある。
1kV以下 … まったく感じない
2kV … 微かな放電を、指の外側に感じる
3kV … 針で刺されたような痛みを感じる
5kV … 掌、前腕までに、電撃と痛みを感じる
10kV … 手全体に電撃と痛みを感じる
なお、kVは1000ボルト(キロボルト)を表す。ドアノブや自動車のドアの金属部分に触れた際の電気ショックは2kV〜3kVで起きていると言われている(静電気の場合、電圧は高くても電流は小さいから一般に感電死することはない)。半導体の劣化や破損は数100V以下でも起きる。
【0006】
コロナ放電を利用した除電として放電索(スタティック・ディスチャージャ:static discharger)がある。これは静電気の電荷を空中に放電する装置で、導体の先端部から放電を行うものである。例えば飛行機の場合、一般に直径数ミリメートル、長さ10数センチ程度の棒状で、抵抗値が比較的大きなタイプ(高抵抗タイプ)と比較的小さなタイプ(低抵抗タイプ)がある。前者は大型機、後者は小型機で使用されている。放電索の先端部は尖っていて、放電しやすくしている。
【0007】
人体の帯電防止に導電性繊維でできた糸が使われることがある。導電性繊維は電気の流れやすい金属やカーボンなどの物質を混入した特殊な糸でできていて、金属のように電気を通すために、半導体や揮発性の高い薬品を扱う工場などの作業服に使われている。またスカート、ストッキング、ワンピースなどの衣類などに織り込んだ製品もある。これらの製品は、導電性物質が静電気を起こしにくいという性質を利用している。仮に人体が帯電しても、導電性繊維を通して低電圧のうちに外部に放出することができる。
【0008】
アースすることによって除電できるが、通常の生活の中で意識的に常時アースすることは難しい。そのためにアースなしに除電するために、様々な工夫がなされている。特許文献1の『静電気除去装置』では、静電気帯電体を接触させ、一対の導電体片を絶縁物を介して固定し、前記一対の導電体片間に、バリスター、放電管、エアーギャップを、単独、或いは組み合わせによって導電接続させ、回路内で静電気を放電、吸収させることで、静電気を除去している。電子機器などに該装置を装着することで機器の電子回路のノイズ防止や破損防止を行っている。また携帯電話機に装着することで人体の静電気除去を可能にしている。放電はバリスタ素子内部での放電であるために、外部への影響がないというのが、該発明の特徴となっている。
【0009】
特許文献2の『静電気帯電防止装置』では、発生する静電気を電池に放電する方法を取っている。また電池、トランジスタ、ダイオードおよび静電気帯電体とからなる閉回路を作成し、低電圧で静電気を放電させ、静電気の高圧化を防いでいる。起電力を有する電池を用いているという点で、特許文献1の静電気除去装置と大きく異なる。
【0010】
メガネに施した静電気帯電防止策としては、特許文献3の『除電装置』がある。この方法では、導電性物質からなる繊維状の静電気中和部材をテンプルに取り付け、アースすることなく自己放電によって除電を行う。基本的には導電性繊維による衣類と同じ原理による除電である。
【0011】
人体静電気の除電を目的とした製品としては、静電気除去リング、静電気除去キーホルダー、携帯電話用光子静電気除去ストライプなどがある。これらの製品は、導電性繊維による空気中放電タイプや、放電管タイプなどが多い。中にはイオン発生器でイオンを発生させたり、大気中のイオンを集めて、帯電した静電気を除去するタイプのものもある。
【0012】
なお、サージアブソーバ(サージ吸収素子)はマイクロギャップを有する放電タイプの素子である。例えば、電極(両端子:導体)間に絶縁体(芯となるもの)を挟み、絶縁体の表面を導電性被膜で被い、導電性被膜に螺旋形の溝(ヘリカルギャップ)を彫り、また電極方向に平行に何本かの溝(リニアギャップ)を彫ってマイクロギャップを作ったものである。ヘリカルギャップとリニアギャップの交差する部分で導体が切れているために、通常は絶縁体として働く。しかし、ある電圧を超えるとギャップ間で放電が起きて電流が流れる。交差する部分を多くすれば多くするほど、放電開始電圧を高くすることができる。端子の内部に特殊ガスを封じ込めてマイクロギャップを形成したサージアブソーバもある。ヘリカルギャップとリニアギャップを用いたものよりも、後者の方が構造的には単純であり、放電開始電圧(動作電圧)の制御が容易である。
【0013】
バリスタはある電圧を超えると急激に抵抗値が下がり、電流が流れる特性を持つ素子である。この特性によって、サージ電圧を一定に保つことができる。この特性を持つ素材として、希土類添加酸化亜鉛系の材料が用いられている。サージ電圧を制御することができることから、バリスタもサージアブソーバの一種として位置づけられている。
【特許文献1】特開2004−047475号公報
【特許文献2】特開平8−180996号公報
【特許文献3】特開平9−260091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
人体には6kV程度の静電気が帯電する。この電圧になると、放電による電気ショックだけでなく、ICチップや半導体などの電子回路の破損の原因となる。また静電気の放電によるノイズの発生は、OA機器、コンピュータ、電子機器のエラーや誤作動の原因となる。また化学工場、製薬工場、ガソリンスタンドなどの現場で、静電気放電で発生する火花により揮発性ガス・有機溶剤への着火や粉体爆発などから火災の原因ともなる。このようなことから、静電気除電防止対策が盛んになっている。
【0015】
導体による大気中への自然放電は最も簡単な除電方法であり、高電圧の静電気の場合に有効である。しかし、自然放電による他への被害の危険性があり、また低電圧に対しては有効な方法とは言えない。しかも、数100V以下の低電圧の静電気でも半導体を劣化させたり、破損させることがある。特許文献3の『除電装置』で提唱されている、フレームに導電性物質を組み込んだメガネの場合には、導電性物質を介して大気中に自然放電させるものであり、放電による揮発性ガスや粉体への着火の原因を防ぐことはできない。
【0016】
そこで本発明が解決しようとする課題は、メガネに組み込んだ静電気除去装置内で内部放電を行い、かつ70V程度の静電気帯電にも対応できる除電を可能とする静電気除去装置付きメガネを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の発明が解決しようとする課題を解決するために、放電タイプのサージアブソーバ、バリスタ、放電管を用いて除電を行う。前記の素子を単独または組み合わせて電子回路として組み立て、絶縁体のケースで被う。電子回路には入力端子と出力端子を設け、入力端子側は導線などの導体を介して導電性物質に接続させ、かつ該導電性物質が人体に触れるようにメガネに設置する。例えば、テンプルのモダン部分の耳に掛ける部分や、パッドの内側(鼻に当たる部分)に設置する。一方、出力端子側は導体からなるコイルや導電性繊維に接続させ、放電用アンテナとする。また金属フレームを使用しているときは、メガネの金属フレームに出力端子を接続させる方法が可能である。ただし、放電用アンテナは人体に触れない位置に設置しなければならない。以上が請求項1の静電気除去装置付きメガネである。
【0018】
請求項2は、請求項1に記載の静電気除去装置付きメガネの電子回路において、サージアブソーバ、バリスタ、放電管、コンデンサ等のうち、作動電圧の異なる二つ以上の素子を並列回路として構成することを特徴としたものである。サージアブソーバやバリスタもコンデンサの一種として働くから、これらの素子を並列回路にすることによって、1個の回路で大きな容量のコンデンサとして利用できる。しかも、異なる作動電圧に対応した素子を使うことによって、幅広い電圧に対応できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明ではメガネに静電気除去装置を組み込んでいる。このため、メガネを掛けているだけで、体に帯電している静電気を自然に除去できる。しかも、静電気の放電吸収をメガネ内の静電気除去装置で行っているために、外部での火花放電を制御できる。従って、本発明を用いることによって得られる効果は以下のようなものである。
【0020】
1)メガネを掛けているだけで、気付かないうちに除電が行える。このため、冬場の乾燥時期に頻繁に起きる静電気の放電に伴う電気ショックなどの不快感を回避できる。
2)イオンによる静電気除去装置のように電源を必要としないために、小型化が可能であり、安価で軽量なメガネとすることができる。
3)放電吸収による静電気除去装置をすべてメガネフレーム内に封入することも可能であり、従来のメガネと同じ形態で製品を加工できる。また、装置内での放電であるために、ガソリンなどの引火性化学物質への引火の危険性を取り除くことができる。また電子回路の破損・誤作動・ノイズの混入等の防止にもなっている。
4)コンデンサ、サージアブソーバ、バリスタ、放電管等の素子を並列回路につなぎ、かつ作動電圧(放電開始電圧)の異なる素子を用いることによって、小さな電圧から大きな電圧まで対応が迅速に行える。とくに70V程度でも放電作動するサージアブソーバを用いることによって、低電圧のサージに対しても対応できる。
5)サージアブソーバやバリスタは、作動電圧以下ではコンデンサとして働くから、コンデンサや該素子を並列につなぐことによって高い電気容量のコンデンサとなり、大きな電気量を同時に蓄えられる。ただし、作動電圧を超えた素子から放電が開始され、静電気除去に関与していく。このため、素子に無理がかからず、素子を破損することなく、繰り返し安定して該装置が利用できる。すなわち、寿命の長い回路とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を図を用いて説明する。まず。本発明で用いる素子は、サージアブソーバ、バリスタ、放電管である。先にも述べたように、バリスタも放電管も、ある意味ではサージアブソーバである。サージとは「短時間に一時的に電圧が上昇すること」を意味し、サージアブソーバは「サージを吸収するもの」ということになる。本発明で扱っている電圧を上げるサージとは、すなわち静電気である。本発明では、それを放電・吸収することが目的である。静電気は大地のように大きな物体に流すことができるが、乾燥した大気や絶縁体の上では帯電した物体に留まり続ける。静電気に帯電した状態でドアノブなどに触れると、触れる瞬間に放電が起こり、体に電気ショックが伝わる。これを避けるために、静電気によって生じる電圧を引き下げる素子がサージアブソーバである。背景技術でも触れたように、いくつかのタイプはあるが、本発明では図2で示すようなマイクロギャップ放電タイプのものを使用する。サージアブソーバ1の基本構造は、絶縁体であるガラスケース101の中に導体でできた電極103があり、両電極間には隙間があり、その隙間に特殊ガス102が詰められている。この隙間がマイクロギャップ102である。すなわち、基本構造と機能はコンデンサと同じものである。電気容量を超える強い電圧が掛かると両電極間で放電が起こり、放電後、再び電圧が下がる。この放電を開始するときの電圧を「作動電圧」または「耐電圧」という。
【0022】
図3は、サージアブソーバを使った回路の一例である。1はサージアブソーバ、2はコンデンサ、Rは抵抗である。それぞれの電気容量をC1、C2とし、電気抵抗をRとすると、合成電気容量Cは
C=C1+C2
となり、コンデンサが充電するまでの時間Tは
T=kRC (kは定数)
である。一方、電圧は図4のように上昇する。図4のV0は入力側iから受ける電圧である。ところが、電圧V0がサージアブソーバ1の作動電圧Vmax以上であるとすると、図5のようにV0に達する前に放電が開始する。このときの放電周期T´がkRC1に比例すると予測される。充電までの電圧上昇がカーブを描くように回路を組むことによって、直接高電圧の素子へ加えられることが防止でき、素子の破損を防いでいる。
【0023】
図6は、サージアブソーバとコンデンサを絶縁体のケースに納めたときの構成と寸法例を示している。抵抗器および配線は省略してある。静電気除去装置9は絶縁体ケースに納められている。端子接続パターン部901(入力端子)、902(出力端子)は導体で、前者は体に触れる側、後者はアンテナや導電性繊維に接続する側である。図6の装置は、回路を7.0×4.0×0.8mmの長方形のケースに納めた例である。この例では、サージアブソーバ1が長さ3.4mm、半径1.5mmの円筒形のものを使用し、コンデンサ2は1.6×0.8×0.5mmのものを使用している。また図7はL字形に曲げて長さを詰めた例である。どのようにメガネにセットするかは後で触れるとして、素子と回路についてもう少し説明する。
【0024】
バリスタは低電圧では高い抵抗値を持ち、作動電圧以上の電圧がかかると抵抗値が下がって電流が流れるという特性を持っている。この作動電圧をバリスタ電圧と呼び、バリスタ電圧に達すると一気に電流が流れ、図8のような形で電圧を下げて一定にする。バリスタには希土類添加酸化亜鉛系などの素材が使われ、バリスタ電圧以下ではバリスタは高い抵抗値を持った素材として働くため、バリスタ電圧以下では一種のコンデンサとして働く。ちなみにコンデンサの場合には、図9のように不規則であり、電圧を下げる反応が遅い。そこに、バリスタを使う意味がある。なおバリスタに電流が流れるとき、抵抗器に電流が流れる場合と同じなので、発熱する。すなわち、電気エネルギーが熱エネルギーに変換される。
【0025】
一方、ネオン管(ネオンランプ)のような放電管は電気エネルギーを光に換えるものである。放電管はある一定以上の電圧になると、放電が始まり、光を発する。従って、放電管もサージ電圧を下げることができる。このようなことから、バリスタや放電管もサージアブソーバの一種である。ただし本発明では便宜上、サージアブソーバとバリスタ、放電管を区別している。とくに本発明で扱っているサージアブソーバと放電管はスイッチングタイプと呼ばれるもので、いったん電流が流れる(放電する)と、急激に電圧を下げるタイプである。ただし、作動電圧は安定していない。これに対してバリスタはクランピングタイプと呼ばれるもので、一定の作動電圧(バリスタ電圧)を保つことが特徴的である。基本回路として、図3のサージアブソーバ1をバリスタや放電管に代えた回路も使える。ただし、それぞれの特性があるために、一概にこれとは決められないところがある。そこで、それぞれの特性を利用した回路として、図10のようにそれぞれ特性の違う素子を並列につないだものもできる。1aは作動電圧70Vのサージアブソーバ、1bは作動電圧100Vのサージアブソーバ、1cは作動電圧300Vのサージアブソーバ、4はバリスタ、5は放電管(ネオン管)である。帯電した物質に触って高電圧が瞬間的に加えられた場合など、短時間では70Vサージアブソーバでは処理しきれないとき、100Vサージアブソーバ、300Vサージアブソーバ、バリスタなどが同時作動して短時間に静電気の吸収・放電を行うことができる。
【0026】
図11は、メタルフレームのメガネである。メタルフレームメガネ8の場合、通常、パッド803とモダン806は肌に触れる部分であり、肌への当たりを和らげるためにプラスチックなどの素材が使われている。プラスチックは絶縁体でもあり、また本発明の静電気除去装置を埋め込む所として適している。またリムレスメガネ(リムは図の802の部分)の場合にも、パッドとモダンは通常図11と同じように使われる。プラスチックフレームの場合にはモダンは使われないが、モダン部分はテンプルの一部であり、プラスチックでできている。メガネを掛けたとき、基本的に肌に当たる所はモダンとパッド部分であり、他は肌から離れている。ただし、パッドレスやパッドが小さい場合は、ブリッジ804、パッド803およびその周辺が肌に触れることもある。またサイズが合わないメガネの場合、モダンが短くてテンプル805の一部が肌に触れることもある。メタルフレームのメガネで、メタル部分をアンテナとして使うときには、設計上注意が必要になる。具体例を見ていくことにしよう。
【0027】
図12は、モダン806に静電気除去装置9を取り付けた例である。このとき、出力端子oはメタル(導電)性のテンプル805に接続しており、入力端子iはプラスチック性のモダン806の内側すなわち肌に触れるように取り付けられている。これによって、メタルフレーム全体がアンテナとして働く。アンテナ部分は大きいほど安定した働きをする。従って、メタルフレームメガネには適した形態である。ただし先にも触れたように、出力側が常時人体に触れている状態になっていると除電効果が得られないので、モダンの長さやパッドの大きさ・取付位置に気を付け、メガネを掛けたときにメタルが肌に触れないようにしておく必要がある。
【0028】
図13はプラスチックフレームのメガネで、テンプルに静電気除去装置を組み込んだ例である。(1)はプラスチック製テンプル810の側面図である。テンプルエンド811に静電気除去装置9が組み込まれている。出力端子oからリード線o1を通して導電性コイルo2に接続してある。このコイルがアンテナの役割をする。一方、入力端子iからリード線i1を通して、接触入力板i2に接続されている。接触入力板は金属や電導性繊維などの導体でできていて、肌に触れる部分になる。図12の入力端子iと同じ働きをするものである。肌に接触する部分が静電気除去装置9と離れて設計されているために、このような構成にしている。接触入力板以外はテンプル内部に埋め込まれている。図13の(2)は(1)図のl線で切断したときのテンプルの断面図である。接触入力板i2はメガネを掛けたときの、耳に触れる部分である。ここから体に帯電した電荷を静電気除去装置9に引き込むことができる。導電性コイルo2(アンテナ)は、静電気除去装置の素子を通過した後の静電気の吸収(中和)・放電を行う部分である。アンテナから静電気を放電する場合にも、アンテナがテンプル内にあり、かつ電気エネルギーの大半は静電気除去装置で消費するから、外部への影響はほとんどない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】静電気の性質を説明するための帯電物質の断面図である。
【図2】マイクロギャップに特殊ガスを封入した放電タイプのサージアブソーバの断面図である。
【図3】サージアブソーバを用いた静電気除去回路の構成図である。
【図4】コンデンサを充電するときの電圧の上昇曲線である。
【図5】サージアブソーバの充電と放電が繰り返されるときの、電圧の時間変化曲線である。
【図6】本発明の静電気除去装置の構成と寸法を説明するための斜視図である。
【図7】本発明の静電気除去装置の構成と寸法を説明するための断面図である。
【図8】バリスタの電圧変化を示す電圧・時間グラフである。
【図9】放電を伴うコンデンサの電圧変化を示す電圧・時間グラフである。
【図10】本発明の静電気除去装置付きメガネの回路図である。
【図11】メタルメガネの名称と構造を説明するための斜視図である。
【図12】本発明の静電気除去装置付きメガネにおいて、モダンに該装置を組み込んだときのメタルフレームメガネのモダン部の断面図である。
【図13】本発明の静電気除去装置付きメガネにおいて、プラスチックフレームメガネのテンプルに該装置を組み込んだときの断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 サージアブソーバ
(特殊ガス封入マイクロギャップ放電タイプ)
1a 作動電圧70Vのサージアブソーバ
1b 作動電圧100Vのサージアブソーバ
1c 作動電圧300Vのサージアブソーバ
101 ガラスケース
102 特殊ガス入りマイクロギャップ
103 電極
2 コンデンサ
4 バリスタ
5 放電管
8 メガネ
801 レンズ
802 リム
803 パッド
804 ブリッジ
805 テンプル
806 モダン
810 プラスチック製テンプル
811 テンプルエンド(テンプル後部)
812 テンプル前部
9 静電気除去装置
901 端子接続パターン部(入力端子i)
902 端子接続パターン部(出力端子o)
i 入力端子
i1 入力端子用リード線
i2 接触入力板
o 出力端子
o1 出力端子用リード線
o2 導電性コイル(アンテナ)
R 抵抗(抵抗器)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に帯電した静電気の除去において、サージアブソーバ、バリスタ、放電管などの静電気を熱や光に変える素子からなる静電気除去回路を組み込み、該回路の入力端子に導電性物質を用い、メガネフレームのテンプル、モダン、パッドなどの内側に前記入力端子を人体に接するように設置し、該回路の出力端子をテンプルの金属芯やコイル状の金属あるいは導電性繊維にして、人体に接しないように取り付けたこと
を特徴として備えた静電気除去装置付きメガネ。
【請求項2】
請求項1に記載の静電気除去装置付きメガネにおいて、サージアブソーバ、バリスタ、放電管、コンデンサ等のうち、作動電圧の異なる二つ以上の素子を並列に配置した回路であること
を特徴として備えた請求項1に記載の静電気除去装置付きメガネ。
【請求項1】
人体に帯電した静電気の除去において、サージアブソーバ、バリスタ、放電管などの静電気を熱や光に変える素子からなる静電気除去回路を組み込み、該回路の入力端子に導電性物質を用い、メガネフレームのテンプル、モダン、パッドなどの内側に前記入力端子を人体に接するように設置し、該回路の出力端子をテンプルの金属芯やコイル状の金属あるいは導電性繊維にして、人体に接しないように取り付けたこと
を特徴として備えた静電気除去装置付きメガネ。
【請求項2】
請求項1に記載の静電気除去装置付きメガネにおいて、サージアブソーバ、バリスタ、放電管、コンデンサ等のうち、作動電圧の異なる二つ以上の素子を並列に配置した回路であること
を特徴として備えた請求項1に記載の静電気除去装置付きメガネ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−78021(P2008−78021A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257123(P2006−257123)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000238924)福井めがね工業株式会社 (12)
【出願人】(506087163)タイヨー電子株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000238924)福井めがね工業株式会社 (12)
【出願人】(506087163)タイヨー電子株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]