静電紡糸アセンブリ
電界内において静電紡糸を使用して粘性液体からナノファイバを製造するための紡糸口金が記載されている。紡糸口金が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつそれに沿って軸方向に間隔を設けている1つまたは複数の幅の狭い環状体を含む。環状体は、ディスク、リング、またはコイルとすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ポリマ溶液、ゾル‐ゲル、粒子懸濁液、または溶融液等の粘性液体からナノファイバを製造するための静電紡糸アセンブリ、およびこのアセンブリを使用してナノファイバを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に記載の本発明に対する背景技術の内容は、本発明の理解を容易にすることを意図し、記載されている。しかしながら、ここで認識されるものとするが、この背景技術の内容は、参照されている材料のいずれかが本出願の優先日において公開されていること、周知であること、あるいは共通する一般的な知識の一部であるといった承認でも容認でもない。
【0003】
従来的な静電紡糸システムは、中空針の紡糸口金、紡糸口金を通じてその先へポリマ溶液を供給するためのポンプ、電極の収集器プレート(an electrode collector plate)、および紡糸口金と収集器プレートの間に接続される高電圧電源からなる。ポリマ液が紡糸口金に供給されて高電圧で帯電される。紡糸口金と収集器プレートの間に結果としてもたらされる静電力が、溶液をテイラー・コーン(a Taylor cone)へと引入れる。液体が充分な凝集力を有していれば、液体がジェット(a jet)として引出される。このジェット、外部電界、およびジェット内側の電荷斥力の間における相互作用が、ジェットを撓ませて紡ぎ、したがってより細く引き伸ばす。溶剤の蒸発がジェットを凝固させ、収集器プレート上にランダムに堆積させて不織ナノファイバ・マットを形成させる。
【0004】
しかしながら、各紡糸口金が1ニードル当り毎時300ミリグラムまでのファイバを製造する単一ポリマ・ジェットを生成するに過ぎないことから、この製造システムが提供するファイバ生産性は限定的である。また、小さい針の直径は、結果として高度に集中された電界を紡糸口金表面の近傍にもたらすが、これが高い印加電圧の下におけるコロナ放電の影響を受けやすい。そのため電圧が、概して30kV未満に制限される。この低い動作電圧によってもまた、粗悪なナノファイバとなってしまう。
【0005】
ナノファイバの製造レートは、広い液体表面から静電気的に生成されるナノファイバによって増加することが可能である。たとえば、特許文献1は、ポリマ溶液の容器内に部分的に浸漬される紡糸円筒電極(または『紡糸口金』)を含む電気紡糸デバイスを開示している。対電極は、当該円筒電極から距離を離して配置される。ポリマ溶液は、容器から薄膜として円筒の表面上において、紡糸電極と収集電極の間の電界内に運ばれる。電極間の静電界強度が溶液をテイラー・コーンへと引入れるのに充分となると、表面の特定箇所においてナノファイバが作り出される。結果として得られるナノファイバは、対電極上にランダムに堆積され、不織ナノファイバ・マットを形成する。
【0006】
これらのタイプの大規模電気紡糸構成におけるジェットの形成および結果としてもたらされるファイバの形態(morphology)は、紡糸口金の周囲の電界強度、および電気紡糸ゾーン内の電界強度プロファイルによる影響を高度に受ける。たとえば、円筒状に形作られた電極の長さは、円筒の全表面にわたってジェットの生成に必要な量および臨界電圧に影響を与える。いくつかの電圧においては、ジェットが円筒のエンドにおいてのみ生成される。円筒の長さにわたって製造されるナノファイバの厚さもまた、その長さに沿った電界強度における変動に起因して変動し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/024101号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上記の欠点のうちの1つまたは複数を解決するナノファイバの製造のための静電紡糸デバイス用代替紡糸口金を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、電界内において静電紡糸を使用して粘性液体からナノファイバを製造するための紡糸口金であって、当該紡糸口金は、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている1つまたは複数の幅の狭い環状体を備える。
【0010】
本発明のこの第1の態様による紡糸口金は、1つまたは複数の幅の狭い環状体から形成される。本明細書の内容において、幅の狭い環状体という表現は、概して、幅(または厚さ)と直径の比率が1:3より小さい環状体を言い、好ましくは1:5より小さいものとし、さらに好ましくは1:10より小さいものとする。この狭い幅は、より高い電界を紡糸口金表面の周囲に生成し、円筒等の幅の広い本体と比較したとき、紡糸口金の形状に対する依存度がより低い電界強度プロファイルを電気紡糸ゾーン内に有すると考えられる。これらのタイプの紡糸口金からのジェットの形成および結果としてもたらされるファイバの形態は、既存の円筒タイプの紡糸口金を超える利点を有するはずである。
【0011】
環状体は、任意の適切な構成を有することが可能である。いくつかの実施態様においては、環状体が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている環状ループを備える。これらの環状ループは、離散的な環状リングの形状とすることも可能であり、あるいは軸方向において略一体的に接続されて、らせんコイルを形成することができる。
【0012】
紡糸口金がらせんワイヤ・コイルとなる場合には、電気紡糸中、ナノファイバを形成する液体ジェットを、ワイヤ・ループの湾曲した表面上の特定のエリアにおいて、その表面の静電界強度が溶液をテイラー・コーンへと引入れるに充分な場合に、作り出すことができる。上で示したとおり、コイルのワイヤ・ループは、電界内に幅の狭い環状体を備え、いくつかの実施態様においては、それを、その電界への隣接したループの影響を最小化および/または最適化するべく配置することができる。
【0013】
紡糸口金のために使用される、らせんワイヤ・コイルは、管状、円錐形状、球体状、立方体状、プリズム状、またはこれらの類を含めた多様な構成を有することが可能である。これらの構成のコイルは、ナノファイバ製造のための単一の環状ループを備えることができる。しかしながら、コイルが2つの、好ましくは複数の環状ループを備え、それらの間隔がコイルの中心軸に沿って軸方向に設けられていることが好ましい。複数のループは、単一のループと比較して、複数の液体ジェットを生成するためのより大きなワイヤ表面積を提供する。コイルの環状ループのうちの2つもしくはそれより多くのループの間隔を、好ましくはワイヤの直径より大きい距離によって設けることができる。さらに、またはそれに代えて、コイルの2つもしくはそれより多くの環状ループを接近した間隔で一緒にすることができる。環状ループのそれぞれは、類似するワイヤ直径および/またはループ直径を有してもよく、あるいはそれらの寸法をループの間で変更してもよい。たとえば、いくつかの実施態様においては、環状ループの平均半径が5mmと1000mmとの間となる。いくつかの実施態様においては、コイルの長さが20mmより長く、好ましくは20と6000mmとの間となる。いくつかの実施態様においては、コイルのワイヤの直径が0.5mmと200mmとの間、好ましくは0.7mmと50mmとの間となる。
【0014】
1つの実施態様においては、環状ループが、紡糸口金の中心軸に関して略管状に成形されたコイルを形成する。この実施態様においては、管状に成形されたコイルの先端領域が、当該先端からコイルの領域が離れる前に印加された電界の中で臨界電界強度まで到達することが可能であることが明らかにされた。管状コイルの長さにわたる、より一様な電界は、管状に形作られたコイルの先端において、および/またはその近傍において、当該管状に成形されたコイルの中央に近い環状ループより小さい半径を伴う環状ループを構成することによって達成することが可能である。したがって管状に形作られたコイルは、いくつかの実施態様において、コイルの先端領域に略テーパー付きのプロファイルを有することができる。
【0015】
管状に形作られたコイルの中心軸に沿って各隣接環状ループの間には、広い軸方向の間隔が好適に存在する。この構成は、好ましくは、各ループが有する隣接するループ周りの電界への相互作用を最小にする。各ループの間の間隔(『d』)は、別々に調整することが可能であり、コイルの長さ、ワイヤのサイズ、ループの直径、および対電極の構成は、ワイヤ周りの電界に影響を与える。好ましい実施態様においては、隣接する環状ループの間の間隔が少なくとも1mmであり、好ましくは5mmと800mmとの間となる。
【0016】
別の実施態様においては、らせんワイヤ・コイルの環状ループが、中心軸に関して略円錐状に成形されたコイルを形成する。円錐状に成形されたコイルは、好ましくは90°と140°との間の円錐角を伴って、より好ましくは110°と130°との間の円錐角を伴って好適に構成されている。この実施態様においては、各環状ループが、中心軸に関して隣接する環状ループに近接して間隔を設けることが可能であり、各隣接環状ループの間に小さな隙間を形成する。隣接するループの間の間隔は、紡糸口金と対電極の間における電界が臨界強度に満たない場合に、ループの間を流れる液体を粘性液体の表面力が実質的に妨げることを可能にするべく好適に選択される。液体は、概して、電界が臨界強度に到達すると、液体ジェットの形成に起因してループの間に引入れられることになる。らせんワイヤ・コイルは、この接近した間隔を使用して環状ループ内において粘性液体のための液体容器を形成することができる。
【0017】
紡糸口金のコイル・ループは、導体および不導体材料の両方から好適に構成される。1つの好ましい形状においては、紡糸口金のループが、銅、鋼、アルミニウムの金属から形成される。不導体材料の場合には、プラスチック、たとえば(限定ではないが)アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、セラミクス、木等を使用することが可能である。どのようなタイプの材料が使用されるかによらず、好ましくはコイル材料が、電気紡糸のために使用されるポリマ溶液に対して実質的に不活性である(たとえば、それによって溶解されない)。
【0018】
さらに別の実施態様においては、環状体が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつそれに沿って軸方向に間隔を設けているディスクまたはリングを備える。いくつかの実施態様においては、紡糸口金が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつそれに沿って軸方向に間隔を設けているディスクおよびリングの混合を含む。この実施態様の紡糸口金を使用した電気紡糸中、ディスクまたはリングの湾曲した表面上の特定のエリアにおいて、その表面の静電界強度が溶液をテイラー・コーンへと引入れるに充分な場合に、ナノファイバを形成する液体ジェットを作り出すことが可能である。この場合においてもまた、ディスクおよび/またはリングが、電界内に幅の狭い環状体を形成し、いくつかの実施態様においては、それを、その電界への隣接したディスクまたはリングの影響を最小化および/または最適化するように配置することができる。
【0019】
紡糸口金がディスクを含む場合には、それらのディスクが、中実半径本体、スポーク付きの本体、キャビティを伴う本体、またはこれらの類を含むことが可能である。
【0020】
離散的な環状リングについては、環状ループのグループを軸に沿って平行に設定し、紡糸口金を形成することができる。この場合においては、各ループの間の間隔、紡糸口金の長さ、ワイヤの直径、およびループの半径が、すべてらせんワイヤ・コイルの場合と類似の手段で調整可能である。
【0021】
紡糸口金は、任意の望ましい数のディスクまたはリングを含むことが可能である。1つの実施態様においては、紡糸口金が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつそれに関して回転することができる単一のディスクまたはリングを備える。別の実施態様においては、紡糸口金が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつそれに関して回転することができる2つまたはそれより多くの数のディスクを備え、各ディスクが、中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている。複数のディスクまたはリングを使用する場合には、ディスクまたはリングの集合の中心に近いディスクまたはリングより小さい半径を有するディスクまたはリングを集合の先端領域において使用すると有利となることがある。これは、ディスクまたはリングの集合の長さにわたって達成することが可能な、より一様な電界を提供することができる。
【0022】
好ましくは、紡糸口金の中心軸に沿って各隣接ディスクおよび/またはリングの間に広い軸方向の間隔が存在する。この構成は、好ましくは、各ディスクまたはリングが有する隣接するディスクまたはリング周りの電界への相互作用を最小にする。各ループの間の間隔(『d』)は、各ディスクまたはリングの寸法、紡糸口金およびそのほかのパラメータと関連付けされる対電極の構成に依存する。しかしながら、好ましい実施態様においては、隣接する環状ディスクまたはリングの間の間隔が少なくとも1mmであり、好ましくは5mmと800mmとの間となる。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、電界内において粘性液体からナノファイバを製造するための静電紡糸装置であって、当該装置が、本発明の第1の態様によるところの少なくとも1つの紡糸口金を含む帯電電極と、帯電電極から間隔を設けている対電極と、粘性液体を保持するための液体容器であって、紡糸口金の少なくとも1つの表面と液体連通する容器と、帯電電極と対電極との間において電気的に接続される電源であって、帯電電極を電気的に帯電させ、かつ帯電電極と対電極との間に電位差を供給可能な電源とを備える。
【0024】
本発明のこの第2の態様においては、この装置を使用し、紡糸口金(1つまたは複数)の表面を粘性液体でコーティングすること、および電源を使用して、粘性液体と対電極との間(電気紡糸ゾーン)に電位差を生成することによってナノファイバが製造される。電気紡糸ゾーン内の静電界強度が溶液をテイラー・コーンへと引入れるのに充分となると、表面の特定のエリアにおいてナノファイバを形成する液体ジェットが生成される。
【0025】
臨界電界強度と同じ、もしくはそれを超える電界を生成するために必要とされる電位差は、紡糸口金および対電極のサイズならびに構成、紡糸口金と対電極との間の距離(収集距離)および粘性液体の物理特性を含む多くの要因に依存する。概して言えば、らせんワイヤ・コイルについては、電源が使用されて、帯電電極と対電極との間に、30kVより大きい、好ましくは40kVより大きい、より好ましくは60kVより大きい電位差が生成される。管状コイル紡糸口金については、使用される印加電圧を好ましくは40kVと80kVとの間とする。円錐状コイル紡糸口金については、使用される印加電圧を好ましくは70kVより低くする。このコイル構成については、70kVより電圧が高くなると、場合によってはコロナ放電が生じ得ることが明らかになった。ディスクまたはリング・タイプの紡糸口金については、使用される印加電圧を好ましくは40kVより高くする。
【0026】
収集距離、すなわち帯電電極と対電極との間における間隔は、それらの間に生成された電界、装置によって製造されるナノファイバの寸法、および臨界電界強度を生成するために必要とされる電圧に影響を与え得る。ここでもまた、その間隔が、紡糸口金および対電極のサイズならびに構成、電位差、および粘性液体の組成を含む多くの要因に依存する。いくつかの実施態様においては、帯電電極と対電極との間に100mmと600mmとの間の間隔を設けている。
【0027】
粘性液体は、電界内においてナノファイバとして電気紡糸を行うことが可能な任意の液体とすることができる。適切な粘性液体には、ポリマ溶液、ゾル‐ゲル、粒子懸濁液、および/または溶融液が含まれる。好ましい形状においては、粘性液体が、通常、少なくとも1つのポリマおよび少なくとも1つの揮発性溶剤を含むポリマ溶液になる。合成ポリマ、天然ポリマ、および生体高分子、熱可塑性ポリマ、および/または反応性ポリマ等のポリマを、電気紡糸のための粘性液体として使用することができる。使用される溶剤は、ポリマの可溶性によって好適に決定される。いくつかの実施態様においては、溶剤が、水、エタノール、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、またはそのほかの揮発性液体を含むことができる。溶剤は、電気紡糸中に蒸発し、液体が凝固して固体のナノファイバとなることを促進する。
【0028】
静電紡糸装置の帯電電極は、2つまたはそれより多くの紡糸口金を含むことができる。追加の紡糸口金は、装置内に追加のファイバ形成表面を提供する。紡糸口金のそれぞれは、中心軸を含むことができ、各紡糸口金のそれぞれの中心軸は、概して、互いに関して半径方向に間隔を設けている。隣接するシャフト間の間隔は、好ましくは少なくとも環状体の半径とし、好ましくは環状体の半径からその半径の10倍までの範囲内とする。
【0029】
たとえば、紡糸口金がディスクまたはリングを備える場合には、2つまたはそれより多くのリングを使用し、それらの中心軸を液体容器の上方に配置して、半径方向に間隔を設けることができる。いくつかの形式においては、複数のディスクまたはリングもまた、各中心軸に沿って軸方向に間隔を設け、複数の軸方向ならびに半径方向に間隔を設けているディスクまたはリングを有する静電紡糸装置を提供することができる。中心軸に沿ってディスク/リングの間隔を設け、各中心軸は、互いに関して平行に、もしくは多様な角度で間隔を設けることができる。いくつかの形式においては、第1の中心軸に沿って隣接するディスクを、隣接する中心軸上の隣接するディスクに関してジグザグ状(staggered)にすることができる。
【0030】
紡糸口金が管状に成形されたコイルを備える場合には、2つまたはそれより多くのコイルを使用し、それらの中心軸を液体容器の上方に配置して、半径方向に間隔を設けることができる。これらのコイルのループは、隣接する1つまたは複数のコイルのそれぞれのコイルの空間内に適合するべく配向することができる。帯電電極内において使用されるコイル紡糸口金の数は、2と200との間において多様なものとすることが可能である。隣接するコイル間の距離は、好ましくは、コイルの半径と等しい値からコイルの半径の10倍までとする。帯電電極のコイルのそれぞれは、互いに関して同一の方向に、または異なる方向に回転するように配置することが可能である。
【0031】
粘性液体は、多くの異なる構成を使用してワイヤ・コイルの表面上に載せることができる。いくつかの実施態様においては、紡糸口金が可動であり、紡糸口金の部分が液体容器と接触し、かつ電気紡糸のためにその部分を対電極と帯電電極との間の電界内へ移動させることを可能にする。別の実施態様においては、液体容器が紡糸口金のコイルと液体連通しており、粘性液体がコイルのループへ、および/またはコイルの間へ連続的に供給されることを可能にする。
【0032】
紡糸口金が、好ましくは、管状のらせんコイル、ディスクまたはリング構成を有する1つの実施態様においては、容器が液槽を備え、その中に紡糸口金の部分が浸漬される。この場合においては、紡糸口金が、紡糸口金の表面上に粘性液体の一部をコーティングし、そのコーティングされた表面を液体容器から外へ出して電気紡糸ゾーン内へ移動するために、液槽の上方に位置決めされ、かつその中心軸に関して回転可能に構成される。対電極は、紡糸口金の中心軸に対して略平行に好ましく向けられ、実質的に紡糸口金の長さに沿って好ましく延びる。紡糸口金のコーティングされた部分が、槽から外へ出て電気紡糸ゾーン内の電界の中へと回転する。
【0033】
この実施態様における対電極は、回転管状本体を好ましく含み、それゆえ、製造されたナノファイバが電気紡糸プロセス中、連続的に収集される。さらに、またはそれに代えて、さらに装置がコンベヤ・ベルトを含むことができる。
【0034】
紡糸口金が、好ましくは、円錐状コイル構成を有する別の実施態様においては、紡糸口金のコイルのループによって境界設定される液体閉鎖容器内に容器を形成することが可能である。コイルの隣接するループは、対電極と紡糸口金との間における電位差が臨界値より低い場合に、粘性液体の表面力がその液体をループの間に、および容器内に保持することを可能にする距離によって好ましく間隔を設けている。液体は、概して、その電位差が(したがって、対応する電界が)臨界強度に到達すると、液体ジェットの形成に起因してループの間に引入れられる。
【0035】
この実施態様における対電極は、好ましくは紡糸口金の中心軸に対して略垂直に向けられる。好ましくは、対電極が紡糸口金の下方に配置される。したがって、粘性液体を、紡糸口金内の容器から当該紡糸口金の下方に位置する対電極へ、下向き方向に電気紡糸することができる。形成されたナノファイバを収集するために、この対電極が、その場所における紡糸口金の幅と少なくとも等しいエリア、より好ましくは紡糸口金の幅の4倍より大きいエリアと好ましく外接する。対電極の適切な構成は、紡糸口金の下方に配置されるプレートを含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明による静電紡糸装置は、排出口が電気紡糸ゾーン内に位置する流体源も含むことができ、好ましくはその排出口が紡糸口金の近傍に位置する。形成されるファイバに指向された電気紡糸ゾーン内の流体源を使用して、ファイバの直径等のファイバの特性を調整し、かつ紡糸口金から製造されるファイバ内において大きな割合で独立したファイバを提供することができる。流体源は、紡糸口金から対電極へと流れるべく概略で指向される流体流を有することができる。好ましくはこの流体源を、空気、窒素、またはそれらの類といった気体とする。流体は、温度において周囲の動作環境と異なるものとすることができる。いくつかの実施態様においては、紡糸口金と対電極との間に乾燥空気の供給を提供することができる。
【0037】
以下、本発明の特に好ましい実施態様を図示した図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の1つの好ましい実施態様による管状コイル電気紡糸装置のための配置を示した概略図である。
【図2】図1に示されている装置内において使用される管状コイル紡糸口金をより詳細に示した斜視図である。
【図3】図1に示されている装置を使用し、13cmの収集距離において製造されたナノファイバのSEM画像である。
【図4】図1に示されている装置を使用し、18cmの収集距離において製造されたナノファイバのSEM画像である。
【図5】図1に示されている装置を使用した実験的な実行結果から得られた、ファイバ直径ならびに生産性に対する動作パラメータならびにコイル寸法の影響、すなわち(a)コイルの距離d、(b)紡糸口金の長さD、(c)コイルの直径Φ、(d)印加電圧、(e)ワイヤの直径Φw、および(f)収集距離Gの影響を図示したグラフである。
【図6】図2に示されている管状コイル紡糸口金について、印加電圧を60kVとして計算された電界強度プロファイルの断面図であり、(a)コイル全体についての断面図、および(b)コイルの単一ループの拡大断面図である。
【図7】管状コイル紡糸口金についての電界強度を電気紡糸方向に沿ってプロットしたグラフである。
【図8】コイル電気紡糸の電界強度プロファイルをコイルの中心軸に沿って示したグラフである。
【図9】本発明の1つの好ましい実施態様による円錐状コイル電気紡糸装置のための配置を示した概略図である。
【図10】図9に示されている円錐状コイル紡糸口金の2つのループのコイル表面上におけるジェット形成を図示した説明図である。
【図11】60kVの電位差、9重量%のPVA濃度、および15cmの収集距離において、図9に示されている円錐状ワイヤ・コイル電気紡糸装置から電気紡糸された代表的なナノファイバのSEM画像である。
【図12】22kVの電位差、9重量%のPVA濃度、および15cmの収集距離において、従来的なニードル電気紡糸を使用して電気紡糸された代表的なナノファイバのSEM画像である。
【図13】図9に示されている装置を使用した実験的な実行結果から得られた、ファイバ直径ならびに生産性に対する動作パラメータならびにコイル寸法の影響、すなわち(a)印加電圧に対するボリューム・レート(volume rate)および平均ファイバ直径の依存度、および(b)異なるPVA濃度を用いて伝統的なニードル電気紡糸および円錐状コイル電気紡糸から得られるナノファイバの直径を図示したグラフである。
【図14】図9に示されている円錐状コイル紡糸口金について、印加電圧を60kVとして計算された電界強度プロファイルの断面図であり、(a)コイル全体についての断面図、および(b)選択されたコイルのループの拡大断面図である。
【図15】円錐状コイル紡糸口金についての電界強度を電気紡糸方向に沿ってプロットしたグラフである。
【図16】本発明の1つの好ましい実施態様によるディスク電気紡糸装置のための配置を示した概略図である。
【図17】62kVの印加電圧、9.0重量%のPVA濃度、および13cmの紡糸距離において、図16に示されている装置を使用して電気紡糸されたPVAナノファイバのSEM画像である。
【図18】62kVの印加電圧、9.0重量%のPVA濃度、および13cmの紡糸距離において、従来的な円筒タイプの紡糸口金を使用して電気紡糸されたPVAナノファイバのSEM画像である。
【図19】図16に示されている装置を使用した実験的な実行結果から得られ、また、等しい直径を有するが、長さが100倍の円筒形紡糸口金から得られた、ファイバ直径ならびに生産性に対する動作パラメータならびにコイル寸法の影響、すなわち(a)印加電圧に対する平均ファイバ直径の依存度(PVA=9重量%)、(b)PVA濃度に対する平均ファイバ直径の依存度(収集距離=11cm、印加電圧=57kV)、および(c)異なる印加電圧(PVA=9重量%)およびPVA濃度(印加電圧=57kV)の下におけるナノファイバの生産性を図示したグラフである。
【図20】(a)円筒形紡糸口金および(b)図16に示されている装置内で使用されるディスク紡糸口金について計算された電界強度プロファイルの断面図である。
【図21】本発明の1つの実施態様によるマルチディスク電気紡糸装置を示した概略図である。
【図22】本発明の1つの実施態様によるマルチコイル電気紡糸装置を示した概略図である。
【図23】本発明の1つの実施態様による空気流強化電気紡糸装置を示した概略図である。
【図24】(a)空気流なし、および(b)120ml/分の空気流量率の空気流を伴う場合において、図23に示されている装置よって電気紡糸されたナノファイバの図3のSEM画像である。
【図25】図23に示されている装置を使用した実験的な実行についてファイバ直径と分布をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1の実施形態−管状コイル紡糸口金〕
(実験装置)
まず、図1を参照すると、本発明の第1の実施態様による電気紡糸装置10が示されている。この電気紡糸装置10は、回転可能な管状らせんコイル紡糸口金14を含む帯電電極12、回転可能な管状対電極16、ポリマ溶液20が入れられた槽18、および帯電電極12と対電極16の間に接続される高電圧電源22(この場合は、ガンマ・ハイ・ボルテージ・リサーチ(Gamma High Voltage Research)のモデルES100Pの電源とする)を含む。対電極16は、紡糸口金14と平行であり、その長さにわたってその上方に位置決めされた金属ドラムを包含する。図示していないが、紡糸口金14および対電極16それぞれの回転は、紡糸口金14および対電極16のそれぞれを40rpmの速度で回転する電気モータ等の駆動手段によって駆動される。
【0040】
帯電電極12をより詳細に図2に示す。図示されている紡糸口金14は、金属ワイヤ・コイルから作られた管状に成形された、らせんコイルである。紡糸口金14は、中心軸X‐Xに関して半径方向に中心設定され、かつ、それに沿って延びる5つの環状ワイヤ・ループを含む。コイルの先端のワイヤ部分は、金属の管状の軸24に接続されている。紡糸口金14は、軸24に関して回転する。紡糸口金14は、槽18と対電極16との間に位置決めされ、ボトム部分が、槽18内のポリマ溶液20の中に部分的に浸漬される。槽18内における紡糸口金14のゆっくりとした回転は、紡糸口金14のワイヤの表面上にポリマ溶液の薄い層をコーティングする。これらのコーティングされた部分が、槽18と対電極16との間の位置へ、軸24回りに回転する。
【0041】
実験的な目的のため、ナノファイバの形成にアルドリッチ‐シグマ(Aldrich‐Sigma)から入手可能なPVA(96%加水分解された平均分子量146,000〜186,000のポリビニルアルコール)を包含する水溶性のポリマ溶液20が使用された。そのほかのポリマ溶液もまた、図示された装置を使用するナノファイバ形成に使用することが可能である。槽18内のポリマ溶液20は、浸漬された電極(図示せず)を介して電源22と電気的に接続される。対電極16は、電源22のグラウンド電極に接続されており、装置10を使用して形成されるナノファイバの収集に使用される。
【0042】
比較する目的のため、0.82mmの外径および0.51mmの内径のニードル規格(needle gauge)を有する従来的なニードル電気紡糸装置(図示せず)が使用され、コイル装置10のために使用されたポリマ溶液と同一のPVAポリマ溶液を使用してナノファイバの電気紡糸が行われた。電気紡糸は、22kVの印加電圧および15cmの収集距離において行われた。
【0043】
実験的な実行において製造されたナノファイバの平均のファイバ直径が、画像解析ソフトウエアのImagePro+4.5を補助としてナノファイバのSEM写真から計算された。
【0044】
(実験結果)
電気紡糸中、紡糸口金14のゆっくりとした回転によってコイル紡糸口金14のワイヤ表面上に粘性PVA溶液が載せられた。その後、ポリマ溶液と収集ドラムとの間に高電圧が印加され、紡糸口金14のらせんコイルのトップ部分に複数のポリマ・ジェットが形成された。これらのポリマ・ジェットは、紡糸口金14のコイルのトップ部分上のポイントから生成され、コイル表面上の形成ポイントから垂直中心角に関して約90°の広がりを有する。ポリマ・ジェット形成を導く最小印加電圧は約40kVであった。装置10によって製造されたナノファイバは、従来的なニードル電気紡糸装置によって製造されたものと比べてはるかに細く、狭い直径分布を有していた。
【0045】
らせんコイル電気紡糸についてのナノファイバ生産性は、16g/時の高さに至ることが明らかになった。比較すると、ニードル電気紡糸システムのナノファイバ生産性は、0.3g/時より低かった。
【0046】
図2および図3は、走査型電子顕微鏡(SEM、ライカ(Leica)S440)の下における、13cmおよび18cmの収集距離Gにおいて収集された紡がれたままのナノファイバの形態を示している。示されているとおり、ファイバの大半はナノ単位の厚さを有し、不織布構造の形状で収集される。13cmの収集距離(図2)は、18cmの収集距離G(図3)にわたって収集されるナノファイバより細いナノファイバであるが、より多く相互接続された繊維性の構造を結果としてもたらした。形態における相違は、18cmと比較して13cmという短い収集距離によって溶剤蒸発時間が短くなった結果であると考えられる。
【0047】
図5(a)および図5(b)は、コイルの寸法における変化がファイバの生産性に影響を与えることを示している。コイルの長さD(およびその長さの中に含まれるコイルの数)を増加すると、装置10の全体的なナノファイバ生産性が増加するが、紡糸口金14のコイル当りのナノファイバの生産性(PPC)は減少する。コイルの距離(d)を1cmから2cmまでの範囲内において増加すると、ナノファイバ形成の生産性が増加する。しかしながら、その距離が2cmを超えると生産性が減少する。コイルの距離dの増加は、PPCを増加させ、電気紡糸の効率の増加を示唆する。
【0048】
図5(c)および図5(e)に示されているとおり、全体的なナノファイバの生産性は、より大きなコイル直径Φに伴って増加する。これは、より大きいコーティングされた表面積が、ポリマ・ジェットの形成するためのより多くの場所を提供する結果であると見られる。より大きいワイヤ直径Φw(図5(e))を使用してもナノファイバの生産性が増加する。
【0049】
図5(d)および図5(f)は、より高い印加電圧の使用時に期待される生産性の増加を示している。より高い印加電圧もまた、より狭い直径分布を伴うより細いファイバを生産する。印加電圧が60kVのときは、平均のファイバ直径が237nmであった。予測されたとおり、ナノファイバの生産性は、より大きな収集距離Gの使用時に減少した。また、より高いPVA濃度がファイバの直径を増加させ、ナノファイバの生産性を低減させることも明らかになった。
【0050】
図6(a)および図6(b)は、有限要素解析(FEMLAB3.4を使用)を使用して計算された、らせんコイル紡糸口金14の電界強度を図示している。この解析は、管状コイル紡糸口金14についての電界線が、紡糸口金14のコイルのワイヤ・ループの小さい曲率半径に起因して、ワイヤ表面の周囲に集中したことを示している。この電界は、電気紡糸中にポリマ・ジェットを開始する主要な駆動力である。これに関して言えば、より強い電界によって帯電されたポリマ溶液がより容易にジェットを生成し、より多く引き伸ばし、それによってより高いナノファイバの生産性が結果としてもたらされる。
【0051】
電界強度プロファイルに対するコイル寸法の効果を図7および図8に示す。図7に示されているとおり、電界強度は、紡糸口金14のコイル表面から対電極16に向かって急激に減衰する。図8は、外側コイル(または紡糸口金の先端)における電界強度が、先端から離れているコイルより大きいことを示している。この強度における差は、外側コイルの少なくとも一部のコイル直径を小さくすることによって解決可能であった。
【0052】
(結論)
管状らせんコイル紡糸口金14のトップ部分において、多数のナノファイバ形成ジェットを同時に生成することが可能である。この装置10を使用して製造されるナノファイバは、従来的なニードル電気紡糸システムによって製造されたものよりも細い平均ファイバ直径を有する。生産性およびファイバの形態は、コイルの形状ならびに装置10の動作パラメータを調整することによって最適化可能である。
【0053】
〔第2の実施形態−円錐状コイル紡糸口金〕
(実験装置)
図9を参照すると、本発明の第2の実施態様による電気紡糸装置50が示されている。この電気紡糸装置50は、円錐状ワイヤ・コイル紡糸口金54を含む帯電電極52、対電極56、および帯電電極52と対電極56の間に接続される高電圧電源62(この場合は、ガンマ・ハイ・ボルテージ・リサーチ(Gamma High Voltage Research)のモデルES100Pの電源とする)を含む。対電極56は、紡糸口金54の下方に位置決めされる金属メッシュのプレートを包含する。
【0054】
図示されている紡糸口金54は、1mmのワイヤ直径を有する銅ワイヤから作られた円錐状に成形されたワイヤ・コイルを包含する。紡糸口金54は、高さが15mmであり、約120°の円錐角を有する。紡糸口金54のワイヤは、高電圧電源に接続されている。
【0055】
紡糸口金54は、開いたトップ表面から基点(a base point)まで伸びる閉じた円錐であり、液体容器58を円錐の内側に画定し、その中にポリマ溶液60を保持することができる。図10に示されているとおり、紡糸口金54のコイルのループ64、65の間の間隔は約1mmであり、対電極56と紡糸口金54との間における電位差が臨界値より低い場合、ポリマ溶液の表面力およびポリマ溶液の粘弾的な性質がそのループ64、65の間に、および容器58内にポリマ溶液を実質的に保持することを可能にする(図10(a)に示されている)。図10(b)に示されているとおり、ポリマ溶液は、対電極56と紡糸口金54との間の電気紡糸ゾーン内の電位差が臨界値に到達した場合、ループ64、65の表面上およびループ64、65の間の液体表面上において液体ジェットを(テイラー・コーンの形状で)形成する。
【0056】
実験的目的のため、ナノファイバを形成するポリマ溶液として、アルドリッチ‐シグマ(Aldrich‐Sigma)から入手可能なPVA(96%加水分解された平均分子量が146,000〜186,000のPVA)が使用された。そのほかのポリマ溶液もまた、図示された装置を使用するナノファイバ形成に使用することが可能である。槽58内のポリマ溶液60は、紡糸口金52を介して電源62と電気的に接続される。対電極56は、電源62のグラウンド電極に接続されており、装置50を使用して形成されるナノファイバの収集に使用される。
【0057】
比較する目的のため、0.82mmの外径および0.51mmの内径のニードル規格(needle gauge)を有する従来的なニードル電気紡糸装置(図示せず)が使用され、同一のPVAポリマ溶液を使用し、22kVの印加電圧および15cmの収集距離を用いてナノファイバの電気紡糸が行われた。
【0058】
実験的な実行において製造されたナノファイバの平均のファイバ直径が、画像解析ソフトウエアのImagePro+4.5を補助としてナノファイバのSEM写真から計算された。
【0059】
(実験結果)
電気紡糸のために、ワイヤ・コーン紡糸口金54に粘性PVA溶液が満たされた。続いて電源62を使用して高電圧がワイヤ・コイル紡糸口金14と対電極56との間に印加された。これが、帯電されたポリマ溶液を紡糸口金14のコイルのワイヤ・ループ64、65の間に移動させ、それが、図10(b)に示されているとおり、それらのループ64、65の外側表面を覆う。続いて多数のジェット68が主としてループ64、65の円錐状ワイヤ表面上に生成された。これらのジェット68は、表面上に充分なポリマ溶液を有するワイヤ表面上のエリアから生成された。ジェット68は、そのエリアからの溶液が一時的に枯渇すると形成を停止し、表面上のポリマ溶液が充分な第2の隣接エリア内で開始した。これは、第1のエリアにポリマ溶液が補充されることを可能にし、ほかの隣接表面のポリマ溶液が枯渇したときにジェット68を再形成することを可能にする。ジェット68を生成する最小電圧が45kVであり、コロナ放電の発生を導く最小電圧が70kVであることがわかった。ナノファイバは、45kVと70kVとの間において、装置50を使用して全く困難を伴うことなく電気紡糸することが可能であった。
【0060】
円錐状コイル紡糸口金54を使用してナノファイバ紡糸が行われた代表的なナノファイバ形態をSEM画像の形状で図11に示す。異なる印加電圧において9重量%のPVA溶液から電気紡糸されるナノファイバは、すべてビードのない(bead−free)繊維性の形態を示した。比較する目的のため、ニードル・ベースの電気紡糸デバイスを使用して製造されたナノファイバのファイバ形態を図12に示す。ニードル・ベースの電気紡糸デバイスを使用して製造された紡がれたままのファイバもまた、良好なファイバの一様性を示す。
【0061】
図13(a)は、円錐状コイル電気紡糸装置50および従来的なニードル電気紡糸装置の印加電圧へのボリューム・レートならびに平均ファイバ直径の依存度を表示する。図は、印加電圧における変動が、コイル50およびニードル装置の両方においてファイバの細かさに変化が導かれたことを示している。ワイヤ・コイル装置50の場合には、印加電圧を45kVから50kVに増加すると、平均ファイバ直径が327±123nmから275±113nmに低減された。電圧をさらに増加すると、ファイバの直径ならびに分布におけるわずかな変化が結果としてもたらされた。それと比較して、ニードル装置については、印加電圧を8kVから16kVに増加すると平均ファイバ直径が増加した。印加電圧の範囲(8〜24kV)におけるファイバの直径の変動は、353.4±85nmと413±48nmとの間であった。全体として言えば、ワイヤ・コイル装置50による電気紡糸ナノファイバについての平均ファイバ直径は、ニードル電気紡糸から製造されるナノファイバより小さかった。
【0062】
この電気紡糸システムについてのファイバの生産性は、ボリューム・レートに基づいて評価することが可能である。図13(a)に与えられているボリューム・レート・データによれば、円錐状コイル電気紡糸装置50を使用した乾燥ナノファイバを製造するためのもっとも高い生産率は、45kVにおいて0.86g/時、および70kVにおいて2.75g/時であると計算された。それと比較して、ニードル電気紡糸装置の場合の乾燥ナノファイバのもっとも高い製造率は、ボリューム・レート値に基づく計算によれば、8kVにおいて0.018g/時、および24kVにおいて0.207g/時であった。
【0063】
異なる濃度のPVA溶液から電気紡糸されたナノファイバの平均直径を図13(b)に示す。同一の印加電圧の下においては、PVA濃度の増加とともに、平均ファイバ直径および直径の分布の両方がわずかに増加する。それと比較して、もっとも細いナノファイバを生成するのに最適化された条件の下において、ニードル電気紡糸によって電気紡糸されたナノファイバの直径データも図13(b)に示す。PVA濃度が同一の場合には、円錐状コイル紡糸口金から製造されるナノファイバが常により小さい平均ファイバ直径を有していた。
【0064】
図14は、有限要素解析(FEMLAB3.4を使用)を使用して計算された、円錐状コイル紡糸口金54の電界強度プロファイルを示している。これに示されているとおり、円錐状ワイヤ・コイル紡糸口金54は、ループのワイヤの小さい曲率半径に起因してワイヤ表面の周囲に集中する電界線を与える。隣接するワイヤの間には、より弱い電界強度の集中電界曲線も形成される。この電界は、ポリマ溶液のジェットの形成を開始するための主要な駆動力である。より高い強度の電界によって帯電されたポリマ溶液は、より容易にジェットを生成し、それらのジェットが、より強い力の下に引き伸ばされ、したがってより細いファイバを製造することになる。
【0065】
(結論)
円錐状ワイヤ・コイル紡糸口金54を使用するPVAナノファイバの電気紡糸は、円錐状コイル表面上に同時に、大量の液体ジェットを生成し、良好なファイバの生産性を提供する。さらにまた、結果として得られるナノファイバは、従来的なニードル電気紡糸システムによって製造されたものより細い平均ファイバ直径を有する。
【0066】
〔第3の実施形態−ディスク紡糸口金〕
(実験装置)
まず、図16を参照すると、本発明の第3の実施態様による電気紡糸装置110が示されている。この電気紡糸装置110は、回転可能なディスク紡糸口金114を含む帯電電極112、回転可能なドラム型対電極116、ポリマ溶液120が入れられた槽118、および帯電電極112と対電極116との間に接続される高電圧電源122(この場合は、ガンマ・ハイ・ボルテージ・リサーチ(Gamma High Voltage Research)のモデルES100Pの電源とする)を含む。対電極116は、紡糸口金114と平行であり、その長さにわたってその上方に位置決めされた金属ドラムを包含する。図示していないが、紡糸口金114および対電極116それぞれの回転は、電気モータ等の紡糸口金114および対電極116のそれぞれを40rpmの速度で回転する駆動手段によって駆動される。
【0067】
図示されている紡糸口金114は、長さが2mm、直径が8cmのアルミニウム・ディスクである。紡糸口金114は、槽118と対電極116との間に位置決めされ、ボトム部分が、槽118内のポリマ溶液120の中に部分的に浸漬される。槽118内における紡糸口金114のゆっくりとした回転は、紡糸口金114のワイヤの表面上にポリマ溶液の薄い層をコーティングする。これらのコーティングされた部分が、槽118と対電極116との間の位置へ、軸124に関して回転する。
【0068】
実験的目的のため、ナノファイバの形成にはアルドリッチ‐シグマ(Aldrich‐Sigma)から入手可能なPVA(96%加水分解された平均分子量が146,000〜186,000のPVA)を包含する水溶性のポリマ溶液120が使用された。そのほかのポリマ溶液もまた、図示された装置を使用するナノファイバ形成に使用することが可能である。槽118内のポリマ溶液120は、浸漬された電極(図示せず)を介して電源122と電気的に接続される。対電極116は、電源122のグラウンド電極に接続されており、装置110を使用して形成されるナノファイバの収集に使用される。
【0069】
比較する目的のため、長さが20cm、直径が8cmのアルミニウム製の円筒紡糸口金が、図16に示されているディスク紡糸口金114のために使用されたものと類似する実験装置において使用された。
【0070】
実験的な実行において製造されたナノファイバの平均のファイバ直径が、画像解析ソフトウエアのImagePro+4.5を補助としてナノファイバのSEM写真から計算された。
【0071】
(実験結果)
電気紡糸中、紡糸口金114のゆっくりとした回転によってディスク紡糸口金114の表面上に粘性PVA溶液が載せられた。その後、ポリマ溶液と収集ドラムとの間に高電圧が印加され、紡糸口金114のトップ表面上に複数のポリマ・ジェットが形成された。ジェット/フィラメントの形成は、主として印加電圧およびポリマ濃度による影響を受けた。
【0072】
ディスク紡糸口金114については、印加電圧が42kVより低いとき、液体ジェットがまったく形成されなかった。印加電圧がこの臨界電圧より高くなると、ジェットが主としてディスク・エッジの両側から生成された。印加電圧の増加は、電気紡糸プロセスに対して殆ど影響を示さなかった。それと比較すると、円筒紡糸口金を使用する電気紡糸は、印加電圧へのより高い依存度を示した。円筒紡糸口金からジェットを生成するための臨界印加電圧は約47kVであった。高い印加電圧にもかかわらず、円筒の2つのエンド・エリアからだけジェットが生成されたに過ぎない。印加電圧が57kVに到達するまで、中央の円筒表面からジェット/フィラメントの生成がなかった。より高い印加電圧が、全体の円筒表面からのジェットの生成を導いた。円筒紡糸口金の軸方向の長さが、より幅の狭いディスク紡糸口金114と比較すると、より大きな効果を電界に対して有していたと考えられる。
【0073】
図17および図18のSEM画像に示されているとおり、ファイバの形態もまた、印加電圧による影響を受けた。SEM画像から計算された平均ファイバ直径の依存度を図19(a)に示す。これに示されるとおり、ディスク紡糸口金114から電気紡糸されたナノファイバは、ビードのない繊維性の構造を示した。
【0074】
図19(a)には、47kVから62kVまでの印加電圧における増加によって平均ファイバ直径がわずかに減少し、直径の分布が狭くなったことが示されている。円筒紡糸口金については、平均ファイバ直径ならびに直径の分布が、印加電圧への非常に小さい依存度を示した。47kVと62kVとの間における印加電圧の変化は、ファイバの直径ならびに分布における変化を殆ど導かなかった。
【0075】
印加電圧のほかに、紡糸口金と収集器との間の距離もまた、電気紡糸プロセスおよびファイバの形態に影響を与えた。なお、ディスク電気紡糸システムについての紡糸口金114と収集器との間の距離は、11cmと19cmとの間において調整可能であった。より短い紡糸距離は、濡れたファイバをもたらし、収集器上において混合してポリマの膜を形成し、これに対して、より長い紡糸距離は、弱い電界に起因して電気紡糸の杜絶を結果としてもたらした。円筒電気紡糸システムについては、電気紡糸距離の範囲が狭く、11cmから15cmまでの範囲であった。
【0076】
図19(b)は、ポリマ濃度が電気紡糸プロセスおよびファイバの形態に影響を及ぼす重要な要因であったことを示している。印加電圧を57kVとして、両方のシステムから電気紡糸されたナノファイバは、高い濃度のPVA溶液が使用された場合に直径の増加を示した。ディスク紡糸口金によって電気紡糸された紡がれたままのファイバは、円筒紡糸口金によるものと比べて、はるかに狭い直径分布を伴った、より細いファイバを有していた。ディスク紡糸口金114から電気紡糸されたナノファイバは、円筒紡糸口金から電気紡糸されたナノファイバよりPVA濃度に対する依存度が低いことを示した。
【0077】
図19(c)は、円筒電気紡糸ユニットの生産性が印加電圧およびポリマ濃度によって影響されたことを示している。両方の電気紡糸システムについて、製造率は、印加電圧の増加に伴って増加した。
【0078】
図20は、有限要素解析(FEMLAB3.4を使用)を使用して計算された、紡糸口金表面の周囲、および電気紡糸ゾーン(紡糸口金先端から収集器まで)内の電界プロファイルを、円筒紡糸口金(図20a)およびディスク紡糸口金114(図20b)について示している。ディスク紡糸口金114は、円筒紡糸口金とは異なる電界プロファイルを有する。ディスク紡糸口金の周囲の電界線は、周辺のエッジ・エリアに集中した。しかしながら、円筒に関する電界は、円筒の先端に集中した。ナノファイバの形成を導くジェットの開始は、紡糸口金表面の周囲の電界強度によって強く影響される。円筒表面に沿う電界強度は、円筒の両端においてより高く、中央表面エリアに向かって漸進的に低くなる。円筒の端における電界強度が円筒の中央の表面より高いことは、印加電圧が低い時に円筒表面の両端だけからジェット/フィラメントが生成される主要な理由となり得る。円筒表面と同様に、ディスク紡糸口金114のディスク表面上における電界強度もディスクのトップから液体表面に向かって減衰する。印加電圧の増加とともに、表面全体にわたる電界強度が増加する。
【0079】
(結論)
回転する金属ディスク表面からPVAナノファイバの電気紡糸を行うことが可能である。電気紡糸中、ナノファイバが主としてエッジ・エリアから製造され、電気紡糸プロセスを開始するための電圧は、42kV(PVA、9重量%)であった。印加電圧の増加とともに、ディスク紡糸されるナノファイバがより細くなり、直径の分布がより狭くなった。同じ条件の下においては、ディスク紡糸口金から生成されたナノファイバの方が円筒紡糸口金によって製造されるものより細かった。さらに、ディスク紡糸口金の電気紡糸製造率は、同じ直径の円筒紡糸口金と類似である。
【0080】
〔第4の実施形態−マルチディスク/マルチコイル紡糸口金〕
(マルチディスク装置)
図21を参照すると、帯電マルチディスク紡糸口金204、ポリマ溶液203のための容器202、および対電極206を含む電気紡糸装置が示されている。紡糸口金204と対電極206との間に高電圧電源(図示せず)が接続されることになると理解されるものとする。対電極206は、紡糸口金204と長さ方向に平行であり、その上方に位置決めされた間隔を設けている2つの金属ドラム210およびベルト211を含む。
【0081】
図示されているとおり、紡糸口金204は、金属製のディスク212を包含する複数の回転可能なファイバ生成器を含む。シャフト205に沿って隣り合う各2つのディスク212の間の距離は15cmである。隣り合う2つのシャフト(中心軸)の間の距離は55cmである。ディスク212の直径は80cmであり、それの厚さは2mmである。
【0082】
(実験結果)
電気紡糸中、ディスク212のゆっくりとした回転によってディスク紡糸口金204の表面上に粘性PVA溶液(前述の実施例の中で述べた溶液に類似)が載せられた。その後、ポリマ溶液203と収集器206との間に高電圧が印加され、ディスク212のトップ表面上に複数のポリマ・ジェットが形成された。
【0083】
ジェット/フィラメントの形成は、主として印加電圧およびポリマ溶液203のポリマ濃度による影響を受けることが明らかになった。
【0084】
(複数のらせんコイル)
紡糸口金218が、1を超える数の管状コイルを含むことも可能であり、電気紡糸装置の生産性を増加できる。図22に2コイル装置を図示する。図示された紡糸口金218は、2つの管状コイル220、221を含み、それぞれが別々の中心軸222、223の上に取付けられている。中心軸222、223は、コイルの半径と等しい距離からコイルの半径の10倍までの距離によって半径方向に間隔を設けている。コイルは、同じ方向または反対の方向のいずれにも回転することが可能である。
【0085】
紡糸口金218は、電気紡糸装置内において、図1および2に示されている電気紡糸装置10との関係で単一コイルの紡糸口金12について記載した態様と類似の態様で動作する。
【0086】
〔第5の実施形態−空気流強化電気紡糸〕
(実験装置)
基本的な紡糸口金230の空気流装置を図23に図示する。この紡糸口金230は、電気紡糸装置内の紡糸口金218内において、図16に示されている電気紡糸装置110内のディスク紡糸口金114について記載した態様と類似の態様で動作する。しかしながら、この装置においては電気紡糸ゾーン内に管状のノズル232が含められており、それが、紡糸口金230から対電極(図示されていないが、一般に紡糸口金230の上方に配置される)に向う方向へ空気流を指向させる。
【0087】
この装置においては、空気流が使用されて電気紡糸が強化される。空気流は、ノズル232または電気紡糸装置の周囲のほかのエリアから、ファイバ生成器(この場合はリング紡糸口金230)から収集器(図示せず)に向う方向の空気流を伴って適用することが可能である。全体的な空気流量率は、紡糸口金230の長さおよび構造に依存するが、概して60ml/分と6L/分との間の範囲である。
【0088】
(実験結果)
図24に、管状のノズル232からの空気流の存在あり(図24(a))およびなし(図24(b))の場合の、図23に示した装置から電気紡糸されたナノファイバの形態を示す。
【0089】
空気流の存在がない場合(図24(a))には、電気紡糸中における不充分な溶剤の蒸発のために、収集されるファイバの相互のブリッジが生じ得るので、相互接続された繊維性の構造となる。
【0090】
しかしながら、空気流が適用されると(図24(b))、収集されるファイバがより独立して現れる。
【0091】
空気流は、ファイバの直径にも影響を与える。図25に示されているとおり、空気流強化電気紡糸は、結果として、より狭い直径分布を伴うより細いファイバをもたらす。
【0092】
当業者は認識することになるであろうが、本明細書に述べられている本発明は、特に記述されたもののほかにも変形ならびに修正が可能である。本発明が、本発明の要旨ならびに範囲内に入るその種のすべての変形および修正を含むことは理解されるものとする。
【0093】
この明細書(請求項を含む)の中で『包含する』、『包含される』、『包含している』といった表現が使用されているとき、それらは、陳述されている特徴、完全体、ステップまたは構成要素の存在を指定すると解釈されるべきであるが、そのほかの特徴、完全体、ステップ、構成要素、および/またはそれらのグループのうちの1つまたは複数の存在を排除するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ポリマ溶液、ゾル‐ゲル、粒子懸濁液、または溶融液等の粘性液体からナノファイバを製造するための静電紡糸アセンブリ、およびこのアセンブリを使用してナノファイバを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に記載の本発明に対する背景技術の内容は、本発明の理解を容易にすることを意図し、記載されている。しかしながら、ここで認識されるものとするが、この背景技術の内容は、参照されている材料のいずれかが本出願の優先日において公開されていること、周知であること、あるいは共通する一般的な知識の一部であるといった承認でも容認でもない。
【0003】
従来的な静電紡糸システムは、中空針の紡糸口金、紡糸口金を通じてその先へポリマ溶液を供給するためのポンプ、電極の収集器プレート(an electrode collector plate)、および紡糸口金と収集器プレートの間に接続される高電圧電源からなる。ポリマ液が紡糸口金に供給されて高電圧で帯電される。紡糸口金と収集器プレートの間に結果としてもたらされる静電力が、溶液をテイラー・コーン(a Taylor cone)へと引入れる。液体が充分な凝集力を有していれば、液体がジェット(a jet)として引出される。このジェット、外部電界、およびジェット内側の電荷斥力の間における相互作用が、ジェットを撓ませて紡ぎ、したがってより細く引き伸ばす。溶剤の蒸発がジェットを凝固させ、収集器プレート上にランダムに堆積させて不織ナノファイバ・マットを形成させる。
【0004】
しかしながら、各紡糸口金が1ニードル当り毎時300ミリグラムまでのファイバを製造する単一ポリマ・ジェットを生成するに過ぎないことから、この製造システムが提供するファイバ生産性は限定的である。また、小さい針の直径は、結果として高度に集中された電界を紡糸口金表面の近傍にもたらすが、これが高い印加電圧の下におけるコロナ放電の影響を受けやすい。そのため電圧が、概して30kV未満に制限される。この低い動作電圧によってもまた、粗悪なナノファイバとなってしまう。
【0005】
ナノファイバの製造レートは、広い液体表面から静電気的に生成されるナノファイバによって増加することが可能である。たとえば、特許文献1は、ポリマ溶液の容器内に部分的に浸漬される紡糸円筒電極(または『紡糸口金』)を含む電気紡糸デバイスを開示している。対電極は、当該円筒電極から距離を離して配置される。ポリマ溶液は、容器から薄膜として円筒の表面上において、紡糸電極と収集電極の間の電界内に運ばれる。電極間の静電界強度が溶液をテイラー・コーンへと引入れるのに充分となると、表面の特定箇所においてナノファイバが作り出される。結果として得られるナノファイバは、対電極上にランダムに堆積され、不織ナノファイバ・マットを形成する。
【0006】
これらのタイプの大規模電気紡糸構成におけるジェットの形成および結果としてもたらされるファイバの形態(morphology)は、紡糸口金の周囲の電界強度、および電気紡糸ゾーン内の電界強度プロファイルによる影響を高度に受ける。たとえば、円筒状に形作られた電極の長さは、円筒の全表面にわたってジェットの生成に必要な量および臨界電圧に影響を与える。いくつかの電圧においては、ジェットが円筒のエンドにおいてのみ生成される。円筒の長さにわたって製造されるナノファイバの厚さもまた、その長さに沿った電界強度における変動に起因して変動し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/024101号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上記の欠点のうちの1つまたは複数を解決するナノファイバの製造のための静電紡糸デバイス用代替紡糸口金を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、電界内において静電紡糸を使用して粘性液体からナノファイバを製造するための紡糸口金であって、当該紡糸口金は、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている1つまたは複数の幅の狭い環状体を備える。
【0010】
本発明のこの第1の態様による紡糸口金は、1つまたは複数の幅の狭い環状体から形成される。本明細書の内容において、幅の狭い環状体という表現は、概して、幅(または厚さ)と直径の比率が1:3より小さい環状体を言い、好ましくは1:5より小さいものとし、さらに好ましくは1:10より小さいものとする。この狭い幅は、より高い電界を紡糸口金表面の周囲に生成し、円筒等の幅の広い本体と比較したとき、紡糸口金の形状に対する依存度がより低い電界強度プロファイルを電気紡糸ゾーン内に有すると考えられる。これらのタイプの紡糸口金からのジェットの形成および結果としてもたらされるファイバの形態は、既存の円筒タイプの紡糸口金を超える利点を有するはずである。
【0011】
環状体は、任意の適切な構成を有することが可能である。いくつかの実施態様においては、環状体が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている環状ループを備える。これらの環状ループは、離散的な環状リングの形状とすることも可能であり、あるいは軸方向において略一体的に接続されて、らせんコイルを形成することができる。
【0012】
紡糸口金がらせんワイヤ・コイルとなる場合には、電気紡糸中、ナノファイバを形成する液体ジェットを、ワイヤ・ループの湾曲した表面上の特定のエリアにおいて、その表面の静電界強度が溶液をテイラー・コーンへと引入れるに充分な場合に、作り出すことができる。上で示したとおり、コイルのワイヤ・ループは、電界内に幅の狭い環状体を備え、いくつかの実施態様においては、それを、その電界への隣接したループの影響を最小化および/または最適化するべく配置することができる。
【0013】
紡糸口金のために使用される、らせんワイヤ・コイルは、管状、円錐形状、球体状、立方体状、プリズム状、またはこれらの類を含めた多様な構成を有することが可能である。これらの構成のコイルは、ナノファイバ製造のための単一の環状ループを備えることができる。しかしながら、コイルが2つの、好ましくは複数の環状ループを備え、それらの間隔がコイルの中心軸に沿って軸方向に設けられていることが好ましい。複数のループは、単一のループと比較して、複数の液体ジェットを生成するためのより大きなワイヤ表面積を提供する。コイルの環状ループのうちの2つもしくはそれより多くのループの間隔を、好ましくはワイヤの直径より大きい距離によって設けることができる。さらに、またはそれに代えて、コイルの2つもしくはそれより多くの環状ループを接近した間隔で一緒にすることができる。環状ループのそれぞれは、類似するワイヤ直径および/またはループ直径を有してもよく、あるいはそれらの寸法をループの間で変更してもよい。たとえば、いくつかの実施態様においては、環状ループの平均半径が5mmと1000mmとの間となる。いくつかの実施態様においては、コイルの長さが20mmより長く、好ましくは20と6000mmとの間となる。いくつかの実施態様においては、コイルのワイヤの直径が0.5mmと200mmとの間、好ましくは0.7mmと50mmとの間となる。
【0014】
1つの実施態様においては、環状ループが、紡糸口金の中心軸に関して略管状に成形されたコイルを形成する。この実施態様においては、管状に成形されたコイルの先端領域が、当該先端からコイルの領域が離れる前に印加された電界の中で臨界電界強度まで到達することが可能であることが明らかにされた。管状コイルの長さにわたる、より一様な電界は、管状に形作られたコイルの先端において、および/またはその近傍において、当該管状に成形されたコイルの中央に近い環状ループより小さい半径を伴う環状ループを構成することによって達成することが可能である。したがって管状に形作られたコイルは、いくつかの実施態様において、コイルの先端領域に略テーパー付きのプロファイルを有することができる。
【0015】
管状に形作られたコイルの中心軸に沿って各隣接環状ループの間には、広い軸方向の間隔が好適に存在する。この構成は、好ましくは、各ループが有する隣接するループ周りの電界への相互作用を最小にする。各ループの間の間隔(『d』)は、別々に調整することが可能であり、コイルの長さ、ワイヤのサイズ、ループの直径、および対電極の構成は、ワイヤ周りの電界に影響を与える。好ましい実施態様においては、隣接する環状ループの間の間隔が少なくとも1mmであり、好ましくは5mmと800mmとの間となる。
【0016】
別の実施態様においては、らせんワイヤ・コイルの環状ループが、中心軸に関して略円錐状に成形されたコイルを形成する。円錐状に成形されたコイルは、好ましくは90°と140°との間の円錐角を伴って、より好ましくは110°と130°との間の円錐角を伴って好適に構成されている。この実施態様においては、各環状ループが、中心軸に関して隣接する環状ループに近接して間隔を設けることが可能であり、各隣接環状ループの間に小さな隙間を形成する。隣接するループの間の間隔は、紡糸口金と対電極の間における電界が臨界強度に満たない場合に、ループの間を流れる液体を粘性液体の表面力が実質的に妨げることを可能にするべく好適に選択される。液体は、概して、電界が臨界強度に到達すると、液体ジェットの形成に起因してループの間に引入れられることになる。らせんワイヤ・コイルは、この接近した間隔を使用して環状ループ内において粘性液体のための液体容器を形成することができる。
【0017】
紡糸口金のコイル・ループは、導体および不導体材料の両方から好適に構成される。1つの好ましい形状においては、紡糸口金のループが、銅、鋼、アルミニウムの金属から形成される。不導体材料の場合には、プラスチック、たとえば(限定ではないが)アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、セラミクス、木等を使用することが可能である。どのようなタイプの材料が使用されるかによらず、好ましくはコイル材料が、電気紡糸のために使用されるポリマ溶液に対して実質的に不活性である(たとえば、それによって溶解されない)。
【0018】
さらに別の実施態様においては、環状体が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつそれに沿って軸方向に間隔を設けているディスクまたはリングを備える。いくつかの実施態様においては、紡糸口金が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつそれに沿って軸方向に間隔を設けているディスクおよびリングの混合を含む。この実施態様の紡糸口金を使用した電気紡糸中、ディスクまたはリングの湾曲した表面上の特定のエリアにおいて、その表面の静電界強度が溶液をテイラー・コーンへと引入れるに充分な場合に、ナノファイバを形成する液体ジェットを作り出すことが可能である。この場合においてもまた、ディスクおよび/またはリングが、電界内に幅の狭い環状体を形成し、いくつかの実施態様においては、それを、その電界への隣接したディスクまたはリングの影響を最小化および/または最適化するように配置することができる。
【0019】
紡糸口金がディスクを含む場合には、それらのディスクが、中実半径本体、スポーク付きの本体、キャビティを伴う本体、またはこれらの類を含むことが可能である。
【0020】
離散的な環状リングについては、環状ループのグループを軸に沿って平行に設定し、紡糸口金を形成することができる。この場合においては、各ループの間の間隔、紡糸口金の長さ、ワイヤの直径、およびループの半径が、すべてらせんワイヤ・コイルの場合と類似の手段で調整可能である。
【0021】
紡糸口金は、任意の望ましい数のディスクまたはリングを含むことが可能である。1つの実施態様においては、紡糸口金が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつそれに関して回転することができる単一のディスクまたはリングを備える。別の実施態様においては、紡糸口金が、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつそれに関して回転することができる2つまたはそれより多くの数のディスクを備え、各ディスクが、中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている。複数のディスクまたはリングを使用する場合には、ディスクまたはリングの集合の中心に近いディスクまたはリングより小さい半径を有するディスクまたはリングを集合の先端領域において使用すると有利となることがある。これは、ディスクまたはリングの集合の長さにわたって達成することが可能な、より一様な電界を提供することができる。
【0022】
好ましくは、紡糸口金の中心軸に沿って各隣接ディスクおよび/またはリングの間に広い軸方向の間隔が存在する。この構成は、好ましくは、各ディスクまたはリングが有する隣接するディスクまたはリング周りの電界への相互作用を最小にする。各ループの間の間隔(『d』)は、各ディスクまたはリングの寸法、紡糸口金およびそのほかのパラメータと関連付けされる対電極の構成に依存する。しかしながら、好ましい実施態様においては、隣接する環状ディスクまたはリングの間の間隔が少なくとも1mmであり、好ましくは5mmと800mmとの間となる。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、電界内において粘性液体からナノファイバを製造するための静電紡糸装置であって、当該装置が、本発明の第1の態様によるところの少なくとも1つの紡糸口金を含む帯電電極と、帯電電極から間隔を設けている対電極と、粘性液体を保持するための液体容器であって、紡糸口金の少なくとも1つの表面と液体連通する容器と、帯電電極と対電極との間において電気的に接続される電源であって、帯電電極を電気的に帯電させ、かつ帯電電極と対電極との間に電位差を供給可能な電源とを備える。
【0024】
本発明のこの第2の態様においては、この装置を使用し、紡糸口金(1つまたは複数)の表面を粘性液体でコーティングすること、および電源を使用して、粘性液体と対電極との間(電気紡糸ゾーン)に電位差を生成することによってナノファイバが製造される。電気紡糸ゾーン内の静電界強度が溶液をテイラー・コーンへと引入れるのに充分となると、表面の特定のエリアにおいてナノファイバを形成する液体ジェットが生成される。
【0025】
臨界電界強度と同じ、もしくはそれを超える電界を生成するために必要とされる電位差は、紡糸口金および対電極のサイズならびに構成、紡糸口金と対電極との間の距離(収集距離)および粘性液体の物理特性を含む多くの要因に依存する。概して言えば、らせんワイヤ・コイルについては、電源が使用されて、帯電電極と対電極との間に、30kVより大きい、好ましくは40kVより大きい、より好ましくは60kVより大きい電位差が生成される。管状コイル紡糸口金については、使用される印加電圧を好ましくは40kVと80kVとの間とする。円錐状コイル紡糸口金については、使用される印加電圧を好ましくは70kVより低くする。このコイル構成については、70kVより電圧が高くなると、場合によってはコロナ放電が生じ得ることが明らかになった。ディスクまたはリング・タイプの紡糸口金については、使用される印加電圧を好ましくは40kVより高くする。
【0026】
収集距離、すなわち帯電電極と対電極との間における間隔は、それらの間に生成された電界、装置によって製造されるナノファイバの寸法、および臨界電界強度を生成するために必要とされる電圧に影響を与え得る。ここでもまた、その間隔が、紡糸口金および対電極のサイズならびに構成、電位差、および粘性液体の組成を含む多くの要因に依存する。いくつかの実施態様においては、帯電電極と対電極との間に100mmと600mmとの間の間隔を設けている。
【0027】
粘性液体は、電界内においてナノファイバとして電気紡糸を行うことが可能な任意の液体とすることができる。適切な粘性液体には、ポリマ溶液、ゾル‐ゲル、粒子懸濁液、および/または溶融液が含まれる。好ましい形状においては、粘性液体が、通常、少なくとも1つのポリマおよび少なくとも1つの揮発性溶剤を含むポリマ溶液になる。合成ポリマ、天然ポリマ、および生体高分子、熱可塑性ポリマ、および/または反応性ポリマ等のポリマを、電気紡糸のための粘性液体として使用することができる。使用される溶剤は、ポリマの可溶性によって好適に決定される。いくつかの実施態様においては、溶剤が、水、エタノール、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、またはそのほかの揮発性液体を含むことができる。溶剤は、電気紡糸中に蒸発し、液体が凝固して固体のナノファイバとなることを促進する。
【0028】
静電紡糸装置の帯電電極は、2つまたはそれより多くの紡糸口金を含むことができる。追加の紡糸口金は、装置内に追加のファイバ形成表面を提供する。紡糸口金のそれぞれは、中心軸を含むことができ、各紡糸口金のそれぞれの中心軸は、概して、互いに関して半径方向に間隔を設けている。隣接するシャフト間の間隔は、好ましくは少なくとも環状体の半径とし、好ましくは環状体の半径からその半径の10倍までの範囲内とする。
【0029】
たとえば、紡糸口金がディスクまたはリングを備える場合には、2つまたはそれより多くのリングを使用し、それらの中心軸を液体容器の上方に配置して、半径方向に間隔を設けることができる。いくつかの形式においては、複数のディスクまたはリングもまた、各中心軸に沿って軸方向に間隔を設け、複数の軸方向ならびに半径方向に間隔を設けているディスクまたはリングを有する静電紡糸装置を提供することができる。中心軸に沿ってディスク/リングの間隔を設け、各中心軸は、互いに関して平行に、もしくは多様な角度で間隔を設けることができる。いくつかの形式においては、第1の中心軸に沿って隣接するディスクを、隣接する中心軸上の隣接するディスクに関してジグザグ状(staggered)にすることができる。
【0030】
紡糸口金が管状に成形されたコイルを備える場合には、2つまたはそれより多くのコイルを使用し、それらの中心軸を液体容器の上方に配置して、半径方向に間隔を設けることができる。これらのコイルのループは、隣接する1つまたは複数のコイルのそれぞれのコイルの空間内に適合するべく配向することができる。帯電電極内において使用されるコイル紡糸口金の数は、2と200との間において多様なものとすることが可能である。隣接するコイル間の距離は、好ましくは、コイルの半径と等しい値からコイルの半径の10倍までとする。帯電電極のコイルのそれぞれは、互いに関して同一の方向に、または異なる方向に回転するように配置することが可能である。
【0031】
粘性液体は、多くの異なる構成を使用してワイヤ・コイルの表面上に載せることができる。いくつかの実施態様においては、紡糸口金が可動であり、紡糸口金の部分が液体容器と接触し、かつ電気紡糸のためにその部分を対電極と帯電電極との間の電界内へ移動させることを可能にする。別の実施態様においては、液体容器が紡糸口金のコイルと液体連通しており、粘性液体がコイルのループへ、および/またはコイルの間へ連続的に供給されることを可能にする。
【0032】
紡糸口金が、好ましくは、管状のらせんコイル、ディスクまたはリング構成を有する1つの実施態様においては、容器が液槽を備え、その中に紡糸口金の部分が浸漬される。この場合においては、紡糸口金が、紡糸口金の表面上に粘性液体の一部をコーティングし、そのコーティングされた表面を液体容器から外へ出して電気紡糸ゾーン内へ移動するために、液槽の上方に位置決めされ、かつその中心軸に関して回転可能に構成される。対電極は、紡糸口金の中心軸に対して略平行に好ましく向けられ、実質的に紡糸口金の長さに沿って好ましく延びる。紡糸口金のコーティングされた部分が、槽から外へ出て電気紡糸ゾーン内の電界の中へと回転する。
【0033】
この実施態様における対電極は、回転管状本体を好ましく含み、それゆえ、製造されたナノファイバが電気紡糸プロセス中、連続的に収集される。さらに、またはそれに代えて、さらに装置がコンベヤ・ベルトを含むことができる。
【0034】
紡糸口金が、好ましくは、円錐状コイル構成を有する別の実施態様においては、紡糸口金のコイルのループによって境界設定される液体閉鎖容器内に容器を形成することが可能である。コイルの隣接するループは、対電極と紡糸口金との間における電位差が臨界値より低い場合に、粘性液体の表面力がその液体をループの間に、および容器内に保持することを可能にする距離によって好ましく間隔を設けている。液体は、概して、その電位差が(したがって、対応する電界が)臨界強度に到達すると、液体ジェットの形成に起因してループの間に引入れられる。
【0035】
この実施態様における対電極は、好ましくは紡糸口金の中心軸に対して略垂直に向けられる。好ましくは、対電極が紡糸口金の下方に配置される。したがって、粘性液体を、紡糸口金内の容器から当該紡糸口金の下方に位置する対電極へ、下向き方向に電気紡糸することができる。形成されたナノファイバを収集するために、この対電極が、その場所における紡糸口金の幅と少なくとも等しいエリア、より好ましくは紡糸口金の幅の4倍より大きいエリアと好ましく外接する。対電極の適切な構成は、紡糸口金の下方に配置されるプレートを含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明による静電紡糸装置は、排出口が電気紡糸ゾーン内に位置する流体源も含むことができ、好ましくはその排出口が紡糸口金の近傍に位置する。形成されるファイバに指向された電気紡糸ゾーン内の流体源を使用して、ファイバの直径等のファイバの特性を調整し、かつ紡糸口金から製造されるファイバ内において大きな割合で独立したファイバを提供することができる。流体源は、紡糸口金から対電極へと流れるべく概略で指向される流体流を有することができる。好ましくはこの流体源を、空気、窒素、またはそれらの類といった気体とする。流体は、温度において周囲の動作環境と異なるものとすることができる。いくつかの実施態様においては、紡糸口金と対電極との間に乾燥空気の供給を提供することができる。
【0037】
以下、本発明の特に好ましい実施態様を図示した図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の1つの好ましい実施態様による管状コイル電気紡糸装置のための配置を示した概略図である。
【図2】図1に示されている装置内において使用される管状コイル紡糸口金をより詳細に示した斜視図である。
【図3】図1に示されている装置を使用し、13cmの収集距離において製造されたナノファイバのSEM画像である。
【図4】図1に示されている装置を使用し、18cmの収集距離において製造されたナノファイバのSEM画像である。
【図5】図1に示されている装置を使用した実験的な実行結果から得られた、ファイバ直径ならびに生産性に対する動作パラメータならびにコイル寸法の影響、すなわち(a)コイルの距離d、(b)紡糸口金の長さD、(c)コイルの直径Φ、(d)印加電圧、(e)ワイヤの直径Φw、および(f)収集距離Gの影響を図示したグラフである。
【図6】図2に示されている管状コイル紡糸口金について、印加電圧を60kVとして計算された電界強度プロファイルの断面図であり、(a)コイル全体についての断面図、および(b)コイルの単一ループの拡大断面図である。
【図7】管状コイル紡糸口金についての電界強度を電気紡糸方向に沿ってプロットしたグラフである。
【図8】コイル電気紡糸の電界強度プロファイルをコイルの中心軸に沿って示したグラフである。
【図9】本発明の1つの好ましい実施態様による円錐状コイル電気紡糸装置のための配置を示した概略図である。
【図10】図9に示されている円錐状コイル紡糸口金の2つのループのコイル表面上におけるジェット形成を図示した説明図である。
【図11】60kVの電位差、9重量%のPVA濃度、および15cmの収集距離において、図9に示されている円錐状ワイヤ・コイル電気紡糸装置から電気紡糸された代表的なナノファイバのSEM画像である。
【図12】22kVの電位差、9重量%のPVA濃度、および15cmの収集距離において、従来的なニードル電気紡糸を使用して電気紡糸された代表的なナノファイバのSEM画像である。
【図13】図9に示されている装置を使用した実験的な実行結果から得られた、ファイバ直径ならびに生産性に対する動作パラメータならびにコイル寸法の影響、すなわち(a)印加電圧に対するボリューム・レート(volume rate)および平均ファイバ直径の依存度、および(b)異なるPVA濃度を用いて伝統的なニードル電気紡糸および円錐状コイル電気紡糸から得られるナノファイバの直径を図示したグラフである。
【図14】図9に示されている円錐状コイル紡糸口金について、印加電圧を60kVとして計算された電界強度プロファイルの断面図であり、(a)コイル全体についての断面図、および(b)選択されたコイルのループの拡大断面図である。
【図15】円錐状コイル紡糸口金についての電界強度を電気紡糸方向に沿ってプロットしたグラフである。
【図16】本発明の1つの好ましい実施態様によるディスク電気紡糸装置のための配置を示した概略図である。
【図17】62kVの印加電圧、9.0重量%のPVA濃度、および13cmの紡糸距離において、図16に示されている装置を使用して電気紡糸されたPVAナノファイバのSEM画像である。
【図18】62kVの印加電圧、9.0重量%のPVA濃度、および13cmの紡糸距離において、従来的な円筒タイプの紡糸口金を使用して電気紡糸されたPVAナノファイバのSEM画像である。
【図19】図16に示されている装置を使用した実験的な実行結果から得られ、また、等しい直径を有するが、長さが100倍の円筒形紡糸口金から得られた、ファイバ直径ならびに生産性に対する動作パラメータならびにコイル寸法の影響、すなわち(a)印加電圧に対する平均ファイバ直径の依存度(PVA=9重量%)、(b)PVA濃度に対する平均ファイバ直径の依存度(収集距離=11cm、印加電圧=57kV)、および(c)異なる印加電圧(PVA=9重量%)およびPVA濃度(印加電圧=57kV)の下におけるナノファイバの生産性を図示したグラフである。
【図20】(a)円筒形紡糸口金および(b)図16に示されている装置内で使用されるディスク紡糸口金について計算された電界強度プロファイルの断面図である。
【図21】本発明の1つの実施態様によるマルチディスク電気紡糸装置を示した概略図である。
【図22】本発明の1つの実施態様によるマルチコイル電気紡糸装置を示した概略図である。
【図23】本発明の1つの実施態様による空気流強化電気紡糸装置を示した概略図である。
【図24】(a)空気流なし、および(b)120ml/分の空気流量率の空気流を伴う場合において、図23に示されている装置よって電気紡糸されたナノファイバの図3のSEM画像である。
【図25】図23に示されている装置を使用した実験的な実行についてファイバ直径と分布をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1の実施形態−管状コイル紡糸口金〕
(実験装置)
まず、図1を参照すると、本発明の第1の実施態様による電気紡糸装置10が示されている。この電気紡糸装置10は、回転可能な管状らせんコイル紡糸口金14を含む帯電電極12、回転可能な管状対電極16、ポリマ溶液20が入れられた槽18、および帯電電極12と対電極16の間に接続される高電圧電源22(この場合は、ガンマ・ハイ・ボルテージ・リサーチ(Gamma High Voltage Research)のモデルES100Pの電源とする)を含む。対電極16は、紡糸口金14と平行であり、その長さにわたってその上方に位置決めされた金属ドラムを包含する。図示していないが、紡糸口金14および対電極16それぞれの回転は、紡糸口金14および対電極16のそれぞれを40rpmの速度で回転する電気モータ等の駆動手段によって駆動される。
【0040】
帯電電極12をより詳細に図2に示す。図示されている紡糸口金14は、金属ワイヤ・コイルから作られた管状に成形された、らせんコイルである。紡糸口金14は、中心軸X‐Xに関して半径方向に中心設定され、かつ、それに沿って延びる5つの環状ワイヤ・ループを含む。コイルの先端のワイヤ部分は、金属の管状の軸24に接続されている。紡糸口金14は、軸24に関して回転する。紡糸口金14は、槽18と対電極16との間に位置決めされ、ボトム部分が、槽18内のポリマ溶液20の中に部分的に浸漬される。槽18内における紡糸口金14のゆっくりとした回転は、紡糸口金14のワイヤの表面上にポリマ溶液の薄い層をコーティングする。これらのコーティングされた部分が、槽18と対電極16との間の位置へ、軸24回りに回転する。
【0041】
実験的な目的のため、ナノファイバの形成にアルドリッチ‐シグマ(Aldrich‐Sigma)から入手可能なPVA(96%加水分解された平均分子量146,000〜186,000のポリビニルアルコール)を包含する水溶性のポリマ溶液20が使用された。そのほかのポリマ溶液もまた、図示された装置を使用するナノファイバ形成に使用することが可能である。槽18内のポリマ溶液20は、浸漬された電極(図示せず)を介して電源22と電気的に接続される。対電極16は、電源22のグラウンド電極に接続されており、装置10を使用して形成されるナノファイバの収集に使用される。
【0042】
比較する目的のため、0.82mmの外径および0.51mmの内径のニードル規格(needle gauge)を有する従来的なニードル電気紡糸装置(図示せず)が使用され、コイル装置10のために使用されたポリマ溶液と同一のPVAポリマ溶液を使用してナノファイバの電気紡糸が行われた。電気紡糸は、22kVの印加電圧および15cmの収集距離において行われた。
【0043】
実験的な実行において製造されたナノファイバの平均のファイバ直径が、画像解析ソフトウエアのImagePro+4.5を補助としてナノファイバのSEM写真から計算された。
【0044】
(実験結果)
電気紡糸中、紡糸口金14のゆっくりとした回転によってコイル紡糸口金14のワイヤ表面上に粘性PVA溶液が載せられた。その後、ポリマ溶液と収集ドラムとの間に高電圧が印加され、紡糸口金14のらせんコイルのトップ部分に複数のポリマ・ジェットが形成された。これらのポリマ・ジェットは、紡糸口金14のコイルのトップ部分上のポイントから生成され、コイル表面上の形成ポイントから垂直中心角に関して約90°の広がりを有する。ポリマ・ジェット形成を導く最小印加電圧は約40kVであった。装置10によって製造されたナノファイバは、従来的なニードル電気紡糸装置によって製造されたものと比べてはるかに細く、狭い直径分布を有していた。
【0045】
らせんコイル電気紡糸についてのナノファイバ生産性は、16g/時の高さに至ることが明らかになった。比較すると、ニードル電気紡糸システムのナノファイバ生産性は、0.3g/時より低かった。
【0046】
図2および図3は、走査型電子顕微鏡(SEM、ライカ(Leica)S440)の下における、13cmおよび18cmの収集距離Gにおいて収集された紡がれたままのナノファイバの形態を示している。示されているとおり、ファイバの大半はナノ単位の厚さを有し、不織布構造の形状で収集される。13cmの収集距離(図2)は、18cmの収集距離G(図3)にわたって収集されるナノファイバより細いナノファイバであるが、より多く相互接続された繊維性の構造を結果としてもたらした。形態における相違は、18cmと比較して13cmという短い収集距離によって溶剤蒸発時間が短くなった結果であると考えられる。
【0047】
図5(a)および図5(b)は、コイルの寸法における変化がファイバの生産性に影響を与えることを示している。コイルの長さD(およびその長さの中に含まれるコイルの数)を増加すると、装置10の全体的なナノファイバ生産性が増加するが、紡糸口金14のコイル当りのナノファイバの生産性(PPC)は減少する。コイルの距離(d)を1cmから2cmまでの範囲内において増加すると、ナノファイバ形成の生産性が増加する。しかしながら、その距離が2cmを超えると生産性が減少する。コイルの距離dの増加は、PPCを増加させ、電気紡糸の効率の増加を示唆する。
【0048】
図5(c)および図5(e)に示されているとおり、全体的なナノファイバの生産性は、より大きなコイル直径Φに伴って増加する。これは、より大きいコーティングされた表面積が、ポリマ・ジェットの形成するためのより多くの場所を提供する結果であると見られる。より大きいワイヤ直径Φw(図5(e))を使用してもナノファイバの生産性が増加する。
【0049】
図5(d)および図5(f)は、より高い印加電圧の使用時に期待される生産性の増加を示している。より高い印加電圧もまた、より狭い直径分布を伴うより細いファイバを生産する。印加電圧が60kVのときは、平均のファイバ直径が237nmであった。予測されたとおり、ナノファイバの生産性は、より大きな収集距離Gの使用時に減少した。また、より高いPVA濃度がファイバの直径を増加させ、ナノファイバの生産性を低減させることも明らかになった。
【0050】
図6(a)および図6(b)は、有限要素解析(FEMLAB3.4を使用)を使用して計算された、らせんコイル紡糸口金14の電界強度を図示している。この解析は、管状コイル紡糸口金14についての電界線が、紡糸口金14のコイルのワイヤ・ループの小さい曲率半径に起因して、ワイヤ表面の周囲に集中したことを示している。この電界は、電気紡糸中にポリマ・ジェットを開始する主要な駆動力である。これに関して言えば、より強い電界によって帯電されたポリマ溶液がより容易にジェットを生成し、より多く引き伸ばし、それによってより高いナノファイバの生産性が結果としてもたらされる。
【0051】
電界強度プロファイルに対するコイル寸法の効果を図7および図8に示す。図7に示されているとおり、電界強度は、紡糸口金14のコイル表面から対電極16に向かって急激に減衰する。図8は、外側コイル(または紡糸口金の先端)における電界強度が、先端から離れているコイルより大きいことを示している。この強度における差は、外側コイルの少なくとも一部のコイル直径を小さくすることによって解決可能であった。
【0052】
(結論)
管状らせんコイル紡糸口金14のトップ部分において、多数のナノファイバ形成ジェットを同時に生成することが可能である。この装置10を使用して製造されるナノファイバは、従来的なニードル電気紡糸システムによって製造されたものよりも細い平均ファイバ直径を有する。生産性およびファイバの形態は、コイルの形状ならびに装置10の動作パラメータを調整することによって最適化可能である。
【0053】
〔第2の実施形態−円錐状コイル紡糸口金〕
(実験装置)
図9を参照すると、本発明の第2の実施態様による電気紡糸装置50が示されている。この電気紡糸装置50は、円錐状ワイヤ・コイル紡糸口金54を含む帯電電極52、対電極56、および帯電電極52と対電極56の間に接続される高電圧電源62(この場合は、ガンマ・ハイ・ボルテージ・リサーチ(Gamma High Voltage Research)のモデルES100Pの電源とする)を含む。対電極56は、紡糸口金54の下方に位置決めされる金属メッシュのプレートを包含する。
【0054】
図示されている紡糸口金54は、1mmのワイヤ直径を有する銅ワイヤから作られた円錐状に成形されたワイヤ・コイルを包含する。紡糸口金54は、高さが15mmであり、約120°の円錐角を有する。紡糸口金54のワイヤは、高電圧電源に接続されている。
【0055】
紡糸口金54は、開いたトップ表面から基点(a base point)まで伸びる閉じた円錐であり、液体容器58を円錐の内側に画定し、その中にポリマ溶液60を保持することができる。図10に示されているとおり、紡糸口金54のコイルのループ64、65の間の間隔は約1mmであり、対電極56と紡糸口金54との間における電位差が臨界値より低い場合、ポリマ溶液の表面力およびポリマ溶液の粘弾的な性質がそのループ64、65の間に、および容器58内にポリマ溶液を実質的に保持することを可能にする(図10(a)に示されている)。図10(b)に示されているとおり、ポリマ溶液は、対電極56と紡糸口金54との間の電気紡糸ゾーン内の電位差が臨界値に到達した場合、ループ64、65の表面上およびループ64、65の間の液体表面上において液体ジェットを(テイラー・コーンの形状で)形成する。
【0056】
実験的目的のため、ナノファイバを形成するポリマ溶液として、アルドリッチ‐シグマ(Aldrich‐Sigma)から入手可能なPVA(96%加水分解された平均分子量が146,000〜186,000のPVA)が使用された。そのほかのポリマ溶液もまた、図示された装置を使用するナノファイバ形成に使用することが可能である。槽58内のポリマ溶液60は、紡糸口金52を介して電源62と電気的に接続される。対電極56は、電源62のグラウンド電極に接続されており、装置50を使用して形成されるナノファイバの収集に使用される。
【0057】
比較する目的のため、0.82mmの外径および0.51mmの内径のニードル規格(needle gauge)を有する従来的なニードル電気紡糸装置(図示せず)が使用され、同一のPVAポリマ溶液を使用し、22kVの印加電圧および15cmの収集距離を用いてナノファイバの電気紡糸が行われた。
【0058】
実験的な実行において製造されたナノファイバの平均のファイバ直径が、画像解析ソフトウエアのImagePro+4.5を補助としてナノファイバのSEM写真から計算された。
【0059】
(実験結果)
電気紡糸のために、ワイヤ・コーン紡糸口金54に粘性PVA溶液が満たされた。続いて電源62を使用して高電圧がワイヤ・コイル紡糸口金14と対電極56との間に印加された。これが、帯電されたポリマ溶液を紡糸口金14のコイルのワイヤ・ループ64、65の間に移動させ、それが、図10(b)に示されているとおり、それらのループ64、65の外側表面を覆う。続いて多数のジェット68が主としてループ64、65の円錐状ワイヤ表面上に生成された。これらのジェット68は、表面上に充分なポリマ溶液を有するワイヤ表面上のエリアから生成された。ジェット68は、そのエリアからの溶液が一時的に枯渇すると形成を停止し、表面上のポリマ溶液が充分な第2の隣接エリア内で開始した。これは、第1のエリアにポリマ溶液が補充されることを可能にし、ほかの隣接表面のポリマ溶液が枯渇したときにジェット68を再形成することを可能にする。ジェット68を生成する最小電圧が45kVであり、コロナ放電の発生を導く最小電圧が70kVであることがわかった。ナノファイバは、45kVと70kVとの間において、装置50を使用して全く困難を伴うことなく電気紡糸することが可能であった。
【0060】
円錐状コイル紡糸口金54を使用してナノファイバ紡糸が行われた代表的なナノファイバ形態をSEM画像の形状で図11に示す。異なる印加電圧において9重量%のPVA溶液から電気紡糸されるナノファイバは、すべてビードのない(bead−free)繊維性の形態を示した。比較する目的のため、ニードル・ベースの電気紡糸デバイスを使用して製造されたナノファイバのファイバ形態を図12に示す。ニードル・ベースの電気紡糸デバイスを使用して製造された紡がれたままのファイバもまた、良好なファイバの一様性を示す。
【0061】
図13(a)は、円錐状コイル電気紡糸装置50および従来的なニードル電気紡糸装置の印加電圧へのボリューム・レートならびに平均ファイバ直径の依存度を表示する。図は、印加電圧における変動が、コイル50およびニードル装置の両方においてファイバの細かさに変化が導かれたことを示している。ワイヤ・コイル装置50の場合には、印加電圧を45kVから50kVに増加すると、平均ファイバ直径が327±123nmから275±113nmに低減された。電圧をさらに増加すると、ファイバの直径ならびに分布におけるわずかな変化が結果としてもたらされた。それと比較して、ニードル装置については、印加電圧を8kVから16kVに増加すると平均ファイバ直径が増加した。印加電圧の範囲(8〜24kV)におけるファイバの直径の変動は、353.4±85nmと413±48nmとの間であった。全体として言えば、ワイヤ・コイル装置50による電気紡糸ナノファイバについての平均ファイバ直径は、ニードル電気紡糸から製造されるナノファイバより小さかった。
【0062】
この電気紡糸システムについてのファイバの生産性は、ボリューム・レートに基づいて評価することが可能である。図13(a)に与えられているボリューム・レート・データによれば、円錐状コイル電気紡糸装置50を使用した乾燥ナノファイバを製造するためのもっとも高い生産率は、45kVにおいて0.86g/時、および70kVにおいて2.75g/時であると計算された。それと比較して、ニードル電気紡糸装置の場合の乾燥ナノファイバのもっとも高い製造率は、ボリューム・レート値に基づく計算によれば、8kVにおいて0.018g/時、および24kVにおいて0.207g/時であった。
【0063】
異なる濃度のPVA溶液から電気紡糸されたナノファイバの平均直径を図13(b)に示す。同一の印加電圧の下においては、PVA濃度の増加とともに、平均ファイバ直径および直径の分布の両方がわずかに増加する。それと比較して、もっとも細いナノファイバを生成するのに最適化された条件の下において、ニードル電気紡糸によって電気紡糸されたナノファイバの直径データも図13(b)に示す。PVA濃度が同一の場合には、円錐状コイル紡糸口金から製造されるナノファイバが常により小さい平均ファイバ直径を有していた。
【0064】
図14は、有限要素解析(FEMLAB3.4を使用)を使用して計算された、円錐状コイル紡糸口金54の電界強度プロファイルを示している。これに示されているとおり、円錐状ワイヤ・コイル紡糸口金54は、ループのワイヤの小さい曲率半径に起因してワイヤ表面の周囲に集中する電界線を与える。隣接するワイヤの間には、より弱い電界強度の集中電界曲線も形成される。この電界は、ポリマ溶液のジェットの形成を開始するための主要な駆動力である。より高い強度の電界によって帯電されたポリマ溶液は、より容易にジェットを生成し、それらのジェットが、より強い力の下に引き伸ばされ、したがってより細いファイバを製造することになる。
【0065】
(結論)
円錐状ワイヤ・コイル紡糸口金54を使用するPVAナノファイバの電気紡糸は、円錐状コイル表面上に同時に、大量の液体ジェットを生成し、良好なファイバの生産性を提供する。さらにまた、結果として得られるナノファイバは、従来的なニードル電気紡糸システムによって製造されたものより細い平均ファイバ直径を有する。
【0066】
〔第3の実施形態−ディスク紡糸口金〕
(実験装置)
まず、図16を参照すると、本発明の第3の実施態様による電気紡糸装置110が示されている。この電気紡糸装置110は、回転可能なディスク紡糸口金114を含む帯電電極112、回転可能なドラム型対電極116、ポリマ溶液120が入れられた槽118、および帯電電極112と対電極116との間に接続される高電圧電源122(この場合は、ガンマ・ハイ・ボルテージ・リサーチ(Gamma High Voltage Research)のモデルES100Pの電源とする)を含む。対電極116は、紡糸口金114と平行であり、その長さにわたってその上方に位置決めされた金属ドラムを包含する。図示していないが、紡糸口金114および対電極116それぞれの回転は、電気モータ等の紡糸口金114および対電極116のそれぞれを40rpmの速度で回転する駆動手段によって駆動される。
【0067】
図示されている紡糸口金114は、長さが2mm、直径が8cmのアルミニウム・ディスクである。紡糸口金114は、槽118と対電極116との間に位置決めされ、ボトム部分が、槽118内のポリマ溶液120の中に部分的に浸漬される。槽118内における紡糸口金114のゆっくりとした回転は、紡糸口金114のワイヤの表面上にポリマ溶液の薄い層をコーティングする。これらのコーティングされた部分が、槽118と対電極116との間の位置へ、軸124に関して回転する。
【0068】
実験的目的のため、ナノファイバの形成にはアルドリッチ‐シグマ(Aldrich‐Sigma)から入手可能なPVA(96%加水分解された平均分子量が146,000〜186,000のPVA)を包含する水溶性のポリマ溶液120が使用された。そのほかのポリマ溶液もまた、図示された装置を使用するナノファイバ形成に使用することが可能である。槽118内のポリマ溶液120は、浸漬された電極(図示せず)を介して電源122と電気的に接続される。対電極116は、電源122のグラウンド電極に接続されており、装置110を使用して形成されるナノファイバの収集に使用される。
【0069】
比較する目的のため、長さが20cm、直径が8cmのアルミニウム製の円筒紡糸口金が、図16に示されているディスク紡糸口金114のために使用されたものと類似する実験装置において使用された。
【0070】
実験的な実行において製造されたナノファイバの平均のファイバ直径が、画像解析ソフトウエアのImagePro+4.5を補助としてナノファイバのSEM写真から計算された。
【0071】
(実験結果)
電気紡糸中、紡糸口金114のゆっくりとした回転によってディスク紡糸口金114の表面上に粘性PVA溶液が載せられた。その後、ポリマ溶液と収集ドラムとの間に高電圧が印加され、紡糸口金114のトップ表面上に複数のポリマ・ジェットが形成された。ジェット/フィラメントの形成は、主として印加電圧およびポリマ濃度による影響を受けた。
【0072】
ディスク紡糸口金114については、印加電圧が42kVより低いとき、液体ジェットがまったく形成されなかった。印加電圧がこの臨界電圧より高くなると、ジェットが主としてディスク・エッジの両側から生成された。印加電圧の増加は、電気紡糸プロセスに対して殆ど影響を示さなかった。それと比較すると、円筒紡糸口金を使用する電気紡糸は、印加電圧へのより高い依存度を示した。円筒紡糸口金からジェットを生成するための臨界印加電圧は約47kVであった。高い印加電圧にもかかわらず、円筒の2つのエンド・エリアからだけジェットが生成されたに過ぎない。印加電圧が57kVに到達するまで、中央の円筒表面からジェット/フィラメントの生成がなかった。より高い印加電圧が、全体の円筒表面からのジェットの生成を導いた。円筒紡糸口金の軸方向の長さが、より幅の狭いディスク紡糸口金114と比較すると、より大きな効果を電界に対して有していたと考えられる。
【0073】
図17および図18のSEM画像に示されているとおり、ファイバの形態もまた、印加電圧による影響を受けた。SEM画像から計算された平均ファイバ直径の依存度を図19(a)に示す。これに示されるとおり、ディスク紡糸口金114から電気紡糸されたナノファイバは、ビードのない繊維性の構造を示した。
【0074】
図19(a)には、47kVから62kVまでの印加電圧における増加によって平均ファイバ直径がわずかに減少し、直径の分布が狭くなったことが示されている。円筒紡糸口金については、平均ファイバ直径ならびに直径の分布が、印加電圧への非常に小さい依存度を示した。47kVと62kVとの間における印加電圧の変化は、ファイバの直径ならびに分布における変化を殆ど導かなかった。
【0075】
印加電圧のほかに、紡糸口金と収集器との間の距離もまた、電気紡糸プロセスおよびファイバの形態に影響を与えた。なお、ディスク電気紡糸システムについての紡糸口金114と収集器との間の距離は、11cmと19cmとの間において調整可能であった。より短い紡糸距離は、濡れたファイバをもたらし、収集器上において混合してポリマの膜を形成し、これに対して、より長い紡糸距離は、弱い電界に起因して電気紡糸の杜絶を結果としてもたらした。円筒電気紡糸システムについては、電気紡糸距離の範囲が狭く、11cmから15cmまでの範囲であった。
【0076】
図19(b)は、ポリマ濃度が電気紡糸プロセスおよびファイバの形態に影響を及ぼす重要な要因であったことを示している。印加電圧を57kVとして、両方のシステムから電気紡糸されたナノファイバは、高い濃度のPVA溶液が使用された場合に直径の増加を示した。ディスク紡糸口金によって電気紡糸された紡がれたままのファイバは、円筒紡糸口金によるものと比べて、はるかに狭い直径分布を伴った、より細いファイバを有していた。ディスク紡糸口金114から電気紡糸されたナノファイバは、円筒紡糸口金から電気紡糸されたナノファイバよりPVA濃度に対する依存度が低いことを示した。
【0077】
図19(c)は、円筒電気紡糸ユニットの生産性が印加電圧およびポリマ濃度によって影響されたことを示している。両方の電気紡糸システムについて、製造率は、印加電圧の増加に伴って増加した。
【0078】
図20は、有限要素解析(FEMLAB3.4を使用)を使用して計算された、紡糸口金表面の周囲、および電気紡糸ゾーン(紡糸口金先端から収集器まで)内の電界プロファイルを、円筒紡糸口金(図20a)およびディスク紡糸口金114(図20b)について示している。ディスク紡糸口金114は、円筒紡糸口金とは異なる電界プロファイルを有する。ディスク紡糸口金の周囲の電界線は、周辺のエッジ・エリアに集中した。しかしながら、円筒に関する電界は、円筒の先端に集中した。ナノファイバの形成を導くジェットの開始は、紡糸口金表面の周囲の電界強度によって強く影響される。円筒表面に沿う電界強度は、円筒の両端においてより高く、中央表面エリアに向かって漸進的に低くなる。円筒の端における電界強度が円筒の中央の表面より高いことは、印加電圧が低い時に円筒表面の両端だけからジェット/フィラメントが生成される主要な理由となり得る。円筒表面と同様に、ディスク紡糸口金114のディスク表面上における電界強度もディスクのトップから液体表面に向かって減衰する。印加電圧の増加とともに、表面全体にわたる電界強度が増加する。
【0079】
(結論)
回転する金属ディスク表面からPVAナノファイバの電気紡糸を行うことが可能である。電気紡糸中、ナノファイバが主としてエッジ・エリアから製造され、電気紡糸プロセスを開始するための電圧は、42kV(PVA、9重量%)であった。印加電圧の増加とともに、ディスク紡糸されるナノファイバがより細くなり、直径の分布がより狭くなった。同じ条件の下においては、ディスク紡糸口金から生成されたナノファイバの方が円筒紡糸口金によって製造されるものより細かった。さらに、ディスク紡糸口金の電気紡糸製造率は、同じ直径の円筒紡糸口金と類似である。
【0080】
〔第4の実施形態−マルチディスク/マルチコイル紡糸口金〕
(マルチディスク装置)
図21を参照すると、帯電マルチディスク紡糸口金204、ポリマ溶液203のための容器202、および対電極206を含む電気紡糸装置が示されている。紡糸口金204と対電極206との間に高電圧電源(図示せず)が接続されることになると理解されるものとする。対電極206は、紡糸口金204と長さ方向に平行であり、その上方に位置決めされた間隔を設けている2つの金属ドラム210およびベルト211を含む。
【0081】
図示されているとおり、紡糸口金204は、金属製のディスク212を包含する複数の回転可能なファイバ生成器を含む。シャフト205に沿って隣り合う各2つのディスク212の間の距離は15cmである。隣り合う2つのシャフト(中心軸)の間の距離は55cmである。ディスク212の直径は80cmであり、それの厚さは2mmである。
【0082】
(実験結果)
電気紡糸中、ディスク212のゆっくりとした回転によってディスク紡糸口金204の表面上に粘性PVA溶液(前述の実施例の中で述べた溶液に類似)が載せられた。その後、ポリマ溶液203と収集器206との間に高電圧が印加され、ディスク212のトップ表面上に複数のポリマ・ジェットが形成された。
【0083】
ジェット/フィラメントの形成は、主として印加電圧およびポリマ溶液203のポリマ濃度による影響を受けることが明らかになった。
【0084】
(複数のらせんコイル)
紡糸口金218が、1を超える数の管状コイルを含むことも可能であり、電気紡糸装置の生産性を増加できる。図22に2コイル装置を図示する。図示された紡糸口金218は、2つの管状コイル220、221を含み、それぞれが別々の中心軸222、223の上に取付けられている。中心軸222、223は、コイルの半径と等しい距離からコイルの半径の10倍までの距離によって半径方向に間隔を設けている。コイルは、同じ方向または反対の方向のいずれにも回転することが可能である。
【0085】
紡糸口金218は、電気紡糸装置内において、図1および2に示されている電気紡糸装置10との関係で単一コイルの紡糸口金12について記載した態様と類似の態様で動作する。
【0086】
〔第5の実施形態−空気流強化電気紡糸〕
(実験装置)
基本的な紡糸口金230の空気流装置を図23に図示する。この紡糸口金230は、電気紡糸装置内の紡糸口金218内において、図16に示されている電気紡糸装置110内のディスク紡糸口金114について記載した態様と類似の態様で動作する。しかしながら、この装置においては電気紡糸ゾーン内に管状のノズル232が含められており、それが、紡糸口金230から対電極(図示されていないが、一般に紡糸口金230の上方に配置される)に向う方向へ空気流を指向させる。
【0087】
この装置においては、空気流が使用されて電気紡糸が強化される。空気流は、ノズル232または電気紡糸装置の周囲のほかのエリアから、ファイバ生成器(この場合はリング紡糸口金230)から収集器(図示せず)に向う方向の空気流を伴って適用することが可能である。全体的な空気流量率は、紡糸口金230の長さおよび構造に依存するが、概して60ml/分と6L/分との間の範囲である。
【0088】
(実験結果)
図24に、管状のノズル232からの空気流の存在あり(図24(a))およびなし(図24(b))の場合の、図23に示した装置から電気紡糸されたナノファイバの形態を示す。
【0089】
空気流の存在がない場合(図24(a))には、電気紡糸中における不充分な溶剤の蒸発のために、収集されるファイバの相互のブリッジが生じ得るので、相互接続された繊維性の構造となる。
【0090】
しかしながら、空気流が適用されると(図24(b))、収集されるファイバがより独立して現れる。
【0091】
空気流は、ファイバの直径にも影響を与える。図25に示されているとおり、空気流強化電気紡糸は、結果として、より狭い直径分布を伴うより細いファイバをもたらす。
【0092】
当業者は認識することになるであろうが、本明細書に述べられている本発明は、特に記述されたもののほかにも変形ならびに修正が可能である。本発明が、本発明の要旨ならびに範囲内に入るその種のすべての変形および修正を含むことは理解されるものとする。
【0093】
この明細書(請求項を含む)の中で『包含する』、『包含される』、『包含している』といった表現が使用されているとき、それらは、陳述されている特徴、完全体、ステップまたは構成要素の存在を指定すると解釈されるべきであるが、そのほかの特徴、完全体、ステップ、構成要素、および/またはそれらのグループのうちの1つまたは複数の存在を排除するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界内において、静電紡糸を使用して粘性液体からナノファイバを製造するための紡糸口金であって、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている1つまたは複数の幅の狭い環状体を備える紡糸口金。
【請求項2】
前記環状体が、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている環状ループを備える、請求項1に記載の紡糸口金。
【請求項3】
前記環状ループの平均半径が5mmと1000mmとの間である、請求項2に記載の紡糸口金。
【請求項4】
前記環状ループが、略一体的に接続されて、らせんコイルを形成する、請求項2に記載の紡糸口金。
【請求項5】
前記環状ループが、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、略管状に成形されたコイルを形成する、請求項3に記載の紡糸口金。
【請求項6】
前記管状に成形されたコイルの先端、および/または、前記管状に成形されたコイルの先端の近傍における前記環状ループの半径が、前記管状に成形されたコイルの中心に近い前記環状ループの半径より小さい、請求項5に記載の紡糸口金。
【請求項7】
前記環状ループが、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、略円錐状に成形されたコイルを形成する、請求項4に記載の紡糸口金。
【請求項8】
前記円錐状に成形されたコイルが、90°と140°との間の円錐角を伴って、好ましくは110°と130°との間の円錐角を伴って構成される、請求項7に記載の紡糸口金。
【請求項9】
前記コイルの長さが、2mmより長く、好ましくは20mmと6000mmとの間である、請求項4から請求項8のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項10】
前記コイルのワイヤの直径が、0.5mmと200mmとの間、好ましくは0.7mmと50mmとの間である、請求項4から請求項9のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項11】
前記紡糸口金の前記中心軸に沿って、各隣接環状ループの間に広い軸方向の間隔が存在する、請求項2から請求項10のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項12】
前記隣接する環状ループの間の間隔が、少なくとも1mmであり、好ましくは5mmと800mmとの間である、請求項12に記載の紡糸口金。
【請求項13】
各環状ループが、各隣接環状ループの間に小さな隙間が形成されるように、前記中心軸に関して隣接する環状ループに近接して配置されている、請求項2から請求項10のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項14】
前記ループの間の間隔が、前記紡糸口金と対電極との間における電界が臨界強度に満たない場合に、粘性液体の表面力が前記液体を前記ループの間に実質的に保持することを可能にするように選択される、請求項13に記載の紡糸口金。
【請求項15】
前記らせんワイヤ・コイルが、粘性液体を保持することが可能な液体容器を前記環状ループ内に備える、請求項4および請求項4を引用する場合の請求項5から請求項14のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項16】
前記環状体が、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている1つまたは複数のディスクおよび/またはリングを備える、請求項1に記載の紡糸口金。
【請求項17】
前記紡糸口金が、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に関して回転可能な単一のディスクまたはリングを備える、請求項16に記載の紡糸口金。
【請求項18】
前記紡糸口金が、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に関して回転可能な2つまたはそれより多くの数のディスクおよび/またはリングを備え、各ディスクが、前記中心軸に沿って間隔を設けている、請求項16に記載の紡糸口金。
【請求項19】
前記隣接する環状ループの間の間隔が、少なくとも1mmであり、好ましくは5mmと800mmとの間である、請求項18に記載の紡糸口金。
【請求項20】
電界内において粘性液体からナノファイバを製造するための静電紡糸装置であって、
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの紡糸口金を含む帯電電極と、
前記帯電電極から間隔を設けている対電極と、
粘性液体を保持するための液体容器であって、前記紡糸口金の少なくとも1つの表面と液体連通する液体容器と、
前記帯電電極と前記対電極との間において電気的に接続される電源であって、前記帯電電極を電気的に帯電させ、かつ、前記帯電電極と前記対電極との間に電位差を供給可能な電源と、を備える静電紡糸装置。
【請求項21】
さらに、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の紡糸口金を少なくとも2つ備え、前記紡糸口金のそれぞれが中心軸を含み、各紡糸口金のそれぞれの前記中心軸が互いに関して半径方向に間隔を設けている、請求項20に記載の静電紡糸装置。
【請求項22】
前記対電極が、前記紡糸口金の前記中心軸に対して略平行に向けられる、請求項20または請求項21に記載の静電紡糸装置。
【請求項23】
前記対電極が、前記紡糸口金の長さに沿って実質的に延びる、請求項20、請求項21、または請求項22のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項24】
前記対電極が、ナノファイバ製品を収集することが可能な回転する管状本体を備える、請求項20から請求項23のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項25】
前記容器が前記紡糸口金内に形成される、請求項20から請求項24のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項26】
前記紡糸口金が、略一体的に接続されて、らせんコイルを形成する環状ループを含み、前記ループは、前記対電極と前記紡糸口金との間における電位差が臨界値より低い場合に、粘性液体の表面力が前記液体を前記ループの間および前記容器内に保持することを可能にする距離によって間隔を設けている、請求項25に記載の静電紡糸装置。
【請求項27】
前記対電極が、前記紡糸口金の前記中心軸に対して略垂直に向けられる、請求項20に記載の静電紡糸装置。
【請求項28】
前記対電極が、前記紡糸口金の下方に配置され、その場所における前記紡糸口金の幅と少なくとも等しいエリアと外接し、前記紡糸口金が、前記粘性流体が前記容器から前記紡糸口金の下方に配置された対電極に向って下向きに流れることを可能にするように構成される、請求項27に記載の静電紡糸装置。
【請求項29】
前記対電極が、前記紡糸口金の下方に配置されるプレートを備える、請求項27または請求項28に記載の静電紡糸装置。
【請求項30】
前記電源が、前記帯電電極と前記対電極との間に、30kVより大きい、好ましくは40kVより大きい電位差を生成する、請求項20から請求項29のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項31】
前記帯電電極が、100mmと600mmとの間の間隔を前記対電極から設けている、請求項20から請求項30のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項32】
前記粘性液体がポリマ溶液である、請求項20から請求項31のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項33】
前記容器が、前記紡糸口金の一部が浸漬される液槽を備え、前記紡糸口金が、前記紡糸口金の表面上に前記粘性液体の一部をコーティングし、そのコーティングされた表面を液体容器の外へ移動させるために、前記中心軸に関して回転するように構成される、請求項20から請求項32のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項34】
さらに、排出口が前記紡糸口金に近接して位置する流体源含み、前記流体源が、一般に前記紡糸口金から前記対極へ向って流れるよう指向される流体流を有する、請求項20から請求項33のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項35】
請求項1から請求項34のいずれか一項に記載の装置から製造されるナノファイバおよび/または不織ナノファイバ・マット。
【請求項1】
電界内において、静電紡糸を使用して粘性液体からナノファイバを製造するための紡糸口金であって、中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている1つまたは複数の幅の狭い環状体を備える紡糸口金。
【請求項2】
前記環状体が、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている環状ループを備える、請求項1に記載の紡糸口金。
【請求項3】
前記環状ループの平均半径が5mmと1000mmとの間である、請求項2に記載の紡糸口金。
【請求項4】
前記環状ループが、略一体的に接続されて、らせんコイルを形成する、請求項2に記載の紡糸口金。
【請求項5】
前記環状ループが、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、略管状に成形されたコイルを形成する、請求項3に記載の紡糸口金。
【請求項6】
前記管状に成形されたコイルの先端、および/または、前記管状に成形されたコイルの先端の近傍における前記環状ループの半径が、前記管状に成形されたコイルの中心に近い前記環状ループの半径より小さい、請求項5に記載の紡糸口金。
【請求項7】
前記環状ループが、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、略円錐状に成形されたコイルを形成する、請求項4に記載の紡糸口金。
【請求項8】
前記円錐状に成形されたコイルが、90°と140°との間の円錐角を伴って、好ましくは110°と130°との間の円錐角を伴って構成される、請求項7に記載の紡糸口金。
【請求項9】
前記コイルの長さが、2mmより長く、好ましくは20mmと6000mmとの間である、請求項4から請求項8のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項10】
前記コイルのワイヤの直径が、0.5mmと200mmとの間、好ましくは0.7mmと50mmとの間である、請求項4から請求項9のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項11】
前記紡糸口金の前記中心軸に沿って、各隣接環状ループの間に広い軸方向の間隔が存在する、請求項2から請求項10のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項12】
前記隣接する環状ループの間の間隔が、少なくとも1mmであり、好ましくは5mmと800mmとの間である、請求項12に記載の紡糸口金。
【請求項13】
各環状ループが、各隣接環状ループの間に小さな隙間が形成されるように、前記中心軸に関して隣接する環状ループに近接して配置されている、請求項2から請求項10のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項14】
前記ループの間の間隔が、前記紡糸口金と対電極との間における電界が臨界強度に満たない場合に、粘性液体の表面力が前記液体を前記ループの間に実質的に保持することを可能にするように選択される、請求項13に記載の紡糸口金。
【請求項15】
前記らせんワイヤ・コイルが、粘性液体を保持することが可能な液体容器を前記環状ループ内に備える、請求項4および請求項4を引用する場合の請求項5から請求項14のいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項16】
前記環状体が、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に沿って軸方向に間隔を設けている1つまたは複数のディスクおよび/またはリングを備える、請求項1に記載の紡糸口金。
【請求項17】
前記紡糸口金が、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に関して回転可能な単一のディスクまたはリングを備える、請求項16に記載の紡糸口金。
【請求項18】
前記紡糸口金が、前記中心軸に関して半径方向に中心設定され、かつ、前記中心軸に関して回転可能な2つまたはそれより多くの数のディスクおよび/またはリングを備え、各ディスクが、前記中心軸に沿って間隔を設けている、請求項16に記載の紡糸口金。
【請求項19】
前記隣接する環状ループの間の間隔が、少なくとも1mmであり、好ましくは5mmと800mmとの間である、請求項18に記載の紡糸口金。
【請求項20】
電界内において粘性液体からナノファイバを製造するための静電紡糸装置であって、
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの紡糸口金を含む帯電電極と、
前記帯電電極から間隔を設けている対電極と、
粘性液体を保持するための液体容器であって、前記紡糸口金の少なくとも1つの表面と液体連通する液体容器と、
前記帯電電極と前記対電極との間において電気的に接続される電源であって、前記帯電電極を電気的に帯電させ、かつ、前記帯電電極と前記対電極との間に電位差を供給可能な電源と、を備える静電紡糸装置。
【請求項21】
さらに、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の紡糸口金を少なくとも2つ備え、前記紡糸口金のそれぞれが中心軸を含み、各紡糸口金のそれぞれの前記中心軸が互いに関して半径方向に間隔を設けている、請求項20に記載の静電紡糸装置。
【請求項22】
前記対電極が、前記紡糸口金の前記中心軸に対して略平行に向けられる、請求項20または請求項21に記載の静電紡糸装置。
【請求項23】
前記対電極が、前記紡糸口金の長さに沿って実質的に延びる、請求項20、請求項21、または請求項22のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項24】
前記対電極が、ナノファイバ製品を収集することが可能な回転する管状本体を備える、請求項20から請求項23のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項25】
前記容器が前記紡糸口金内に形成される、請求項20から請求項24のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項26】
前記紡糸口金が、略一体的に接続されて、らせんコイルを形成する環状ループを含み、前記ループは、前記対電極と前記紡糸口金との間における電位差が臨界値より低い場合に、粘性液体の表面力が前記液体を前記ループの間および前記容器内に保持することを可能にする距離によって間隔を設けている、請求項25に記載の静電紡糸装置。
【請求項27】
前記対電極が、前記紡糸口金の前記中心軸に対して略垂直に向けられる、請求項20に記載の静電紡糸装置。
【請求項28】
前記対電極が、前記紡糸口金の下方に配置され、その場所における前記紡糸口金の幅と少なくとも等しいエリアと外接し、前記紡糸口金が、前記粘性流体が前記容器から前記紡糸口金の下方に配置された対電極に向って下向きに流れることを可能にするように構成される、請求項27に記載の静電紡糸装置。
【請求項29】
前記対電極が、前記紡糸口金の下方に配置されるプレートを備える、請求項27または請求項28に記載の静電紡糸装置。
【請求項30】
前記電源が、前記帯電電極と前記対電極との間に、30kVより大きい、好ましくは40kVより大きい電位差を生成する、請求項20から請求項29のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項31】
前記帯電電極が、100mmと600mmとの間の間隔を前記対電極から設けている、請求項20から請求項30のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項32】
前記粘性液体がポリマ溶液である、請求項20から請求項31のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項33】
前記容器が、前記紡糸口金の一部が浸漬される液槽を備え、前記紡糸口金が、前記紡糸口金の表面上に前記粘性液体の一部をコーティングし、そのコーティングされた表面を液体容器の外へ移動させるために、前記中心軸に関して回転するように構成される、請求項20から請求項32のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項34】
さらに、排出口が前記紡糸口金に近接して位置する流体源含み、前記流体源が、一般に前記紡糸口金から前記対極へ向って流れるよう指向される流体流を有する、請求項20から請求項33のいずれか一項に記載の静電紡糸装置。
【請求項35】
請求項1から請求項34のいずれか一項に記載の装置から製造されるナノファイバおよび/または不織ナノファイバ・マット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2012−505972(P2012−505972A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531306(P2011−531306)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001373
【国際公開番号】WO2010/043002
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511095676)ディーキン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001373
【国際公開番号】WO2010/043002
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511095676)ディーキン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
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