説明

静電荷像現像用トナー用結着樹脂、静電荷像現像用トナー用結着樹脂分散液及び、静電荷像現像用トナー並びにそれらの製造方法

【課題】 低温で直接重縮合することにより得ることのできる静電荷像現像用トナー用結着樹脂を提供すること。さらに、該結着樹脂を粉砕法、凝集合一法を始めとする静電荷像現像用トナーの製法に適用することにより、粉砕性や粉体流動性に優れ、高い画像品質を有する静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】 ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるトナー用結着樹脂であって、該ポリカルボン酸の50mol%以上100mol%以下が芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を含む特定の化合物よりなり、該ポリオールの50mol%以上100mol%以下がビスフェノール骨格基を含む特定の化合物よりなり、かつ樹脂中の触媒由来の金属元素が100ppm以下であることを特徴とする静電荷像現像トナー用結着樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法又は静電記録法等により形成される静電潜像を現像剤により現像する際に用いられる静電荷像現像用トナー用結着樹脂及び該結着樹脂を混練粉砕して製造される静電荷像現像用トナーに関する。さらに、該結着樹脂より製造される静電荷像現像用トナー用結着樹脂分散液及び、これを用いて製造される静電荷像現像用トナーに関する。また、本発明は、前記静電荷像現像トナーを用いた静電荷像現像剤、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル化技術の急速な普及により、一般家庭、オフィス、パブリッシング領域のユーザーにおけるプリント、コピーなどのアウトプットにおける高画質化が要求されているが、その一方で、持続可能な社会の実現に向け、企業活動及び、その活動の成果である製品に対する低エネルギー、省エネルギー化要求が高まっている。そこで、電子写真法又は静電記録法等による画像形成法においても、多くのエネルギーを消費する定着工程の省電力化や、その材料を使用して製品を製造する工程の低環境負荷活動を実施することが必要となっている。前者に対応する対策としては、トナーの定着温度をより低温化させる等の対策を挙げることができる。トナー定着温度を低温化させることにより、省電力化に加え、電源入力時の定着部材表面の定着可能温度までの待ち時間、いわゆるウォームアップタイムの短時間化、定着部材の長寿命化が可能である。
【0003】
ところで、トナーの結着樹脂としては、従来よりビニル系重合体が広く使用されており、非オフセット性を得るために高分子量の重合体の使用が提案されているが、高分子量のビニル系重合体はその軟化点が高いため、優れた光沢性を備えた定着像を得るためには、ヒートローラの温度を高く設定する必要があり、省エネルギーに逆行することになる。また、ビニル系重合体を使用したトナーは、可塑化された塩化ビニルの可塑剤に侵され易く、可塑剤と接触してトナー自体が可塑化され、粘着性を帯びるようになり、可塑化された塩化ビニル製品を汚染するという問題(以下、耐塩化ビニル特性という)がある。
【0004】
これに対し、ポリエステル樹脂は、耐塩化ビニル特性に優れ、また、低分子量のものを比較的容易に製造できる。さらに、ビニル系重合体を結着樹脂として配合したトナーに比べて、ポリエステル樹脂を結着樹脂として配合したトナーは、溶融したときの転写紙等の支持体への濡れが良く、ほぼ等しい軟化点を有するビニル系重合体を使用した場合に比べて、より低い温度で十分な定着を行える利点もあることから、ポリエステル樹脂が省エネルギートナーの結着樹脂として多く使用されている。
【0005】
特許文献1においても、結着樹脂としてテレフタル酸/ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/シクロヘキサンジメタノールから得たポリエステル、例えば数平均分子量3,000〜3,600、重量平均分子量8,700〜9,500、軟化点100〜125℃、ガラス転移点55〜68℃が使用されているが、このポリエステルは、材料の特性に起因する高強度により製造安定性に優れ、定着強度も優れているが、トナー製造時における粉砕性が極めて悪い。
【0006】
このように、ポリエステル結着樹脂としては、主としてテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族多価カルボン酸と、フマル酸、マレイン酸等の脂肪族不飽和カルボン酸類と、ビスフェノール構造を有するジオール類、脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールの重縮合により得られる非結晶性ポリエステル樹脂が従来使用されており、特許提案も多数なされている。また、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環族ジカルボン酸に関する検討も実施されてきている。
例えば、特許文献2及び特許文献3には多価カルボン酸成分としてシクロヘキセンジカルボン酸(シクロヘキシレンジカルボン酸)の無水物ないしシクロヘキサンジカルボン酸無水物と、ビスフェノール構造を有する多価アルコールから常圧重合法により得られるポリエステル樹脂を用いた電子写真用トナー組成物に関する提案がある。この発明は、ポリエステル樹脂のガラス転移点を高め、トナーの保存安定性を改善することを目的としているが、この製法では脂環族多価カルボン酸を用いた場合、常圧重合法においては、分子量を上げることが困難で、低分子量の樹脂しか得ることができず、かえって保存安定性を損なう場合がある。
【0007】
また、特許文献4には、シクロヘキサンジカルボン酸を5%以上含有する多価カルボン酸類と、主として脂肪族ジオール又は脂環族ジオールからなり芳香族多価アルコールの含有量が5モル%以下である多価アルコール類との重縮合によって得られる、ガラス転移点が50℃以上のポリエステル樹脂を主構成成分として含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが提案されており、この組み合わせにより、熱定着時のオフセット現象を回避し、高品位の画像を得ることができるとされている。
同様に、特許文献5には、透明性の改善を目的として、多価アルコールが少なくともシクロヘキサン骨格を有する水素化ビスフェノールからなることを特徴とするポリエステル樹脂が提案されている。
また、特許文献6には、耐加水分解性向上を目的として、ポリエステルの構成成分のうち、ジカルボン酸成分の主成分が脂環式ジカルボン酸成分であり、ジオール成分の80〜99.95モル%が脂環式ジオール成分、0.05〜20モル%が炭素数2〜10のアルキレンジオール成分であり、ある固有粘度と、ポリマー末端酸価を有するポリエステルが開示されている。
【0008】
このように、トナー特性の向上を目的とし、ポリエステル結着樹脂の原料となる重合成分に関する研究が続けられているが、ポリエステル結着樹脂の固有の問題として細線再現性の悪さという問題がある。この問題は結着樹脂中に含有される触媒によるものと考えられている。またこれらの樹脂ははいずれも、通常の高エネルギーを必要とする製法により製造されている。一般の重縮合法は、200℃を越す高温下で大動力による撹拌下、かつ高減圧下で10時間以上の時間に及ぶ反応が必要であり、大量のエネルギー消費を招く。またそのために反応設備の耐久性を得るために膨大な設備投資を必要とする場合が多い。
【0009】
一方、大量エネルギー消費型であるポリエステル樹脂の製造方法を、低エネルギー消費型へ変換する研究も報告されている。例えば、特許文献7及び特許文献8において、界面活性剤の存在下で、水中にて脱水反応を行うことを特徴とする水中脱水反応方法や重縮合法が開示されている。また特許文献9では、酵素を触媒としたポリエステルの製造方法が開示され、アルゴン雰囲気下、60℃でのセバシン酸とブタンジオールとの反応等が開示されている。特許文献10では、スカンジウムトリフラート触媒によるポリエステル合成が報告され、従来のポリエステル重縮合温度である200〜240度よりも低温である160〜200度でのブタンジオールとコハク酸類の重縮合が発明されている。
【0010】
しかしながら、これらの低温重縮合による非結晶性ポリエステルの合成例は発表されていない。例えば、非特許文献1によると、水中でドデシルベンゼンスルホン酸触媒下でデカンジオールとイソフタル酸やテレフタル酸、ビスフェノールAとセバシン酸を70℃にて反応させたところ、反応が進行しなかったことが報告されている。同様に、非特許文献2では、室温での塩化ハフニウム触媒による重縮合に関し、特殊な芳香族ジオールモノマーを用いた重縮合は成功しているが、汎用芳香族ジカルボン酸モノマーと芳香族ジオールモノマーの反応は進行しなかったと報告されている。
【0011】
このように、低温重縮合で非晶性ポリエステルが合成できないのは、非結晶性ポリエステルを構成するモノマーの反応性が低いために、上記の低エネルギー条件では十分反応しないことに起因すると推測される。
【0012】
【特許文献1】特開平4−242752号公報
【特許文献2】特開昭56−1952号公報
【特許文献3】特開昭58−17452号公報
【特許文献4】特開平10−78679号公報
【特許文献5】特開平10−130380号公報
【特許文献6】特開2004−217721号公報
【特許文献7】特開2002−55302号公報
【特許文献8】特開2003−261662号公報
【特許文献9】特開平11−313692号公報
【特許文献10】特開2003−306535号公報
【非特許文献1】Polymer journal,Vol.35, No.4,pp359-363(2003)
【非特許文献2】Science,Vol290,10, pp1140-1142(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の従来における諸問題を解決することを目的とする。即ち、本発明の目的は、低温で直接重縮合することにより得ることのできる静電荷像現像用トナー用結着樹脂を提供することである。さらに、本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を粉砕法、凝集合一法を始めとする静電荷像現像用トナーの製法に適用することにより、粉砕性や粉体流動性に優れ、高い画像品質を有する静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、以下の<1>、<5>、<8>〜<13>に記載の手段によって解決された。好ましい実施態様である<2>〜<4>、<6>、<7>とともに以下に記載する。
<1> ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるトナー用結着樹脂であって、該ポリカルボン酸の50mol%以上100mol%以下が式(1)及び/又は式(2)で表される化合物よりなり、該ポリオールの50mol%以上100mol%以下が式(3)で表される化合物よりなり、かつ樹脂中の触媒由来の金属元素が100ppm以下であることを特徴とする静電荷像現像トナー用結着樹脂、
1OOCA1m1n1lCOOR1' (1)
(A1:メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、R1、R1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2rCOOR2' (2)
(A2:メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、R2、R2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
HOXhjkOH (3)
(X:アルキレンオキサイド基、Y:ビスフェノール骨格基、1≦h+k≦10、1≦j≦3)
<2> 式(1)に記載の芳香族炭化水素基が、ベンゼン及び/又はナフタレン環状構造である<1>に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂、
<3> 式(2)に記載の脂環式炭化水素基が、シクロブタン、シクロヘキサン及びシクロヘキセン構造よりなる群から選択される少なくとも1つを含む<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂、
<4> 該結着樹脂のガラス転移温度が30℃〜75℃である<1>〜<3>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂、
<5> ポリカルボン酸とポリオールを重縮合反応させる工程を含む静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法であって、該ポリカルボン酸の50mol%以上100mol%以下が式(1)及び/又は式(2)で表される化合物よりなり、該ポリオールの50mol%以上100mol%以下が式(3)で表される化合物よりなり、かつ樹脂中の触媒由来の金属元素が100ppm以下であることを特徴とする<1>〜<4>いずれか1つに記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂の製造方法、
1OOCA1m1n1lCOOR1' (1)
(A1:メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、R1、R1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2rCOOR2' (2)
(A2:メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、R2、R2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
HOXhjkOH (3)
(X:アルキレンオキサイド基、Y:ビスフェノール骨格基、1≦h+k≦10、1≦j≦3)
<6> 重縮合反応の際にブレンステッド酸系触媒を使用する<5>に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法、
<7> 重縮合反応が70℃以上、150℃以下の温度で行われる<5>又は<6>に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法、
<8> <1>〜<4>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を分散した静電荷像現像用トナー用結着樹脂分散液、
<9> 少なくとも結着樹脂分散液を含む分散液中で該結着樹脂を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、該凝集粒子を加熱して融合させる工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記結着樹脂分散液が請求項7に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂分散液であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法、
<10> <9>に記載の製造方法により製造された静電荷像現像用トナー、
<11> <1>〜<4>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を混練粉砕して作製した静電荷像現像用トナー、
<12> <10>又は<11>に記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤、
<13> 潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナー又は静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程とを含む画像形成方法であって、前記トナーとして<10>又は<11>に記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤として<12>に記載の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記の構成を採用することにより、低温でのポリエステルの重縮合が可能となり、高画質トナーの作製と低エネルギーでの製造を両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂(本発明において、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」ともいう。)は、ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるトナー用結着樹脂であって、該ポリカルボン酸の50mol%以上100mol%以下が式(1)及び/又は式(2)で表される化合物よりなり、該ポリオールの50mol%以上100mol%以下が式(3)で表される化合物よりなり、かつ樹脂中の触媒由来の金属元素が100ppm以下であることを特徴とする。
1OOCA1m1n1lCOOR1' (1)
(A1:メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、R1、R1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2rCOOR2' (2)
(A2:メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、R2、R2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
HOXhjkOH (3)
(X:アルキレンオキサイド基、Y:ビスフェノール骨格基、1≦h+k≦10、1≦j≦3)
【0017】
従来のポリエステル樹脂においては、スズやチタンといった金属触媒存在下において、200℃以上の高温で重合しているのが一般的である。一方でポリエステルをトナー用樹脂として用いた場合には、帯電性、より具体的には粒子間に帯電量の差が少ない均一な帯電性が要求される。ところが、該金属触媒に含まれる金属は、一般に正帯電性を有し、逆にポリエステルは負帯電性を有するため、残留金属触媒の不均一な存在によって、トナー粒子間に反発等が生じる場合がある。一般に二成分現像剤においては、キャリアによりトナーの帯電は制御されるものの、現像工程、転写工程等、キャリアから離れた後のトナー間のこの僅かな反発力は制御できず、たとえば細線のエッジ部の乱れという形であらわれる。
本発明ではこの金属の量を制御することによって、従来制御が困難であった細線のエッジ部の乱れを制御し、同時に従来のポリエステルに比較して製造に消費されるエネルギー量を低下させたポリエステルを得るものである。
触媒由来の金属元素量は100ppm以下であり、75ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましい。触媒由来の金属元素量は、トナー用結着樹脂を成型したものを試料とし、蛍光X線分析装置で測定することができる。
【0018】
本発明において、重縮合により得られるポリエステル樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0019】
重縮合によるポリエステルの製造には、一般に重縮合用触媒が用いられている。これは、反応中に触媒とモノマーとの間に中間体が形成されることにより、反応性が向上し、エステル合成反応を促進する効果を有する。しかし、低温では触媒活性や反応効率が低下するために、重縮合が十分には進行しない傾向にあり、分子量や重合度の高いポリエステル樹脂が得られないことが多い。特に、非結晶性ポリエステル原料となる環状構造を有する重縮合成分では、この傾向は顕著である。
非結晶性ポリエステルは、常温での高い硬度を有するために流動性が高く、オフセット抑制、低温定着性、画像品質等の面でも、トナーに非常に適した特性を有する。主に直鎖状重縮合成分より構成される結晶性ポリエステルは、結晶性に起因するシャープメルト性を有し、低温定着性へのメリットは大きいが、粉体流動性や画像強度に劣るという欠点がある。
【0020】
非結晶性ポリエステルを構成する環状重縮合成分と、結晶性ポリエステルを構成する直鎖状重縮合成分との反応性の大きな相違は、その構造から導かれる反応性の差異が原因の一つであると推測される。環状重縮合成分は、その回転運動を抑制された硬い構造のために、特に低温下で分子の動きが直鎖状重縮合成分よりも制限されやすい。また、特に芳香環を有する重縮合成分は、芳香環と重縮合反応性官能基との間に共鳴構造を形成しやすく、このために反応中間体が共鳴安定化し、電子の非局在化が起こり、重縮合反応の進行を妨げることがあると考えられる。
本発明者らはこの機構を十分検討し、低温でも反応し得る非結晶性ポリエステル用重縮合成分を設計をし、本発明の課題を解決するに至った。
【0021】
本発明において、重縮合反応は、ポリカルボン酸とポリオールのエステル化反応(脱水反応)又は、ポリカルボン酸ポルアルキルエステルとポリオールとのエステル交換反応により行われる。重縮合反応として、いずれの反応も使用することができるが、ポリカルボン酸とポリオールを使用し、脱水反応を伴う重縮合反応であることが好ましい。
【0022】
本発明に使用されるポリカルボン酸の50mol%以上、100mol%以下は、式(1)及び/又は式(2)で表される化合物(ジカルボン酸)よりなる。尚、本発明のおいて、「カルボン酸」とはそのエステル化物及び酸無水物をも含む意である。
1OOCA1m1n1lCOOR1' (1)
(A1:メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、R1、R1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2rCOOR2' (2)
(A2:メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、R2、R2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
ここで、1価の炭化水素基とは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素基、又は複素環基を表し、これらの基は任意の置換基を有していても良い。R1、R1'、R2及びR2'としては、水素原子又は低級アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子が最も好ましい。
また、式(1)中の芳香族炭化水素基及び式(2)中の脂環式炭化水素基は、置換されていても良い。
【0023】
<式(1)で表されるジカルボン酸>
式(1)で表されるジカルボン酸は、少なくとも一つの芳香族炭化水素基B1を有するが、その構造は特に限定されない。芳香族炭化水素基B1としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、フルオランセン、ピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾピレン、ペリレン、アントラスレン、ベンゾナフタセン、ベンゾクリセン、ペンタセン、ペンタフェン、コロネン骨格等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの構造にはさらに置換基が付加していてもよい。
【0024】
式(1)で表されるジカルボン酸中に含まれる芳香族炭化水素基B1の数は、1個以上、3個以下である。1個未満であると、製造されるポリエステルの非結晶性が失われ、3個を超えて芳香族炭化水素基を有する場合は、そのようなジカルボン酸の合成が困難であるために費用、製造効率が低下するばかりでなく、式(1)で表されるジカルボン酸の融点や粘度の上昇や、ジカルボン酸の大きさ、嵩高さに起因する反応性の低下が起こる。
【0025】
式(1)で表されるジカルボン酸が、複数の芳香族炭化水素基を含む場合、その芳香族炭化水素基同士は直接結合していてもよく、間に他の飽和脂肪族炭化水素基等の骨格を有する構造をとることもできる。前者の例としてはビフェニル骨格等、後者の例としてはビスフェノールA骨格、ベンゾフェノン、ジフェニルエテン骨格などを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0026】
芳香族炭化水素基B1として好適な基は、その主骨格の炭素数がC6〜C18の構造である。この主骨格の炭素数には、主骨格に結合する官能基に含まれる炭素数を含まない。例えば、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、フルオランセン、ピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、クリセン、トリフェニレン、ビスフェノールA骨格等を挙げることができる。これらの中で特に好適な骨格としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンが例示できる。最も好適には、ベンゼン、ナフタレン構造が用いられる。
主骨格の炭素数が6以上であると、モノマーの製造が容易であるので好ましい。また、主骨格の炭素数が18以下であると、モノマー分子の大きさが適当で、分子運動の制限による反応性の低下が生じないので好ましい。さらに、モノマー分子中における反応性官能基の割合が適切であり、反応性が低下することがないので好ましい。
【0027】
式(1)で表されるジカルボン酸は、少なくとも1個以上のメチレン基A1を含む。メチレン基は、直鎖、分岐のどちらでもよく、例えば、メチレン鎖、分岐メチレン鎖、置換メチレン鎖等を用いることができる。分岐メチレン鎖の場合、分岐部の構造は問わず、不飽和結合や更なる分岐、環状構造等を有していてもよい。
メチレン基A1の数は、分子内の合計m+lとして、少なくとも1個以上12個以下である。好適にはm+lが2個以上、6個以下であり、mとlは同数であることが更に好ましい。m+lが0個である場合、つまり式(1)で表されるジカルボン酸中にメチレン基を有さない場合、芳香族炭化水素と両末端のカルボキシル基が直接結合する構造となる。この場合、触媒と式(1)で表されるジカルボン酸とが形成する反応中間体が共鳴安定化し、反応性が低下することとなる。また、m+lが12個より大きい場合、式(1)で表されるジカルボン酸に対し直鎖部分が大きくなりすぎるため、製造されるポリマーが結晶性の特性を有したり、ガラス転移温度Tgが低下することがある。
【0028】
メチレン基A1又はカルボキシル基と、芳香族炭化水素基B1の結合箇所は特に限定されず、o−位、m−位、p−位のいずれでもよい。
式(1)で表されるジカルボン酸としては、1,4−フェニレンジ酢酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、1,3−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジプロピオン酸,1,2−フェニレンジ酢酸、1,2−フェニレンジプロピオン酸等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。好適には、1,4−フェニレンジプロピオン酸、1,3−フェニレンジプロピオン酸、1,4−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジ酢酸であり、よりトナーに適するものとしては、1,4−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジ酢酸を挙げることができる。
【0029】
式(1)で表されるジカルボン酸には、その構造のいずれかに各種官能基が付加していてもよい。また、重縮合反応性官能基であるカルボン酸基は、酸無水物、酸エステル化物、酸塩化物であってもよい。しかし、酸エステル化物とプロトンとの中間体が安定化しやすく、反応性を抑制する傾向があるため、好適には、カルボン酸、又はカルボン酸無水物、カルボン酸塩化物が使用される。
【0030】
<式(2)で表されるジカルボン酸>
式(2)で表されるジカルボン酸は脂環式炭化水素基B2を含む。脂環式炭化水素構造には特に限定はなく、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、アイセアン、ツイスタン、ノルボルネン骨格等を挙げることができるが、これに限定されない。またこれらの物質には置換基が付加していてもよい。その構造の安定性、分子の大きさや嵩高さなどを考慮すると、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタンなどが好ましい。
このモノマー中に含まれる脂環式炭化水素基の数は、少なくとも1個以上、3個以下である。1個未満であると、製造されるポリエステルの非結晶性が失われ、3個を超えて脂環式炭化水素基を有する場合は、式(2)で表されるジカルボン酸の融点の上昇や分子の大きさや嵩高さにより、反応性が低下する。
複数の脂環式炭化水素基を含む場合は、芳香族炭化水素基同士が直接結合する構造、間に他の飽和脂肪族炭化水素等の骨格を有する構造のどちらもとることができる。前者の例としては、ジシクロヘキシル骨格等であり、後者の例としては、水素添加ビスフェノールA骨格などを挙げることができるがこれに限定されない。
【0031】
脂環式炭化水素基で好適なものは、炭素数C3〜C12の物質である。この主骨格の炭素数には、主骨格に結合する官能基に含まれる炭素数を含まない。例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、フルオランセン、ピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、クリセン、トリフェニレン骨格等を有する物質を挙げることができる。これらの中で特に好適な骨格としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタンが例示できる。
【0032】
式(2)で表されるジカルボン酸は、メチレン基A2をその構造の中に有してもよい。メチレン基は、直鎖、分岐のどちらでもよく、例えば、メチレン鎖、分岐メチレン鎖、置換メチレン鎖等を用いることができる。分岐メチレン鎖の場合、分岐部の構造は問わず、不飽和結合や更なる分岐、環状構造等を有していてもよい。
メチレン基A2数は、p、rがそれぞれ6以下である。p,rのいずれか、又は両方が6より大きい場合、式(2)で表されるジカルボン酸に対し直鎖部分が大きくなりすぎるため、製造されるポリマーが結晶性の特性を有したり、ガラス転移温度Tgが低下することがある。
【0033】
メチレン基A2又はカルボキシル基と、脂環式炭化水素基B2の結合箇所は特に限定されず、o−位、m−位、p−位のいずれでもよい。
式(2)で表されるジカルボン酸としては、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,1−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。この中で好ましく用いられるのは、シクロブタン、シクロヘキサン、シクロヘキサン骨格を有する物質であり、特に好ましくは、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
また、式(2)で表されるジカルボン酸は、その構造のいずれかに各種官能基が付加していてもよい。また、重縮合反応性官能基であるカルボン酸基は、酸無水物、酸エステル化物、酸塩化物であってもよい。しかし、酸エステル化物とプロトンとの中間体が安定化しやすく、反応性を抑制する傾向があるため、好適には、カルボン酸、又はカルボン酸無水物、カルボン酸塩化物が使用される。
【0034】
本発明において、ポリカルボン酸成分の全体に対して、上記の式(1)及び/又は式(2)で表される化合物(ジカルボン酸)を50mol%以上、100mol%以下含む。上記式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物は単独で使用することもでき、組み合わせて使用することもできる。
式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の割合が50mol%未満であると、低温重縮合での反応性が十分に発揮できないために、分子量が伸長せず、重合度が低いポリエステルとなったり、残留重縮合成分が多数混在することがある。これにより、結着樹脂が常温でべたつく等、粉体の流動性が悪化したり、トナー用結着樹脂に適する粘弾性やガラス転移温度を得られないことがある。上記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を60〜100mol%含むことが好ましく、上記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物を80〜100mol%含むことがより好ましい。
【0035】
<式(3)で表されるジオール>
本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂は、ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるトナー用結着樹脂であり、該ポリオールの50mol%以上100mol%以下が式(3)で表される化合物(ジオール)よりなる。
HOXhjkOH (3)
(X:アルキレンオキサイド基、Y:ビスフェノール骨格基、1≦h+k≦10、1≦j≦3)
上記式(3)で表されるジオールは、少なくとも1つのビスフェノール骨格Yを含む。ビスフェノール骨格とは、2つのフェノール基より構成される骨格であれば特に限定はなく、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。好適に使用される骨格としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZが例示でき、より好適には、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールFである。
ビスフェノール骨格の数jは、1個以上3個以下である。式(3)で表されるジオールがビスフェノール骨格を有さない場合、製造されるポリエステルは結晶性ポリエステルの特性を有することがあり、目的にそぐわない。一方、3個を越えて含有する場合は、そのようなジオールの製造が困難であり、効率・費用の面から実用的ではないだけでなく、分子が大きく、嵩高くなるために、粘度や融点の上昇等により、反応性が低くなる。
【0036】
本発明において、式(3)で表されるジオールは少なくとも一つのアルキレンオキサイド基を有する。アルキレンオキサイド基はエチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好適には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドであり、特に好適にはエチレンオキサイドが例示できる。
アルキレンオキサイド基数h+kは1分子中に1個以上10個以下である。アルキレンオキサイドが1個未満、即ちアルキレンオキサイド基が付加されていない場合、水酸基とビスフェノール骨格中の芳香環との共鳴安定化により電子が非局在化し、式(3)で表されるジオールによるポリカルボン酸への求核攻撃性が弱められ、分子量の伸長や重合度の進展が抑制される。一方、アルキレンオキサイド基が10個を超えて付加されていると、式(3)で表されるジオール中の直鎖部分が長くなりすぎ、製造されるポリエステルが結晶性の性質を有する他、式(3)で表されるジオール中の反応性官能基数が減り、反応確率が減少する。
hとkが同数であることが、均等な反応を促進する上で好ましい。また、アルキレンオキサイド基数h+kが6以下であることが好ましく、より好ましくはアルキレンオキサイド基数h,kが各2、又は各1である場合である。また、2個以上のアルキレンオキサイド基を有する場合は、2種以上のアルキレンオキサイド基を1分子中に有することもできる。
【0037】
式(3)で表されるジオールとしては、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物において(h+kが1〜10)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物(h+kが2〜10)、さらに、ビスフェノールZエチレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールZプロピレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビフェノールプロピレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールFプロピレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールEエチレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールEプロピレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールCエチレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールCプロピレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールMエチレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールMプロピレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールPエチレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、ビスフェノールPプロピレンオキサイド付加物(h+kが1〜10)、等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。特に好適には、ビスフェノールAエチレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(h、k各2)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールAエチレンキサイド1モルプロピレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールEエチレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールEプロピレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールFエチレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)、ビスフェノールFプロピレンオキサイド1モル付加物(h、k各1)が挙げられる。
【0038】
本発明において、式(3)で表されるジオールは、ポリオール中に50mol%以上、100mol%以下含まれる。含有量が50mol%未満であると、低温重縮合での反応性が十分に発揮できないために、分子量が伸長せず、重合度が低いポリエステルとなったり、残留重縮合成分が多数混在することがある。これにより、結着樹脂が常温でべたつく等、粉体の流動性が悪化したり、トナー用結着樹脂に適する粘弾性やガラス転移温度を得られないことがある。上記式(3)で表されるジオールを60〜100mol%含むことがより好ましく、記式(3)で表されるジオールを80〜100mol%含むことがさらに好ましい。
【0039】
<触媒>
本発明では、重縮合反応の際に触媒を使用することが好ましい。
本発明では、これらの中でもブレンステッド酸系重縮合用触媒を使用することが好ましい。ブレンステッド酸系触媒の例としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、しょうのうスルホン酸、などのアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルジスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アルキルナフタリンスルホン酸、アルキルテトラリンスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、石油スルホン酸、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸、高級アルコールエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルスルホン酸、モノブチルフェニルフェノール硫酸、ジブチルフェニルフェノール硫酸、ドデシル硫酸などの高級脂肪酸硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコールエーテル硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキロール硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキル化硫酸エステル、ナフテニルアルコール硫酸、硫酸化脂肪、スルホ琥珀酸エステル、各種脂肪酸、スルホン化高級脂肪酸、高級アルキルリン酸エステル、樹脂酸、樹脂酸アルコール硫酸、ナフテン酸、ニオブ酸、及びこれらすべての塩化合物などが使用できるが、これに限定されない。またこれらの触媒は、構造中に官能基を有していてもよい。これらの触媒は必要に応じて複数を組み合わせることもできる。好ましく使用されるブレンステッド酸系触媒としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、しょうのうスルホン酸等を挙げることができる。
【0040】
上記触媒とともに、又は単独で、一般的に使用される他の重縮合触媒を用いることもできる。具体的には、金属触媒、加水分解酵素型触媒、塩基性触媒が例示できる。
金属触媒としては以下のものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えば、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物、希土類金属触媒を挙げられる。
希土類含有触媒としては具体的には、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド元素として、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などを含むものが有効である。これらは、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、トリフラート構造を有するものが有効であり、前記トリフラートとしては、構造式では、X(OSO2CF33が例示できる。ここでXは、希土類元素であり、これらの中でも、Xは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)などであることが好ましい。
また、ランタノイドトリフラートについては、有機合成化学協会誌、第53巻第5号、p44−54)に詳しい。
【0041】
触媒として金属触媒を使用する場合には、得られる樹脂中の触媒由来の金属含有量を100ppm以下とする。75ppm以下とすることが好ましく、50ppm以下とすることがより好ましい。したがって、金属触媒は使用しないか、または金属触媒を使用する場合であっても、極少量使用することが好ましい。
【0042】
加水分解酵素型触媒としてはエステル合成反応を触媒するものであれば特に制限はない。本発明における加水分解酵素としては、例えば、カルボキシエステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、タンナーゼ、モノアシルグリセロールリパーゼ、ラクトナーゼ、リポプロテインリパーゼ等のEC(酵素番号)3.1群(丸尾・田宮監修「酵素ハンドブック」朝倉書店、(1982)、等参照)に分類されるエステラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、キシロシダーゼ等のグリコシル化合物に作用するEC3.2群に分類される加水分解酵素、エポキシドヒドラーゼ等のEC3.3群に分類される加水分解酵素、アミノペプチダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、プラスミン、ズブチリシン等のペプチド結合に作用するEC3.4群に分類される加水分解酵素、フロレチンヒドラーゼ等のEC3.7群に分類される加水分解酵素等を挙げることができる。
上記のエステラーゼのうち、グリセロールエステルを加水分解し脂肪酸を遊離する酵素を特にリパーゼと呼ぶが、リパーゼは有機溶媒中での安定性が高く、収率良くエステル合成反応を触媒し、さらに安価に入手できることなどの利点がある。したがって、本発明においても、収率やコストの面からリパーゼを用いることが望ましい。
リパーゼには種々の起源のものを使用できるが、好ましいものとして、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、カンジダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属等の微生物から得られるリパーゼ、植物種子から得られるリパーゼ、動物組織から得られるリパーゼ、さらに、パンクレアチン、ステアプシン等を挙げることができる。このうち、シュードモナス属、カンジダ属、アスペルギルス属の微生物由来のリパーゼを用いることが望ましい。
【0043】
塩基性触媒としては、一般の有機塩基化合物、含窒素塩基性化合物、テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラアルキル又はアリールホスホニウムヒドロキシドを挙げることができるがこれに限定されない。有機塩基化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類、含窒素塩基性化合物としては、トリエチルアミン、ジベンジルメチルアミン等のアミン類、ピリジン、メチルピリジン、メトキシピリジン、キノリン、イミダゾールなど、更にナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等のアルカリ金属類及びカルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属類の水酸化物、ハイドライド、アミドや、アルカリ、アルカリ土類金属と酸との塩、たとえば炭酸塩、燐酸塩、ほう酸塩、カルボン酸塩、フェノール性水酸基との塩を挙げることができる。
また、アルコール性水酸基との化合物やアセチルアセトンとのキレート化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
触媒の総添加量としては、重縮合成分に対して0.1〜10,000ppmの割合で1種類又は複数添加することができる。
【0045】
本発明においては、従来の反応温度よりも低温で重縮合反応させても、結着樹脂を得ることができる。反応温度は70℃以上150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、80℃以上140℃以下である。
反応温度が70℃以上であると、モノマーの溶解性、触媒活性度の低下に起因する反応性の低下が生じず、分子量の伸長が抑制されることがないので好ましい。また、反応温度が150℃以下であると、低エネルギーで製造することができるので好ましい。また、樹脂の着色や、生成したポリエステルの分解等を生じることがないので好ましい。
【0046】
この重縮合反応は、バルク重合、乳化重合、懸濁重合等の水中重合、溶液重合、界面重合等一般の重縮合法で実施することが可能であるが、好適にはバルク重合が用いられる。また大気圧下で反応が可能であるが、得られるポリエステル分子の高分子量化等を目的とした場合、減圧、窒素気流下等の一般的な条件を用いることができる。
【0047】
本発明のトナー用結着樹脂としては、定着性、画像形成性の観点から、ガラス転移温度が30℃以上75℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃以上であると、常温でのトナー粉体の流動性が良好であり、高温度域での結着樹脂自体の凝集力も良好であるので、ホットオフセットを生じないので好ましい。また、ガラス転移温度が75℃以下であると、十分な溶融が得られ、良好な最低定着温度が得られるので好ましい。
ガラス転移温度は、より好ましくは35〜70℃であり、さらに好ましくは45〜65℃である。ガラス転移温度は、結着樹脂の分子量や、結着樹脂のモノマー構成、架橋剤の添加等により制御することができる。
また、ガラス転移点は、ASTM D3418−82に規定された方法で測定することができ、示差走査熱量計(DSC)により測定される。
【0048】
本発明で製造される非結晶性結着樹脂がトナー適性を有するために適当な重量平均分子量は、5,000〜50,000、より好適には、7,000〜35,000の範囲である。重量平均分子量が5,000以上であると、常温での粉体流動性が良好であり、トナーのブロッキングが生じないので好ましい。さらに、トナー結着樹脂としての凝集力が良好であり、ホットオフセット性の低下が生じないので好ましい。また、重量平均分子量が50,000以下であると、良好なホットオフセット性と、良好な最低定着温度が得られるので好ましい。また、重縮合に要する時間や温度が適切であり、製造効率が良好であるので好ましい。
重量平均分子量は、例えばゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)等により測定することができる。
【0049】
本発明の非結晶性ポリエステルは、その特性を損なわない限り、上述した以外の重縮合成分とともに重縮合することも可能である。
ポリカルボン酸としては、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する多価カルボン酸を用いることができる。このうち、2価のカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、コハク酸、イタコン酸、グルタコン酸、グルタル酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマール酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、ビフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸等を挙げることができる。また、2価のカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
また、これらの酸無水物あるいは酸塩化物、酸エステル化物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
ポリオール(多価アルコール)としては、1分子中水酸基を2個以上含有するポリオールを用いることができる。このうち、2価のポリオール(ジオール)は1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタングリコール、ヘキサングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールや、上述したビスフェノール類を除くビスフェノール類、水素添加ビスフェノール類等を挙げることができる。また、2価のポリオール以外のポリオールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。
【0051】
これらのモノマーの含有量は、それぞれ重縮合成分であるポリカルボン酸、ポリアルコールの50mol%未満である。より好ましくは40mol%以下、更に好ましくは20mol%以下である。
【0052】
本発明においては、重縮合工程として、既述の重縮合成分であるポリカルボン酸及びポリオールと、予め作製しておいたプレポリマーとの重合反応とを含むこともできる。プレポリマーは、上記単量体に溶融又は均一混合できるポリマーであれば限定されない。
さらに本発明の結着樹脂は、上述した重縮合成分の単独重合体、上述した重合性成分を含む2種以上の単量体を組み合せた共重合体、又はそれらの混合物、グラフト重合体、一部枝分かれや架橋構造などを有していても良い。
【0053】
本発明により製造されたトナー用結着樹脂を使用して、溶融混練粉砕法等の機械的製法、又は該ポリエステルを使用して結着樹脂分散液(本発明において、「結着樹脂粒子分散液」又は「樹脂粒子分散液」ともいう。)を製造し、結着樹脂分散液からトナーを製造するいわゆる化学製法によりトナーを製造することができる。
【0054】
本発明の結着樹脂を使用して、溶融混練法などの機械的製法でトナーを製造すると、顔料等の分散性や粉砕性が良好である。これは、低温で高反応性を有する重縮合成分を主成分として含み、さらに重縮合を従来の重縮合よりも低温で実施することができるために、副反応や未反応物の生成を抑制し、物性の均一な結着樹脂が得られるためであると考えられる。
【0055】
溶融混練粉砕法によりトナーを製造する場合は、上記のように製造したポリエステル樹脂を予め他のトナー原材料と、溶融混練前に、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等で撹拌混合させることが好ましい。このとき、撹拌機容量、撹拌機の回転速度、撹拌時間等を組み合わせて選択しなければならない。
【0056】
次いで、トナー用結着樹脂と他のトナー原材料との撹拌物は、公知の方法により溶融状態での混練を行う。一軸又は多軸押出し機による混練が分散性が向上するため好ましい。このとき混練装置のニーディングスクリュウゾーン数、シリンダー温度、混練速度等を全て適切な値に設定し、制御する必要がある。混練時の各制御因子のうち、混練状態に特に大きな影響を与えるのは、混練機の回転数と、ニーディングスクリュウゾーン数、シリンダー温度である。一般に、回転数は300〜1,000rpmが望ましく、ニーディングスクリュウゾーン数は1段よりも2段スクリュウ等、多段ゾーンを用いたほうがよりよく混練される。シリンダー設定温度は、結着樹脂の主成分となる非結晶性ポリエステルの軟化温度により決定することが好ましく、通常軟化温度よりも−20〜+100℃程度が好ましい。シリンダー設定温度が上記範囲内であると、十分な混練分散が得られ、凝集が生じないので好ましい。さらに、混練シェアが掛かり、十分な分散が得られるとともに、混練後の冷却が容易であるので好ましい。
溶融混練された混練物は十分に冷却した後、ボールミル、サンドミル、ハンマーミル等の機械的粉砕方法、気流式粉砕方法等の公知の方法で粉砕する。常法での冷却が充分できない場合は、冷却又は凍結粉砕法も選択できる。
【0057】
トナーの粒度分布を制御する目的で、粉砕後のトナーを分級することもある。分級によって不適切な径の粒子を排除することにより、トナーの定着性や画像品質を向上する効果がある。
【0058】
一方、近年の高画質要求に伴い、トナーの小径化、低エネルギー製法対応技術として、トナーの化学的製法も多く採用されている。本発明のトナー用結着樹脂を用いるトナーの化学製法としては、汎用の製法を用いることができるが、凝集合一法が好ましい。凝集合一法とは、水に結着樹脂を分散させたラテックスを作製し、他のトナー原材料とともに凝集(会合)させる既知の凝集法である。
【0059】
上述のように製造した結着樹脂を水に分散させる方法は、特に限定されない。強制乳化法、自己乳化法、転相乳化法など、既知の方法から選択することができる。これらのうち、乳化に要するエネルギー、得られる乳化物の粒径制御性、安定性等を考慮すると、自己乳化法、転相乳化法が好ましく適用される。
自己乳化法、転相乳化法に関しては、「超微粒子ポリマーの応用技術」(シーエムシー出版)に記載されている。自己乳化法に用いる極性基としては、カルボキシル基、スルホン基等を用いることができるが、本発明において、トナー用非結晶性ポリエステル結着樹脂に適用する場合、カルボキシル基が好ましく用いられる。
【0060】
上記のように作製した結着樹脂分散液、所謂ラテックスを使用し、凝集(会合)法を用いてトナー粒子径及び分布を制御したトナーを製造する事が可能である。詳細には、上記のように作製したラテックスを、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液と混合し、さらに凝集剤を添加し、ヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後、結着樹脂粒子のガラス転移点以上又は融点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合・合一し、洗浄、乾燥することにより得られる。この製法は加熱温度条件を選択することでトナー形状を不定形から球形まで制御できる。
【0061】
凝集粒子の融合・合一工程を終了した後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナー粒子を得るが、洗浄工程は帯電性を考慮すると、イオン交換水で十分に置換洗浄することが望ましい。また、固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0062】
凝集剤としては、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩を好適に用いることができる。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性などの特性において好ましい。凝集に用いる金属塩化合物としては、一般の無機金属化合物又はその重合体を樹脂粒子分散液中に溶解して得られるが、無機金属塩を構成する金属元素は周期律表(長周期律表)における2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族に属する2価以上の電荷を有するものが好ましく、樹脂粒子の凝集系においてイオンの形で溶解するものであればよい。好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシム等の無機金属塩重合体などである。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上で、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。
【0063】
本発明においては、必要に応じて、本発明の結果に影響を与えない範囲で公知の添加剤を、1種又は複数を組み合わせて配合することができる。例えば、難燃剤、難燃助剤、光沢剤、防水剤、撥水剤、無機充填剤(表面改質剤)、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、滑剤、充填剤、体質顔料、結着剤、帯電制御剤等である。これらの添加物は、静電荷像現像用トナーを製造するいずれの工程においても配合することができる。
【0064】
内添剤の例としては、帯電制御剤として4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物など通常使用される種々の帯電制御剤を使用することが出来るが、製造時の安定性と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
【0065】
離型剤の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類やエステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。
これらのワックス類は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により微粒子化し、1ミクロン以下の粒子の分散液を作製することができる。
【0066】
難燃剤、難燃助剤としては、すでに汎用されている臭素系難燃剤や、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウムを例示できるがこれに限定されるものではない。
【0067】
着色成分(着色剤)としては、既知の顔料及び染料のいずれも使用することができる。具体的には、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン等の無機顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料があげられる。クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラロゾンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレート、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などの種々の顔料などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0068】
また通常のトナーと同様に乾燥後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂微粒子を乾燥状態で剪断をかけて表面へ添加(外添)して流動性助剤やクリーニング助剤として用いることもできる。
【0069】
本発明の工程に用いる界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散のため手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用可能である。
【0070】
本発明のトナーは平均体積粒子径(D50)が3.0μm〜20.0μmであることが好ましい。更に好ましくは、平均体積粒子径が3.0μm〜9.0μmの場合である。D50が3.0μm以上であると、付着力が適切であり、現像性が低下することがないので好ましい。また、9.0μm以下であると、十分な画像解像性が得られるので好ましい。平均体積粒子径(D50)はレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0071】
また、本発明のトナーは、平均体積粒子分布GSDvが1.4以下であることが好ましい。特に化学製法トナーの場合、GSDvが1.3以下が更に望ましい。
GSDvは、粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対する体積について、それぞれ小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を体積D16v、累積84%となる粒径を体積D84vと定義する。これらを用いて、体積平均粒子分布(GSDv)は、下記式により算出される。
平均体積粒子分布GSDv=(D84v/D16v0.5
GSDvが1.4以下であると、粒子径が均一となり、良好な定着性が得られ、また定着不良に起因する装置故障が生じないので好ましい。また、トナーの飛散による機内汚染や現像剤の劣化などを生じないので好ましい。
平均体積粒子分布GSDvはレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0072】
本発明のトナーが化学製法で製造される場合、形状係数SF1は画像形成性の点から100〜140であることが好ましく、110〜135であることがより好ましい。このときSF1は以下のように計算される。
【0073】
【数1】

ここでMLは粒子の絶対最大長、Aは粒子の投影面積である。
これらは、主に顕微鏡画像又は走査電子顕微鏡画像をルーゼックス画像解析装置によって取り込み、解析することによって数値化される。
【0074】
(静電荷像現像剤)
本発明の静電荷像現像トナーは、静電荷像現像剤として使用される。この現像剤は、この静電荷像現像トナーを含有することの外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。静電荷像現像トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
キャリアとしては、特に限定されないが、通常、鉄粉、フェライト、酸化鉄粉、ニッケル等の磁性体粒子;磁性体粒子を芯材としてその表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂やステアリン酸等のワックスで被覆し、樹脂被覆層を形成させてなる樹脂被覆キャリア;結着樹脂中に磁性体粒子を分散させてなる磁性体分散型キャリア等が挙げられる。中でも、樹脂被覆キャリアは、トナーの帯電性やキャリア全体の抵抗を樹脂被覆層の構成により制御可能となるため特に好ましい。
二成分系の静電荷像現像剤における本発明のトナーとキャリアとの混合割合は、通常、キャリア100重量部に対して、トナー2〜10重量部である。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0075】
(画像形成方法)
また、本発明の静電荷像現像トナー及び静電荷像現像剤は、通常の静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用することができる。
本発明の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程とを含む画像形成方法であって、前記トナーとして本発明の静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として本発明の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする。
上記の各工程は、いずれも画像形成方法において公知の工程が利用でき、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。また、本発明の画像形成方法は、上記した工程以外の工程を含むものであってもよく、例えば、静電潜像担持体上に残留する静電荷像現像剤を除去するクリーニング工程等が好ましく挙げられる。本発明の画像形成方法においては、さらにリサイクル工程をも含む態様が好ましい。前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程において回収した静電荷像現像トナーを現像剤層に移す工程である。このリサイクル工程を含む態様の画像形成方法は、トナーリサイクルシステムタイプのコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。また、クリーニング工程を省略し、現像と同時にトナーを回収する態様のリサイクルシステムにも適用することができる。
【0076】
前記潜像保持体としては、例えば、電子写真感光体及び誘電記録体等が使用できる。
電子写真感光体の場合、該電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電潜像を形成する(潜像形成工程)。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電潜像にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー像を形成する(現像工程)。形成されたトナー像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される(転写工程)。さらに、被転写体表面に転写されたトナー像は、定着機により熱定着され(定着工程)、最終的なトナー像が形成される。
尚、前記定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常、前記定着機における定着部材に離型剤が供給される。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例で詳しく説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【0078】
本実施例で使用した化合物の略称を以下に記載する。
(ジカルボン酸)
CHDA=1,4−シクロヘキサンジカルボン酸
PDAA=1,4−フェニレンジ酢酸
PDPA=1,4−フェニレンジプロパン酸
TPA=テレフタル酸
(ジオール)
BisA1EO=ビスフェノールA 1エチレンオキサイド付加物
BisA2EO=ビスフェノールA 2エチレンオキサイド付加物
BisA5EO=ビスフェノールA 5エチレンオキサイド付加物
BisA1PO=ビスフェノールA 1プロピレンオキサイド付加物
BisA3PO=ビスフェノールA 3プロピレンオキサイド付加物
BisA=ビスフェノールA
(触媒)
DBSA=ドデシルベンゼンスルホン酸
p−TSA=p−トルエンスルホン酸
【0079】
(樹脂1の作製)
CHDA 17.5重量部
BisA1EO 31.0重量部
DBSA 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量のサンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 15,600
GPCによる数平均分子量 5,720
ガラス転移温度(オンセット) 57℃
【0080】
上記分子量の測定には、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)によって以下に記す条件で重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を毎分1.2mlの流速で流し、濃度0.2g/20mlのテトラヒドロフラン試料溶液を試料重量として3mg注入し、測定を行った。試料の分子量測定にあたっては、当該試料の有する分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線において、分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択した。
なお、測定結果の信頼性は、上述の測定条件で行ったNBS706ポリスチレン標準試料が、
重量平均分子量Mw=28.8×104
数平均分子量Mn=13.7×104
となることにより確認することができる。
また、GPCのカラムとしては、前記条件を満足するTSK−GEL、GMH(東ソー(株)製)等を用いた。
ポリエステルのガラス転移温度Tgの測定には、示差走査熱量計(島津製作所、DSC50)を用いた。
【0081】
(樹脂2の作製)
PDAA 19.5重量部
BisA2EO 12.0重量部(30mol%)
BisA1EO 22.0重量部(70mol%)
DBSA 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 17,300
GPCによる数平均分子量 6,180
ガラス転移温度(オンセット) 42℃
【0082】
(樹脂3の作製)
PDPA 22.2重量部
BisA1PO 34.4重量部
p−TSA 0.07重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 11,000
GPCによる数平均分子量 3,680
ガラス転移温度(オンセット) 39℃
【0083】
(樹脂4の作製)
CHDA 17.5重量部
BisA3PO 57.6重量部
硫酸 0.01重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 9,500
GPCによる数平均分子量 3,400
ガラス転移温度(オンセット) 35℃
【0084】
(樹脂5の作製)
CHDA 17.5重量部
BisA5EO 66.8重量部
DBSA 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 9,100
GPCによる数平均分子量 2,200
ガラス転移温度(オンセット) 30℃
【0085】
(樹脂6の作製)
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸モノメチル 18.0重量部
BisA1EO 31.0重量部
DBSA 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 6,700
GPCによる数平均分子量 2,050
ガラス転移温度(オンセット) 27℃
【0086】
(樹脂7の作製)
CHDA 17.5重量部
BisA1EO 31.0重量部
DBSA 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下60℃で24時間重縮合を実施したところ、白色の非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 6,300
GPCによる数平均分子量 1,820
ガラス転移温度(オンセット) 30℃
【0087】
(樹脂8の作製)
CHDA 17.5重量部
BisA1EO 31.0重量部
ジブチルスズオキシド 0.01重量部
DBSA 0.14重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、透明な非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 8,600
GPCによる数平均分子量 3,350
ガラス転移温度(オンセット) 35℃
【0088】
(樹脂9の作製)
TPA 16.5重量部
BisA1EO 31.0重量部
DBSA 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、白濁状態の低粘性液体を得、リアクター下部には白色の残留物があることを確認した。
少量サンプルを採取し、GPCにより分子量を測定したところ、重量平均分子量が374、数平均分子量が296であり、重合が進行していないことが確認された。
【0089】
(樹脂10の作製)
ビフェニルジカルボン酸 24.0重量部
BisA2EO 40.4重量部
DBSA 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、白濁状態の非結晶性ポリエステル樹脂を得た。反応終了後のリアクターには白色沈殿物が認められた。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 1,280
GPCによる数平均分子量 660
ガラス転移温度(オンセット) 31℃
【0090】
(樹脂11の作製)
CHDA 17.5重量部
BisA 23.0重量部
DBSA 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、白濁状態の非結晶性ポリエステル樹脂を得た。反応終了後のリアクターには白色沈殿物が認められた。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 1,020
GPCによる数平均分子量 480
ガラス転移温度(オンセット) 25℃
【0091】
(樹脂12の作製)
CHDA 7.0重量部
TPA 10.0重量部
BisA1EO 31.0重量部
DBSA 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、白濁状態の非結晶性ポリエステル樹脂を得た。反応終了後のリアクターには白色沈殿物が認められた。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 1,375
GPCによる数平均分子量 996
ガラス転移温度(オンセット) 25℃
【0092】
(樹脂13の作製)
TPA 16.5重量部
BisA 22.8重量部
ジブチルスズオキシド 0.10重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、白濁状態の低粘性液体を得、リアクター下部には白色の残留物があることを確認した。少量サンプルを採取し、GPCにより分子量を測定したところ、重量平均分子量が401、数平均分子量が391であり、重合が進行していないことが確認された。
【0093】
(樹脂14の作製)
CHDA 17.5重量部
BisA1EO 31.0重量部
ジブチルスズオキシド 0.025重量部
DBSA 0.11重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、透明な非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 5,400
GPCによる数平均分子量 2,950
ガラス転移温度(オンセット) 25℃
【0094】
(樹脂15の作製)
CHDA 17.5重量部
BisA1EO 31.0重量部
ジブチルスズオキシド 0.1重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えた200mlのリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施したところ、白濁状態の非結晶性ポリエステル樹脂を得た。少量サンプルを採取し、以下の物性を測定した。
GPCによる重量平均分子量 870
GPCによる数平均分子量 715
ガラス転移温度(オンセット) 25℃
【0095】
(低温重縮合性の評価)
以上の樹脂の作製において、低温重縮合性の評価は、以下の通りとした。
○・・・重量平均分子量が10,000以上、または数平均分子量が3,000以上
△・・・重量平均分子量が3,000以上10,000未満、または数平均分子量が1,000以上3,000未満
×・・・重量平均分子量が3,000未満、または数平均分子量が1,000未満
【0096】
【表1】

【0097】
触媒由来の金属量は、結着樹脂を乾燥後ディスク状に成型し、蛍光X線分析装置XRF−1500型((株)島津製作所製)を用いて、定量分析を行うことによって測定した。
【0098】
(粉砕性の評価)
上記のように作製したポリエステル樹脂を用いて、粉砕トナーを製造した。各ポリエステル樹脂96重量部とシアン顔料(シアニンブルー4933M、大日製化社製)4重量部とを75Lヘンシェルミキサー(三井三池社製)で混合撹拌し、エクストルーダ(TEM48BS、東芝機械社製)でバレル温度を100℃に設定して溶融混練し、混練物を圧延ロールで厚さ1cm程度の板状に成形し、フィッツミル型粉砕機で数ミリ程度まで粗粉砕し、IDS型粉砕機(超音速粉砕機、IDS−5型、日本ニューマチック工業(株)製)で微粉砕を順次行い、風力篩分機(ハイボルター300、新東京機械社製)にて篩分して未外添トナーを得た。尚、IDS−5型の粉砕条件は、圧縮空気量5.4nm3/min、原料フィード量100〜150g/minの条件とした。この未外添トナーの平均体積粒子分布GSDvをマルチサイザーIII(日科機社製)を用いて測定した。
このトナー粒子に、外添剤として、トナー重量に対して平均粒径40nmのヘキサメチルジシラザンで処理したシリカ0.5重量%、メタチタン酸をイソブチルトリメトキシシラン50重量%で処理後、焼成して得られたチタン化合物(平均粒径30nm)0.7重
量%を加え、75Lヘンシェルミキサーにて10分間混合し、その後風力篩分機(ハイボルター300、新東京機械社製)にて篩分してトナーを作製した。
粉砕性の評価は以下の通りとした。
◎・・・体積平均粒子径が8.0μm以下、かつGSDvが1.30以下
○・・・体積平均粒子径が9.0μm以下又はGSDvが1.40以下
△・・・体積平均粒子径が10.0μm以下又は、GSDvが1.50以下
×・・・体積平均粒子径が10.0μm以上かつGSDvが1.50以上
【0099】
また上記のように作製したトナーを用いて、キャリアとして含フッ素アクリル系樹脂で被覆した平均粒径50μmの鉄粉を用い、得られた各々のトナー組成物を、トナー濃度が8重量%になるように混合し、現像剤を作製した。この現像剤をフルカラートナーセットとして用いて、複写機(「DCC1250改造機」、富士ゼロックス社製)によって画質を以下の方法で評価した。
尚、樹脂15は粉砕トナーとして使用できる状態ではなかったため、評価を行わなかった。
(細線再現性評価試験)
感光体上に線幅50μmになるように細線の画像を形成し、それを転写材に転写及び定着した。転写材上の定着像の細線の画像をVH−6200マイクロハイスコープ(キーエンス社製)を用いて倍率175倍で観察した。
具体的な評価基準は以下の通りである。○を許容範囲とした。
○・・・細線のエッジ部乱れがほとんど観察されなかった。
△・・・細線のエッジ部の乱れが認識できる程度に発生した。
×・・・細線のエッジ部が大きく乱れていた。
【0100】
【表2】

【0101】
(樹脂の水分散性(乳化性)の評価)
上記樹脂1を撹拌機及び冷却管に付いた三口フラスコに投入し、95℃に保ち、1N NaOHを徐々に添加しながら撹拌を続けた。NaOH水溶液を総量で50g投入すると、樹脂はスラリー状を呈した。イオン交換水180gを85℃に調整したフラスコ中にこのスラリーを投入し、(以下同じ)ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で10分間乳化した後、さらに超音波バス中にて、10分乳化し、室温水にてフラスコを冷却した。
これにより樹脂メジアン径が420nmのポリエステル樹脂粒子分散液(1)を得た。
上記の樹脂2〜8、10〜12、14、15に対し、同様の方法で樹脂粒子分散液(2)〜(13)を作製した。これらの樹脂分散液の樹脂分散径を測定し、樹脂の乳化性を評価した。なお、樹脂微粒子のメジアン径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて測定した。
樹脂の乳化性は、次のように評価した。
◎・・・樹脂粒子分散液のメジアン径 600nm未満
○・・・樹脂粒子分散液のメジアン径 600nm以上1000nm未満
△・・・樹脂粒子分散液のメジアン径 1000nm以上1500nm未満
×・・・樹脂粒子分散液のメジアン径 1500nm以上
【0102】
【表3】

【0103】
上記のように作製した樹脂分散液を使用して、トナーを作製した。
(離型剤粒子分散液(W1)の調製)
ポリエチレンワックス 30重量部
(東洋ペトロライト(株)製、Polywax725、融点103℃)
カチオン性界面活性剤(花王社製、サニゾールB50) 3重量部
イオン交換水 67重量部
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で95℃に加熱しながら十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザー)で分散処理し、離型剤粒子分散液(W1)を調製した。得られた分散液中の離型剤粒子の数平均粒子径D50nは4600nmであった。その後イオン交換水を加えて、分散液の固形分濃度を30%に調整した。
【0104】
(シアン顔料分散液(C1)の調製)
シアン顔料(大日精化工業社製、PB15:3) 20重量部
アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2重量部
イオン交換水 78重量部
上記成分を、ホモジナイザー(LKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、3,000rpmで2分間、顔料を水になじませ、さらに5,000rpmで10分間分散後、通常の攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡した後、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで約1時間分散させてマゼンタ顔料分散液(MN1)を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは121nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を15%に調整し、シアン顔料分散液を得た。
【0105】
(樹脂粒子分散液Aの調製)
スチレン 460重量部
n−ブチルアクリレート 140重量部
アクリル酸 12重量部
ドデカンチオール 9重量部
前記成分を混合溶解して溶液を調製した。
他方、アニオン性界面活性剤(ローディア社製、ダウファックス)12重量部をイオン交換水250重量部に溶解し、前記溶液を加えてフラスコ中で分散し乳化した。(単量体乳化液A)
さらに、同じくアニオン性界面活性剤(ローディア社製、ダウファックス)1重量部を555重量部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。
重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと撹拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウオーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9重量部をイオン交換水43重量部に溶解し、重合用フラスコ中に定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、単量体乳化液Aをやはり定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、ゆっくりと撹拌を続けながら重合用フラスコを75℃に、3時間保持して重合を終了した。
これにより粒子のメジアン径が520nm、ガラス転移点が61.0℃、重量平均分子量が36,000、固形分量が42%のアニオン性樹脂粒子分散液Aを得た。
【0106】
<トナー実施例1>
(シアントナー(トナーC1)の作製)
樹脂粒子分散液(1) 120重量部
樹脂粒子分散液A 40重量部
離型剤微粒子分散液(W1) 33重量部
シアン顔料分散液(C1) 60重量部
ポリ塩化アルミニウム10重量%水溶液 15重量部
(浅田化学社製、PAC100W)
1%硝酸水溶液 3重量部
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中で、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて5,000rpmで3分間分散した後、前記フラスコに磁力シールを有した撹拌装置、温度計とpH計を具備した蓋をしてから、加熱用マントルヒーターをセットし、フラスコ中の分散液全体が撹拌される最低の回転数に適宜調節して撹拌しながら62℃まで1℃/1minで加熱し、62℃で30分間保持し、凝集粒子の粒径をコールターカウンター(日科機社製、TA II)で確認した。昇温停止後ただちに樹脂粒子分散液(1)を50重量部追加し、30分間保持したのち、系内のpHが6.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加えてから、1℃/1minで97℃まで加熱した。昇温後、硝酸水溶液を加えて系内のpHを5.0にして、10時間保持して凝集粒子を加熱融合した。この後系内を50℃まで降温、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12.0に調節して10分間保持した。その後フラスコから取り出し、イオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄した後、さらに固形分量が10重量%となるようにイオン交換水中に分散し、硝酸を加えてpH3.0で10分間撹拌した後、再びイオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄して得られたスラリーを凍結乾燥してシアントナー(トナーC1)を得た。
【0107】
前記シアントナーに、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO2)微粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物微粒子とを、それぞれ1重量%ずつ添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、シアン外添トナーを作製した。
このようにして作製したトナーの平均体積粒子径D50と平均体積粒子分布GSDvをレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定した。また、ルーゼックスによる形状観察よりトナー粒子の形状係数(SF1)を求めた。
【0108】
(トナー実施例2〜8)
トナー実施例1において、樹脂粒子分散液1を、それぞれ樹脂粒子分散液2〜8に変えた以外は同様の方法でシアントナーを得、平均体積粒子径D50と平均体積粒子分布GSDv、形状係数(SF1)を測定した。本トナーにトナー実施例1と同様に外添剤を外添しシアン外添トナーを得た。
【0109】
(トナー比較例1〜5)
トナー実施例1において、樹脂粒子分散液1を、それぞれ樹脂分散液10〜12、14、15に変えた以外は同様の方法でシアントナーを得、平均体積粒子径D50と平均体積粒子分布GSDv、形状係数(SF1)を測定した。本トナーにトナー実施例1と同様に外添剤を外添しシアン外添トナーを得た。
【0110】
(キャリアの作製)
体積平均粒子径40μmのCu−Znフェライト微粒子100重量部にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.1重量部を含有するメタノール溶液を添加し、ニーダーで被覆した後、メタノールを留去し、さらに120℃で2時間加熱して上記シラン化合物を完全に硬化させた。この粒子に、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体(共重合比40:60)をトルエンに溶解させたものを添加し、真空減圧型ニーダーを使用してパーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体のコーティング量が0.5重量%となるように樹脂被覆型キャリアを製造した。
【0111】
(現像剤の作製)
上述のように作製した各トナー4重量部を、得られた樹脂被覆型キャリア100重量部に混合して、静電荷像現像剤を作製した。これを以下に示す評価において現像剤として使用した。
上記のようにして作製した各シアン現像剤を用いて次のような画質評価、及びトナーを用いて粉体の熱保存性を評価した。
【0112】
画質は次のように評価した。
(細線再現性評価試験)
感光体上に線幅50μmになるように細線の画像を形成し、それを転写材に転写及び定着した。転写材上の定着像の細線の画像をVH−6200マイクロハイスコープ(キーエンス社製)を用いて倍率175倍で観察した。
具体的な評価基準は以下の通りである。○を許容範囲とした。
○ : 細線のエッジ部乱れがほとんど観察されなかった。
△ : 細線のエッジ部の乱れが認識できる程度に発生した。
× : 細線のエッジ部が大きく乱れていた。
【0113】
トナーの熱保存性(耐熱ブロッキング性)は、以下のように評価した。
(トナーの熱保存性(耐熱ブロッキング性)の評価)
トナー5gを40℃、50%RHのチャンバーに17時間放置した。室温にもどした後、トナー2gを目開き45μmのメッシュに投入し、一定の条件で振動させた。メッシュ上に残ったトナーの重量を測定し、仕込み量に対する重量比を算出した。この数値をトナーの耐熱ブロッキング指数とした。
評価基準は、耐熱ブロッキング指数が3%以下のとき◎、3%を超え5%以下のとき○、5を超え10%以下のとき△、10%を超えたのときを×とした。
【0114】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるトナー用結着樹脂であって、
該ポリカルボン酸の50mol%以上100mol%以下が式(1)及び/又は式(2)で表される化合物よりなり、
該ポリオールの50mol%以上100mol%以下が式(3)で表される化合物よりなり、かつ
樹脂中の触媒由来の金属元素が100ppm以下であることを特徴とする
静電荷像現像トナー用結着樹脂。
1OOCA1m1n1lCOOR1' (1)
(A1:メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、R1、R1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2rCOOR2' (2)
(A2:メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、R2、R2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
HOXhjkOH (3)
(X:アルキレンオキサイド基、Y:ビスフェノール骨格基、1≦h+k≦10、1≦j≦3)
【請求項2】
ポリカルボン酸とポリオールを重縮合反応させる工程を含む静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法であって、
該ポリカルボン酸の50mol%以上100mol%以下が式(1)及び/又は式(2)で表される化合物よりなり、
該ポリオールの50mol%以上100mol%以下が式(3)で表される化合物よりなり、かつ
樹脂中の触媒由来の金属元素が100ppm以下であることを特徴とする
請求項1に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂の製造方法。
1OOCA1m1n1lCOOR1' (1)
(A1:メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、R1、R1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2rCOOR2' (2)
(A2:メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、R2、R2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
HOXhjkOH (3)
(X:アルキレンオキサイド基、Y:ビスフェノール骨格基、1≦h+k≦10、1≦j≦3)
【請求項3】
請求項1に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を分散した静電荷像現像用トナー用結着樹脂分散液。
【請求項4】
少なくとも結着樹脂分散液を含む分散液中で該結着樹脂を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、
該凝集粒子を加熱して融合させる工程
を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記結着樹脂分散液が請求項3に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂分散液であることを特徴とする
静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により製造された静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
請求項1に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を混練粉砕して作製した静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤。
【請求項8】
潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、
前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナー又は静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する工程と、
前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程と
を含む画像形成方法であって、
前記トナーとして請求項5又は6に記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤として請求項7に記載の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする
画像形成方法。

【公開番号】特開2007−58074(P2007−58074A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246136(P2005−246136)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】