説明

静電荷像現像用トナー

【課題】かぶり等の画像不良の発生を抑制しつつ良好な濃度で画像を形成でき、感光体ドラムや現像ローラーに対する樹脂微粒子の付着を抑制できる静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子の表面に、樹脂微粒子とシリカとを付着させ、樹脂微粒子によるトナー母粒子の表面の被覆率を10%以上20%未満とし、シリカによるトナー母粒子の表面の被覆率を20%以上40%未満とした静電荷像現像用トナーを用いる。樹脂微粒子の平均一次粒子径は、30nm以上150nm未満であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真法、静電記録法等の画像形成方法においては、感光体ドラムの表面をコロナ放電等により帯電させた後、レーザー等により露光して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、さらにこのトナー像を記録媒体に転写して高品質な画像を得ている。通常これらの現像法に適用するトナーには熱可塑性樹脂等の結着樹脂に、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性材料等を混合して混練、粉砕、分級を行い平均粒径5μm以上15μm以下のトナー粒子としたものが用いられる。そしてトナーに流動性を付与したり、トナーの帯電制御を行ったり、クリーニング性を向上させたりする目的で、シリカや酸化チタン等の無機微粉末、無機金属微粉末がトナーに外添されている。
【0003】
近年、このような画像形成方法において用いられるトナーにおいて、架橋構造を有する重合体からなる樹脂微粒子をトナー表面に付着させ、樹脂微粒子の感光体ドラムや現像ローラーへの付着を抑制することによる、画像品質の長期にわたる安定化が図られている。また、樹脂微粒子は、トナーの結着樹脂と帯電系列が近く、帯電不良を抑制する効果があるため、かかるトナーを使用すると、かぶりの発生や、画像形成装置内でのトナーの飛散を抑制することが可能である。
【0004】
このようなトナーとしては、例えば、トナー母粒子(着色粒子)の表面に、架橋構造を有する、フッ素化アクリレート系の単独重合体又は共重合体を付着させたトナーが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−005725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のトナーは、良好な濃度の画像を形成できなかったり、かぶり等の画像不良の発生や、感光体ドラムや現像ローラーに対する樹脂微粒子の付着を抑制することができなかったりする場合があり、更なる改良が求められている。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、良好な濃度の画像を形成でき、かぶり等の画像不良の発生を抑制しつつ、感光体ドラムや現像ローラーに対する樹脂微粒子の付着を抑制できる静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子の表面に、平均一次粒子径30nm以上150nm未満の樹脂微粒子と、シリカとを付着させ、樹脂微粒子によるトナー母粒子の表面の被覆率を10%以上20%未満とし、シリカによるトナー母粒子の表面の被覆率を20%以上40%未満とした静電荷像現像用トナーによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 樹脂微粒子とシリカとがトナー母粒子の表面に付着しており、
前記トナー母粒子は少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、
前記樹脂微粒子による前記トナー母粒子の表面の被覆率が10%以上20%未満であり、前記シリカによる前記トナー母粒子の表面の被覆率が20%以上40%未満である、静電荷像現像用トナー。
【0010】
(2) 前記樹脂微粒子の平均一次粒子径が30nm以上150nm未満である、(1)記載の静電荷像現像用トナー。
【0011】
(3) 正帯電性トナーである、(1)又は(2)記載の静電荷像現像用トナー。
【0012】
(4) 前記樹脂微粒子が、複数の不飽和結合を有する多官能モノマーを含む複数の付加重合可能なモノマーを乳化重合して製造されたものである、(1)から(3)何れか記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、かぶり等の画像不良の発生を抑制しつつ、感光体ドラムや現像ローラーに対する樹脂微粒子の付着を抑制できる静電荷像現像用トナーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0016】
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単にトナーともいう)は、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナー母粒子の表面に、樹脂微粒子と、シリカとを付着させ、樹脂微粒子によるトナー母粒子の表面の被覆率を10%以上20%未満とし、シリカによるトナー母粒子の表面の被覆率を20%以上40%未満としたものである。トナー母粒子は、少なくとも、結着樹脂と着色剤とを含み、所望により、離型剤、電荷制御剤等を含んでいてもよい。また、本発明のトナーは、トナー母粒子の表面に、樹脂微粒子、及びシリカとともに、シリカの他の無機微粒子を付着させてもよい。さらに、本発明のトナーは、キャリアと混合して2成分現像剤として用いることもできる。以下、本発明の静電荷像現像用トナーの必須、又は任意の成分である、結着樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、樹脂微粒子、シリカ、及びシリカの他の無機微粒子と、静電荷像現像用トナーの製造方法と、本発明のトナーを2成分現像剤として用いる場合に使用するキャリアと、画像形成方法とについて、順に説明する。
【0017】
〔結着樹脂〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも着色剤と結着樹脂とを含むトナー母粒子の表面に、後述する樹脂微粒子とシリカとを付着させて得られる。トナー母粒子に含まれる結着樹脂は、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限されない。結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、トナー中における着色剤の分散性、トナーの帯電性、用紙に対する定着性の面から、ポリスチレン系樹脂、及びポリエステル系樹脂が好ましい。以下、ポリスチレン系樹脂、及びポリエステル系樹脂について説明する。
【0018】
ポリスチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体でもよく、スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体でもよい。共重合モノマーの具体例としては、p−クロルスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等の他のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。これらの共重合モノマーは、2種以上を組み合わせてスチレン単量体と共重合できる。
【0019】
ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合や共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
【0020】
アルコール成分としては、2価又は3価以上のアルコールを使用できる。2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
【0021】
カルボン酸成分としては、2価又は3価以上のカルボン酸成分を使用できる。2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
【0022】
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合のポリエステル樹脂の軟化点は、80℃以上150℃以下が好ましく、90℃以上140℃以下がより好ましい。
【0023】
結着樹脂としては、定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、耐久性等を向上させることができる。
【0024】
熱可塑性樹脂とともに使用できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以上65℃以下が好ましく、50℃以上60℃以下がより好ましい。結着樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、画像形成装置の現像部の内部でトナー同士が融着したり、保存安定性の低下により、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着したりする場合がある。また、ガラス転移点が低すぎる場合、結着樹脂の強度が低下し、感光体ドラム等にトナーが付着しやすい。ガラス転移点が高すぎる場合、トナーの低温定着性が低下する傾向がある。
【0026】
なお、結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて測定して得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求めることができる。
【0027】
〔着色剤〕
本発明の静電荷像現像用トナーは結着樹脂中に着色剤を含有する。結着樹脂に配合できる着色剤は、トナーの色に合わせて、公知の顔料や染料を使用できる。結着樹脂に添加する好適な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的等で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
〔離型剤〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナーの定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、結着樹脂中に離型剤を含んでいてもよい。結着樹脂に配合できる離型剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。離型剤としてはワックスが好ましく、ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらのワックスは2種以上を組み合わせて使用できる。かかる離型剤をトナーに添加することにより、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制できる。
【0029】
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、1質量部以上5質量部以下が好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、オフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離形剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によって保存安定性が低下する場合がある。
【0030】
〔電荷制御剤〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明の目的を阻害しない範囲で、結着樹脂中に正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤を含んでいてもよい。なお、正帯電性のトナーでは、特にシリカの割れや、樹脂微粒子の剥離により、帯電不良や、感光体、現像ローラー等の汚染の問題が起こりやすい。このため、本発明のトナーは、正帯電性の電荷制御材を含む正帯電性トナーであるのがより好ましい。
【0031】
電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディーブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0033】
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0034】
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0035】
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物等が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナート等のアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等のサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電製の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とした場合に、1.5質量部以上15質量部以下が好ましく、2.0質量部以上8.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以上7.0質量部以下が特に好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、画像濃度の低下や、画像濃度の維持性が低下しやすくなる(画像濃度を長期にわたって維持することが困難になる)。また、かかる場合、電荷制御剤が均一に分散し難く、かぶりや感光体の汚染が起こりやすくなる。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良、及び画像不良や、感光体の汚染等が起こりやすくなる。
【0037】
〔樹脂微粒子〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂中に、必須又は任意に着色剤、離型剤、電荷制御剤等の成分を配合して所望の粒子径のトナー母粒子を調製した後に、トナー母粒子の表面に種々のポリマーからなる樹脂微粒子と、シリカとを付着させたものである。
【0038】
樹脂微粒子を構成するポリマーは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリイミド、ポリカーボネート等の重縮合により得られるポリマー、及び、不飽和結合を有する1種以上のモノマーの付加重合により得られるポリマーの何れも使用できる。樹脂微粒子を構成するポリマーとしては、均一な粒子径の樹脂微粒子の調製が容易であることから、不飽和結合を有する1種以上のモノマーの付加重合により得られるポリマーを用いるのがより好ましい。
【0039】
以下、不飽和結合を有する1種以上のモノマーの付加重合により得られるポリマーについて説明する。不飽和結合を有する1種以上のモノマーの付加重合により得られるポリマーは、1つの不飽和結合を有する単官能モノマーに、必要に応じて、複数の不飽和結合を有する多官能モノマーを組み合わせて付加重合することにより製造される。
【0040】
単官能モノマーの具体例は、スチレン、p−クロルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等の他のアクリル酸誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデン等のN−ビニル化合物である。これらの単官能モノマーは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
多官能モノマーの具体例は、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物が挙げられる。これらの多官能モノマーは2種類以上を組み合せて用いることができる。単官能モノマーと、多官能モノマーとを共重合させる場合、ポリマーの流出開始温度を高くしやすい。
【0042】
不飽和結合を有するモノマーを付加重合する方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等任意の方法を選択できる。これらの製造方法の中では、粒子径のそろった樹脂微粒子の調製が容易であることから、乳化重合法が好ましい。
【0043】
不飽和結合を有するモノマーの付加重合に使用できる重合開始剤としては過硫酸カリウム、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の公知の重合開始剤を使用できる。これらの重合開始剤の使用量は、モノマーの総量に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。
【0044】
樹脂微粒子を乳化重合により製造する場合、界面活性剤を用いて反応液を乳化させる。乳化重合では、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤かなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0045】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。アニオン系界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石けんや、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩類が挙げられる。ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0046】
これらのモノマーを組み合わせて製造されるポリマーの中では、粒子径が均一な樹脂微粒子を製造しやすいことや、十分な硬度を有するため変形したり、トナー母粒子の表面から脱落したりしにくく、感光体や現像ローラーの表面に付着しにくいこと等から、複数の不飽和結合を有する多官能モノマーを含む複数の付加重合可能なモノマーを乳化重合して製造されたポリマーが好ましい。具体的には、スチレン、メチルメタクリレート、及びジビニルベンゼンを乳化重合した共重合体が特に好ましい。かかるポリマーにおけるスチレン/メチルメタクリレートの比率は、モノマーの質量比として、50/50以上90/10以下が好ましく、50/50以上80/20以下がより好ましい。また、ジビニルベンゼンの使用量は、スチレン、メチルメタクリレート、及びジビニルベンゼンの質量の合計に対して5質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0047】
本発明のトナーの製造に用いる樹脂微粒子の平均一次粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂微粒子の平均一次粒子径は、典型的には、30nm以上150nm未満が好ましい。樹脂微粒子の平均一次粒子径は、重合条件の調整や、公知の粉砕方法、分級方法等により調整することができる。樹脂微粒子の平均一次粒子径が過小である場合、樹脂微粒子の調製に多量の乳化剤を用いるため樹脂微粒子が変形しやすくなり、かぶりが発生しやすくなる。現像性に優れたトナーを得にくく、平均一次粒子径が過大である場合、トナー粒子に付着した樹脂微粒子の表面積が小さくなるため、トナー粒子が外力を受けた場合、樹脂微粒子がトナー粒子から離脱しやすいため、かぶりが発生しやすくなる。樹脂微粒子の平均一次粒子径は、電気泳動光散乱光度計(ELS−800(大塚電子株式会社製))により、樹脂微粒子の体積平均粒子径(D50)として測定できる。
【0048】
〔シリカ〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂中に、必須又は任意に着色剤、離型剤、電荷制御剤等の成分を配合して所望の粒子径のトナー母粒子を調製した後に、前述の樹脂微粒子と、シリカとを付着させたものである。本発明において用いるシリカの種類は特に限定されず、従来、トナー用の外添剤として使用されている種々のシリカから適宜選択して使用できる。
【0049】
好適なシリカの具体例としては、例えば、四塩化珪素等の珪素塩化物を気化し、高温の水素炎中での気相反応によってシリカ微粒子を合成する方法である乾式高温加水分解法で製造されるフュームドシリカ、珪素を酸素の気流中で酸化し、その反応熱で生成させたシリカの蒸気を冷却してシリカ微粒子を合成する爆燃法で製造されるシリカ、アルコキシシランの加水分解によってシリカ微粒子を湿式で合成するゾルゲル法で製造されるシリカ、及び、水ガラスの加水分解によってシリカ微粒子を湿式で合成するコロイダル法で製造されるシリカが挙げられる。
【0050】
シリカは、疎水化処理剤により表面を処理したものを用いることができる。疎水化処理されたシリカを用いる場合、高温高湿下での帯電量の低下を抑制しやすく、流動性に優れるトナーを得やすい。疎水化処理剤としては、例えば、アミノシランカップリング剤を用いることができる。アミノシランカップリング剤の具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。疎水化効果を補う為に、アミノシランカップリング剤と、アミノシランカップリング剤以外の疎水化処理剤とを併用できる。アミノシランカップリング剤以外の疎水化処理剤としては、疎水化効果、及びトナーの流動性の改良効果に優れることから、ヘキサメチルジシラザンを用いるのが好ましい。
【0051】
シリコーンオイルもまた、シリカの疎水化処理剤として使用できる。シリコーンオイルの種類は、所望の疎水化効果が得られる限り、特に限定されず、従来から疎水化処理剤として用いられている種々のシリコーンオイルを使用できる。シリコーンオイルとしては、直鎖シロキサン構造を有するものが好ましく、非反応性シリコーンオイル、反応性シリコーンオイルの何れも使用できる。シリコーンオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、クロロフェニルシリコーンオイル、アルキルシリコーンオイル、クロロシリコーンオイル、ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコーンオイル、アセトキシ基含有シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0052】
シリカの疎水化処理の方法としては、シリカを高速で撹拌しながら、疎水化処理剤であるアミノシラン、シリコーンオイル等を滴下又は噴霧する方法、撹拌されている疎水化処理剤の有機溶剤溶液中に外添剤を添加する方法が挙げられる。疎水化処理後に加熱することにより疎水化処理されたシリカ粒子が得られる。疎水化処理剤を滴下又は噴霧する場合、疎水化処理剤は、そのまま、又は、有機溶剤等により希釈して用いることができる。
【0053】
本発明において用いるシリカの平均一次粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、7nm以上500nm以下が好ましく、12nm以上120nm以下がより好ましい。平均一次粒子径が過小である場合、シリカがトナー母粒子に埋没してしまい、トナーの流動性低下や、画像濃度の低下が生じる場合がある。平均一次粒子径が過大である場合、シリカがトナー母粒子から脱離しやすく、感光体や現像ローラーが汚染されることにより形成した画像に画像不良が起こる場合がある。
【0054】
〔シリカの他の無機微粒子〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明の目的を阻害しない範囲で、トナーの流動性、保存安定性、クリーニング性等を改良する目的で、有機微粒子、及びシリカとともに、シリカの他の無機微粒子を外添剤としてトナー母粒子の表面に付着させてもよい。
【0055】
外添剤として使用される無機微粒子の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている無機微粒子から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0056】
シリカの他の無機微粒子の平均一次粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
【0057】
シリカの他の無機微粒子の体積固有の抵抗値は、その表面に酸化スズ及び酸化アンチモンからなる被覆層を形成し、被覆層の厚さや、酸化スズと酸化アンチモンとの比率を変えることにより調整できる。また、シリカの他の無機微粒子は、シリカと同様に疎水化処理したものを用いることができる。
【0058】
〔静電荷像現像用トナーの製造方法〕
本発明のトナーの調製に用いられるトナー母粒子の製造方法は、トナー母粒子に含まれる成分が均一に混合される限り特に限定されない。トナー母粒子の製造方法の具体例としては、結着樹脂と、以上説明した、着色剤、電荷制御剤、離型剤等の成分とを、混合機等によって混合した後に、押出機等の混練機により溶融混練し、次いで、混練物を冷却し、これを粉砕・分級する方法が挙げられる。トナー母粒子の平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、一般的には、5μm以上10μm以下が好ましい。
【0059】
本発明の静電荷像現像用トナーは、上記のように得られたトナー母粒子に、樹脂微粒子と、シリカとを付着させて製造される。トナー母粒子に、樹脂微粒子と、シリカとを付着させる方法は特に限定されず、例えば、樹脂微粒子と、シリカとがトナー母粒子に埋め込まれないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機によって、トナー母粒子、樹脂微粒子、及びシリカを混合する方法が挙げられる。
【0060】
本発明の静電荷像現像用トナーにおける、樹脂微粒子によるトナー母粒子の表面の被覆率が10%以上20%未満であり、シリカによるトナー母粒子の表面の被覆率が20%以上40%未満である。樹脂微粒子によるトナー母粒子の表面の被覆率と、シリカによるトナー母粒子の表面の被覆率とは、下記の方法に従って測定できる。樹脂微粒子によるトナー母粒子の表面の被覆率と、シリカによるトナー母粒子の表面の被覆率とは、トナー母粒子に樹脂微粒子と、シリカとを付着させる際の、樹脂微粒子、及びシリカの使用量を調整することにより調整できる。樹脂微粒子によるトナー母粒子の表面の被覆率と、シリカによるトナー母粒子の表面の被覆率とは、以下の方法に従って測定できる。
【0061】
<樹脂微粒子による被覆率の測定方法>
フィールドエミッション走査電子顕微鏡(JSM−7401F、日本電子株式会社製)を用いて、0.5Kvの加圧電圧にて、倍率100,000倍のトナー粒子の写真を撮影した。撮影した電子顕微鏡写真を画像解析ソフトウェア(WinROOF(三谷商事株式会社製))により解析し、トナー粒子30個について、トナー粒子の表面積と、樹脂微粒子によりトナーが被覆されている箇所の面積の合計とを測定した。次いで、下式に基づき、各トナー粒子の樹脂微粒子による被覆率を算出した。30個のトナー粒子の、樹脂微粒子による被覆率の平均値を、トナーの樹脂微粒子による被覆率とした。なお、トナー粒子の表面積は、電子顕微鏡写真におけるトナー粒子の輪郭の内部の面積であり、樹脂微粒子によりトナーが被覆されている箇所の面積は、電子顕微鏡写真における樹脂微粒子の輪郭の内部の面積である。また、トナーの表面に付された、樹脂微粒子とシリカとは、電子顕微鏡写真における色相によって区別できる。電子顕微鏡写真において、樹脂微粒子はシリカよりも暗い色相で撮影される。
(樹脂微粒子による被覆率の算出式)
樹脂微粒子による被覆率(%)=(樹脂微粒子によりトナーが被覆されている箇所の面積の合計)÷(トナー粒子の表面積)×100
【0062】
<シリカによる被覆率の測定方法>
樹脂微粒子による被覆率の測定方法と同様にして、倍率100,000倍のトナー粒子の電子顕微鏡写真を、画像解析ソフトウェアにより解析して、トナー粒子30個について、トナー粒子の表面積と、シリカによりトナーが被覆されている箇所の面積の合計とを測定した。次いで、下式に基づき、各トナー粒子のシリカによる被覆率を算出した。30個のトナー粒子の、シリカによる被覆率の平均値を、トナーのシリカによる被覆率とした。なお、シリカによりトナーが被覆されている箇所の面積は、電子顕微鏡写真におけるシリカ粒子の輪郭の内部の面積である。
(シリカによる被覆率の算出式)
シリカによる被覆率(%)=(シリカによりトナーが被覆されている箇所の面積の合計)÷(トナー粒子の表面積)×100
【0063】
〔キャリア〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
【0064】
本発明の静電荷像現像用トナーを2成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
【0065】
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂(ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等)等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0066】
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20μm以上200μm以下が好ましく、25μm以上100μm以下がより好ましい。
【0067】
キャリアの見掛け密度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造によって異なるが、典型的には、2.4×10kg/m以上3.0×10kg/m以下が好ましい。
【0068】
本発明の静電荷像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、適度な画像濃度を維持し、トナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
【0069】
〔画像形成方法〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、1成分現像方式、又は2成分現像方式により画像を形成する種々の画像形成装置において使用できる。ここでは、2成分現像方式の中でも、画質、及び寿命の点で好適な現像方式であるタッチダウン現像方式について、図1を参照して説明する。タッチダウン現像方式では、2成分現像剤の帯電不良によって、かぶりやトナーの飛散が起こりやすいため、本発明のトナーを含む2成分現像剤を用いることによる効果が顕著である。
【0070】
タッチダウン現像方式は、磁気ローラーの表面上に2成分現像剤により磁気ブラシを形成し、磁気ブラシから、トナーのみを、感光体に対面配置された現像ローラーの表面に移送させてトナー層を形成し、トナー層からトナーを飛翔させて、感光体表面の静電潜像をトナー像として現像する方式である。
【0071】
図1に記載のタッチダウン現像方式の画像形成装置10は、ドラム状の感光体11と、感光体11の表面を帯電させる帯電部12と、感光体11の表面を露光して静電潜像を形成する露光部13と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像とする現像部14と、トナー像を、感光体11から、無端ベルト15上を移動する被転写体へと転写する転写部16と、感光体の表面をクリーニングするクリーニング部17とを具備する。
【0072】
感光体11としては、セレン、アモルファスシリコン等の無機感光体;導電性基体上に電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を含有する単層又は積層の感光層が形成された有機感光体等が挙げられる。帯電部12としては、スコロトロン方式、帯電ローラー、帯電ブラシ等が挙げられる。露光手部13、転写部16、クリーニング部17としては、公知のものを用いればよい。
【0073】
現像部14は、2成分現像剤によってその表面上に磁気ブラシが形成される磁気ローラー18(現像剤担持体)と、磁気ローラー18上に形成される磁気ブラシ(図示略)から移送されるトナーによってその表面上にトナー層(図示略)が形成される現像ローラー19(トナー担持体)と、磁気ローラー18へ直流(DC)バイアスを印加する電源20と、現像ローラー19へ直流(DC)バイアスを印加する電源22と、現像ローラー19へ交流(AC)バイアスを印加する電源24と、磁気ローラー18上に形成された磁気ブラシの高さを一定に保つための規制ブレード26と、トナーが収納されるコンテナ28と、2成分現像剤のトナーを帯電させる撹拌ミキサー30と、撹拌ミキサー30から供給される2成分現像剤を、撹拌しながら磁気ローラー18へ供給するパドルミキサー34と、撹拌ミキサー30とパドルミキサー34の間を仕切る仕切板32(現像剤は仕切板32と後述の枠体36との間の図示しない流通路を経て撹拌ミキサー30からパドルミキサー34に供給される)と、磁気ローラー18、現像ローラー19、撹拌ミキサー30及びパドルミキサー34を収納する枠体36とを具備する。磁気ローラー18は、内部に複数の固定磁石が配設されており、スリーブ状の磁気ローラー18が該固定磁石の周囲を回転可能となっている。また、現像ローラー19は、感光体11の対面に配置されている。
【0074】
図1に示されるタッチダウン現像方式の画像形成装置では、例えば、感光体11の表面を帯電部12により帯電させる帯電工程と、感光体11の表面を露光部13により露光して静電潜像を形成する露光工程と、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤により磁気ブラシを形成し、磁気ブラシからトナーのみを分離させてトナー層を形成し、トナー層のトナーを感光体11の表面の静電潜像の露光した部分に付着させてトナー像とする現像工程とを有する方法により画像が形成される。
【0075】
具体的な画像形成方法は以下の通りである。まず、帯電部12によって感光体11の表面を帯電させ、次いで、露光部13によって感光体11の表面を露光して静電潜像を形成する。一方、現像部14において、撹拌ミキサー30にて2成分現像剤のトナーを帯電させ、該2成分現像剤を、パドルミキサー34により磁気ローラー18へと供給し、その表面に担持させて磁気ブラシを形成させ、該磁気ブラシからトナーのみを現像ローラー19の表面に移送させて現像ローラー19の表面にトナー層を形成させる。
【0076】
そして、現像ローラー19のトナー層からトナーを飛翔させ、感光体11の静電潜像の露光した部分にトナーを付着させて静電潜像をトナー像として現像する。ついで、トナー像を、転写部16によって、感光体11から、無端ベルト15上を移動する被転写体へ転写して、画像が形成される。また、別途、転写工程後の感光体11の表面を、クリーニング部17を用いてクリーニングする。以上の工程は、繰り返し行われる。
【0077】
コンテナ28から供給されたトナーは、撹拌ミキサー30でキャリアと混合され、2成分現像剤とされる。
【0078】
以上説明した、本発明の静電荷像現像用トナーによれば、良好な濃度で画像を形成しつつ、かぶり等の画像不良の発生を抑制でき、感光体ドラムや現像ローラーへの樹脂微粒子等の付着を抑制できる。また、タッチダウン現像方式では、感光体ドラムや現像ローラーへの樹脂微粒子等の付着の問題が起こりやすいが、本発明の静電荷像現像用トナーによれば、タッチダウン現像方式を採用した画像形成装置においてもかかる不具合を軽減又は解消できる。このため、本発明の静電荷像現像用トナーは、現像方式によらず、種々の画像形成装置において好適に使用される。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例によりなんら限定されるものではない。
【0080】
(シリカの作製)
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製)100g、及び3−アミノプロピルトリメトキシシラン100g(信越化学工業株式会社製)をトルエン200gに溶解させた後、10倍に希釈した。次いで、ヒュームドシリカアエロジル#90(日本アエロジル株式会社製)200gを撹拌しながら、ジメチルポリシロキサンと3−アミノプロピルトリメトキシランとの希釈溶液を徐々に滴下した後、30分間超音波照射・撹拌して混合した。得られた混合物を150℃の恒温槽で加熱した後、トルエンをロータリーエヴァポレーターを用いて留去して固形物を得た。得られた固形物を減圧乾燥機にて設定温度50℃で減量しなくなるまで乾燥した。さらに、電気炉にて、窒素気流下において200℃で3時間処理を行いシリカAの粗粉体を得た。シリカAの粗粉体をジェットミルにより解砕してバグフィルターで捕集し、平均一次粒子径20nmのシリカを得た。
【0081】
(樹脂微粒子Aの作成)
温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管、撹拌器を装着したガラス製反応器に脱イオン水200質量部、及びラウリル硫酸ナトリウム2質量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温した。次いで、撹拌下に過硫酸アンモニウム1質量部を添加した後、メチルメタクリレート30質量部、スチレン60質量部、及びジビニルベンゼン10質量部からなるモノマーの混合物を1時間かけて滴下し、1時間撹拌した。このようにして得られたエマルジョンを乾燥し、平均一次粒子径75nmの樹脂微粒子Aを得た。樹脂微粒子Aの平均一次粒子径は、下記方法に従って測定した。
【0082】
<樹脂微粒子の平均一次粒子径測定方法>
電気泳動光散乱光度計(ELS−800(大塚電子株式会社製))により、樹脂微粒子の体積平均粒子径(D50)を測定した。
【0083】
(樹脂微粒子Bの作成)
ラウリル硫酸ナトリウムの使用量を4質量部に変えることの他は、樹脂微粒子Aと同様にして樹脂微粒子Bを得た。樹脂微粒子Bの平均一次粒子径は34nmであった。
【0084】
(樹脂微粒子Cの作成)
ラウリル硫酸ナトリウムの使用量を0.5質量部に変えることの他は、樹脂微粒子Aと同様にして樹脂微粒子Cを得た。樹脂微粒子Cの平均一次粒子径は148nmであった。
【0085】
(トナー母粒子の作成)
結着樹脂(スチレン−アクリル系樹脂)100質量部、離型剤(カルナウバワックス、(日本精蝋株式会社製))4質量部、着色剤(カーボンブラック、NIPex 60(エボニック・デグサ社製))12質量部、及び正帯電性電荷制御剤(BONTRON N−21(オリヱント化学工業株式会社製))1質量部をヘンシェルミキサーに投入して混合した後、二軸押出機により溶融昆練した。溶融混練物を冷却後、ハンマーミルにより粗粉砕した後、ターボミルで微粉砕した。微粉砕された粉体を、風力分級機により分級して、体積平均粒子径が6.81μmのトナー母粒子を得た。
【0086】
(キャリアの作製)
ポリアミドイミド樹脂30gを水2Lで希釈して希釈液を得た。得られた希釈液に、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体(FEP)120gを分散させた後、さらに酸化ケイ素3gを分散させて被覆層形成液を得た。この被覆層形成液とノンコートフェライトキャリアEF−35B(パウダーテック株式会社製、平均粒子径35μm)10kgとを、流動床被覆装置に投入して被覆を行った。その後、250℃で1時間焼付けを行い、キャリアを得た。
【0087】
〔実施例1〕
トナー母粒子2kgに対して、シリカ28gと、樹脂微粒子A20gとを加え、ヘンシェルミキサーで40m/sの速度で5分間混合してトナーを得た。
【0088】
〔実施例2〕
樹脂微粒子Aの使用量を28gに変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0089】
〔実施例3〕
シリカの使用量を36gに変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0090】
〔実施例4〕
シリカの使用量を18gに変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0091】
〔実施例5〕
樹脂微粒子Aを樹脂微粒子Bに変えることと、樹脂微粒子の使用量を12gに変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0092】
〔実施例6〕
樹脂微粒子Aを樹脂微粒子Cに変えることと、樹脂微粒子の使用量を44gに変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0093】
〔比較例1〕
シリカの使用量を40gに変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0094】
〔比較例2〕
シリカの使用量を16gに変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0095】
〔比較例3〕
樹脂微粒子Aの使用量を12gに変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0096】
〔比較例4〕
樹脂微粒子Aの使用量を32gに変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0097】
〔比較例5〕
樹脂微粒子Aを樹脂微粒子Bに変えることと、樹脂微粒子の使用量を16gに変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0098】
〔比較例6〕
樹脂微粒子Aを樹脂微粒子Cに変えることと、樹脂微粒子の使用量を26gに変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0099】
実施例、及び比較例で得たトナーについて、以下の方法に従って、樹脂微粒子によるトナー母粒子表面の被覆率と、シリカによるトナー母粒子表面の被覆率とを測定した。得られた測定結果を、表1に示す。
【0100】
<樹脂微粒子による被覆率の測定方法>
フィールドエミッション走査電子顕微鏡(JSM−7401F、日本電子株式会社製)を用いて、0.5Kvの加圧電圧にて、倍率100,000倍のトナー粒子の写真を撮影した。撮影した電子顕微鏡写真を画像解析ソフトウェア(WinROOF(三谷商事株式会社製))により解析し、トナー粒子30個について、トナー粒子の表面積と、樹脂微粒子によりトナーが被覆されている箇所の面積の合計とを測定した。次いで、下式に基づき、各トナー粒子の樹脂微粒子による被覆率を算出した。30個のトナー粒子の、樹脂微粒子による被覆率の平均値を、トナーの樹脂微粒子による被覆率とした。なお、トナー粒子の表面積は、電子顕微鏡写真におけるトナー粒子の輪郭の内部の面積であり、樹脂微粒子によりトナーが被覆されている箇所の面積は、電子顕微鏡写真における樹脂微粒子の輪郭の内部の面積である。また、トナーの表面に付された、樹脂微粒子とシリカとは、電子顕微鏡写真における色相によって区別できる。電子顕微鏡写真において、樹脂微粒子はシリカよりも暗い色相で撮影される。
(樹脂微粒子による被覆率の算出式)
樹脂微粒子による被覆率(%)=(樹脂微粒子によりトナーが被覆されている箇所の面積の合計)÷(トナー粒子の表面積)×100
【0101】
<シリカによる被覆率の測定方法>
樹脂微粒子による被覆率の測定方法と同様にして、倍率100,000倍のトナー粒子の電子顕微鏡写真を、画像解析ソフトウェアにより解析して、トナー粒子30個について、トナー粒子の表面積と、シリカによりトナーが被覆されている箇所の面積の合計とを測定した。次いで、下式に基づき、各トナー粒子のシリカによる被覆率を算出した。30個のトナー粒子の、シリカによる被覆率の平均値を、トナーのシリカによる被覆率とした。なお、シリカによりトナーが被覆されている箇所の面積は、電子顕微鏡写真におけるシリカ粒子の輪郭の内部の面積である。
(シリカによる被覆率の算出式)
シリカによる被覆率(%)=(シリカによりトナーが被覆されている箇所の面積の合計)÷(トナー粒子の表面積の和)×100
【0102】
実施例、及び比較例のトナーについて、実施例、及び比較例で得られたトナーを含む現像剤を搭載した、タッチダウン方式により現像する現像装置を採用したディジタルカラー複合機(TASKalfa 500ci、京セラミタ株式会社製)を用い、以下の方法に従って画像濃度、かぶり、及び現像スリーブ抵抗の測定値を、評価した。評価に用いた現像剤は、実施例、及び比較例で得たトナー30gと、キャリア300gとをボールミルにより30分間混合して調製した。実施例、及び比較例のトナーの、画像濃度、かぶり、現像スリーブ抵抗の評価結果を表1に示す。
【0103】
<画像濃度評価方法>
分光光度計(Spectroeye(X−Rite社製))を用いて、ベタ画像の反射濃度を測定した。画像濃度1.20以上を良と判定し、1.20未満を不良と判定した。
【0104】
<かぶり評価方法>
印字率0.2%にて、3,000枚連続印字を行った後、印字率20%の原稿を印字して最大のかぶり値を測定した。かぶり値は、(Spectroeye(X−Rite社製))により測定した。かぶり値0.008以下を良と判定し、0.008超を不良と判定した。
【0105】
<現像スリーブ抵抗評価>
印字率5%にて、300,000枚連続印字した後の、現像ローラー中央部の表面抵抗を、高抵抗率測定器(ハイレスタ MCP−HT450、三菱化学株式会社製)にて、1,000V印加して測定した。抵抗値1.0×10未満を良とし、1.0×10以上を不良とした
【0106】
【表1】

【0107】
樹脂微粒子と、シリカとがトナー母粒子の表面に付着し、樹脂微粒子によるトナー母粒子表面の被覆率が10%以上20%未満であり、シリカによるトナー母粒子表面の被覆率が20%以上40%未満である、実施例1〜6のトナーでは、何れも、画像濃度が良好であり、かぶり値が小さく、現像ローラーへの樹脂微粒子やシリカの付着による現像ローラーの表面抵抗の著しい増加は見られなかった。
【0108】
比較例1によれば、シリカの被覆率が40%以上となる場合、かぶり値が高くなり、良好な画像を得にくいことが分かる。また、比較例2によれば、シリカの被覆率が20%未満となる場合、画像濃度の低下により良好な画像が得られないことが分かる。
【0109】
比較例3、及び6によれば、樹脂微粒子の被覆率が10%未満となる場合、かぶり値が高くなり、良好な画像を得にくいことが分かる。また、比較例4、及び5によれば、樹脂微粒子の被覆率が20%以上となる場合、トナー表面から脱離した樹脂微粒子の付着により、現像ローラーの表面抵抗が著しく上昇していることがわかる。
【符号の説明】
【0110】
10 画像形成装置
11 感光体
12 帯電部
13 露光部
14 現像部
15 無端ベルト
16 転写部
17 クリーニング部
18 磁気ローラー
19 現像ローラー
20 電源
22 電源
24 電源
26 規制ブレード
28 コンテナ
30 撹拌ミキサー
32 仕切板
36 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂微粒子とシリカとがトナー母粒子の表面に付着しており、
前記トナー母粒子は少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、
前記樹脂微粒子による前記トナー母粒子の表面の被覆率が10%以上20%未満であり、前記シリカによる前記トナー母粒子の表面の被覆率が20%以上40%未満である、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記樹脂微粒子の平均一次粒子径が30nm以上150nm未満である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
正帯電性トナーである、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記樹脂微粒子が、複数の不飽和結合を有する多官能モノマーを含む複数の付加重合可能なモノマーを乳化重合して製造されたものである、請求項1から3何れか記載の静電荷像現像用トナー。

【図1】
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