説明

静電霧化装置

【課題】 液溜め部から液体を搬送する搬送供給体を霧化部を備えた霧化電極に簡単な取り付け作業で取り付けることができる静電霧化装置を提供する。
【解決手段】 静電霧化させる液体を収容する液溜め部1と、前記液溜め部1から液体Lを搬送する搬送供給体2と、前記液体Lに電圧を印加する印加部3と、有蓋筒状をしてその先端の蓋部が裏面側から表面側に液体Lを挿通させる挿通孔41を有する霧化部40となる霧化電極4と、前記霧化電極4の霧化部40に対向する対向電極5とを備え、前記霧化電極4の末端の開口42内に搬送供給体2を嵌め込んで該搬送供給体2が液溜め部1から搬送した液体Lを挿通孔41を介して霧化部40の表面に挿通させて静電霧化させる静電霧化装置において、霧化電極4の開口42の内径Dを搬送供給体2の外径dよりも大きく形成すると共に、先端の霧化部40側に行く程霧化電極4の内径Dが小さくなるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノメータサイズの帯電した微粒子ミストを生成させるための静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ナノメータサイズのミストを発生させる霧化装置として静電霧化装置が知られている(例えば特許文献1参照)。これは、液体として水を収容した液溜め部と、液溜め部内の水を毛細管現象で吸い上げて先端に形成した霧化部に導く搬送体と、搬送体の霧化部に対向する対向電極と、液溜め部内の水に高電圧を印加する印加部とからなり、対向電極との間の放電箇所となる搬送体の霧化部に存在する水にレイリー分裂を起こさせて静電霧化させることで、ナノメータサイズの帯電微粒子水のミストを発生させるものである。
【特許文献1】特許第3260150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この静電霧化装置は様々なものに組み込まれて用いられるが、組み込まれるものによって液溜め部の組み込み位置は異なるため、液溜め部から導出する搬送体の霧化部を対向電極と対向するように所定の位置に設置するための取り付け作業は煩雑であった。
【0004】
このため、霧化部を搬送体に一体に形成するのではなく、霧化部が対向電極と予め所定の位置関係に設定可能なように霧化部を備えた霧化電極と、前記霧化電極の霧化部に液体を搬送する搬送供給体とを別体で形成して、簡単な取り付け作業で搬送供給体を霧化電極に取り付けることができるものが望まれていた。
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、液溜め部から液体を搬送する搬送供給体を霧化部を備えた霧化電極に簡単な取り付け作業で取り付けることができる静電霧化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る静電霧化装置にあっては、静電霧化させる液体Lを収容する液溜め部1と、前記液溜め部1から液体Lを搬送する搬送供給体2と、前記液体Lに電圧を印加する印加部3と、有蓋筒状をしてその先端の蓋部が裏面側から表面側に液体Lを挿通させる挿通孔41を有する霧化部40となる霧化電極4と、前記霧化電極4の霧化部40に対向する対向電極5とを備え、前記霧化電極4の末端の開口42内に搬送供給体2を嵌め込んで該搬送供給体2が液溜め部1から搬送した液体Lを挿通孔41を介して霧化部40の表面に挿通させて静電霧化させる静電霧化装置において、霧化電極4の開口42の内径Dを搬送供給体2の外径dよりも大きく形成すると共に、先端の霧化部40側に行く程霧化電極4の内径が小さくなるように形成して成ることを特徴とするものである。このような構成とすることで、霧化電極4の開口42に搬送供給体2を容易に嵌め込むことができて、取り付け作業が簡単となる。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、搬送供給体2を可撓性を有する部材で形成して成ることを特徴とするものである。このような構成とすることで、前記霧化電極4の開口42において搬送供給体2が動き得ることとなり、液溜め部1と霧化電極4との位置関係が異なる製品に組み込む場合でも取り付け作業が簡単となると共に搬送供給体2にかかる不要な曲げモーメント等が低減される。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、搬送供給体2の先端部の外径dを霧化電極4の先端部の内径Dと略同じかそれより若干小さく形成して成ることを特徴とするものである。このような構成とすることで、搬送供給体2を霧化電極4の先端部にまで嵌め込むことができて、搬送供給体2により霧化部40へ大量の液体Lを搬送することができて霧化量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、霧化電極の開口に搬送供給体を容易に嵌め込むことができて、液溜め部から液体を搬送する搬送供給体を霧化部を備えた霧化電極に簡単な取り付け作業で取り付けることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に基いて説明する。まず、静電霧化装置の全体構成について説明する。
【0011】
静電霧化装置は、図1に示すように、静電霧化させる液体Lを収容する液溜め部1と、前記液溜め部1から液体を搬送する搬送供給体2と、前記液体Lに電圧を印加する印加部3と、先端に霧化部40を備えて搬送供給体2が嵌め込まれる有蓋筒状をした霧化電極4と、前記霧化電極4の霧化部40に対向する対向電極5とを備えたもので、印加部3と対向電極5との間に高電圧を印加することで、搬送供給体2が液溜め部1から吸い上げて搬送した液体Lを霧化部40において静電霧化してナノメータサイズの帯電微粒子ミストを生成するものである。
【0012】
液溜め部1は、静電霧化させる液体Lを収容する密閉容器からなり、液体Lとしては通常は水道水を使用するが、この他に地下水、電解水、pH調整水、結露水といった水や、ミネラルウォーター、あるいは、ビタミンCやアミノ酸等の有用成分・アロマオイル・芳香剤・消臭剤等が入った液体L等が想定され、特に限定されないものである。この液溜め部1からは、内部から外部へ搬送供給体2を導出している。
【0013】
搬送供給体2は、セラミック又は金属又は樹脂で形成された多孔体、毛細管現象を起こす隙間や穴を有する樹脂又は金属等で形成されたキャピラリー、フェルトのような繊維等、毛細管現象により液体Lを吸い上げるものからなり、導体か不導体かは問われないもので、本実施形態では、図4に示すように、可撓性を有する樹脂キャピラリーで形成される搬送供給体本体21と被覆22とからなり、搬送供給体本体21の外径dはφ0.55mm(R0.275mm)の曲面状となっており、この搬送供給体21の先端部近傍よりも末端側に被覆22が形成してありその外径dはφ0.8mmとなっている。搬送供給体本体21には内部に末端から先端まで毛細管現象で液体Lを搬送供給するための径又は幅が0.02〜0.1mmの搬送経路23が一本又は複数本貫通形成してある。
【0014】
霧化電極4は、有蓋筒状をしてその先端の蓋部が霧化部40となるもので、材質としてはSUS304、SUS316といったステンレスのような耐食性、耐摩耗性、耐薬品性に優れたものや、チタンに白金をコーティングしたもの、鉄にチタンをコーティングしたもの等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。本実施形態では、全長が10〜20mm、肉厚が0.075mmの有蓋筒状をしたSUS316からなるもので、図4に示すように先端の霧化部40の内径Dはφ0.6mm(外径φ0.75mm)、末端の開口42の内径Dがφ1.85mm(外径φ2mm)となっており、その途中の部分は先端の霧化部40へ行く程小さくなっている。本実施形態では、図2に示すように内径Dがφ1.35mm(外径φ1.5mm)、内径Dがφ0.85mm(外径φ1mm)というように段階的に小さくなっているが、連続的に小さくなっていてもよい。なお霧化電極4の肉厚は0.05〜0.1mmであればよい。
【0015】
霧化部40には裏面側から表面側に液体Lを挿通させる挿通孔41が形成してある。挿通孔41は、図3(a)に示すようにφ0.15mmの円形孔三つを頂部を中心とする同心円上に等間隔に形成したり、図3(b)に示すようにφ0.1mmの円形孔四つを頂部を中心とする同心円上に等間隔に形成したり、図3(c)に示すように幅0.15mmのスリット三つを頂部を中心として放射状に等間隔に形成したり、図3(d)に示すように幅0.15mmのスリット四つを頂部を中心として放射状に等間隔に形成したりするもので、円形孔であればφ0.01〜0.2mmのものを頂部を中心とする同心円上に等間隔に形成するのが好ましく、スリットであれば幅0.01〜0.2mmのものを頂部を中心として放射状に等間隔に形成するのが好ましいが特に限定はされない。このような挿通孔41を形成することで、毛細管現象および後述する霧化電極4と対向電極5との間にかける電界の静電気力によって液体Lを霧化部40の表面に供給することができる。
【0016】
なお霧化部40は、対向電極5のエッジの内径がφ5〜20mm、対向電極5との間の距離が2〜10mmの時、外径をφ0.1〜5mmとするのが好ましく、それより大きくなると、対向電極5との間で放電を起こさせるために印加部3と対向電極5との間に極めて高い電圧を印加しないと放電が起こらない。
【0017】
この霧化電極4は、末端の開口42から搬送供給体2を嵌め込んで該搬送供給体2が液溜め部1から搬送した液体Lを挿通孔41を介して霧化部40の表面に挿通させるもので、搬送供給体2が嵌め込まれた際、霧化部40の裏面と搬送供給体2の先端との間の隙間が0.1mm以下(本実施形態では0.05mm)となるのが好ましく、また、径方向の隙間は0.05〜0.2mmであればよく、これにより毛細管現象によってこれらの隙間に液体Lが搬送されて霧化電極4の霧化部40の裏面側に沿って広がるように液体Lが供給される。
【0018】
対向電極5と印加部3は、共にカーボンのような導電材を混入した合成樹脂やステンレスのような金属で形成されることで導電性を有しているものである。対向電極5は図1に示すように、霧化電極4の先端方向から見て霧化電極4の周囲を囲む円状となるように形成してあり、エッジの内径はφ8mmで、該エッジの内端縁と霧化部40との間の距離は5mmとなるように設定している。なお対向電極5の内端縁が円弧状であればその孤の長さは円周より短い限りいくらでもよい。対向電極5と印加部3との間に高電圧を印加した際、霧化部40と対向電極5の間に500V/mm以上の電界強度を与えられるものが好ましい。
【0019】
ここで、対向電極5と、霧化部40を有する霧化電極4は、その位置関係が上記のように所定の位置関係とすべく同一のケーシングCに固定して取り付けてある。ケーシングCには更に印加部3も固定してある。霧化部40は、上述したように先端の霧化部40へ行く程径が小さくなっているので、図5に示すようにケーシングCに対して圧入して取り付けることができ、更に接着剤等によって固定してもよいが特に限定されない。またなお、搬送供給体2の霧化電極4への固定も接着剤等によってもよいが、カシメや溶接等特に限定されない。
【0020】
この静電霧化装置による静電霧化について説明する。高電圧電源(図示せず)により印加部3を介して霧化部40と対向電極5との間に高電圧を印加すると、搬送供給体2によって液溜め部1から搬送されて霧化電極4の霧化部40の裏面側の隙間に広がっている液体Lが挿通孔41にて発生する毛細管現象と、霧化部40と対向電極5との間に発生する電界の静電気力によって液体Lが霧化部40の裏面側から表面側へと移動し、テーラーコーンを形成する。そして、テーラーコーンの尖先部に溜まった負電荷の反発力により分裂を繰り返すといういわゆるレイリー分裂を起こしてナノメータサイズの粒子径のマイナスイオンのミストを発生させる静電霧化がなされ、この時反応性に富む活性種が生成される。
【0021】
本発明はこの静電霧化装置の搬送供給体2の霧化電極4への取り付け作業が簡単となるように、霧化電極4の開口42の内径Dを搬送供給体2の外径dよりも大きく形成すると共に、先端の霧化部40側に行く程霧化電極4の内径が小さくなるように形成してある。これにより、霧化電極4の開口42に搬送供給体2を容易に嵌め込むことができて、取り付け作業が簡単となる。また、搬送供給体2の先端部が霧化電極4にて覆われるため、搬送供給体2の先端部が変形したり破損され難くなり、液体Lの搬送が途切れることなく静電霧化が安定して行われる。
【0022】
また、搬送供給体2を可撓性を有する部材で形成したことで、前記霧化電極4の開口42において搬送供給体2が動き得ることとなり、液溜め部1と霧化電極4との位置関係が異なる製品に組み込む場合でも取り付け作業が簡単となると共に搬送供給体2にかかる不要な曲げモーメント等が低減される。
【0023】
また、搬送供給体2の先端部の外径dを霧化電極4の先端部の内径Dと略同じかそれより若干小さく形成したことで、搬送供給体2を霧化電極4の先端部(即ち霧化部40の裏面側)にまで嵌め込むことができて、搬送供給体2により霧化部40へ大量の液体Lを搬送することができて霧化量を増加させることができる。
【0024】
またなお、液溜め部1に替えて、大気中の水分を冷却させて結露させるペルチエ素子等を利用した結露手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の構成図であり、(a)は側断面図であり、(b)は正面図である。
【図2】(a)同上の霧化電極と搬送供給体と印加部の側断面図であり、(b)は霧化電極と搬送供給体の正面図である。
【図3】(a)(b)(c)(d)は各霧化部の例の正面図である。
【図4】同上の霧化電極と搬送供給体の先端部を示し、(a)は側断面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図5】霧化電極のケーシングへの圧入を説明する側断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 液溜め部
L 液体
2 搬送供給体
3 印加部
41 挿通孔
40 霧化部
4 霧化電極
5 対向電極
42 開口
開口の内径
d 搬送供給体の外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電霧化させる液体を収容する液溜め部と、前記液溜め部から液体を搬送する搬送供給体と、前記液体に電圧を印加する印加部と、有蓋筒状をしてその先端の蓋部が裏面側から表面側に液体を挿通させる挿通孔を有する霧化部となる霧化電極と、前記霧化電極の霧化部に対向する対向電極とを備え、前記霧化電極の末端の開口内に搬送供給体を嵌め込んで該搬送供給体が液溜め部から搬送した液体を挿通孔を介して霧化部の表面に挿通させて静電霧化させる静電霧化装置において、霧化電極の開口の内径を搬送供給体の外径よりも大きく形成すると共に、先端の霧化部側に行く程霧化電極の内径が小さくなるように形成して成ることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
搬送供給体を可撓性を有する部材で形成して成ることを特徴とする請求項1記載の静電霧化装置。
【請求項3】
搬送供給体の先端部の外径を霧化電極の先端部の内径と略同じかそれより若干小さく形成して成ることを特徴とする請求項1又は2記載の静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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