説明

静電霧化装置

【課題】有害ガスを発生させることなくヒドロキシラジカルを生成し、除菌や脱臭を行う。
【解決手段】静電霧化装置50は、吸水性および保水性を有する多孔質材料で形成され、白金のコロイドを担持し、供給された水を水粒子として放出する放電極52と、水が供給された放電極52に負の高電圧を印加して当該放電極52を負に帯電させる高電圧印加手段54,58と、を備え、放電極52に対向せず且つ当該放電極52から離れた位置に設けられた部材が、高電圧印加手段54,58によって負に帯電した放電極52に対応する対極として機能するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば洗濯槽内の空気を循環経路を通して循環させるように構成した洗濯乾燥機に備えられる静電霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の洗濯乾燥機として、例えばヒートポンプを備えたものがある。この洗濯乾燥機は、洗濯槽に連通接続された循環風路(循環経路)内に、当該循環風路内を流れる空気を冷却し除湿する蒸発器と、当該循環風路内を流れる空気を加熱する凝縮器とを備えている。そして、乾燥行程において、循環ファンによって洗濯槽内の空気を循環風路を通して循環させながら、凝縮器で加熱した空気(温風)を洗濯槽内に供給し、洗濯槽から排出された空気を蒸発器によって冷却除湿することを繰り返すことによって、洗濯槽内の衣類の乾燥を行うようにしている。
【0003】
このような乾燥行程は、洗濯槽内の衣類を洗浄する洗い行程の後に行われる。しかし、衣類に付着した雑菌などは、洗い行程では落としきれない場合があり、不衛生になったり、臭い,カビなどの発生や衣類の変色などの原因になっていた。特に、近年では、節水のために、洗い行程時の洗い水として雑菌などを多く含む風呂水を使用する場合があり、この場合、衣類に付着したまま残る雑菌などの残存量が多くなる傾向がある。
【0004】
一方で、雑菌,悪臭成分,有害物質などを除去するものとして、例えば特許文献1に記載の装置が考えられている。このものは、放電電極と、これに対向する対向電極と、放電電極に水を発生させるペルチェ素子とを備えている。そして、放電電極と対向電極との間に高電圧を印加することによって、強い酸化作用を有するヒドロキシラジカルを生成し、これにより、雑菌,悪臭成分,有害物質などを除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−26117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に記載の装置を、洗濯乾燥機の循環風路の途中に設置すれば、乾燥用の温風とともにヒドロキシラジカルを洗濯槽内に供給することができ、洗い行程の後に衣類に残存する雑菌などを除去することができるように考えられる。
【0007】
ところが、特許文献1に記載の装置は、放電電極と対向電極とが極近傍で対向した構成となっている。そのため、放電電極と対向電極との間でコロナ放電が発生し、これに伴って、オゾンや窒素酸化物が発生してしまう。このようなオゾンや窒素酸化物は、衣類を脱色したり、臭気を発生させたりするものであり、また、人体に有害なガスである。
【0008】
特に、密閉性が高いドラム式の洗濯乾燥機では、発生した有害ガス(オゾンや窒素酸化物)が洗濯槽内に残り易く、従って、衣類の出し入れの際に、使用者が有害ガスに暴露される可能性が高い。このような課題を解決する手段として、発生した有毒ガスが消滅するまで洗濯槽の蓋をロックする構成が考えられる。しかし、このような構成では、洗濯終了後に直ぐに衣類を取り出すことができず、使い勝手が悪くなってしまう。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、有害ガスを発生させることなくヒドロキシラジカルを生成することができ、除菌や脱臭を行うことができる静電霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、吸水性および保水性を有する多孔質材料で形成され、白金のコロイドを担持し、供給された水を水粒子として放出する放電極と、水が供給された前記放電極に負の高電圧を印加して当該放電極を負に帯電させる高電圧印加手段と、を備え、前記放電極に対向せず且つ当該放電極から離れた位置に設けられた部材が、前記高電圧印加手段によって負に帯電した前記放電極に対応する対極として機能するように構成されていることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の静電霧化装置によれば、水が供給された放電極には、高電圧印加手段によって負の高電圧が印加される。これにより、放電極の先端部の水が分裂してミスト状に放出されるようになる。ここで、ミスト状に放出された水粒子は、負に帯電しており、そのエネルギーによって生成したヒドロキシラジカルを含んでいる。従って、強い酸化作用を有するヒドロキシラジカルが供給されるようになり、除菌や脱臭が可能となる。
【0012】
この場合、高電圧印加手段によって負に帯電した放電極に対応する対極を、当該放電極の近傍に設けていない。そのため、放電極からの放電自体が非常に穏やかになり、放電極と対極との間でコロナ放電が発生していた従来構成とは異なり、オゾンや窒素酸化物などの有害ガスの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、静電霧化装置の構成を概略的に示す縦断側面図
【図2】洗濯乾燥機の外観斜視図
【図3】洗濯乾燥機の内部構成を概略的に示す縦断側面図
【図4】水槽の背面図
【図5】本発明の第5の実施形態を示す図1相当図
【図6】本発明の第6の実施形態を示すものであり、放電極及びその周辺部分を拡大して示す縦断側面図
【図7】放電極及びその周辺部分をを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。図2は、ドラム式の洗濯乾燥機1の全体的な外観を示す斜視図である。この図2に示すように、洗濯乾燥機1の外郭を構成する筐体2は、全面が滑らかに傾斜したほぼ矩形箱状をなしており、その左右両側面には、洗濯乾燥機1の移動時などに使用するための取手3が設けられている。また、筐体2の上面には、水道水用給水口4及び風呂水用給水口5が設けられている。
【0015】
筐体2の前面中央部には、ほぼ円形状の扉6が設けられているとともに、当該扉6を開くための操作ボタン7が設けられている。また、筐体2の前面上部には、操作パネル8及び洗剤類投入部9が設けられている。操作パネル8は、筐体2の裏側に設けられた制御装置10(図3参照)に接続されている。また、操作パネル8には、例えば各種運転コースを選択したり運転を開始させるための各種スイッチが設けられている。なお、制御装置10は、マイクロコンピュータを中心としてROM,RAMなどを備えて構成されており、各種の入力信号や予め記憶された制御プログラムに基づいて、洗濯乾燥機1の動作全般を制御するようになっている。筐体2の下部には、排水や循環水に含まれる異物を捕獲するためのリントフィルタ(図示せず)が着脱可能に配設されるフィルタ収納部11が設けられている。
【0016】
次に、洗濯乾燥機1の内部構成について図3を参照しながら説明する。図3は、洗濯乾燥機1の内部構成を概略的に示す縦断側面図である。この図3に示すように、筐体2の内部には水槽12(洗濯槽に相当)が配設され、その水槽12の内部にドラム13が配設されている。
【0017】
これら水槽12及びドラム13は、ともに一端部が閉塞された有底円筒状を成しており、前側(図中、左側)の端面部に、それぞれ開口部14,15を有している。ドラム13の開口部15は、水槽12の開口部14によって囲繞されており、水槽12の開口部14は、筐体2の前面部に形成された開口部16にベローズ17によって連ねられている。開口部16には、上記した扉6が開閉可能に設けられており、これにより、開口部14,15,16からなる洗濯物(衣類など)の出し入れ用の投入口が扉6によって開閉されるようになっている。
【0018】
ドラム13の開口部15の周囲には、例えば液体封入型の回転バランサ18が設けられており、ドラム13の周側部(胴部)のほぼ全域には、複数の孔19が形成されている(一部のみ図示)。これら孔19は、洗い行程時、すすぎ行程時及び脱水行程時には通水孔として機能し、乾燥行程時には通風孔として機能するものである。ドラム13の周側部の内面には、複数のバッフル20が突設されており、ドラム13の後側の端面部には、その中心軸と同心となる環状配置によって複数の温風導入口21が形成されている。
【0019】
水槽12は、前側の端面部の上部(開口部14よりも上方の部分)に、温風出口22を有し、後側の端面部の上部に、上記温風導入口21の回転軌跡に対向させて温風入口23を有している。
水槽12の上部には、給水ホース24を介して給水ケース25が接続されている。この給水ケース25には、給水弁26を介して、水道水用給水口4及び風呂水用給水口5が接続されている。これらにより、水道水用給水口4からの水道水、或いは、風呂水用給水口5からの風呂水が、給水弁26,給水ケース25,給水ホース24を介して水槽12の内部に供給されるようになっている。なお、給水ケース25には、洗剤類投入部9を介して洗剤類(洗剤、柔軟仕上げ剤、漂白剤など)が投入されるようになっており、これら洗剤類が水道水、或いは、風呂水とともに水槽12内に供給されるようになっている。
【0020】
水槽12の底部の最後部には、排水口27が形成されており、この排水口27には、洗濯乾燥機1の外部に連なる排水ホース28(排水経路に相当)が接続されている。排水ホース28の途中には排水弁29が設けられている。これらにより、水槽12内の水が機外に排水できるようになっている。
【0021】
水槽12の背面部には、洗濯機モータ30が取り付けてられており、これの回転軸31が水槽12内に突出している。回転軸31の先端部には、ドラム13の後側の端面部の中心部分が取り付けられている。これにより、ドラム13は、水槽12に同軸状で回転可能に支持されている。即ち、洗濯乾燥機1は、ドラム13を洗濯機モータ30によって直接回転駆動する構成であり、洗濯機モータ30によるダイレクトドライブ方式を採用している。また、洗濯機モータ30は、この場合、アウターロータ型のブラシレスDCモータで構成されている。
【0022】
水槽12は、複数のサスペンション32(1つのみ図示)によって筐体2に弾性支持されており、その支持形態は、水槽12の軸方向が前後方向となる横軸状で、しかも、前上がりの傾斜状である。従って、この水槽12内に上述のように支持されたドラム13も、同形態となっている。
【0023】
水槽12の下方(筐体2の底面上)には台板33が配置され、この台板33上には通風ダクト34が配置されている。この通風ダクト34は、前端部の上部に吸風口35を有しており、この吸風口35には、接続ホース36及び還風ダクト37を介して、水槽12の温風出口22が接続されている。なお、還風ダクト37は、水槽12の開口部14の側部を迂回するように配管されている。
【0024】
通風ダクト34の後端部には、循環用送風機38のケーシング39が連設されており、このケーシング39の出口部40は、接続ホース41及び給風ダクト42を介して、水槽12の温風入口23に接続されている。なお、給風ダクト42は、図4に示すように、水槽12(洗濯乾燥機1)の背面側から見て、洗濯機モータ30の右側を迂回するように配管されている。ここで、還風ダクト37,接続ホース36,通風ダクト34,循環用送風機38のケーシング39,接続ホース41,給風ダクト42によって、水槽12に連通接続された循環風路43(循環経路に相当)が構成されている。
【0025】
循環用送風機38は、この場合、遠心ファンで構成されている。即ち、循環用送風機38は、ケーシング39の内部に遠心羽根車44を有しているとともに、その遠心羽根車44を回転させるモータ45をケーシング39の外部に有している。循環用送風機38は、水槽12内(ドラム13内)の空気を、循環風路43を通して循環させる送風手段として機能する。
【0026】
循環風路43のうち通風ダクト34の内部には、前部に蒸発器46(除湿手段に相当)が配置され、後部に凝縮器47(加熱手段に相当)が配置されている。これら蒸発器46及び凝縮器47は、何れも詳しくは図示しないが、伝熱フィンを細かいピッチで多数配設してなるフィン付きチューブ型のもので、熱交換性に優れており、それら伝熱フィンの各間を、通風ダクト34内を流れる風(図3にて実線で示す矢印参照)が通るようになっている。
【0027】
蒸発器46及び凝縮器47は、圧縮機48、及び、図示しない流量制御弁(例えば、電子式の制御弁)とともにヒートポンプ49を構成している。このヒートポンプ49においては、冷媒流通パイプによって、圧縮機48,凝縮器47,流量制御弁,蒸発器46の順にこれらをサイクル接続しており(冷凍サイクル)、圧縮機48が作動することによって冷媒を循環させるようになっている。そして、循環風路43内を流れる空気を、蒸発器46によって冷却除湿し、凝縮器47によって加熱して温風化するようになっている。
【0028】
このような構成の洗濯乾燥機1において、循環風路43の途中部分には、静電霧化装置50が備えられている。この静電霧化装置50は、図4に示すように、循環風路43の途中部分を構成する給風ダクト42において、温風入口23よりも下流であって且つ接続ホース41を上流側に越えた直後の部分(図4では、給風ダクト42が洗濯機モータ30を迂回しながら上方に延びる部分の下端部分)に備えられている。
【0029】
次に、この静電霧化装置50の構成について図1を参照しながら説明する。この静電霧化装置50は、循環風路43の外部に取り付けられるケース51に、複数の放電極52と、保水材53(保水手段に相当)と、導電ロッド54とを備えて構成されている。
【0030】
放電極52は、吸水性、保水性及び吸い上げ特性を有する多孔質材料(例えば、繊維状のポリエステルからなるフェルト材)で形成されたものであり、それぞれ先端部(図1では上端部)が尖ったピン形状をなしている。これら複数の放電極52は、絶縁性材料(例えば、ポリプロピレンなどの樹脂)からなる固定板55を突き抜けるようにして当該固定板55に固定されているとともに、それぞれの先端部が循環風路43の内部に突出するように設けられている。これら複数の放電極52は、中央部に配置される放電極52aと、当該放電極52aの周囲に同心円状に配置される複数の放電極52bとからなる。この場合、中央部の放電極52aは、周囲の放電極52bよりも長く形成されており、その基端部(図1では下端部)が、ケース51のうち放電極52の下方に設けられた貯水タンク部51a(貯水タンクに相当)に延びている。
【0031】
保水材53は、保水性を有する多孔質材料(例えば、ウレタンスポンジ)で形成されており、固定板55の下方に配設されている。この保水材53には、複数の放電極52が突き抜けるようにして挿入されている。これにより、放電極52のうち循環風路43の外部の部分(図1では下側の部分)が、保水材53によって覆われた状態となっている。
【0032】
貯水タンク部51aには、給水弁26から延びる給水経路56(図3も参照)が接続されている。この場合、給水弁26は、2つの給水口4,5のうち水道水用給水口4のみを当該給水経路56に開放するように切り替え可能となっている。従って、水道水用給水口4からの水道水の一部が、給水弁26及び給水経路56を介して貯水タンク部51aに給水されるようになっている。
【0033】
そして、貯水タンク部55a内に供給された水は、当該貯水タンク部55aに延びる放電極52aを介して吸水され(吸い上げられ)、保水材53に供給される。保水材53に供給された水は、当該保水材53内を浸透し、これに伴って、放電極52aや放電極52bに水が供給される。ここで、給水弁26は、水道水用給水口4,給水経路56,貯水タンク部55a,放電極52aを介して、保水材53に給水する本発明の給水手段として機能する。
【0034】
なお、放電極52aには、保水材53から供給された水のみならず、当該放電極52a自体が貯水タンク部55aから吸水した水も含まれる。また、放電極52bは、放電極52aを中心として同心円状に配置されていることから、放電極52aから保水材53内に浸透する水が周囲の放電極52bに均等に供給されるようになっている。
【0035】
また、貯水タンク部51aには、排水ホース28のうち排水弁29よりも下流の部分に延びる溢水経路57(図3も参照)が接続されている。この溢水経路57は、端部57aが貯水タンク部55aの内部まで延びており、これにより、水位が端部57aに達するまでの水量(図1にて破線で示す水位、例えば1cc未満)を、貯水タンク部55a内に貯水可能となっている。貯水タンク部55a内の水位が端部57aに達すると、貯水タンク部55a内の水が当該端部57aから溢れ、溢れた水が溢水経路57を介して排水ホース28に排水されるようになっている。
【0036】
導電ロッド54は、その先端部が保水材53を突き抜けて固定板55に固定されているとともに、その基端部が洗濯乾燥機1の電源回路(図示せず)の高電圧電源58の負極(例えば、−6kV)に接続されている。これにより、高電圧電源58からの負の高電圧が、導電ロッド54、及び、水を含んだ保水材53を介して放電極52に印加され、当該放電極52が負に帯電するようになっている。即ち、これら導電ロッド54と高電圧電源58とから、放電極52に負の高電圧を印加して当該放電極52を負に帯電させる本発明の高電圧印加手段が構成されている。
【0037】
また、この場合、洗濯乾燥機1の筐体2は、アース線(図示せず)などを介して接地されるようになっており、このように接地された筐体2(放電極52に対向せず且つ当該放電極52から遠方に離れた位置に設けられた部材)が、負に帯電した放電極52に対応する対極として機能するように構成されている。
【0038】
なお、図3及び図4に示すように、循環風路43のうち静電霧化装置50が設置される部分には仕切り板43aが設けられている。この仕切り板43aは、下方に傾斜した庇部43bを有しているとともに、静電霧化装置50の放電極52の上方に対向するようになっている。これにより、循環風路43内を流れる空気(温風)の一部は、静電霧化装置50側に供給され、放電極52及びその周辺部分を通過した後に循環風路43に合流するようになっている(図3にて破線で示す矢印参照)。
【0039】
このように構成された静電霧化装置50を備えた洗濯乾燥機1によれば、貯水タンク部55a内に貯水された水が放電極52aを介して保水材53に供給され、保水材53に保水された水が、先端部が循環風路43の内部に突出した放電極52に供給される。そして、水が供給された放電極52には、高電圧電源58からの負の高電圧が印加される。このとき、放電極52の先端部に電荷が集中し、当該先端部に含まれる水に表面張力を超えるエネルギーが与えられる。これにより、放電極52の先端部の水が分裂(レイリー分裂)して、循環風路43の内部にミスト状に放出されるようになる(静電霧化現象)。ここで、ミスト状に放出された水粒子は、負に帯電しており、そのエネルギーによって生成したヒドロキシラジカルを含んでいる。従って、強い酸化作用を有するヒドロキシラジカルが、循環風路43内を流れる空気(温風)とともに水槽12内に供給されるようになり、水槽12内の洗濯物(衣類など)の除菌や脱臭が可能となる。
【0040】
この場合、高電圧電源58からの負の高電圧によって負に帯電した放電極52に対応する対極を、当該放電極52の近傍に設けていない。そのため、放電極52からの放電自体が非常に穏やかになり、放電極と対極との間でコロナ放電が発生していた従来構成とは異なり、有害ガス(オゾンや、当該オゾンが空気中の窒素を酸化することによって発生する窒素酸化物、亜硝酸、硝酸など)の発生を抑えることができる。
【0041】
従って、洗濯物出し入れ用の投入口に扉6やベローズ17が設けられ、密閉性が高いドラム式の洗濯乾燥機1においても、水槽12内などに有害ガスが残ることがなく、洗濯物の出し入れの際に、使用者が有害ガスに暴露されるおそれがない。また、有害ガスによる衣類の脱色や悪臭の発生などのおそれもない。
また、このように有害ガスの発生を抑えることができるので、有害ガスを除去するための構成(例えば、オゾン分解触媒)を設ける必要がない。
【0042】
また、貯水タンク部51aには、清浄度の高い水道水用給水口4からの水道水のみが給水され、雑菌やミネラル分(例えば、カルシウムやマグネシウム)などを水道水に比べ多量に含む風呂水用給水口5からの風呂水は、当該貯水タンク部51aに供給されないようになっている。従って、貯水タンク部51a内が雑菌などによって不衛生になり難くなる。また、風呂水に含まれるミネラル分が放電極52に至ることがなく、従って、当該放電極52にてミネラル分が凝集しスケールを形成して蓄積してしまうことがない。そのため、放電極52が目詰まりを起こすことなく通水性を良好に維持することができ、ミスト(ミスト状に放出される水粒子)の放出量が低下してしまうことを防止することができる。また、放電極52自体の耐用寿命を長くすることができる。
【0043】
なお、静電霧化装置50は、循環風路43の途中部分であれば任意の部分に設置することが可能であるが、本実施形態に示したように、循環風路43のうち給風ダクト42によって構成される部分に設置することが好ましい。給風ダクト42は、循環風路43における蒸発器46及び凝縮器47よりも下流の部分を構成しており、この部分において発生したヒドロキシラジカルが、蒸発器46の冷却作用及び凝縮器47の加熱作用の影響を受け難くなるからである。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、放電極52に白金ナノコロイドを担持させたものである。白金ナノコロイドは、例えば、当該白金ナノコロイドを含む処理液に放電極52を浸漬して、これを焼成することによって担持させることができる。
【0045】
白金をナノサイズ(例えば、粒径2〜5nm)まで小さくすると(微粒子化すると)、その微粒子(白金ナノ粒子)は電位を帯びるようになる。そして、このような白金ナノ粒子に放電極52を介して負の電荷が与えられると、当該白金ナノ粒子の電位(酸化還元電位)がマイナスになる。酸化還元電位がマイナスとなった白金ナノ粒子に、循環風路43内の空気が接触すると、その白金ナノ粒子上で酸素分子からの電位移動が促進され、マイナスの電荷を帯びた酸素原子が生成される。このマイナスの電荷を帯びた酸素原子は、そのエネルギーによって酸素ラジカルとなり、白金ナノ粒子から離脱して、循環風路43内に放出される。循環風路43内に放出された酸素ラジカルは、当該循環風路43内にミスト状に放出された水粒子と接触し、これにより、ヒドロキシラジカルが生成される。
【0046】
なお、ナノサイズまで小さくない白金粒子を放電極52に担持させたとしても、このような白金粒子はプラスの電荷を帯びることから、強い酸化作用を有する酸素ラジカルやヒドロキシラジカルを生成させることはできない。
【0047】
本実施形態によれば、放電極52に担持させた白金ナノコロイドによって、循環風路43内にヒドロキシラジカルが生成し易くなり、静電霧化装置50による水槽12内の除菌機能や脱臭機能を一層向上することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、保水材53を、ウレタンスポンジではなく、繊維状のイオン交換樹脂で形成したものである。従って、放電極52のうち循環風路43の外部の部分が、イオン交換樹脂によって覆われた構成となっている。この場合、イオン交換樹脂は、強酸性のイオン交換樹脂と強アルカリ性のイオン交換樹脂とを混合して形成したものである。
【0049】
このような構成によれば、水道水用給水口4からの水道水が放電極52に供給される前に、当該水道水に含まれるミネラル分が、イオン交換樹脂によって吸着され取り除かれるようになり、放電極52にスケールが蓄積してしまうことを防止することができる。これにより、放電極52の通水性を良好に維持することができ、放電極52を適切に負に帯電させることができることから、ミストの放出量が低下してしまうことを防止することができる。また、放電極52自体の耐用寿命を長くすることができる。また、イオン交換樹脂は繊維状であることから、保水材53から流出し難くなっている。
【0050】
なお、保水材53は、イオン交換樹脂に吸水性樹脂(例えば、セルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂など)を混合して形成してもよい。これにより、保水材53の保水性が向上し、放電極52に供給するための水が欠乏し難くなり、放電極52への水供給が均一に行われるようになる。吸水性樹脂としては、繊維状でも粒子状でも構わないが、重量あたりの表面積が大きい方が好ましい。
【0051】
また、イオン交換樹脂の流出のおそれはあるが、保水材53全体を繊維状のイオン交換樹脂で形成するのではなく、例えば粒径数十ミクロン〜数百ミクロンの粒子状(ビーズ状)のイオン交換樹脂をウレタンスポンジに混合して保水材53を形成しても構わない。また、例えば多数の孔を設けた通水性を有するカセットにイオン交換樹脂を収納して、貯水タンク部51aに設置するようにしてもよい。また、例えば給水経路56の途中に、イオン交換樹脂を充填したカラムを設置するようにしてもよい。要は、放電極52に水が供給される前に、当該水にイオン交換樹脂を接触させてミネラル分を除去できる構成であればよい。
【0052】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。上述の各実施形態では、高電圧電源58からの負の高電圧は、保水材53に含まれる水を介して放電極52に印加されるようになっている。これは、水を介して電気を流し易くすることによって通電効率を適切に維持し、導電性低下に起因する加熱による発火などを防止するためである。しかしながら、上述の第3の実施形態に示したように、水に含まれるミネラル分をイオン交換樹脂によって除去してしまうと、水の導電性が大きく低下してしまい、通電効率が低下してしまう可能性がある。
【0053】
そこで、本実施形態では、放電極52は、吸水性、保水性及び吸い上げ特性を有する多孔質材料(例えば、繊維状のポリエステルからなるフェルト材)に導電性物質(例えば、カーボン繊維)を混紡して形成されている。このような構成によれば、放電極52自体が導電性を有するようになることから、水の導電性が低下した場合であっても、当該放電極52に高電圧電源58からの負の高電圧が適切に印加されるようになる。これにより、導電性低下に起因する加熱による発火などを防止でき、また、放電極52からの放電が安定するようになる。
なお、放電極52を、例えばカーボン繊維からなるフェルト材のみで形成し、当該放電極52全体を導電性物質で構成してもよい。
【0054】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について図5を参照しながら説明する。本実施形態は、除菌剤61を貯水タンク部51aの内部に設置したものである。
除菌剤61は、この場合、立方体型のブロック材として形成されており、銀酸化物とリン酸カルシウム(リン酸系ガラスに相当)とから組成されている。銀酸化物は、これに含まれる銀(除菌性を有する金属元素に相当)を水中に銀イオンとして溶出することによって、除菌作用を担うものである。
【0055】
リン酸カルシウムは、水に対して徐々に溶出する性質(徐溶性)を有しており、この徐溶性によって除菌剤61自体の体積を徐々に小さくさせる機能を担うものである。また、リン酸カルシウムは、ガラスとしての性質である硬性(硬さ)を有している。そのため、除菌剤61に機械的な強度(硬さ)を付与する機能をも担う。
【0056】
本実施形態によれば、除菌剤61から溶出される銀イオンによって、貯水タンク部51a内での雑菌類の増殖を抑えることができ、貯水タンク部51a内、ひいては、静電霧化装置50内を衛生的に保つことができる。また、雑菌類に由来するスライムの発生を抑えることができ、放電極52への吸水性の低下や、ミストの放出量の低下を防止することができる。また、放電極52に供給される水、ひいては、当該放電極52から放出されるミスト状の水粒子に銀イオンが含まれるようになり、当該銀イオンが水槽12内に供給されるようになるので、水槽12内の洗濯物に抗菌性を付与することが可能となる。
【0057】
また、除菌剤61に含まれるリン酸成分は、水に溶解すると、ミネラル分(カルシウムやマグネシウム)に対してキレート構造(Ca182−、Mg182−)を形成し、ミネラル分の水溶解性を高める。これにより、ミネラル分が放電極52に凝集し難くなり、スケールを形成して蓄積してしまうことがないので、放電極52が目詰まりを起こすことなく通水性を良好に維持することができ、ミスト(ミスト状に放出される水粒子)の放出量が低下してしまうことを防止することができる。また、放電極52自体の耐用寿命を長くすることができる。
【0058】
なお、除菌剤61には、銀酸化物の褐色化を防止する機能を担う酸化亜鉛や、除菌剤61を青色に着色するために添加する酸化コバルトなどを含ませるようにしてもよい。また、除菌剤61の形状は、立方体に限られるものではなく、例えば、円盤形状や板状であっても良い。また、一粒あたりの重さや大きさを適宜変更することにより、銀イオンの溶出量を調整することが可能である。
【0059】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について図6及び図7を参照しながら説明する。本実施形態は、複数の放電極71の先端部の曲率が複数設定されたものである。
即ち、図6及び図7に示すように、中央部に配置される放電極71aは、その先端部の曲率(先端部の半径)が1〜2mmとなっている。これに対し、当該放電極71aの周囲に配置される放電極71bは、放電極71aよりも先端部の曲率が大きくなっており、最も大きいもので5mm程度となっている。即ち、中央部の放電極71aの先端部は尖っているのに対し、周囲の放電極71bの先端部は滑らかな半球状になっている。なお、周囲の放電極71bは、図7に示すように、放電極71aを中心として同心円状に配置されている。
【0060】
一般に、放電極の先端部が尖っているほど、放電電圧が高くなり、ミスト状に放出される水粒子の粒径が小さくなる(数十nm〜数百nm程度)。そのため、水粒子に含まれるヒドロキシラジカルの比率(含有率)を増加させることができる。しかし、この場合、ミストの発生量自体が減少してしまう。一方、放電極の先端部が丸みを帯びてくると、ミストの発生量を増加させることができるものの、水粒子の粒径が大きくなり、水粒子に含まれるヒドロキシラジカルの比率が減少してしまう。
【0061】
そこで、本実施形態では、放電極71の先端部の曲率を複数設定し、先端部が尖った放電極と丸みを帯びた放電極とが混在する構成とした。このような構成によれば、ミストの発生量の減少を極力抑えつつ、水粒子に含まれるヒドロキシラジカルの比率を極力増加させることが可能となる。これにより、ミストの発生量及びヒドロキシラジカルの含有率が何れも安定するようになり、発生したミスト及びヒドロキシラジカルが均一に放出されるようになる。従って、効率の良い除菌作用、脱臭作用を実現することができる。
【0062】
なお、例えば、中央部の放電極71aの先端部の曲率を大きくし、周囲の放電極71bの先端部の曲率を小さくしてもよい。要は、先端部の曲率が大きい丸みを帯びた放電極と、先端部の曲率が小さい尖った放電極とが混在する構成であればよい。また、各放電極の曲率は、上記した数値に限られるものではなく、適宜変更して設定することができる。
【0063】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上述の各実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張できる。
放電極52,71を形成する多孔質材料としては、多孔質のセラミック材料や、多孔質の金属材料などを用いてもよい。
放電極52,71は、少なくとも1本が長く形成され貯水タンク部51aまで延びていればよいが、全てを長く形成してもよいし、複数のうちの何れか数本を長く形成するようにしてもよい。
【0064】
給水経路56を通風ダクト34の底部に接続し、蒸発器46から発生する除湿水が貯水タンク部55a内に給水されるようにしてもよい。また、給水弁26を、風呂水用給水口5を給水経路56に開放するように切り替え可能に構成し、風呂水用給水口5からの風呂水の一部が貯水タンク部51a内に給水されるようにしてもよい。
【0065】
溢水経路57を、例えば水槽12の底部に接続して、貯水タンク部55aから溢れた水を水槽12内へ排水するようにしてもよい。このような構成によれば、貯水タンク部55aから溢れた水を、無駄にすることなく洗濯水として利用することができる。
高電圧印加手段によって負に帯電した放電極52,71に対応する対極として、放電極52,71に対向せず且つ当該放電極52,71から離れた位置にアース体を設けるようにしてもよい。
【0066】
例えば、水に浸して洗濯することができない洗濯物を除菌,脱臭したい場合に、水槽12内に水を供給しない状態で静電霧化装置50からミストを供給する運転コースを設けるようにしてもよい。これにより、水に弱い洗濯物を水に浸すことなく除菌,脱臭することができる。
【0067】
また、風呂水を使用して洗い行程を実行した場合に、乾燥行程における静電霧化装置50からのミストの発生量を増加させる制御やヒドロキシラジカルの含有率を増加させる制御を行うようにしてもよい。また、ミストの発生時間を長くする制御を行うようにしてもよい。これにより、風呂水に含まれていた雑菌類が洗濯終了後の洗濯物に残存していたとしても、このような雑菌類を除去することが可能となる。
【0068】
本発明は、循環風路43にヒートポンプ49を備えた洗濯乾燥機1のみならず、循環風路内にヒータと水冷式の熱交換器とを備えたヒータ式の洗濯乾燥機にも適用することができる。この場合、静電霧化装置50は、循環風路のうち熱交換器よりも下流側(水槽側)に設置することが好ましい。
【符号の説明】
【0069】
図面中、2は筐体(放電極に対向せず且つ当該放電極から離れた位置に設けられた部材,高電圧印加手段によって負に帯電した放電極に対応する対極)、43は風路、46は蒸発器(除湿手段)、47は凝縮器(加熱手段)、50は静電霧化装置、52,71は放電極、54は導電ロッド(高電圧印加手段)、58は高電圧電源(高電圧印加手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性および保水性を有する多孔質材料で形成され、白金のコロイドを担持し、供給された水を水粒子として放出する放電極と、
水が供給された前記放電極に負の高電圧を印加して当該放電極を負に帯電させる高電圧印加手段と、
を備え、
前記放電極に対向せず且つ当該放電極から離れた位置に設けられた部材が、前記高電圧印加手段によって負に帯電した前記放電極に対応する対極として機能するように構成されている静電霧化装置。
【請求項2】
前記白金のコロイドはナノサイズである請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項3】
前記放電極が担持する白金粒子から放出された酸素ラジカルにより、強い酸化作用を有するヒドロキシラジカルが生成するように構成されている請求項1または2に記載の静電霧化装置。
【請求項4】
前記酸素ラジカルが前記水粒子と接触することにより、前記ヒドロキシラジカルが生成するように構成されている請求項3に記載の静電霧化装置。
【請求項5】
空気を冷却し除湿する蒸発器および空気を加熱する凝縮器のうち少なくとも何れか一方よりも下流側に配置されている請求項1から4の何れか1項に記載の静電霧化装置。
【請求項6】
前記放電極は、その先端部が、空気が流れる風路の内部に突出するように設けられ、
前記風路内を流れる空気の一部は、当該風路に設けられた仕切り板により、前記放電極を通過した後に再度前記風路に合流するように構成されている請求項1から5の何れか1項に記載の静電霧化装置。
【請求項7】
除菌および脱臭の少なくとも何れか一方が可能な装置として構成されている請求項1から6の何れか1項に記載の静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−96235(P2012−96235A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25048(P2012−25048)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【分割の表示】特願2009−32625(P2009−32625)の分割
【原出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】