静電霧化装置
【課題】複数の放電電極を備え、放電電極間に短絡が発生することを防止できる静電霧化装置を提供する。
【解決手段】第1放電電極21に印加される電圧と、第2放電電極23に印加される電極とは互いに逆極性である。第1放電電極21及び第2放電電極23はペルチェ素子25で冷却され、静電霧化現象により正及び負の帯電水粒子が発生する。冷却によって第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に水が結露し、短絡の虞がある。静電霧化装置は、定期的に、ペルチェ素子25に逆方向電流を通電することによって第1放電電極21及び第2放電電極23を加熱し、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させる。第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の結露水が消滅し、短絡が防止される。
【解決手段】第1放電電極21に印加される電圧と、第2放電電極23に印加される電極とは互いに逆極性である。第1放電電極21及び第2放電電極23はペルチェ素子25で冷却され、静電霧化現象により正及び負の帯電水粒子が発生する。冷却によって第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に水が結露し、短絡の虞がある。静電霧化装置は、定期的に、ペルチェ素子25に逆方向電流を通電することによって第1放電電極21及び第2放電電極23を加熱し、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させる。第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の結露水が消滅し、短絡が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化現象により帯電水粒子を発生させる静電霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中で帯電粒子を発生させて放出することによって空気を清浄化する空気調和装置が用いられている。帯電粒子を発生させる方法としては、放電電極の先端に水を結露させ、放電電極の先端に高電圧を印加することにより、対極間との静電気力によって帯電水粒子が放電電極から噴出する静電霧化現象を利用した方法がある。特許文献1には、帯電水粒子を発生させる静電霧化装置が開示されている。静電霧化装置を内部に備えた空気調和装置は、内部で発生させた帯電水粒子を含む空気を放出することによって、空気を清浄化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−54808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電霧化装置を備えた空気調和装置には、正及び負の帯電水粒子の内で一方の帯電水粒子のみを発生させる静電霧化装置を備えた空気調和装置がある。この空気調和装置では、放出する空気に含まれる帯電水粒子の電荷が一方に偏っているので、放出された空気が衝突する物体が帯電するという問題がある。帯電を防止するためには、正及び負の帯電水粒子の両方を発生させる静電霧化装置を空気調和装置に備えることが望ましい。両方の帯電水粒子を発生させる静電霧化装置は、互いに逆極性の電圧が印加される複数の放電電極を備える。しかしながら、複数の放電電極を備えた静電霧化装置では、放電電極に結露した水によって複数の放電電極間で短絡が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、放電電極の周囲を乾燥させることによって、複数の放電電極間に短絡が発生することを防止できる静電霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る静電霧化装置は、ペルチェ素子と、突出した先端部を有する放電電極と、該放電電極に対向した対向電極とを備え、前記ペルチェ素子で前記放電電極を冷却し、冷却された前記放電電極の先端部に水が結露した状態で前記放電電極及び前記対向電極の間に電圧を印加することによって、帯電水粒子を発生させる静電霧化装置において、前記放電電極及び前記対向電極の組を複数備え、複数の前記放電電極は、異なる極性の電圧が印加される構成となっており、一又は複数の前記ペルチェ素子に、複数の前記放電電極を冷却するための順方向電流、又は複数の前記放電電極を加熱するための逆方向電流を通電する通電回路と、帯電水粒子の発生を停止した状態で、前記通電回路に逆方向電流を通電させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、ペルチェ素子で冷却された放電電極と対向電極との間に電圧を印加して帯電水粒子を発生させる静電霧化装置は、異なる極性の電圧が印加される複数の放電電極を備える。静電霧化装置は、ペルチェ素子に逆方向電流を通電することによって放電電極を加熱し、複数の放電電極の周囲を乾燥させる。
【0008】
本発明に係る静電霧化装置は、複数の前記放電電極は、共通のペルチェ素子に冷却される配置になっていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、複数の放電電極は、同一のペルチェ素子で冷却と加熱とが行われる。
【0010】
本発明に係る静電霧化装置は、前記制御手段は、前記通電回路に順方向電流を通電させた状態で帯電水粒子が所定回数発生する都度、前記通電回路に逆方向電流を通電させる手段を有することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、静電霧化装置は、帯電水粒子を発生させる合間に、定期的に複数の放電電極の周囲を乾燥させる。
【0012】
本発明に係る静電霧化装置は、複数の前記放電電極の周囲の温度を測定する温度センサを更に備え、前記制御手段は、前記温度センサが測定した温度に基づいて、前記通電回路に順方向電流を通電させる時間の長さを調整する手段を有することを特徴とする。
【0013】
本発明においては、静電霧化装置は、複数の放電電極の周囲の温度に基づいてペルチェ素子による加熱を制御することにより、適度な温度で複数の放電電極の周囲を乾燥させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、静電霧化装置は、複数の放電電極の周囲に結露する水によって短絡を発生させること無く、安定して正及び負の帯電水粒子を発生させることが可能となる等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】空気調和装置の外観の例を示す模式的斜視図である。
【図2】空気調和装置の模式的断面図である。
【図3】実施の形態1に係る静電霧化部の内部構成を示す断面図である。
【図4】静電霧化装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】通電回路の内部構成例を示す回路図である。
【図6】実施の形態1に係る静電霧化装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第1放電電極及び第2放電電極の周囲に水が結露した状態を示す模式図である。
【図8】第1電圧印加回路、第2電圧印加回路及び通電回路の動作タイミングを示すタイムチャートである。
【図9】実施の形態2に係る静電霧化部の内部構成を示す断面図である。
【図10】実施の形態2に係る静電霧化装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、空気調和装置の外観の例を示す模式的斜視図である。図1には、空気調和装置の背面、側面及び上面を示している。空気調和装置は、全体的にほぼ直方体状に形成されてあり、上面を傾斜させてあるハウジング11を備えている。ハウジング11の上面には、空気を放出する放出口12が形成されている。また空気調和装置の背面には、空気を吸入する吸入口13が形成されている。空気調和装置は、吸入口13から空気を吸入し、内部で帯電粒子を発生させ、発生させた帯電粒子を含んだ空気を放出口12から放出する。空気調和装置は、内部に静電霧化装置を備えている。
【0017】
図2は、空気調和装置の模式的断面図である。図2には、空気調和装置の断面を側面側から見た図を示しており、図2の右側が空気調和装置の背面側、左側が正面側である。ハウジング11内には、吸入口13につながった空洞17が形成されている。空洞17は、吸入口13から正面側に向かって形成されており、空洞17内には集塵フィルタ16が配置されている。また、ハウジング11内には、空気の通流路14が上下方向に形成されている。通流路14の上端は放出口12につながっており、通流路14の下端部には空洞17がつながっている。また、通流路14の下端部には、送風機15が配置されている。送風機15は例えばシロッコファンである。送風機15は、空洞17から空気を吸入し、通流路14へ空気を放出する構成となっている。送風機15が動作することにより、空気調和装置外の空気が吸入口13から空気調和装置内へ吸入され、吸入された空気は通流路14を通って放出口12から空気調和装置外へ放出される。また、送風機15から放出口12までの通流路14の途中には、静電霧化現象により帯電水粒子を発生させる静電霧化部2が配置されている。静電霧化部2は、静電霧化装置の一部をなす。
【0018】
図3は、実施の形態1に係る静電霧化部2の内部構成を示す断面図である。静電霧化部2は、突出した先端部を有する第1放電電極21と、第1放電電極21の先端側に対向配置されている第1対向電極22とを備えている。また、静電霧化部2は、突出した先端部を有する第2放電電極23と、第2放電電極23の先端側に対向配置されている第2対向電極24とを備えている。第1対向電極22及び第2対向電極24は円環状に形成されている。また、静電霧化部2は、ペルチェ素子25を備え、第1放電電極21及び第2放電電極23は、ペルチェ素子25の冷却側に接触している。即ち、ペルチェ素子25の冷却側には、第1放電電極21及び第2放電電極23が並んで配置されている。なお、第1放電電極21及び第2放電電極23とペルチェ素子25との間には、熱を伝える他の部材を介在させてあってもよい。また、ペルチェ素子25の放熱側には、放熱フィン26が接触している。第1放電電極21、第1対向電極22、第2放電電極23及び第2対向電極24は、絶縁材製のケース27で固定されている。絶縁材製のケース27で固定されることによって、第1放電電極21、第1対向電極22、第2放電電極23及び第2対向電極24の夫々の間は絶縁されている。更に、第1放電電極21及び第1対向電極22には電圧を印加するための電力線が接続されており、第2放電電極23及び第2対向電極24には電圧を印加するための電力線が接続されており、ペルチェ素子25には通電のための電力線が接続されている。これらの電力線は図3には図示していない。
【0019】
図4は、静電霧化装置の電気的構成を示すブロック図である。静電霧化部2には、ペルチェ素子25に直流電流を通電する通電回路3が接続されている。また、静電霧化部2には、第1放電電極21及び第1対向電極22の間に電圧を印加する第1電圧印加回路42と、第2放電電極23及び第2対向電極24の間に電圧を印加する第2電圧印加回路43とが接続されている。第1放電電極21と、第2放電電極23とは、逆極性の電圧が印加されるようになっている。具体的には、第1電圧印加回路42は、第1放電電極21側がマイナス、第1対向電極22側がプラスになる電圧を印加する。また、第2電圧印加回路43は、第2放電電極23側がプラス、第2対向電極24側がマイナスになる電圧を印加する。静電霧化装置は、静電霧化装置の動作を制御する制御部41を備えており、通電回路3、第1電圧印加回路42及び第2電圧印加回路43は制御部41に接続されている。制御部41は、静電霧化装置を制御するための演算を行う演算部及び演算に必要なデータを記憶する記憶部を含んで構成されている。また、制御部41には、時間を計測する計時部44が接続されている。なお、制御部41は、空気調和装置の動作を制御する制御部をも兼ねた形態であってもよい。
【0020】
通電回路3は、ペルチェ素子25へ通電する直流電流の方向を逆転させることができる構成となっている。ペルチェ素子25へ通電する直流電流の方向を逆転させた場合は、ペルチェ素子25の冷却側と放熱側との位置が入れ替わる。ここで、第1放電電極21及び第2放電電極23が接触している部分が冷却側になるような方向の電流を順方向電流と言う。通電回路3がペルチェ素子25へ順方向電流を通電している場合は、第1放電電極21及び第2放電電極23はペルチェ素子25により冷却される。順方向電流とは逆方向の逆方向電流を通電回路3がペルチェ素子25へ通電した場合は、第1放電電極21及び第2放電電極23が接触しているペルチェ素子25の部分は放熱側となり、第1放電電極21及び第2放電電極23はペルチェ素子25により加熱されることになる。
【0021】
図5は、通電回路3の内部構成例を示す回路図である。ダイオード32のアノードに入力端子31が接続されている。入力端子31には、制御部41からハイ又はローの電圧が入力される構成となっている。ダイオード32のカソードには、トランジスタ33及びトランジスタ36のベースが接続されている。トランジスタ33のコレクタは電力線でペルチェ素子25に接続されており、トランジスタ36のエミッタは別の電力線でペルチェ素子25に接続されている。ダイオード32のアノードには、更に、トランジスタ34及びトランジスタ35のベースが接続されている。トランジスタ34のエミッタはトランジスタ33のコレクタに接続されており、トランジスタ35のコレクタはトランジスタ36のエミッタに接続されている。またトランジスタ34及びトランジスタ36のコレクタは共通の電位になっており、トランジスタ33及びトランジスタ35のエミッタは共通の電位になっている。制御部41から入力端子31へハイの電圧が入力された場合は、トランジスタ33及びトランジスタ36がオンとなってペルチェ素子25に順方向電流が通電される。制御部41から入力端子31へローの電圧が入力された場合は、トランジスタ34及びトランジスタ35がオンとなってペルチェ素子25に逆方向電流が通電される。
【0022】
次に、静電霧化装置の動作を説明する。図6は、実施の形態1に係る静電霧化装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。制御部41は、通電回路3に、ペルチェ素子25へ順方向電流を通電させる(S11)。以降、通電回路3は、ペルチェ素子25への順方向電流の通電を継続する。順方向電流を通電されたペルチェ素子25により、第1放電電極21及び第2放電電極23は冷却される。冷却により、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の水蒸気が凝結し、第1放電電極21及び第2放電電極23の先端部に水が結露する。
【0023】
制御部41は、次に、静電霧化部2及び第1電圧印加回路42に、負の帯電水粒子を発生させる(S12)。ステップS12では、制御部41は、第1電圧印加回路42に、第1放電電極21及び第1対向電極22の間に電圧を印加させる。第1電圧印加回路42は、第1放電電極21側がマイナス、第1対向電極22側がプラスになる電圧を印加する。電圧の印加によって、第1放電電極21の先端部に結露した水の中から、負イオンを含有した水の微粒子が噴出する。この現象が静電霧化現象であり、噴出した水の微粒子は負に帯電した帯電水粒子である。このようにして、静電霧化部2は負の帯電水粒子を発生させる。制御部41は、予め定められた時間、第1電圧印加回路42に電圧を断続的に印加させ、静電霧化部2に、継続して負の帯電水粒子を発生させる。負の帯電水粒子を継続して発生させる時間は、数秒〜10秒程度である。
【0024】
制御部41は、次に、静電霧化部2及び第1電圧印加回路42に、負の帯電水粒子の発生を停止させ、静電霧化部2及び第2電圧印加回路43に、正の帯電水粒子を発生させる(S13)。ステップS13では、制御部41は、第2電圧印加回路43に、第2放電電極23及び第2対向電極24の間に電圧を印加させる。第2電圧印加回路43は、第2放電電極23側がプラス、第2対向電極24側がマイナスになる電圧を印加する。同様の静電霧化現象により、静電霧化部2は正の帯電水粒子を発生させる。制御部41は、予め定められた時間、第2電圧印加回路43に電圧を断続的に印加させ、静電霧化部2に、継続して正の帯電水粒子を発生させる。正の帯電水粒子を継続して発生させる時間は、同様に数秒〜10秒程度である。
【0025】
ステップS12及びS13の処理中におけるペルチェ素子25の吸熱量は約0.5Wであり、周囲の温度が2℃〜40℃の範囲である場合に、帯電水粒子の発生に必要な結露水が生成される。ステップS12及びS13で発生した正及び負の帯電水粒子は、静電霧化部2から、通流路14を流れる空気へ放出され、空気に混合する。正及び負の帯電水粒子を含む空気は放出口12から放出される。放出された空気に含まれる正及び負の帯電水粒子は、ハウジング11外の空気を清浄化する。
【0026】
制御部41は、次に、静電霧化部2及び第2電圧印加回路43に、正の帯電水粒子の発生を停止させ、正及び負の帯電水粒子を予め定められた所定回数発生させたか否かを判定する(S14)。正及び負の帯電水粒子をまだ所定回数発生させていない場合は(S14:NO)、制御部41は、処理をステップS12へ戻す。所定回数は、第1放電電極21及び第2放電電極23の冷却が継続することによって第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に水が結露して第1放電電極21と第2放電電極23とが短絡する前の段階の回数に予め定められている。所定回数は、例えば、ステップS12及びS13が10回程度繰り返される回数である。
【0027】
図7は、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に水が結露した状態を示す模式図である。ペルチェ素子25により第1放電電極21及び第2放電電極23が冷却され、第1放電電極21及び第2放電電極23の先端部に水が結露するとともに、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲にも、水が結露する。冷却が継続することにより、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に結露した水滴が増加する。第1放電電極21と第2放電電極23とは逆極性の電圧が印加されるので、多数の水滴によって第1放電電極21と第2放電電極23とが短絡する虞が出てくる。
【0028】
ステップS14で正及び負の帯電水粒子を予め定められた所定回数発生させている場合は(S14:YES)、制御部41は、通電回路3に、ペルチェ素子25への順方向電流の通電を中止させ、ペルチェ素子25へ逆方向電流を通電させる(S15)。逆方向電流を通電されたペルチェ素子25により、第1放電電極21及び第2放電電極23は加熱される。逆方向電流がペルチェ素子25に通電されているときは、第1放電電極21及び第2放電電極23には電圧は印加されていない。ペルチェ素子での加熱時には、冷却時の吸熱量とは2倍以上の熱が放熱される。即ち、第1放電電極21及び第2放電電極23は1W以上で加熱される。加熱によって第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲は乾燥し、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に結露していた水は消滅する。
【0029】
制御部41は、次に、予め定められた加熱時間が経過したか否かを判定する(S16)。加熱時間は、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に結露していた水が消滅するのに十分な時間に予め定められている。また、加熱時間は、第1放電電極21及び第2放電電極23の先端部に結露した水が乾燥するまでの時間よりは短い時間に定められていることが望ましい。加熱時間の値は予め制御部41に記憶されている。加熱時間がまだ経過していない場合は(S16:NO)、制御部41は、第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱を継続する。加熱時間が経過した場合は(S16:YES)、制御部41は、通電回路3に、ペルチェ素子25への逆方向電流の通電を停止させ、処理を終了する。制御部41は、ステップS11〜S16の処理を随時繰り返す。
【0030】
図8は、第1電圧印加回路42、第2電圧印加回路43及び通電回路3の動作タイミングを示すタイムチャートである。図8の横軸は時間を示す。図8の縦軸は、第1電圧印加回路42及び第2電圧印加回路43が印加する電圧の強度、並びに通電回路3が通電する電流の方向を示す。図8に示すように、通電回路3が順方向電流をペルチェ素子25へ継続して通電している間、第1電圧印加回路42と第2電圧印加回路43とは交互に電圧を印加する。即ち、第1放電電極21及び第2放電電極23が継続的にペルチェ素子25に冷却されている間、正及び負の帯電水粒子が交互に発生する。また、第1電圧印加回路42及び第2電圧印加回路43が何れも電圧を印加していない間に、通電回路3は逆方向電流をペルチェ素子25へ通電する。即ち、正及び負の帯電水粒子のいずれもが発生しない状態で、第1放電電極21及び第2放電電極23が加熱され、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲が乾燥する。正及び負の帯電水粒子の発生と第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱とは繰り返され、定期的に第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲が乾燥することになる。
【0031】
以上詳述した如く、本実施の形態においては、静電霧化装置は、定期的に、ペルチェ素子25に逆方向電流を通電することによって第1放電電極21及び第2放電電極23を加熱し、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させる。第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させることによって、互いに逆極性の電圧が印加される第1放電電極21と第2放電電極23とが結露水で短絡することが防止される。従って、静電霧化装置は、短絡を発生させること無く、安定して正及び負の帯電水粒子を発生させることが可能となる。また、第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱のためにペルチェ素子25を利用するので、加熱のために新たな要素を静電霧化部2に加える必要が無く、静電霧化部2のサイズの増大を防止することができる。また、本発明によって短絡を防止することができるので、第1放電電極21と第2放電電極23とを近づけて静電霧化部2を構成することができる。特に、静電霧化部2の構成を、第1放電電極21及び第2放電電極23を同一のペルチェ素子25で冷却する構成とすることができる。従って、静電霧化部2の小型化を図ることが可能となる。
【0032】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2に係る静電霧化部2の内部構成を示す断面図である。静電霧化部2は、第1放電電極21及び第2放電電極23との間の位置に、温度センサ28を備えている。温度センサ28は、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の温度を測定する。温度センサ28は、制御部41に接続されている。静電霧化装置のその他の構成は、実施の形態1と同様であり、対応する部分に同符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図10は、実施の形態2に係る静電霧化装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。静電霧化装置は、ステップS21〜S25において、実施の形態1におけるステップS11〜S15と同様の処理を実行する。通電回路3がペルチェ素子25へ逆方向電流を通電している状態で、制御部41は、温度センサ28が測定する第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の温度が予め定められた上限温度に達したか否かを判定する(S26)。上限温度は、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲が乾燥して結露していた水が消滅するのに十分な温度に予め定められている。また、上限温度は、第1放電電極21及び第2放電電極23の先端部に結露した水が乾燥する温度よりは低い温度に定められていることが望ましい。上限温度の値は予め制御部41に記憶されている。温度センサ28が測定する温度がまだ上限温度に達していない場合は(S26:NO)、制御部41は、第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱を継続する。温度センサ28が測定する温度が上限温度に達した場合は(S26:YES)、制御部41は、通電回路3に、ペルチェ素子25への逆方向電流の通電を停止させ、処理を終了する。制御部41は、ステップS21〜S26の処理を随時繰り返す。
【0034】
以上のように、本実施の形態においても、静電霧化装置は、定期的に第1放電電極21及び第2放電電極23を加熱し、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させる。静電霧化部2の周囲の気温及び湿度等の状況によって、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させるために必要な熱量は変動する。本実施の形態では、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の温度を測定することによって、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を十分に乾燥させるべく第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱量を適切に制御することが可能となる。従って、本実施の形態においても、静電霧化装置は、短絡を発生させること無く、安定して正及び負の帯電水粒子を発生させることが可能となる。また、実施の形態1と同様に、本実施の形態においても、静電霧化部2の小型化を図ることが可能となる。
【0035】
なお、以上の実施の形態1及び2においては、正及び負の帯電水粒子を所定回数発生させる都度、放電電極を加熱する形態を示したが、静電霧化装置は、正及び負の帯電水粒子を発生させながら所定の時間が経過する都度、放電電極を加熱する形態であってもよい。また、実施の形態1及び2においては、正及び負の帯電水粒子を交互に発生させる形態を示したが、静電霧化装置は、正及び負の帯電水粒子を同時に発生させる形態であってもよい。また、実施の形態1及び2においては、第1放電電極21及び第2放電電極23を同一のペルチェ素子25で冷却及び加熱する形態を示したが、静電霧化装置は、個別のペルチェ素子で第1放電電極21及び第2放電電極23を冷却及び加熱する形態であってもよい。この形態においても、第1放電電極21及び第2放電電極23の間の短絡を防止することができ、第1放電電極21と第2放電電極23とを近づけて静電霧化部2を構成することが可能となる。また、実施の形態1及び2においては、静電霧化部2に放電電極及び対向電極の組を二組備えた形態を示したが、静電霧化装置は、より多数の放電電極及び対向電極の組を静電霧化部2に備えた形態であってもよい。
【0036】
また、実施の形態1及び2においては、静電霧化装置が空気調和装置に内蔵された形態を示したが、本発明の静電霧化装置は、エアコンディショナー又は冷蔵庫等のその他の装置に内蔵された形態であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
11 ハウジング
12 放出口
13 吸入口
14 通流路
15 送風機
2 静電霧化部
21 第1放電電極
22 第1対向電極
23 第2放電電極
24 第2対向電極
25 ペルチェ素子
28 温度センサ
3 通電部
41 制御部
42 第1電圧印加回路
43 第2電圧印加回路
44 計時部
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化現象により帯電水粒子を発生させる静電霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中で帯電粒子を発生させて放出することによって空気を清浄化する空気調和装置が用いられている。帯電粒子を発生させる方法としては、放電電極の先端に水を結露させ、放電電極の先端に高電圧を印加することにより、対極間との静電気力によって帯電水粒子が放電電極から噴出する静電霧化現象を利用した方法がある。特許文献1には、帯電水粒子を発生させる静電霧化装置が開示されている。静電霧化装置を内部に備えた空気調和装置は、内部で発生させた帯電水粒子を含む空気を放出することによって、空気を清浄化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−54808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電霧化装置を備えた空気調和装置には、正及び負の帯電水粒子の内で一方の帯電水粒子のみを発生させる静電霧化装置を備えた空気調和装置がある。この空気調和装置では、放出する空気に含まれる帯電水粒子の電荷が一方に偏っているので、放出された空気が衝突する物体が帯電するという問題がある。帯電を防止するためには、正及び負の帯電水粒子の両方を発生させる静電霧化装置を空気調和装置に備えることが望ましい。両方の帯電水粒子を発生させる静電霧化装置は、互いに逆極性の電圧が印加される複数の放電電極を備える。しかしながら、複数の放電電極を備えた静電霧化装置では、放電電極に結露した水によって複数の放電電極間で短絡が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、放電電極の周囲を乾燥させることによって、複数の放電電極間に短絡が発生することを防止できる静電霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る静電霧化装置は、ペルチェ素子と、突出した先端部を有する放電電極と、該放電電極に対向した対向電極とを備え、前記ペルチェ素子で前記放電電極を冷却し、冷却された前記放電電極の先端部に水が結露した状態で前記放電電極及び前記対向電極の間に電圧を印加することによって、帯電水粒子を発生させる静電霧化装置において、前記放電電極及び前記対向電極の組を複数備え、複数の前記放電電極は、異なる極性の電圧が印加される構成となっており、一又は複数の前記ペルチェ素子に、複数の前記放電電極を冷却するための順方向電流、又は複数の前記放電電極を加熱するための逆方向電流を通電する通電回路と、帯電水粒子の発生を停止した状態で、前記通電回路に逆方向電流を通電させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、ペルチェ素子で冷却された放電電極と対向電極との間に電圧を印加して帯電水粒子を発生させる静電霧化装置は、異なる極性の電圧が印加される複数の放電電極を備える。静電霧化装置は、ペルチェ素子に逆方向電流を通電することによって放電電極を加熱し、複数の放電電極の周囲を乾燥させる。
【0008】
本発明に係る静電霧化装置は、複数の前記放電電極は、共通のペルチェ素子に冷却される配置になっていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、複数の放電電極は、同一のペルチェ素子で冷却と加熱とが行われる。
【0010】
本発明に係る静電霧化装置は、前記制御手段は、前記通電回路に順方向電流を通電させた状態で帯電水粒子が所定回数発生する都度、前記通電回路に逆方向電流を通電させる手段を有することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、静電霧化装置は、帯電水粒子を発生させる合間に、定期的に複数の放電電極の周囲を乾燥させる。
【0012】
本発明に係る静電霧化装置は、複数の前記放電電極の周囲の温度を測定する温度センサを更に備え、前記制御手段は、前記温度センサが測定した温度に基づいて、前記通電回路に順方向電流を通電させる時間の長さを調整する手段を有することを特徴とする。
【0013】
本発明においては、静電霧化装置は、複数の放電電極の周囲の温度に基づいてペルチェ素子による加熱を制御することにより、適度な温度で複数の放電電極の周囲を乾燥させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、静電霧化装置は、複数の放電電極の周囲に結露する水によって短絡を発生させること無く、安定して正及び負の帯電水粒子を発生させることが可能となる等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】空気調和装置の外観の例を示す模式的斜視図である。
【図2】空気調和装置の模式的断面図である。
【図3】実施の形態1に係る静電霧化部の内部構成を示す断面図である。
【図4】静電霧化装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】通電回路の内部構成例を示す回路図である。
【図6】実施の形態1に係る静電霧化装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第1放電電極及び第2放電電極の周囲に水が結露した状態を示す模式図である。
【図8】第1電圧印加回路、第2電圧印加回路及び通電回路の動作タイミングを示すタイムチャートである。
【図9】実施の形態2に係る静電霧化部の内部構成を示す断面図である。
【図10】実施の形態2に係る静電霧化装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、空気調和装置の外観の例を示す模式的斜視図である。図1には、空気調和装置の背面、側面及び上面を示している。空気調和装置は、全体的にほぼ直方体状に形成されてあり、上面を傾斜させてあるハウジング11を備えている。ハウジング11の上面には、空気を放出する放出口12が形成されている。また空気調和装置の背面には、空気を吸入する吸入口13が形成されている。空気調和装置は、吸入口13から空気を吸入し、内部で帯電粒子を発生させ、発生させた帯電粒子を含んだ空気を放出口12から放出する。空気調和装置は、内部に静電霧化装置を備えている。
【0017】
図2は、空気調和装置の模式的断面図である。図2には、空気調和装置の断面を側面側から見た図を示しており、図2の右側が空気調和装置の背面側、左側が正面側である。ハウジング11内には、吸入口13につながった空洞17が形成されている。空洞17は、吸入口13から正面側に向かって形成されており、空洞17内には集塵フィルタ16が配置されている。また、ハウジング11内には、空気の通流路14が上下方向に形成されている。通流路14の上端は放出口12につながっており、通流路14の下端部には空洞17がつながっている。また、通流路14の下端部には、送風機15が配置されている。送風機15は例えばシロッコファンである。送風機15は、空洞17から空気を吸入し、通流路14へ空気を放出する構成となっている。送風機15が動作することにより、空気調和装置外の空気が吸入口13から空気調和装置内へ吸入され、吸入された空気は通流路14を通って放出口12から空気調和装置外へ放出される。また、送風機15から放出口12までの通流路14の途中には、静電霧化現象により帯電水粒子を発生させる静電霧化部2が配置されている。静電霧化部2は、静電霧化装置の一部をなす。
【0018】
図3は、実施の形態1に係る静電霧化部2の内部構成を示す断面図である。静電霧化部2は、突出した先端部を有する第1放電電極21と、第1放電電極21の先端側に対向配置されている第1対向電極22とを備えている。また、静電霧化部2は、突出した先端部を有する第2放電電極23と、第2放電電極23の先端側に対向配置されている第2対向電極24とを備えている。第1対向電極22及び第2対向電極24は円環状に形成されている。また、静電霧化部2は、ペルチェ素子25を備え、第1放電電極21及び第2放電電極23は、ペルチェ素子25の冷却側に接触している。即ち、ペルチェ素子25の冷却側には、第1放電電極21及び第2放電電極23が並んで配置されている。なお、第1放電電極21及び第2放電電極23とペルチェ素子25との間には、熱を伝える他の部材を介在させてあってもよい。また、ペルチェ素子25の放熱側には、放熱フィン26が接触している。第1放電電極21、第1対向電極22、第2放電電極23及び第2対向電極24は、絶縁材製のケース27で固定されている。絶縁材製のケース27で固定されることによって、第1放電電極21、第1対向電極22、第2放電電極23及び第2対向電極24の夫々の間は絶縁されている。更に、第1放電電極21及び第1対向電極22には電圧を印加するための電力線が接続されており、第2放電電極23及び第2対向電極24には電圧を印加するための電力線が接続されており、ペルチェ素子25には通電のための電力線が接続されている。これらの電力線は図3には図示していない。
【0019】
図4は、静電霧化装置の電気的構成を示すブロック図である。静電霧化部2には、ペルチェ素子25に直流電流を通電する通電回路3が接続されている。また、静電霧化部2には、第1放電電極21及び第1対向電極22の間に電圧を印加する第1電圧印加回路42と、第2放電電極23及び第2対向電極24の間に電圧を印加する第2電圧印加回路43とが接続されている。第1放電電極21と、第2放電電極23とは、逆極性の電圧が印加されるようになっている。具体的には、第1電圧印加回路42は、第1放電電極21側がマイナス、第1対向電極22側がプラスになる電圧を印加する。また、第2電圧印加回路43は、第2放電電極23側がプラス、第2対向電極24側がマイナスになる電圧を印加する。静電霧化装置は、静電霧化装置の動作を制御する制御部41を備えており、通電回路3、第1電圧印加回路42及び第2電圧印加回路43は制御部41に接続されている。制御部41は、静電霧化装置を制御するための演算を行う演算部及び演算に必要なデータを記憶する記憶部を含んで構成されている。また、制御部41には、時間を計測する計時部44が接続されている。なお、制御部41は、空気調和装置の動作を制御する制御部をも兼ねた形態であってもよい。
【0020】
通電回路3は、ペルチェ素子25へ通電する直流電流の方向を逆転させることができる構成となっている。ペルチェ素子25へ通電する直流電流の方向を逆転させた場合は、ペルチェ素子25の冷却側と放熱側との位置が入れ替わる。ここで、第1放電電極21及び第2放電電極23が接触している部分が冷却側になるような方向の電流を順方向電流と言う。通電回路3がペルチェ素子25へ順方向電流を通電している場合は、第1放電電極21及び第2放電電極23はペルチェ素子25により冷却される。順方向電流とは逆方向の逆方向電流を通電回路3がペルチェ素子25へ通電した場合は、第1放電電極21及び第2放電電極23が接触しているペルチェ素子25の部分は放熱側となり、第1放電電極21及び第2放電電極23はペルチェ素子25により加熱されることになる。
【0021】
図5は、通電回路3の内部構成例を示す回路図である。ダイオード32のアノードに入力端子31が接続されている。入力端子31には、制御部41からハイ又はローの電圧が入力される構成となっている。ダイオード32のカソードには、トランジスタ33及びトランジスタ36のベースが接続されている。トランジスタ33のコレクタは電力線でペルチェ素子25に接続されており、トランジスタ36のエミッタは別の電力線でペルチェ素子25に接続されている。ダイオード32のアノードには、更に、トランジスタ34及びトランジスタ35のベースが接続されている。トランジスタ34のエミッタはトランジスタ33のコレクタに接続されており、トランジスタ35のコレクタはトランジスタ36のエミッタに接続されている。またトランジスタ34及びトランジスタ36のコレクタは共通の電位になっており、トランジスタ33及びトランジスタ35のエミッタは共通の電位になっている。制御部41から入力端子31へハイの電圧が入力された場合は、トランジスタ33及びトランジスタ36がオンとなってペルチェ素子25に順方向電流が通電される。制御部41から入力端子31へローの電圧が入力された場合は、トランジスタ34及びトランジスタ35がオンとなってペルチェ素子25に逆方向電流が通電される。
【0022】
次に、静電霧化装置の動作を説明する。図6は、実施の形態1に係る静電霧化装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。制御部41は、通電回路3に、ペルチェ素子25へ順方向電流を通電させる(S11)。以降、通電回路3は、ペルチェ素子25への順方向電流の通電を継続する。順方向電流を通電されたペルチェ素子25により、第1放電電極21及び第2放電電極23は冷却される。冷却により、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の水蒸気が凝結し、第1放電電極21及び第2放電電極23の先端部に水が結露する。
【0023】
制御部41は、次に、静電霧化部2及び第1電圧印加回路42に、負の帯電水粒子を発生させる(S12)。ステップS12では、制御部41は、第1電圧印加回路42に、第1放電電極21及び第1対向電極22の間に電圧を印加させる。第1電圧印加回路42は、第1放電電極21側がマイナス、第1対向電極22側がプラスになる電圧を印加する。電圧の印加によって、第1放電電極21の先端部に結露した水の中から、負イオンを含有した水の微粒子が噴出する。この現象が静電霧化現象であり、噴出した水の微粒子は負に帯電した帯電水粒子である。このようにして、静電霧化部2は負の帯電水粒子を発生させる。制御部41は、予め定められた時間、第1電圧印加回路42に電圧を断続的に印加させ、静電霧化部2に、継続して負の帯電水粒子を発生させる。負の帯電水粒子を継続して発生させる時間は、数秒〜10秒程度である。
【0024】
制御部41は、次に、静電霧化部2及び第1電圧印加回路42に、負の帯電水粒子の発生を停止させ、静電霧化部2及び第2電圧印加回路43に、正の帯電水粒子を発生させる(S13)。ステップS13では、制御部41は、第2電圧印加回路43に、第2放電電極23及び第2対向電極24の間に電圧を印加させる。第2電圧印加回路43は、第2放電電極23側がプラス、第2対向電極24側がマイナスになる電圧を印加する。同様の静電霧化現象により、静電霧化部2は正の帯電水粒子を発生させる。制御部41は、予め定められた時間、第2電圧印加回路43に電圧を断続的に印加させ、静電霧化部2に、継続して正の帯電水粒子を発生させる。正の帯電水粒子を継続して発生させる時間は、同様に数秒〜10秒程度である。
【0025】
ステップS12及びS13の処理中におけるペルチェ素子25の吸熱量は約0.5Wであり、周囲の温度が2℃〜40℃の範囲である場合に、帯電水粒子の発生に必要な結露水が生成される。ステップS12及びS13で発生した正及び負の帯電水粒子は、静電霧化部2から、通流路14を流れる空気へ放出され、空気に混合する。正及び負の帯電水粒子を含む空気は放出口12から放出される。放出された空気に含まれる正及び負の帯電水粒子は、ハウジング11外の空気を清浄化する。
【0026】
制御部41は、次に、静電霧化部2及び第2電圧印加回路43に、正の帯電水粒子の発生を停止させ、正及び負の帯電水粒子を予め定められた所定回数発生させたか否かを判定する(S14)。正及び負の帯電水粒子をまだ所定回数発生させていない場合は(S14:NO)、制御部41は、処理をステップS12へ戻す。所定回数は、第1放電電極21及び第2放電電極23の冷却が継続することによって第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に水が結露して第1放電電極21と第2放電電極23とが短絡する前の段階の回数に予め定められている。所定回数は、例えば、ステップS12及びS13が10回程度繰り返される回数である。
【0027】
図7は、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に水が結露した状態を示す模式図である。ペルチェ素子25により第1放電電極21及び第2放電電極23が冷却され、第1放電電極21及び第2放電電極23の先端部に水が結露するとともに、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲にも、水が結露する。冷却が継続することにより、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に結露した水滴が増加する。第1放電電極21と第2放電電極23とは逆極性の電圧が印加されるので、多数の水滴によって第1放電電極21と第2放電電極23とが短絡する虞が出てくる。
【0028】
ステップS14で正及び負の帯電水粒子を予め定められた所定回数発生させている場合は(S14:YES)、制御部41は、通電回路3に、ペルチェ素子25への順方向電流の通電を中止させ、ペルチェ素子25へ逆方向電流を通電させる(S15)。逆方向電流を通電されたペルチェ素子25により、第1放電電極21及び第2放電電極23は加熱される。逆方向電流がペルチェ素子25に通電されているときは、第1放電電極21及び第2放電電極23には電圧は印加されていない。ペルチェ素子での加熱時には、冷却時の吸熱量とは2倍以上の熱が放熱される。即ち、第1放電電極21及び第2放電電極23は1W以上で加熱される。加熱によって第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲は乾燥し、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に結露していた水は消滅する。
【0029】
制御部41は、次に、予め定められた加熱時間が経過したか否かを判定する(S16)。加熱時間は、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲に結露していた水が消滅するのに十分な時間に予め定められている。また、加熱時間は、第1放電電極21及び第2放電電極23の先端部に結露した水が乾燥するまでの時間よりは短い時間に定められていることが望ましい。加熱時間の値は予め制御部41に記憶されている。加熱時間がまだ経過していない場合は(S16:NO)、制御部41は、第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱を継続する。加熱時間が経過した場合は(S16:YES)、制御部41は、通電回路3に、ペルチェ素子25への逆方向電流の通電を停止させ、処理を終了する。制御部41は、ステップS11〜S16の処理を随時繰り返す。
【0030】
図8は、第1電圧印加回路42、第2電圧印加回路43及び通電回路3の動作タイミングを示すタイムチャートである。図8の横軸は時間を示す。図8の縦軸は、第1電圧印加回路42及び第2電圧印加回路43が印加する電圧の強度、並びに通電回路3が通電する電流の方向を示す。図8に示すように、通電回路3が順方向電流をペルチェ素子25へ継続して通電している間、第1電圧印加回路42と第2電圧印加回路43とは交互に電圧を印加する。即ち、第1放電電極21及び第2放電電極23が継続的にペルチェ素子25に冷却されている間、正及び負の帯電水粒子が交互に発生する。また、第1電圧印加回路42及び第2電圧印加回路43が何れも電圧を印加していない間に、通電回路3は逆方向電流をペルチェ素子25へ通電する。即ち、正及び負の帯電水粒子のいずれもが発生しない状態で、第1放電電極21及び第2放電電極23が加熱され、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲が乾燥する。正及び負の帯電水粒子の発生と第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱とは繰り返され、定期的に第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲が乾燥することになる。
【0031】
以上詳述した如く、本実施の形態においては、静電霧化装置は、定期的に、ペルチェ素子25に逆方向電流を通電することによって第1放電電極21及び第2放電電極23を加熱し、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させる。第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させることによって、互いに逆極性の電圧が印加される第1放電電極21と第2放電電極23とが結露水で短絡することが防止される。従って、静電霧化装置は、短絡を発生させること無く、安定して正及び負の帯電水粒子を発生させることが可能となる。また、第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱のためにペルチェ素子25を利用するので、加熱のために新たな要素を静電霧化部2に加える必要が無く、静電霧化部2のサイズの増大を防止することができる。また、本発明によって短絡を防止することができるので、第1放電電極21と第2放電電極23とを近づけて静電霧化部2を構成することができる。特に、静電霧化部2の構成を、第1放電電極21及び第2放電電極23を同一のペルチェ素子25で冷却する構成とすることができる。従って、静電霧化部2の小型化を図ることが可能となる。
【0032】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2に係る静電霧化部2の内部構成を示す断面図である。静電霧化部2は、第1放電電極21及び第2放電電極23との間の位置に、温度センサ28を備えている。温度センサ28は、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の温度を測定する。温度センサ28は、制御部41に接続されている。静電霧化装置のその他の構成は、実施の形態1と同様であり、対応する部分に同符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図10は、実施の形態2に係る静電霧化装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。静電霧化装置は、ステップS21〜S25において、実施の形態1におけるステップS11〜S15と同様の処理を実行する。通電回路3がペルチェ素子25へ逆方向電流を通電している状態で、制御部41は、温度センサ28が測定する第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の温度が予め定められた上限温度に達したか否かを判定する(S26)。上限温度は、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲が乾燥して結露していた水が消滅するのに十分な温度に予め定められている。また、上限温度は、第1放電電極21及び第2放電電極23の先端部に結露した水が乾燥する温度よりは低い温度に定められていることが望ましい。上限温度の値は予め制御部41に記憶されている。温度センサ28が測定する温度がまだ上限温度に達していない場合は(S26:NO)、制御部41は、第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱を継続する。温度センサ28が測定する温度が上限温度に達した場合は(S26:YES)、制御部41は、通電回路3に、ペルチェ素子25への逆方向電流の通電を停止させ、処理を終了する。制御部41は、ステップS21〜S26の処理を随時繰り返す。
【0034】
以上のように、本実施の形態においても、静電霧化装置は、定期的に第1放電電極21及び第2放電電極23を加熱し、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させる。静電霧化部2の周囲の気温及び湿度等の状況によって、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を乾燥させるために必要な熱量は変動する。本実施の形態では、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲の温度を測定することによって、第1放電電極21及び第2放電電極23の周囲を十分に乾燥させるべく第1放電電極21及び第2放電電極23の加熱量を適切に制御することが可能となる。従って、本実施の形態においても、静電霧化装置は、短絡を発生させること無く、安定して正及び負の帯電水粒子を発生させることが可能となる。また、実施の形態1と同様に、本実施の形態においても、静電霧化部2の小型化を図ることが可能となる。
【0035】
なお、以上の実施の形態1及び2においては、正及び負の帯電水粒子を所定回数発生させる都度、放電電極を加熱する形態を示したが、静電霧化装置は、正及び負の帯電水粒子を発生させながら所定の時間が経過する都度、放電電極を加熱する形態であってもよい。また、実施の形態1及び2においては、正及び負の帯電水粒子を交互に発生させる形態を示したが、静電霧化装置は、正及び負の帯電水粒子を同時に発生させる形態であってもよい。また、実施の形態1及び2においては、第1放電電極21及び第2放電電極23を同一のペルチェ素子25で冷却及び加熱する形態を示したが、静電霧化装置は、個別のペルチェ素子で第1放電電極21及び第2放電電極23を冷却及び加熱する形態であってもよい。この形態においても、第1放電電極21及び第2放電電極23の間の短絡を防止することができ、第1放電電極21と第2放電電極23とを近づけて静電霧化部2を構成することが可能となる。また、実施の形態1及び2においては、静電霧化部2に放電電極及び対向電極の組を二組備えた形態を示したが、静電霧化装置は、より多数の放電電極及び対向電極の組を静電霧化部2に備えた形態であってもよい。
【0036】
また、実施の形態1及び2においては、静電霧化装置が空気調和装置に内蔵された形態を示したが、本発明の静電霧化装置は、エアコンディショナー又は冷蔵庫等のその他の装置に内蔵された形態であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
11 ハウジング
12 放出口
13 吸入口
14 通流路
15 送風機
2 静電霧化部
21 第1放電電極
22 第1対向電極
23 第2放電電極
24 第2対向電極
25 ペルチェ素子
28 温度センサ
3 通電部
41 制御部
42 第1電圧印加回路
43 第2電圧印加回路
44 計時部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子と、突出した先端部を有する放電電極と、該放電電極に対向した対向電極とを備え、前記ペルチェ素子で前記放電電極を冷却し、冷却された前記放電電極の先端部に水が結露した状態で前記放電電極及び前記対向電極の間に電圧を印加することによって、帯電水粒子を発生させる静電霧化装置において、
前記放電電極及び前記対向電極の組を複数備え、
複数の前記放電電極は、異なる極性の電圧が印加される構成となっており、
一又は複数の前記ペルチェ素子に、複数の前記放電電極を冷却するための順方向電流、又は複数の前記放電電極を加熱するための逆方向電流を通電する通電回路と、
帯電水粒子の発生を停止した状態で、前記通電回路に逆方向電流を通電させる制御手段と
を備えることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
複数の前記放電電極は、共通のペルチェ素子に冷却される配置になっていること
を特徴とする請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記通電回路に順方向電流を通電させた状態で帯電水粒子が所定回数発生する都度、前記通電回路に逆方向電流を通電させる手段を有すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の静電霧化装置。
【請求項4】
複数の前記放電電極の周囲の温度を測定する温度センサを更に備え、
前記制御手段は、
前記温度センサが測定した温度に基づいて、前記通電回路に順方向電流を通電させる時間の長さを調整する手段を有すること
を特徴とする請求項1から3までの何れか一つに記載の静電霧化装置。
【請求項1】
ペルチェ素子と、突出した先端部を有する放電電極と、該放電電極に対向した対向電極とを備え、前記ペルチェ素子で前記放電電極を冷却し、冷却された前記放電電極の先端部に水が結露した状態で前記放電電極及び前記対向電極の間に電圧を印加することによって、帯電水粒子を発生させる静電霧化装置において、
前記放電電極及び前記対向電極の組を複数備え、
複数の前記放電電極は、異なる極性の電圧が印加される構成となっており、
一又は複数の前記ペルチェ素子に、複数の前記放電電極を冷却するための順方向電流、又は複数の前記放電電極を加熱するための逆方向電流を通電する通電回路と、
帯電水粒子の発生を停止した状態で、前記通電回路に逆方向電流を通電させる制御手段と
を備えることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
複数の前記放電電極は、共通のペルチェ素子に冷却される配置になっていること
を特徴とする請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記通電回路に順方向電流を通電させた状態で帯電水粒子が所定回数発生する都度、前記通電回路に逆方向電流を通電させる手段を有すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の静電霧化装置。
【請求項4】
複数の前記放電電極の周囲の温度を測定する温度センサを更に備え、
前記制御手段は、
前記温度センサが測定した温度に基づいて、前記通電回路に順方向電流を通電させる時間の長さを調整する手段を有すること
を特徴とする請求項1から3までの何れか一つに記載の静電霧化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−49038(P2013−49038A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189954(P2011−189954)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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