非ランダムプライマーを用いたcDNA合成の方法
本発明は、RNA鋳型分子の集団中の核酸分子の標的集団(例えば、最も高度に発現されるmRNA種を除く、ある細胞型で発現される全てのmRNA分子)を選択的に増幅するための方法を提供する。本発明はまた、SEQ ID NO:1〜749に記載の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドの第一の集団およびSEQ ID NO:750〜1498に記載の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドの第二の集団を提供する。オリゴヌクレオチドの第一の集団は、例えば、リボソームRNA分子に相補的なcDNA分子の合成をプライムせずに、哺乳類細胞から単離されたmRNA分子に相補的な第一鎖cDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。オリゴヌクレオチドの第二の集団は、例えば、リボソームRNA分子から合成されたプライマー伸長産物の第二鎖合成をプライムせずに、哺乳類細胞から単離されたmRNA分子に相補的なプライマー伸長産物(第一鎖cDNA)の第二鎖合成をプライムするために用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、標的核酸分子を選択的に増幅する方法および標的核酸分子の増幅をプライムするのに有用なオリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
遺伝子発現解析では、出発核酸分子の増幅を伴うことが多い。核酸分子の増幅は逆転写(RT)、インビトロ転写(IVT)またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、単独でまたはこれらの組み合わせで達成されうる。出発核酸分子は、mRNA分子であってよく、これは、相補的cDNA分子をまず初めに合成し、次いで第一のcDNA分子に相補的な第二のcDNA分子を合成し、これによって二本鎖cDNA分子を作出することにより増幅される。第一鎖cDNAの合成は通例、逆転写酵素を用いて達成され、第二鎖cDNAの合成は通例、DNAポリメラーゼを用いて達成される。二本鎖cDNA分子を用いてRNAポリメラーゼにより相補的RNA分子を作製し、オリジナルの出発mRNA分子の増幅をもたらすことができる。RNAポリメラーゼは、RNA合成の開始を指令するためにプロモーター配列を必要とする。相補的RNA分子は例えば、さらなる相補的DNA分子を作製するための鋳型として使用されうる。あるいは、二本鎖cDNA分子は、例えば、PCRによって増幅されてもよく、増幅されたPCR産物は、シーケンシング用の鋳型としてまたはマイクロアレイ解析で使用されてもよい。
【0003】
核酸分子の増幅には、出発材料中の一つまたは複数の標的核酸分子と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーの使用が必要となる。各オリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸分子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドのハイブリダイズ部分の5'側に位置するプロモーター配列を含みうる。オリゴヌクレオチドのハイブリダイズ部分が短すぎれば、オリゴヌクレオチドは標的核酸分子と安定的にハイブリダイズせず、プライミングおよびその後の増幅が起こらない。また、オリゴヌクレオチドのハイブリダイズ部分が短すぎれば、オリゴヌクレオチドは、一つまたは少数の標的核酸分子と特異的にハイブリダイズするのではなく、多数の標的核酸分子と非特異的にハイブリダイズする。
【0004】
異なる標的核酸分子(例えば、RNA分子)の複雑な混合物の増幅には、通例、異なる核酸配列を有する多数のオリゴヌクレオチドの集団の使用が必要となる。オリゴヌクレオチドの費用は、オリゴヌクレオチドの長さとともに増大する。費用を抑制するためには、標的配列とのオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを確実とするのに必要とされる最小長しかないオリゴヌクレオチドプライマーを作製することが好ましい。
【0005】
高度に発現されるRNA (例えば、リボゾームRNA)を増幅することは望ましくない場合が多い。例えば、血液細胞中の遺伝子の発現を解析する遺伝子発現実験では、豊富なグロビンmRNAまたはリボソームRNAの多数のコピーを増幅することで、希少なmRNAのレベルのわずかな変化が分かりにくくなる可能性がある。したがって、核酸分子の集団内の所望の核酸分子を選択的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーの集団(例えば、最も高度に発現されるRNAを除く、細胞中で発現される全てのmRNAを選択的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマー)が必要である。オリゴヌクレオチドの集団を合成する費用を低減するために、各オリゴヌクレオチドのハイブリダイズ部分は、規定の条件の下で、所望の標的配列との特異的ハイブリダイゼーションを確実とするのに必要とされるよりも長くすべきではない。
【発明の概要】
【0006】
概要
一つの局面において、本発明は、核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団(例えば、最も高度に発現されるRNA種を除く、ある細胞型で発現される全てのRNA分子)を選択的に増幅するための方法を提供する。本発明のこの局面の各方法は、(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団から合成される一本鎖プライマー伸長産物の集団を提供する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでRNA鋳型分子の集団が核酸分子の標的集団および核酸分子の非標的集団を含む段階; (b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)による一本鎖プライマー伸長産物の集団から二本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、6、7または8ヌクレオチドのうちの一つからなるハイブリダイズ部分と、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列とを含み、ここでハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で、合成された一本鎖cDNA中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6、7または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される段階を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドは、ランダムなハイブリダイズ部分およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列を含む。
【0007】
別の局面において、本発明は、核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法を提供する。本発明のこの局面の方法は、(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離された全RNAを含むサンプルから一本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団内の各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:1〜749を含んだオリゴヌクレオチドの集団の成員である段階; かつ(b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により合成された一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団内の各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:750〜1498を含んだオリゴヌクレオチドの集団の成員である段階を含む。
【0008】
別の局面において、本発明は、トランスクリプトーム・プロファイリングのための方法を提供する。本発明のこの局面の方法は、(a) 逆転写酵素、およびハイブリダイズ部分とハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位とを含んだオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団から一本鎖プライマー伸長産物の集団を合成する段階; (b) DNAポリメラーゼ、およびハイブリダイズ部分とハイブリダイズ部分の5'側に位置する第二のPCRプライマー結合部位とを含んだオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により作出された一本鎖プライマー伸長産物の集団から二本鎖cDNAを合成する段階; ならびに(c) 第一のPCRプライマー結合部位に結合する第一のPCRプライマーおよび第二のPCRプライマー結合部位に結合する第二のPCRプライマーを用いて段階(b)により作出された二本鎖cDNAをPCR増幅する段階であって、ここで核酸分子の非標的集団が哺乳類被験体と同じ種のリボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAから本質的になる段階を含む。
【0009】
別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団を提供する。これらのオリゴヌクレオチドは、例えば、リボソームRNA (18S、28S)またはミトコンドリアリボソームRNA (12S、16S)分子に相補的な第一鎖cDNA分子の合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたRNA分子に相補的な第一鎖cDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団中の各オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分をさらに含む。一つの態様において、規定の配列部分は、PCR増幅でのまたはインビトロ転写のための、プライマー結合部位として使用されうる転写プロモーターを含む。別の態様において、規定の配列部分は、転写プロモーターでないプライマー結合部位を含む。例えば、いくつかの態様において、本発明は、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)などの転写プロモーターが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。さらなる態様において、本発明は、規定の配列部分が、PCR合成反応をプライムするのに有用であり、かつRNAポリメラーゼプロモーター配列を含まない、少なくとも一つのプライマー結合部位を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。このような態様で用いる規定の配列部分の代表例は、5'TCCGATCTCT3' (SEQ ID NO:1499)として与えられ、これは、好ましくは、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する。
【0010】
別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団を提供する。これらのオリゴヌクレオチドは、例えば、リボソームRNA (18S、28S)またはミトコンドリアリボソームRNA (12S、16S)分子から逆転写された第一鎖cDNAに相補的な第二鎖cDNA分子の合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたRNAから合成された第一鎖cDNA分子に相補的な第二鎖cDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団中の各オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分をさらに含む。一つの態様において、規定の配列部分は、PCR増幅でのまたはインビトロ転写のための、プライマー結合部位として使用されうる転写プロモーターを含む。別の態様において、規定の配列部分は、転写プロモーターでないプライマー結合部位を含む。例えば、いくつかの態様において、本発明は、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)などの転写プロモーターがSEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドがSEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)からなる、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。さらなる態様において、本発明は、規定の配列部分が、PCR合成反応をプライムするのに有用であり、かつRNAポリメラーゼプロモーター配列を含まない、少なくとも一つのプライマー結合部位を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。このような態様で用いる規定の配列部分の代表例は、5'TCCGATCTGA3' (SEQ ID NO:1500)として与えられ、これは、好ましくは、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する。
【0011】
別の局面において、本発明は、非標的核酸分子のより大きな集団中の核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬を提供する。一つの態様において、試薬は、SEQ ID NO:1〜749を含んだオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む。別の態様において、試薬は、SEQ ID NO:750〜1498を含んだオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む。
【0012】
別の局面において、本発明は、核酸分子の標的集団を選択的に増幅するためのキットを提供する。本発明のこの局面のキットは、第一鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第一の集団を含んだ試薬を含み、ここでオリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:1〜749を含んだオリゴヌクレオチドの集団の成員である。いくつかの態様において、キットは、第二鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第二の集団をさらに含み、ここでオリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:750〜1498を含んだオリゴヌクレオチドの集団の成員である。
【0013】
別の局面において、本発明は、5'側の規定配列、哺乳類被験体で発現される核酸に対応する増幅された配列の集団、3'側の規定配列を含んだ、哺乳類被験体のトランスクリプトームの提示を含む選択的に増幅された核酸分子の集団を提供し、ここで増幅された配列の集団が特定の哺乳類種に関して以下の特性を有することによって特徴付けられる: (a) 75%を上回るポリアデニル化および非ポリアデニル化転写物を有する、かつ10%未満のリボソームRNAを有する。
【0014】
添付の図面と合わせて、以下の詳細な説明を参照することにより、先述の局面および本発明に伴う利点の多くがよりよく理解されるので、先述の局面および本発明に伴う利点の多くがより容易に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】実施例1に記述されているヒトRefSeq転写物データベース中のヌクレオチド配列に対する、ランダムな6-mer (N6)オリゴヌクレオチドの正確な一致の数を示している。
【図1B】実施例1に記述されているヒトRefSeq転写物データベース中のヌクレオチド配列に対する、Not-So-Random (NSR)6-merオリゴヌクレオチドの正確な一致の数を示している。
【図1C】実施例2に記述されているように、第一鎖cDNA合成用のランダムプライマーの混合物および第二鎖cDNA合成用の抗NSR 6-merオリゴヌクレオチドの混合物を用いて選択的に増幅されるcDNA分子の調製物を合成するための本発明の方法の代表的な態様を示す。
【図1D】実施例2および実施例4に記述されているように、PCR増幅に先立って、第一鎖cDNA合成用のNSR 6-merオリゴヌクレオチドの混合物および第二鎖cDNA合成用の抗NSR 6-merオリゴヌクレオチドの混合物を用いて選択的に増幅されるaDNA分子の調製物を合成するための本発明の方法の代表的な態様を示す。
【図2】実施例4および実施例5に記述されているように、被験体より単離されたRNAから核酸分子を選択的に増幅し、引き続いて増幅された核酸分子の配列解析またはマイクロアレイ解析を行う段階を含む、被験体の全トランスクリプトーム解析の方法を例示する流れ図である。
【図3A】実施例3に記述されるようにランダムプライマーを用いて作出された第一鎖cDNAと比較した(N8 = 100%)、各種のNSR-6プールを用いて合成された第一鎖cDNA分子の集団における18S、28S、12Snおよび16Sの相対存在量(遺伝子およびN8に対して規準化した)を示した対数目盛のヒストグラムプロットである。
【図3B】実施例3に記述されるように第一鎖合成にも第二鎖合成にもランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAにおける細胞質rRNA (18Sまたは28S)の存在量の相対レベル(N7>N7 = 100% 18S、100% 28S)を、第一鎖にはNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖にはランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR>N7 = 3.0% 18S、3.4% 28S)、および第一鎖にはNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖には抗NSRプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR>抗NSR = 0.1% 18S、0.5% 28S)図示している。
【図3C】実施例3に記述されるように第一鎖合成にも第二鎖合成にもランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAにおけるミトコンドリアrRNA (12Sまたは16S)の存在量の相対レベル(N7>N7 = 100% 12Sまたは16S)を、第一鎖にはNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖にはランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR>N7 = 27% 12S、20.4% 16S)、および第一鎖にはNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖には抗NSRプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR>抗NSR = 8.2% 12S、3.5% 16S)図示している。
【図4A】実施例3に記述されるようにさまざまなNSRプライマーを第一鎖合成中に用いて合成されたcDNA中の代表的な遺伝子転写物の遺伝子特異的ポリA含量を示すヒストグラムプロットである。
【図4B】実施例3に記述されるようにさまざまなNSRプライマーを第一鎖cDNA合成中に用いてJurkat-1およびJurkat-2全RNAから増幅されたcDNA中の代表的な非ポリアデニル化RNA転写物の相対的な存在量レベルを示すヒストグラムプロットである。
【図5】実施例3に記述されるように、ランダムプライマー(N8)を用いて作出されたcDNAで測定したJurkat/K562 mRNA発現データのlog比と対比して、NSR-6mer (x軸)を用いて作出されたcDNAで測定したJurkat/K562 mRNA発現データのlog比を図示している。
【図6A】実施例3に記述されるように、ポリA精製後に通例得られる全RNA中のrRNAとmRNAとの割合を図示しており、全RNAからのrRNAの95%除去後でさえ、残存するRNAは約50%のrRNAおよび50%のmRNAの混合物からなることを実証している。
【図6B】第一鎖cDNA合成中にNSRプライマーを用い、第二鎖cDNA合成中に抗NSRプライマーを用いて調製されたcDNAサンプル中のrRNAとmRNAとの割合を図示している。図のように、ポリA精製に比べて、実施例3に記述されるように、全RNAからcDNAを作出するためにNSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いることは、99.9%のrRNAを除去するのに有効であり、95%を上回るmRNAの濃縮されたcDNA集団をもたらす。
【図7A】実施例7に記述されるように、長い転写物(?4kb)の全体でのNSRプライム(点線)または発現配列タグ(EST) (実線) cDNAにおけるポリA+ RefSeq mRNAの検出および位置分布を図示しており、5'末端から始めて各塩基の位置に示した5,790種の転写物に対する組み合わせ読み出し頻度を示す。
【図7B】実施例7に記述されるように、長い転写物(?4kb)の全体でのNSRプライム(点線)または発現配列タグ(EST) (実線) cDNAにおけるポリA+ RefSeq mRNAの検出および位置分布を図示しており、3'末端から始めて各塩基の位置に示した5,790種の転写物に対する組み合わせ読み出し頻度を示す。
【図8】実施例7に記述されるように、Universal Human Reference (UHR)細胞株より単離されたRNAから作出されたNSRプライムcDNAと比較した、全脳より単離されたRNAから作出されたNSRプライムcDNAでの第15染色体Prader-Willi神経疾患遺伝子座によってコードされる小核小体RNA (snoRNA)の濃縮を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本明細書において具体的に定義されていなければ、本明細書において用いられる全ての用語は、本発明の分野における当業者に対するのと同じ意味を有する。当技術分野の定義および用語に関しては、当業者は、特に、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York; およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 47), John Wiley & Sons, New York, 1999を参照されたい。
【0017】
第一鎖cDNA合成のためのNot-So-Random (「NSR」) 6-merプライマーの使用が、参照により本明細書に組み入れられる、2006年10月27日付で出願された同時係属中の米国特許出願第11/589,322号に記述されている。特定の態様において、同時係属中の米国特許出願第11/589,322号に記述されているNSR-6merは、血液細胞で発現される全てのmRNA分子とハイブリダイズするが、グロビンmRNA (HBA1、HBA2、HBB、HBD、HBG1およびHBG2)、または核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)とはハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドの集団を含む。本出願において、グロビンmRNAを含め、哺乳類細胞で発現される全てのmRNA分子とハイブリダイズするが、核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)ならびにミトコンドリアリボソームRNA (12Sおよび16S mt-rRNA)とはハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドを含む、NSRプライマーの異なる集団(SEQ ID NO:1〜749)が提供される。本出願は、第二鎖cDNA合成の間に用いるための抗NSRオリゴヌクレオチドの第二の集団(SEQ ID NO:750〜1498)をさらに提供する。抗NSRオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:750〜1498)は、グロビンmRNAを含め、哺乳類細胞で発現されるRNA鋳型から逆転写された全ての第一鎖cDNA分子とハイブリダイズするが、核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)ならびにミトコンドリアリボソームRNA (12Sおよび16S mt-rRNA)から転写された第一鎖cDNA分子とはハイブリダイズしないように選択される。実施例1〜4で記述されるように、第一鎖合成中のNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)を用いた第一ラウンドの選択的増幅、引き続き第二鎖合成中の抗NSRプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)を用いた第二ラウンドの選択的増幅の使用によって、細胞で発現されるポリA RNAおよび非ポリA RNAの実質的に全てに相当し、不必要な核リボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAに相当する核酸分子のレベルが非常に低い(10%未満の)、二本鎖cDNAの集団が得られる。図2に示されるように、本発明は同様に、シーケンシングおよび遺伝子発現プロファイリング(例えば、マイクロアレイ解析)などの、本発明の増幅方法の産物を解析する方法を提供する。
【0018】
上記によれば、一つの局面において、本発明は、核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団(例えば、最も高度に発現されるRNA種を除く、ある細胞型で発現される全てのRNA分子)を選択的に増幅するための方法を提供する。本発明のこの局面の各方法は、(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNAから一本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでRNAが核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団を含む段階; かつ(b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により合成された一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、6、7または8ヌクレオチドのうちの一つからなるハイブリダイズ部分と、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列とを含み、ここでハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で、合成された一本鎖cDNA中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6、7または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される段階を含む。
【0019】
オリゴヌクレオチドの第二の集団は同様に、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含むことができる。一つの態様において、規定の配列部分は、プライマー結合部位としても使用できる転写プロモーターを含む。それゆえ、本発明のこの局面の特定の態様において、オリゴヌクレオチドの第二の集団の各オリゴヌクレオチドは、6ヌクレオチドまたは7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する転写プロモーター部分を含む。別の態様において、オリゴヌクレオチドの第二の集団の規定の配列部分は、PCR増幅反応で用いるための第二のプライマー結合部位を含み、第二のプライマー結合部位は任意で、転写プロモーターを含んでもよい。例として、本発明により提供される抗NSRオリゴヌクレオチドの集団は、本発明のこの局面の方法の実践において有用である。
【0020】
例えば、本発明の一つの態様において、哺乳類細胞由来のRNA分子の標的集団から合成された全ての、または実質的に全ての、第一鎖cDNA分子の第二鎖合成をプライムするためのプライマーとして使用できるが、哺乳類細胞由来の非標的リボソームRNA (rRNA)またはミトコンドリアrRNA (mt-rRNA)から逆転写された第一鎖cDNAの第二鎖合成をプライムしない、それぞれが6ヌクレオチドの長さを有する、オリゴヌクレオチドの集団(SEQ ID NO:750〜1498)が特定された。特定されたオリゴヌクレオチドの第二の集団(SEQ ID NO:750〜1498)は、抗Not-So-Random (抗NSR)プライマーといわれる。したがって、オリゴヌクレオチドのこの集団(SEQ ID NO:750〜1498)は、哺乳類細胞から単離されたmRNA分子の出発集団を代表する第一鎖核酸分子(例えば、cDNA)の集団の第二鎖合成をプライムするために用いることができるが、rRNAまたはmt-rRNAに対応するcDNA分子の第二鎖合成をプライムしない。
【0021】
他の態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドは、6、7または8ヌクレオチドのうちの一つからなるハイブリダイズ部分と、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列とを含み、ここでハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で、哺乳類被験体由来のRNAを含むサンプル中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6、7または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される。
【0022】
オリゴヌクレオチドの第一の集団は同様に、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含んでもよい。一つの態様において、規定の配列部分は、第一のプライマー結合部位としても使用できる転写プロモーターを含む。それゆえ、本発明のこの局面の特定の態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団の各オリゴヌクレオチドは、6ヌクレオチドまたは7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する転写プロモーター部分を含む。別の態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団の規定の配列部分は、PCR増幅反応で用いるための第一のプライマー結合部位を含み、第一のプライマー結合部位は任意で、転写プロモーターを含んでもよい。例として、本発明により提供されるNSRオリゴヌクレオチドの集団は、本発明のこの局面の方法の実践において有用である。
【0023】
例えば、本発明の一つの態様において、哺乳類細胞由来の全ての、または実質的に全ての、mRNA分子の第一鎖合成をプライムするためのプライマーとして使用できるが、哺乳類細胞由来の非標的リボソームRNA (rRNA)またはミトコンドリアrRNA (mt-rRNA)の増幅をプライムしない、それぞれが6ヌクレオチドの長さを有する、オリゴヌクレオチドの第一の集団(SEQ ID NO:1〜749)が特定された。特定されたオリゴヌクレオチドの第一の集団(SEQ ID NO:1〜749)は、Not-So-Random (NSR)プライマーといわれる。したがって、オリゴヌクレオチドのこの集団(SEQ ID NO:1〜749)は、哺乳類細胞から単離されたmRNA分子の出発集団を代表する核酸分子(例えば、cDNA)の集団の第一鎖合成をプライムするために用いることができるが、rRNAまたはmt-rRNAに対応するcDNA分子の第一鎖合成をプライムしない。
【0024】
本発明は同様に、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)または第一のプライマー結合部位(SEQ ID NO:1499)などの規定の配列が、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、第一鎖cDNA合成をプライムするためのオリゴヌクレオチドの第一の集団を提供する。したがって、各オリゴヌクレオチドは、標的核酸分子(例えば、mRNA)とハイブリダイズするハイブリダイズ部分(SEQ ID NO:1〜749から選択される)およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する、プロモーター配列または第一のプライマー結合部位などの、規定の配列を含むことができる。規定の配列部分(T7プロモーターを含む)は、オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて増幅されたDNA分子の中に取り込まれ、その後、DNA分子からの転写を促進することができる。
【0025】
あるいは、転写プロモーターまたは第一のプライマー結合部位などの、規定の配列部分は、例えば、DNAリガーゼ酵素によって、cDNA分子に共有結合的に付着することもできる。
【0026】
有用な転写プロモーター配列にはT7プロモーター:
、SP6プロモーター:
、およびT3プロモーター:
が含まれる。
【0027】
例えば、標的核酸集団は、例えば、最も豊富に発現されるmRNAなどの、非標的mRNAの選択群を除く、細胞または組織で発現される全てのmRNAを含むことができる。豊富に発現される非標的mRNAは、通例、細胞または組織で発現される全てのmRNAの少なくとも0.1%を構成する(および例えば、細胞または組織で発現される全てのmRNAの50%超または60%超または70%超を構成することができる)。豊富に発現される非標的mRNAの一例は、哺乳類細胞におけるリボソームrRNAまたはミトコンドリアrRNAである。本発明の方法を用いて選択的に除去可能な、豊富に発現される非標的RNAの他の例としては、例えば、グロビンmRNA (血液細胞由来)または葉緑体rRNA (植物細胞由来)が挙げられる。
【0028】
本発明の方法は、あるRNA群(NSRおよび/または抗NSRプライマーとハイブリダイズしないもの)、例えば、高度に発現されるRNA (例えば、リボゾームRNA)の存在を、増幅されたサンプルから低下させることが望ましい、生体細胞サンプル中の全RNAのトランスクリプトーム・プロファイリングに有用である。いくつかの態様において、本発明の方法は、RNAサンプルに由来する増幅された核酸中のNSRプライマーおよび/または抗NSRプライマーとハイブリダイズしない核酸分子の群の量を、NSRおよび/または抗NSRプライマーとハイブリダイズする増幅された核酸分子の量に比べて、少なくとも2倍、最大1000倍、例えば少なくとも10倍、50倍、100倍、500倍またはそれ以上など低下させるために用いることができる。
【0029】
本発明のこの局面の方法を実践するために使用されるオリゴヌクレオチドの集団は、オリゴヌクレオチドのより大きな集団内から選択され、ここでオリゴヌクレオチドの第一の集団は、規定の条件の下で標的RNA集団とハイブリダイズするが、規定の条件の下で非標的RNA集団とハイブリダイズしないその能力に基づき選択され、かつオリゴヌクレオチドの第一の集団は、6ヌクレオチド、7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドを含む。
【0030】
オリゴヌクレオチドの第二の集団は、規定の条件の下で標的の第一鎖cDNA集団とハイブリダイズするが、規定の条件の下で非標的の第一鎖cDNA集団とハイブリダイズしないその能力に基づき選択され、かつオリゴヌクレオチドの第二の集団は、6ヌクレオチド、7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドを含む。一つの態様において、オリゴヌクレオチドの第二の集団は、オリゴヌクレオチドの第一の集団の配列の逆相補体を合成することによって作出されうる。
【0031】
オリゴヌクレオチドの第一の集団の組成
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団は、6ヌクレオチドまたは7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドの第一の集団は、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチド、または7ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチド、または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドのみを含みうる。任意で、オリゴヌクレオチドの第一の集団は、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチド、または7ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチド、または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドに加えて、他のオリゴヌクレオチドを含んでもよい。通例、オリゴヌクレオチドの第一の集団の各成員は、30ヌクレオチド長以下である。
【0032】
オリゴヌクレオチドの第一の集団の配列
6ヌクレオチドの長さを有する4,096種の可能なオリゴヌクレオチド、7ヌクレオチドの長さを有する16,384種の可能なオリゴヌクレオチド、および8ヌクレオチドの長さを有する65,536種の可能なオリゴヌクレオチドが存在する。オリゴヌクレオチドの集団を構成するオリゴヌクレオチドの配列は、Microsoft Word (登録商標)などのコンピュータプログラムによって容易に作出することができる。
【0033】
第一のオリゴヌクレオチドの亜集団の選択
第一のオリゴヌクレオチドの亜集団は、第一のオリゴヌクレオチドの亜集団の成員が規定の条件の下で標的核酸の集団とハイブリダイズするが、同一の規定の条件の下で非標的集団とハイブリダイズしない能力に基づき、オリゴヌクレオチドの集団から選択される。増幅されるサンプルは、(例えば、逆転写を用いて)増幅されるべき標的核酸分子(例えば、RNAまたはDNA分子)を含み、増幅されるべきでない非標的核酸分子も含む。第一のオリゴヌクレオチドの亜集団は、それぞれが、規定の条件の下で、増幅されるべき核酸分子の集団全体に分布している標的配列とハイブリダイズするが、同一の規定の条件の下で、増幅されるべきでない非標的核酸分子のほとんど(またはいずれも)とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドから構成される。第一のオリゴヌクレオチドの亜集団は、規定の条件の下で、意図的に回避されたもの(非標的配列)以外の標的核酸配列とハイブリダイズする。
【0034】
例えば、細胞サンプルは、多くのリボソームRNA分子(例えば、5S、18Sおよび28SリボソームRNA)ならびにミトコンドリアrRNA分子(例えば、12Sおよび16SリボソームRNA)を含め哺乳類細胞で発現される全てのmRNA分子の集団を含むことができる。通例、リボソームRNAを増幅することは望ましくない。例えば、細胞中の遺伝子の発現を解析する遺伝子発現実験では、豊富なリボソームRNAの多数のコピーを増幅することで、豊富でないmRNAのレベルのわずかな変化が分かりにくくなる可能性がある。したがって、本発明の実践において、規定の条件の下でほとんどの(またはいずれもの)非標的リボソームRNAとハイブリダイズしないが、同一の規定の条件の下で、細胞中で発現される他の標的mRNA分子のほとんど(好ましくは全て)とハイブリダイズする第一のオリゴヌクレオチドの亜集団が選択される。
【0035】
規定の条件の下で標的核酸集団とハイブリダイズするが、規定の条件の下で非標的核酸集団とハイブリダイズしない第一のオリゴヌクレオチドの亜集団を選択するためには、非標的核酸集団の成員の完全なまたは実質的に完全な核酸配列を知ることが必要である。したがって、例えば、5S、18Sおよび28SリボソームRNA (またはリボソームRNAの前記部類の各々の代表的成員)の核酸配列ならびに12Sおよび16SリボソームミトコンドリアRNAの核酸配列を知ることが必要である。細胞サンプルを得る哺乳類種に関するリボソームRNAの配列は、公的にアクセス可能なデータベースのなかで見出すことができる。例えば、2007年9月5日アクセス時の、ヒト12S、16S、18Sおよび28SリボソームRNAに対するNCBI Genbank識別子が表1に示されている。
【0036】
次いで、適当なソフトウェアプログラムを使用し、第一のオリゴヌクレオチドの集団中の全オリゴヌクレオチドの配列(例えば、可能な全ての6核酸オリゴヌクレオチドの集団)とリボソームRNAの配列とを比較して、規定のハイブリダイゼーション条件の下で、どのオリゴヌクレオチドがリボソームRNAの任意の部分とハイブリダイズするかを判定する。規定のハイブリダイゼーション条件の下で、リボソームRNAのどの部分ともハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドのみを選択する。核酸配列の比較および規定のハイブリダイゼーション条件の下で互いにハイブリダイズする配列の特定を可能とするパールスクリプト(Perl script)を容易に作成することができる。
【0037】
したがって、例えば、実施例1でさらに十分に記述されているように、どのリボソームRNA配列のどの部分にも厳密に相補的ではない、可能な全ての6核酸オリゴヌクレオチドの亜集団が特定された。一般に、(規定の条件の下で標的核酸集団とハイブリダイズするが、規定の条件の下で非標的核酸集団とハイブリダイズしない)オリゴヌクレオチドの亜集団は、RNAサンプル中の全てのまたは実質的に全ての核酸分子とハイブリダイズするために十分に異なるオリゴヌクレオチド配列を含む必要がある。本明細書の実施例1は、SEQ ID NO:1〜749に記載の核酸配列を有するオリゴヌクレオチドの集団が、RefSeqと呼ばれる公的にアクセス可能なデータベースに保存されている遺伝子転写物の集団内の全てのまたは実質的に全ての核酸配列とハイブリダイズすることを示している。
【0038】
さらなる規定の核酸配列部分
第一のオリゴヌクレオチドの選択された亜集団(例えば、SEQ ID NO:1〜749)を用いて、RNA分子の標的集団の逆転写をプライムし、第一鎖cDNAを作出することができる。あるいは、各オリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列を含み、さらなる規定の核酸配列も含む、第一のオリゴヌクレオチドの集団をプライマーとして用いることもできる。さらなる規定の核酸配列は、通例、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列の5'側に位置している。通例、オリゴヌクレオチドの集団は、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の全成員の配列を含む(例えば、オリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列の全てを含むことができる)。
【0039】
さらなる規定の核酸配列は、相補的標的配列に対するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特異性に影響を与えないように選択される。例えば、図1Dに示されるように、各第一のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列の5'側に位置した転写プロモーター配列または第一のプライマー結合部位(PBS#1)を含むことができる。プロモーター配列は、増幅された核酸分子の中に取り込まれ、したがって、これをRNA合成用の鋳型として用いることができる。オリゴヌクレオチドの集団の規定の配列部分の中に、任意のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含めることができる。代表的な例としては、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)、SP6プロモーター(SEQ ID NO:1509)およびT3プロモーター(SEQ ID NO:1510)が挙げられる。
【0040】
本発明のこの局面のいくつかの態様において、図1Cに示されるように、オリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドは、ランダムなハイブリダイズ部分およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列を含む。図1Cに示されるように、各第一のオリゴヌクレオチドは、ランダムなハイブリダイズ部分の5'側に位置するプライマー結合部位を含んだ規定の配列を含むことができる。プライマー結合部位は、増幅された核酸の中に取り込まれ、これをcDNAからの二本鎖増幅DNA産物の作出のためのPCRプライマー結合部位として用いることができる。プライマー結合部位は、転写プロモーター配列の一部分でありうる。
【0041】
オリゴヌクレオチドの第二の集団の配列
オリゴヌクレオチドの第二の集団の選択過程は、オリゴヌクレオチドの第一の集団の選択で上述した過程と似ているが、異なるのは、6ヌクレオチド、7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で標的RNAから逆転写された第一鎖cDNAとハイブリダイズするように、かつ規定の条件の下で非標的RNAから逆転写された第一鎖cDNAとハイブリダイズしないように選択されるという点である。オリゴヌクレオチドの第二の集団は、上述の方法を用いて、例えば、公的に入手可能なリボソームRNA配列を用いて選択することができる。オリゴヌクレオチドの第二の集団は、オリゴヌクレオチドの第一の集団の逆相補体(抗NSR)として作出することもできる。
【0042】
したがって、例えば、実施例1でさらに十分に記述されているように、どのリボソームRNA配列のどの部分にも厳密に相補的ではない、可能な全ての6核酸オリゴヌクレオチドに基づき第二の集団が選択された。本明細書の実施例1は、SEQ ID NO:1〜749に記載の核酸配列を有するオリゴヌクレオチドの集団が、RefSeqと呼ばれる公的にアクセス可能なデータベースに保存されている遺伝子転写物の集団内の全てのまたは実質的に全ての核酸配列とハイブリダイズすることを示している。次いでオリゴヌクレオチドの第一の集団(SEQ ID NO:1〜749、NSR)の逆相補体である、第二の集団SEQ ID NO:750〜1498 (抗NSR)が作出された。
【0043】
さらなる規定の核酸配列部分
第二のオリゴヌクレオチドの選択された亜集団(例えば、SEQ ID NO:750〜1498)を用いて、標的集団である第一鎖cDNA分子の第二鎖cDNA合成をプライムすることができる。あるいは、各オリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列を含み、さらなる規定の核酸配列も含む、第二のオリゴヌクレオチドの集団をプライマーとして用いることもできる。さらなる規定の核酸配列は、通例、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列の5'側に位置している。通例、オリゴヌクレオチドの集団は、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の全成員の配列を含む(例えば、オリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列の全てを含むことができる)。
【0044】
さらなる規定の核酸配列は、相補的標的配列に対するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特異性に影響を与えないように選択される。例えば、図1Dに示されるように、各第一のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列の5'側に位置した転写プロモーター配列または第二のプライマー結合部位(PBS#2)を含むことができる。プロモーター配列は、増幅された核酸分子の中に取り込まれ、したがって、これをRNA合成用の鋳型として用いることができる。オリゴヌクレオチドの集団の規定の配列部分の中に、任意のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含めることができる。代表的な例としては、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)、SP6プロモーター(SEQ ID NO:1509)およびT3プロモーター(SEQ ID NO:1510)が挙げられる。
【0045】
別の局面において、本発明は、第一のオリゴヌクレオチドの集団を提供し、ここでこの集団の各オリゴヌクレオチドは、(a) オリゴヌクレオチドの亜集団が哺乳類細胞で発現される全てのまたは実質的に全てのRNAとハイブリダイズするが、リボソームRNAとハイブリダイズしない、オリゴヌクレオチドの亜集団(SEQ ID NO:1〜749)の成員である6核酸オリゴヌクレオチドの配列; および(b) 6核酸オリゴヌクレオチドの配列の5'側に位置するプライマー結合部位(PBS#1)配列(SEQ ID NO:1499)を含む。一つの態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列の全てを含む。別の態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含む。
【0046】
任意で、オリゴヌクレオチドの第一の集団における規定の配列部分とハイブリダイズ部分との間にスペーサー部分が位置してもよい。スペーサー部分は、通例、1から12ヌクレオチド長(例えば、1から6ヌクレオチド長)であり、ランダムなヌクレオチド(N=A、C、TまたはG)の任意の組み合わせを含むことができる。スペーサー部分は、例えば、ランダム選択のヌクレオチドから構成されることができる。スペーサー部分の全部または一部が、ハイブリダイズ部分と同一の標的核酸配列とハイブリダイズしてもしなくてもよい。スペーサー部分の全部または一部がハイブリダイズ部分と同一の標的核酸配列とハイブリダイズする場合、ハイブリダイズ部分およびハイブリダイズスペーサー部分を含むオリゴヌクレオチドによってプライムされるcDNA合成の効率を増強させる効果がある。いくつかの態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、プライマー結合部位とハイブリダイズ部分との間に位置する1〜10個のランダムなヌクレオチド(A、C、TまたはG)からなるスペーサー領域をさらに含む。別の態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列の全てを含み、ここで各ヌクレオチド配列が5'末端に少なくとも一つのスペーサーヌクレオチドをさらに含む。
【0047】
別の局面において、本発明は、第二のオリゴヌクレオチドの集団を提供し、ここでこの集団の各オリゴヌクレオチドは、(a) オリゴヌクレオチドの亜集団が哺乳類細胞で発現されるRNAから逆転写された全てのまたは実質的に全ての第一鎖cDNAとハイブリダイズするが、リボソームRNAから逆転写された第一鎖cDNAとハイブリダイズしない、オリゴヌクレオチドの亜集団(SEQ ID NO:750〜1498)の成員である6核酸オリゴヌクレオチドの配列; および(b) 6核酸オリゴヌクレオチドの配列の5'側に位置するプライマー結合部位(PBS#2)配列(SEQ ID NO:1500)を含む。一つの態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列の全てを含む。別の態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含む。
【0048】
任意で、オリゴヌクレオチドの第二の集団における規定の配列部分とハイブリダイズ部分との間にスペーサー部分が位置してもよい。スペーサー部分は、通例、1から12ヌクレオチド長(例えば、1から6ヌクレオチド長)であり、ランダムなヌクレオチド(N=A、C、TまたはG)の任意の組み合わせを含むことができる。スペーサー部分は、例えば、ランダム選択のヌクレオチドから構成されることができる。スペーサー部分の全部または一部が、ハイブリダイズ部分と同一の標的核酸配列とハイブリダイズしてもしなくてもよい。スペーサー部分の全部または一部がハイブリダイズ部分と同一の標的核酸配列とハイブリダイズする場合、ハイブリダイズ部分およびハイブリダイズスペーサー部分を含むオリゴヌクレオチドによってプライムされるcDNA合成の効率を増強させる効果がある。いくつかの態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、プライマー結合部位とハイブリダイズ部分との間に位置する1〜10個のランダムなヌクレオチド(A、C、TまたはG)からなるスペーサー領域をさらに含む。別の態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列の全てを含み、ここで各ヌクレオチド配列が5'末端に少なくとも一つのスペーサーヌクレオチドをさらに含む。
【0049】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団の規定の配列部分およびオリゴヌクレオチドの第二の集団の規定の配列部分はそれぞれ、少なくとも10ヌクレオチドから30ヌクレオチドまで、例えば10から12ヌクレオチドまで、10から14ヌクレオチドまで、10から16ヌクレオチドまで、10から18ヌクレオチドまで、および10から20ヌクレオチドまでなどに及ぶ長さからなる。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの第一および第二の集団のそれぞれの規定の配列部分は、10ヌクレオチドからなり、ここで規定の配列部分がPCRプライマー結合部位を含み、かつここでオリゴヌクレオチドの第一の集団の各成員におけるPCR結合部位の中の少なくとも8個の連続したヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの第二の集団の各成員におけるPCR結合部位の中の少なくとも8個のヌクレオチドと同一の配列を有する。さらなる態様において、オリゴヌクレオチドの第一および第二の集団のそれぞれの規定の配列部分は、10ヌクレオチドからなり、ここで規定の配列部分がPCRプライマー結合部位を含み、かつここでオリゴヌクレオチドの第一の集団の各成員におけるPCR結合部位の中の少なくとも8個の連続したヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの第二の集団の各成員におけるPCR結合部位の中の少なくとも8個のヌクレオチドと同一の配列を有し、かつここでオリゴヌクレオチドの第一の集団における規定の配列部分の3'末端の残り2個のヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの第二の集団における規定の配列部分の3'末端の2個のヌクレオチド(例えば、G、A)とは異なり(例えば、C、T)、それにより配列読み出し結果のアライメントに先立って配列解析後に転写物鎖(センスまたはアンチセンス)を特定することが可能になる。
【0050】
さらなる態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団の規定の配列部分がRNA部分およびDNA部分を含み、このRNA部分がこのDNA部分に対して5'側にある、ハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチドが提供される。一つの態様において、ハイブリッドプライマーの5' RNA部分は少なくとも11個のRNAヌクレオチドの規定の配列部分からなり、ハイブリッドプライマーの3' DNA部分は少なくとも3個のDNAヌクレオチドからなる。具体的な態様において、ハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチドは、NSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)の5'末端に共有結合的に付着されたSEQ ID NO:1558を含む。ハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチドを用いて作出されたcDNAは、実施例6でさらに記述されているように、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,946,251号に記述されている方法を用いて一本鎖増幅DNAを作出するための鋳型として用いることができる。
【0051】
例えば、ハイブリッドRNA/DNAの規定の配列部分(SEQ ID NO:1558)およびハイブリダイズ部分(SEQ ID NO:1〜749)を含む第一鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第一の集団は、鋳型RNAにおける標的核酸分子の複製の基礎となる。ハイブリッドRNA/DNAプライマー部分を含むオリゴヌクレオチドの第一の集団は、RNA鋳型中の標的RNAとハイブリダイズし、ハイブリッドRNA/DNAプライマーがRNA依存性DNAポリメラーゼにより伸長されて、第一のプライマー伸長産物(第一鎖cDNA)を形成する。鋳型RNAの切断後、第二鎖cDNAが第一のプライマー伸長産物との複合体の形で形成される。この態様によれば、第一および第二プライマー伸長産物の二本鎖複合体は、第一のプライマー伸長産物におけるハイブリッドプライマーの存在により、一端がRNA/DNAハイブリッドで構成されている。次いで二本鎖複合体を用いて、ハイブリッドからRNA配列を切断する(RNAseHなどの) RNA/DNAハイブリッドからRNAを切断する酵素などの作用物質により一本鎖DNA増幅産物を作出し、第二のプライマー伸長産物上の配列を、第一のハイブリッドプライマーと同じものでも同じものでなくてもよい、別のハイブリッドプライマーによる結合に利用できるようにする。phi29などのプロセッシング力の高いDNAポリメラーゼによって、先に結合された切断された第一のプライマー伸長産物に置き換わる別の第一のプライマー伸長産物を作出し、置換された切断された第一のプライマー伸長産物をもたらす。
【0052】
代替的な態様において、ランダムプライマーまたはNSRプライマーおよび抗NSRプライマー、あるいはその組み合わせのいずれかを用いて作出された、二本鎖cDNA産物(全DNA)を改変することにより一本鎖DNA増幅のための二本鎖複合体を作出する。二本鎖cDNA産物を変性させて、RNA/DNAハイブリッドプライマーを、第二鎖cDNAの3'末端部分で所定のプライマー配列にアニールする。次いでハイブリッドプライマーのDNA部分を逆転写酵素により伸長させて、RNAハイブリッド部分を有する二本鎖複合体を形成させる。次いで二本鎖複合体を、初めにRNAseHで処理して複合体のRNA部分を除去し、RNA/DNAハイブリッドプライマーを付加し、phi29などの、プロセッシング力の高いDNAポリメラーゼを付加して一本鎖DNA増幅産物を作出することによる一本鎖DNA複製のための鋳型として用いる。
【0053】
ハイブリダイゼーション条件
本発明の実践において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、オリゴヌクレオチドの集団の成員が、規定の条件の下で標的核酸集団とハイブリダイズするが、同一の規定の条件の下で非標的核酸集団とハイブリダイズしない能力に基づき、オリゴヌクレオチドの集団から選択される。規定のハイブリダイゼーション条件は、第一のオリゴヌクレオチドが、リボソームRNAを除く、サンプル中に存在する全ての核酸分子と特異的にハイブリダイズすることを許容する。通例、ハイブリダイゼーション条件は、未変性二重鎖の融解温度(Tm)より25℃から30℃(例えば、10℃)低い。約100塩基を超える核酸分子に対するTmは、式Tm = 81.5 + 0.41%(G+C) - log(Na+)によって計算することができ、式中、(G+C)は、核酸分子のグアノシンおよびシトシン含量である。長さが100塩基未満のオリゴヌクレオチド分子の場合、例示的なハイブリダイゼーション条件は、Tmより5℃から10℃低い。平均して、短いオリゴヌクレオチド二重鎖のTmは、およそ(500/オリゴヌクレオチド長)℃だけ低下する。本発明のいくつかの態様において、ハイブリダイゼーション温度は、40℃から50℃の範囲内である。適切なハイブリダイゼーション条件は、必要以上の実験操作を行うことなく経験的に特定することもできる。
【0054】
本発明の一つの態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団は、約40℃の温度で核酸分子の標的集団とハイブリダイズする。
【0055】
本発明の一つの態様において、オリゴヌクレオチドの第二の集団は、約37℃の温度で一本鎖プライマー伸長産物の集団における核酸分子の標的集団とハイブリダイズする。
【0056】
増幅条件
本発明の実践において、標的核酸集団の第一亜集団の増幅は、規定の増幅条件の下で行われる。ハイブリダイゼーション条件は、前記のように選択することができる。通例、規定の増幅条件には、逆転写酵素を用いた第一鎖cDNA合成が含まれる。逆転写反応は、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の規定の濃度の存在下で行われる。いくつかの態様において、dNTP濃度は、参照により本明細書に組み入れられる、2006年10月27日付で出願された同時係属中の米国特許出願第11/589,322号に記述されているように、増幅された産物を標的遺伝子に関して濃縮するために、約1000から約2000 μMの範囲内である。
【0057】
オリゴヌクレオチドの組成および合成
本発明の実践において有用なオリゴヌクレオチドプライマーは、所望の反応をプライムできる限りにおいて、DNA、RNA、PNA、キメラ混合物、またはこれらの誘導体もしくは修飾型とすることができる。オリゴヌクレオチドプライマーは、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格の位置で修飾されてもよく、所望の増幅反応を依然としてプライムできる限りにおいて、他の付加基または標識を含んでもよい。
【0058】
例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、および2,6-ジアミノプリンを含むがこれらに限定されない群より選択される少なくとも一つの修飾された塩基部分を含むことができる。
【0059】
同じく、例として、オリゴヌクレオチドプライマーは、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロースおよびヘキソースを含むが、これらに限定されない群より選択される少なくとも一つの修飾された糖部分を含むことができる。
【0060】
さらなる例として、オリゴヌクレオチドプライマーは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステルおよびホルムアセタールまたはこれらの類似体からなる群より選択される少なくとも一つの修飾されたリン酸骨格を含むことができる。
【0061】
本発明の方法で用いるオリゴヌクレオチドプライマーは、非特異的な核酸切断性の化学物質もしくは酵素、または部位特異的な制限エンドヌクレアーゼを用いたより大きな核酸断片の切断によって、あるいは当技術分野において公知の標準的な方法による合成によって、例えば、自動DNA合成装置(Biosearch, Applied Biosystemsなどから市販されているような)および標準的なホスホルアミダイト化学の使用による合成によって、得ることができる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinら(Nucl. Acids Res. 16:3209-3221, 1988)の方法によって合成することができ、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、制御された孔質ガラス重合体支持体を用いて調製することができる(Sarin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451, 1988)。
【0062】
所望のオリゴヌクレオチドが合成されたら、固相支持体上で合成されたそのオリゴヌクレオチドを固相支持体から切除し、存在する任意の保護基を除去するために当技術分野において公知の方法によって処理する。次いで、抽出およびゲル精製を含め、当技術分野において公知の任意の方法によりオリゴヌクレオチドを精製することができる。オリゴヌクレオチドの濃度および純度は、アクリルアミドゲル上で分離されたオリゴヌクレオチドを調べることにより、または分光光度計中260 nmで光学密度を測定することにより判定することができる。
【0063】
本発明のこの局面の方法は、例えば、mRNAのコード領域、イントロン、遺伝子の選択的スプライシング型、および遺伝子発現を調節する非コードRNAを選択的に増幅するために用いることができる。
【0064】
別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:1〜749に記載の核酸配列を少なくとも10%(少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%などの)含むオリゴヌクレオチドの集団を提供する。これらのオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)は、例えば、リボソームRNA分子に相補的なcDNA分子の第一鎖合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたRNA分子に相補的なcDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。実際、これらのオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)は、例えば、有意な量のリボソームRNAまたはミトコンドリアリボソームRNAを増幅させずに、RNA分子の任意の集団を鋳型として用い、cDNAの合成をプライムするために用いることができる。例えば、本発明は、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)などの転写プロモーターまたはプライマー結合部位(PBS#1) (SEQ ID NO:1499)のような規定の配列部分が、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドがプライマー結合部位SEQ ID NO:1499からなり、かつランダムなスペーサーヌクレオチド(A、C、TまたはG)がSEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%など)含む。
【0065】
別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の核酸配列を少なくとも10%(少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%などの)含むオリゴヌクレオチドの集団を提供する。これらのオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:750〜1498)は、例えば、リボソームRNA分子に相補的なcDNA分子の第二鎖合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたRNA分子に相補的な一本鎖プライマー伸長産物の第二鎖合成をプライムするために用いることができる。実際、これらのオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:750〜1498)は、例えば、有意な量の、リボソームRNAまたはミトコンドリアリボソームRNAに相補的な一本鎖プライマー伸長分子を増幅させずに、一本鎖プライマー伸長分子の任意の集団を鋳型として用いて、第二鎖cDNAの合成をプライムするために用いることができる。例えば、本発明は、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)などの転写プロモーターまたはプライマー結合部位(PBS#2) (SEQ ID NO:1500)のような規定の配列部分が、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドがプライマー結合部位(PBS#2) SEQ ID NO:1500を含み、かつランダムなスペーサーヌクレオチド(A、C、TまたはG)がSEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%など)含む。
【0066】
別の局面において、本発明は、RNA鋳型分子の集団から一本鎖プライマー伸長産物(第一鎖cDNA)を選択的に合成するための試薬を提供する。この試薬は、例えば、リボソームRNA分子に相補的な第一鎖cDNA分子の合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたサンプル中の標的RNA鋳型分子に相補的な第一鎖cDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。本発明の試薬は、SEQ ID NO:1〜749に記載の核酸配列を少なくとも10%含んだオリゴヌクレオチドの集団を含む。いくつかの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含んだオリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、リボソームRNAおよびミトコンドリアrRNAを除く、サンプル中に存在する実質的に全ての核酸分子とハイブリダイズするように選択される。他の態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、サンプル中に存在する核酸分子のサブセットとハイブリダイズするように選択され、該サブセットはリボソームRNAを含まない。
【0067】
別の局面において、本発明は、一本鎖プライマー伸長産物(第一鎖cDNA)の集団から二本鎖cDNAを選択的に合成するための試薬を提供する。この試薬は、例えば、リボソームRNA分子に相補的な第二鎖cDNA分子の合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたサンプル中の標的RNA鋳型分子に相補的な第二鎖cDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。本発明のこの局面による試薬は、ランダムプライマーを用いて作出される第一鎖cDNAの合成をプライムするために用いられてもよく、または標的分子の選択性に関する追加段階を提供するために、SEQ ID NO:1〜749などの、NSRプライマーを用いて作出される第一鎖cDNAの合成をプライムするために用いられてもよい。本発明のこの局面による試薬は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の核酸配列を少なくとも10%含んだオリゴヌクレオチドの集団を含む。いくつかの態様において、本発明は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含んだオリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、リボソームRNAおよびミトコンドリアrRNAから合成された第一鎖cDNAを除く、サンプル中に存在する実質的に全ての第一鎖cDNA分子とハイブリダイズするように選択される。他の態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、サンプル中に存在する第一鎖cDNA分子のサブセットとハイブリダイズするように選択され、該サブセットは、リボソームRNAから合成されたcDNA分子を含まない。
【0068】
別の態様において、本発明は、T7プロモーターなどの転写プロモーターを含む規定の配列部分が、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。別の態様において、本発明は、プライマー結合部位(例えば、PBS#1)を含む規定の配列部分が、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749として記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するプライマー結合部位(PBS#1) (SEQ ID NO:1499)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。いくつかの態様において、本発明は、プライマー結合部位と、SEQ ID NO:1〜749として記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員との間に位置する、少なくとも一つのランダムなヌクレオチドのスペーサー領域をさらに含む試薬を提供する。
【0069】
別の態様において、本発明は、T7プロモーターなどの転写プロモーターを含む規定の配列部分が、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。別の態様において、本発明は、プライマー結合部位(例えば、PBS#2)を含む規定の配列部分が、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:750〜1498として記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するプライマー結合部位(PBS#2) (SEQ ID NO:1500)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。いくつかの態様において、本発明は、プライマー結合部位と、SEQ ID NO:750〜1498として記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員との間に位置する、少なくとも一つのランダムなヌクレオチドのスペーサー領域をさらに含む試薬を提供する。
【0070】
本発明の試薬は、水溶液、または水分が除去されたもしくは凍結乾燥された固体を含む水溶液として提供することができる。
【0071】
さらなる態様において、本発明の試薬は、二本鎖cDNAを産生するための以下の成分: 逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、RNaseH酵素、Tris緩衝液、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、還元剤、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、β-ニコチンアミドアデニン二ヌクレオチド(β-NAD+)およびリボヌクレアーゼ阻害剤の一つまたは複数を含むことができる。例えば、試薬は、低下したRNaseH活性および増加した熱安定性を有する逆転写酵素(例えば、SuperScript(商標) III Reverse Transcriptase, Invitrogen)ならびに50から5000 μMの範囲内または、より好ましくは、1000から2000 μMの範囲内のdNTPの最終濃度などの、第一鎖cDNA合成に対して最適化された成分を含むことができる。
【0072】
別の局面において、本発明は、哺乳類被験体から得られたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅するためのキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、(a) プライマー結合部位(PBS#1)などの規定の配列部分が、規定の条件の下でRNA鋳型分子の集団中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される6ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分の5'側に位置し、核酸分子の非標的集団がRNA鋳型分子の集団中の最も豊富な核酸分子から本質的になる、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を含む第一試薬、(b) プライマー結合部位(PBS#2)などの規定の配列部分が、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団のハイブリダイズ部分のヌクレオチド配列の逆相補体から選択される6ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を含む第二試薬、ならびに(c) オリゴヌクレオチドの第一の集団の第一の規定の配列部分に結合する第一のPCRプライマーおよびオリゴヌクレオチドの第二の集団の第二の規定の配列部分に結合する第二のPCRプライマーを含む。
【0073】
いくつかの態様において、第一試薬は、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員を含む。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置する第一のプライマー結合部位(PBS#1) (SEQ ID NO:1499)を含む、オリゴヌクレオチドの第一の集団を含む第一試薬を含んだキットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置する第二のプライマー結合部位(PBS#2) (SEQ ID NO:1500)を含む、オリゴヌクレオチドの第二の集団を含む第二試薬を含んだキットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、第一のオリゴヌクレオチド集団における規定の配列部分とハイブリダイズする少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含み、かつ任意で第一のオリゴヌクレオチド集団とハイブリダイズしないさらなる配列尾部を含んでもよい第一のPCRプライマー、および第二のオリゴヌクレオチド集団における規定の配列部分とハイブリダイズする少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含み、かつ任意で第二のオリゴヌクレオチド集団とハイブリダイズしないさらなる配列尾部を含んでもよい第二のPCRプライマーを含んだキットを提供する。一つの態様において、第一のPCRプライマーはSEQ ID NO:1501からなり、かつ第二のPCRプライマーはSEQ ID NO:1502からなる。この態様によるキットは、本発明のNot-So-Randomプライマー(SEQ ID NO:1〜749)および抗NSR (SEQ ID NO:750〜1498)プライマーを用いて作出されたcDNAから増幅されるPCR産物を産生するのに有用である。
【0074】
本発明のキットは、本明細書において記述される方法にしたがって、任意の標的核酸集団、例えば、最も豊富に発現されるRNAを除く細胞または組織中で発現される全てのRNAを検出するために設計することができる。例示的なオリゴヌクレオチドプライマーの非限定的な例としては、SEQ ID NO:1〜749が挙げられる。プライマー結合領域の非限定的な例は、SEQ ID NO:1499および1500として記載されている。
【0075】
スペーサー部分は、標的RNAとハイブリダイズするヌクレオチドを含むヌクレオチドの任意の組み合わせを含むことができる。
【0076】
特定の態様において、キットは、6個、7個または8個のヌクレオチドのハイブリダイズ部分を有するオリゴヌクレオチドプライマーを含んだ試薬を含む。
【0077】
特定の態様において、キットは、複数の哺乳類mRNA標的を検出するために使用できるオリゴヌクレオチドプライマーの集団を含んだ試薬を含む。
【0078】
特定の態様において、キットは、40℃から50℃の温度範囲でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む。
【0079】
別の態様において、キットは、rRNAまたはミトコンドリアrRNAを検出しないオリゴヌクレオチドの亜集団を含む。キットのこの態様にしたがって用いるための例示的なオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1〜749およびSEQ ID NO:750〜1498に提供されている。
【0080】
いくつかの態様において、キットは、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含むオリゴヌクレオチドの集団を含んだ試薬を含む。
【0081】
いくつかの態様において、キットは、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含むオリゴヌクレオチドの集団を含んだ試薬を含む。
【0082】
特定の態様において、キットは、転写プロモーターがT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)、SP6プロモーター(SEQ ID NO:1509)またはT3プロモーター(SEQ ID NO:1510)を含む、オリゴヌクレオチドを含む。
【0083】
別の態様において、キットは、ヌクレオチドの任意の組み合わせを含む1から12個のヌクレオチドのスペーサー部分を有するオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0084】
本発明のいくつかの態様において、キットは、cDNAを産生するための以下の成分: 逆転写酵素、DNAポリメラーゼ酵素、DNAリガーゼ酵素、RNaseH酵素、Tris緩衝液、カリウム塩(例えば、塩化カリウム)、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム)、アンモニウム塩(例えば、硫酸アンモニウム)、還元剤(例えば、ジチオスレイトール)、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、β-ニコチンアミドアデニン二ヌクレオチド(β-NAD+)およびリボヌクレアーゼ阻害剤の一つまたは複数をさらに含むことができる。例えば、キットは、低下したRNaseH活性および増加した熱安定性を有する逆転写酵素(例えば、SuperScript(商標) III Reverse Transcriptase, Invitrogen)ならびに50から5000 μMの範囲内または、より好ましくは、1000から2000 μMの範囲内のdNTPの最終濃度を与えるためのdNTP原溶液などの、第一鎖cDNA合成に対して最適化された成分を含むことができる。
【0085】
種々の態様において、キットは、PCR増幅段階中に二本鎖DNAに選択的にまたは排他的に結合するSYBRグリーン色素またはBEBO色素などの検出試薬を含むことができる。他の態様において、キットは、PCR増幅産物の量を測定するために蛍光発光体および消光物質を含むフォワードおよび/またはリバースプライマーを含むことができる。
【0086】
本発明のキットは増幅されたcDNAのインビトロ転写のための試薬も提供しうる。例えば、いくつかの態様において、キットは、以下の成分: RNAポリメラーゼ酵素、IPPase (イノシトールポリホスファート1-ホスファターゼ)酵素、転写緩衝液、Tris緩衝液、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム)、スペルミジン、還元剤(例えば、ジチオスレイトール)、ヌクレオシド三リン酸(ATP、CTP、GTP、UTP)およびアミノアリルUTPの一つまたは複数をさらに含むことができる。
【0087】
別の態様において、キットは、標識されたcDNAサンプルをマイクロアレイとハイブリダイズさせる際に用いるために、インビトロ転写物をCy3またはCy5色素で標識するための試薬を含むことができる。
【0088】
別の態様において、キットは、二本鎖PCR産物を標識するための試薬を含むことができる。例えば、キットはPCR中に、後でアミン反応性のCy色素に化学的にカップリングされうる、アミノアリルdUTPなどの、修飾塩基を組み入れるための試薬を含むことができる。もう一つの例では、キットは、PCR産物を標識するためにグアニン残基にCy色素を直接的に化学結合させるための試薬を含むことができる。
【0089】
別の態様において、キットは、二本鎖PCR産物をシーケンシングするための以下の試薬: Taq DNAポリメラーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、エキソヌクレアーゼI (大腸菌(E. coli))、シーケンシング用プライマー、dNTP、終結(デアザ)ミックス(ミックスG、ミックスA、ミックスT、ミックスC)、DTT溶液およびシーケンシング用緩衝液の一つまたは複数を含むことができる。
【0090】
キットは任意で、mRNA標的の選択的増幅においてキットを用いるための使用説明書を含んでもよい。また、キットには任意で、増幅されたcDNA分子のインビトロ転写のための使用説明書が付与されてもよく、インビトロ転写物を標識し、マイクロアレイとハイブリダイズさせるための使用説明書が付与されてもよい。キットには標識化および/またはシーケンシングのための使用説明書が付与されてもよい。キットには、サンプルを採取した時点でのサンプルのトランスクリプトームを提示する発現ライブラリーを作出するために発現ベクターにPCR産物をクローニングするための使用説明書が付与されてもよい。
【0091】
別の局面において、本発明は、選択的に増幅されたcDNA分子を作出するために核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法を提供する。本発明のこの局面による方法は、(a) 各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分とハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位とを含む、オリゴヌクレオチドの第一の集団を提供する段階、(b) 哺乳類被験体から単離されたRNA鋳型を含むサンプルにオリゴヌクレオチドの第一の集団をアニールする段階; (c) 逆転写酵素を用いてRNAからcDNAを合成する段階; (d) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドの第二の集団を用いて二本鎖cDNAを合成する段階であって、ここで各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する第二のPCR結合部位を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である段階; かつ(e) 二本鎖cDNA分子を精製する段階を含む。いくつかの態様において、この方法は、二本鎖cDNA分子をPCR増幅する段階をさらに含む。図1Cは、本発明のこの局面による方法の代表的な態様を示す。図1Cに示されるように、本方法の一つの態様において、第一のプライマー混合物は、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位(PBS#1)を含み、該ハイブリダイズ部分は、ランダムな9merの集団を含む。
【0092】
別の態様において、本発明は、選択的に増幅されたaDNA分子を作出するために核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法を提供する。図1Dは、本発明のこの局面による方法の代表的な態様を示す。図1Dに示されるように、第一のプライマー混合物は、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位(PBS#1)を含む。この方法は、増幅された二本鎖DNA (aDNA)を作出するために熱安定性DNAポリメラーゼ、第一のPCRプライマー結合部位に結合する第一のPCRプライマーおよび第二のPCRプライマー結合部位に結合する第二のPCRプライマーを用いて二本鎖cDNAをPCR増幅する段階をさらに含む。図1Dに示されるように、いくつかの態様において、この方法は、aDNAの少なくとも一部分をシーケンシングする段階をさらに含む。
【0093】
本明細書において記述される方法および試薬は、本発明のこの局面の実践において有用である。本発明のこの局面にしたがって、第一鎖cDNAから第二鎖DNA分子を合成するために、任意のDNA依存性DNAポリメラーゼを利用することができる。例えば、第二鎖DNA分子を合成するために、DNAポリメラーゼIのKlenow断片を利用することができる。第二鎖DNA分子の合成は、6から9個のヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分を含み、かつハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分をさらに含むオリゴヌクレオチドの第二の集団を用いてプライムされる。
【0094】
前記規定の配列部分は、配列がオリゴヌクレオチドの第一の集団中に含まれる規定の配列と異なるという条件で、任意の適当な配列を含むことができる。プライマー配列の選択に応じて、これらの規定の配列部分は、例えば、第二のDNA分子からDNA依存性RNA合成を選択的に指令するために、および/またはDNA依存性DNA合成を介して二本鎖cDNA鋳型を増幅するために用いることができる。
【0095】
二本鎖DNA分子の精製
第二のDNA分子の合成は、図1Dに示されているように、第一のDNA分子が第二のDNA分子とハイブリダイズされる二本鎖DNA分子の集団を与える。通例、二本鎖DNA分子は、第二のプライマーの全てまたは実質的に全て(すなわち、通例、99%超)など、50塩基対よりも短い実質的に全ての核酸分子を除去するために精製される。好ましくは、精製方法は、実質的に二本鎖であるDNA分子を選択的に精製し、一本鎖プライマーなどの、対を形成していない実質的に全ての一本鎖核酸分子を除去する。精製はサイズ分画カラムを通じた溶出によってなど、当技術分野で認められた任意の手段によって達成することができる。次いで、精製された第二のDNA分子を、例えば、沈殿させ、本発明のこの局面の方法の次の段階に適した緩衝液に再溶解させることができる。
【0096】
二本鎖DNA分子の増幅
本発明のこの局面の方法の実践において、二本鎖DNA分子は、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて酵素的に増幅される鋳型として利用される。ポリメラーゼ連鎖反応をプライムするために、任意の適当なプライマーを用いることができる。通例、二つのプライマーが使用され、一方のプライマーは第一のプライマー配列の規定の部分と(またはその相補鎖と)ハイブリダイズし、他方のプライマーは第二のプライマー配列の規定の部分と(またはその相補鎖と)ハイブリダイズする。
【0097】
PCR増幅条件
一般的に、ポリメラーゼ連鎖反応中の増幅サイクルの数が多くなるほど、得られる増幅されたDNAの量は多くなる。他方で、増幅サイクルが多すぎると、二本鎖DNAのランダムに偏った増幅がもたらされる可能性がある。したがって、いくつかの態様において、増幅サイクルの望ましい数は、5から35などの、5から40増幅サイクルの間、例えば10から30増幅サイクルなどである。
【0098】
温度条件に関しては、通例、サイクルには、95℃などの融解温度、約40℃から70℃まで変動するアニーリング温度、および通例約72℃である伸長温度が含まれる。アニーリング温度に関しては、いくつかの態様において、アニーリング温度は約55℃から65℃、より好ましくは約60℃である。
【0099】
一つの態様において、本発明のこの局面で用いる増幅条件には、(95℃、30秒; 60℃、30秒; 72℃、60秒)の10サイクル、次いで、(95℃、30秒; 60℃、30秒、72℃、60秒の20サイクル(各サイクルごとに、伸長段階に+10秒が付加される))が含まれる。
【0100】
本発明のこの局面の方法で用いるPCR反応成分に関して、dNTPは、通例、50 μMから2000 μM、より好ましくは800から1000 μMのdNTPの範囲内で反応中に存在する。MgCl2は、通例、0.25 mMから10 mMの範囲内で、より好ましくは約4 mMで反応中に存在する。フォワードおよびリバースPCRプライマーは、通例、約50 nMから2000 nMで反応中に存在し、より好ましくは、約1000 nMの濃度で存在する。
【0101】
DNA標識化
DNAチップをスクリーニングするために使われるプローブなどの、ハイブリダイゼーション実験におけるプローブとしての使用を容易にするために、増幅されたDNA分子は、任意で、色素分子により標識されてもよい。蛍光発光体および化学発光体などの、任意の適当な色素分子を利用することができる。増幅されたDNA分子に色素分子を付着させるための例示的な方法は、実施例5に示されている。
【0102】
本発明のこの局面による方法は、例えば、全RNAを含有する生体サンプルでのトランスクリプトーム・プロファイリングに用いることができる。いくつかの態様において、本発明のこの局面の方法にしたがって作出された、第一鎖cDNAでのNSRプライミング(priming)および第二鎖合成での抗NSRプライミングを用いてcDNAから産生された増幅aDNAを、遺伝子発現実験で用いるために標識し、これによって、NSRプライムcDNAから産生された増幅RNAよりも低いバックグラウンドレベルを通例もたらすハイブリダイゼーションに基づく試薬を提供する。
【0103】
本発明のこの局面のいくつかの態様において、第一および/または第二のプライマー結合領域の規定の配列部分は一つまたは複数の制限酵素部位をさらに含み、これによって増幅された部分に隣接した一つまたは複数の制限酵素部位を有する増幅された二本鎖DNA産物の集団を作出する。これらの増幅された産物は、配列解析のために直接使用されてもよく、または制限酵素での消化により放出され、さらなる解析用の発現ベクターなどの、任意の所望のベクターにサブクローニングされてもよい。PCR産物の配列解析は、例えば、Sangerのダイデオキシ鎖終結法、ダイターミネータシーケンシング法、または参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,232,656号(Solexa)に記述されているようにハイスループットシーケンシング法などの、任意のDNAシーケンシング法を用いて行うことができる。
【0104】
別の局面において、本発明は、哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の、核酸分子の標的集団の提示を含む選択的に増幅された核酸分子の集団を提供し、各増幅された核酸分子は、増幅された核酸配列の集団の成員に隣接した5'側の規定の配列部分および3'側の規定配列を含み、ここで選択的に増幅された配列の集団が、哺乳類被験体で発現される標的RNA分子に対応する増幅された核酸配列を含み、特定の哺乳類種に関して以下の特性を有する: (a) 75%を上回るポリアデニル化および非ポリアデニル化転写物を有する、かつ10%未満のリボソームRNA (例えば、rRNA (18Sまたは28S)およびmt-RNA)を有することによって特徴付けられる。
【0105】
本発明のこの局面にしたがって選択的に増幅される核酸分子の集団は、本明細書において記述される本発明の方法を用いて作出することができる。選択的に増幅された核酸分子の集団を発現ベクターにクローニングして、ライブラリーを作出することができる。あるいは、選択的に増幅された核酸分子の集団を基材に固定化して、増幅産物のマイクロアレイを作出することもできる。マイクロアレイは、紙、ガラス、セラミック、プラスチック、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアクリルアミド、ニトロセルロース、シリコン、金属、および光ファイバーからなる群より選択される材料から製造される、固体または半固体の基材に固定化された少なくとも一つの増幅産物を含みうる。増幅産物は、ピン、ロッド、ファイバー、テープ、糸、ビーズ、粒子、マイクロタイターウェル、キャピラリーおよびシリンダーを含む、二次元配置または三次元配置にある固体または半固体基材に固定化されうる。
【実施例】
【0106】
以下の例は、本発明を実践するために現在考えられる最良の様式を例示するものに過ぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0107】
実施例1
本実施例では、哺乳類細胞で発現される全てのまたは実質的に全てのRNA分子とハイブリダイズするが、核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)またはミトコンドリアリボソームRNA (12Sおよび16S mt-rRNA)とハイブリダイズしない、749種の6merオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)の第一の集団(Not-So-Random、「NSR」)の選択について記述する。NSRオリゴの逆相補体である抗NSRオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:750〜1498)の第二の集団も作出した。NSRオリゴの集団は第一鎖cDNA合成をプライムするために用いることができ、抗NSRオリゴの集団は第二鎖cDNA合成をプライムするために用いることができる。
【0108】
原理:
図1Aに示されるように、ランダムな6mer (N6)はRefSeqデータベース由来の(「ヌクレオチド配列」として表した)転写物配列のすべてのヌクレオチド位置でアニールすることができる。逆相補体が核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)ならびにミトコンドリアリボソームRNA (12Sおよび16S mt-rRNA)に完全に一致する6merを差し引いた後、残りのNSRオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)は、図1Bに示されるように、RefSeqデータベース内の(「ヌクレオチド配列」として表した)核酸配列の4〜5ヌクレオチドごとに完全な一致を示す。
【0109】
方法:
各ヌクレオチドがA、T (もしくはU)、CまたはGである、全4,096種の可能な6merオリゴヌクレオチドをコンピュータ処理した。下記表1に示すように、各6merオリゴヌクレオチドの逆相補体を、18Sおよび28S rRNAのヌクレオチド配列と比較し、12Sおよび16SミトコンドリアrRNAのヌクレオチド配列と比較した。
【0110】
(表1)リボソームRNA
【0111】
表1に示したヒト核rRNA転写物の配列のいずれかに対して完全な一致を有する逆相補体6merオリゴヌクレオチド(これは合計で2,781種となった)を除外した。749種の6mer (SEQ ID NO:1〜749)の逆相補体は、rRNA転写物のいずれの部分にも完全に一致しなかった。ミトコンドリアrRNAに対する一致も除外し(566種)、計749種のオリゴ6mer (4096種(全6mer) - 2782種(euk-rRNAに対する一致) - 566種(mito-rRNAに対する一致) = 合計749種)が残った。
【0112】
rRNA遺伝子およびmt-rRNA遺伝子のいずれの部分に対しても完全な一致を持たない749種の6merオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)を「Not-So-Random」(「NSR」)という。したがって、749種の6mer (SEQ ID NO:1〜749)の集団は、18S、28SならびにミトコンドリアrRNA (12Sおよび16S)を除く全ての転写物を増幅することができる。
【0113】
実施例2に記述されているように、NSRオリゴ(SEQ ID NO:1〜749)の集団を用いて第一鎖cDNA合成をプライムすることができ、この後に、ランダムプライマーまたは抗NSRプライマーのいずれかを用いて第二鎖合成を行うことができる。
【0114】
実施例2にさらに記述されるように、抗NSRオリゴ(SEQ ID NO:750〜1498)の集団を用いて、第二鎖cDNA合成をプライムすることができる。図1Cに示されるように、ランダムプライマーを用いて第一鎖cDNA合成を行い、引き続き抗NSRプライマーを用いて第二鎖cDNA合成を行うことができる。あるいは、図1Dに示されるように、NSRプライマーを用いて第一鎖cDNA合成を行い、引き続き抗NSRプライマーを用いて第二鎖cDNA合成を行うこともできる。
【0115】
他の種のRNAサンプルへの適用
ヒト以外の哺乳類(例えば、ラット、マウス)細胞の遺伝子プロファイリングのため、各哺乳類種から18Sおよび28Sに対応する遺伝子のリボソーム核rRNAを差し引くことにより、ならびに12Sおよび16Sに対応する遺伝子のリボソームミトコンドリアrRNAを差し引くことにより、類似の手法を行うことができる。
【0116】
葉緑体リボソームRNAを排除するNot-So-Random (NSR)プライマーの集団を作出することにより、植物細胞の遺伝子プロファイリングも行うことができる。
【0117】
実施例2
本実施例は、NSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いた全RNAの増幅によって、望ましくない、非標的リボソーム配列のプライミングが選択的に低減されることを示す。
【0118】
方法:
新たなプライマーライブラリーを構築するため、プライマーを以下のように個別に合成した。
【0119】
NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:1〜749)の第一の集団および抗NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)の第二の集団を実施例1に記述したように作出した。
【0120】
第一鎖cDNA合成のためのNSR
いくつかの態様において、第一鎖cDNA合成で用いるNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)の第一のプライマーセットは、以下の5'プライマー結合配列:
5'末端に共有結合的に付着された(別名「尾状の」) PBS#1: 5' TCCGATCTCT 3' (SEQ ID NO:1499)
をさらに含み、
以下の構成:
5' PBS#1 (SEQ ID NO:1499) + NSR-6mer (SEQ ID NO:1〜749) 3'
を有するオリゴヌクレオチドの集団をもたらす。
【0121】
別の態様において、各NSR-6merが少なくとも一つのスペーサーヌクレオチド(N) (ここで各N = A、G、CまたはT)を任意で含んでもよく、(N)が5'PBS#1とNSR-6merとの間に位置した、オリゴヌクレオチドの集団を作出した。スペーサー領域は1個のヌクレオチドから10個またはそれ以上までのヌクレオチド(N = 1〜10)を含み、以下の構成を有するオリゴヌクレオチドの集団をもたらしうる:
5' PBS#1 (SEQ ID NO:1499) + (N1〜10) + NSR-6mer (SEQ ID NO:1〜749) 3'。
【0122】
第二鎖cDNA合成のための抗NSR
いくつかの態様において、第二鎖cDNA合成で用いる抗NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)の集団は、以下の5'プライマー結合配列:
抗NSR-6merプライマーの5'末端に共有結合的に付着された(別名「尾状の」) PBS#2: 5' TCCGATCTGA 3'(SEQ ID NO:1500)、
をさらに含み、
以下の構成:
5' PBS#2 (SEQ ID NO:1500) + 抗NSR-6mer (SEQ ID NO:750〜1498) 3'
をもたらす。
【0123】
別の態様において、各抗NSR-6merが少なくとも一つのスペーサーヌクレオチド(N) (ここで各N = A、G、CまたはT)を任意で含んでもよく、(N)が5'PBS#2と抗NSR-6merとの間に位置した、オリゴヌクレオチドの集団を作出した。
【0124】
スペーサー領域は1個のヌクレオチドから10個またはそれ以上までのヌクレオチド(N = 1〜10)を含み、以下の構成を有するオリゴヌクレオチドの集団をもたらしうる:
5' PBS#2 (SEQ ID NO:1500) + (N1〜10) + 抗NSR-6mer (SEQ ID NO:750〜1498) 3'。
【0125】
フォワードおよびリバースプライマー(PCR増幅用)
PBS#1 (SEQ ID NO:1499)で尾部付けしたNSR-6merおよびPBS#2 (SEQ ID NO:1500)で尾部付けした抗NSR-6merを用いて作出された二本鎖cDNAを増幅するために、以下のフォワードおよびリバースプライマーを合成した。
NSR_F_SEQプライマー1:
ここで各N = G、A、CまたはT。
NSR_R_SEQプライマー1:
ここで各N = G、A、CまたはT。
【0126】
上記の態様において、フォワードプライマー(SEQ ID NO:1501)およびリバースプライマー(SEQ ID NO:1502)の最も5'側の領域はそれぞれ、10merの(N)ヌクレオチド配列を含む。別の態様において、フォワードプライマー(SEQ ID NO:1501)およびリバースプライマー(SEQ ID NO:1502)の最も5'側の領域はそれぞれ、増幅されたPCR産物のDNAシーケンシングを容易にするために少なくとも20個の(N)ヌクレオチド、少なくとも30個の(N)ヌクレオチドまたは少なくとも40個の(N)ヌクレオチドなどの、10個を上回る(N)ヌクレオチドを含む。
【0127】
対照プライマー
ランダムプライマーのプールで増幅された対照反応物を増幅するために、以下のプライマーを用いた。
【0128】
以下のプライマー結合部位をランダムプライマーに付加した:
。
【0129】
ランダムプライマー(N=7もしくはN=9)、またはNSRプライマーの付いた以下のプライマー結合部位:
Y4R-N7 (第1鎖cDNA):
[ここでN = A、G、CまたはT]
Y4R-NSR (第1鎖cDNA):
グロビン(αまたはβ)に対する完全な一致なし、rRNA (18S、28S)に対する完全な一致なしの6-mer NSRオリゴのコアセットを含むNSRプライマーに共有結合的に付着された
Y4F-N9 (第2鎖cDNA合成):
[ここでN = A、G、CまたはT]
。
【0130】
その他任意のプライマープールの構成
増幅されたcDNA産物に転写プロモーターを付加するためにNSRプールに共有結合的に付着されたプライマー結合部位として使用されうるさらなるプライマー:
。
【0131】
RNAを増幅するために用いたプライマープールの構成
プライマーを上記のように個別に合成し、以下の構成でプールし、次いでプライマープールを用いて、下記のように全RNAから増幅された核酸のライブラリーを作出した。
【0132】
(表2)プライマープールの構成
PM = プライマーの最も3'側の6ntで完全な一致
R = rRNA (18Sまたは28S)
M = mt-rRNA (12Sまたは16S)
G = グロビン(HBA1、HBA2、HBB、HBD、HBG1、HBG2)
【0133】
(表3)RNA増幅実験で用いるプライマーセット
【0134】
cDNA合成およびPCR増幅
プロトコルには次のように3段階の増幅手法が含まれた: (1) 第一のプライマー結合部位(PBS#1)を含むNSRプライマーでプライムされる逆転写によってRNAから第一鎖cDNAを作出し、NSRプライム第一鎖cDNAを作出した; (2) 第二のプライマー結合部位(PBS#2)を含む抗NSRプライマーで第二鎖cDNA合成をプライムした; かつ(3) 合成されたcDNAを、第一および第二のプライマー結合部位に結合するフォワードおよびリバースプライマーを用いてPCR増幅し、増幅DNA (aDNA)を作出した。
【0135】
(表4)第一および第二鎖合成に用いたプライマー
【0136】
反応条件:
細胞株Jurkat (Tリンパ球、ATCC番号TIB-152)およびK562 (慢性骨髄性白血病、ATCC番号CCL-243)の場合、Ambion, Inc. (Austin, Texas)から全RNAを入手した。
【0137】
第一鎖逆転写:
第一鎖逆転写を以下のように行った。
【0138】
以下を混ぜ合わせる:
・1 μg/μlのJurkat全RNA鋳型(Ambion, Inc. (Austin, Texas)から入手した) 1 μl
・100 μMのNSRプライマープール原液(表2に記述したように) 2 μl
・最終容量を10 μlとするためにH2O 7 μl。
【0139】
混合し、70℃で5分間インキュベートし、氷上で急冷した。
【0140】
以下を含有するRTカクテル(氷上で調製) 10 μlを添加した:
・5×First Strand Buffer (250 mM Tris-HCL, pH 8.3, 375 mM KCl, 15 mM MgCl2) 4 μl
・25 mM dNTP (高) 1.6 μlまたは10 mM dNTP (低) 1.0 μl
・H2O 1 μl
・0.1 M DTT 1 μl
・RNAse OUT (Invitrogen) 1 μl
・MMLV逆転写酵素(200単位/μl) (SuperScript III(商標) (SSIII), Invitrogen Corporation, Carlsbad, California) 1 μl。
【0141】
サンプルを混合し、23℃で10分間インキュベートし、(「ホットスタート」をもたらすために)予め加温された40℃のサーマルサイクラーに移し、次いでサンプルを40℃で30分間、70℃で15分間インキュベートし、4℃まで冷却した。
【0142】
次いでRNAse H (1〜4単位/μl) 1 μlを添加し、サンプルを37℃で20分間インキュベートし、次いで95℃まで5分間加熱し、4℃で急冷した。
【0143】
第二鎖合成:
第二鎖合成カクテルを以下のように調製した:
・10×Klenow緩衝液10 μl
・抗NSRプライマー(100 μM) 4 μl
・10 mM dNTP 5.0 μl
・H2O 56.7 μl
・Klenow酵素(5 U/μl) 0.33 μl
【0144】
第二鎖合成カクテル80 μlを第一鎖鋳型反応混合液20 μlに添加し、混合し、37℃で30分間インキュベートし、次に4℃で急冷した。
【0145】
cDNA精製:
得られた二本鎖cDNAを、Ambion (Message Amp(商標) II aRNA Amplification Kit, Ambion Cat #AM1751)から入手したSpin Cartridgeおよびキット中に供給されている緩衝液により、製造元の指示書にしたがって精製した。全容量30 μlをカラムから溶出し、このうち20 μlを以後のPCRに用いた。
【0146】
PCR増幅:
精製されたcDNA鋳型(5分の1希釈した) 1 μlに以下の混合液を添加した:
・5×Roche Expand Plus PCR Buffer 10 μl
・10 mM dNTPS 2.5 μl
・フォワードPCRプライマー(10 μM原液) (SEQ ID NO:1501) 2.5 μl
・リバースPCRプライマー(10 μM原液) (SEQ ID NO:1502) 2.5 μl
・Taq DNAポリメラーゼ酵素0.5 μl
・H2O 27 μl
・25 mM MgCl2 4 μl。
【0147】
PCR増幅条件:
PCRプログラム#1:
94℃、2分間
94℃、10秒間
以下を8サイクル:
・60℃、10秒間
・72℃、60秒間
・72℃、60秒間
・94℃、15秒間
以下を17サイクル:
・60℃、30秒間
・72℃、60秒間 + 10秒/サイクル
仕上げのために72℃、5分間、それから4℃で冷却した。
【0148】
PCRプログラム#2:
94℃、2分間
94℃、10秒間
以下を2サイクル:
・40℃、10秒間
・72℃、60秒間
・72℃、60秒間
・94℃、10秒間
以下を8サイクル:
・60℃、30秒間
・72℃、60秒間
・72℃、60秒間
・94℃、15秒間
以下を15サイクル:
・60℃、30秒間
・72℃、60秒間 + 10秒/サイクル
仕上げのために72℃、5分間、それから4℃で冷却した。
【0149】
cDNA合成の結果:
結果を(1) 増幅されたDNA「aDNA」収量の測定; (2) cDNA中の種の集団が等しく提示されたことを確認するためのアガロースゲル上でのaDNAのアリコットの評価; および(3) qPCRによる選択したレポーター遺伝子の増幅レベルの測定(実施例3に記述されているように)という点で解析した。
【0150】
PCR産物を2%アガロースゲル上で解析した。PCR増幅プログラム#2を用いて対照反応でも試験条件でもともに100〜1000 bp間のDNAスメアが観察され、複数のRNA種のcDNA合成およびPCR増幅が成功したことが示唆された。PCR増幅プログラム#1を用いると、100〜100 bp範囲内のDNAスメアの存在から判定されるように対照反応は成功していたが、試験条件のいずれもDNAスメアに増幅されるものはなかった。その代わりに、プライマーダイマーから生じた可能性が高い低分子量の断片(未精製PCR産物)が観察された。それゆえ、これらの結果は、低温アニーリング(40℃)が、短い(10 nt)増幅尾部でのPCR増幅には重要であることを示唆している。
【0151】
第一鎖cDNA合成中の高いdNTP濃度(25 mM)では、低いdNTP濃度(10 mM)のdNTPと比べてcDNA産物の特異性が高くなることも分かった(データ不掲載)。
【0152】
第一鎖cDNA合成のためにのみNSRプライマープールを用い、その後、ランダムプライム第二鎖合成を行う場合、RNAse H処理によって増幅rRNA由来の混入の量が減ることもさらに分かった。しかしながら、第一鎖合成をプライムするためにNSRプライマーを用い、その後、第二鎖合成をプライムするために抗NSRプライマーを用いた場合、RNAse処理が、得られるcDNA産物の特異性に影響を与えるとは認められなかった。特異性を高めるのに重要ではないが、抗NSRプライマーを用いた第二鎖cDNA合成にRNAseを加え、Klenow反応中に鋳型として利用可能なさらに多くのcDNAを作出することにより反応の効率を高めることができる。
【0153】
要約すれば、第二鎖合成中に抗NSRプライマーを用いることは、標的核酸分子の選択的増幅にいくつかの予期せぬ利点をもたらすことが分かった。例えば、抗NSRプライマーを用いた第二鎖合成中のrRNA枯渇の大きさは、逆転写中にNSRプライマーを用いて認められたrRNA枯渇の大きさにほぼ等しいことが意外にも分かった。さらに、第二鎖合成中のプライミング特異性がKlenow酵素を用いた標準的な反応条件の下で達成されることは予期せぬ結果であった。これらの結果から、短いオリゴヌクレオチドを用い種々のポリメラーゼおよび核酸鋳型によってDNA合成を特異的にプライムできるが、プライミング特異性を決定付ける反応条件は酵素特異的でありうることが示唆される。
【0154】
実施例3
本実施例は、第一鎖cDNA合成用の749種のNSR 6-mer (SEQ ID NO:1〜749) (5'末端に共有結合的に付着されたPBS#1 (SEQ ID NO:1499に加えてNスペーサー)をそれぞれが有する)、その後、749種の抗NSR 6-mer (SEQ ID NO:750〜1498) (5'末端に共有結合的に付着されたPBS#2 (SEQ ID NO:1500に加えてNスペーサー)をそれぞれが有する)によって、全RNAを含有するサンプル中に存在するトランスクリプトームのかなりの部分の増幅がプライムされることを示す。
【0155】
方法:
実施例2に記述のPCR増幅の後、各PCR反応液を、Qiagen MinEluteスピンカラムを用いて精製した。カラムを80%エタノールで洗浄し、溶出用緩衝液20 μLで溶出した。NanoDrop機器を用いUV/VIS分光計で収量を定量化した。次いでサンプルを希釈し、以下のアッセイ法を用いて定量的PCR (qPCR)により特徴付けた。
【0156】
7900 HT PCR機器(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用い384ウェル光学PCRプレート中で定量的PCR (qPCR)により最終の反応容量10 μlにてcDNA 2 μlの二重測定を行った。下記の表5および表6に示したプローブを用いたABI TaqMan(登録商標)により、製造元の推奨条件を用いてqPCRを行った。
【0157】
(表5)Jurkat細胞のためのレポーター遺伝子アッセイ法
【0158】
(表6)レポーター遺伝子プローブ
【0159】
qPCRの後、結果の表をExcel (Microsoft Corp., Redmond, WA)に出力し、サンプルに対する定量的解析を生データから回帰分析した(存在量 = 10[(Ct-5)/-3.4])。
【0160】
結果:
図3Aはランダムプライマーを用いて作出された非増幅cDNAと比べて(N8 = 100%)、表4に示した各種のNSRプールを用いて作出された第一鎖cDNAの合成に関する18S、28S、12Sおよび16Sの相対存在量(遺伝子およびN8に対して規準化した)を示した対数目盛のヒストグラムプロットである。図3Aに示されるように、第一鎖cDNA合成用のNSR#1 + NSR#3 (mt-rRNAまたはrRNAとハイブリダイズしないNSR-6mer)を含むプライマープールならびに第二鎖合成用のプライマープール抗NSR#5および抗NSR#7を用いて作出されたcDNAは、ランダムな8-merで作出されたcDNAと比べてrRNAの存在量の大幅な減少(0.086% 18S; 0.673% 28S)ならびにmt-rRNAの存在量の減少(1.807% 12S; および8.512% 16S)を示した。
【0161】
図3Bは第一鎖合成にも第二鎖合成にもランダムプライマー(N7)を用いて増幅された対照cDNAにおける核リボソームRNA (18Sまたは28S)の存在量の相対レベル(N7>N7 = 100% 18S、100% 28S)を、第一鎖にはNSR-6merプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖にはランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR-6mer>N7 = 3.0% 18S、3.4% 28S)、および第一鎖にはNSR-6merプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖には抗NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR-6mer>抗NSR-6mer = 0.1% 18S、0.5% 28S)図示している。図3C中の結果は、ミトコンドリアrRNAを測定した場合に、N7>N7 = 100% 12Sまたは16S; NSR-6mer>N7 = 27% 12S、20.4% 16S; およびNSR-6mer>抗NSR-6mer = 8.2% 12S、3.5% 16Sとなり、類似の傾向を示す。
【0162】
各種のNSRおよび抗NSRプールを用いて合成されたcDNAから作出されPCR増幅されたaDNAが、対応するcDNAに存在する標的遺伝子の発現プロファイルを保っていたかどうかを判定するために、9種のランダムに選択したTaqMan試薬で定量的PCR解析を行い、以下の遺伝子: PPIA、SRP14、STMN1、TRIM63、ACTB、DBN1、EIFS3、GAPDHおよびNUCB2を検出した。表7および図4Aに示すように、NSRおよび抗NSRプライムcDNAならびにそれから作出されたaDNAの両方でアッセイされた9種の遺伝子に関して(cDNA鋳型10 μlを投入して判定した場合)、測定可能なシグナルが測定された。
【0163】
(表7)定量的PCR解析
1= FAM 10
2= FAM1000
3= Hs99999901
【0164】
図4AはPPIA、SRP14、STMN1、TRIM63、ACTB、DBN1、EIF3S3、GAPDHおよびNUCB2に対する代表的な遺伝子特異的アッセイのセットを用いて判定した場合の、第一鎖合成中に各種のNSRプライマーを、および第二鎖合成中に抗NSRプライマーまたはランダムプライマーを用いて増幅されたcDNAの遺伝子特異的なポリA含量を図示している。
【0165】
図4Aに示したポリA含量の相対存在量は、投入量を調整済みで、生データの、転写物による個別のrRNAアッセイの存在量値を最初に組み合わせることによって計算された。まとめた(collapsed) rRNA転写物の存在量値を、遺伝子含量が1.0に等しくなるように各サンプル調製物のなかで測定したNUCB2遺伝子レベルに対して規準化した。次に増幅サンプルに対し計算したrRNA/遺伝子比を、N8が各rRNA転写物について100に等しくなるように非増幅対照(N8)で得たものに対して規準化した。したがって、N8を各遺伝子の存在量レベルに対する基準値として用いた。
【0166】
図4Aおよび図4Bに対する図の説明に関して、表2および表3に関連して、saNSR.1とは、第一鎖合成にはNSR#1プライマープールを用い、第二鎖合成には抗NSR#5プライマープールを用いて増幅された(すなわち第一および第二鎖合成中rRNA、mt-rRNAおよびグロビンを枯渇した)cDNAをいう。saNSR.1+2とは、第一鎖合成にはNSR#1+#2プライマープールを用い、第二鎖合成には抗NSR#5+#6プライマープールを用いて増幅された(すなわち第一および第二鎖の両合成中rRNAおよびグロビンを枯渇したが、mt-rRNAを枯渇しなかった)cDNAをいう。saNSR.1+3とは、第一鎖合成にはNSR#1+#3プライマープールを用い、第二鎖合成には抗NSR#5+#7プライマープールを用いて増幅された(すなわち第一および第二鎖の両合成中rRNAおよびmt-rRNAを枯渇したが、グロビンを枯渇しなかった)cDNAをいう。saNSR.1+4とは、第一鎖合成にはNSR#1+#4プライマープールを用い、第二鎖合成には抗NSR#5+#8プライマープールを用いて増幅された(すなわち第一および第二鎖の両合成中rRNAを枯渇したが、mt-rRNAおよびグロビンを枯渇しなかった)cDNAをいう。Y4R-NSRとは、第一鎖合成にはグロビン(αまたはβ)に対する完全な一致なし、rRNA (18S、28S)に対する完全な一致なしの6-mer NSRオリゴのコアセットを含むNSRプライマーを用い、第二鎖合成にはランダムな9-merプライマーを用いて増幅された(すなわち第一鎖合成中グロビンおよびrRNAを枯渇したが、mt-rRNAを枯渇せず、第二鎖合成中いずれの配列も枯渇しなかった)cDNAをいう。Y4-N7とは、第一および第二鎖合成中ランダムな7-merプライマーを用いて増幅されたcDNAをいう。最後に、N8とは、ランダムな8merを用いた第一鎖合成(第二鎖合成なし)をいう。
【0167】
図4Aに示されるように、第一鎖合成のためのNSRプライミングにより、遺伝子TRIM63を除いて、ランダムプライマーと少なくとも同じくらい効率的に遺伝子特異的な転写物が増幅された。
【0168】
図4Bは、第一鎖cDNA合成中さまざまなNSRプライマーを用いてJurkat-1およびJurkat-2全RNAから増幅されたcDNA中の非ポリアデニル化RNA転写物の相対的な存在量レベルを図示している。図4Bに示されるように、NSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いて増幅されたcDNA中の遺伝子特異的な含量は、rRNAおよびmt-rRNA含量が減少するのにつれて濃縮されている。これは、NSR依存的なrRNAの枯渇が一般的効果ではなく、むしろ、除去の標的とした転写物に特異的であることを実証している。これらの結果は、ポリAマイナスおよびポリAプラスの両転写物がNSR-PCRを用いて再現性良好に増幅されることも実証している。
【0169】
図5は、ランダムプライマープールN8 (増幅なし)を用いて作出されたcDNAで測定したJurkat/K562 mRNA発現データのlog比と対比して、プライマープールNSR#1+#3 (x軸)を用いて作出されたcDNAで測定したJurkat/K562 mRNA発現データのlog比を図示している。この結果は、異なるサンプル中の伝令RNAの相対存在量がNSRプライミングおよびPCR増幅を通じて保存されていることを示す。
【0170】
図6Aは、従来の方法を用いてポリA精製後に通例得られる全RNA中のrRNAとmRNAとの割合を図示している。図6Aに示されるように、ポリA精製の前には、哺乳類細胞から単離された全RNAはおよそ98%のrRNAおよびおよそ2%のmRNAならびにその他のもの(非ポリA RNA)を含んでいる。図のように、ポリA精製を用いた全RNAからのrRNAの95%除去後でさえ、残存するRNAは約50%のrRNAおよび50%のmRNAの混合物からなる。
【0171】
図6Bは、第一鎖cDNA合成中にNSRプライマーを用い、第二鎖cDNA合成中に抗NSRプライマーを用いて調製されたcDNAサンプル中のrRNAとmRNAとの割合を図示している。図6Bに示されるように、全RNAからcDNAを作出するためにNSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いることは、99.9%のrRNA (核およびミトコンドリアのrRNAを含む)を除去するのに有効であり、95%を上回るmRNAの濃縮されたcDNA集団をもたらす。これはいくつかの理由で非常に重要な結果である。第一に、mRNAのポリA尾部とのプライマーの結合に依るポリA精製または戦略を用いることは、例えば、miRNAおよび関心対象の他の分子などの、非ポリA含有RNA分子を排除してしまい、それゆえ、トランスクリプトームの豊富さに寄与する核酸分子を排除してしまう。対照的に、cDNA合成中のNSRプライマーおよび抗NSRプライマーの使用を含む本発明の方法は、ポリA選択を必要とせず、それゆえ、トランスクリプトームの豊富さを保存している。第二に、cDNA合成中にNSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いることは、99.9%のrRNAを除去してcDNAを作出するのに有効であり、図6Bに示されるように、rRNAの混入が10%未満でcDNAをもたらす。これは、図6Aに示されるように、98%のrRNAを除去するに過ぎず、およそ50%のmRNAおよび50%のrRNAが混入した状態でcDNAをもたらす、ポリA精製されたmRNAかつランダムプライマーを用いたcDNA合成とは対照的である。
【0172】
結論:
これらの結果は、NSR #1+#3プライマープール(SEQ ID NO:1〜749)および抗NSRプライマープール(SEQ ID NO:750〜1498)が、それぞれ、第一鎖および第二鎖cDNA合成のために驚くべき効果を発揮し、不要なrRNAおよびmt-rRNAが低レベル(10%未満)のままで、標的遺伝子(ポリアデニル化および非ポリアデニル化RNAを含む)が実質的に濃縮されている二本鎖cDNA産物をもたらすことを実証している。
【0173】
実施例4
本実施例は、第一鎖cDNA合成用の749種のNSR-6mer (SEQ ID NO:1〜749) (スペーサーNおよび5'末端に共有結合的に付着されたPBS#1 (SEQ ID NO:1499)をそれぞれが有する)の使用、ならびに749種の抗NSR-6mer (SEQ ID NO:750〜1498) (スペーサーNおよび5'末端に共有結合的に付着されたPBS#2 (SEQ ID NO:1500)をそれぞれが有する)の使用により、増幅されたcDNAの配列解析によって判定した場合に、トランスクリプトーム(ポリA+およびポリA-の両方)のかなりの部分の増幅がプライムされ、全RNA中に存在する不要な非標的配列ではプライムされないことを示す。
【0174】
方法:
実施例2に記述されている方法により、表8に示した各種のプライマープールとともに、第一鎖cDNA合成用の749種のNSR-6mer (SEQ ID NO:1〜749) (スペーサーNおよび5'末端に共有結合的に付着されたPBS#1 (SEQ ID NO:1499)をそれぞれが有する)を用い、749種の抗NSR-6mer (SEQ ID NO:750〜1498) (スペーサーNおよび5'末端に共有結合的に付着されたPBS#2 (SEQ ID NO:1500)をそれぞれが有する)を用いて、cDNAを作出した。
【0175】
(表8)cDNAを選択的に増幅するために用いたプロトコル
【0176】
cDNA産物を実施例2に記述されているようにPCR増幅し、カラム精製した。次いで、カラム精製したPCR産物をpCR-XL TOPOキット(Invitrogen)によってTOPOベクターにクローニングした。TOPOライゲーション反応をPCR産物1 μl、水4 μlおよびベクター1 μlで行った。化学的にコンピテントなTOP10 One Shot細胞(Invitrogen)を形質転換し、LB+Kan (50 μg/mL)上にプレーティングし、37℃で終夜増殖させた。PCR増幅を用い挿入断片についてコロニーをスクリーニングした。2%アガロースゲル解析によって、全てのクローンが少なくとも100 bpの挿入断片を有することが分かった(データ不掲載)。
【0177】
次いで、これらのクローンをDNA配列解析用の鋳型として用いた。rRNA種およびゲノムとの相同性について判定するため、得られた配列を公開データベースに対して検索した。
【0178】
結果:
表9は、表8に示した各種のプライマープールを用いて合成されたcDNAから作出されたPCR産物の配列解析の結果を示す。
【0179】
(表9)選択的に増幅されたcDNAから作出されたaDNAのDNA配列解析の結果
1 = 公開データベースとの配列アライメントによって判定した場合にエキソン、イントロンおよびUTR領域を含め任意の公知遺伝子またはmRNAと重複することを測定した。
2 = 公開データベースとの配列アライメントによって判定した場合に遺伝子間領域とのアライメントまたは反復要素と重複することを測定した。
【0180】
結論:
これらの結果は、実施例2に記述されるようにNSR 6-mer (SEQ ID NO:1〜749)、および抗NSR6-mer (SEQ ID NO:750〜1498)を用いて作出された二本鎖cDNA鋳型から増幅されたaDNA (PCR産物)が核リボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAと比べて標的遺伝子の濃縮を維持したことを実証する。
【0181】
実施例5
本実施例は、遺伝子発現モニタリングの用途で引き続き用いるためaDNA (PCR産物)を標識するのに有用である方法について記述する。
【0182】
1. PCR産物に対する蛍光標識の直接的な化学的カップリング
Cy3 およびCy5直接標識キットをMirus (Madison, Wisconsin, キットMIR製品番号3625および3725)から入手した。
【0183】
実施例2に記述されているように得たPCR産物(aDNA) 10 μgを、製造業者によって記述されているように標識化試薬とともにインキュベートした。標識化試薬はCy3またはCy5を核酸サンプルに共有結合的に付着し、これは遺伝子発現モニタリングなどの、ほぼどんな分子生物学用途にも使用することができる。次いで、標識されたaDNAを精製し、その蛍光を出発標識と比べて測定した。
【0184】
結果:
四つのaDNAサンプルを上記のように標識し、蛍光を測定した。0.9〜1.5%の範囲の標識保持が全四つの標識aDNAサンプルにおいて認められた(言い換えれば0.9〜1.5%の標識化効率といえる)。これらの結果は、aaUTP標識され、インビトロ翻訳され、増幅されたRNAで通例認められる1%〜3%の標識化効率の範囲内にある。
【0185】
2. aa標識された一本鎖aDNAをもたらすための、一方のプライマー(フォワードまたはリバース)を使いaDNA鋳型を用いたPCR中のアミノアリル修飾dUTP (aadUTP)の取り込み
方法:
実施例2に記述されているようにNSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いて作出されたaDNA PCR産物1 μgを、次のようにPCR反応混合液に添加する:
・100〜1000 μMのaadUTP+dCTP+cATP+dGTP+dUTP (aadUTP〜dUTPの最適バランスは日常の実験操作を用いて経験的に判定することができる)
・4 mM MgCl2
・400〜1000 nMのフォワードプライマーのみまたはリバースプライマーのみ、しかし両方ともにではない。
【0186】
PCR反応:
5〜20サイクルのPCR (94℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 30秒)。その間に二本鎖PCR鋳型の片鎖のみが合成される。PCRの各サイクルはaa標識された一本鎖aDNAの一コピーをもたらすものと予想される。次いでこのPCR産物を精製し、Cy3またはCy5標識を標準的な化学的カップリングによって取り込む。
【0187】
3. aa標識された二本鎖aDNAをもたらすための、フォワードおよびリバースプライマーを使いaDNA鋳型を用いたPCR中のアミノアリル修飾dUTP (aadUTP)の取り込み
方法:
実施例11に記述されているようにNSR7プライマープールを用いて作出されたaDNA PCR産物1 μgを、次のようにPCR反応混合液に添加する:
・100〜1000 μMのaadUTP+dCTP+cATP+dGTP+dUTP (aadUTP〜dUTPの最適バランスは日常的な実験操作を用いて経験的に判定することができる)
・4 mM MgCl2
・400〜1000 nMのフォワードおよびリバースプライマー(例えば、フォワード: SEQ ID NO:1501; またはリバース: SEQ ID NO:1502)。
【0188】
PCR反応:
5〜20サイクルのPCR (94℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 30秒)。その間に二本鎖PCR鋳型の両鎖が合成される。次いで二本鎖の、aa標識aDNA PCR産物を精製し、Cy3またはCy5標識を標準的な化学的カップリングによって取り込む。
【0189】
実施例6
本実施例は、遺伝子発現解析用の一本鎖DNA分子を作出するのに有用な増幅された核酸鋳型を作出するための、NSR-6merに共有結合的に連結されたハイブリッドRNA/DNAプライマーの使用について記述する。
【0190】
原理:
本発明の選択的増幅方法の一つの態様において、第一鎖cDNA合成のための第一のオリゴヌクレオチド集団の規定の配列部分(例えば、PBS#1)、および/または第二鎖cDNA合成のための第二のオリゴヌクレオチド集団の規定の配列部分(例えば、PBS#2)は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,946,251号に記述されているように、鎖置換を用いてDNA産物の複数コピーを作出するのに適した、増幅された核酸鋳型を作出するためのRNA部分を含む。ハイブリッドNSRプライマー(PBS#1(RNA/DNA)/NSR)を用いて第一鎖cDNAを合成し、それによって、鋳型RNAに相補的な配列を有する一本鎖DNAの合成用の鋳型として用いるのに適した産物を作出することができる。あるいは、以下でさらに詳細に記述するように、RNA/DNAハイブリッドプライマー尾部を第二鎖合成後に付加することもできる。
【0191】
この方法がもたらす一つの利点は、増幅産物それ自体の増幅ではなく、オリジナルのcDNA配列の複数の一本鎖増幅産物を作出する能力である。
【0192】
方法:
1. 第一鎖cDNA合成のためのRNA:DNAハイブリッドNSR
いくつかの態様において、第一鎖cDNA合成で用いるNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)の集団は、ハイブリッドPBS#1などの、5'プライマー結合配列(RNA)をさらに含むことができる:
NSRプライマーの5'末端に共有結合的に付着されたハイブリッドPBS#1 (RNA)
。
【0193】
以下の構成を有するDNAハイブリダイズ部分の5'側に位置したRNAの規定の配列部分を持つRNA:DNAハイブリッドオリゴヌクレオチドの集団がもたらされる:
5'ハイブリッドPBS#1 (RNA) (SEQ ID NO:1557) + NSR6-mer (DNA) (SEQ ID NO:1〜749) 3'。
【0194】
別の態様において、各NSR6-merが少なくとも一つのDNAスペーサーヌクレオチド(N) (ここで各N = A、G、CまたはT)を任意で含んでもよく、(N)が5'ハイブリッドPBS#1 (RNA)とNSR6mer (DNA)との間に位置した、オリゴヌクレオチドの集団を作出することができる。スペーサー領域は1個のヌクレオチドから10個またはそれ以上までのヌクレオチド(N = 1〜10)を含み、以下の構成を有するオリゴヌクレオチドの集団をもたらしうる:
5'ハイブリッドPBS#1 (RNA) (SEQ ID NO:1557) + (N1〜10) (DNA) + NSR6-mer (SEQ ID NO:1〜749) (DNA) 3'。
【0195】
第一鎖cDNAを調製する過程は、本質的には実施例2に記述されているように、PBS#1 (SEQ ID NO:1499) (DNA)の代わりにハイブリッドPBS#1 (SEQ ID NO:1557) (RNA)を用い、RNAseH-の逆転写酵素を用い、かつ第二鎖cDNA合成の前にRNAseHを添加せずに行って、一本鎖DNA産物の増幅のための二本鎖基質を作出する。
【0196】
一本鎖増幅のための基質は、好ましくは、RNA/DNAハイブリッド分子からなる第一鎖および全てDNAからなる第二鎖を有する二本鎖鋳型からなる。この二本鎖鋳型を構築するために、RNAseH-の逆転写酵素を用いて第二鎖合成を行う。あるいは、KlenowはRNAを鋳型として用いないので、Klenowを用いて、さらに引き続いてRNAseH-の逆転写酵素での洗練(polished)段階を用いて、第二鎖合成を行うこともできる。
【0197】
第二鎖cDNA合成はランダムプライマーを用いて、または抗NSRプライマーを用いて行うことができる。第一鎖cDNA合成中にRNAハイブリッド/NSRプライマー集団を用いることで、合成された一本鎖cDNA産物へのハイブリッドプライマーのRNA部分の固有配列の取り込みが起こる。
【0198】
次いで、標的RNA配列と同一である一本鎖DNA増幅産物を上記の二本鎖鋳型から、変性し、変性した基質をRNAseH処理して基質のRNA部分を除去し、例えば、phi29などの、プロセッシング力の高い鎖置換DNAポリメラーゼの存在下で基質にハイブリッドRNA/DNA一本鎖増幅プライマー、例えば、
(ここで、プライマーの5'部分が第一鎖cDNA上の所定の配列とハイブリダイズする少なくとも11個のRNAヌクレオチド(下線を引いた)からなり、3'部分が少なくとも3個のDNAヌクレオチドからなる)を添加することによって作出することができる。
【0199】
代替的な態様において、一本鎖DNA増幅のための基質は、DNAプライマー(例えば、NSRプライマーまたはランダムプライマー)を用いた第一鎖cDNA合成、その後、DNAプライマー(例えば、抗NSRプライマーまたはランダムプライマー)を同様に用いたKlenowでの第二鎖合成の調製によって調製することができる。次いで、二本鎖DNA鋳型を、変性し、第二鎖cDNAとハイブリダイズするRNA/DNAハイブリッドオリゴヌクレオチドをアニールし、逆転写酵素でハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチドを伸長させて、一方の鎖がRNA/DNAハイブリッド分子からなる、かつもう一方の鎖が全てDNAからなる二本鎖鋳型を作出することにより改変して、一本鎖DNA増幅のための基質を産生する。
【0200】
次いで、標的RNA配列に相補的である一本鎖DMA増幅産物を二本鎖基質から、変性し、変性した基質をRNAseH処理して基質のRNA部分を除去することにより作出することができる。次いで、ハイブリッドプライマーの5'部分が第二鎖cDNA上の所定の配列とハイブリダイズする少なくとも11個のRNAヌクレオチドからなり、ハイブリッドプライマーの3'部分が少なくとも3個のDNAヌクレオチドからなる、ハイブリッドRNA/DNA一本鎖増幅プライマーを第二鎖にアニールする。次いで、例えば、phi29などの、プロセッシング力の高い鎖置換DNAポリメラーゼを用いて、一本鎖DNA産物を作出する。
【0201】
実施例7
本実施例は、NSRプライマーを用いて全RNAから増幅されたcDNA中のポリA+およびポリA-転写物の堅固な検出について記述する。
【0202】
原理:
トランスクリプトーム全体、すなわち、所与の瞬間に細胞および組織内に存在するRNA分子の一群全体は、RNAが収集された瞬間の、サンプルの生物学的状態に関する豊富な痕跡を保有している。しかしながら、全RNAに関する生化学的な現実は、そのうちの圧倒的多数が、細胞活動に関する情報を相対的にほとんど与えない細胞質リボソームおよびミトコンドリアリボソームの構造サブユニットをコードしているということである。その結果、大規模の転写研究のために、非リボソームRNAに対する親和性タグとしての3'ポリアデニル化配列の活用などの、より情報量の多い低コピー転写物を濃縮する分子技術が開発されている。ポリA+ RNA転写物の標的化シーケンシングは、現行の遺伝子モデルの基礎となるcDNA断片の豊富な礎になっている(例えばHsu F. et al., Bioinformatics 22:1036-1046 (2006)を参照のこと)。ポリA配列からのcDNA合成のプライミングも、最もよく実践されているゲノム規模のRNAプロファイリング法に使われている。
【0203】
これらの方法は伝令RNA発現の解析には非常にうまくいったが、ポリA+ 転写物に厳密に焦点を合わせた方法では全体的な転写活性に対する知見が不完全である。ポリAプライミングでは、選択的スプライシング事象および選択的転写開始部位などの、3'ポリA部位より遠位の情報をとらえられないことが多い。従来の方法でも、ヒストンデアセチラーゼのタンパク質サブユニットをコードするものおよび多くの非コード化RNAを含め非ポリアデニル化転写物の発現をモニターすることができない。これらのRNA亜集団の多くを特異的に標的化するために代替的な方法が開発されている(Johnson J. M. et al., Science 302:2141-2144 (2003); Shiraki T. et al., PNAS 100:15776-15781 (2003); Vitali P. et al., Nucleic Acids Res. 31:6543-6551 (2003))が、ほんのわずかな研究しか、全ての転写事象を同時にモニターしようと試みていない。トランスクリプトーム全内容物に関する最も包括的な解析は、ゲノムタイリングアレイを用いて行われている(Cheng J. et al., Science 308:1149-1154 (2005); Kapranov P. et al., Science 316:1484-1488 (2007))。しかしながら、これらの実験の複雑さ、および補完的な方法によって引き続き検証を行うことの必要性から、日常的な全トランスクリプトーム・プロファイリングの用途にタイリングアレイを用いることが制限されている。DNAシーケンシングにおける最近の進歩は、発現解析に対する新たな手法の機会を与え、単一のプラットフォーム上でのRNA存在量の定量的評価も実験的に検証された転写物の発見もともに可能にする(Mortazavi A. et al., Nat. Methods 5:621-628 (2008))。それゆえ、多数のサンプルのハイスループットプロファイリングを利用でき、公知および新規の両転写物に関する不偏性の調査をもたらす方法が必要とされている。
【0204】
方法:
概観:
上記にしたがって、本発明者らは、リボソームRNA (rRNA)配列に対する完全な一致のある全てのヘキサマーが除去された「not-so-random」(「NSR」)プライミングライブラリーに依るサンプル調製手順を開発した。NSR選択的プライミングが全トランスクリプトーム・プロファイリング技術として有用であるためには、非リボソームRNA転写物を忠実に検出しなければならない。NSRプライミングの性能について調べるため、全トランスクリプトームcDNAライブラリーを構築した。汎用の尾部配列とともに第一鎖合成をプライムして、PCR増幅およびIllumina 1G Genome Analyzerを用いた下流のシーケンシングを容易にするために、アンチセンスNSRヘキサマー(「NSR」プライマー)を合成した。第2鎖合成をプライムするために、NSRプライマーの第一のセットに相補的な、尾部付けしたNSRヘキサマー(「抗NSR」プライマー)の第二のセットを作出した。第一および第二鎖NSRプライマーに用いた固有の尾部配列によって、増幅およびシーケンシングの間の鎖方向の保持が可能になった。本研究の場合、シーケンシングの読み出しは全て、鋳型RNAに対して3'から5'方向に配向されたが、逆鎖の読み出しは、汎用のPCR増幅プライマーを改変することによって容易に得ることができる。
【0205】
NSRプライムライブラリーにおけるトランスクリプトーム全内容物を評価するため、下記のように、シーケンシングによって、全脳から単離されたRNAおよびUniversal Human Reference (UHR)細胞株(Stratagene)から単離されたRNAよりNSRでプライムされ作出されたcDNAライブラリーの調査を行った。
【0206】
ライブラリーを作出するために用いたオリゴヌクレオチド:
実施例1に記述されているように、(SEQ ID NO:1〜749)のそれぞれに共有結合的に付着されたNSR-6merプライマー5' (SEQ ID NO:1499)の第一の集団を第一鎖の増幅に用い、(SEQ ID NO:750〜1498)のそれぞれに共有結合的に付着された抗NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:1500)の第二の集団を第二鎖cDNA合成で用いた。プールする前に、オリゴを脱塩し、100 μMで水に再懸濁した。
【0207】
対照ライブラリーの作出のため尾部配列SEQ ID NO:1499およびSEQ ID NO:1500とともにランダムヘキサマーの一群も合成した。
【0208】
ライブラリー作出:
概観:
NSRプライミングは、ポリA+およびポリA-転写物を含む非リボソームRNA画分を選択的に捕捉する。二ラウンドのNSRプライミング選択性をライブラリー構築の間に適用した。第一に、NSRオリゴヌクレオチド(アンチセンス)は、not-so-random鋳型部位で逆転写を開始する。RNA鋳型を除去するためのリボヌクレアーゼ処理の後、抗NSRオリゴヌクレオチド(センス)は、not-so-random鋳型部位で一本鎖cDNAにアニールし、Klenowを介した第二鎖合成を指令する。非対照のフォワードおよびリバースプライマーによるPCR増幅は、鎖方向を保持し、下流末端のシーケンシングのための末端部位を付加する。次いで、フォワード増幅プライマーの一部分を用いてcDNA断片の3'末端からアンチセンスタグシーケンシングを行う。次に、ペアワイズアライメントを用いて、ヒトゲノムに対しタグ配列の逆相補体をマッピングする。
【0209】
方法:
全脳由来の全RNAをFirstChoice(登録商標) Human Total RNA Survey Panel (Ambion, Inc.)から入手した。Universal Human Reference (UHR)細胞株RNAをStratagene Corpから購入した。Superscript(商標) III逆転写キット(Invitrogen Corp)を用いて全RNAをcDNAに変換した。3'から5'方向のエキソKlenow断片(New England Biolabs Inc.)により第二鎖合成を行った。Expand High FidelityPLUS PCR System (Roche Diagnostics Corp.)を用いてDNAを増幅した。
【0210】
NSRプライムcDNA合成のため、100 μMのNSRプライマーミックス(SEQ ID NO:1499に加えてSEQ ID NO:1〜749) 2 μlをPCR-ストリップ-キャップ管(Genesee Scientific Corp.)中で鋳型RNA 1 μlおよび水7 μlと混ぜ合わせた。プライマー・鋳型ミックスを65℃で5分間加熱し、氷上で急冷した後に、高dNTP逆転写酵素マスターミックス10 μl (水3 μl、5×緩衝液4 μl、100 mM DTT 1 μL、40 mM dNTP 1 μlおよびSuperScript(商標) III酵素1.0 μl)を添加した。逆転写酵素反応液20 μlを45℃で30分間、70℃で15分間インキュベートし、4℃まで冷却した。RNA鋳型をRNAseH (Invitrogen Corp.) 1 μlの添加によって除去し、37℃で20分間、75℃で15分間インキュベートし、4℃まで冷却した。その後、DNAをQIAquick(登録商標) PCR増幅キットによって精製し、溶出用緩衝液(Qiagen, Inc. USA) 30 μlでスピンカラムから溶出した。
【0211】
第二鎖合成のため、精製cDNA 25 μlをKlenowマスターミックス65 μl (水46 μl、10×NE緩衝液2 10 μl、10 mM dNTP 5 μl、5単位/μLのエキソKlenow断片, New England Biolabs, Inc. 4 μl)および100 μMの抗NSRプライマーミックス(SEQ ID NO:1500に加えてSEQ ID NO:750〜1498) 10 μLに添加した。この反応液100 μlを37℃で30分間インキュベートし、4℃まで冷却した。DNAをQIAquickスピンカラムによって精製し、溶出用緩衝液(Qiagen, Inc. USA) 30 μlで溶出した。
【0212】
PCR増幅のため、精製した第二鎖合成反応液25 μLをPCRマスターミックス75 μL (水19 μl、5×緩衝液2 20 μl、25 mM MgCl2 10 μl、10 mM dNTP 5 μl、10 μMのフォワードプライマー10 μl、10 μMのリバースプライマー10 μl、ExpandPLUS酵素, Roche Diagnostics Corp. 1 μL)と混ぜ合わせた。
【0213】
フォワードPCRプライマー:
。
リバースPCRプライマー:
。
【0214】
サンプルを94℃で2分間変性し、その後に94℃で10秒間、40℃で2分間、72℃で1分間を2サイクル、94℃で10秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間を8サイクル、94℃で15秒間、60℃で30秒間、各サイクルにさらに10秒を加えて72℃で1分間を15サイクル; および末端を平滑化するために72℃で5分間を続けて行い、その後、4℃まで冷却した。QIAquickスピンカラムを用いて二本鎖DNAを精製した。
【0215】
最後の逆転写反応においてdNTPの濃度が0.5 mM (2.0 mMではなく)であったことを除き、ランダムプライマーの使用とともに同じ方法を用いて対照ライブラリーを作出した。PCRプライマーSEQ ID NO:1559およびSEQ ID NO:1560を用いてランダムプライム対照ライブラリーを増幅した。
【0216】
定量的PCR:
TaqMan(登録商標) Gene Expression Assays (Applied Biosystems)を用いてqPCRにより、個々のrRNAおよびmRNA転写物を定量化した。qPCRアッセイは以下の表10に示した試薬を用いて行った。
【0217】
(表10)qPCRアッセイ用のプライマー
【0218】
7900 HT PCR機器(Applied Biosystems)を用いて384ウェル光学PCRプレート中10 μlの最終反応容量で各アッセイに対し、希釈したライブラリーDNAの三重測定を行った。PCRの後、結果の表をExcel (Microsoft Corp.)に出力し、標準曲線を作成し、サンプルに対する定量的解析を生データから回帰分析した。次いで、存在量レベルを投入cDNA集団(mass)に対して規準化した。
【0219】
qPCR解析の結果:
NSRプライミングまたはランダム配列による非選択的プライミング対照の、尾状ヘプタマーを用いて全脳の全RNAから作出されたcDNAライブラリーの比較によって、NSRプライムライブラリーにおけるrRNAの有意な枯渇および同時に標的mRNAの濃縮が明らかになった。具体的には、NSRプライマーの設計に用いたコンピュータフィルタに組み込んだrRNA転写物の全4種の存在量で95%を上回る減少が認められた(データ不掲載)。
【0220】
配列および読み出し分類:
NSRプライムライブラリーにおけるrRNA枯渇に関する詳細な知見を得るために、Illumina 1G Genome Analyzer (Illumina, Inc.)を用いてNSRプライム(260万個の)およびランダムプライム(380万個の) cDNAライブラリーから36ヌクレオチド・アンチセンスの読み出しとしてタグ配列を作出した。配列タグを特徴付けるために、各読み出しの5'末端のジヌクレオチド・バーコード(CT)を除去し、32 ntのアライメントあたり2つまでのミスマッチを許容するELANDマッピングプログラム(Illumina, Inc.)を用いていくつかの配列データベースに対し塩基番号2〜34の逆相補体を整列させた。
【0221】
RefSeq mRNAおよび非コード化RNA転写物の発現プロファイルを作出するために、各配列タグを複数の転写物に対し整列させた。次に、転写物の長さ1000ヌクレオチドあたりの頻度を計算することにより、読み出し数を発現値に変換した。サンプル規準化因子(nf)を適用して、各ライブラリーから作出された読み出し全数を調整した。これは各ライブラリーについて、ゲノムに対する非リボソームRNAの読み出しマッピングの全数から得られた(脳1: 1770万の読み出し、1.0 nf; 脳 2: 1930万の読み出し、1.087 nf; UHR: 1760万の読み出し、0.995 nf)。
【0222】
大分類のため、シーケンシングの読み出しをまず初めに、非コード化RNAおよび反復のデータベースに対し整列させ、複数の参照配列に対するアライメントを可能にした。次いで、残りのタグ配列をヒトゲノム配列のMarch 2006 hg18アッセンブリ(http:genome.ucsd.edu/)に対しマッピングした。単一のゲノム部位に対する読み出しのマッピングを、UCSC公知遺伝子(http://genome.ucsc.edu)によって規定されている座標を用いてmRNA、イントロンおよび遺伝子間の部類に分けた。反復または非コード化RNAを含んでいなかった複数のゲノム配列にマッピングされた配列は「その他の」部類を構成した。リボソームRNA配列は、RepeatMasker (http://www.repeatmasker.org/)およびGenbank (NC_001807)から得た。非コード化RNA配列はSanger RFAM (http://www.sanger.ac.uk/Software/Rfam/)、Sanger miRBASE (http://microrna.sanger.ac.uk)、snoRNABase (http://www-snorna.biotoul.fr)およびRepeatMaskerから収集した。反復要素はRepeatMaskerから得た。
【0223】
結果:
非rRNAゲノム領域に対し整列された5400万を上回る高品質な32ヌクレオチドタグ配列の読み出しは、二つの個別に調製された全脳ライブラリーおよび単一のUHRライブラリーから得た。これらの読み出しのうちの77%が単一のゲノム部位にマッピングされた。RefSeq mRNAデータベース(Pruitt K.D. et al, Nucleic Acids Res. 33:D501-504 (2005))中の22,785種のモデル転写物のうち、検索したサンプルの少なくとも一部において10種またはそれ以上の配列タグの読み出しにより87%超が提示され、全三種のライブラリーにおいて10種またはそれ以上の読み出しにより69%が提示された。
【0224】
(表11)NSRプライムライブラリー(260万個)およびランダムプライムライブラリー(380万個)由来の32ヌクレオチドタグ配列の読み出しのアライメントの結果
【0225】
上記の表11に示されるように、ヒトゲノムにマッピングされたNSRプライムライブラリー由来の配列タグの13%しかリボソームRNAに対応していなかったが、ランダムプライムcDNAの78%がrRNA配列に一致していた。これらの結果は、NSRプライミングが小サブユニット18S rRNAのほぼ完全な枯渇およびミトコンドリアrRNA転写物の劇的な減少をもたらしたことを実証している。大サブユニットrRNAの存在量の減少は他のrRNA転写物ほど効率的ではなかったが、28S RNAの比較的軽微な枯渇でも、その高い初期モル濃度および転写物の長さのため、最終ライブラリーの組成に大きな影響を及ぼす可能性がある。さらに、NSRプライム配列の86%超が、ランダムプライムcDNAの22%と比べて、非rRNAゲノム領域にマッピングされた。どのゲノム配列にもマッピングされなかったものは、どちらのライブラリーからも、全ての配列の読み出しのうちの5%しかなく、ライブラリー構築過程が鋳型非依存性の人為産物をほとんど生じなかったことが示唆された。類似の結果は、細胞株の多様な混合物から単離された、UHR全RNAより作出されたNSRプライムライブラリーおよびランダムプライムライブラリーから認められた(データ不掲載)。
【0226】
NSRプライムライブラリー中のポリA+ RefSeq mRNAを検出するために、RefSeq転写物内でのシーケンシングアライメントの定量的解析を用いて、配列に基づくデジタル発現プロファイルを作出した。複製物#1 vs複製物#2において少なくとも10種のNSRタグ配列によって提示される転写物のlog10比で、n=17,526に対してr=0.997の相関係数となり、同じ全脳の全RNAから調製された二つの別個のNSRライブラリーの間でNSRプライムcDNA増幅の優れた再現性が認められた。
【0227】
NSRライブラリーから得られたmRNAプロファイルの精度を評価するため、マイクロアレイ品質管理試験(Micro Array Quality Control Study) (MAQC Consortium) (Shi L. et al., Nat. Biotechnol. 24:1151-1161 (2006))のために作出された「判断基準(gold-standard)」TaqMan(登録商標) qPCRプロファイルに対してNSRプライム脳プロファイルとUHR発現プロファイルとの間で比較を行った。
【0228】
NSRタグシーケンシングおよびTaqMan(登録商標)定量的PCRによって得られた遺伝子発現プロファイルの相関関係も評価した。NSRタグシーケンシングによって得られた脳およびUHRにおける転写物レベルのlog10比を、MAQC Consortiumから得られたTaqMan(登録商標)測定値に対してプロットし、n=609に対してr=0.930の相関係数となった。
【0229】
NSRプライムライブラリー中のポリA+ Ref Seq mRNAの検出を次のように行った。NSRタグ配列の位置分布を転写物の全長にわたって調べた。図7Aは、長い転写物(?4kb)の全体でNSR (点線)またはEST (実線) cDNAにより、5'末端から始めて各塩基の位置に示した5,790種の転写物に対する組み合わせ読み出し頻度を示す。図7Bは、長い転写物(?4kb)の全体でNSR (点線)またはEST (実線) cDNAにより、3'末端から始めて各塩基の位置に示した5,790種の転写物に対する組み合わせ読み出し頻度を示す。図7Aおよび7Bに示したデータは、各データセット内の最大値に対して規準化された。図7Aおよび7Bに示されるように、NSRプライムcDNA断片は、従来のESTよりも内部部位の提示が高く、長い転写物の全長網羅度を示す。この技術によって好ましくは、選択的スプライシング情報が捕捉されるので、これは全トランスクリプトーム・プロファイリングの重要な特徴である。シーケンシングの読み出しの全てがcDNA断片の3'末端から得られたという事実のため、シーケンシングによる網羅度は、公知の転写物の最も5'末端でわずかな欠損を示した。この影響は、シーケンシングをNSR cDNA産物の両端で指令すれば、軽減することができる。まとめると、これらの結果は、全トランスクリプトーム発現プロファイリングのための技術としての、NSRに基づく選択的プライミングの頑健性を実証するものである。
【0230】
全トランスクリプトーム・プロファイリングの別の要件は、ポリA-の転写物を効率的に捕捉しなければならないということである。NSRプライムcDNAにおけるポリA-の非コード化RNAの提示を以下のように判定した。NSRプライムライブラリー由来の配列タグを公知のポリA-の非コード化RNA (ncRNA)配列の総合データベースに対して整列させた。かなりの割合の小核小体RNA (「snoRNA」) (286/665)および小核RNA (「snRNA」) (7/19)が少なくとも一つのサンプルにおいて5個またはそれ以上のコピーで存在し、多様な機能的クラスを表す転写物が広く検出された。興味深いことに、ごく一部のmiRNAヘアピンおよびtRNAの種しか検出可能なレベルで観察できなかった。以下の表12に示されるように、個々の転写物が広範囲の発現レベルにわたって観察され、snRNAおよびsnoRNAファミリーの成員が最高に豊富なものに含まれていた。
【0231】
(表12)全脳中の、少なくとも二つのNSRタグ配列によって提示される非コード化(ncRNA)転写物の順位付け発現レベル
【0232】
以下の表13に示されるように、ポリA-の転写物を含有するNSRプライムライブラリーには、snRNAおよびsnoRNAファミリーの成員、ならびに他の周知の転写物に対応するRNA、例えば7SK、7SLおよびカハール体低分子(small cajal body-specific) RNAファミリーの成員が含まれた。
【0233】
(表13)全脳の全RNAから作出されたNSRプライムライブラリーにおける主要な非コード化(ncRNA)クラスの提示
【0234】
Prader-Willi神経学的症候群に関連付けられている第15染色体q11領域に位置するC/DボックスsnoRNAのクラスタ(Cavaile J. et al., J. Biol. Chem. 276:26374-26383 (2001); Cavaile J. et al., PNAS 97:14311-14316 (2000))を含め、多くの転写物が、UHRから作出されたNSRプライムライブラリーと比べて、全脳の全RNAから作出されたNSRプライムライブラリーにおいて濃縮されていることが分かった。図8は、UHR NSRプライムライブラリーと比べ全脳NSRプライムライブラリーでの第15染色体Prader-Willi神経疾患遺伝子座によってコードされるsnoRNAの濃縮を図示している。
【0235】
本研究において検出されたかなりの割合の公知のncRNA転写物は、長さが100ヌクレオチド未満であり、広範な二次構造を有するものと予想されたことに注目するのは興味深く、従来の方法を用いて捕捉するには問題のあると考えられた鋳型をNSRプライミングが捕捉できることも実証している。
【0236】
転写活性の包括的概観
NSRプライミングを用いて作出された全トランスクリプトームcDNA配列の一群を集めて全脳およびUHRに対する包括的発現マップを構築することができる。そのような包括的発現マップを構築するために、全ての非リボソームRNAタグ配列を、下記表14に示した最新のゲノム注釈に基づいて、重複のない六つの分類のうちの一つに割り当てた。
【0237】
(表14)非リボソームRNAゲノム領域に対するNSRプライムcDNAタグのマッピングにおける全トランスクリプトーム発現の分類
【0238】
上記の表14に示したmRNA、イントロンおよび遺伝子間の部類は、UCSC公知遺伝子のゲノム座標によって規定され、固有の場所に位置するcDNAしか含んでいない。コード化エキソンまたはUTRのいずれかの部分に重複するシーケンシングタグの読み出しは、mRNAと見なした。多数のゲノム部位に対するシーケンシングタグの読み出しのマッピングは、ncRNA、反復またはその他の部類にまとめた。
【0239】
上記の表14に示されるように、組織および細胞株のRNA集団が類似の全体的発現パターンを示すことが分かった。例えば、タグ配列の65%が公知のタンパク質コード遺伝子の境界内に現れたのに対し、タグ配列の12〜13%しか遺伝子間領域にマッピングされなかったが、これは既報のもの(Cheng J. et al., Science 308:1149-1154 (2005))よりもかなり低い。偽遺伝子および遺伝子ファミリー内で共有されるモチーフなどの、他の重複性の配列(表14中の「その他」の部類)に対応するcDNAの画分も、両サンプルで類似であった。しかしながら、一部の部類の提示は全脳およびUHRで著しく異なっていた。イントロン発現は両RNA集団でかなり認められたが、イントロンにおける転写活性は全脳でよりもUHRで60%高かった。反復要素の発現も全脳でよりもUHRで高かった。対照的に、公知のncRNAの累積存在量はUHRよりも脳で4倍高かった。任意の特定の理論によって束縛されることを望むわけではないが、これらの結果は細胞株と組織との間のスプライシング活性の一般的相違を反映している可能性がある。あるいは、これらの知見は、転写が一般に細胞株でより広く見られ、調節的制約の緩和の結果でありうることを示唆している可能性がある。
【0240】
注釈のない領域に帰属された固有の転写部位の数を評価するために、重複性のNSRタグ配列を集めて、隣接する転写単位を構築した。単一のゲノム部位に対する多数のシーケンシングの読み出しのマッピングは、少なくとも一つのヌクレオチドがどちらかの鎖上で重複していた場合に、単一の転写物にまとめられた。全体で、現行の転写物モデルによって網羅されていない、250万を上回る転写的に活性な領域が特定された。これらのうちで、公開ESTデータベース中の配列によって裏付けられるものは21%しかなかった(Benson, D.A. et al., Nucleic Acids Res 32:D23-26 (2004))。注釈のない転写部位は平均すると36.9ヌクレオチド長となって、32〜1003 bpに及び、5%近くが100 bpを超えていた。ここで特定された転写要素の多くが新規の非コード化RNAに当たる可能性がある。それらは選択的にスプライスされたエキソンおよび非翻訳領域の伸長物を含めて、これまでに特定されていない公知遺伝子のセグメントである可能性もある。
【0241】
次に、配列タグを公知のタンパク質コード遺伝子の機能要素に対して整列させることによって、NSRプライミングの鎖特異性を調べた。タンパク質コードエキソンに対する99%を上回るcDNA配列のマッピングは、センス方向で配向され、鎖特異的な発現をモニタリングするための本方法の識別力を実証するものであった。この識別力によって、本発明者らは、新規の転写物の方向を判定することが可能となり、公知遺伝子の機能要素間のアンチセンス転写の広がりを評価することが可能となった。以下の表15に示されるように、アンチセンス転写は5'UTRおよびイントロンにおいて特に高いレベルで検出され、それらの領域における転写事象の約20%を構成していた。
【0242】
(表15)NSRプライム全脳およびUHRライブラリーから得られたシーケンシングの読み出しに対しセンスまたはアンチセンス方向で配向されたNSRタグ配列の相対頻度比
【0243】
上記の表15に示したシーケンシングの部類は、UCSC公知遺伝子の非コード化およびコード化領域のゲノム座標によって規定された。
【0244】
他のグループもヒトおよびいくつかのモデル生物での広範なアンチセンス発現を立証しているということに注目するのは興味深い(Katayama S. et al., Science 309:1564-1566 (2005); Ge X. et al., Bioinformatics 22:2475-2479 (2006); Zhang Y. et al., Nucleic Acid Res 34:3465-3475 (2006))。多くの遺伝子で観察されるセンスおよびアンチセンス発現の複雑なパターンから、イントロンおよびUTRの転写事象の少なくとも一部には機能的意義のあることが示唆される。
【0245】
考察:
本実施例において実証されるように、NSRプライムcDNAライブラリーに超ハイスループットシーケンシングを適用することで、従来の方法がもたらす情報の範囲を凌ぐ、包括的転写内容に関する不偏性の照合が可能になる。シーケンシングによる転写物の発見では、相当のデータ処理およびその後の実験的検証を要する交差ハイブリダイゼーションによる悪影響を起こしやすい、ゲノムタイリングアレイを用いては達成できない特異性のレベルで情報が得られる(例えばRoyce T. E. et al., Trends Genet 21:466-475 (2005)を参照のこと)。しかし、非常に複雑な全トランスクリプトームライブラリーにおいて希少な転写物の十分な網羅度を得るために必要なサンプリングの難解さから、シーケンシングを行って多数の組織を素早く調査する可能性には限界がある。対照的に、発現プロファイリングマイクロアレイでは、プローブの選択を進めるために質の高い配列情報が存在するなら、多くのサンプルでの転写物レベルの定量的解析が容易とされる。
【0246】
NSR選択的なプライミングは従来の方法に比べていくつかの利点をもたらす。例えば、NSR選択的なプライミングは、情報量の多いシーケンシングとハイスループットアレイ実験との間に直接的な関連を提供する。NSR選択的なプライムcDNAライブラリーを用いて得られた配列情報は、注釈のない転写特徴物の特定を可能にする。NSRプライムライブラリーを用いて特定された注釈のない転写特徴物の機能的特性化は、広範囲の生物学的過程および疾患状態を明らかにすると考えられる。
【0247】
ハイスループットシーケンシングから得られた情報を用いて、NSRプライムcDNAとのハイブリダイゼーション用の全トランスクリプトームアレイの設計情報を知ることができる。例えば、特注設計した全トランスクリプトーム・プロファイリングアレイを用いて、新規の特徴物の発現パターンを相互の関連でおよび公知の転写物との関連で評価することができる。大規模なプロファイリング研究を用いて、個々の転写物をヒトの病的状態に関連付け、臨床研究に利用可能なバイオマーカーのレパートリーを拡げることもできる(例えば、van't Veer, L.J. et al., Nature 415:530-536 (2002)を参照のこと)。さらに、全トランスクリプトーム発現プロファイリングデータと遺伝的連鎖解析との統合を用いて、新規の転写要素によって調節される生物活性を明らかにすることもできる。
【0248】
本実施例において記述されるタグシーケンシング法の変化形を本発明の種々の態様にしたがって全トランスクリプトーム解析に利用することができる。一つの態様において、ペアエンド(paired-end)シーケンシングが全トランスクリプトーム解析に利用される。ペアエンドシーケンシングは、個々のcDNA断片の5'末端と3'末端との間の直接の物理的関連をもたらす(Ng P. et al., Nucleic Acids Res 34 e84 (2006); およびCampbell, P.J. et al., Nat Genet 40:722-729 (2008))。それゆえ、ペアエンドシーケンシングにより、遠位部位由来のスプライスされたエキソンは何ら追加情報がなくても、単一の転写物に明確に割り当てられる。転写物全体の構造が規定されれば、大規模のコンピュータ解析を適用して、これらの遺伝子がタンパク質コード化または非コード化RNA実体に当たるかどうかについて判定することができる(Frith M.C. et al., RNA Biol. 3:40-48 (2006))。
【0249】
上記のように、NSRプライミングは、多種多様なサンプルに単純かつ再現性良好に適用できるという利点のあるcDNAサブトラクションの基本形である。NSRプライマープールは、混乱を引き起こす、きわめて豊富な転写物の任意の集団を回避するように設計することができる。例えば、NSRプライマープールは、全血の全RNA集団の70%までを構成し、かつ血液プロファイリング実験の感度にも精度にも悪影響を及ぼしうる、グロビンタンパク質のαおよびβサブユニットをコードするmRNAを回避するように設計することができる(Li L. et al., Physiol. Genomics 32:190-197 (2008)を参照のこと)。NSRプライマープールは他の生物におけるrRNA含量を減らすように設計し、全トランスクリプトーム発現パターンの種間比較を可能にすることもできる。RNA亜集団のポリA選択が有用ではない、原核生物種での日常的な発現プロファイリング実験にこの手法を利用することができる。
【0250】
要約すると、5400万を上回る32ヌクレオチドタグ配列の解析から、第一鎖および第二鎖cDNA合成におけるNSRプライミングは、公知のポリA+およびポリA- 転写物の広範な提示を備えたcDNAライブラリーをもたらし、従来のランダムプライミングと比べた場合にrRNA含量を劇的に低減したことが実証された。NSRプライムライブラリーのシーケンシングは、これまでに注釈のないゲノム配列からの幅広いアンチセンス発現および転写の証拠を含む転写の包括的概観をもたらす。このように、NSRプライミング技術の簡潔性および柔軟性から、この技術は幅広い実験的設定にわたるトランスクリプトーム研究での超ハイスループットシーケンシングに対する理想的なガイドとなる。
【0251】
例示的な態様を例示し記述してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に種々の変更を加えられることが理解されよう。
【0252】
排他的な財産権または特権が主張される本発明の態様は、添付の特許請求の範囲のとおり定義される。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、標的核酸分子を選択的に増幅する方法および標的核酸分子の増幅をプライムするのに有用なオリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
遺伝子発現解析では、出発核酸分子の増幅を伴うことが多い。核酸分子の増幅は逆転写(RT)、インビトロ転写(IVT)またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、単独でまたはこれらの組み合わせで達成されうる。出発核酸分子は、mRNA分子であってよく、これは、相補的cDNA分子をまず初めに合成し、次いで第一のcDNA分子に相補的な第二のcDNA分子を合成し、これによって二本鎖cDNA分子を作出することにより増幅される。第一鎖cDNAの合成は通例、逆転写酵素を用いて達成され、第二鎖cDNAの合成は通例、DNAポリメラーゼを用いて達成される。二本鎖cDNA分子を用いてRNAポリメラーゼにより相補的RNA分子を作製し、オリジナルの出発mRNA分子の増幅をもたらすことができる。RNAポリメラーゼは、RNA合成の開始を指令するためにプロモーター配列を必要とする。相補的RNA分子は例えば、さらなる相補的DNA分子を作製するための鋳型として使用されうる。あるいは、二本鎖cDNA分子は、例えば、PCRによって増幅されてもよく、増幅されたPCR産物は、シーケンシング用の鋳型としてまたはマイクロアレイ解析で使用されてもよい。
【0003】
核酸分子の増幅には、出発材料中の一つまたは複数の標的核酸分子と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーの使用が必要となる。各オリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸分子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドのハイブリダイズ部分の5'側に位置するプロモーター配列を含みうる。オリゴヌクレオチドのハイブリダイズ部分が短すぎれば、オリゴヌクレオチドは標的核酸分子と安定的にハイブリダイズせず、プライミングおよびその後の増幅が起こらない。また、オリゴヌクレオチドのハイブリダイズ部分が短すぎれば、オリゴヌクレオチドは、一つまたは少数の標的核酸分子と特異的にハイブリダイズするのではなく、多数の標的核酸分子と非特異的にハイブリダイズする。
【0004】
異なる標的核酸分子(例えば、RNA分子)の複雑な混合物の増幅には、通例、異なる核酸配列を有する多数のオリゴヌクレオチドの集団の使用が必要となる。オリゴヌクレオチドの費用は、オリゴヌクレオチドの長さとともに増大する。費用を抑制するためには、標的配列とのオリゴヌクレオチドの特異的ハイブリダイゼーションを確実とするのに必要とされる最小長しかないオリゴヌクレオチドプライマーを作製することが好ましい。
【0005】
高度に発現されるRNA (例えば、リボゾームRNA)を増幅することは望ましくない場合が多い。例えば、血液細胞中の遺伝子の発現を解析する遺伝子発現実験では、豊富なグロビンmRNAまたはリボソームRNAの多数のコピーを増幅することで、希少なmRNAのレベルのわずかな変化が分かりにくくなる可能性がある。したがって、核酸分子の集団内の所望の核酸分子を選択的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーの集団(例えば、最も高度に発現されるRNAを除く、細胞中で発現される全てのmRNAを選択的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマー)が必要である。オリゴヌクレオチドの集団を合成する費用を低減するために、各オリゴヌクレオチドのハイブリダイズ部分は、規定の条件の下で、所望の標的配列との特異的ハイブリダイゼーションを確実とするのに必要とされるよりも長くすべきではない。
【発明の概要】
【0006】
概要
一つの局面において、本発明は、核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団(例えば、最も高度に発現されるRNA種を除く、ある細胞型で発現される全てのRNA分子)を選択的に増幅するための方法を提供する。本発明のこの局面の各方法は、(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団から合成される一本鎖プライマー伸長産物の集団を提供する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでRNA鋳型分子の集団が核酸分子の標的集団および核酸分子の非標的集団を含む段階; (b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)による一本鎖プライマー伸長産物の集団から二本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、6、7または8ヌクレオチドのうちの一つからなるハイブリダイズ部分と、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列とを含み、ここでハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で、合成された一本鎖cDNA中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6、7または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される段階を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドは、ランダムなハイブリダイズ部分およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列を含む。
【0007】
別の局面において、本発明は、核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法を提供する。本発明のこの局面の方法は、(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離された全RNAを含むサンプルから一本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団内の各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:1〜749を含んだオリゴヌクレオチドの集団の成員である段階; かつ(b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により合成された一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団内の各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:750〜1498を含んだオリゴヌクレオチドの集団の成員である段階を含む。
【0008】
別の局面において、本発明は、トランスクリプトーム・プロファイリングのための方法を提供する。本発明のこの局面の方法は、(a) 逆転写酵素、およびハイブリダイズ部分とハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位とを含んだオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団から一本鎖プライマー伸長産物の集団を合成する段階; (b) DNAポリメラーゼ、およびハイブリダイズ部分とハイブリダイズ部分の5'側に位置する第二のPCRプライマー結合部位とを含んだオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により作出された一本鎖プライマー伸長産物の集団から二本鎖cDNAを合成する段階; ならびに(c) 第一のPCRプライマー結合部位に結合する第一のPCRプライマーおよび第二のPCRプライマー結合部位に結合する第二のPCRプライマーを用いて段階(b)により作出された二本鎖cDNAをPCR増幅する段階であって、ここで核酸分子の非標的集団が哺乳類被験体と同じ種のリボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAから本質的になる段階を含む。
【0009】
別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団を提供する。これらのオリゴヌクレオチドは、例えば、リボソームRNA (18S、28S)またはミトコンドリアリボソームRNA (12S、16S)分子に相補的な第一鎖cDNA分子の合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたRNA分子に相補的な第一鎖cDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団中の各オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分をさらに含む。一つの態様において、規定の配列部分は、PCR増幅でのまたはインビトロ転写のための、プライマー結合部位として使用されうる転写プロモーターを含む。別の態様において、規定の配列部分は、転写プロモーターでないプライマー結合部位を含む。例えば、いくつかの態様において、本発明は、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)などの転写プロモーターが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。さらなる態様において、本発明は、規定の配列部分が、PCR合成反応をプライムするのに有用であり、かつRNAポリメラーゼプロモーター配列を含まない、少なくとも一つのプライマー結合部位を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。このような態様で用いる規定の配列部分の代表例は、5'TCCGATCTCT3' (SEQ ID NO:1499)として与えられ、これは、好ましくは、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する。
【0010】
別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団を提供する。これらのオリゴヌクレオチドは、例えば、リボソームRNA (18S、28S)またはミトコンドリアリボソームRNA (12S、16S)分子から逆転写された第一鎖cDNAに相補的な第二鎖cDNA分子の合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたRNAから合成された第一鎖cDNA分子に相補的な第二鎖cDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団中の各オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分をさらに含む。一つの態様において、規定の配列部分は、PCR増幅でのまたはインビトロ転写のための、プライマー結合部位として使用されうる転写プロモーターを含む。別の態様において、規定の配列部分は、転写プロモーターでないプライマー結合部位を含む。例えば、いくつかの態様において、本発明は、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)などの転写プロモーターがSEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドがSEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)からなる、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。さらなる態様において、本発明は、規定の配列部分が、PCR合成反応をプライムするのに有用であり、かつRNAポリメラーゼプロモーター配列を含まない、少なくとも一つのプライマー結合部位を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。このような態様で用いる規定の配列部分の代表例は、5'TCCGATCTGA3' (SEQ ID NO:1500)として与えられ、これは、好ましくは、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する。
【0011】
別の局面において、本発明は、非標的核酸分子のより大きな集団中の核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬を提供する。一つの態様において、試薬は、SEQ ID NO:1〜749を含んだオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む。別の態様において、試薬は、SEQ ID NO:750〜1498を含んだオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む。
【0012】
別の局面において、本発明は、核酸分子の標的集団を選択的に増幅するためのキットを提供する。本発明のこの局面のキットは、第一鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第一の集団を含んだ試薬を含み、ここでオリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:1〜749を含んだオリゴヌクレオチドの集団の成員である。いくつかの態様において、キットは、第二鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第二の集団をさらに含み、ここでオリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:750〜1498を含んだオリゴヌクレオチドの集団の成員である。
【0013】
別の局面において、本発明は、5'側の規定配列、哺乳類被験体で発現される核酸に対応する増幅された配列の集団、3'側の規定配列を含んだ、哺乳類被験体のトランスクリプトームの提示を含む選択的に増幅された核酸分子の集団を提供し、ここで増幅された配列の集団が特定の哺乳類種に関して以下の特性を有することによって特徴付けられる: (a) 75%を上回るポリアデニル化および非ポリアデニル化転写物を有する、かつ10%未満のリボソームRNAを有する。
【0014】
添付の図面と合わせて、以下の詳細な説明を参照することにより、先述の局面および本発明に伴う利点の多くがよりよく理解されるので、先述の局面および本発明に伴う利点の多くがより容易に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】実施例1に記述されているヒトRefSeq転写物データベース中のヌクレオチド配列に対する、ランダムな6-mer (N6)オリゴヌクレオチドの正確な一致の数を示している。
【図1B】実施例1に記述されているヒトRefSeq転写物データベース中のヌクレオチド配列に対する、Not-So-Random (NSR)6-merオリゴヌクレオチドの正確な一致の数を示している。
【図1C】実施例2に記述されているように、第一鎖cDNA合成用のランダムプライマーの混合物および第二鎖cDNA合成用の抗NSR 6-merオリゴヌクレオチドの混合物を用いて選択的に増幅されるcDNA分子の調製物を合成するための本発明の方法の代表的な態様を示す。
【図1D】実施例2および実施例4に記述されているように、PCR増幅に先立って、第一鎖cDNA合成用のNSR 6-merオリゴヌクレオチドの混合物および第二鎖cDNA合成用の抗NSR 6-merオリゴヌクレオチドの混合物を用いて選択的に増幅されるaDNA分子の調製物を合成するための本発明の方法の代表的な態様を示す。
【図2】実施例4および実施例5に記述されているように、被験体より単離されたRNAから核酸分子を選択的に増幅し、引き続いて増幅された核酸分子の配列解析またはマイクロアレイ解析を行う段階を含む、被験体の全トランスクリプトーム解析の方法を例示する流れ図である。
【図3A】実施例3に記述されるようにランダムプライマーを用いて作出された第一鎖cDNAと比較した(N8 = 100%)、各種のNSR-6プールを用いて合成された第一鎖cDNA分子の集団における18S、28S、12Snおよび16Sの相対存在量(遺伝子およびN8に対して規準化した)を示した対数目盛のヒストグラムプロットである。
【図3B】実施例3に記述されるように第一鎖合成にも第二鎖合成にもランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAにおける細胞質rRNA (18Sまたは28S)の存在量の相対レベル(N7>N7 = 100% 18S、100% 28S)を、第一鎖にはNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖にはランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR>N7 = 3.0% 18S、3.4% 28S)、および第一鎖にはNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖には抗NSRプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR>抗NSR = 0.1% 18S、0.5% 28S)図示している。
【図3C】実施例3に記述されるように第一鎖合成にも第二鎖合成にもランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAにおけるミトコンドリアrRNA (12Sまたは16S)の存在量の相対レベル(N7>N7 = 100% 12Sまたは16S)を、第一鎖にはNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖にはランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR>N7 = 27% 12S、20.4% 16S)、および第一鎖にはNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖には抗NSRプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR>抗NSR = 8.2% 12S、3.5% 16S)図示している。
【図4A】実施例3に記述されるようにさまざまなNSRプライマーを第一鎖合成中に用いて合成されたcDNA中の代表的な遺伝子転写物の遺伝子特異的ポリA含量を示すヒストグラムプロットである。
【図4B】実施例3に記述されるようにさまざまなNSRプライマーを第一鎖cDNA合成中に用いてJurkat-1およびJurkat-2全RNAから増幅されたcDNA中の代表的な非ポリアデニル化RNA転写物の相対的な存在量レベルを示すヒストグラムプロットである。
【図5】実施例3に記述されるように、ランダムプライマー(N8)を用いて作出されたcDNAで測定したJurkat/K562 mRNA発現データのlog比と対比して、NSR-6mer (x軸)を用いて作出されたcDNAで測定したJurkat/K562 mRNA発現データのlog比を図示している。
【図6A】実施例3に記述されるように、ポリA精製後に通例得られる全RNA中のrRNAとmRNAとの割合を図示しており、全RNAからのrRNAの95%除去後でさえ、残存するRNAは約50%のrRNAおよび50%のmRNAの混合物からなることを実証している。
【図6B】第一鎖cDNA合成中にNSRプライマーを用い、第二鎖cDNA合成中に抗NSRプライマーを用いて調製されたcDNAサンプル中のrRNAとmRNAとの割合を図示している。図のように、ポリA精製に比べて、実施例3に記述されるように、全RNAからcDNAを作出するためにNSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いることは、99.9%のrRNAを除去するのに有効であり、95%を上回るmRNAの濃縮されたcDNA集団をもたらす。
【図7A】実施例7に記述されるように、長い転写物(?4kb)の全体でのNSRプライム(点線)または発現配列タグ(EST) (実線) cDNAにおけるポリA+ RefSeq mRNAの検出および位置分布を図示しており、5'末端から始めて各塩基の位置に示した5,790種の転写物に対する組み合わせ読み出し頻度を示す。
【図7B】実施例7に記述されるように、長い転写物(?4kb)の全体でのNSRプライム(点線)または発現配列タグ(EST) (実線) cDNAにおけるポリA+ RefSeq mRNAの検出および位置分布を図示しており、3'末端から始めて各塩基の位置に示した5,790種の転写物に対する組み合わせ読み出し頻度を示す。
【図8】実施例7に記述されるように、Universal Human Reference (UHR)細胞株より単離されたRNAから作出されたNSRプライムcDNAと比較した、全脳より単離されたRNAから作出されたNSRプライムcDNAでの第15染色体Prader-Willi神経疾患遺伝子座によってコードされる小核小体RNA (snoRNA)の濃縮を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本明細書において具体的に定義されていなければ、本明細書において用いられる全ての用語は、本発明の分野における当業者に対するのと同じ意味を有する。当技術分野の定義および用語に関しては、当業者は、特に、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York; およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 47), John Wiley & Sons, New York, 1999を参照されたい。
【0017】
第一鎖cDNA合成のためのNot-So-Random (「NSR」) 6-merプライマーの使用が、参照により本明細書に組み入れられる、2006年10月27日付で出願された同時係属中の米国特許出願第11/589,322号に記述されている。特定の態様において、同時係属中の米国特許出願第11/589,322号に記述されているNSR-6merは、血液細胞で発現される全てのmRNA分子とハイブリダイズするが、グロビンmRNA (HBA1、HBA2、HBB、HBD、HBG1およびHBG2)、または核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)とはハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドの集団を含む。本出願において、グロビンmRNAを含め、哺乳類細胞で発現される全てのmRNA分子とハイブリダイズするが、核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)ならびにミトコンドリアリボソームRNA (12Sおよび16S mt-rRNA)とはハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドを含む、NSRプライマーの異なる集団(SEQ ID NO:1〜749)が提供される。本出願は、第二鎖cDNA合成の間に用いるための抗NSRオリゴヌクレオチドの第二の集団(SEQ ID NO:750〜1498)をさらに提供する。抗NSRオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:750〜1498)は、グロビンmRNAを含め、哺乳類細胞で発現されるRNA鋳型から逆転写された全ての第一鎖cDNA分子とハイブリダイズするが、核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)ならびにミトコンドリアリボソームRNA (12Sおよび16S mt-rRNA)から転写された第一鎖cDNA分子とはハイブリダイズしないように選択される。実施例1〜4で記述されるように、第一鎖合成中のNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)を用いた第一ラウンドの選択的増幅、引き続き第二鎖合成中の抗NSRプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)を用いた第二ラウンドの選択的増幅の使用によって、細胞で発現されるポリA RNAおよび非ポリA RNAの実質的に全てに相当し、不必要な核リボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAに相当する核酸分子のレベルが非常に低い(10%未満の)、二本鎖cDNAの集団が得られる。図2に示されるように、本発明は同様に、シーケンシングおよび遺伝子発現プロファイリング(例えば、マイクロアレイ解析)などの、本発明の増幅方法の産物を解析する方法を提供する。
【0018】
上記によれば、一つの局面において、本発明は、核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団(例えば、最も高度に発現されるRNA種を除く、ある細胞型で発現される全てのRNA分子)を選択的に増幅するための方法を提供する。本発明のこの局面の各方法は、(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNAから一本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含み、ここでRNAが核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団を含む段階; かつ(b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により合成された一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する段階であって、ここでオリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、6、7または8ヌクレオチドのうちの一つからなるハイブリダイズ部分と、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列とを含み、ここでハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で、合成された一本鎖cDNA中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6、7または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される段階を含む。
【0019】
オリゴヌクレオチドの第二の集団は同様に、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含むことができる。一つの態様において、規定の配列部分は、プライマー結合部位としても使用できる転写プロモーターを含む。それゆえ、本発明のこの局面の特定の態様において、オリゴヌクレオチドの第二の集団の各オリゴヌクレオチドは、6ヌクレオチドまたは7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する転写プロモーター部分を含む。別の態様において、オリゴヌクレオチドの第二の集団の規定の配列部分は、PCR増幅反応で用いるための第二のプライマー結合部位を含み、第二のプライマー結合部位は任意で、転写プロモーターを含んでもよい。例として、本発明により提供される抗NSRオリゴヌクレオチドの集団は、本発明のこの局面の方法の実践において有用である。
【0020】
例えば、本発明の一つの態様において、哺乳類細胞由来のRNA分子の標的集団から合成された全ての、または実質的に全ての、第一鎖cDNA分子の第二鎖合成をプライムするためのプライマーとして使用できるが、哺乳類細胞由来の非標的リボソームRNA (rRNA)またはミトコンドリアrRNA (mt-rRNA)から逆転写された第一鎖cDNAの第二鎖合成をプライムしない、それぞれが6ヌクレオチドの長さを有する、オリゴヌクレオチドの集団(SEQ ID NO:750〜1498)が特定された。特定されたオリゴヌクレオチドの第二の集団(SEQ ID NO:750〜1498)は、抗Not-So-Random (抗NSR)プライマーといわれる。したがって、オリゴヌクレオチドのこの集団(SEQ ID NO:750〜1498)は、哺乳類細胞から単離されたmRNA分子の出発集団を代表する第一鎖核酸分子(例えば、cDNA)の集団の第二鎖合成をプライムするために用いることができるが、rRNAまたはmt-rRNAに対応するcDNA分子の第二鎖合成をプライムしない。
【0021】
他の態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドは、6、7または8ヌクレオチドのうちの一つからなるハイブリダイズ部分と、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列とを含み、ここでハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で、哺乳類被験体由来のRNAを含むサンプル中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6、7または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される。
【0022】
オリゴヌクレオチドの第一の集団は同様に、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分を含んでもよい。一つの態様において、規定の配列部分は、第一のプライマー結合部位としても使用できる転写プロモーターを含む。それゆえ、本発明のこの局面の特定の態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団の各オリゴヌクレオチドは、6ヌクレオチドまたは7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分、およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する転写プロモーター部分を含む。別の態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団の規定の配列部分は、PCR増幅反応で用いるための第一のプライマー結合部位を含み、第一のプライマー結合部位は任意で、転写プロモーターを含んでもよい。例として、本発明により提供されるNSRオリゴヌクレオチドの集団は、本発明のこの局面の方法の実践において有用である。
【0023】
例えば、本発明の一つの態様において、哺乳類細胞由来の全ての、または実質的に全ての、mRNA分子の第一鎖合成をプライムするためのプライマーとして使用できるが、哺乳類細胞由来の非標的リボソームRNA (rRNA)またはミトコンドリアrRNA (mt-rRNA)の増幅をプライムしない、それぞれが6ヌクレオチドの長さを有する、オリゴヌクレオチドの第一の集団(SEQ ID NO:1〜749)が特定された。特定されたオリゴヌクレオチドの第一の集団(SEQ ID NO:1〜749)は、Not-So-Random (NSR)プライマーといわれる。したがって、オリゴヌクレオチドのこの集団(SEQ ID NO:1〜749)は、哺乳類細胞から単離されたmRNA分子の出発集団を代表する核酸分子(例えば、cDNA)の集団の第一鎖合成をプライムするために用いることができるが、rRNAまたはmt-rRNAに対応するcDNA分子の第一鎖合成をプライムしない。
【0024】
本発明は同様に、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)または第一のプライマー結合部位(SEQ ID NO:1499)などの規定の配列が、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、第一鎖cDNA合成をプライムするためのオリゴヌクレオチドの第一の集団を提供する。したがって、各オリゴヌクレオチドは、標的核酸分子(例えば、mRNA)とハイブリダイズするハイブリダイズ部分(SEQ ID NO:1〜749から選択される)およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する、プロモーター配列または第一のプライマー結合部位などの、規定の配列を含むことができる。規定の配列部分(T7プロモーターを含む)は、オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて増幅されたDNA分子の中に取り込まれ、その後、DNA分子からの転写を促進することができる。
【0025】
あるいは、転写プロモーターまたは第一のプライマー結合部位などの、規定の配列部分は、例えば、DNAリガーゼ酵素によって、cDNA分子に共有結合的に付着することもできる。
【0026】
有用な転写プロモーター配列にはT7プロモーター:
、SP6プロモーター:
、およびT3プロモーター:
が含まれる。
【0027】
例えば、標的核酸集団は、例えば、最も豊富に発現されるmRNAなどの、非標的mRNAの選択群を除く、細胞または組織で発現される全てのmRNAを含むことができる。豊富に発現される非標的mRNAは、通例、細胞または組織で発現される全てのmRNAの少なくとも0.1%を構成する(および例えば、細胞または組織で発現される全てのmRNAの50%超または60%超または70%超を構成することができる)。豊富に発現される非標的mRNAの一例は、哺乳類細胞におけるリボソームrRNAまたはミトコンドリアrRNAである。本発明の方法を用いて選択的に除去可能な、豊富に発現される非標的RNAの他の例としては、例えば、グロビンmRNA (血液細胞由来)または葉緑体rRNA (植物細胞由来)が挙げられる。
【0028】
本発明の方法は、あるRNA群(NSRおよび/または抗NSRプライマーとハイブリダイズしないもの)、例えば、高度に発現されるRNA (例えば、リボゾームRNA)の存在を、増幅されたサンプルから低下させることが望ましい、生体細胞サンプル中の全RNAのトランスクリプトーム・プロファイリングに有用である。いくつかの態様において、本発明の方法は、RNAサンプルに由来する増幅された核酸中のNSRプライマーおよび/または抗NSRプライマーとハイブリダイズしない核酸分子の群の量を、NSRおよび/または抗NSRプライマーとハイブリダイズする増幅された核酸分子の量に比べて、少なくとも2倍、最大1000倍、例えば少なくとも10倍、50倍、100倍、500倍またはそれ以上など低下させるために用いることができる。
【0029】
本発明のこの局面の方法を実践するために使用されるオリゴヌクレオチドの集団は、オリゴヌクレオチドのより大きな集団内から選択され、ここでオリゴヌクレオチドの第一の集団は、規定の条件の下で標的RNA集団とハイブリダイズするが、規定の条件の下で非標的RNA集団とハイブリダイズしないその能力に基づき選択され、かつオリゴヌクレオチドの第一の集団は、6ヌクレオチド、7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドを含む。
【0030】
オリゴヌクレオチドの第二の集団は、規定の条件の下で標的の第一鎖cDNA集団とハイブリダイズするが、規定の条件の下で非標的の第一鎖cDNA集団とハイブリダイズしないその能力に基づき選択され、かつオリゴヌクレオチドの第二の集団は、6ヌクレオチド、7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドを含む。一つの態様において、オリゴヌクレオチドの第二の集団は、オリゴヌクレオチドの第一の集団の配列の逆相補体を合成することによって作出されうる。
【0031】
オリゴヌクレオチドの第一の集団の組成
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団は、6ヌクレオチドまたは7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドの第一の集団は、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチド、または7ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチド、または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドのみを含みうる。任意で、オリゴヌクレオチドの第一の集団は、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチド、または7ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチド、または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドに加えて、他のオリゴヌクレオチドを含んでもよい。通例、オリゴヌクレオチドの第一の集団の各成員は、30ヌクレオチド長以下である。
【0032】
オリゴヌクレオチドの第一の集団の配列
6ヌクレオチドの長さを有する4,096種の可能なオリゴヌクレオチド、7ヌクレオチドの長さを有する16,384種の可能なオリゴヌクレオチド、および8ヌクレオチドの長さを有する65,536種の可能なオリゴヌクレオチドが存在する。オリゴヌクレオチドの集団を構成するオリゴヌクレオチドの配列は、Microsoft Word (登録商標)などのコンピュータプログラムによって容易に作出することができる。
【0033】
第一のオリゴヌクレオチドの亜集団の選択
第一のオリゴヌクレオチドの亜集団は、第一のオリゴヌクレオチドの亜集団の成員が規定の条件の下で標的核酸の集団とハイブリダイズするが、同一の規定の条件の下で非標的集団とハイブリダイズしない能力に基づき、オリゴヌクレオチドの集団から選択される。増幅されるサンプルは、(例えば、逆転写を用いて)増幅されるべき標的核酸分子(例えば、RNAまたはDNA分子)を含み、増幅されるべきでない非標的核酸分子も含む。第一のオリゴヌクレオチドの亜集団は、それぞれが、規定の条件の下で、増幅されるべき核酸分子の集団全体に分布している標的配列とハイブリダイズするが、同一の規定の条件の下で、増幅されるべきでない非標的核酸分子のほとんど(またはいずれも)とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドから構成される。第一のオリゴヌクレオチドの亜集団は、規定の条件の下で、意図的に回避されたもの(非標的配列)以外の標的核酸配列とハイブリダイズする。
【0034】
例えば、細胞サンプルは、多くのリボソームRNA分子(例えば、5S、18Sおよび28SリボソームRNA)ならびにミトコンドリアrRNA分子(例えば、12Sおよび16SリボソームRNA)を含め哺乳類細胞で発現される全てのmRNA分子の集団を含むことができる。通例、リボソームRNAを増幅することは望ましくない。例えば、細胞中の遺伝子の発現を解析する遺伝子発現実験では、豊富なリボソームRNAの多数のコピーを増幅することで、豊富でないmRNAのレベルのわずかな変化が分かりにくくなる可能性がある。したがって、本発明の実践において、規定の条件の下でほとんどの(またはいずれもの)非標的リボソームRNAとハイブリダイズしないが、同一の規定の条件の下で、細胞中で発現される他の標的mRNA分子のほとんど(好ましくは全て)とハイブリダイズする第一のオリゴヌクレオチドの亜集団が選択される。
【0035】
規定の条件の下で標的核酸集団とハイブリダイズするが、規定の条件の下で非標的核酸集団とハイブリダイズしない第一のオリゴヌクレオチドの亜集団を選択するためには、非標的核酸集団の成員の完全なまたは実質的に完全な核酸配列を知ることが必要である。したがって、例えば、5S、18Sおよび28SリボソームRNA (またはリボソームRNAの前記部類の各々の代表的成員)の核酸配列ならびに12Sおよび16SリボソームミトコンドリアRNAの核酸配列を知ることが必要である。細胞サンプルを得る哺乳類種に関するリボソームRNAの配列は、公的にアクセス可能なデータベースのなかで見出すことができる。例えば、2007年9月5日アクセス時の、ヒト12S、16S、18Sおよび28SリボソームRNAに対するNCBI Genbank識別子が表1に示されている。
【0036】
次いで、適当なソフトウェアプログラムを使用し、第一のオリゴヌクレオチドの集団中の全オリゴヌクレオチドの配列(例えば、可能な全ての6核酸オリゴヌクレオチドの集団)とリボソームRNAの配列とを比較して、規定のハイブリダイゼーション条件の下で、どのオリゴヌクレオチドがリボソームRNAの任意の部分とハイブリダイズするかを判定する。規定のハイブリダイゼーション条件の下で、リボソームRNAのどの部分ともハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドのみを選択する。核酸配列の比較および規定のハイブリダイゼーション条件の下で互いにハイブリダイズする配列の特定を可能とするパールスクリプト(Perl script)を容易に作成することができる。
【0037】
したがって、例えば、実施例1でさらに十分に記述されているように、どのリボソームRNA配列のどの部分にも厳密に相補的ではない、可能な全ての6核酸オリゴヌクレオチドの亜集団が特定された。一般に、(規定の条件の下で標的核酸集団とハイブリダイズするが、規定の条件の下で非標的核酸集団とハイブリダイズしない)オリゴヌクレオチドの亜集団は、RNAサンプル中の全てのまたは実質的に全ての核酸分子とハイブリダイズするために十分に異なるオリゴヌクレオチド配列を含む必要がある。本明細書の実施例1は、SEQ ID NO:1〜749に記載の核酸配列を有するオリゴヌクレオチドの集団が、RefSeqと呼ばれる公的にアクセス可能なデータベースに保存されている遺伝子転写物の集団内の全てのまたは実質的に全ての核酸配列とハイブリダイズすることを示している。
【0038】
さらなる規定の核酸配列部分
第一のオリゴヌクレオチドの選択された亜集団(例えば、SEQ ID NO:1〜749)を用いて、RNA分子の標的集団の逆転写をプライムし、第一鎖cDNAを作出することができる。あるいは、各オリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列を含み、さらなる規定の核酸配列も含む、第一のオリゴヌクレオチドの集団をプライマーとして用いることもできる。さらなる規定の核酸配列は、通例、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列の5'側に位置している。通例、オリゴヌクレオチドの集団は、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の全成員の配列を含む(例えば、オリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列の全てを含むことができる)。
【0039】
さらなる規定の核酸配列は、相補的標的配列に対するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特異性に影響を与えないように選択される。例えば、図1Dに示されるように、各第一のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列の5'側に位置した転写プロモーター配列または第一のプライマー結合部位(PBS#1)を含むことができる。プロモーター配列は、増幅された核酸分子の中に取り込まれ、したがって、これをRNA合成用の鋳型として用いることができる。オリゴヌクレオチドの集団の規定の配列部分の中に、任意のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含めることができる。代表的な例としては、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)、SP6プロモーター(SEQ ID NO:1509)およびT3プロモーター(SEQ ID NO:1510)が挙げられる。
【0040】
本発明のこの局面のいくつかの態様において、図1Cに示されるように、オリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドは、ランダムなハイブリダイズ部分およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列を含む。図1Cに示されるように、各第一のオリゴヌクレオチドは、ランダムなハイブリダイズ部分の5'側に位置するプライマー結合部位を含んだ規定の配列を含むことができる。プライマー結合部位は、増幅された核酸の中に取り込まれ、これをcDNAからの二本鎖増幅DNA産物の作出のためのPCRプライマー結合部位として用いることができる。プライマー結合部位は、転写プロモーター配列の一部分でありうる。
【0041】
オリゴヌクレオチドの第二の集団の配列
オリゴヌクレオチドの第二の集団の選択過程は、オリゴヌクレオチドの第一の集団の選択で上述した過程と似ているが、異なるのは、6ヌクレオチド、7ヌクレオチドまたは8ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で標的RNAから逆転写された第一鎖cDNAとハイブリダイズするように、かつ規定の条件の下で非標的RNAから逆転写された第一鎖cDNAとハイブリダイズしないように選択されるという点である。オリゴヌクレオチドの第二の集団は、上述の方法を用いて、例えば、公的に入手可能なリボソームRNA配列を用いて選択することができる。オリゴヌクレオチドの第二の集団は、オリゴヌクレオチドの第一の集団の逆相補体(抗NSR)として作出することもできる。
【0042】
したがって、例えば、実施例1でさらに十分に記述されているように、どのリボソームRNA配列のどの部分にも厳密に相補的ではない、可能な全ての6核酸オリゴヌクレオチドに基づき第二の集団が選択された。本明細書の実施例1は、SEQ ID NO:1〜749に記載の核酸配列を有するオリゴヌクレオチドの集団が、RefSeqと呼ばれる公的にアクセス可能なデータベースに保存されている遺伝子転写物の集団内の全てのまたは実質的に全ての核酸配列とハイブリダイズすることを示している。次いでオリゴヌクレオチドの第一の集団(SEQ ID NO:1〜749、NSR)の逆相補体である、第二の集団SEQ ID NO:750〜1498 (抗NSR)が作出された。
【0043】
さらなる規定の核酸配列部分
第二のオリゴヌクレオチドの選択された亜集団(例えば、SEQ ID NO:750〜1498)を用いて、標的集団である第一鎖cDNA分子の第二鎖cDNA合成をプライムすることができる。あるいは、各オリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列を含み、さらなる規定の核酸配列も含む、第二のオリゴヌクレオチドの集団をプライマーとして用いることもできる。さらなる規定の核酸配列は、通例、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列の5'側に位置している。通例、オリゴヌクレオチドの集団は、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の全成員の配列を含む(例えば、オリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列の全てを含むことができる)。
【0044】
さらなる規定の核酸配列は、相補的標的配列に対するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特異性に影響を与えないように選択される。例えば、図1Dに示されるように、各第一のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの選択された亜集団の成員の配列の5'側に位置した転写プロモーター配列または第二のプライマー結合部位(PBS#2)を含むことができる。プロモーター配列は、増幅された核酸分子の中に取り込まれ、したがって、これをRNA合成用の鋳型として用いることができる。オリゴヌクレオチドの集団の規定の配列部分の中に、任意のRNAポリメラーゼプロモーター配列を含めることができる。代表的な例としては、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)、SP6プロモーター(SEQ ID NO:1509)およびT3プロモーター(SEQ ID NO:1510)が挙げられる。
【0045】
別の局面において、本発明は、第一のオリゴヌクレオチドの集団を提供し、ここでこの集団の各オリゴヌクレオチドは、(a) オリゴヌクレオチドの亜集団が哺乳類細胞で発現される全てのまたは実質的に全てのRNAとハイブリダイズするが、リボソームRNAとハイブリダイズしない、オリゴヌクレオチドの亜集団(SEQ ID NO:1〜749)の成員である6核酸オリゴヌクレオチドの配列; および(b) 6核酸オリゴヌクレオチドの配列の5'側に位置するプライマー結合部位(PBS#1)配列(SEQ ID NO:1499)を含む。一つの態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列の全てを含む。別の態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含む。
【0046】
任意で、オリゴヌクレオチドの第一の集団における規定の配列部分とハイブリダイズ部分との間にスペーサー部分が位置してもよい。スペーサー部分は、通例、1から12ヌクレオチド長(例えば、1から6ヌクレオチド長)であり、ランダムなヌクレオチド(N=A、C、TまたはG)の任意の組み合わせを含むことができる。スペーサー部分は、例えば、ランダム選択のヌクレオチドから構成されることができる。スペーサー部分の全部または一部が、ハイブリダイズ部分と同一の標的核酸配列とハイブリダイズしてもしなくてもよい。スペーサー部分の全部または一部がハイブリダイズ部分と同一の標的核酸配列とハイブリダイズする場合、ハイブリダイズ部分およびハイブリダイズスペーサー部分を含むオリゴヌクレオチドによってプライムされるcDNA合成の効率を増強させる効果がある。いくつかの態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、プライマー結合部位とハイブリダイズ部分との間に位置する1〜10個のランダムなヌクレオチド(A、C、TまたはG)からなるスペーサー領域をさらに含む。別の態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列の全てを含み、ここで各ヌクレオチド配列が5'末端に少なくとも一つのスペーサーヌクレオチドをさらに含む。
【0047】
別の局面において、本発明は、第二のオリゴヌクレオチドの集団を提供し、ここでこの集団の各オリゴヌクレオチドは、(a) オリゴヌクレオチドの亜集団が哺乳類細胞で発現されるRNAから逆転写された全てのまたは実質的に全ての第一鎖cDNAとハイブリダイズするが、リボソームRNAから逆転写された第一鎖cDNAとハイブリダイズしない、オリゴヌクレオチドの亜集団(SEQ ID NO:750〜1498)の成員である6核酸オリゴヌクレオチドの配列; および(b) 6核酸オリゴヌクレオチドの配列の5'側に位置するプライマー結合部位(PBS#2)配列(SEQ ID NO:1500)を含む。一つの態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列の全てを含む。別の態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含む。
【0048】
任意で、オリゴヌクレオチドの第二の集団における規定の配列部分とハイブリダイズ部分との間にスペーサー部分が位置してもよい。スペーサー部分は、通例、1から12ヌクレオチド長(例えば、1から6ヌクレオチド長)であり、ランダムなヌクレオチド(N=A、C、TまたはG)の任意の組み合わせを含むことができる。スペーサー部分は、例えば、ランダム選択のヌクレオチドから構成されることができる。スペーサー部分の全部または一部が、ハイブリダイズ部分と同一の標的核酸配列とハイブリダイズしてもしなくてもよい。スペーサー部分の全部または一部がハイブリダイズ部分と同一の標的核酸配列とハイブリダイズする場合、ハイブリダイズ部分およびハイブリダイズスペーサー部分を含むオリゴヌクレオチドによってプライムされるcDNA合成の効率を増強させる効果がある。いくつかの態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、プライマー結合部位とハイブリダイズ部分との間に位置する1〜10個のランダムなヌクレオチド(A、C、TまたはG)からなるスペーサー領域をさらに含む。別の態様において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列の全てを含み、ここで各ヌクレオチド配列が5'末端に少なくとも一つのスペーサーヌクレオチドをさらに含む。
【0049】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団の規定の配列部分およびオリゴヌクレオチドの第二の集団の規定の配列部分はそれぞれ、少なくとも10ヌクレオチドから30ヌクレオチドまで、例えば10から12ヌクレオチドまで、10から14ヌクレオチドまで、10から16ヌクレオチドまで、10から18ヌクレオチドまで、および10から20ヌクレオチドまでなどに及ぶ長さからなる。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの第一および第二の集団のそれぞれの規定の配列部分は、10ヌクレオチドからなり、ここで規定の配列部分がPCRプライマー結合部位を含み、かつここでオリゴヌクレオチドの第一の集団の各成員におけるPCR結合部位の中の少なくとも8個の連続したヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの第二の集団の各成員におけるPCR結合部位の中の少なくとも8個のヌクレオチドと同一の配列を有する。さらなる態様において、オリゴヌクレオチドの第一および第二の集団のそれぞれの規定の配列部分は、10ヌクレオチドからなり、ここで規定の配列部分がPCRプライマー結合部位を含み、かつここでオリゴヌクレオチドの第一の集団の各成員におけるPCR結合部位の中の少なくとも8個の連続したヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの第二の集団の各成員におけるPCR結合部位の中の少なくとも8個のヌクレオチドと同一の配列を有し、かつここでオリゴヌクレオチドの第一の集団における規定の配列部分の3'末端の残り2個のヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの第二の集団における規定の配列部分の3'末端の2個のヌクレオチド(例えば、G、A)とは異なり(例えば、C、T)、それにより配列読み出し結果のアライメントに先立って配列解析後に転写物鎖(センスまたはアンチセンス)を特定することが可能になる。
【0050】
さらなる態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団の規定の配列部分がRNA部分およびDNA部分を含み、このRNA部分がこのDNA部分に対して5'側にある、ハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチドが提供される。一つの態様において、ハイブリッドプライマーの5' RNA部分は少なくとも11個のRNAヌクレオチドの規定の配列部分からなり、ハイブリッドプライマーの3' DNA部分は少なくとも3個のDNAヌクレオチドからなる。具体的な態様において、ハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチドは、NSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)の5'末端に共有結合的に付着されたSEQ ID NO:1558を含む。ハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチドを用いて作出されたcDNAは、実施例6でさらに記述されているように、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,946,251号に記述されている方法を用いて一本鎖増幅DNAを作出するための鋳型として用いることができる。
【0051】
例えば、ハイブリッドRNA/DNAの規定の配列部分(SEQ ID NO:1558)およびハイブリダイズ部分(SEQ ID NO:1〜749)を含む第一鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第一の集団は、鋳型RNAにおける標的核酸分子の複製の基礎となる。ハイブリッドRNA/DNAプライマー部分を含むオリゴヌクレオチドの第一の集団は、RNA鋳型中の標的RNAとハイブリダイズし、ハイブリッドRNA/DNAプライマーがRNA依存性DNAポリメラーゼにより伸長されて、第一のプライマー伸長産物(第一鎖cDNA)を形成する。鋳型RNAの切断後、第二鎖cDNAが第一のプライマー伸長産物との複合体の形で形成される。この態様によれば、第一および第二プライマー伸長産物の二本鎖複合体は、第一のプライマー伸長産物におけるハイブリッドプライマーの存在により、一端がRNA/DNAハイブリッドで構成されている。次いで二本鎖複合体を用いて、ハイブリッドからRNA配列を切断する(RNAseHなどの) RNA/DNAハイブリッドからRNAを切断する酵素などの作用物質により一本鎖DNA増幅産物を作出し、第二のプライマー伸長産物上の配列を、第一のハイブリッドプライマーと同じものでも同じものでなくてもよい、別のハイブリッドプライマーによる結合に利用できるようにする。phi29などのプロセッシング力の高いDNAポリメラーゼによって、先に結合された切断された第一のプライマー伸長産物に置き換わる別の第一のプライマー伸長産物を作出し、置換された切断された第一のプライマー伸長産物をもたらす。
【0052】
代替的な態様において、ランダムプライマーまたはNSRプライマーおよび抗NSRプライマー、あるいはその組み合わせのいずれかを用いて作出された、二本鎖cDNA産物(全DNA)を改変することにより一本鎖DNA増幅のための二本鎖複合体を作出する。二本鎖cDNA産物を変性させて、RNA/DNAハイブリッドプライマーを、第二鎖cDNAの3'末端部分で所定のプライマー配列にアニールする。次いでハイブリッドプライマーのDNA部分を逆転写酵素により伸長させて、RNAハイブリッド部分を有する二本鎖複合体を形成させる。次いで二本鎖複合体を、初めにRNAseHで処理して複合体のRNA部分を除去し、RNA/DNAハイブリッドプライマーを付加し、phi29などの、プロセッシング力の高いDNAポリメラーゼを付加して一本鎖DNA増幅産物を作出することによる一本鎖DNA複製のための鋳型として用いる。
【0053】
ハイブリダイゼーション条件
本発明の実践において、第一のオリゴヌクレオチドの集団は、オリゴヌクレオチドの集団の成員が、規定の条件の下で標的核酸集団とハイブリダイズするが、同一の規定の条件の下で非標的核酸集団とハイブリダイズしない能力に基づき、オリゴヌクレオチドの集団から選択される。規定のハイブリダイゼーション条件は、第一のオリゴヌクレオチドが、リボソームRNAを除く、サンプル中に存在する全ての核酸分子と特異的にハイブリダイズすることを許容する。通例、ハイブリダイゼーション条件は、未変性二重鎖の融解温度(Tm)より25℃から30℃(例えば、10℃)低い。約100塩基を超える核酸分子に対するTmは、式Tm = 81.5 + 0.41%(G+C) - log(Na+)によって計算することができ、式中、(G+C)は、核酸分子のグアノシンおよびシトシン含量である。長さが100塩基未満のオリゴヌクレオチド分子の場合、例示的なハイブリダイゼーション条件は、Tmより5℃から10℃低い。平均して、短いオリゴヌクレオチド二重鎖のTmは、およそ(500/オリゴヌクレオチド長)℃だけ低下する。本発明のいくつかの態様において、ハイブリダイゼーション温度は、40℃から50℃の範囲内である。適切なハイブリダイゼーション条件は、必要以上の実験操作を行うことなく経験的に特定することもできる。
【0054】
本発明の一つの態様において、オリゴヌクレオチドの第一の集団は、約40℃の温度で核酸分子の標的集団とハイブリダイズする。
【0055】
本発明の一つの態様において、オリゴヌクレオチドの第二の集団は、約37℃の温度で一本鎖プライマー伸長産物の集団における核酸分子の標的集団とハイブリダイズする。
【0056】
増幅条件
本発明の実践において、標的核酸集団の第一亜集団の増幅は、規定の増幅条件の下で行われる。ハイブリダイゼーション条件は、前記のように選択することができる。通例、規定の増幅条件には、逆転写酵素を用いた第一鎖cDNA合成が含まれる。逆転写反応は、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の規定の濃度の存在下で行われる。いくつかの態様において、dNTP濃度は、参照により本明細書に組み入れられる、2006年10月27日付で出願された同時係属中の米国特許出願第11/589,322号に記述されているように、増幅された産物を標的遺伝子に関して濃縮するために、約1000から約2000 μMの範囲内である。
【0057】
オリゴヌクレオチドの組成および合成
本発明の実践において有用なオリゴヌクレオチドプライマーは、所望の反応をプライムできる限りにおいて、DNA、RNA、PNA、キメラ混合物、またはこれらの誘導体もしくは修飾型とすることができる。オリゴヌクレオチドプライマーは、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格の位置で修飾されてもよく、所望の増幅反応を依然としてプライムできる限りにおいて、他の付加基または標識を含んでもよい。
【0058】
例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、および2,6-ジアミノプリンを含むがこれらに限定されない群より選択される少なくとも一つの修飾された塩基部分を含むことができる。
【0059】
同じく、例として、オリゴヌクレオチドプライマーは、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロースおよびヘキソースを含むが、これらに限定されない群より選択される少なくとも一つの修飾された糖部分を含むことができる。
【0060】
さらなる例として、オリゴヌクレオチドプライマーは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステルおよびホルムアセタールまたはこれらの類似体からなる群より選択される少なくとも一つの修飾されたリン酸骨格を含むことができる。
【0061】
本発明の方法で用いるオリゴヌクレオチドプライマーは、非特異的な核酸切断性の化学物質もしくは酵素、または部位特異的な制限エンドヌクレアーゼを用いたより大きな核酸断片の切断によって、あるいは当技術分野において公知の標準的な方法による合成によって、例えば、自動DNA合成装置(Biosearch, Applied Biosystemsなどから市販されているような)および標準的なホスホルアミダイト化学の使用による合成によって、得ることができる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinら(Nucl. Acids Res. 16:3209-3221, 1988)の方法によって合成することができ、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、制御された孔質ガラス重合体支持体を用いて調製することができる(Sarin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451, 1988)。
【0062】
所望のオリゴヌクレオチドが合成されたら、固相支持体上で合成されたそのオリゴヌクレオチドを固相支持体から切除し、存在する任意の保護基を除去するために当技術分野において公知の方法によって処理する。次いで、抽出およびゲル精製を含め、当技術分野において公知の任意の方法によりオリゴヌクレオチドを精製することができる。オリゴヌクレオチドの濃度および純度は、アクリルアミドゲル上で分離されたオリゴヌクレオチドを調べることにより、または分光光度計中260 nmで光学密度を測定することにより判定することができる。
【0063】
本発明のこの局面の方法は、例えば、mRNAのコード領域、イントロン、遺伝子の選択的スプライシング型、および遺伝子発現を調節する非コードRNAを選択的に増幅するために用いることができる。
【0064】
別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:1〜749に記載の核酸配列を少なくとも10%(少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%などの)含むオリゴヌクレオチドの集団を提供する。これらのオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)は、例えば、リボソームRNA分子に相補的なcDNA分子の第一鎖合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたRNA分子に相補的なcDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。実際、これらのオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)は、例えば、有意な量のリボソームRNAまたはミトコンドリアリボソームRNAを増幅させずに、RNA分子の任意の集団を鋳型として用い、cDNAの合成をプライムするために用いることができる。例えば、本発明は、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)などの転写プロモーターまたはプライマー結合部位(PBS#1) (SEQ ID NO:1499)のような規定の配列部分が、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドがプライマー結合部位SEQ ID NO:1499からなり、かつランダムなスペーサーヌクレオチド(A、C、TまたはG)がSEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%など)含む。
【0065】
別の局面において、本発明は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の核酸配列を少なくとも10%(少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%などの)含むオリゴヌクレオチドの集団を提供する。これらのオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:750〜1498)は、例えば、リボソームRNA分子に相補的なcDNA分子の第二鎖合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたRNA分子に相補的な一本鎖プライマー伸長産物の第二鎖合成をプライムするために用いることができる。実際、これらのオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:750〜1498)は、例えば、有意な量の、リボソームRNAまたはミトコンドリアリボソームRNAに相補的な一本鎖プライマー伸長分子を増幅させずに、一本鎖プライマー伸長分子の任意の集団を鋳型として用いて、第二鎖cDNAの合成をプライムするために用いることができる。例えば、本発明は、T7プロモーター(SEQ ID NO:1508)などの転写プロモーターまたはプライマー結合部位(PBS#2) (SEQ ID NO:1500)のような規定の配列部分が、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドがプライマー結合部位(PBS#2) SEQ ID NO:1500を含み、かつランダムなスペーサーヌクレオチド(A、C、TまたはG)がSEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%など)含む。
【0066】
別の局面において、本発明は、RNA鋳型分子の集団から一本鎖プライマー伸長産物(第一鎖cDNA)を選択的に合成するための試薬を提供する。この試薬は、例えば、リボソームRNA分子に相補的な第一鎖cDNA分子の合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたサンプル中の標的RNA鋳型分子に相補的な第一鎖cDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。本発明の試薬は、SEQ ID NO:1〜749に記載の核酸配列を少なくとも10%含んだオリゴヌクレオチドの集団を含む。いくつかの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含んだオリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、リボソームRNAおよびミトコンドリアrRNAを除く、サンプル中に存在する実質的に全ての核酸分子とハイブリダイズするように選択される。他の態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、サンプル中に存在する核酸分子のサブセットとハイブリダイズするように選択され、該サブセットはリボソームRNAを含まない。
【0067】
別の局面において、本発明は、一本鎖プライマー伸長産物(第一鎖cDNA)の集団から二本鎖cDNAを選択的に合成するための試薬を提供する。この試薬は、例えば、リボソームRNA分子に相補的な第二鎖cDNA分子の合成をプライムせずに、哺乳類被験体から単離されたサンプル中の標的RNA鋳型分子に相補的な第二鎖cDNA分子の合成をプライムするために用いることができる。本発明のこの局面による試薬は、ランダムプライマーを用いて作出される第一鎖cDNAの合成をプライムするために用いられてもよく、または標的分子の選択性に関する追加段階を提供するために、SEQ ID NO:1〜749などの、NSRプライマーを用いて作出される第一鎖cDNAの合成をプライムするために用いられてもよい。本発明のこの局面による試薬は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の核酸配列を少なくとも10%含んだオリゴヌクレオチドの集団を含む。いくつかの態様において、本発明は、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含んだオリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、リボソームRNAおよびミトコンドリアrRNAから合成された第一鎖cDNAを除く、サンプル中に存在する実質的に全ての第一鎖cDNA分子とハイブリダイズするように選択される。他の態様において、オリゴヌクレオチドの集団は、サンプル中に存在する第一鎖cDNA分子のサブセットとハイブリダイズするように選択され、該サブセットは、リボソームRNAから合成されたcDNA分子を含まない。
【0068】
別の態様において、本発明は、T7プロモーターなどの転写プロモーターを含む規定の配列部分が、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。別の態様において、本発明は、プライマー結合部位(例えば、PBS#1)を含む規定の配列部分が、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749として記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するプライマー結合部位(PBS#1) (SEQ ID NO:1499)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。いくつかの態様において、本発明は、プライマー結合部位と、SEQ ID NO:1〜749として記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員との間に位置する、少なくとも一つのランダムなヌクレオチドのスペーサー領域をさらに含む試薬を提供する。
【0069】
別の態様において、本発明は、T7プロモーターなどの転写プロモーターを含む規定の配列部分が、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。別の態様において、本発明は、プライマー結合部位(例えば、PBS#2)を含む規定の配列部分が、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:750〜1498として記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置するプライマー結合部位(PBS#2) (SEQ ID NO:1500)を含む、オリゴヌクレオチドの集団を含む試薬を提供する。いくつかの態様において、本発明は、プライマー結合部位と、SEQ ID NO:750〜1498として記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員との間に位置する、少なくとも一つのランダムなヌクレオチドのスペーサー領域をさらに含む試薬を提供する。
【0070】
本発明の試薬は、水溶液、または水分が除去されたもしくは凍結乾燥された固体を含む水溶液として提供することができる。
【0071】
さらなる態様において、本発明の試薬は、二本鎖cDNAを産生するための以下の成分: 逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、RNaseH酵素、Tris緩衝液、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、還元剤、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、β-ニコチンアミドアデニン二ヌクレオチド(β-NAD+)およびリボヌクレアーゼ阻害剤の一つまたは複数を含むことができる。例えば、試薬は、低下したRNaseH活性および増加した熱安定性を有する逆転写酵素(例えば、SuperScript(商標) III Reverse Transcriptase, Invitrogen)ならびに50から5000 μMの範囲内または、より好ましくは、1000から2000 μMの範囲内のdNTPの最終濃度などの、第一鎖cDNA合成に対して最適化された成分を含むことができる。
【0072】
別の局面において、本発明は、哺乳類被験体から得られたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅するためのキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、(a) プライマー結合部位(PBS#1)などの規定の配列部分が、規定の条件の下でRNA鋳型分子の集団中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される6ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分の5'側に位置し、核酸分子の非標的集団がRNA鋳型分子の集団中の最も豊富な核酸分子から本質的になる、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を含む第一試薬、(b) プライマー結合部位(PBS#2)などの規定の配列部分が、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団のハイブリダイズ部分のヌクレオチド配列の逆相補体から選択される6ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分の5'側に位置する、オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を含む第二試薬、ならびに(c) オリゴヌクレオチドの第一の集団の第一の規定の配列部分に結合する第一のPCRプライマーおよびオリゴヌクレオチドの第二の集団の第二の規定の配列部分に結合する第二のPCRプライマーを含む。
【0073】
いくつかの態様において、第一試薬は、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の成員を含む。したがって、いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1〜749に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置する第一のプライマー結合部位(PBS#1) (SEQ ID NO:1499)を含む、オリゴヌクレオチドの第一の集団を含む第一試薬を含んだキットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、各オリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:750〜1498に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドの集団の異なる成員の5'側に位置する第二のプライマー結合部位(PBS#2) (SEQ ID NO:1500)を含む、オリゴヌクレオチドの第二の集団を含む第二試薬を含んだキットを提供する。いくつかの態様において、本発明は、第一のオリゴヌクレオチド集団における規定の配列部分とハイブリダイズする少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含み、かつ任意で第一のオリゴヌクレオチド集団とハイブリダイズしないさらなる配列尾部を含んでもよい第一のPCRプライマー、および第二のオリゴヌクレオチド集団における規定の配列部分とハイブリダイズする少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含み、かつ任意で第二のオリゴヌクレオチド集団とハイブリダイズしないさらなる配列尾部を含んでもよい第二のPCRプライマーを含んだキットを提供する。一つの態様において、第一のPCRプライマーはSEQ ID NO:1501からなり、かつ第二のPCRプライマーはSEQ ID NO:1502からなる。この態様によるキットは、本発明のNot-So-Randomプライマー(SEQ ID NO:1〜749)および抗NSR (SEQ ID NO:750〜1498)プライマーを用いて作出されたcDNAから増幅されるPCR産物を産生するのに有用である。
【0074】
本発明のキットは、本明細書において記述される方法にしたがって、任意の標的核酸集団、例えば、最も豊富に発現されるRNAを除く細胞または組織中で発現される全てのRNAを検出するために設計することができる。例示的なオリゴヌクレオチドプライマーの非限定的な例としては、SEQ ID NO:1〜749が挙げられる。プライマー結合領域の非限定的な例は、SEQ ID NO:1499および1500として記載されている。
【0075】
スペーサー部分は、標的RNAとハイブリダイズするヌクレオチドを含むヌクレオチドの任意の組み合わせを含むことができる。
【0076】
特定の態様において、キットは、6個、7個または8個のヌクレオチドのハイブリダイズ部分を有するオリゴヌクレオチドプライマーを含んだ試薬を含む。
【0077】
特定の態様において、キットは、複数の哺乳類mRNA標的を検出するために使用できるオリゴヌクレオチドプライマーの集団を含んだ試薬を含む。
【0078】
特定の態様において、キットは、40℃から50℃の温度範囲でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む。
【0079】
別の態様において、キットは、rRNAまたはミトコンドリアrRNAを検出しないオリゴヌクレオチドの亜集団を含む。キットのこの態様にしたがって用いるための例示的なオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1〜749およびSEQ ID NO:750〜1498に提供されている。
【0080】
いくつかの態様において、キットは、SEQ ID NO:1〜749に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含むオリゴヌクレオチドの集団を含んだ試薬を含む。
【0081】
いくつかの態様において、キットは、SEQ ID NO:750〜1498に記載の6ヌクレオチド配列を少なくとも10%(例えば少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または99%など)含むオリゴヌクレオチドの集団を含んだ試薬を含む。
【0082】
特定の態様において、キットは、転写プロモーターがT7プロモーター(SEQ ID NO:1508)、SP6プロモーター(SEQ ID NO:1509)またはT3プロモーター(SEQ ID NO:1510)を含む、オリゴヌクレオチドを含む。
【0083】
別の態様において、キットは、ヌクレオチドの任意の組み合わせを含む1から12個のヌクレオチドのスペーサー部分を有するオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0084】
本発明のいくつかの態様において、キットは、cDNAを産生するための以下の成分: 逆転写酵素、DNAポリメラーゼ酵素、DNAリガーゼ酵素、RNaseH酵素、Tris緩衝液、カリウム塩(例えば、塩化カリウム)、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム)、アンモニウム塩(例えば、硫酸アンモニウム)、還元剤(例えば、ジチオスレイトール)、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、β-ニコチンアミドアデニン二ヌクレオチド(β-NAD+)およびリボヌクレアーゼ阻害剤の一つまたは複数をさらに含むことができる。例えば、キットは、低下したRNaseH活性および増加した熱安定性を有する逆転写酵素(例えば、SuperScript(商標) III Reverse Transcriptase, Invitrogen)ならびに50から5000 μMの範囲内または、より好ましくは、1000から2000 μMの範囲内のdNTPの最終濃度を与えるためのdNTP原溶液などの、第一鎖cDNA合成に対して最適化された成分を含むことができる。
【0085】
種々の態様において、キットは、PCR増幅段階中に二本鎖DNAに選択的にまたは排他的に結合するSYBRグリーン色素またはBEBO色素などの検出試薬を含むことができる。他の態様において、キットは、PCR増幅産物の量を測定するために蛍光発光体および消光物質を含むフォワードおよび/またはリバースプライマーを含むことができる。
【0086】
本発明のキットは増幅されたcDNAのインビトロ転写のための試薬も提供しうる。例えば、いくつかの態様において、キットは、以下の成分: RNAポリメラーゼ酵素、IPPase (イノシトールポリホスファート1-ホスファターゼ)酵素、転写緩衝液、Tris緩衝液、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム)、スペルミジン、還元剤(例えば、ジチオスレイトール)、ヌクレオシド三リン酸(ATP、CTP、GTP、UTP)およびアミノアリルUTPの一つまたは複数をさらに含むことができる。
【0087】
別の態様において、キットは、標識されたcDNAサンプルをマイクロアレイとハイブリダイズさせる際に用いるために、インビトロ転写物をCy3またはCy5色素で標識するための試薬を含むことができる。
【0088】
別の態様において、キットは、二本鎖PCR産物を標識するための試薬を含むことができる。例えば、キットはPCR中に、後でアミン反応性のCy色素に化学的にカップリングされうる、アミノアリルdUTPなどの、修飾塩基を組み入れるための試薬を含むことができる。もう一つの例では、キットは、PCR産物を標識するためにグアニン残基にCy色素を直接的に化学結合させるための試薬を含むことができる。
【0089】
別の態様において、キットは、二本鎖PCR産物をシーケンシングするための以下の試薬: Taq DNAポリメラーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、エキソヌクレアーゼI (大腸菌(E. coli))、シーケンシング用プライマー、dNTP、終結(デアザ)ミックス(ミックスG、ミックスA、ミックスT、ミックスC)、DTT溶液およびシーケンシング用緩衝液の一つまたは複数を含むことができる。
【0090】
キットは任意で、mRNA標的の選択的増幅においてキットを用いるための使用説明書を含んでもよい。また、キットには任意で、増幅されたcDNA分子のインビトロ転写のための使用説明書が付与されてもよく、インビトロ転写物を標識し、マイクロアレイとハイブリダイズさせるための使用説明書が付与されてもよい。キットには標識化および/またはシーケンシングのための使用説明書が付与されてもよい。キットには、サンプルを採取した時点でのサンプルのトランスクリプトームを提示する発現ライブラリーを作出するために発現ベクターにPCR産物をクローニングするための使用説明書が付与されてもよい。
【0091】
別の局面において、本発明は、選択的に増幅されたcDNA分子を作出するために核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法を提供する。本発明のこの局面による方法は、(a) 各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分とハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位とを含む、オリゴヌクレオチドの第一の集団を提供する段階、(b) 哺乳類被験体から単離されたRNA鋳型を含むサンプルにオリゴヌクレオチドの第一の集団をアニールする段階; (c) 逆転写酵素を用いてRNAからcDNAを合成する段階; (d) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドの第二の集団を用いて二本鎖cDNAを合成する段階であって、ここで各オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ部分およびハイブリダイズ部分の5'側に位置する第二のPCR結合部位を含み、ここでハイブリダイズ部分がSEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である段階; かつ(e) 二本鎖cDNA分子を精製する段階を含む。いくつかの態様において、この方法は、二本鎖cDNA分子をPCR増幅する段階をさらに含む。図1Cは、本発明のこの局面による方法の代表的な態様を示す。図1Cに示されるように、本方法の一つの態様において、第一のプライマー混合物は、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位(PBS#1)を含み、該ハイブリダイズ部分は、ランダムな9merの集団を含む。
【0092】
別の態様において、本発明は、選択的に増幅されたaDNA分子を作出するために核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法を提供する。図1Dは、本発明のこの局面による方法の代表的な態様を示す。図1Dに示されるように、第一のプライマー混合物は、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位(PBS#1)を含む。この方法は、増幅された二本鎖DNA (aDNA)を作出するために熱安定性DNAポリメラーゼ、第一のPCRプライマー結合部位に結合する第一のPCRプライマーおよび第二のPCRプライマー結合部位に結合する第二のPCRプライマーを用いて二本鎖cDNAをPCR増幅する段階をさらに含む。図1Dに示されるように、いくつかの態様において、この方法は、aDNAの少なくとも一部分をシーケンシングする段階をさらに含む。
【0093】
本明細書において記述される方法および試薬は、本発明のこの局面の実践において有用である。本発明のこの局面にしたがって、第一鎖cDNAから第二鎖DNA分子を合成するために、任意のDNA依存性DNAポリメラーゼを利用することができる。例えば、第二鎖DNA分子を合成するために、DNAポリメラーゼIのKlenow断片を利用することができる。第二鎖DNA分子の合成は、6から9個のヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分を含み、かつハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分をさらに含むオリゴヌクレオチドの第二の集団を用いてプライムされる。
【0094】
前記規定の配列部分は、配列がオリゴヌクレオチドの第一の集団中に含まれる規定の配列と異なるという条件で、任意の適当な配列を含むことができる。プライマー配列の選択に応じて、これらの規定の配列部分は、例えば、第二のDNA分子からDNA依存性RNA合成を選択的に指令するために、および/またはDNA依存性DNA合成を介して二本鎖cDNA鋳型を増幅するために用いることができる。
【0095】
二本鎖DNA分子の精製
第二のDNA分子の合成は、図1Dに示されているように、第一のDNA分子が第二のDNA分子とハイブリダイズされる二本鎖DNA分子の集団を与える。通例、二本鎖DNA分子は、第二のプライマーの全てまたは実質的に全て(すなわち、通例、99%超)など、50塩基対よりも短い実質的に全ての核酸分子を除去するために精製される。好ましくは、精製方法は、実質的に二本鎖であるDNA分子を選択的に精製し、一本鎖プライマーなどの、対を形成していない実質的に全ての一本鎖核酸分子を除去する。精製はサイズ分画カラムを通じた溶出によってなど、当技術分野で認められた任意の手段によって達成することができる。次いで、精製された第二のDNA分子を、例えば、沈殿させ、本発明のこの局面の方法の次の段階に適した緩衝液に再溶解させることができる。
【0096】
二本鎖DNA分子の増幅
本発明のこの局面の方法の実践において、二本鎖DNA分子は、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて酵素的に増幅される鋳型として利用される。ポリメラーゼ連鎖反応をプライムするために、任意の適当なプライマーを用いることができる。通例、二つのプライマーが使用され、一方のプライマーは第一のプライマー配列の規定の部分と(またはその相補鎖と)ハイブリダイズし、他方のプライマーは第二のプライマー配列の規定の部分と(またはその相補鎖と)ハイブリダイズする。
【0097】
PCR増幅条件
一般的に、ポリメラーゼ連鎖反応中の増幅サイクルの数が多くなるほど、得られる増幅されたDNAの量は多くなる。他方で、増幅サイクルが多すぎると、二本鎖DNAのランダムに偏った増幅がもたらされる可能性がある。したがって、いくつかの態様において、増幅サイクルの望ましい数は、5から35などの、5から40増幅サイクルの間、例えば10から30増幅サイクルなどである。
【0098】
温度条件に関しては、通例、サイクルには、95℃などの融解温度、約40℃から70℃まで変動するアニーリング温度、および通例約72℃である伸長温度が含まれる。アニーリング温度に関しては、いくつかの態様において、アニーリング温度は約55℃から65℃、より好ましくは約60℃である。
【0099】
一つの態様において、本発明のこの局面で用いる増幅条件には、(95℃、30秒; 60℃、30秒; 72℃、60秒)の10サイクル、次いで、(95℃、30秒; 60℃、30秒、72℃、60秒の20サイクル(各サイクルごとに、伸長段階に+10秒が付加される))が含まれる。
【0100】
本発明のこの局面の方法で用いるPCR反応成分に関して、dNTPは、通例、50 μMから2000 μM、より好ましくは800から1000 μMのdNTPの範囲内で反応中に存在する。MgCl2は、通例、0.25 mMから10 mMの範囲内で、より好ましくは約4 mMで反応中に存在する。フォワードおよびリバースPCRプライマーは、通例、約50 nMから2000 nMで反応中に存在し、より好ましくは、約1000 nMの濃度で存在する。
【0101】
DNA標識化
DNAチップをスクリーニングするために使われるプローブなどの、ハイブリダイゼーション実験におけるプローブとしての使用を容易にするために、増幅されたDNA分子は、任意で、色素分子により標識されてもよい。蛍光発光体および化学発光体などの、任意の適当な色素分子を利用することができる。増幅されたDNA分子に色素分子を付着させるための例示的な方法は、実施例5に示されている。
【0102】
本発明のこの局面による方法は、例えば、全RNAを含有する生体サンプルでのトランスクリプトーム・プロファイリングに用いることができる。いくつかの態様において、本発明のこの局面の方法にしたがって作出された、第一鎖cDNAでのNSRプライミング(priming)および第二鎖合成での抗NSRプライミングを用いてcDNAから産生された増幅aDNAを、遺伝子発現実験で用いるために標識し、これによって、NSRプライムcDNAから産生された増幅RNAよりも低いバックグラウンドレベルを通例もたらすハイブリダイゼーションに基づく試薬を提供する。
【0103】
本発明のこの局面のいくつかの態様において、第一および/または第二のプライマー結合領域の規定の配列部分は一つまたは複数の制限酵素部位をさらに含み、これによって増幅された部分に隣接した一つまたは複数の制限酵素部位を有する増幅された二本鎖DNA産物の集団を作出する。これらの増幅された産物は、配列解析のために直接使用されてもよく、または制限酵素での消化により放出され、さらなる解析用の発現ベクターなどの、任意の所望のベクターにサブクローニングされてもよい。PCR産物の配列解析は、例えば、Sangerのダイデオキシ鎖終結法、ダイターミネータシーケンシング法、または参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,232,656号(Solexa)に記述されているようにハイスループットシーケンシング法などの、任意のDNAシーケンシング法を用いて行うことができる。
【0104】
別の局面において、本発明は、哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の、核酸分子の標的集団の提示を含む選択的に増幅された核酸分子の集団を提供し、各増幅された核酸分子は、増幅された核酸配列の集団の成員に隣接した5'側の規定の配列部分および3'側の規定配列を含み、ここで選択的に増幅された配列の集団が、哺乳類被験体で発現される標的RNA分子に対応する増幅された核酸配列を含み、特定の哺乳類種に関して以下の特性を有する: (a) 75%を上回るポリアデニル化および非ポリアデニル化転写物を有する、かつ10%未満のリボソームRNA (例えば、rRNA (18Sまたは28S)およびmt-RNA)を有することによって特徴付けられる。
【0105】
本発明のこの局面にしたがって選択的に増幅される核酸分子の集団は、本明細書において記述される本発明の方法を用いて作出することができる。選択的に増幅された核酸分子の集団を発現ベクターにクローニングして、ライブラリーを作出することができる。あるいは、選択的に増幅された核酸分子の集団を基材に固定化して、増幅産物のマイクロアレイを作出することもできる。マイクロアレイは、紙、ガラス、セラミック、プラスチック、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアクリルアミド、ニトロセルロース、シリコン、金属、および光ファイバーからなる群より選択される材料から製造される、固体または半固体の基材に固定化された少なくとも一つの増幅産物を含みうる。増幅産物は、ピン、ロッド、ファイバー、テープ、糸、ビーズ、粒子、マイクロタイターウェル、キャピラリーおよびシリンダーを含む、二次元配置または三次元配置にある固体または半固体基材に固定化されうる。
【実施例】
【0106】
以下の例は、本発明を実践するために現在考えられる最良の様式を例示するものに過ぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0107】
実施例1
本実施例では、哺乳類細胞で発現される全てのまたは実質的に全てのRNA分子とハイブリダイズするが、核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)またはミトコンドリアリボソームRNA (12Sおよび16S mt-rRNA)とハイブリダイズしない、749種の6merオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)の第一の集団(Not-So-Random、「NSR」)の選択について記述する。NSRオリゴの逆相補体である抗NSRオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:750〜1498)の第二の集団も作出した。NSRオリゴの集団は第一鎖cDNA合成をプライムするために用いることができ、抗NSRオリゴの集団は第二鎖cDNA合成をプライムするために用いることができる。
【0108】
原理:
図1Aに示されるように、ランダムな6mer (N6)はRefSeqデータベース由来の(「ヌクレオチド配列」として表した)転写物配列のすべてのヌクレオチド位置でアニールすることができる。逆相補体が核リボソームRNA (18Sおよび28S rRNA)ならびにミトコンドリアリボソームRNA (12Sおよび16S mt-rRNA)に完全に一致する6merを差し引いた後、残りのNSRオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)は、図1Bに示されるように、RefSeqデータベース内の(「ヌクレオチド配列」として表した)核酸配列の4〜5ヌクレオチドごとに完全な一致を示す。
【0109】
方法:
各ヌクレオチドがA、T (もしくはU)、CまたはGである、全4,096種の可能な6merオリゴヌクレオチドをコンピュータ処理した。下記表1に示すように、各6merオリゴヌクレオチドの逆相補体を、18Sおよび28S rRNAのヌクレオチド配列と比較し、12Sおよび16SミトコンドリアrRNAのヌクレオチド配列と比較した。
【0110】
(表1)リボソームRNA
【0111】
表1に示したヒト核rRNA転写物の配列のいずれかに対して完全な一致を有する逆相補体6merオリゴヌクレオチド(これは合計で2,781種となった)を除外した。749種の6mer (SEQ ID NO:1〜749)の逆相補体は、rRNA転写物のいずれの部分にも完全に一致しなかった。ミトコンドリアrRNAに対する一致も除外し(566種)、計749種のオリゴ6mer (4096種(全6mer) - 2782種(euk-rRNAに対する一致) - 566種(mito-rRNAに対する一致) = 合計749種)が残った。
【0112】
rRNA遺伝子およびmt-rRNA遺伝子のいずれの部分に対しても完全な一致を持たない749種の6merオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:1〜749)を「Not-So-Random」(「NSR」)という。したがって、749種の6mer (SEQ ID NO:1〜749)の集団は、18S、28SならびにミトコンドリアrRNA (12Sおよび16S)を除く全ての転写物を増幅することができる。
【0113】
実施例2に記述されているように、NSRオリゴ(SEQ ID NO:1〜749)の集団を用いて第一鎖cDNA合成をプライムすることができ、この後に、ランダムプライマーまたは抗NSRプライマーのいずれかを用いて第二鎖合成を行うことができる。
【0114】
実施例2にさらに記述されるように、抗NSRオリゴ(SEQ ID NO:750〜1498)の集団を用いて、第二鎖cDNA合成をプライムすることができる。図1Cに示されるように、ランダムプライマーを用いて第一鎖cDNA合成を行い、引き続き抗NSRプライマーを用いて第二鎖cDNA合成を行うことができる。あるいは、図1Dに示されるように、NSRプライマーを用いて第一鎖cDNA合成を行い、引き続き抗NSRプライマーを用いて第二鎖cDNA合成を行うこともできる。
【0115】
他の種のRNAサンプルへの適用
ヒト以外の哺乳類(例えば、ラット、マウス)細胞の遺伝子プロファイリングのため、各哺乳類種から18Sおよび28Sに対応する遺伝子のリボソーム核rRNAを差し引くことにより、ならびに12Sおよび16Sに対応する遺伝子のリボソームミトコンドリアrRNAを差し引くことにより、類似の手法を行うことができる。
【0116】
葉緑体リボソームRNAを排除するNot-So-Random (NSR)プライマーの集団を作出することにより、植物細胞の遺伝子プロファイリングも行うことができる。
【0117】
実施例2
本実施例は、NSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いた全RNAの増幅によって、望ましくない、非標的リボソーム配列のプライミングが選択的に低減されることを示す。
【0118】
方法:
新たなプライマーライブラリーを構築するため、プライマーを以下のように個別に合成した。
【0119】
NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:1〜749)の第一の集団および抗NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)の第二の集団を実施例1に記述したように作出した。
【0120】
第一鎖cDNA合成のためのNSR
いくつかの態様において、第一鎖cDNA合成で用いるNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)の第一のプライマーセットは、以下の5'プライマー結合配列:
5'末端に共有結合的に付着された(別名「尾状の」) PBS#1: 5' TCCGATCTCT 3' (SEQ ID NO:1499)
をさらに含み、
以下の構成:
5' PBS#1 (SEQ ID NO:1499) + NSR-6mer (SEQ ID NO:1〜749) 3'
を有するオリゴヌクレオチドの集団をもたらす。
【0121】
別の態様において、各NSR-6merが少なくとも一つのスペーサーヌクレオチド(N) (ここで各N = A、G、CまたはT)を任意で含んでもよく、(N)が5'PBS#1とNSR-6merとの間に位置した、オリゴヌクレオチドの集団を作出した。スペーサー領域は1個のヌクレオチドから10個またはそれ以上までのヌクレオチド(N = 1〜10)を含み、以下の構成を有するオリゴヌクレオチドの集団をもたらしうる:
5' PBS#1 (SEQ ID NO:1499) + (N1〜10) + NSR-6mer (SEQ ID NO:1〜749) 3'。
【0122】
第二鎖cDNA合成のための抗NSR
いくつかの態様において、第二鎖cDNA合成で用いる抗NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)の集団は、以下の5'プライマー結合配列:
抗NSR-6merプライマーの5'末端に共有結合的に付着された(別名「尾状の」) PBS#2: 5' TCCGATCTGA 3'(SEQ ID NO:1500)、
をさらに含み、
以下の構成:
5' PBS#2 (SEQ ID NO:1500) + 抗NSR-6mer (SEQ ID NO:750〜1498) 3'
をもたらす。
【0123】
別の態様において、各抗NSR-6merが少なくとも一つのスペーサーヌクレオチド(N) (ここで各N = A、G、CまたはT)を任意で含んでもよく、(N)が5'PBS#2と抗NSR-6merとの間に位置した、オリゴヌクレオチドの集団を作出した。
【0124】
スペーサー領域は1個のヌクレオチドから10個またはそれ以上までのヌクレオチド(N = 1〜10)を含み、以下の構成を有するオリゴヌクレオチドの集団をもたらしうる:
5' PBS#2 (SEQ ID NO:1500) + (N1〜10) + 抗NSR-6mer (SEQ ID NO:750〜1498) 3'。
【0125】
フォワードおよびリバースプライマー(PCR増幅用)
PBS#1 (SEQ ID NO:1499)で尾部付けしたNSR-6merおよびPBS#2 (SEQ ID NO:1500)で尾部付けした抗NSR-6merを用いて作出された二本鎖cDNAを増幅するために、以下のフォワードおよびリバースプライマーを合成した。
NSR_F_SEQプライマー1:
ここで各N = G、A、CまたはT。
NSR_R_SEQプライマー1:
ここで各N = G、A、CまたはT。
【0126】
上記の態様において、フォワードプライマー(SEQ ID NO:1501)およびリバースプライマー(SEQ ID NO:1502)の最も5'側の領域はそれぞれ、10merの(N)ヌクレオチド配列を含む。別の態様において、フォワードプライマー(SEQ ID NO:1501)およびリバースプライマー(SEQ ID NO:1502)の最も5'側の領域はそれぞれ、増幅されたPCR産物のDNAシーケンシングを容易にするために少なくとも20個の(N)ヌクレオチド、少なくとも30個の(N)ヌクレオチドまたは少なくとも40個の(N)ヌクレオチドなどの、10個を上回る(N)ヌクレオチドを含む。
【0127】
対照プライマー
ランダムプライマーのプールで増幅された対照反応物を増幅するために、以下のプライマーを用いた。
【0128】
以下のプライマー結合部位をランダムプライマーに付加した:
。
【0129】
ランダムプライマー(N=7もしくはN=9)、またはNSRプライマーの付いた以下のプライマー結合部位:
Y4R-N7 (第1鎖cDNA):
[ここでN = A、G、CまたはT]
Y4R-NSR (第1鎖cDNA):
グロビン(αまたはβ)に対する完全な一致なし、rRNA (18S、28S)に対する完全な一致なしの6-mer NSRオリゴのコアセットを含むNSRプライマーに共有結合的に付着された
Y4F-N9 (第2鎖cDNA合成):
[ここでN = A、G、CまたはT]
。
【0130】
その他任意のプライマープールの構成
増幅されたcDNA産物に転写プロモーターを付加するためにNSRプールに共有結合的に付着されたプライマー結合部位として使用されうるさらなるプライマー:
。
【0131】
RNAを増幅するために用いたプライマープールの構成
プライマーを上記のように個別に合成し、以下の構成でプールし、次いでプライマープールを用いて、下記のように全RNAから増幅された核酸のライブラリーを作出した。
【0132】
(表2)プライマープールの構成
PM = プライマーの最も3'側の6ntで完全な一致
R = rRNA (18Sまたは28S)
M = mt-rRNA (12Sまたは16S)
G = グロビン(HBA1、HBA2、HBB、HBD、HBG1、HBG2)
【0133】
(表3)RNA増幅実験で用いるプライマーセット
【0134】
cDNA合成およびPCR増幅
プロトコルには次のように3段階の増幅手法が含まれた: (1) 第一のプライマー結合部位(PBS#1)を含むNSRプライマーでプライムされる逆転写によってRNAから第一鎖cDNAを作出し、NSRプライム第一鎖cDNAを作出した; (2) 第二のプライマー結合部位(PBS#2)を含む抗NSRプライマーで第二鎖cDNA合成をプライムした; かつ(3) 合成されたcDNAを、第一および第二のプライマー結合部位に結合するフォワードおよびリバースプライマーを用いてPCR増幅し、増幅DNA (aDNA)を作出した。
【0135】
(表4)第一および第二鎖合成に用いたプライマー
【0136】
反応条件:
細胞株Jurkat (Tリンパ球、ATCC番号TIB-152)およびK562 (慢性骨髄性白血病、ATCC番号CCL-243)の場合、Ambion, Inc. (Austin, Texas)から全RNAを入手した。
【0137】
第一鎖逆転写:
第一鎖逆転写を以下のように行った。
【0138】
以下を混ぜ合わせる:
・1 μg/μlのJurkat全RNA鋳型(Ambion, Inc. (Austin, Texas)から入手した) 1 μl
・100 μMのNSRプライマープール原液(表2に記述したように) 2 μl
・最終容量を10 μlとするためにH2O 7 μl。
【0139】
混合し、70℃で5分間インキュベートし、氷上で急冷した。
【0140】
以下を含有するRTカクテル(氷上で調製) 10 μlを添加した:
・5×First Strand Buffer (250 mM Tris-HCL, pH 8.3, 375 mM KCl, 15 mM MgCl2) 4 μl
・25 mM dNTP (高) 1.6 μlまたは10 mM dNTP (低) 1.0 μl
・H2O 1 μl
・0.1 M DTT 1 μl
・RNAse OUT (Invitrogen) 1 μl
・MMLV逆転写酵素(200単位/μl) (SuperScript III(商標) (SSIII), Invitrogen Corporation, Carlsbad, California) 1 μl。
【0141】
サンプルを混合し、23℃で10分間インキュベートし、(「ホットスタート」をもたらすために)予め加温された40℃のサーマルサイクラーに移し、次いでサンプルを40℃で30分間、70℃で15分間インキュベートし、4℃まで冷却した。
【0142】
次いでRNAse H (1〜4単位/μl) 1 μlを添加し、サンプルを37℃で20分間インキュベートし、次いで95℃まで5分間加熱し、4℃で急冷した。
【0143】
第二鎖合成:
第二鎖合成カクテルを以下のように調製した:
・10×Klenow緩衝液10 μl
・抗NSRプライマー(100 μM) 4 μl
・10 mM dNTP 5.0 μl
・H2O 56.7 μl
・Klenow酵素(5 U/μl) 0.33 μl
【0144】
第二鎖合成カクテル80 μlを第一鎖鋳型反応混合液20 μlに添加し、混合し、37℃で30分間インキュベートし、次に4℃で急冷した。
【0145】
cDNA精製:
得られた二本鎖cDNAを、Ambion (Message Amp(商標) II aRNA Amplification Kit, Ambion Cat #AM1751)から入手したSpin Cartridgeおよびキット中に供給されている緩衝液により、製造元の指示書にしたがって精製した。全容量30 μlをカラムから溶出し、このうち20 μlを以後のPCRに用いた。
【0146】
PCR増幅:
精製されたcDNA鋳型(5分の1希釈した) 1 μlに以下の混合液を添加した:
・5×Roche Expand Plus PCR Buffer 10 μl
・10 mM dNTPS 2.5 μl
・フォワードPCRプライマー(10 μM原液) (SEQ ID NO:1501) 2.5 μl
・リバースPCRプライマー(10 μM原液) (SEQ ID NO:1502) 2.5 μl
・Taq DNAポリメラーゼ酵素0.5 μl
・H2O 27 μl
・25 mM MgCl2 4 μl。
【0147】
PCR増幅条件:
PCRプログラム#1:
94℃、2分間
94℃、10秒間
以下を8サイクル:
・60℃、10秒間
・72℃、60秒間
・72℃、60秒間
・94℃、15秒間
以下を17サイクル:
・60℃、30秒間
・72℃、60秒間 + 10秒/サイクル
仕上げのために72℃、5分間、それから4℃で冷却した。
【0148】
PCRプログラム#2:
94℃、2分間
94℃、10秒間
以下を2サイクル:
・40℃、10秒間
・72℃、60秒間
・72℃、60秒間
・94℃、10秒間
以下を8サイクル:
・60℃、30秒間
・72℃、60秒間
・72℃、60秒間
・94℃、15秒間
以下を15サイクル:
・60℃、30秒間
・72℃、60秒間 + 10秒/サイクル
仕上げのために72℃、5分間、それから4℃で冷却した。
【0149】
cDNA合成の結果:
結果を(1) 増幅されたDNA「aDNA」収量の測定; (2) cDNA中の種の集団が等しく提示されたことを確認するためのアガロースゲル上でのaDNAのアリコットの評価; および(3) qPCRによる選択したレポーター遺伝子の増幅レベルの測定(実施例3に記述されているように)という点で解析した。
【0150】
PCR産物を2%アガロースゲル上で解析した。PCR増幅プログラム#2を用いて対照反応でも試験条件でもともに100〜1000 bp間のDNAスメアが観察され、複数のRNA種のcDNA合成およびPCR増幅が成功したことが示唆された。PCR増幅プログラム#1を用いると、100〜100 bp範囲内のDNAスメアの存在から判定されるように対照反応は成功していたが、試験条件のいずれもDNAスメアに増幅されるものはなかった。その代わりに、プライマーダイマーから生じた可能性が高い低分子量の断片(未精製PCR産物)が観察された。それゆえ、これらの結果は、低温アニーリング(40℃)が、短い(10 nt)増幅尾部でのPCR増幅には重要であることを示唆している。
【0151】
第一鎖cDNA合成中の高いdNTP濃度(25 mM)では、低いdNTP濃度(10 mM)のdNTPと比べてcDNA産物の特異性が高くなることも分かった(データ不掲載)。
【0152】
第一鎖cDNA合成のためにのみNSRプライマープールを用い、その後、ランダムプライム第二鎖合成を行う場合、RNAse H処理によって増幅rRNA由来の混入の量が減ることもさらに分かった。しかしながら、第一鎖合成をプライムするためにNSRプライマーを用い、その後、第二鎖合成をプライムするために抗NSRプライマーを用いた場合、RNAse処理が、得られるcDNA産物の特異性に影響を与えるとは認められなかった。特異性を高めるのに重要ではないが、抗NSRプライマーを用いた第二鎖cDNA合成にRNAseを加え、Klenow反応中に鋳型として利用可能なさらに多くのcDNAを作出することにより反応の効率を高めることができる。
【0153】
要約すれば、第二鎖合成中に抗NSRプライマーを用いることは、標的核酸分子の選択的増幅にいくつかの予期せぬ利点をもたらすことが分かった。例えば、抗NSRプライマーを用いた第二鎖合成中のrRNA枯渇の大きさは、逆転写中にNSRプライマーを用いて認められたrRNA枯渇の大きさにほぼ等しいことが意外にも分かった。さらに、第二鎖合成中のプライミング特異性がKlenow酵素を用いた標準的な反応条件の下で達成されることは予期せぬ結果であった。これらの結果から、短いオリゴヌクレオチドを用い種々のポリメラーゼおよび核酸鋳型によってDNA合成を特異的にプライムできるが、プライミング特異性を決定付ける反応条件は酵素特異的でありうることが示唆される。
【0154】
実施例3
本実施例は、第一鎖cDNA合成用の749種のNSR 6-mer (SEQ ID NO:1〜749) (5'末端に共有結合的に付着されたPBS#1 (SEQ ID NO:1499に加えてNスペーサー)をそれぞれが有する)、その後、749種の抗NSR 6-mer (SEQ ID NO:750〜1498) (5'末端に共有結合的に付着されたPBS#2 (SEQ ID NO:1500に加えてNスペーサー)をそれぞれが有する)によって、全RNAを含有するサンプル中に存在するトランスクリプトームのかなりの部分の増幅がプライムされることを示す。
【0155】
方法:
実施例2に記述のPCR増幅の後、各PCR反応液を、Qiagen MinEluteスピンカラムを用いて精製した。カラムを80%エタノールで洗浄し、溶出用緩衝液20 μLで溶出した。NanoDrop機器を用いUV/VIS分光計で収量を定量化した。次いでサンプルを希釈し、以下のアッセイ法を用いて定量的PCR (qPCR)により特徴付けた。
【0156】
7900 HT PCR機器(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用い384ウェル光学PCRプレート中で定量的PCR (qPCR)により最終の反応容量10 μlにてcDNA 2 μlの二重測定を行った。下記の表5および表6に示したプローブを用いたABI TaqMan(登録商標)により、製造元の推奨条件を用いてqPCRを行った。
【0157】
(表5)Jurkat細胞のためのレポーター遺伝子アッセイ法
【0158】
(表6)レポーター遺伝子プローブ
【0159】
qPCRの後、結果の表をExcel (Microsoft Corp., Redmond, WA)に出力し、サンプルに対する定量的解析を生データから回帰分析した(存在量 = 10[(Ct-5)/-3.4])。
【0160】
結果:
図3Aはランダムプライマーを用いて作出された非増幅cDNAと比べて(N8 = 100%)、表4に示した各種のNSRプールを用いて作出された第一鎖cDNAの合成に関する18S、28S、12Sおよび16Sの相対存在量(遺伝子およびN8に対して規準化した)を示した対数目盛のヒストグラムプロットである。図3Aに示されるように、第一鎖cDNA合成用のNSR#1 + NSR#3 (mt-rRNAまたはrRNAとハイブリダイズしないNSR-6mer)を含むプライマープールならびに第二鎖合成用のプライマープール抗NSR#5および抗NSR#7を用いて作出されたcDNAは、ランダムな8-merで作出されたcDNAと比べてrRNAの存在量の大幅な減少(0.086% 18S; 0.673% 28S)ならびにmt-rRNAの存在量の減少(1.807% 12S; および8.512% 16S)を示した。
【0161】
図3Bは第一鎖合成にも第二鎖合成にもランダムプライマー(N7)を用いて増幅された対照cDNAにおける核リボソームRNA (18Sまたは28S)の存在量の相対レベル(N7>N7 = 100% 18S、100% 28S)を、第一鎖にはNSR-6merプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖にはランダムプライマー(N7)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR-6mer>N7 = 3.0% 18S、3.4% 28S)、および第一鎖にはNSR-6merプライマー(SEQ ID NO:1〜749)、その後、第二鎖には抗NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:750〜1498)を用いて増幅されたcDNAと比べて(NSR-6mer>抗NSR-6mer = 0.1% 18S、0.5% 28S)図示している。図3C中の結果は、ミトコンドリアrRNAを測定した場合に、N7>N7 = 100% 12Sまたは16S; NSR-6mer>N7 = 27% 12S、20.4% 16S; およびNSR-6mer>抗NSR-6mer = 8.2% 12S、3.5% 16Sとなり、類似の傾向を示す。
【0162】
各種のNSRおよび抗NSRプールを用いて合成されたcDNAから作出されPCR増幅されたaDNAが、対応するcDNAに存在する標的遺伝子の発現プロファイルを保っていたかどうかを判定するために、9種のランダムに選択したTaqMan試薬で定量的PCR解析を行い、以下の遺伝子: PPIA、SRP14、STMN1、TRIM63、ACTB、DBN1、EIFS3、GAPDHおよびNUCB2を検出した。表7および図4Aに示すように、NSRおよび抗NSRプライムcDNAならびにそれから作出されたaDNAの両方でアッセイされた9種の遺伝子に関して(cDNA鋳型10 μlを投入して判定した場合)、測定可能なシグナルが測定された。
【0163】
(表7)定量的PCR解析
1= FAM 10
2= FAM1000
3= Hs99999901
【0164】
図4AはPPIA、SRP14、STMN1、TRIM63、ACTB、DBN1、EIF3S3、GAPDHおよびNUCB2に対する代表的な遺伝子特異的アッセイのセットを用いて判定した場合の、第一鎖合成中に各種のNSRプライマーを、および第二鎖合成中に抗NSRプライマーまたはランダムプライマーを用いて増幅されたcDNAの遺伝子特異的なポリA含量を図示している。
【0165】
図4Aに示したポリA含量の相対存在量は、投入量を調整済みで、生データの、転写物による個別のrRNAアッセイの存在量値を最初に組み合わせることによって計算された。まとめた(collapsed) rRNA転写物の存在量値を、遺伝子含量が1.0に等しくなるように各サンプル調製物のなかで測定したNUCB2遺伝子レベルに対して規準化した。次に増幅サンプルに対し計算したrRNA/遺伝子比を、N8が各rRNA転写物について100に等しくなるように非増幅対照(N8)で得たものに対して規準化した。したがって、N8を各遺伝子の存在量レベルに対する基準値として用いた。
【0166】
図4Aおよび図4Bに対する図の説明に関して、表2および表3に関連して、saNSR.1とは、第一鎖合成にはNSR#1プライマープールを用い、第二鎖合成には抗NSR#5プライマープールを用いて増幅された(すなわち第一および第二鎖合成中rRNA、mt-rRNAおよびグロビンを枯渇した)cDNAをいう。saNSR.1+2とは、第一鎖合成にはNSR#1+#2プライマープールを用い、第二鎖合成には抗NSR#5+#6プライマープールを用いて増幅された(すなわち第一および第二鎖の両合成中rRNAおよびグロビンを枯渇したが、mt-rRNAを枯渇しなかった)cDNAをいう。saNSR.1+3とは、第一鎖合成にはNSR#1+#3プライマープールを用い、第二鎖合成には抗NSR#5+#7プライマープールを用いて増幅された(すなわち第一および第二鎖の両合成中rRNAおよびmt-rRNAを枯渇したが、グロビンを枯渇しなかった)cDNAをいう。saNSR.1+4とは、第一鎖合成にはNSR#1+#4プライマープールを用い、第二鎖合成には抗NSR#5+#8プライマープールを用いて増幅された(すなわち第一および第二鎖の両合成中rRNAを枯渇したが、mt-rRNAおよびグロビンを枯渇しなかった)cDNAをいう。Y4R-NSRとは、第一鎖合成にはグロビン(αまたはβ)に対する完全な一致なし、rRNA (18S、28S)に対する完全な一致なしの6-mer NSRオリゴのコアセットを含むNSRプライマーを用い、第二鎖合成にはランダムな9-merプライマーを用いて増幅された(すなわち第一鎖合成中グロビンおよびrRNAを枯渇したが、mt-rRNAを枯渇せず、第二鎖合成中いずれの配列も枯渇しなかった)cDNAをいう。Y4-N7とは、第一および第二鎖合成中ランダムな7-merプライマーを用いて増幅されたcDNAをいう。最後に、N8とは、ランダムな8merを用いた第一鎖合成(第二鎖合成なし)をいう。
【0167】
図4Aに示されるように、第一鎖合成のためのNSRプライミングにより、遺伝子TRIM63を除いて、ランダムプライマーと少なくとも同じくらい効率的に遺伝子特異的な転写物が増幅された。
【0168】
図4Bは、第一鎖cDNA合成中さまざまなNSRプライマーを用いてJurkat-1およびJurkat-2全RNAから増幅されたcDNA中の非ポリアデニル化RNA転写物の相対的な存在量レベルを図示している。図4Bに示されるように、NSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いて増幅されたcDNA中の遺伝子特異的な含量は、rRNAおよびmt-rRNA含量が減少するのにつれて濃縮されている。これは、NSR依存的なrRNAの枯渇が一般的効果ではなく、むしろ、除去の標的とした転写物に特異的であることを実証している。これらの結果は、ポリAマイナスおよびポリAプラスの両転写物がNSR-PCRを用いて再現性良好に増幅されることも実証している。
【0169】
図5は、ランダムプライマープールN8 (増幅なし)を用いて作出されたcDNAで測定したJurkat/K562 mRNA発現データのlog比と対比して、プライマープールNSR#1+#3 (x軸)を用いて作出されたcDNAで測定したJurkat/K562 mRNA発現データのlog比を図示している。この結果は、異なるサンプル中の伝令RNAの相対存在量がNSRプライミングおよびPCR増幅を通じて保存されていることを示す。
【0170】
図6Aは、従来の方法を用いてポリA精製後に通例得られる全RNA中のrRNAとmRNAとの割合を図示している。図6Aに示されるように、ポリA精製の前には、哺乳類細胞から単離された全RNAはおよそ98%のrRNAおよびおよそ2%のmRNAならびにその他のもの(非ポリA RNA)を含んでいる。図のように、ポリA精製を用いた全RNAからのrRNAの95%除去後でさえ、残存するRNAは約50%のrRNAおよび50%のmRNAの混合物からなる。
【0171】
図6Bは、第一鎖cDNA合成中にNSRプライマーを用い、第二鎖cDNA合成中に抗NSRプライマーを用いて調製されたcDNAサンプル中のrRNAとmRNAとの割合を図示している。図6Bに示されるように、全RNAからcDNAを作出するためにNSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いることは、99.9%のrRNA (核およびミトコンドリアのrRNAを含む)を除去するのに有効であり、95%を上回るmRNAの濃縮されたcDNA集団をもたらす。これはいくつかの理由で非常に重要な結果である。第一に、mRNAのポリA尾部とのプライマーの結合に依るポリA精製または戦略を用いることは、例えば、miRNAおよび関心対象の他の分子などの、非ポリA含有RNA分子を排除してしまい、それゆえ、トランスクリプトームの豊富さに寄与する核酸分子を排除してしまう。対照的に、cDNA合成中のNSRプライマーおよび抗NSRプライマーの使用を含む本発明の方法は、ポリA選択を必要とせず、それゆえ、トランスクリプトームの豊富さを保存している。第二に、cDNA合成中にNSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いることは、99.9%のrRNAを除去してcDNAを作出するのに有効であり、図6Bに示されるように、rRNAの混入が10%未満でcDNAをもたらす。これは、図6Aに示されるように、98%のrRNAを除去するに過ぎず、およそ50%のmRNAおよび50%のrRNAが混入した状態でcDNAをもたらす、ポリA精製されたmRNAかつランダムプライマーを用いたcDNA合成とは対照的である。
【0172】
結論:
これらの結果は、NSR #1+#3プライマープール(SEQ ID NO:1〜749)および抗NSRプライマープール(SEQ ID NO:750〜1498)が、それぞれ、第一鎖および第二鎖cDNA合成のために驚くべき効果を発揮し、不要なrRNAおよびmt-rRNAが低レベル(10%未満)のままで、標的遺伝子(ポリアデニル化および非ポリアデニル化RNAを含む)が実質的に濃縮されている二本鎖cDNA産物をもたらすことを実証している。
【0173】
実施例4
本実施例は、第一鎖cDNA合成用の749種のNSR-6mer (SEQ ID NO:1〜749) (スペーサーNおよび5'末端に共有結合的に付着されたPBS#1 (SEQ ID NO:1499)をそれぞれが有する)の使用、ならびに749種の抗NSR-6mer (SEQ ID NO:750〜1498) (スペーサーNおよび5'末端に共有結合的に付着されたPBS#2 (SEQ ID NO:1500)をそれぞれが有する)の使用により、増幅されたcDNAの配列解析によって判定した場合に、トランスクリプトーム(ポリA+およびポリA-の両方)のかなりの部分の増幅がプライムされ、全RNA中に存在する不要な非標的配列ではプライムされないことを示す。
【0174】
方法:
実施例2に記述されている方法により、表8に示した各種のプライマープールとともに、第一鎖cDNA合成用の749種のNSR-6mer (SEQ ID NO:1〜749) (スペーサーNおよび5'末端に共有結合的に付着されたPBS#1 (SEQ ID NO:1499)をそれぞれが有する)を用い、749種の抗NSR-6mer (SEQ ID NO:750〜1498) (スペーサーNおよび5'末端に共有結合的に付着されたPBS#2 (SEQ ID NO:1500)をそれぞれが有する)を用いて、cDNAを作出した。
【0175】
(表8)cDNAを選択的に増幅するために用いたプロトコル
【0176】
cDNA産物を実施例2に記述されているようにPCR増幅し、カラム精製した。次いで、カラム精製したPCR産物をpCR-XL TOPOキット(Invitrogen)によってTOPOベクターにクローニングした。TOPOライゲーション反応をPCR産物1 μl、水4 μlおよびベクター1 μlで行った。化学的にコンピテントなTOP10 One Shot細胞(Invitrogen)を形質転換し、LB+Kan (50 μg/mL)上にプレーティングし、37℃で終夜増殖させた。PCR増幅を用い挿入断片についてコロニーをスクリーニングした。2%アガロースゲル解析によって、全てのクローンが少なくとも100 bpの挿入断片を有することが分かった(データ不掲載)。
【0177】
次いで、これらのクローンをDNA配列解析用の鋳型として用いた。rRNA種およびゲノムとの相同性について判定するため、得られた配列を公開データベースに対して検索した。
【0178】
結果:
表9は、表8に示した各種のプライマープールを用いて合成されたcDNAから作出されたPCR産物の配列解析の結果を示す。
【0179】
(表9)選択的に増幅されたcDNAから作出されたaDNAのDNA配列解析の結果
1 = 公開データベースとの配列アライメントによって判定した場合にエキソン、イントロンおよびUTR領域を含め任意の公知遺伝子またはmRNAと重複することを測定した。
2 = 公開データベースとの配列アライメントによって判定した場合に遺伝子間領域とのアライメントまたは反復要素と重複することを測定した。
【0180】
結論:
これらの結果は、実施例2に記述されるようにNSR 6-mer (SEQ ID NO:1〜749)、および抗NSR6-mer (SEQ ID NO:750〜1498)を用いて作出された二本鎖cDNA鋳型から増幅されたaDNA (PCR産物)が核リボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAと比べて標的遺伝子の濃縮を維持したことを実証する。
【0181】
実施例5
本実施例は、遺伝子発現モニタリングの用途で引き続き用いるためaDNA (PCR産物)を標識するのに有用である方法について記述する。
【0182】
1. PCR産物に対する蛍光標識の直接的な化学的カップリング
Cy3 およびCy5直接標識キットをMirus (Madison, Wisconsin, キットMIR製品番号3625および3725)から入手した。
【0183】
実施例2に記述されているように得たPCR産物(aDNA) 10 μgを、製造業者によって記述されているように標識化試薬とともにインキュベートした。標識化試薬はCy3またはCy5を核酸サンプルに共有結合的に付着し、これは遺伝子発現モニタリングなどの、ほぼどんな分子生物学用途にも使用することができる。次いで、標識されたaDNAを精製し、その蛍光を出発標識と比べて測定した。
【0184】
結果:
四つのaDNAサンプルを上記のように標識し、蛍光を測定した。0.9〜1.5%の範囲の標識保持が全四つの標識aDNAサンプルにおいて認められた(言い換えれば0.9〜1.5%の標識化効率といえる)。これらの結果は、aaUTP標識され、インビトロ翻訳され、増幅されたRNAで通例認められる1%〜3%の標識化効率の範囲内にある。
【0185】
2. aa標識された一本鎖aDNAをもたらすための、一方のプライマー(フォワードまたはリバース)を使いaDNA鋳型を用いたPCR中のアミノアリル修飾dUTP (aadUTP)の取り込み
方法:
実施例2に記述されているようにNSRプライマーおよび抗NSRプライマーを用いて作出されたaDNA PCR産物1 μgを、次のようにPCR反応混合液に添加する:
・100〜1000 μMのaadUTP+dCTP+cATP+dGTP+dUTP (aadUTP〜dUTPの最適バランスは日常の実験操作を用いて経験的に判定することができる)
・4 mM MgCl2
・400〜1000 nMのフォワードプライマーのみまたはリバースプライマーのみ、しかし両方ともにではない。
【0186】
PCR反応:
5〜20サイクルのPCR (94℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 30秒)。その間に二本鎖PCR鋳型の片鎖のみが合成される。PCRの各サイクルはaa標識された一本鎖aDNAの一コピーをもたらすものと予想される。次いでこのPCR産物を精製し、Cy3またはCy5標識を標準的な化学的カップリングによって取り込む。
【0187】
3. aa標識された二本鎖aDNAをもたらすための、フォワードおよびリバースプライマーを使いaDNA鋳型を用いたPCR中のアミノアリル修飾dUTP (aadUTP)の取り込み
方法:
実施例11に記述されているようにNSR7プライマープールを用いて作出されたaDNA PCR産物1 μgを、次のようにPCR反応混合液に添加する:
・100〜1000 μMのaadUTP+dCTP+cATP+dGTP+dUTP (aadUTP〜dUTPの最適バランスは日常的な実験操作を用いて経験的に判定することができる)
・4 mM MgCl2
・400〜1000 nMのフォワードおよびリバースプライマー(例えば、フォワード: SEQ ID NO:1501; またはリバース: SEQ ID NO:1502)。
【0188】
PCR反応:
5〜20サイクルのPCR (94℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 30秒)。その間に二本鎖PCR鋳型の両鎖が合成される。次いで二本鎖の、aa標識aDNA PCR産物を精製し、Cy3またはCy5標識を標準的な化学的カップリングによって取り込む。
【0189】
実施例6
本実施例は、遺伝子発現解析用の一本鎖DNA分子を作出するのに有用な増幅された核酸鋳型を作出するための、NSR-6merに共有結合的に連結されたハイブリッドRNA/DNAプライマーの使用について記述する。
【0190】
原理:
本発明の選択的増幅方法の一つの態様において、第一鎖cDNA合成のための第一のオリゴヌクレオチド集団の規定の配列部分(例えば、PBS#1)、および/または第二鎖cDNA合成のための第二のオリゴヌクレオチド集団の規定の配列部分(例えば、PBS#2)は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,946,251号に記述されているように、鎖置換を用いてDNA産物の複数コピーを作出するのに適した、増幅された核酸鋳型を作出するためのRNA部分を含む。ハイブリッドNSRプライマー(PBS#1(RNA/DNA)/NSR)を用いて第一鎖cDNAを合成し、それによって、鋳型RNAに相補的な配列を有する一本鎖DNAの合成用の鋳型として用いるのに適した産物を作出することができる。あるいは、以下でさらに詳細に記述するように、RNA/DNAハイブリッドプライマー尾部を第二鎖合成後に付加することもできる。
【0191】
この方法がもたらす一つの利点は、増幅産物それ自体の増幅ではなく、オリジナルのcDNA配列の複数の一本鎖増幅産物を作出する能力である。
【0192】
方法:
1. 第一鎖cDNA合成のためのRNA:DNAハイブリッドNSR
いくつかの態様において、第一鎖cDNA合成で用いるNSRプライマー(SEQ ID NO:1〜749)の集団は、ハイブリッドPBS#1などの、5'プライマー結合配列(RNA)をさらに含むことができる:
NSRプライマーの5'末端に共有結合的に付着されたハイブリッドPBS#1 (RNA)
。
【0193】
以下の構成を有するDNAハイブリダイズ部分の5'側に位置したRNAの規定の配列部分を持つRNA:DNAハイブリッドオリゴヌクレオチドの集団がもたらされる:
5'ハイブリッドPBS#1 (RNA) (SEQ ID NO:1557) + NSR6-mer (DNA) (SEQ ID NO:1〜749) 3'。
【0194】
別の態様において、各NSR6-merが少なくとも一つのDNAスペーサーヌクレオチド(N) (ここで各N = A、G、CまたはT)を任意で含んでもよく、(N)が5'ハイブリッドPBS#1 (RNA)とNSR6mer (DNA)との間に位置した、オリゴヌクレオチドの集団を作出することができる。スペーサー領域は1個のヌクレオチドから10個またはそれ以上までのヌクレオチド(N = 1〜10)を含み、以下の構成を有するオリゴヌクレオチドの集団をもたらしうる:
5'ハイブリッドPBS#1 (RNA) (SEQ ID NO:1557) + (N1〜10) (DNA) + NSR6-mer (SEQ ID NO:1〜749) (DNA) 3'。
【0195】
第一鎖cDNAを調製する過程は、本質的には実施例2に記述されているように、PBS#1 (SEQ ID NO:1499) (DNA)の代わりにハイブリッドPBS#1 (SEQ ID NO:1557) (RNA)を用い、RNAseH-の逆転写酵素を用い、かつ第二鎖cDNA合成の前にRNAseHを添加せずに行って、一本鎖DNA産物の増幅のための二本鎖基質を作出する。
【0196】
一本鎖増幅のための基質は、好ましくは、RNA/DNAハイブリッド分子からなる第一鎖および全てDNAからなる第二鎖を有する二本鎖鋳型からなる。この二本鎖鋳型を構築するために、RNAseH-の逆転写酵素を用いて第二鎖合成を行う。あるいは、KlenowはRNAを鋳型として用いないので、Klenowを用いて、さらに引き続いてRNAseH-の逆転写酵素での洗練(polished)段階を用いて、第二鎖合成を行うこともできる。
【0197】
第二鎖cDNA合成はランダムプライマーを用いて、または抗NSRプライマーを用いて行うことができる。第一鎖cDNA合成中にRNAハイブリッド/NSRプライマー集団を用いることで、合成された一本鎖cDNA産物へのハイブリッドプライマーのRNA部分の固有配列の取り込みが起こる。
【0198】
次いで、標的RNA配列と同一である一本鎖DNA増幅産物を上記の二本鎖鋳型から、変性し、変性した基質をRNAseH処理して基質のRNA部分を除去し、例えば、phi29などの、プロセッシング力の高い鎖置換DNAポリメラーゼの存在下で基質にハイブリッドRNA/DNA一本鎖増幅プライマー、例えば、
(ここで、プライマーの5'部分が第一鎖cDNA上の所定の配列とハイブリダイズする少なくとも11個のRNAヌクレオチド(下線を引いた)からなり、3'部分が少なくとも3個のDNAヌクレオチドからなる)を添加することによって作出することができる。
【0199】
代替的な態様において、一本鎖DNA増幅のための基質は、DNAプライマー(例えば、NSRプライマーまたはランダムプライマー)を用いた第一鎖cDNA合成、その後、DNAプライマー(例えば、抗NSRプライマーまたはランダムプライマー)を同様に用いたKlenowでの第二鎖合成の調製によって調製することができる。次いで、二本鎖DNA鋳型を、変性し、第二鎖cDNAとハイブリダイズするRNA/DNAハイブリッドオリゴヌクレオチドをアニールし、逆転写酵素でハイブリッドRNA/DNAオリゴヌクレオチドを伸長させて、一方の鎖がRNA/DNAハイブリッド分子からなる、かつもう一方の鎖が全てDNAからなる二本鎖鋳型を作出することにより改変して、一本鎖DNA増幅のための基質を産生する。
【0200】
次いで、標的RNA配列に相補的である一本鎖DMA増幅産物を二本鎖基質から、変性し、変性した基質をRNAseH処理して基質のRNA部分を除去することにより作出することができる。次いで、ハイブリッドプライマーの5'部分が第二鎖cDNA上の所定の配列とハイブリダイズする少なくとも11個のRNAヌクレオチドからなり、ハイブリッドプライマーの3'部分が少なくとも3個のDNAヌクレオチドからなる、ハイブリッドRNA/DNA一本鎖増幅プライマーを第二鎖にアニールする。次いで、例えば、phi29などの、プロセッシング力の高い鎖置換DNAポリメラーゼを用いて、一本鎖DNA産物を作出する。
【0201】
実施例7
本実施例は、NSRプライマーを用いて全RNAから増幅されたcDNA中のポリA+およびポリA-転写物の堅固な検出について記述する。
【0202】
原理:
トランスクリプトーム全体、すなわち、所与の瞬間に細胞および組織内に存在するRNA分子の一群全体は、RNAが収集された瞬間の、サンプルの生物学的状態に関する豊富な痕跡を保有している。しかしながら、全RNAに関する生化学的な現実は、そのうちの圧倒的多数が、細胞活動に関する情報を相対的にほとんど与えない細胞質リボソームおよびミトコンドリアリボソームの構造サブユニットをコードしているということである。その結果、大規模の転写研究のために、非リボソームRNAに対する親和性タグとしての3'ポリアデニル化配列の活用などの、より情報量の多い低コピー転写物を濃縮する分子技術が開発されている。ポリA+ RNA転写物の標的化シーケンシングは、現行の遺伝子モデルの基礎となるcDNA断片の豊富な礎になっている(例えばHsu F. et al., Bioinformatics 22:1036-1046 (2006)を参照のこと)。ポリA配列からのcDNA合成のプライミングも、最もよく実践されているゲノム規模のRNAプロファイリング法に使われている。
【0203】
これらの方法は伝令RNA発現の解析には非常にうまくいったが、ポリA+ 転写物に厳密に焦点を合わせた方法では全体的な転写活性に対する知見が不完全である。ポリAプライミングでは、選択的スプライシング事象および選択的転写開始部位などの、3'ポリA部位より遠位の情報をとらえられないことが多い。従来の方法でも、ヒストンデアセチラーゼのタンパク質サブユニットをコードするものおよび多くの非コード化RNAを含め非ポリアデニル化転写物の発現をモニターすることができない。これらのRNA亜集団の多くを特異的に標的化するために代替的な方法が開発されている(Johnson J. M. et al., Science 302:2141-2144 (2003); Shiraki T. et al., PNAS 100:15776-15781 (2003); Vitali P. et al., Nucleic Acids Res. 31:6543-6551 (2003))が、ほんのわずかな研究しか、全ての転写事象を同時にモニターしようと試みていない。トランスクリプトーム全内容物に関する最も包括的な解析は、ゲノムタイリングアレイを用いて行われている(Cheng J. et al., Science 308:1149-1154 (2005); Kapranov P. et al., Science 316:1484-1488 (2007))。しかしながら、これらの実験の複雑さ、および補完的な方法によって引き続き検証を行うことの必要性から、日常的な全トランスクリプトーム・プロファイリングの用途にタイリングアレイを用いることが制限されている。DNAシーケンシングにおける最近の進歩は、発現解析に対する新たな手法の機会を与え、単一のプラットフォーム上でのRNA存在量の定量的評価も実験的に検証された転写物の発見もともに可能にする(Mortazavi A. et al., Nat. Methods 5:621-628 (2008))。それゆえ、多数のサンプルのハイスループットプロファイリングを利用でき、公知および新規の両転写物に関する不偏性の調査をもたらす方法が必要とされている。
【0204】
方法:
概観:
上記にしたがって、本発明者らは、リボソームRNA (rRNA)配列に対する完全な一致のある全てのヘキサマーが除去された「not-so-random」(「NSR」)プライミングライブラリーに依るサンプル調製手順を開発した。NSR選択的プライミングが全トランスクリプトーム・プロファイリング技術として有用であるためには、非リボソームRNA転写物を忠実に検出しなければならない。NSRプライミングの性能について調べるため、全トランスクリプトームcDNAライブラリーを構築した。汎用の尾部配列とともに第一鎖合成をプライムして、PCR増幅およびIllumina 1G Genome Analyzerを用いた下流のシーケンシングを容易にするために、アンチセンスNSRヘキサマー(「NSR」プライマー)を合成した。第2鎖合成をプライムするために、NSRプライマーの第一のセットに相補的な、尾部付けしたNSRヘキサマー(「抗NSR」プライマー)の第二のセットを作出した。第一および第二鎖NSRプライマーに用いた固有の尾部配列によって、増幅およびシーケンシングの間の鎖方向の保持が可能になった。本研究の場合、シーケンシングの読み出しは全て、鋳型RNAに対して3'から5'方向に配向されたが、逆鎖の読み出しは、汎用のPCR増幅プライマーを改変することによって容易に得ることができる。
【0205】
NSRプライムライブラリーにおけるトランスクリプトーム全内容物を評価するため、下記のように、シーケンシングによって、全脳から単離されたRNAおよびUniversal Human Reference (UHR)細胞株(Stratagene)から単離されたRNAよりNSRでプライムされ作出されたcDNAライブラリーの調査を行った。
【0206】
ライブラリーを作出するために用いたオリゴヌクレオチド:
実施例1に記述されているように、(SEQ ID NO:1〜749)のそれぞれに共有結合的に付着されたNSR-6merプライマー5' (SEQ ID NO:1499)の第一の集団を第一鎖の増幅に用い、(SEQ ID NO:750〜1498)のそれぞれに共有結合的に付着された抗NSR-6merプライマー(SEQ ID NO:1500)の第二の集団を第二鎖cDNA合成で用いた。プールする前に、オリゴを脱塩し、100 μMで水に再懸濁した。
【0207】
対照ライブラリーの作出のため尾部配列SEQ ID NO:1499およびSEQ ID NO:1500とともにランダムヘキサマーの一群も合成した。
【0208】
ライブラリー作出:
概観:
NSRプライミングは、ポリA+およびポリA-転写物を含む非リボソームRNA画分を選択的に捕捉する。二ラウンドのNSRプライミング選択性をライブラリー構築の間に適用した。第一に、NSRオリゴヌクレオチド(アンチセンス)は、not-so-random鋳型部位で逆転写を開始する。RNA鋳型を除去するためのリボヌクレアーゼ処理の後、抗NSRオリゴヌクレオチド(センス)は、not-so-random鋳型部位で一本鎖cDNAにアニールし、Klenowを介した第二鎖合成を指令する。非対照のフォワードおよびリバースプライマーによるPCR増幅は、鎖方向を保持し、下流末端のシーケンシングのための末端部位を付加する。次いで、フォワード増幅プライマーの一部分を用いてcDNA断片の3'末端からアンチセンスタグシーケンシングを行う。次に、ペアワイズアライメントを用いて、ヒトゲノムに対しタグ配列の逆相補体をマッピングする。
【0209】
方法:
全脳由来の全RNAをFirstChoice(登録商標) Human Total RNA Survey Panel (Ambion, Inc.)から入手した。Universal Human Reference (UHR)細胞株RNAをStratagene Corpから購入した。Superscript(商標) III逆転写キット(Invitrogen Corp)を用いて全RNAをcDNAに変換した。3'から5'方向のエキソKlenow断片(New England Biolabs Inc.)により第二鎖合成を行った。Expand High FidelityPLUS PCR System (Roche Diagnostics Corp.)を用いてDNAを増幅した。
【0210】
NSRプライムcDNA合成のため、100 μMのNSRプライマーミックス(SEQ ID NO:1499に加えてSEQ ID NO:1〜749) 2 μlをPCR-ストリップ-キャップ管(Genesee Scientific Corp.)中で鋳型RNA 1 μlおよび水7 μlと混ぜ合わせた。プライマー・鋳型ミックスを65℃で5分間加熱し、氷上で急冷した後に、高dNTP逆転写酵素マスターミックス10 μl (水3 μl、5×緩衝液4 μl、100 mM DTT 1 μL、40 mM dNTP 1 μlおよびSuperScript(商標) III酵素1.0 μl)を添加した。逆転写酵素反応液20 μlを45℃で30分間、70℃で15分間インキュベートし、4℃まで冷却した。RNA鋳型をRNAseH (Invitrogen Corp.) 1 μlの添加によって除去し、37℃で20分間、75℃で15分間インキュベートし、4℃まで冷却した。その後、DNAをQIAquick(登録商標) PCR増幅キットによって精製し、溶出用緩衝液(Qiagen, Inc. USA) 30 μlでスピンカラムから溶出した。
【0211】
第二鎖合成のため、精製cDNA 25 μlをKlenowマスターミックス65 μl (水46 μl、10×NE緩衝液2 10 μl、10 mM dNTP 5 μl、5単位/μLのエキソKlenow断片, New England Biolabs, Inc. 4 μl)および100 μMの抗NSRプライマーミックス(SEQ ID NO:1500に加えてSEQ ID NO:750〜1498) 10 μLに添加した。この反応液100 μlを37℃で30分間インキュベートし、4℃まで冷却した。DNAをQIAquickスピンカラムによって精製し、溶出用緩衝液(Qiagen, Inc. USA) 30 μlで溶出した。
【0212】
PCR増幅のため、精製した第二鎖合成反応液25 μLをPCRマスターミックス75 μL (水19 μl、5×緩衝液2 20 μl、25 mM MgCl2 10 μl、10 mM dNTP 5 μl、10 μMのフォワードプライマー10 μl、10 μMのリバースプライマー10 μl、ExpandPLUS酵素, Roche Diagnostics Corp. 1 μL)と混ぜ合わせた。
【0213】
フォワードPCRプライマー:
。
リバースPCRプライマー:
。
【0214】
サンプルを94℃で2分間変性し、その後に94℃で10秒間、40℃で2分間、72℃で1分間を2サイクル、94℃で10秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間を8サイクル、94℃で15秒間、60℃で30秒間、各サイクルにさらに10秒を加えて72℃で1分間を15サイクル; および末端を平滑化するために72℃で5分間を続けて行い、その後、4℃まで冷却した。QIAquickスピンカラムを用いて二本鎖DNAを精製した。
【0215】
最後の逆転写反応においてdNTPの濃度が0.5 mM (2.0 mMではなく)であったことを除き、ランダムプライマーの使用とともに同じ方法を用いて対照ライブラリーを作出した。PCRプライマーSEQ ID NO:1559およびSEQ ID NO:1560を用いてランダムプライム対照ライブラリーを増幅した。
【0216】
定量的PCR:
TaqMan(登録商標) Gene Expression Assays (Applied Biosystems)を用いてqPCRにより、個々のrRNAおよびmRNA転写物を定量化した。qPCRアッセイは以下の表10に示した試薬を用いて行った。
【0217】
(表10)qPCRアッセイ用のプライマー
【0218】
7900 HT PCR機器(Applied Biosystems)を用いて384ウェル光学PCRプレート中10 μlの最終反応容量で各アッセイに対し、希釈したライブラリーDNAの三重測定を行った。PCRの後、結果の表をExcel (Microsoft Corp.)に出力し、標準曲線を作成し、サンプルに対する定量的解析を生データから回帰分析した。次いで、存在量レベルを投入cDNA集団(mass)に対して規準化した。
【0219】
qPCR解析の結果:
NSRプライミングまたはランダム配列による非選択的プライミング対照の、尾状ヘプタマーを用いて全脳の全RNAから作出されたcDNAライブラリーの比較によって、NSRプライムライブラリーにおけるrRNAの有意な枯渇および同時に標的mRNAの濃縮が明らかになった。具体的には、NSRプライマーの設計に用いたコンピュータフィルタに組み込んだrRNA転写物の全4種の存在量で95%を上回る減少が認められた(データ不掲載)。
【0220】
配列および読み出し分類:
NSRプライムライブラリーにおけるrRNA枯渇に関する詳細な知見を得るために、Illumina 1G Genome Analyzer (Illumina, Inc.)を用いてNSRプライム(260万個の)およびランダムプライム(380万個の) cDNAライブラリーから36ヌクレオチド・アンチセンスの読み出しとしてタグ配列を作出した。配列タグを特徴付けるために、各読み出しの5'末端のジヌクレオチド・バーコード(CT)を除去し、32 ntのアライメントあたり2つまでのミスマッチを許容するELANDマッピングプログラム(Illumina, Inc.)を用いていくつかの配列データベースに対し塩基番号2〜34の逆相補体を整列させた。
【0221】
RefSeq mRNAおよび非コード化RNA転写物の発現プロファイルを作出するために、各配列タグを複数の転写物に対し整列させた。次に、転写物の長さ1000ヌクレオチドあたりの頻度を計算することにより、読み出し数を発現値に変換した。サンプル規準化因子(nf)を適用して、各ライブラリーから作出された読み出し全数を調整した。これは各ライブラリーについて、ゲノムに対する非リボソームRNAの読み出しマッピングの全数から得られた(脳1: 1770万の読み出し、1.0 nf; 脳 2: 1930万の読み出し、1.087 nf; UHR: 1760万の読み出し、0.995 nf)。
【0222】
大分類のため、シーケンシングの読み出しをまず初めに、非コード化RNAおよび反復のデータベースに対し整列させ、複数の参照配列に対するアライメントを可能にした。次いで、残りのタグ配列をヒトゲノム配列のMarch 2006 hg18アッセンブリ(http:genome.ucsd.edu/)に対しマッピングした。単一のゲノム部位に対する読み出しのマッピングを、UCSC公知遺伝子(http://genome.ucsc.edu)によって規定されている座標を用いてmRNA、イントロンおよび遺伝子間の部類に分けた。反復または非コード化RNAを含んでいなかった複数のゲノム配列にマッピングされた配列は「その他の」部類を構成した。リボソームRNA配列は、RepeatMasker (http://www.repeatmasker.org/)およびGenbank (NC_001807)から得た。非コード化RNA配列はSanger RFAM (http://www.sanger.ac.uk/Software/Rfam/)、Sanger miRBASE (http://microrna.sanger.ac.uk)、snoRNABase (http://www-snorna.biotoul.fr)およびRepeatMaskerから収集した。反復要素はRepeatMaskerから得た。
【0223】
結果:
非rRNAゲノム領域に対し整列された5400万を上回る高品質な32ヌクレオチドタグ配列の読み出しは、二つの個別に調製された全脳ライブラリーおよび単一のUHRライブラリーから得た。これらの読み出しのうちの77%が単一のゲノム部位にマッピングされた。RefSeq mRNAデータベース(Pruitt K.D. et al, Nucleic Acids Res. 33:D501-504 (2005))中の22,785種のモデル転写物のうち、検索したサンプルの少なくとも一部において10種またはそれ以上の配列タグの読み出しにより87%超が提示され、全三種のライブラリーにおいて10種またはそれ以上の読み出しにより69%が提示された。
【0224】
(表11)NSRプライムライブラリー(260万個)およびランダムプライムライブラリー(380万個)由来の32ヌクレオチドタグ配列の読み出しのアライメントの結果
【0225】
上記の表11に示されるように、ヒトゲノムにマッピングされたNSRプライムライブラリー由来の配列タグの13%しかリボソームRNAに対応していなかったが、ランダムプライムcDNAの78%がrRNA配列に一致していた。これらの結果は、NSRプライミングが小サブユニット18S rRNAのほぼ完全な枯渇およびミトコンドリアrRNA転写物の劇的な減少をもたらしたことを実証している。大サブユニットrRNAの存在量の減少は他のrRNA転写物ほど効率的ではなかったが、28S RNAの比較的軽微な枯渇でも、その高い初期モル濃度および転写物の長さのため、最終ライブラリーの組成に大きな影響を及ぼす可能性がある。さらに、NSRプライム配列の86%超が、ランダムプライムcDNAの22%と比べて、非rRNAゲノム領域にマッピングされた。どのゲノム配列にもマッピングされなかったものは、どちらのライブラリーからも、全ての配列の読み出しのうちの5%しかなく、ライブラリー構築過程が鋳型非依存性の人為産物をほとんど生じなかったことが示唆された。類似の結果は、細胞株の多様な混合物から単離された、UHR全RNAより作出されたNSRプライムライブラリーおよびランダムプライムライブラリーから認められた(データ不掲載)。
【0226】
NSRプライムライブラリー中のポリA+ RefSeq mRNAを検出するために、RefSeq転写物内でのシーケンシングアライメントの定量的解析を用いて、配列に基づくデジタル発現プロファイルを作出した。複製物#1 vs複製物#2において少なくとも10種のNSRタグ配列によって提示される転写物のlog10比で、n=17,526に対してr=0.997の相関係数となり、同じ全脳の全RNAから調製された二つの別個のNSRライブラリーの間でNSRプライムcDNA増幅の優れた再現性が認められた。
【0227】
NSRライブラリーから得られたmRNAプロファイルの精度を評価するため、マイクロアレイ品質管理試験(Micro Array Quality Control Study) (MAQC Consortium) (Shi L. et al., Nat. Biotechnol. 24:1151-1161 (2006))のために作出された「判断基準(gold-standard)」TaqMan(登録商標) qPCRプロファイルに対してNSRプライム脳プロファイルとUHR発現プロファイルとの間で比較を行った。
【0228】
NSRタグシーケンシングおよびTaqMan(登録商標)定量的PCRによって得られた遺伝子発現プロファイルの相関関係も評価した。NSRタグシーケンシングによって得られた脳およびUHRにおける転写物レベルのlog10比を、MAQC Consortiumから得られたTaqMan(登録商標)測定値に対してプロットし、n=609に対してr=0.930の相関係数となった。
【0229】
NSRプライムライブラリー中のポリA+ Ref Seq mRNAの検出を次のように行った。NSRタグ配列の位置分布を転写物の全長にわたって調べた。図7Aは、長い転写物(?4kb)の全体でNSR (点線)またはEST (実線) cDNAにより、5'末端から始めて各塩基の位置に示した5,790種の転写物に対する組み合わせ読み出し頻度を示す。図7Bは、長い転写物(?4kb)の全体でNSR (点線)またはEST (実線) cDNAにより、3'末端から始めて各塩基の位置に示した5,790種の転写物に対する組み合わせ読み出し頻度を示す。図7Aおよび7Bに示したデータは、各データセット内の最大値に対して規準化された。図7Aおよび7Bに示されるように、NSRプライムcDNA断片は、従来のESTよりも内部部位の提示が高く、長い転写物の全長網羅度を示す。この技術によって好ましくは、選択的スプライシング情報が捕捉されるので、これは全トランスクリプトーム・プロファイリングの重要な特徴である。シーケンシングの読み出しの全てがcDNA断片の3'末端から得られたという事実のため、シーケンシングによる網羅度は、公知の転写物の最も5'末端でわずかな欠損を示した。この影響は、シーケンシングをNSR cDNA産物の両端で指令すれば、軽減することができる。まとめると、これらの結果は、全トランスクリプトーム発現プロファイリングのための技術としての、NSRに基づく選択的プライミングの頑健性を実証するものである。
【0230】
全トランスクリプトーム・プロファイリングの別の要件は、ポリA-の転写物を効率的に捕捉しなければならないということである。NSRプライムcDNAにおけるポリA-の非コード化RNAの提示を以下のように判定した。NSRプライムライブラリー由来の配列タグを公知のポリA-の非コード化RNA (ncRNA)配列の総合データベースに対して整列させた。かなりの割合の小核小体RNA (「snoRNA」) (286/665)および小核RNA (「snRNA」) (7/19)が少なくとも一つのサンプルにおいて5個またはそれ以上のコピーで存在し、多様な機能的クラスを表す転写物が広く検出された。興味深いことに、ごく一部のmiRNAヘアピンおよびtRNAの種しか検出可能なレベルで観察できなかった。以下の表12に示されるように、個々の転写物が広範囲の発現レベルにわたって観察され、snRNAおよびsnoRNAファミリーの成員が最高に豊富なものに含まれていた。
【0231】
(表12)全脳中の、少なくとも二つのNSRタグ配列によって提示される非コード化(ncRNA)転写物の順位付け発現レベル
【0232】
以下の表13に示されるように、ポリA-の転写物を含有するNSRプライムライブラリーには、snRNAおよびsnoRNAファミリーの成員、ならびに他の周知の転写物に対応するRNA、例えば7SK、7SLおよびカハール体低分子(small cajal body-specific) RNAファミリーの成員が含まれた。
【0233】
(表13)全脳の全RNAから作出されたNSRプライムライブラリーにおける主要な非コード化(ncRNA)クラスの提示
【0234】
Prader-Willi神経学的症候群に関連付けられている第15染色体q11領域に位置するC/DボックスsnoRNAのクラスタ(Cavaile J. et al., J. Biol. Chem. 276:26374-26383 (2001); Cavaile J. et al., PNAS 97:14311-14316 (2000))を含め、多くの転写物が、UHRから作出されたNSRプライムライブラリーと比べて、全脳の全RNAから作出されたNSRプライムライブラリーにおいて濃縮されていることが分かった。図8は、UHR NSRプライムライブラリーと比べ全脳NSRプライムライブラリーでの第15染色体Prader-Willi神経疾患遺伝子座によってコードされるsnoRNAの濃縮を図示している。
【0235】
本研究において検出されたかなりの割合の公知のncRNA転写物は、長さが100ヌクレオチド未満であり、広範な二次構造を有するものと予想されたことに注目するのは興味深く、従来の方法を用いて捕捉するには問題のあると考えられた鋳型をNSRプライミングが捕捉できることも実証している。
【0236】
転写活性の包括的概観
NSRプライミングを用いて作出された全トランスクリプトームcDNA配列の一群を集めて全脳およびUHRに対する包括的発現マップを構築することができる。そのような包括的発現マップを構築するために、全ての非リボソームRNAタグ配列を、下記表14に示した最新のゲノム注釈に基づいて、重複のない六つの分類のうちの一つに割り当てた。
【0237】
(表14)非リボソームRNAゲノム領域に対するNSRプライムcDNAタグのマッピングにおける全トランスクリプトーム発現の分類
【0238】
上記の表14に示したmRNA、イントロンおよび遺伝子間の部類は、UCSC公知遺伝子のゲノム座標によって規定され、固有の場所に位置するcDNAしか含んでいない。コード化エキソンまたはUTRのいずれかの部分に重複するシーケンシングタグの読み出しは、mRNAと見なした。多数のゲノム部位に対するシーケンシングタグの読み出しのマッピングは、ncRNA、反復またはその他の部類にまとめた。
【0239】
上記の表14に示されるように、組織および細胞株のRNA集団が類似の全体的発現パターンを示すことが分かった。例えば、タグ配列の65%が公知のタンパク質コード遺伝子の境界内に現れたのに対し、タグ配列の12〜13%しか遺伝子間領域にマッピングされなかったが、これは既報のもの(Cheng J. et al., Science 308:1149-1154 (2005))よりもかなり低い。偽遺伝子および遺伝子ファミリー内で共有されるモチーフなどの、他の重複性の配列(表14中の「その他」の部類)に対応するcDNAの画分も、両サンプルで類似であった。しかしながら、一部の部類の提示は全脳およびUHRで著しく異なっていた。イントロン発現は両RNA集団でかなり認められたが、イントロンにおける転写活性は全脳でよりもUHRで60%高かった。反復要素の発現も全脳でよりもUHRで高かった。対照的に、公知のncRNAの累積存在量はUHRよりも脳で4倍高かった。任意の特定の理論によって束縛されることを望むわけではないが、これらの結果は細胞株と組織との間のスプライシング活性の一般的相違を反映している可能性がある。あるいは、これらの知見は、転写が一般に細胞株でより広く見られ、調節的制約の緩和の結果でありうることを示唆している可能性がある。
【0240】
注釈のない領域に帰属された固有の転写部位の数を評価するために、重複性のNSRタグ配列を集めて、隣接する転写単位を構築した。単一のゲノム部位に対する多数のシーケンシングの読み出しのマッピングは、少なくとも一つのヌクレオチドがどちらかの鎖上で重複していた場合に、単一の転写物にまとめられた。全体で、現行の転写物モデルによって網羅されていない、250万を上回る転写的に活性な領域が特定された。これらのうちで、公開ESTデータベース中の配列によって裏付けられるものは21%しかなかった(Benson, D.A. et al., Nucleic Acids Res 32:D23-26 (2004))。注釈のない転写部位は平均すると36.9ヌクレオチド長となって、32〜1003 bpに及び、5%近くが100 bpを超えていた。ここで特定された転写要素の多くが新規の非コード化RNAに当たる可能性がある。それらは選択的にスプライスされたエキソンおよび非翻訳領域の伸長物を含めて、これまでに特定されていない公知遺伝子のセグメントである可能性もある。
【0241】
次に、配列タグを公知のタンパク質コード遺伝子の機能要素に対して整列させることによって、NSRプライミングの鎖特異性を調べた。タンパク質コードエキソンに対する99%を上回るcDNA配列のマッピングは、センス方向で配向され、鎖特異的な発現をモニタリングするための本方法の識別力を実証するものであった。この識別力によって、本発明者らは、新規の転写物の方向を判定することが可能となり、公知遺伝子の機能要素間のアンチセンス転写の広がりを評価することが可能となった。以下の表15に示されるように、アンチセンス転写は5'UTRおよびイントロンにおいて特に高いレベルで検出され、それらの領域における転写事象の約20%を構成していた。
【0242】
(表15)NSRプライム全脳およびUHRライブラリーから得られたシーケンシングの読み出しに対しセンスまたはアンチセンス方向で配向されたNSRタグ配列の相対頻度比
【0243】
上記の表15に示したシーケンシングの部類は、UCSC公知遺伝子の非コード化およびコード化領域のゲノム座標によって規定された。
【0244】
他のグループもヒトおよびいくつかのモデル生物での広範なアンチセンス発現を立証しているということに注目するのは興味深い(Katayama S. et al., Science 309:1564-1566 (2005); Ge X. et al., Bioinformatics 22:2475-2479 (2006); Zhang Y. et al., Nucleic Acid Res 34:3465-3475 (2006))。多くの遺伝子で観察されるセンスおよびアンチセンス発現の複雑なパターンから、イントロンおよびUTRの転写事象の少なくとも一部には機能的意義のあることが示唆される。
【0245】
考察:
本実施例において実証されるように、NSRプライムcDNAライブラリーに超ハイスループットシーケンシングを適用することで、従来の方法がもたらす情報の範囲を凌ぐ、包括的転写内容に関する不偏性の照合が可能になる。シーケンシングによる転写物の発見では、相当のデータ処理およびその後の実験的検証を要する交差ハイブリダイゼーションによる悪影響を起こしやすい、ゲノムタイリングアレイを用いては達成できない特異性のレベルで情報が得られる(例えばRoyce T. E. et al., Trends Genet 21:466-475 (2005)を参照のこと)。しかし、非常に複雑な全トランスクリプトームライブラリーにおいて希少な転写物の十分な網羅度を得るために必要なサンプリングの難解さから、シーケンシングを行って多数の組織を素早く調査する可能性には限界がある。対照的に、発現プロファイリングマイクロアレイでは、プローブの選択を進めるために質の高い配列情報が存在するなら、多くのサンプルでの転写物レベルの定量的解析が容易とされる。
【0246】
NSR選択的なプライミングは従来の方法に比べていくつかの利点をもたらす。例えば、NSR選択的なプライミングは、情報量の多いシーケンシングとハイスループットアレイ実験との間に直接的な関連を提供する。NSR選択的なプライムcDNAライブラリーを用いて得られた配列情報は、注釈のない転写特徴物の特定を可能にする。NSRプライムライブラリーを用いて特定された注釈のない転写特徴物の機能的特性化は、広範囲の生物学的過程および疾患状態を明らかにすると考えられる。
【0247】
ハイスループットシーケンシングから得られた情報を用いて、NSRプライムcDNAとのハイブリダイゼーション用の全トランスクリプトームアレイの設計情報を知ることができる。例えば、特注設計した全トランスクリプトーム・プロファイリングアレイを用いて、新規の特徴物の発現パターンを相互の関連でおよび公知の転写物との関連で評価することができる。大規模なプロファイリング研究を用いて、個々の転写物をヒトの病的状態に関連付け、臨床研究に利用可能なバイオマーカーのレパートリーを拡げることもできる(例えば、van't Veer, L.J. et al., Nature 415:530-536 (2002)を参照のこと)。さらに、全トランスクリプトーム発現プロファイリングデータと遺伝的連鎖解析との統合を用いて、新規の転写要素によって調節される生物活性を明らかにすることもできる。
【0248】
本実施例において記述されるタグシーケンシング法の変化形を本発明の種々の態様にしたがって全トランスクリプトーム解析に利用することができる。一つの態様において、ペアエンド(paired-end)シーケンシングが全トランスクリプトーム解析に利用される。ペアエンドシーケンシングは、個々のcDNA断片の5'末端と3'末端との間の直接の物理的関連をもたらす(Ng P. et al., Nucleic Acids Res 34 e84 (2006); およびCampbell, P.J. et al., Nat Genet 40:722-729 (2008))。それゆえ、ペアエンドシーケンシングにより、遠位部位由来のスプライスされたエキソンは何ら追加情報がなくても、単一の転写物に明確に割り当てられる。転写物全体の構造が規定されれば、大規模のコンピュータ解析を適用して、これらの遺伝子がタンパク質コード化または非コード化RNA実体に当たるかどうかについて判定することができる(Frith M.C. et al., RNA Biol. 3:40-48 (2006))。
【0249】
上記のように、NSRプライミングは、多種多様なサンプルに単純かつ再現性良好に適用できるという利点のあるcDNAサブトラクションの基本形である。NSRプライマープールは、混乱を引き起こす、きわめて豊富な転写物の任意の集団を回避するように設計することができる。例えば、NSRプライマープールは、全血の全RNA集団の70%までを構成し、かつ血液プロファイリング実験の感度にも精度にも悪影響を及ぼしうる、グロビンタンパク質のαおよびβサブユニットをコードするmRNAを回避するように設計することができる(Li L. et al., Physiol. Genomics 32:190-197 (2008)を参照のこと)。NSRプライマープールは他の生物におけるrRNA含量を減らすように設計し、全トランスクリプトーム発現パターンの種間比較を可能にすることもできる。RNA亜集団のポリA選択が有用ではない、原核生物種での日常的な発現プロファイリング実験にこの手法を利用することができる。
【0250】
要約すると、5400万を上回る32ヌクレオチドタグ配列の解析から、第一鎖および第二鎖cDNA合成におけるNSRプライミングは、公知のポリA+およびポリA- 転写物の広範な提示を備えたcDNAライブラリーをもたらし、従来のランダムプライミングと比べた場合にrRNA含量を劇的に低減したことが実証された。NSRプライムライブラリーのシーケンシングは、これまでに注釈のないゲノム配列からの幅広いアンチセンス発現および転写の証拠を含む転写の包括的概観をもたらす。このように、NSRプライミング技術の簡潔性および柔軟性から、この技術は幅広い実験的設定にわたるトランスクリプトーム研究での超ハイスループットシーケンシングに対する理想的なガイドとなる。
【0251】
例示的な態様を例示し記述してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に種々の変更を加えられることが理解されよう。
【0252】
排他的な財産権または特権が主張される本発明の態様は、添付の特許請求の範囲のとおり定義される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、RNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法:
(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団から合成される一本鎖プライマー伸長産物の集団を提供する段階であって、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、RNA鋳型分子の集団が、核酸分子の標的集団と核酸分子の非標的集団とを含む、段階; ならびに
(b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)による一本鎖プライマー伸長産物の集団から二本鎖cDNAを合成する段階であって、オリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、6、7または8ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で一本鎖プライマー伸長産物の集団中の核酸分子の標的集団とハイブリダイズし、かつ規定の条件の下で核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6、7または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される、段階。
【請求項2】
オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団のハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で一本鎖プライマー伸長産物の集団中の非標的核酸集団とハイブリダイズしない、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドを含むように選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
核酸分子の非標的集団が、RNA鋳型分子の集団中の最も豊富な核酸分子から本質的になる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
最も豊富な核酸分子が、リボソームRNA、ミトコンドリアリボソームRNAおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドの第一の集団のハイブリダイズ部分が、6、7、8または9個のランダムヌクレオチドのうちの一つからなり、かつ規定の配列部分が、PCR増幅のための第一のプライマー結合部位を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、規定の条件の下でRNA鋳型分子の集団中の非標的核酸分子とハイブリダイズしない、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
サンプルが全RNAを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
オリゴヌクレオチドの第一および第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分が、長さが10ヌクレオチドから20ヌクレオチドに及ぶPCR増幅のためのプライマー結合部位からなる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第一または第二のプライマー結合部位の少なくとも一つが転写プロモーターを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
オリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、1〜10個のランダムヌクレオチドからなるスペーサー配列部分をさらに含み、該スペーサー部分が、規定の配列部分とハイブリダイズ部分との間に位置する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
オリゴヌクレオチドの第二の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドの第一の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドから選択される、請求項6記載の方法。
【請求項13】
二本鎖cDNAの少なくとも一方の鎖を増幅する段階をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
PCR増幅されたDNAをシーケンシングする段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
第一の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分が、第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分における少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域と同一である少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項8記載の方法。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドの第一または第二の集団の少なくとも一方の規定の配列部分が、RNA部分およびDNA部分を含み、該RNA部分が、該DNA部分に対して5'側にある、請求項8記載の方法。
【請求項17】
以下の段階を含む、トランスクリプトーム・プロファイリングの方法:
(a) 逆転写酵素、およびハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位とを含むオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団から一本鎖プライマー伸長産物の集団を合成する段階;
(b) DNAポリメラーゼ、およびハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第二のPCRプライマー結合部位とを含むオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により作出された一本鎖プライマー伸長産物の集団から二本鎖cDNAを合成する段階であって、該ハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で一本鎖プライマー伸長産物の集団中の核酸分子の標的集団とハイブリダイズし、かつ規定の条件の下で核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択され、核酸分子の非標的集団が、哺乳類被験体と同じ種のリボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAから本質的になる、段階; ならびに
(c) 第一のPCRプライマー結合部位に結合する第一のPCRプライマーおよび第二のPCRプライマー結合部位に結合する第二のPCRプライマーを用いて段階(b)により合成された二本鎖cDNAをPCR増幅する段階。
【請求項18】
サンプルを単離した時点での哺乳類被験体のトランスクリプトームを提示するライブラリーを作出するためにベクターにPCR産物をクローニングする段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
PCR産物の少なくとも一部分をシーケンシングする段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
PCR増幅が、40〜50℃のアニーリング温度での少なくとも2サイクルの増幅、続いて50℃を上回るアニーリング温度でのさらなる増幅サイクルを用いて行われる、請求項17記載の方法。
【請求項21】
増幅されたPCR産物の少なくとも一部分を標識化する段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項22】
第一の集団中の各オリゴヌクレオチドの第一のPCRプライマー結合部位が、オリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの第二のPCRプライマー結合部位における少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域と同一である少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項17記載の方法。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドの第一または第二の集団の少なくとも一方のPCRプライマー結合部位が、RNA部分およびDNA部分を含み、該RNA部分が、該DNA部分に対して5'側にある、請求項17記載の方法。
【請求項24】
請求項17記載の方法を用いて作出された、増幅された核酸分子の集団。
【請求項25】
以下の段階を含む、核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法:
(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離された全RNAを含むサンプルから一本鎖cDNAを合成する段階であって、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団内の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、段階; ならびに
(b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により合成された一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する段階であって、オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団内の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、かつ該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、段階。
【請求項26】
オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
PCR産物の少なくとも一部分をシーケンシングする段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
PCR産物の少なくとも一部分を標識化する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項30】
第一鎖cDNA合成で用いるSEQ ID NO:1〜749を含む、オリゴヌクレオチドの集団。
【請求項31】
第二鎖cDNA合成で用いるSEQ ID NO:750〜1498を含む、オリゴヌクレオチドの集団。
【請求項32】
核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬であって、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、試薬。
【請求項33】
核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬であって、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、試薬。
【請求項34】
核酸分子の標的集団の増幅をプライムするためのオリゴヌクレオチドの集団を含む、核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬であって、各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、試薬。
【請求項35】
核酸分子の標的集団の増幅をプライムするためのオリゴヌクレオチドの集団を含む、核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬であって、各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、試薬。
【請求項36】
第一鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第一の集団を含む試薬を含む、核酸分子の標的集団を選択的に増幅するためのキットであって、オリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、キット。
【請求項37】
オリゴヌクレオチドの第一の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、請求項36記載のキット。
【請求項38】
第二鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第二の集団をさらに含むキットであって、オリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、請求項36記載のキット。
【請求項39】
オリゴヌクレオチドの第二の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、請求項38記載のキット。
【請求項40】
オリゴヌクレオチドの第一の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:1〜749からなるオリゴヌクレオチドを含み、かつオリゴヌクレオチドの第二の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:750〜1498からなるオリゴヌクレオチドを含む、請求項38記載のキット。
【請求項41】
以下の成分の少なくとも一つをさらに含む、請求項38記載のキット: 逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、RNase H酵素、Tris緩衝液、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、還元剤、デオキシヌクレオシド三リン酸、またはリボヌクレアーゼ阻害剤。
【請求項42】
以下を含む、哺乳類被験体から得られたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅するためのキット:
(a) 規定の条件の下でRNA鋳型分子の集団中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される6ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分と、該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含むオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団であって、核酸分子の非標的集団が、RNA鋳型分子の集団中の最も豊富な核酸分子から本質的になる、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団;
(b) オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団のハイブリダイズ部分のヌクレオチド配列の逆相補体から選択される6ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分と、該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含む、オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団;
(c) オリゴヌクレオチドの第一の集団の第一の規定の配列部分に結合する第一のPCRプライマー、およびオリゴヌクレオチドの第二の集団の第二の規定の配列部分に結合する第二のPCRプライマー。
【請求項43】
核酸分子の非標的集団が、前記哺乳類被験体と同じ種のリボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAから本質的になる、請求項42記載のキット。
【請求項44】
オリゴヌクレオチドの第一および第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分が、長さが10ヌクレオチドから20ヌクレオチドに及ぶPCR増幅のためのプライマー結合部位からなる、請求項42記載のキット。
【請求項45】
第一の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分が、第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分における少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域と同一である少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項42記載のキット。
【請求項46】
オリゴヌクレオチドの第一または第二の集団の少なくとも一方の規定の配列部分が、RNA部分およびDNA部分を含み、該RNA部分が、該DNA部分に対して5'側にある、請求項42記載のキット。
【請求項47】
以下の段階を含む、増幅されたDNA分子を作出するために核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法:
(a) オリゴヌクレオチドの第一の集団を提供する段階であって、各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、段階;
(b) 哺乳類被験体から単離されたRNAを含むサンプルにオリゴヌクレオチドの第一の集団をアニールする段階;
(c) 逆転写酵素を用いてRNAからcDNAを合成する段階;
(d) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドの第二の集団を用いて二本鎖cDNAを合成する段階であって、各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第二のPCR結合部位とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、段階;
(e) 熱安定性DNAポリメラーゼ、第一のPCRプライマー結合部位に結合する第一のPCRプライマー、および第二のPCRプライマー結合部位に結合する第二のPCRプライマーを用いて二本鎖cDNAをPCR増幅し、増幅された二本鎖DNAを作出する段階; ならびに
(f) 増幅された二本鎖PCR産物をシーケンシングする段階。
【請求項48】
哺乳類被験体から単離された細胞サンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団の提示からなる選択的に増幅された核酸分子の集団であって、増幅された核酸分子がそれぞれ以下を含む、集団:
増幅された核酸配列の集団の成員に隣接した5'側の規定の配列部分および3'側の規定配列であって、選択的に増幅された配列の集団が、哺乳類細胞で発現される標的RNA分子に対応する増幅された核酸配列を含み、かつ特定の哺乳類種に関して(a) 75%を上回るポリアデニル化および非ポリアデニル化転写物を有し、かつ10%未満のリボソームRNAを有する、という特性を有することを特徴とする、5'側の規定の配列部分および3'側の規定配列。
【請求項49】
クローニングベクターに挿入された、請求項48記載の集団。
【請求項50】
集団中の各核酸分子が標識化される、請求項48記載の集団。
【請求項51】
基材に付着された、請求項48記載の集団。
【請求項52】
オリゴヌクレオチドの第一または第二の集団の少なくとも一方の規定の配列部分が、RNA部分およびDNA部分を含み、該RNA部分が、該DNA部分に対して5'側にある、請求項48記載の集団。
【請求項1】
以下の段階を含む、RNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法:
(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団から合成される一本鎖プライマー伸長産物の集団を提供する段階であって、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、RNA鋳型分子の集団が、核酸分子の標的集団と核酸分子の非標的集団とを含む、段階; ならびに
(b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)による一本鎖プライマー伸長産物の集団から二本鎖cDNAを合成する段階であって、オリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、6、7または8ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で一本鎖プライマー伸長産物の集団中の核酸分子の標的集団とハイブリダイズし、かつ規定の条件の下で核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6、7または8ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される、段階。
【請求項2】
オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団のハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で一本鎖プライマー伸長産物の集団中の非標的核酸集団とハイブリダイズしない、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドを含むように選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
核酸分子の非標的集団が、RNA鋳型分子の集団中の最も豊富な核酸分子から本質的になる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
最も豊富な核酸分子が、リボソームRNA、ミトコンドリアリボソームRNAおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドの第一の集団のハイブリダイズ部分が、6、7、8または9個のランダムヌクレオチドのうちの一つからなり、かつ規定の配列部分が、PCR増幅のための第一のプライマー結合部位を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、規定の条件の下でRNA鋳型分子の集団中の非標的核酸分子とハイブリダイズしない、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
サンプルが全RNAを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
オリゴヌクレオチドの第一および第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分が、長さが10ヌクレオチドから20ヌクレオチドに及ぶPCR増幅のためのプライマー結合部位からなる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第一または第二のプライマー結合部位の少なくとも一つが転写プロモーターを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
オリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、1〜10個のランダムヌクレオチドからなるスペーサー配列部分をさらに含み、該スペーサー部分が、規定の配列部分とハイブリダイズ部分との間に位置する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
オリゴヌクレオチドの第二の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドの第一の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドから選択される、請求項6記載の方法。
【請求項13】
二本鎖cDNAの少なくとも一方の鎖を増幅する段階をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
PCR増幅されたDNAをシーケンシングする段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
第一の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分が、第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分における少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域と同一である少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項8記載の方法。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドの第一または第二の集団の少なくとも一方の規定の配列部分が、RNA部分およびDNA部分を含み、該RNA部分が、該DNA部分に対して5'側にある、請求項8記載の方法。
【請求項17】
以下の段階を含む、トランスクリプトーム・プロファイリングの方法:
(a) 逆転写酵素、およびハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位とを含むオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離されたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団から一本鎖プライマー伸長産物の集団を合成する段階;
(b) DNAポリメラーゼ、およびハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第二のPCRプライマー結合部位とを含むオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により作出された一本鎖プライマー伸長産物の集団から二本鎖cDNAを合成する段階であって、該ハイブリダイズ部分が、規定の条件の下で一本鎖プライマー伸長産物の集団中の核酸分子の標的集団とハイブリダイズし、かつ規定の条件の下で核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない、6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択され、核酸分子の非標的集団が、哺乳類被験体と同じ種のリボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAから本質的になる、段階; ならびに
(c) 第一のPCRプライマー結合部位に結合する第一のPCRプライマーおよび第二のPCRプライマー結合部位に結合する第二のPCRプライマーを用いて段階(b)により合成された二本鎖cDNAをPCR増幅する段階。
【請求項18】
サンプルを単離した時点での哺乳類被験体のトランスクリプトームを提示するライブラリーを作出するためにベクターにPCR産物をクローニングする段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
PCR産物の少なくとも一部分をシーケンシングする段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
PCR増幅が、40〜50℃のアニーリング温度での少なくとも2サイクルの増幅、続いて50℃を上回るアニーリング温度でのさらなる増幅サイクルを用いて行われる、請求項17記載の方法。
【請求項21】
増幅されたPCR産物の少なくとも一部分を標識化する段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項22】
第一の集団中の各オリゴヌクレオチドの第一のPCRプライマー結合部位が、オリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの第二のPCRプライマー結合部位における少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域と同一である少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項17記載の方法。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドの第一または第二の集団の少なくとも一方のPCRプライマー結合部位が、RNA部分およびDNA部分を含み、該RNA部分が、該DNA部分に対して5'側にある、請求項17記載の方法。
【請求項24】
請求項17記載の方法を用いて作出された、増幅された核酸分子の集団。
【請求項25】
以下の段階を含む、核酸分子のより大きな非標的集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法:
(a) 逆転写酵素およびオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団を用いて哺乳類被験体から単離された全RNAを含むサンプルから一本鎖cDNAを合成する段階であって、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団内の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、段階; ならびに
(b) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団を用いて段階(a)により合成された一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する段階であって、オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団内の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、かつ該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、段階。
【請求項26】
オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
PCR産物の少なくとも一部分をシーケンシングする段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
PCR産物の少なくとも一部分を標識化する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項30】
第一鎖cDNA合成で用いるSEQ ID NO:1〜749を含む、オリゴヌクレオチドの集団。
【請求項31】
第二鎖cDNA合成で用いるSEQ ID NO:750〜1498を含む、オリゴヌクレオチドの集団。
【請求項32】
核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬であって、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、試薬。
【請求項33】
核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬であって、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、試薬。
【請求項34】
核酸分子の標的集団の増幅をプライムするためのオリゴヌクレオチドの集団を含む、核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬であって、各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、試薬。
【請求項35】
核酸分子の標的集団の増幅をプライムするためのオリゴヌクレオチドの集団を含む、核酸分子の標的集団を選択的に増幅するための試薬であって、各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、試薬。
【請求項36】
第一鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第一の集団を含む試薬を含む、核酸分子の標的集団を選択的に増幅するためのキットであって、オリゴヌクレオチドの第一の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、キット。
【請求項37】
オリゴヌクレオチドの第一の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、請求項36記載のキット。
【請求項38】
第二鎖cDNA合成のためのオリゴヌクレオチドの第二の集団をさらに含むキットであって、オリゴヌクレオチドの第二の集団中の各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、請求項36記載のキット。
【請求項39】
オリゴヌクレオチドの第二の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドを少なくとも10%含む、請求項38記載のキット。
【請求項40】
オリゴヌクレオチドの第一の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:1〜749からなるオリゴヌクレオチドを含み、かつオリゴヌクレオチドの第二の集団中のハイブリダイズ部分の集団が、SEQ ID NO:750〜1498からなるオリゴヌクレオチドを含む、請求項38記載のキット。
【請求項41】
以下の成分の少なくとも一つをさらに含む、請求項38記載のキット: 逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、RNase H酵素、Tris緩衝液、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、還元剤、デオキシヌクレオシド三リン酸、またはリボヌクレアーゼ阻害剤。
【請求項42】
以下を含む、哺乳類被験体から得られたサンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団を選択的に増幅するためのキット:
(a) 規定の条件の下でRNA鋳型分子の集団中の核酸分子の非標的集団とハイブリダイズしない6ヌクレオチドの長さを有する可能な全てのオリゴヌクレオチドから選択される6ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分と、該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含むオリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団であって、核酸分子の非標的集団が、RNA鋳型分子の集団中の最も豊富な核酸分子から本質的になる、オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団;
(b) オリゴヌクレオチドプライマーの第一の集団のハイブリダイズ部分のヌクレオチド配列の逆相補体から選択される6ヌクレオチドからなるハイブリダイズ部分と、該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する規定の配列部分とを含む、オリゴヌクレオチドプライマーの第二の集団;
(c) オリゴヌクレオチドの第一の集団の第一の規定の配列部分に結合する第一のPCRプライマー、およびオリゴヌクレオチドの第二の集団の第二の規定の配列部分に結合する第二のPCRプライマー。
【請求項43】
核酸分子の非標的集団が、前記哺乳類被験体と同じ種のリボソームRNAおよびミトコンドリアリボソームRNAから本質的になる、請求項42記載のキット。
【請求項44】
オリゴヌクレオチドの第一および第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分が、長さが10ヌクレオチドから20ヌクレオチドに及ぶPCR増幅のためのプライマー結合部位からなる、請求項42記載のキット。
【請求項45】
第一の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分が、第二の集団中の各オリゴヌクレオチドの規定の配列部分における少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域と同一である少なくとも8個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項42記載のキット。
【請求項46】
オリゴヌクレオチドの第一または第二の集団の少なくとも一方の規定の配列部分が、RNA部分およびDNA部分を含み、該RNA部分が、該DNA部分に対して5'側にある、請求項42記載のキット。
【請求項47】
以下の段階を含む、増幅されたDNA分子を作出するために核酸分子の標的集団を選択的に増幅する方法:
(a) オリゴヌクレオチドの第一の集団を提供する段階であって、各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第一のPCRプライマー結合部位とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:1〜749を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、段階;
(b) 哺乳類被験体から単離されたRNAを含むサンプルにオリゴヌクレオチドの第一の集団をアニールする段階;
(c) 逆転写酵素を用いてRNAからcDNAを合成する段階;
(d) DNAポリメラーゼおよびオリゴヌクレオチドの第二の集団を用いて二本鎖cDNAを合成する段階であって、各オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズ部分と該ハイブリダイズ部分の5'側に位置する第二のPCR結合部位とを含み、該ハイブリダイズ部分が、SEQ ID NO:750〜1498を含むオリゴヌクレオチドの集団の成員である、段階;
(e) 熱安定性DNAポリメラーゼ、第一のPCRプライマー結合部位に結合する第一のPCRプライマー、および第二のPCRプライマー結合部位に結合する第二のPCRプライマーを用いて二本鎖cDNAをPCR増幅し、増幅された二本鎖DNAを作出する段階; ならびに
(f) 増幅された二本鎖PCR産物をシーケンシングする段階。
【請求項48】
哺乳類被験体から単離された細胞サンプル中のRNA鋳型分子の集団内の核酸分子の標的集団の提示からなる選択的に増幅された核酸分子の集団であって、増幅された核酸分子がそれぞれ以下を含む、集団:
増幅された核酸配列の集団の成員に隣接した5'側の規定の配列部分および3'側の規定配列であって、選択的に増幅された配列の集団が、哺乳類細胞で発現される標的RNA分子に対応する増幅された核酸配列を含み、かつ特定の哺乳類種に関して(a) 75%を上回るポリアデニル化および非ポリアデニル化転写物を有し、かつ10%未満のリボソームRNAを有する、という特性を有することを特徴とする、5'側の規定の配列部分および3'側の規定配列。
【請求項49】
クローニングベクターに挿入された、請求項48記載の集団。
【請求項50】
集団中の各核酸分子が標識化される、請求項48記載の集団。
【請求項51】
基材に付着された、請求項48記載の集団。
【請求項52】
オリゴヌクレオチドの第一または第二の集団の少なくとも一方の規定の配列部分が、RNA部分およびDNA部分を含み、該RNA部分が、該DNA部分に対して5'側にある、請求項48記載の集団。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【公表番号】特表2011−500092(P2011−500092A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531293(P2010−531293)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/081206
【国際公開番号】WO2009/055732
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(500276666)ロゼッタ、インファーマティクス、リミテッド、ライアビリティ、カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】ROSETTA INPHARMATICS LLC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/081206
【国際公開番号】WO2009/055732
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(500276666)ロゼッタ、インファーマティクス、リミテッド、ライアビリティ、カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】ROSETTA INPHARMATICS LLC
【Fターム(参考)】
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