説明

非交差反応性抗IgG抗体

本明細書では、細胞株DSM ACC3006、DSM ACC3007およびDSM ACC3008、ならびに前記細胞株から得られる抗体、および前記細胞株から得られた抗体のイムノアッセイにおける使用を報告する。さらに、ヒトまたはチンパンジーIgGに結合しかつイヌおよびマーモセットIgGに結合しない抗体、ならびにκ軽鎖定常ドメインを含むIgG1に特異的に結合する抗体も報告する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、IgGクラスのヒトおよびチンパンジー抗体のIgG-Fabフラグメントの定常領域に特異的に結合する抗体、ならびにイムノアッセイにおけるそれらの使用を報告する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1974年にKoehlerとMilsteinが最初のモノクローナル抗体を開発して以来、ヒトの治療に適した抗体の開発に多くの努力が注がれてきた。利用可能になった最初のモノクローナル抗体はマウスとラットで開発されたものであった。過去10年間で、ヒトモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体は数が増え続けており、市販されるに至っている。よく知られた例として、例えば、F. Hoffmann-La Roche AG (バーゼル)からのHerceptin(登録商標)およびMabThera(登録商標)が挙げられる。
【0003】
ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体は、かなりの数が開発中であり、ヒトへのエントリーが最初の試験目的で考慮される前に、実験動物で検討される必要がある。バイオアベイラビリティーや抗体クリアランスのような重要な基準が、それらの例を2つ挙げたにすぎないが、研究されねばならない。こうした研究の多くは、実験動物自身の抗体を背景にして治療用抗体を定量化する必要がある。ほとんどの場合は哺乳動物が実験動物として用いられる。毒性は、最初に、マウスやラットなどのげっ歯類で評価されることが多い。薬物開発のより進んだ段階では、特にその薬物の人間へのエントリーの前には、サルでさえもそうした前臨床研究に含める必要がある。
【0004】
哺乳動物には、通常、循環mlあたり約10〜約30mgの抗体が存在する。治療用のモノクローナル抗体は一般的に、約1ng/ml〜約100μg/mlの範囲の血清レベルで試験する必要がある。したがって、治療用抗体は、約100倍から1000万倍過剰に存在する実験動物の抗体を背景にして検出されねばならない。
【0005】
実験動物の抗体を背景にしたヒトまたはヒト化治療用抗体の検出は、薬理学者にとってかなり重要な作業にあたる。ヒトまたはヒト化抗体の検出は、試験動物がホモ・サピエンス(H. sapiens)と近縁関係にあればあるほど、ますます困難になる。
【0006】
WO 2008/031532(特許文献1)には、抗薬物抗体アッセイが報告されている。実験動物における治療用抗体の検出はWO 2006/066912(特許文献2)に報告されている。US 5,332,665(特許文献3)には、種特異的な、高親和性のモノクローナル抗体が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2008/031532
【特許文献2】WO 2006/066912
【特許文献3】US 5,332,665
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、第一に、よく使用される実験動物には存在しない、ヒトおよびチンパンジーの免疫グロブリンクラスGの抗体上の立体構造エピトープを報告する。第二に、このエピトープと結合する、非交差反応性の抗ヒトIgG抗体および抗チンパンジーIgG抗体を報告する。第三に、これらの抗体を用いるアッセイを報告する。
【0009】
本明細書で報告する一局面は、ヒトまたはチンパンジーIgG(サブクラスGの免疫グロブリン)に結合しかつイヌおよびマーモセットIgGに結合しない抗体である。
【0010】
一態様において、前記抗体はイヌ、アカゲザル、マーモセット、ヒヒおよびカニクイザルIgGに結合しない。別の態様において、前記抗体はヒトおよびチンパンジーIgGに特異的に結合する。さらなる態様において、ヒトまたはチンパンジーIgGに結合するためのKD値は、表面プラズモン共鳴で決定して10-9mol/l以下であり、イヌ、アカゲザル、マーモセット、ヒヒおよびカニクイザルIgGに結合するためのKD値は、10-6mol/l以上である。一態様では、ヒトまたはチンパンジーIgGに結合するためのKD値が10-9mol/l〜10-13mol/lである。別の態様では、イヌ、アカゲザル、マーモセット、ヒヒおよびカニクイザルIgGに結合するためのKD値が表面プラズモン共鳴によって決定できない。一態様では、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【0011】
本明細書で報告する別の局面は、κ軽鎖定常ドメインを含むIgG1(サブクラスG1の免疫グロブリン)に特異的に結合する抗体である。
【0012】
一態様において、前記抗体はIgG2にさらに結合する。一態様ではまた、前記抗体がIgG4にさらに結合する。別の態様では、前記抗体はIgG3に結合しない。一態様において、前記抗体はλ軽鎖定常ドメインを含むIgG1に結合しない。一態様では、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【0013】
細胞株DSM ACC3006 (M-1.3.2)、DSM ACC3007 (M-1.5.8)、およびDSM ACC3008 (M-1.7.10)から得られる、本明細書で報告する抗体は、例えば細胞株DSM ACC2708によって産生される抗体M-R10Z8E9と比較して、低減した交差反応性を示し、Fab領域中の異なるエピトープに結合し、隣接するグリコシル化部位によって影響されず、かつ抗体のそれぞれの結合部位がFabフラグメント中に一箇所しか存在しないので、Fab治療用抗体を決定するためのイムノアッセイにおいて混在させることができる。
【0014】
本明細書で報告する個々の局面は、細胞株DSM ACC3006、DSM ACC3007およびDSM ACC3008、ならびに前記細胞株から得られるそれぞれの抗体およびイムノアッセイにおけるこれらの抗体の使用である。
【0015】
さらなる局面は、以下の抗体を含むキットである:
a)ビオチン化形態の、細胞株DSM ACC3006、またはDSM ACC3007、またはDSM ACC3008、またはDSM ACC2708から得られる抗体;
b)ジゴキシゲニン化形態の、細胞株DSM ACC3006、またはDSM ACC3007、またはDSM ACC3008、またはDSM ACC2708から得られる抗体。
【0016】
本明細書で報告する別の局面は、以下の工程を含む、実験動物から得られたサンプル中の治療用抗体の検出方法である:
a)分析されるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルを、本明細書で報告する抗体と同じエピトープに結合する抗体と共にインキュベートする工程;
c)任意で、前記サンプルを、総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体の選択的検出に適する試薬と共にインキュベートする工程;および
d)(b)または(c)で形成された複合体を、任意で検量線を用いて、治療用抗体の濃度に相関させる工程。
【0017】
本明細書で報告するさらに別の局面は、捕捉抗体とトレーサー抗体を含む抗原ブリッジングイムノアッセイを用いて、実験動物から得られたサンプル中の治療用抗体を免疫学的に決定する方法であり、ここにおいて、捕捉抗体とトレーサー抗体は、ともに独立して、本明細書で報告する抗体と同じエピトープに結合する抗体から選択される。
【0018】
一態様において、イムノアッセイはサンドイッチイムノアッセイである。別の態様において、抗体のそのコンジュゲーションパートナーへのコンジュゲーションは、その抗体のN-末端および/またはε-アミノ基(リシン)、異なるリシンのε-アミノ基、アミノ酸主鎖のカルボキシ-、スルフヒドリル-、ヒドロキシル-および/またはフェノール官能基および/または抗体の糖鎖構造の糖アルコール基を介した化学的結合によって行われる。さらなる態様において、捕捉抗体は特異的結合対を介して固定化される。一態様では、捕捉抗体がビオチンにコンジュゲートされ、固定化が固定化されたアビジンまたはストレプトアビジンを介して行われる。さらに別の態様において、トレーサー抗体は特異的結合対を介して検出可能な標識にコンジュゲートされる。一態様では、トレーサー抗体がジゴキシゲニンにコンジュゲートされ、検出可能な標識への連結がジゴキシゲニンに対する抗体を介して行われる。別の態様において、治療用抗体はFabである。一態様において、実験動物は、次の科のメンバー:マーモセットおよびタマリン、旧世界ザル、コビトキツネザルおよびネズミキツネザル、テナガザルおよび小型類人猿、キツネザル属、ならびにそれらの交雑を含む群から選択される。一態様では、実験動物はイヌ、アカゲザル、マーモセット、ヒヒおよびカニクイザルから選択される。一態様では、実験動物がマカク属(Macaca)のサルである。さらなる態様において、治療用抗体に結合しかつ実験動物の免疫グロブリンに結合しない抗体は、本明細書で報告する抗体である。一態様では、治療用抗体がヒトまたはヒト化抗体である。さらなる態様では、ヒトまたはヒト化抗体がモノクローナル抗体である。一態様では、総治療用抗体が検出され、別の態様では、活性な治療用抗体が検出され、さらなる態様では、その抗原に結合した治療用抗体が検出される。
【0019】
本明細書で報告する別の局面は、実験動物から得られたサンプル中の総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体の濃度を決定するための、治療用抗体に結合しかつ実験動物の免疫グロブリンに結合しない抗体の使用であり、ここで、前記抗体は本明細書で報告する抗体と同じエピトープに結合するものである。一態様において、前記抗体は本明細書で報告する抗体である。
【0020】
本明細書で報告するさらなる局面は、細胞株DSM ACC3006、細胞株DSM ACC3007、細胞株DSM ACC3008、および/または細胞株DSM ACC2708によって産生された抗体の混合物を含む抗体組成物である。
【0021】
さらに、一局面は、本明細書で報告する方法における本明細書で報告する抗体組成物の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
M-R10Z8E9と称される非交差反応性の抗ヒトIgG抗体(細胞株DSM ACC2708から得られる)は、グリコシル化部位Asn297の近くにある、クラスGのヒト免疫グロブリンのCH2ドメイン中のエピトープと結合する。本明細書で報告する抗体M-1.3.2、M-1.5.8およびM-1.7.10は、抗体M-R10Z8E9と比較して、低減した交差反応性を示し、Fab領域中の異なるエピトープに結合し、隣接するグリコシル化部位によって影響されず、かつ抗体のそれぞれの結合部位がFabフラグメント中に存在するので、治療用抗体、特にFab治療用抗体を決定するためのイムノアッセイにおいて混在させることができる。
【0023】
用語「治療用抗体」とは、ヒトの治療薬として承認を受けるために臨床研究で試験されて、疾患の治療のために個体に投与することができる抗体を意味する。一態様において、治療用抗体はモノクローナル抗体である。さらなる態様において、治療用抗体は、大型類人猿から得られる抗体、ヒト抗体遺伝子座を用いて形質転換した動物から得られる抗体、ヒトモノクローナル抗体、またはヒト化モノクローナル抗体から選択される。一態様では、治療用抗体はヒトモノクローナル抗体である。さらなる態様では、治療用抗体はヒト化モノクローナル抗体である。治療用抗体は、さまざまな疾患の治療に、例えば、腫瘍性疾患(例:非ホジキンリンパ腫、乳癌および結腸直腸癌を含む、血液および固形の悪性腫瘍)、免疫系疾患、中枢神経系疾患、血管系疾患、または感染性疾患の治療に広く使われている。そのような抗体は、例えば、CD20、CD22、HLA-DR、CD33、CD52、EGFR、G250、GD3、HER2、PSMA、CD56、VEGF、VEGF2、CEA、Levis Y抗原、IL-6受容体(IL6R)、またはIGF-1受容体(IGF1R)に対する抗体である。
【0024】
用語「抗体」は、全抗体および抗体フラグメントを含めて、多様な形態の抗体構造を包含する。本明細書で報告する抗体は、一態様では、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはT細胞抗原枯渇抗体である。抗体の遺伝子操作は、例えば、Morrison, S.L., et al, Proc. Natl. Acad Sci. USA 81 (1984) 6851-6855; US 5,202,238およびUS 5,204,244; Riechmann, L., et al, Nature 332 (1988) 323-327; Neuberger, M.S., et al, Nature 314 (1985) 268-270; Lonberg, N., Nat. Biotechnol. 23 (2005) 1117-1125に記載されている。
【0025】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト抗体由来およびヒト抗体由来の部分配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体はヒト抗体(レシピエント抗体)に由来し、そこでは超可変領域からの残基が、所望の特異性および親和性を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられる。ある場合には、ヒト抗体のフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体はさらなる改変を含むことができ、例えば、レシピエント抗体中にまたはドナー抗体中に見出されないアミノ酸残基を含んでもよい。このような改変は結果的に、対応する親配列に相同であるが同一ではない、そうしたレシピエントまたはドナー抗体の変異体をもたらす。これらの改変は抗体の性能をさらに向上させるために行われる。
【0026】
一般に、ヒト化抗体は少なくとも1つの、一般的には2つの、可変ドメインの実質的に全てを含み、そこでは超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒトドナー抗体のそれに相当し、そしてFRの全てまたは実質的に全てがヒトレシピエント抗体のそれである。ヒト化抗体はまた、必要に応じて、抗体の定常領域の少なくとも一部を含み、一般的にはヒト抗体のそれを含む。
【0027】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当技術分野で記載されている。一態様において、ヒト化抗体には、非ヒト供給源からそれに導入されたアミノ酸残基が1個またはそれ以上存在する。こうした非ヒトアミノ酸残基はしばしば「インポート」残基と呼ばれており、一般には「インポート」可変ドメインに由来するものである。ヒト化は本質的に、Winterと共同研究者の方法に従って、超可変領域の配列を非ヒト抗体の対応する配列で置き換えることによって行うことができる。したがって、そのような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり、そこでは実質的に完全ではないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置き換えられている。実際に、ヒト化抗体は一般的に、一部の超可変領域残基とおそらく一部のフレームワーク領域残基がげっ歯類または非ヒト霊長類抗体の類似部位からの残基で置き換えられているヒト抗体である。
【0028】
本明細書中で用いる用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体をさし、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、わずかに存在する可能性がある自然界で起こる突然変異を除けば、同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に向けられたもので、高度に特異的である。さらに、異なる抗原部位(決定基またはエピトープ)に対して向けられたさまざまな抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の抗原部位に対して向けられたものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体の混入なく合成できるという点でも有利である。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られるという抗体の特徴を示しており、いずれかの特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきでない。
【0029】
本明細書中で用いる用語「実験動物」は、以下を含む霊長目の科のメンバーならびにそれらの交雑を意味する:マーモセットおよびタマリン(マーモセット科(Callitrichidae))、新世界ザル(マーモセット科(Cebidae))、旧世界ザル(オナガザル科(Cercopithecidae)、例えばマカク属(Macaca)サル)、コビトキツネザルおよびネズミキツネザル(コビトキツネザル科(Cheirogaleidae))、アイアイ(アイアイ科(Daubentoniidae))、ブッシュベイビーおよびガラゴ(ガラゴ科(Galagonidae))、テナガザルおよび小型類人猿(テナガザル科(Hylobatidae))、インドリ、シファカ、および近縁種(インドリ科(Indridae))、キツネザル属(キツネザル科(Lemuridae))、ロリス(ロリス科(Loridae))、イタチキツネザル(イタチキツネザル科(Megaladapidae))、メガネザル(メガネザル科(Tarsiidae))。
【0030】
一態様において、実験動物は、マーモセットおよびタマリン、旧世界ザル、コビトキツネザルおよびネズミキツネザル、テナガザルおよび小型類人猿、キツネザル属、の科のメンバーならびにそれらの交雑を含む群から選択される。この態様では、人類に最も近い近縁種、大型類人猿、特にチンパンジー、ボノボ、ゴリラおよびオランウータンのグループが除外される。
【0031】
用語「サンプル」は、実験動物から採取された任意の組織または液体サンプルを意味する。一態様において、サンプルは唾液、尿、全血、血漿または血清のような液体サンプルである。さらなる態様では、サンプルが全血、血漿または血清である。
【0032】
「治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体」は、少なくとも10-9mol/lの解離定数(=KDiss)で、別の態様では少なくとも10-10mol/lのKDissで、治療用抗体に結合する。同時に、実験動物の抗体に結合しないという性質は、10-7mol/lまたはそれより悪いKDissによって保証される。また、一態様において、治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体は、実験動物のクラスGの免疫グロブリンに対するその反応性とクラスGのヒトまたはチンパンジー免疫グロブリンに対するその反応性の間に、それぞれ、少なくとも100倍のKDissギャップを有する。
【0033】
一般に、用語「に結合する」とは、抗体がその抗原または対応する抗体受容体に、どちらがそれぞれの文脈で意図されるとしても、10-9mol/l以下の解離定数(=KD=KDiss)で、別の態様では少なくとも10-10mol/lのKDで、結合することを意味する。同時に、結合しないという性質は10-7mol/l以上(例えば、10-5mol/l)のKDによって保証される。また、一態様において、第1の抗体に結合しかつ第2の抗体に結合しない抗体は、クラスGの第1の免疫グロブリンに対するその反応性とクラスGの第2の免疫グロブリンに対するその反応性の間に、少なくとも100倍のKDギャップを有する。
【0034】
抗体の結合特性、特にKDissは、一態様において、BIAcore(登録商標)装置で表面プラズモン共鳴によって評価される。この方法では、結合特性を表面プラズモン共鳴(SPR)の変化によって評価する。これは、開発中の抗体を固相(チップと呼ばれる)に結合させて、そのコーティングしたチップへのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体の結合を、またはIgGを含む血清の結合でさえも、評価するのに便利である。
【0035】
治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない開発中の抗体は、モノクローナル抗体、そのような抗体のフラグメント、ならびにそのような抗体の結合ドメインを含む遺伝的構築物であり得る。治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しないという上記の基準を保持する抗体フラグメントは、どれも使用することができる。
【0036】
実験動物における治療用抗体の適用に関連したさまざまな側面が前臨床研究中に評価されねばならない。ある状況では、存在する治療用抗体の総量を分析することが適切でありうる。あるいはまた、治療用抗体の特定のフラグメント、または治療用抗体の特定の修飾、または抗原に結合した治療用抗体の濃度、または抗原への結合がまだ可能な治療用抗体のフラクションを分析することが重要でありうる。一態様において、本明細書で報告する抗体および方法は、総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体をそれぞれ検出するために使用することができる。
【0037】
用語「総治療用抗体」とは、その抗体が活性である(すなわち、その抗原とまだ反応する)か、不活性であるか、かつ/または抗原に結合したものであるかを問わずに検出されるあらゆる抗体を意味する。
【0038】
用語「活性な治療用抗体」とは、その抗原とまだ結合することができる、実験動物に存在する治療用抗体を意味する。そうした抗体は、例えば、その抗原結合部位でその抗原または任意の他の分子と結合していない。
【0039】
用語「抗原に結合した治療用抗体」とは、その抗原に結合している、実験動物の循環中に存在する治療用抗体を意味する。
【0040】
上で定義した総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体は、本明細書で報告する抗体および方法を用いて、直接検出することができる。さらに、非活性治療用抗体の他の形態、例えば、抗薬物抗体または抗イディオタイプ抗体または特に中和抗薬物抗体によって結合された治療用抗体を検出することが可能である。
【0041】
さらに、任意の「不活性な治療用抗体」を間接的に評価することも可能である。そのような不活性治療用抗体は、例えば、その抗原に結合した治療用抗体、または交差反応性抗原に結合した治療用抗体、または治療用抗体に対する自己もしくは抗イディオタイプ抗体によってブロックされた治療用抗体であり得る。抗体の総量が活性抗体と抗原結合抗体の合計量より多くなる場合は、その対応する抗原に結合していない不活性抗体を含む抗体の追加フラクションが存在することになる。
【0042】
総治療用抗体は例えば、いわゆる競合イムノアッセイ系またはいわゆるサンドイッチ型アッセイ系で検出することができる。そうしたアッセイは、一態様では洗浄ステップを用いないで(均一系イムノアッセイ)、別の態様では洗浄ステップを用いて(不均一系イムノアッセイ)行うことができる。
【0043】
一態様において、総治療用抗体はサンドイッチ型イムノアッセイで検出され、そこでは、治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体がそのようなサンドイッチアッセイの両側で用いられる。そのようなサンドイッチの一方の側で用いられる抗体は固相に結合されるかまたは結合することができ(多くの場合、捕捉抗体と呼ばれる)、これに対して、そのようなサンドイッチの他方の側で用いられる抗体は直接的または間接的検出が促進されるような方法で標識される(いわゆる検出抗体)。こうしたサンドイッチアッセイ法で結合された検出抗体の量は、試験サンプル中の治療用抗体の量に直接相関する。
【0044】
サンプル中の活性な治療用抗体の検出は、便利な先端的手法により達成することができる。しかし、総治療用抗体の検出またはその抗原に結合した治療用抗体のフラクションの検出はかなり複雑であって、まったく異なるアッセイセットアップを必要とし、特に異なるアッセイのそれぞれのためのオーダーメード試薬を必要とする。本明細書で報告する、治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体を用いると、活性な治療用抗体、総治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体のフラクションを、互いに類似した試験系で評価することが可能である。治療用抗体の各種フラクション間で定量比較がなされれば、総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体のこの種の相対評価には利点があるはずである。
【0045】
一態様において、サンドイッチ型アッセイフォーマットは活性な治療用抗体を検出するようにセットアップされる。さらなる態様では、治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体が捕捉抗体として用いられ、そしてこのようなサンドイッチアッセイの検出側では、標識された形の抗原が使用されるか、または抗原の結合後に治療用抗体によって認識されるエピトープとは結合しないもしくは競合しない第2の抗体が使用される。ここで、その第2の抗体は特異的に検出可能であるか、かつ/または直接的または間接的検出が促進されるような方法で標識される。
【0046】
抗原に結合した治療用抗体は、一態様において、治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体を捕捉試薬として用いるサンドイッチ型アッセイフォーマットで検出される。その検出では、一態様において、治療用抗体のエピトープと競合しないエピトープで抗原に結合する第2の抗体が用いられる。第2の抗体は、一態様では、直接的または間接的検出が促進されるような方法で標識される。
【0047】
直接的検出の場合、標識基は、任意の公知の検出可能なマーカー基から選択することができ、例えば、染料、発光標識基、例えば化学発光基(例:アクリジニウムエステルまたはジオキセタン類)、または蛍光色素(例:フルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レゾルフィン、シアニンおよびそれらの誘導体)から選択できる。標識基の他の例は、発光性の金属錯体、例えばルテニウムまたはユーロピウム錯体、酵素、例えばELISAまたはCEDIA(Cloned Enzyme Donor Immunoassay)に用いられるもの、および放射性同位体である。電気化学発光によって検出できる金属キレートもまた、一態様では、検出可能な標識として用いられるシグナル発生基であり、ここで特に好ましいものはルテニウムキレートである。一態様において、標識基はルテニウム(ビスピリジル)32+キレートである。
【0048】
間接的検出系では、例えば、検出試薬、例えば検出抗体、が結合対の第1のパートナーで標識される。適当な結合対の例は、ハプテンまたは抗原/抗体、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンもしくはデスチオビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン、糖/レクチン、核酸または核酸アナログ/相補的核酸、および受容体/リガンド、例えばステロイドホルモン受容体/ステロイドホルモンである。一態様において、第1の結合対メンバーはハプテン、抗原およびホルモンから選択される。一態様では、ハプテンがジゴキシンおよびビオチンおよびそれらの類似体から選択される。そのような結合対の第2のパートナー、例えば抗体、ストレプトアビジンなどは通常、直接的検出を可能にするように、例えば上で挙げた標識によって、標識される。
【0049】
上記のすべての免疫学的検出法においては、用いる試薬類の結合を可能にする、例えば抗体のその対応する抗原への結合を可能にする、試薬条件が選択される。当業者は、複合体という用語を使うことによって、そのような結合事象の結果に言及する。本明細書で報告するアッセイ法で形成された複合体は、先端的な手法によって、治療用抗体の対応する濃度に相関される。そうした相関は、例えば、本明細書で報告する方法を用いて、複合体を対応する複合体の希釈系列において調製および決定し、得られた結果を個々の複合体成分の濃度と相関させることによって、行うことができる。用いる検出試薬に応じて、この相関ステップは総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体の濃度をもたらすことになる。
【0050】
当業者には理解されるように、本明細書で報告する方法は、総治療用抗体、抗原に結合した治療用抗体、活性な治療用抗体、またはさらに不活性な治療用抗体の濃度を単に明らかにするだけではない。異なるアッセイで全く同一の試薬、つまり治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体、を用いるため、得られた値を容易に相互比較することができ、それらの比率でさえも評価することができる。さらなる態様において、本方法は総治療用抗体に対する活性な治療用抗体の比率に関する。この比率は治療用抗体の有効性の指標として役に立つ可能性がある。
【0051】
実験の過程で、クラスGのヒトおよびチンパンジー抗体のすべてのクラスに存在している1つまたはそれ以上のエピトープがどの実験動物の抗体にも存在しないことが判明した。この(これらの)エピトープは、寄託された細胞株DSM ACC3006、DSM ACC3007、DSM ACC3008によって産生された抗体へのその結合によって特徴づけられる。したがって、本明細書で報告する一局面は、細胞株DSM ACC3006、またはDSM ACC3007、またはDSM ACC3008によって産生された抗体である。
【0052】
3つの寄託細胞株によって認識されるエピトープは抗体のFab領域に唯一存在するものであるので、本明細書で報告する別の局面は、寄託細胞株DSM ACC3006、DSM ACC3007、DSM ACC3008から得られる抗体に結合するエピトープである。本明細書で報告する一局面では、治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体は、その抗体が細胞株DSM ACC3006、DSM ACC3007およびDSM ACC3008によって産生された抗体の1つと同じエピトープに結合する抗体であることを特徴とする。
【0053】
例えば、同じ標的抗原に結合する2つの抗体のエピトープ重複を競合試験系によって決定する方法が使用され得る。この目的のために、例えばエンザイムイムノアッセイを用いて、問題の抗体が固定化標的抗原への結合についてどの程度既知の抗体と競合するかが、例えば本明細書で報告する細胞株の1つにより産生された抗体を用いて、試験される。そのために、適切に固定化された標的抗原が標識された形の既知抗体および過剰の問題の抗体と共にインキュベートされる。結合した標識の検出によって、問題の抗体が既知の抗体をその結合からどの程度置換できるかを容易に確かめることができる。同一濃度では20%を超える、別の態様では30%を超える置換が存在するとき、または既知の抗体に対して問題の抗体のより高い濃度、一態様では103〜105倍過剰の場合で、70%を超える、別の態様では80%を超える置換が存在するときには、エピトープの重複が存在し、両抗体は同じエピトープに結合するか、または同じエピトープの重複部分に結合する。
【0054】
寄託細胞株DSM ACC3006、DSM ACC3007およびDSM ACC3008から得られた抗体の特異性は、各抗体のビオチン化およびジゴキシゲニン化変異体ならびに異なる種からの血清をそれぞれ用いて、サンドイッチELISAで示すことができる。このアッセイ(図1参照)では、捕捉抗体と検出抗体が同じ細胞株から得られ、同一のエピトープに結合する。実験動物の血清中のヒトIgGを検出および定量化するための一般的に適用可能なアッセイであるためには、そのようなアッセイは、抗体の結合部位が、例えばグリコシル化または脱アミドなどの、どのような二次抗体修飾からも独立している、抗ヒトIgG抗体を必要とする。さもなければ、検出および定量化される新しい治療用抗体ごとにそのアッセイを最適化する必要があるだろう。さらに、本明細書で報告する抗ヒトIgG抗体のそれぞれはまた、分析される治療用抗体とは異なっており、参照基準および陽性対照として使用することができる。このアッセイで得られた特異性の結果を図2に示す。
【0055】
本明細書で報告する抗体は、免疫グロブリンクラスGのヒトおよびチンパンジー免疫グロブリンに対して高度に特異的であって、抗体M-R10Z8E9より良好な特異性を示し、かつ実験動物のクラスGの免疫グロブリンには結合しないことが分かる。実験動物のすべての値は、ペルオキシダーゼが存在しないABTSにより得られたブランク値をはるかに下回っている。
【0056】
本明細書で報告する抗体の特異性はまた、BIAcore技術を用いた表面プラズモン共鳴実験で示すこともできる。図3のa)〜c)には、抗体M-1.7.10 (DSM ACC3008から取得)、M-1.3.2 (DSM ACC3006から取得)、およびM-1.5.8 (DSM ACC3007から取得)のBIAcoreダイアグラムが示されており、このダイアグラムから前記抗体はクラスGのヒトおよびチンパンジー免疫グロブリンに特異的であることが分かる。
【0057】
ドットブロット実験を用いることによって、本明細書で報告する抗体によって結合されるエピトープは、ヒト免疫グロブリンが変性されると結合が失われるので、立体構造エピトープであることが示された(図4)。
【0058】
本明細書で報告する別の局面は、実験動物から得られたサンプル中のヒト抗体またはFabフラグメントなどのその誘導体を定量化するための、捕捉抗体としての本明細書で報告するビオチン化抗体およびトレーサー抗体としての本明細書で報告するジゴキシゲニン化抗体を含むアッセイである。図5には、アッセイセットアップの概略図および本明細書で報告する典型的抗体を用いたこのアッセイの検量線が示される(捕捉抗体:ビオチン化M-1.7.10、分析対象物:ヒト抗IL13Rα1抗体のFabフラグメント、トレーサー抗体:ジゴキシゲニン化M-1.3.2)。このアッセイは、ヒトIgGのFabフラグメントに2つの異なるエピトープで結合する捕捉抗体とトレーサー抗体を必要とする。本明細書で報告する抗体は免疫グロブリンクラスGのヒトまたはチンパンジー抗体の定常軽鎖ドメインに少なくとも部分的に結合し、それゆえ、このアッセイによく適合する。
【0059】
本明細書で報告する別の局面は、ヒトIgGの異なるドメイン上のエピトープに特異的に結合する捕捉抗体とトレーサー抗体を含むアッセイである。このアッセイでは、完全な治療用抗体のみが陽性のアッセイ結果と検出可能なシグナルをもたらすことになる。一態様においては、捕捉抗体およびトレーサー抗体が、一方では本明細書で報告する抗体から、他方では抗体M-R10Z8E9から、独立して選択される。この局面に従う典型的アッセイでは、実験動物におけるヒトIgGの構造的完全性を証明するために、捕捉抗体としてビオチン化M-R10Z8E9が、分析対象物として抗IL13Rα1抗体が、そしてトレーサー抗体としてジゴキシゲニン化M-1.3.2が用いられる(図6に、アッセイセットアップの概略図およびこのアッセイの検量線が示される)。
【0060】
本明細書で報告するさらなる局面は、抗薬物抗体(ADA)を模倣するための参照基準および/または陽性対照として抗ヒトIgG抗体を用いるアッセイである。これはアッセイを開発する際に有用であり、最適なアッセイ条件およびアッセイの試験ロバスト性を見つけるために、すなわち、異なる基準試薬/陽性対照を用いてアッセイ性能を検査するために有用でありうる。このセットアップは、ADAがポリクローナルであって、おそらくFabフラグメントとFc部分の両方に対して向けられていることを考えれば、特に有利である。
【0061】
本明細書で報告するさらなる局面では、細胞株DSM ACC3006、DSM ACC3007およびDSM ACC3008から得られた抗体の1つが、本明細書で報告する方法において、治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体として用いられる。
【0062】
本明細書で報告するさらなる局面は、実験動物から得られたサンプル中の総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体の濃度を測定するための、治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない抗体の使用に関する。一態様において、そうした方法に用いられる抗体は、細胞株DSM ACC3006、DSM ACC3007またはDSM ACC3008から得られた抗体の1つにより認識されるものと同じまたは重複するエピトープに結合する抗体から選択される。
【0063】
本明細書で報告するさらなる局面は、実験動物から得られたサンプル中の総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体の濃度を測定するための、両方とも治療用抗体に結合しかつ実験動物の抗体に結合しない2つの抗体の使用に関し、ここで、これらの抗体の1つは捕捉抗体であり、かつこれらの抗体の1つはトレーサー抗体である。一態様において、治療用抗体はFabフラグメントである。
【0064】
あるいは、本明細書で報告する抗体は、単一の免疫グロブリンクラスの参照免疫グロブリンを一部分として含むコンジュゲート中で用いることができる。参照免疫グロブリンは、抗ヒト免疫グロブリンG抗体などの抗免疫グロブリンクラス抗体によって特異的に結合され得る免疫グロブリンクラス特異的定常領域を提供する。こうして、参照免疫グロブリンは、コンジュゲートなどに、免疫グロブリンクラス特異的タグを提供し、そのタグはタグ特異的抗体によって特異的に同定され得る。例えば、タグが免疫グロブリンG定常領域である場合、タグ特異的抗体は抗免疫グロブリンG抗体である。そのようなコンジュゲートはイムノアッセイにおける標準として、またはイムノアッセイにおける陽性対照として使用することができる。
【0065】
本明細書で報告する方法では、異なる捕捉分子をも使用することができ、例えば、完全な抗体、F(ab')2フラグメント、Fabフラグメントまたは一本鎖抗体でさえも使用できる。
【0066】
本明細書で報告する好適なハイブリドーマ細胞株MAK<H-IgG>M-1.3.2、MAK<H-IgG>M-1.5.8、MAK<H-IgG>M-1.7.10は、それぞれ、抗体M-1.3.2、M-1.5.8およびM-1.7.10を発現するものであり、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約のもとで、ドイツのDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ)に寄託された:

【0067】
前記細胞株および前記細胞株から得られる抗体は、本明細書で報告される局面である。
【0068】
本明細書で報告する方法は、以下の抗体を用いて例示される:WO 2006/072564に報告されるIL13受容体α1タンパク質に対する抗体(抗IL13Rα1抗体)、WO 2005/023872に報告されるIL-1R受容体に対する抗体(抗IL1R抗体)、WO 2003/070760またはUS 2005/0169925に報告されるアミロイドβ-A4ペプチドに対する抗体(抗Aβ抗体)、WO 2005/100402またはUS 2005/0226876に報告されるヒトP-セレクチン糖タンパク質に対する抗体(抗Pセレクチン抗体)、WO 2004/096274に報告されるIL-6受容体に対する抗体(抗IL6R抗体)、およびWO 2004/087756またはWO 2005/005635に報告されるIGF-1受容体に対する抗体(抗IGF1R抗体)(すべてを参照により本明細書に組み入れる)。
【0069】
以下の実施例および図面は本発明の理解を助けるために提供されるものであり、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載される。さまざまな変更が、本発明の精神から逸脱することなく、記載した手順においてなし得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実験動物においてヒト抗体(ヒトIgG)を定量化するための完全に一般的なアッセイを示す:a)アッセイフォーマット;b)捕捉および検出試薬:抗体M-R10Z8E9;c)捕捉および検出試薬:抗体M-1.7.10;治療用抗体:白三角:抗IL13Rα1抗体、白四角:抗Aβ抗体、黒四角:抗IL1R抗体、黒三角:抗IL6R抗体。
【図2】本明細書で報告する抗体を用いるアッセイで得られた結果を示す;使用した抗体は左から右へ:M-R10Z8E9、M-1.3.2、M-1.5.8、M-1.7.10。
【図3】本明細書で報告する抗体a)M-1.3.2、b)M-1.5.8、およびc)M-1.7.10の典型的な表面プラズモン共鳴のダイアグラムを示す。
【図4】抗ヒトIgG抗体のドットブロットを示す;典型的な参照抗体としてP-セレクチンに対する抗体が選ばれた;参照抗体を未変性(左列)および変性(右列)形態でニトロセルロース膜上に点在させ、それぞれのジゴキシゲニン化抗ヒトIgG抗体で検出する:a)M-R10Z8E9、b)M-1.3.2、c)M-1.5.8、d)M-1.7.10。
【図5】実験動物から得られたサンプル中のヒト抗体誘導体を定量化するためのアッセイを示す:a)アッセイセットアップの概略図、b)検量線。
【図6】実験動物におけるヒトIgGの構造的完全性を証明するためのアッセイを示す:a)アッセイセットアップの概略図、b)検量線。
【図7】カニクイザル血清に対する検出可能な交差反応性を示さない抗体の選択を示す。
【実施例】
【0071】
実施例1
ヒトIgGのF(ab')2フラグメント(免疫原)の調製
100mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH3.7中のクラスGの全長ヒト抗体(ヒトIgG)をペプシン(IgG 1mgあたり1μgのペプシン)と共にインキュベートした。フラグメント化は、分析用ゲル濾過により分析し、リン酸カリウムの添加によりpH値を6.5に調整することによって90分後に停止させた。その混合物を、10mM塩化ナトリウムを含む10mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH5.5に対して透析した後、その溶液をSP-セファロースクロマトグラフィーカラムにアプライし、塩勾配で溶出された分離画分を分析用ゲル濾過で個別に分析した。抗体F(ab')2フラグメントを含有するプールは、微量のFcγフラグメントを除くために、ヒトFcγに対するポリクローナル抗体を固定化させたアフィニティーマトリックスにアプライした。フロースルー画分をプールし、約16mg/mlに濃縮し、最後にゲル濾過カラム(Superdex 200)にアプライした。
【0072】
実施例2
モノクローナル抗ヒトIgG抗体の作製
a)マウスの免疫化
8〜12週齢の雌NMRIマウスに、実施例1に従って調製した100μgの抗体F(ab')2フラグメントをCFA(完全フロイントアジュバント)と混合して用いて、腹腔内一次免疫をそれぞれ施した。さらに2回の腹腔内免疫化ステップを6週間および10週間後に行ったが、それぞれ、マウスあたり100μgの抗体F(ab')2フラグメントをIFA(不完全フロイントアジュバント)と混合して用いた。続いて、静脈内追加免疫を、それぞれPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中の50μgの抗体F(ab')2フラグメントを用いて、融合の3日前に行った。
【0073】
b)融合およびクローニング
a)に従って免疫したマウスの脾細胞をGalfreおよびMilstein(Galfre, G. and Milstein, C, Methods Enzymol. 73 (1981) 3-46)に従ってミエローマ細胞と融合させた。約2.1×108個の脾細胞を4.2×107個のミエローマ細胞(P3x63-Ag8.653、ATCC CRL1580)と混合して遠心分離した(300×g、4℃で10分)。その後、細胞をFCS(ウシ胎児血清)不含の培養培地RPMI 1640で1回洗浄し、先の尖った50mlバイアル中で400×gで再度遠心分離した。その後、1mlのPEG(ポリ(エチレングリコール)、分子量4,000g/mol)を加えて、ピペッティングにより混合を行った。37℃の水浴中で1分後、5mlのFCS不含RPMI 1640を滴下し、その懸濁液を混合し、10%(v/v)FCS含有RPMI 1640を加えて最終容量50mlとし、その後遠心分離した。沈降した細胞を10%FCS含有RPMI 1640中に再懸濁し、増殖因子である組換えマウスインターロイキン6(Peprotech社、0.5ng/ml)を含むヒポキサンチン-アザセリン選択培地(10%FCS含有RPMI 1640中の100mmol/lヒポキサンチン、1μg/mlアザセリン)にまいた。11日後、一次培養物を特異的抗体の合成についてアッセイした(実施例3参照)。ビオチン化ヒトノーマルIgGへの結合だけでなくビオチン化抗体F(ab')2フラグメントへの結合を示す一次培養物は、増殖因子組換えマウスインターロイキン6(Peprotech社、0.5ng/ml)を含む培地中でフローサイトメーター(FACSAria、BD Biosciences社)を使って、96ウェル細胞培養プレートへの単一細胞の沈着によって個別化した。このプロトコルに従うことによって、細胞株DSM ACC3006、DSM ACC3007およびDSM ACC3008が得られた。抗体M-1.7.10はIgG2aクラスのものであり、抗体M-1.5.8およびM-1.3.2はIgG1クラスのものである。
【0074】
c)免疫グロブリンの産生
b)で得られたハイブリドーマ細胞株は、10%FCSおよびよく用いられる栄養補助剤を添加したRPMI 1640中に1.0×105〜2.2×105個/mlの初期細胞密度(生細胞)で接種し、T-フラスコ(Celline、IBS社)で約3週間かけて増やした。回収した培養上清中に、0.7mg/ml〜1.5mg/mlの濃度のモノクローナル抗体が得られた。培養上清からの抗体の精製は、例えばBruck, C, et al, Methods Enzymol. 121 (1986) 587-596に報告されるような、標準的なタンパク質化学的方法により行った。
【0075】
実施例3
抗ヒトIgG抗体を検出するためのスクリーニングアッセイ
a)ヒトIgGに結合する抗体の一次スクリーニング
ハイブリドーマ細胞の培養上清中の抗体の特異性を調べるため、組換えストレプトアビジンをプレコートしたMTP(マイクロタイタープレート)(MicroCoat社、Bernried、ロットMC 1098)に、1%(w/v)BSA IIを添加したPBS中の、免疫化の過程で用いた250ng/mlのビオチン化ヒト化IgG、または250ng/mlのビオチン化ヒトIgGをコートし(100μl/ウェル、振とうしながら周囲温度で60分インキュベーション)、その後0.9%(w/v)NaCl/0.05%Tween(登録商標)20を用いて3回洗浄した。次のステップで、ウェルあたり100μlのアッセイすべき抗体溶液(培養上清)を添加し、振とうしながら周囲温度で60分間インキュベートした。0.9%(w/v)NaCl/0.05%Tween(登録商標)20を用いた3回の洗浄ステップ後、結合したサンプル抗体の検出のために、ウェルあたり100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した、ポリクローナルヒツジ抗マウスFcγ抗体のF(ab')2フラグメントを添加して、振とうしながら周囲温度で60分間インキュベートした。続いて、洗浄を上記のように行った。最後に、ウェルあたり100μlのABTS(登録商標)(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ;カタログ番号1684302)を加えた。周囲温度で30分のインキュベーション後、吸光度(OD)を市販のマイクロタイタープレートELISAリーダーで405および492nm[405/492]にて測定した。このスクリーニングは、ヒトIgGにだけでなくヒト化IgGにも結合する抗体の選択につながった。この抗体選択物をアッセイb)にさらに供した。
【0076】
b)他の種のIgGに対して最小限の交差反応性を示す抗体の選択
ビオチン化ヒトIgGを、ストレプトアビジンをコートしたマイクロタイタープレート(SA-MTP)のウェルに最初のステップで結合させた。過剰の未結合抗体を洗浄により除去した。その後、サンプルおよび参照基準(例えば、実施例2で得られた抗ヒトIgG抗体)を緩衝液および10%カニクイザル血清で希釈した。希釈サンプルをプレートに添加して、振とうしながら周囲温度で60分間インキュベートした。未結合物質を洗い流した後、ジゴキシゲニン化形態の最初のステップのヒトIgGをプレートのウェルに添加して、さらに60分間インキュベートした。洗浄後、結合したジゴキシゲニン化抗体を抗ジゴキシゲニン抗体-HRPコンジュゲートで検出した。抗体-酵素コンジュゲートのHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)はABTS基質の呈色反応を触媒する。そのシグナルはELISAリーダーで波長405nm(参照波長:490nm)にて測定される。各血清サンプルの吸光度値を3回反復して決定した。
【0077】
緩衝液中だけでなくカニクイザル血清中でも高いアッセイ応答を示した抗体が選択された(図7参照)。この第2のスクリーニングは、他の種のIgGに対して最小限の交差反応性を示す、ヒトIgGに結合する抗体の選択につながった。
【0078】
実施例4
表面プラズモン共鳴による抗体結合/特異性の評価
すべての測定は、CM5チップを使用して、BIAcore(登録商標)T100装置で行った。このチップへの抗体のコーティングは標準的なアミンカップリングによって達成された。他に指定のない限り、すべてのインキュベーションはHBS-緩衝液(HEPES, NaCl, pH7.4)中25℃で行った。飽和量のポリクローナルヤギ抗マウスFcγ抗体をアミンカップリングによってCM5チップの1つのフローセル上に固定化した。続いて、ヒトIgGに対する異なるモノクローナルマウス抗体を30μl/分の流量で60秒間注入し、抗マウスFc抗体によって結合させた。すべての動物血清はHBS緩衝液で希釈した。結合は、1:100に希釈した血清の注入および30μl/分の流量での60秒間のインキュベーションにより分析した。解離は、チップ表面をHBS緩衝液で180秒間洗浄することによって測定した。BIAcore(登録商標)からのBIAevaluation Softwareを用いて、解離定数値(=KD)を1:1 Langmuir適合性モデルにより計算した。すべての動物血清の場合、この計算は、IgGレベルが15mg/mlであるという仮定に基づいていた。試験抗体の注入を開始してから80秒後のシグナル値が、結合したIgG量の比較のために選ばれた(表1参照)。
【0079】
(表1)異なるモノクローナル抗ヒトIgG抗体への動物血清の結合についての結合シグナル[RU]およびKD

【0080】
表1は、3種の抗ヒトIgG抗体がチンパンジーを除く他の動物種に由来する血清と交差反応しないことを示している。これに対して、M-R10Z8E9については、イヌおよびマーモセット由来の血清とのさらなる相互作用が検出された。
【0081】
実施例5
a)マウスモノクローナル抗ヒトIgG抗体の精製
実施例2で得られた細胞株の発酵上清を約10倍濃縮し、20mM TRIS、1M硫酸アンモニウムを含む緩衝液pH9.0に移して、プロテインA-セファロースクロマトグラフィーカラムにアプライした。0.2Mクエン酸ナトリウム、0.2M硫酸アンモニウム、pH5.0で得られた溶出液をリン酸緩衝液pH7.5に対して透析した。ウシIgGの混入物質(発酵ブロス中のFCS由来)は、固定化したウシIgGに対する抗体を用いて、免疫吸着により分離した。
【0082】
b)ビオチン化抗ヒトIgG抗体の調製
リン酸緩衝液pH8.5中のa)で得られた抗ヒトIgG抗体を約5mg/mlのタンパク質濃度に調整した。D-ビオチノイル-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドをDMSOに溶解し、1:5のモル比で抗体溶液に添加した。この反応をL-リシンの添加により60分後に停止させ、余剰の標識試薬を、150mM NaClを含む50mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5に対する透析により除去した。
【0083】
c)ジゴキシゲニン化抗ヒトIgG抗体の調製
リン酸緩衝液pH8.5中のa)で得られた抗ヒトIgG抗体を約5mg/mlのタンパク質濃度に調整した。ジゴキシゲニン3-O-メチルカルボニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドをDMSOに溶解し、1:4のモル比で抗体溶液に添加した。この反応をL-リシンの添加により60分後に停止させ、余剰の標識試薬を、150mM NaClを含む50mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5に対する透析により除去した。
【0084】
実施例6
実験動物から得られたサンプル中のヒト抗体(ヒトIgG)を定量化するための完全に一般的なアッセイ
ビオチン化した抗体M-R10Z8E9(プレート1)または抗体M-1.7.10(プレート2)を、ストレプトアビジンをコートしたマイクロタイタープレート(SA-MTP)に最初のステップで結合させた。過剰の未結合抗体を洗浄により除去した。カニクイザル血清中にスパイクしたサンプル/標準、例えば抗IL1R抗体、抗IL13Rα1抗体、抗Aβ抗体および抗IL6R抗体、を濃度系列でプレートに添加し、振とうしながら周囲温度で60分間インキュベートした。未結合抗体を洗い流した後、100μlのジゴキシゲニン化した抗体M-R10Z8E9(プレート1)または抗体M-1.7.10(プレート2)をプレートに添加した。洗浄後、結合したジゴキシゲニン化抗体を抗ジゴキシゲニン抗体-HRPコンジュゲートにより検出した。各血清サンプルの吸光度値を3回反復して決定した(図1参照)。
【0085】
(表2)捕捉および検出試薬抗体M-R10Z8E9に関するODデータ

【0086】
(表3)捕捉および検出試薬抗体M-1.7.10に関するODデータ

【0087】
実施例7
実験動物から得られたサンプル中のヒト抗体誘導体(例えばFabフラグメント)を定量化するためのアッセイ
ビオチン化抗体M-1.7.10を、ストレプトアビジンをコートしたマイクロタイタープレート(SA-MTP)に最初のステップで結合させた。過剰の未結合抗体を洗浄により除去した。カニクイザル血清中にスパイクしたサンプル/標準、例えば抗IGF1R抗体Fabフラグメント、をウェルに添加し、振とうしながら周囲温度で60分間インキュベートした。未結合抗体を洗い流した後、100μlのジゴキシゲニン化抗体M-1.3.2をプレートの各ウェルに添加した。洗浄後、結合したジゴキシゲニン化抗体を抗ジゴキシゲニン抗体-HRPコンジュゲートにより検出した。各血清サンプルの吸光度値を3回反復して決定した(図5参照)。
【0088】
(表4)ODデータ

【0089】
実施例8
実験動物から得られたサンプル中のヒトIgGの構造的完全性を証明するためのアッセイ
ヒトFcに対するビオチン化抗体M-R10Z8E9を、ストレプトアビジンをコートしたマイクロタイタープレート(SA-MTP)に最初のステップで結合させた。過剰の未結合抗体を洗浄により除去した。カニクイザル血清中にスパイクしたサンプル/標準、例えば抗IL13Rα1抗体、をプレートに添加し、振とうしながら周囲温度で60分間インキュベートした。未結合抗体を洗い流した後、100μlのジゴキシゲニン化抗体M-1.3.2をプレートに添加した。洗浄後、結合したジゴキシゲニン化抗体を抗ジゴキシゲニン抗体-HRPコンジュゲートにより検出した。各血清サンプルの吸光度値を3回反復して決定した(図3参照)。
【0090】
(表5)ODデータ

【0091】
実施例9
本明細書で報告する抗ヒトIgG抗体と組み合わせたFc融合タンパク質(抗原)を用いる、実験動物から得られたサンプル中のヒト抗体(ヒトIgG)を定量化するためのアッセイ
ヒト受容体Xの可溶性細胞外ドメインをヒトIgG1クラスのFcフラグメントに融合させる。ビオチン化した融合タンパク質(Bi-X-Fc)を、ストレプトアビジンをコートしたマイクロタイタープレート(SA-MTP)に最初のステップで結合させた。過剰の未結合受容体を洗浄により除去した。その後、カニクイザル血清中にスパイクした抗X抗体を固定化ヒト受容体Xに結合させた。未結合物質を洗い流した後、結合した抗X抗体を、a)ジゴキシゲニン化した、ヒトFcフラグメントに対するモノクローナル抗体(抗体M-R10Z8E9)で、またはb)ジゴキシゲニン化した、ヒトFabフラグメントに対するモノクローナル抗体(抗体M-1.7.10)で検出し、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体とインキュベートした。各血清サンプルの吸光度値を3回反復して決定した。
【0092】
実施例10
ドットブロット - 立体構造エピトープ対線状エピトープ
抗ヒトIgG抗体が立体構造エピトープを検出するのか、それとも線状エピトープを検出するのか、を決定するために、ドットブロット解析を行った。
【0093】
この試験では、抗原タンパク質(ヒトIgG)を未変性形態と変性形態でニトロセルロース膜に点在させた。変性形態を得るため、抗原タンパク質をSDSと一緒にシェーカー上で37℃にて一晩インキュベートした。両形態を濃度系列で膜に点在させた。その膜を完全に乾燥させた後、表面を、ブロッキング緩衝液(Roti-Block, Roth, ドイツ)を用いて、振とうしながら周囲温度で60分間ブロックした。膜を洗浄した後、その膜をジゴキシゲニン化した抗体M-R10Z8E9または3つの異なる抗体M-1.3.2、M-1.5.8またはM-1.7.10の1つを含む溶液と共にインキュベートした。洗浄後、結合したジゴキシゲニン化抗体を抗ジゴキシゲニン抗体-HRPコンジュゲートで検出した。抗体-酵素コンジュゲートのHRPはBM-Blue基質の呈色反応を触媒する。そのシグナルは視覚的に直接制御して、スキャナーで取り込むことができる。
【0094】
実施例11
ブリッジングELISAアッセイによる抗体結合/特異性の評価
どの種類のヒトIgGサブクラスが検討中の抗ヒト抗体によって結合されるかを調べるため、ブリッジングELISA解析を行った。
【0095】
ビオチン化した抗体M-R10Z8E9、M-1.3.2、M-1.5.8およびM-1.7.10を、最初のステップでストレプトアビジンマイクロタイタープレートに結合させた。第2のステップでは、異なるサブクラスのヒトIgG抗体とインキュベートした。ヒトIgG1κ;ヒトIgG1λ;ヒトIgG4;キメラヒトIgG1;ヒトIgG2(ポリクローナル精製ヒトIgG2)およびヒトIgG3(ポリクローナル精製ヒトIgG3)を希釈系列で調製し、ビオチン化抗ヒト抗体をコートしたストレプトアビジンマイクロタイタープレートとインキュベートした。洗浄ステップ後、コーティングに用いたものと同じ抗体をジゴキシゲニン化形態で検出抗体として用いた。これは、同じ抗ヒト抗体クローンがコーティングと検出に用いられたことを意味する。例えば、あるプレートがM-1.7.10 Biでコートされ、M-1.7.10-Digが検出のために用いられた。インキュベーションおよび洗浄ステップの後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体とのインキュベーションを行った。各血清サンプルの吸光度値を3回反復して決定した。
【0096】
(表6)ブリッジングELISA解析の概要


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞株DSM ACC3006、またはDSM ACC3007、またはDSM ACC3008。
【請求項2】
請求項1記載の細胞株のいずれか1つから得られる抗体。
【請求項3】
イムノアッセイにおける請求項2記載の抗体の使用。
【請求項4】
a)捕捉試薬として、細胞株DSM ACC2708、またはDSM ACC3006、またはDSM ACC3007、またはDSM ACC3008から得られる抗体;
b)検出試薬として、細胞株DSM ACC2708、またはDSM ACC3006、またはDSM ACC3007、またはDSM ACC3008から得られる抗体
を含むキット。
【請求項5】
以下の工程を含む、実験動物から得られたサンプル中の治療用抗体の検出方法:
a)分析されるサンプルを提供する工程;
b)前記サンプルを、請求項2記載の抗体と同じエピトープに結合する抗体と共にインキュベートする工程;
c)任意で、前記サンプルを、総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体の選択的検出に適する試薬と共にインキュベートする工程;および
d)(b)または(c)で形成された複合体を治療用抗体の濃度に相関させる工程。
【請求項6】
捕捉抗体とトレーサー抗体とを含む抗原ブリッジングイムノアッセイを用いて、実験動物から得られたサンプル中の治療用抗体を免疫学的に決定する方法であって、前記捕捉抗体と前記トレーサー抗体が、ともに独立して、請求項2記載の抗体と同じエピトープに結合する抗体から選択されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記イムノアッセイがサンドイッチイムノアッセイであることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
捕捉抗体がビオチンにコンジュゲートされ、かつ固定化が固定化されたアビジンまたはストレプトアビジンを介して行われることを特徴とする、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
トレーサー抗体がジゴキシゲニンにコンジュゲートされ、かつ検出可能な標識への連結がジゴキシゲニンに対する抗体を介して行われることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記治療用抗体がFabであることを特徴とする、請求項5〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記実験動物が、以下の科のメンバー:マーモセットおよびタマリン、旧世界ザル、コビトキツネザルおよびネズミキツネザル、テナガザルおよび小型類人猿、キツネザル属、ならびにそれらの交雑を含む群から選択されることを特徴とする、請求項5〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記治療用抗体がヒト抗体またはヒト化抗体であることを特徴とする、請求項5〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
実験動物から得られたサンプル中の総治療用抗体、活性な治療用抗体、または抗原に結合した治療用抗体の濃度を測定するための、治療用抗体に結合しかつ実験動物の免疫グロブリンに結合しない抗体の使用であって、前記抗体が請求項2記載の抗体と同じエピトープに結合する、使用。
【請求項14】
細胞株DSM ACC3006、細胞株DSM ACC3007、細胞株DSM ACC3008によって産生された抗体の混合物を含むことを特徴とする、抗体組成物。
【請求項15】
請求項5〜12のいずれか一項記載の方法における請求項14記載の抗体組成物の使用。
【請求項16】
ヒトまたはチンパンジーIgGに結合しかつイヌおよびマーモセットIgGに結合しない抗体。
【請求項17】
イヌ、アカゲザル、マーモセット、ヒヒ、およびカニクイザルIgGに結合しないことを特徴とする、請求項16記載の抗体。
【請求項18】
ヒトまたはチンパンジーIgGに結合するためのKD値が10-9mol/l以下であり、かつイヌ、アカゲザル、マーモセット、ヒヒおよびカニクイザルIgGに結合するためのKD値が10-6mol/l以上であることを特徴とする、請求項16〜17のいずれか一項記載の抗体。
【請求項19】
モノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項20】
κ軽鎖定常ドメインを含むIgG1に特異的に結合する抗体。
【請求項21】
IgG2にさらに結合することを特徴とする、請求項20記載の抗体。
【請求項22】
IgG4にさらに結合することを特徴とする、請求項20〜21のいずれか一項記載の抗体。
【請求項23】
IgG3に結合しないことを特徴とする、請求項20〜22のいずれか一項記載の抗体。
【請求項24】
λ軽鎖定常ドメインを含むIgG1に結合しないことを特徴とする、請求項20〜23のいずれか一項記載の抗体。
【請求項25】
モノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項20〜24のいずれか一項記載の抗体。
【請求項26】
請求項5〜12のいずれか一項記載の方法における請求項16〜25のいずれか一項記載の抗体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−508700(P2013−508700A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534646(P2012−534646)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065617
【国際公開番号】WO2011/048043
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】