説明

非加熱転写方法、非加熱転写装置、非加熱転写転写箔、及びそれを用いた画像形成物

【課題】
好ましくは連続した操作で、可変パターン状に転写層を非加熱転写できる非加熱転写方法、非加熱転写装置、非加熱転写転写箔、及びそれを用いた画像形成物を提供する。
【解決手段】
被転写体101へ糊をパターニング状に塗布し、基材11の一方の面に光回折効果を発現するレリーフ形状を有する転写層21が設けられた非加熱転写箔10を重ねて加圧した後に、基材11のみ剥離し、好ましくは塗布工程、加圧工程、剥離工程を連続して行い、また、糊の塗布をオンデマンドで行うことも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非加熱転写方法に関し、さらに詳しくは、製造が容易で低コストで、着色された意匠や光学的な効果が得られ、該着色の使用又は保存中の経時による色変化が少なく、さらに転写後の着色層へ熱転写型インクリボンで画像を印画できる非加熱転写方法、非加熱転写装置、非加熱転写転写箔、及びそれを用いた画像形成物に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
また、「コールド転写」は「非加熱転写」、及び「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の非加熱転写方法、非加熱転写装置、非加熱転写転写箔を用いて、被転写体へ転写した本発明の画像形成物の主なる用途としては、例えば、株券、証券、証書、商品券、小切手、手形、入場券、通帳類、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、メンバーズカード、ICカード、光カードなどのカード類、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、パスポート等の各種証明書の証明写真類、カートン、ケース、軟包装材などの包装材類、バッグ類、帳票類、封筒、タグ、OHPシート、スライドフィルム、しおり、書籍、雑誌、カレンダー、ポスター、パンフレット、プリントクラブ(登録商標)、メニュー、パスポート、POP用品、コースター、ディスプレイ、ネームプレート、キーボード、化粧品、腕時計、ライター等の装身具、文房具、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、キー、布、衣類、履物、ラジオ、テレビ、電卓、OA機器等の装置類、各種見本帳、アルバム、また、コンピュータグラフィックスの出力、医療画像出力などがある。しかしながら、特異な意匠性、セキュリティ性を必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)従来、ホログラム、回折格子などのレリーフ形状を有する転写箔は、特異な装飾像や立体像を表現できる意匠性と、これらホログラムや回折格子は高度な製造技術を要し、容易に製造できないことから、偽造防止としてセキュリティー性の向上に利用されている。
これらホログラム、回折格子などのレリーフ形状を物品に貼着する手段として、転写箔を用いて転写印刷して形成する方法が知られている。該転写印刷方法は、ホットスタンプ(箔押とも呼ばれる)、加熱ロールによる加熱による転写印刷、又はサーマルプリンタによる転写印刷が一般的である。しかしながら、いずれも加熱手段を内臓する転写機器が必要であり、非加熱による簡易な転写印刷(コールド転写ともいう)できる非加熱転写方法、非加熱転写装置、非加熱転写転写箔が求められている。
また、更なる意匠性及びセキュリティー性を向上を図るために、ホログラムや回折格子などのレリーフ形成層へ、さらに熱転写プリンタを用いた印画画像(熱転写画像)を組合わせる技術も求められている。
従って、非加熱転写方法、非加熱転写装置、非加熱転写転写箔は、非転写体へ加熱手段を持たない機器でも容易に加圧転写できる方法、装置、ホログラムや回折格子などの光回折効果が発現させることで、特有な意匠や光学的な効果が得られ、さらに該転写層へ熱転写型インクリボンで画像を印画でき、さらにまた、オンデマンドで糊をパタニーングし、可変パターンを転写することも求められている。
また、従来の加熱転写方式では、ホログラムなどのレリーフが形成された樹脂(レリーフ形成層)が、加熱転写時の熱によって亀裂が発生することがあり、亀裂による特有の虹状のムラが発生することがある。この虹ムラはホログラム樹脂層の耐熱性が低いために発生する現象であり、非加熱転写方法の場合には、レリーフ形成層の樹脂の耐熱性が低くても、加熱転写で発生するような虹ムラは発生せず、転写時にホログラムの外観を損ねることはない。
【0005】
(先行技術)従来、加熱しない転写方法としては、被転写体上へ接着剤を介して貼合した後に基材を剥離することで、金属薄膜を転写させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、加熱しないで、部分的に転写する方法としては、被転写体上へパターン状に接着剤層を介して重ね合わせた後に基材を剥離することで、接着剤のパターン状に金属薄膜を転写させるものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、いずれも、ホログラムや回折格子などの光回折効果を発現させる微細な凹凸レリーフ構造がないので、特有な意匠や光学的な効果が得られないという欠点がある。また、加圧して転写した後に、基材を剥離する際に、基材と転写層との密着力が適切な強度でないと、被転写体が紙などであるときに、紙が凝集破壊したり、破損する恐れがあるという問題点があり、かつ、受容層へ熱転写型インクリボンで画像を印画することについては記載もされておらず、ましてや、オンデマンド転写については示唆もされていない。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−71725号公報
【特許文献2】特開昭63−45098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、糊をパターニング、好ましくはオンデマンドでパタニーングすることで、好ましくは連続した操作で、可変パターン状に転写層を転写できる非加熱転写方法、非加熱転写装置、非加熱転写転写箔、及びそれを用いた画像形成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、
請求項1の発明に係わる非加熱転写方法は、被転写体へ糊をパターニング状に塗布し、基材の一方の面に光回折効果を発現するレリーフ形状を有する転写層が設けられた非加熱転写箔を重ねて加圧した後に、基材のみ剥離するように、したものである。
請求項2の発明に係わる非加熱転写方法は、上記糊の塗布工程、該糊の塗布面と非加熱転写箔との加圧工程、基材を剥離する剥離工程、を連続して行うように、したものである。
請求項3の発明に係わる非加熱転写装置は、被転写体へ糊をパターニング状に塗布する塗布工程と、該糊の塗布面と、基材の一方の面に光回折効果を発現するレリーフ形状を有する転写層が設けられた非加熱転写箔とを加圧する加圧工程と、基材を剥離する剥離工程とを、連続して行い、かつ、前記糊の塗布をオンデマンドで行うように、したものである。
請求項4の発明に係わる非加熱転写転写箔は、請求項1〜2のいずれかに記載の非加熱転写方法に用いる非加熱転写箔であって、基材と、該基材の一方の面に転写層が設けられた非加熱転写箔において、前記転写層が少なくとも、基材から剥離性を有しかつ光回折効果を有するレリーフ形状を有するレリーフ形成層と、反射層とからなるように、したものである。
請求項5の発明に係わる非加熱転写転写箔は、JIS Z−0237で定められる粘着力が2〜6N/10mm幅の範囲にある粘着シートの粘着面と上記非加熱転写箔の転写層面とを貼り合わせた後に、JIS Z−0237で定められる粘着力試験方法に準拠して、上記非加熱転写箔と粘着シートとを180度若しくは90度で引き剥がしたとき、上記非加熱転写箔の基材から転写層が剥離するように、したものである。
請求項6の発明に係わる非加熱転写転写箔は、上記転写層が剥離層、レリーフ形成層及び反射層を含むか、基材側に離型層が設けられているように、したものである。
請求項7の発明に係わる非加熱転写転写箔は、上記転写層に染料受容層を含むように、したものである。
請求項8の発明に係わる非加熱転写転写箔は、上記剥離層及び/又は離型層が、シリコーンを3〜25重量部含有するように、したものである。
請求項9の発明に係わる非加熱転写転写箔は、上記レリーフ形状がホログラム及び/又は回折格子であるように、したものである。
請求項10の発明に係わる画像形成物は、請求項1〜2のいずれかに記載の非加熱転写方法で、上記被転写体上に転写された光回折効果を有するように、したものである。
請求項11の発明に係わる画像形成物は、請求項3に記載の非加熱転写装置で、上記被転写体上に転写された光回折効果を有するように、したものである。
請求項12の発明に係わる画像形成物は、請求項1〜2のいずれかに記載の非加熱転写方法で、上記被転写体上に転写された上記転写層の受像層面へ、さらに染料層を有する熱転写シートを用いて、染料の熱転写画像を形成し、着色光回折効果と熱転写画像を併せもつように、したものである。
請求項13の発明に係わる画像形成物は、上記被転写体が紙であるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、糊のパターンを塗布し、好ましくは1つ1つ異なった可変パターンを、オンデマンドで塗布し、非加熱で加圧するだけで、糊パターンに応じたホログラムや回折格子などの光回折効果が付与された転写層を転写できる非加熱転写方法が提供される。
請求項2の本発明によれば、該糊のパターンは1つ1つ異なった可変パターンを、次々と連続して塗布することができる。非加熱転写方法が提供される。
請求項3の本発明によれば、容易に作製でき、被転写体へ加熱手段を持たない機器でも容易に加圧転写でき、ホログラムや回折格子などの光回折効果を付与でき、特有な意匠や光学的な効果やセキュリティ性が得られる非加熱転写装置が提供される。
請求項4の本発明によれば、剥離性を有しかつ光回折効果を有するレリーフ形状を有するレリーフ形成層と反射層とからなり、非加熱でも容易に加圧転写することのできる非加熱転写転写箔が提供される。
請求項5〜6の本発明によれば、非加熱でも、より容易に加圧転写することのできる非加熱転写転写箔が提供される。
請求項7の本発明によれば、転写された上記転写層の受像層面へ、さらに染料層を有する熱転写シートを用いて、染料の熱転写画像を形成できる非加熱転写転写箔が提供される。
請求項8の本発明によれば、加熱しないコールド転写においても、低い力で安定して剥離することができるので、所望の転写パターンが得られる非加熱転写転写箔が提供される。
請求項9の本発明によれば、ホログラムや回折格子などの光回折効果を付与でき、特有な意匠や光学的な効果やセキュリティ性が得られる非加熱転写転写箔が提供される。
請求項10〜11の本発明によれば、ホログラムや回折格子などの光回折効果を付与された転写層が転写移行され、特有な意匠性やセキュリティ性を有する画像形成物が提供される。
請求項12の本発明によれば、請求項10〜11の効果に加えて、転写された上記転写層の受像層面へ、染料の熱転写画像を形成され、光回折効果と熱転写画像を併せもつ画像形成物が提供される。
請求項13の本発明によれば、請求項10〜12の効果に加えて、取り扱い易く、低コストで、種々の用途に応用できる画像形成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す非加熱転写方法の説明図である。
図2は、本発明の1実施例を示す非加熱転写箔の断面図である。
図3は、本発明の1実施例を示す非加熱転写箔の断面図である。
図4は、本発明の1実施例を示す画像形成物の平面図及び断面図である。
図5は、本発明の1実施例を示す画像形成物の断面図である。
【0011】
(非加熱転写方法)本発明の非加熱転写方法は、図1に示すように、(1)被転写体101へ糊の塗布工程、(2)該被転写体101の糊面と、非加熱転写箔10の転写層21面とを重ねて加圧する加圧工程と(3)基材11のみを剥離する工程とからなる。また、(1)被転写体101へ糊の塗布工程は、糊をオンデマンドでパターン状に塗布してもよく、該糊のパターンは可変パターンとすることが好ましい。さらに、糊は非加熱転写箔10の転写層21面へ塗布してもよい。
【0012】
(糊)本発明の非加熱転写方法に用いる糊としては特に限定されないが、例えば、澱粉、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの繊維素系糊、卵白などの蛋白質系糊、ポリビニールアルコール、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合樹脂、アクリル系樹脂などの合成樹脂系糊、シアノアクリレート系樹脂などの瞬間接着剤、などが適用でき、そのままでも、溶液、乳化液、又は分散液としてもよい。該糊の塗布方法は特に限定されないが、例えば、糊液、又はチューブ糊、のりぺん、又はスティック糊などを用いて、手塗り、刷毛塗り、ペンレコーダー、インクジェット、又はスクリーン印刷などの方法で行えばよい。該塗布工程は、オンデマンドでパターンの情報に応じて塗布することが好ましく、該糊のパターンは1つ1つ異なった可変パターンを、次々と連続して塗布することができる。この場合の塗布方法は可変パターンを容易に出力できるペンレコーダー、インクジェットなどが好ましい。
【0013】
次に、被転写体101の糊面と、非加熱転写箔10の転写層21面とを重ねて加圧する。該加圧方法は特に限定されないが、例えば、手でなぞったり、板状物で挟んだり、ロールで回転させながら加圧してもよい。糊が溶媒又は分散媒を含む場合には、乾燥後に基材のみを、公知の剥離法で剥離すればよい。このようにすることで、糊のパターンに応じた転写層のみが、被転写体へ転写され移行させることができる。
【0014】
(非加熱転写装置)本発明の非加熱転写装置は、図示しないが、上記の(1)塗布工程、(2)加圧工程、及び(3)剥離する工程の一連工程を、連続した走行操作で行うことで、種々のパターン画像を得る装置である。また、必要に応じて、熱転写画像を印画する操作も一連の走行操作に加えてもよい。該非加熱転写装置は、加熱手段を内臓しなくてもよく、簡易な機構で、省エネルギーで転写印刷できる。また、該非加熱転写装置には、さらに非加熱転写された転写層へ熱転写型インクリボンで印画画像(熱転写画像)を印画できる熱転写プリンタを併設してもよい。このようにすることで、被転写体へ加熱手段を持たない機器でも容易に加圧転写でき、ホログラムや回折格子などの光回折効果を付与でき、特有な意匠や光学的な効果が得られる。該非加熱転写装置は、前述の糊塗布機構、公知の加圧機構や剥離機構を組合わせることで、容易に作製することができる。
【0015】
(非加熱転写箔)本発明の非加熱転写箔10は、図2に示すように、基材11と、該基材11の一方の面に、少なくともレリーフ形成層15及び反射層17からなる転写層21が順次設けられ、前記レリーフ形成層には光回折効果を有するレリーフ形状を有している。また、必要に応じて、剥離力を低く安定させるために剥離層13を設けたり、被転写体への密着力を向上させるために反射層17面へ接着層19を設けたり、さらに基材11の他方の面に耐熱保護層を設けたり、表面及び/又は層間へ樹脂層、アンカー層などを設けてもよい。
【0016】
(転写箔の基材)基材11としては、製造に耐える機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレートの共押し出しフィルムなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレ−ト、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、セルロース系フィルム、などがある。
【0017】
該基材は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該基材は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良い。該基材は、これら樹脂の少なくとも1層からなるフィルム、シート、ボード状として使用する。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが、耐熱性、機械的強度がよいため好適に使用され、ポリエチレンテレフタレートが最適である。該基材の厚さは、通常、2.5〜200μm程度が適用できるが、4.0〜50μmが好適でる。
【0018】
該基材には、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。また、該基材には、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよく、その場合は、離型層を設けることである。また、離型層と剥離層を両方設けてもよく、より剥離が安定させることができる。
【0019】
(剥離層)剥離層13は、レリーフ形成層15に基材11との充分な剥離性があれば不用であるが、より安定した剥離性を付与するために、設けてもよい。
剥離層13の材料としては、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などが適用できる。離型性樹脂は、例えば、弗素系樹脂、シリコーン、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、繊維素系樹脂などである。離型剤を含んだ樹脂は、例えば、弗素系樹脂、シリコーン、各種のワックスなどの離型剤を、添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂などである。電離放射線で架橋する硬化性樹脂は、例えば、紫外線(UV)、電子線(EB)などの電離放射線で重合(硬化)する官能基を有するモノマー・オリゴマーなどを含有させた樹脂である。また、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などの昇華染料受容性を有する樹脂、好ましくは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を使用若しくは添加すれば、コールド転写後に、昇華型熱転写インクリボンを用いて熱転写画像を形成することができる。
【0020】
(離型層)離型層としては、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などが適用できる。離型性樹脂は、例えば、弗素系樹脂、シリコーン、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、繊維素系樹脂などである。離型剤を含んだ樹脂は、例えば、弗素系樹脂、シリコーン、各種のワックスなどの離型剤を、添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂などである。電離放射線で架橋する硬化性樹脂は、例えば、紫外線(UV)、電子線(EB)などの電離放射線で重合(硬化)する官能基を有するモノマー、オリゴマーなどを含有させた樹脂である。
【0021】
剥離層13及び離型層の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコートなどの印刷又はコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成したり、押出しコーティング法で皮膜を形成したりすれば良い。また、要すれば、温度30℃〜120℃で加熱乾燥、あるいはエージング、または電離放射線を照射して架橋させてもよい。離型層及び剥離層13の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。該厚さは薄ければ薄い程良いが、0.1μm以上であればより良い成膜が得られて剥離力が安定する。
【0022】
剥離工程での剥離個所は、剥離層13のみの場合には基材11と剥離層13との間、離型層を設けた場合には離型層と剥離層13との間、離型層を設け剥離層を設けない場合には剥離層13とレリーフ形成層15との間、である。しかしながら、加熱しないコールド転写においては、剥離が安定せず、所望の転写パターンが得られないという問題がある。
このために、剥離層及び/又は離型層へ、主成分樹脂100質量部に対してシリコーンを3〜25質量部、好ましくは10〜20質量部を含有させることで、熱のエネルギーがなくとも、低い力で安定して剥離をすることができ、意図した所望の転写パターンを得ることができる。シリコーンが3重量部未満ではコールド転写時に剥離しにくく、逆に25重量部を越えると、後述するホログラムパターンなどのレリーフを賦型を熱エンボスする際に、非加熱転写箔10自身が版(シリンダー)に密着し、いわゆる版とられが発生し、シワが発生したり、切断したり、賦型が不十分となる。
【0023】
このために剥離力は、剥離試験;JIS Z−0237で定められる粘着力が2〜6N/10mm幅の範囲にある粘着シートの粘着面と上記非加熱転写箔の転写層面とを貼り合わせた後に、JIS Z−0237で定められる粘着力試験方法に準拠して、上記非加熱転写箔と粘着シートとを180度若しくは90度で引き剥がしたとき、上記非加熱転写箔の基材から転写層が剥離するようにする。通常の転写箔は加熱転写箔であり、加熱状態で剥離力が低下して剥離し転写移行するもので、常温では適度に密着している。これに対して、本願の非加熱転写箔では、常温でも剥離力が軽く、JIS Z−0237で定められる粘着力試験方法で基材から転写層が剥離するものが、非加熱状態でも転写することができ、剥離できないものは、転写できなかったり、所望の転写パターンが得られない。
【0024】
(レリーフ形成層)レリーフ形成層15の材料としては、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、そして、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂を硬化させたもの、不飽和エチレン系モノマーと不飽和エチレン系オリゴマーを適宜混合したものに増感剤を添加した組成物等の紫外線硬化性樹脂を硬化させたもの、下線部或いは、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物やラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質が使用可能である。特に耐薬品性、耐光性及び耐候性等の耐久性に優れた熱硬化性樹脂、紫外線や電子線などの電離放射線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等の電離放射線硬化性樹脂を硬化させたものが適用できる。
【0025】
(レリーフ形成層)レリーフ形成層15の電離放射線硬化樹脂としては、電離放射線で硬化させる以前の塗布状態ではべとつかず、レリーフ構造を容易に賦型した後に、電離放射線で硬化できるものが好ましい。融点が40℃以上のイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上のものを含有する樹脂が、賦型性に優れ、適度な耐熱性を有するので好ましい。
【0026】
また、レリーフ形成層15を構成する電離放射線硬化樹脂の硬化後の耐熱性としては、適度なガラス転移温度(Tg)を有し、好ましくは130〜300℃である。この範囲を越える過度の耐熱性では、層が硬くて賦型性が低下し、また、この範囲未満の低い耐熱性では、折角賦型したレリーフ構造が、転写時の熱などで変形し劣化して、性能が低下する。
【0027】
レリーフ形成層15の好ましい1つとしては、一般式(a)で表されるウレタン変性アクリル系樹脂を主成分とする未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させたの硬化物である。具体的には、本出願人が特開2000−273129号公報で開示している光硬化性樹脂組成物などが適用でき、前記明細書に記載の光硬化性樹脂組成物Aを本明細書の実施例でも使用し、「電離放射線硬化性樹脂組成物A」と表記している。
【0028】
【化1】

(ここで、6個のR1は夫々互いに独立して水素原子またはメチル基を表わし、R2は炭素数が1〜20個の炭化水素基を表わす。l、m、n、o及びpの合計を100とした場合に、lは20〜90、mは0〜80、nは0〜50、o+pは10〜80、pは0〜40の整数である。XおよびYは直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を表わし、Zはウレタン変性アクリル樹脂を改質するための基を表し、好ましくは嵩高い環状構造の基を表わす。)
【0029】
レリーフ形成層15の好ましい他の1つとしては、融点が40℃以上のイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上のものを含有する樹脂である。
【0030】
即ち、(1)融点が40℃以上のイソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上のものを含有するか、(2)融点が40℃以上のイソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物及び(メタ)アクリロイル基を有しておらず且つイソシアネート基と反応し得る化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上のものを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物である。また、イソシアネート化合物が、非芳香族性炭化水素環に結合したイソシアネート基を有するもの、イソホロンジイソシアネートの三量体、又はイソホロンジイソシアネートと活性水素含有化合物との反応生成物であり、さらに、(メタ)アクリル化合物が、(メタ)アクリル酸、水酸基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂が適用でき、本明細書の実施例では「電離放射線硬化性樹脂組成物B」と表記している。
【0031】
(電離放射線)上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(レリーフ形成層15)となる。電離放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線(EB)などが適用できるが、紫外線(UV)が好適である。電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。
【0032】
電離放射線硬化性樹脂組成物には、上記の各成分に加えて、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン等:銅類等の重合防止剤を配合すると貯蔵安定性が向上する。更に、必要に応じて、促進剤、粘度調節剤、界面活性剤、消泡剤等の各種助剤を配合してもよい。また、シリコーン、スチレン−ブタジエンラバー等の高分子体を配合してもよい。
【0033】
レリーフ形成層15は電離放射線硬化性樹脂を電離放射線で硬化させた電離放射線硬化物であり、このレリーフ形成層15の厚さは、通常は0.2〜10.0μm程度、好ましくは0.5〜2.5μmである。
【0034】
(反射層)反射層17は、ホログラム又は回折格子等のレリーフ構造を設けたレリーフ形成層15面のレリーフへ反射層17へ設けることにより、ホログラムの再生像及び/又は回折格子などが明瞭に視認できるようになる。該反射層17として、光を反射する金属を用いると不透明タイプとなり、レリーフ形成層15面と屈折率に差のある透明金属化合物を用いると透明タイプとなる。反射層17としては、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Pd、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、Rb等の金属、及びその酸化物、硫化物、窒化物等の薄膜を単独又は複数を組み合わせてもよい。好ましい金属としてはアルミニウム、クロム、ニッケル、金、銀である。
【0035】
(透明反射層)また、透明タイプの反射層17としては、レリーフ形成層15面と屈折率に差のある透明金属化合物を用いる。その光学的な屈折率がレリーフ形成層のそれとは異なることにより、ほぼ無色透明な色相で、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラム等のレリーフを視認できる。該反射層17の屈折率としては、レリーフ形成層15面との屈折率の差が大きいほど効果があり、屈折率の差が0.3以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上である。例えば、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、TiO、SiO2、ITO、等が適用でき、好ましくは、ITO、又は酸化スズで、屈折率はいずれも2.0であり、充分な屈折率の差を有している。また、屈折率が小さいものでは、LiF、MgF2、AlF2などがある。なお、この透明とは、可視光が十分透過すれば良く、無色または有色で透明なものも含まれる。
【0036】
上記の金属、又は透明金属化合物の形成は、いずれも10〜2000nm程度、好ましくは20〜500nmの厚さになるよう、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの真空薄膜法で得られる。反射層17の厚さがこの範囲以上では、転写時にヒビ割れし易く、これ未満では反射効果が低い。
【0037】
(保護層)反射層17面には、傷や腐食を防止するための保護層を設けてもよい。該保護層としては、例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール系樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、フェノール系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン−アルキッド樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂などが適用でき、これらの樹脂を単独または複数を組み合せて使用できる。
【0038】
(製造方法)本発明の非加熱転写箔10の製造方法は、(a)基材11へ、必要に応じて剥離層13を設け、(b)該剥離層13面へレリーフ形成層15を設け、(c)該レリーフ形成層15へレリーフを賦形し、(d)該レリーフ形成層15へ電離放射線を照射し、(e)レリーフ面へ反射層17を設け、(f)必要に応じて反射層17面へ保護層を設ける公知の製造工程が適用できる。剥離層13、レリーフ形成層15、反射層17、保護層の形成は同業者では公知であり省略し、(c)レリーフ形成層15へのレリーフの賦形、及び(d)電離放射線の照射についてのみ説明する。
【0039】
(c;該レリーフ形成層15へレリーフを賦形する工程)
基材上に塗工されたレリーフ形成層15面へレリーフを賦形する。レリーフは、2次元及び/又は3次元画像を再生可能な表面凹凸パターンや、各種の光学機能を有する光回折パターンである凹凸のレリーフ構造である。この表面凹凸レリーフ構造としては、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞の光の強度分布が凹凸模様で記録されたホログラムや回折格子が適用できる。ホログラムとしては、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子、特殊な光学機能が設計されたコンピュータグラフィックホログラム、などがある。これらのホログラムおよび/または回折格子の単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。回折格子としては、ホログラム記録手段を利用したホログラフィック回折格子があげられ、その他、電子線描画装置等を用いて機械的に回折格子を作成することにより、計算に基づいて任意の回折光が得られる回折格子をあげることもできる。
【0040】
また、特殊な光学機能が設計されたコンピュータグラフィックホログラムは、レリーフ構造が複雑で高精細なレリーフ構造を有するので、賦型性が低下すると忠実にレリーフを賦型できない恐れが高いので、いかに忠実に賦形するかが、重要である。コンピュータグラフィックホログラムやコンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)としては、特に限定されるものではないが、例えば、フーリエ変換ホログラム、ホログラフィックステレオグラム、3Dホログラムやホログラム光学素子などのレリーフ構造のものなどがある。
【0041】
通常、賦形は、レリーフ形成層15の表面に、レリーフが形成されているスタンパ(金属版、又は樹脂版)を圧着(所謂エンボス)をして、該レリーフをレリーフ形成層15へ形成(複製)した後に、スタンパを剥離することで行う。レリーフを複製するスタンパは、マスターそのものも使用できるが、摩耗や損傷の恐れがあるため、アナログレコード等におけるのと同様、マスターに金属メッキまたは紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射して硬化させて剥がす等の方法(当業者では2P法と呼ぶ)により、金属又は樹脂による複製を行ない、複製された型(スタンパ)を使用して商業的複製を行なう。
【0042】
商業的複製の方法は、金型又は樹脂型のスタンパを用いて、レリーフ形成層15の表面へエンボスしてレリーフを複製した後に電離放射線を照射するか、又は、エンボス中に電離放射線を照射してからスタンパを剥離することでレリーフを複製する。この商業的な複製は、長尺状で行うことで連続な複製作業ができる。
【0043】
本発明では、前述したように、剥離層13及びレリーフ形成層15の材料、厚さ、その厚さ比を最適化することで、例えば、コンピュータグラフィックホログラムコンピュータジェネレーティッドホログラム等をエンボス賦型加工する時でも、スタンパが汚染せず、スタンパがレリーフ形成層15からの剥離性を良好にし、スタンパを長期間連続して使用(反復エンボス性)できるので、耐刷性に優れる。
【0044】
(d;該レリーフ及び剥離層へ電離放射線を照射する工程)
レリーフ形成層15の表面へ、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、若しくはエンボス中及びエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。電離放射線としては、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線などが適用できるが、紫外線(UV)が既存設備が使え、安定した技術である面から好適である。
【0045】
(画像形成物)本発明の画像形成物100は、本発明の非加熱転写方法、本発明の非加熱転写装置、及び/又は本発明の非加熱転写箔10を用いて、被転写体101へ非加熱で転写すればよい。被転写体101へ、剥離層13(必要に応じて)/染料受容層14(必要に応じて)/レリーフ形成層15/反射層17/接着層19(必要に応じて)からなる転写層21が転写し移行する。糊のパターンは、文字、数字、イラスト、図形などの任意のパターンでよく、パターンの数量も、1又は複数の任意に形成すればよく、該糊パターンに応じて転写層21は転写し移行する。例えば、糊のパターンを大小のハート形としたものが、図4(A)の平面図、及び図4(B)の断面図で、該糊のパターン通りに転写層21が転写されている。
【0046】
また、転写層21に染料受容層14を設けておくと、被転写体へ移行した転写層の染料受容層14へ、昇華型熱転写リボンを用いて熱転写画像を設けたものが、図5に示す画像形成物100である。転写層がなく被転写体101の表面が露出している領域にも、染料受容性を付与しておけば熱転写画像を形成することができる。
【0047】
(被転写体)被転写体100としては、特に限定されず、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布あるいは染料受容性のある媒体等いずれのものでもよい。被転写体の形状についても、証券やチケットなどの金券類、クレジットカード、プリペイドカード、グリーティングカード、運転免許証、ICカード、光カードなどのカードや帳票類、カートンなどの容器やケース類、タグ、しおり、ポスターなどの枚葉類やPOP用品、化粧品、腕時計、ライター等の装身具、封筒、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、キー、布、衣類、履物、バッグ類、、テレビ、電卓、OA機器等の装置類など、種類を問うものではない。該被転写体100の媒体は、その少なくとも1部が着色、印刷やその他の加飾、及び/又は必要に応じてプライマ層、接着層、保護層などの他の層を、層間や表面へ設けてもよい。
【0048】
(転写層の転写)被転写体100への転写方法としては、前述した非加熱転写法である。被転写体へ転写される転写層のパターンは糊パターンであり、該糊のパターンは矩形、円形、星型などのパターン、ストライプ状、全面ベタ状など、特に制限されない、また、パターンやストライプ状の場合には、複数個であってもよい。該糊パターンは、オンデマンドでパターンの情報に応じて塗布することが好ましく、該糊のパターンは1つ1つ異なった可変パターンを、次々と連続して塗布することができる。
【0049】
さらに、転写層21に染料受容層14を設けておいた本発明の非加熱転写箔10を用いた場合には、転写された上記転写層の受像層面へ染料の熱転写画像を形成してもよい。被転写体へ移行した転写層の染料受容層14へ、昇華型熱転写リボンを用いて熱転写画像を設けたものが、図5に示す画像形成物100である。転写層がなく被転写体101の表面が露出している領域にも、染料受容性を付与しておけば熱転写画像を形成してもよい。
【0050】
このようにして得られた本発明の画像形成物100は、ホログラムや回折格子などの光回折効果が発現され、特有な意匠や光学的な効果が得られ、併せてセキュリティ性も優れる。また、光回折効果は、加熱転写で発生するような虹ムラは発生せず、転写時にホログラムの外観が損わられず、原版に近い効果が得られる。オンデマンドで可変パターンを転写したり、転写層へ熱転写型インクリボンで画像を印画したりすれば、より高い意匠性やセキュリティ性が得られる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)基材として、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー6C−F53、東レ(株)製、商品名)を用い、該基材面に、下記組成の剥離層塗工液を、乾燥後の厚みが0.5g/m2になるように、コーターで塗工し80℃で乾燥させて、剥離層を形成した。
・<剥離層塗工液>
エポキシ変性シリコーン(X−22−3000T、信越化学工業(株)製) 5質量部
メチルスチレン変性シリコーン(X−24−510、信越化学工業(株)製)5質量部
ポリエーテル変性シリコーン(FZ2101、日本ユニカー(株)製) 5質量部
「電離放射線硬化性樹脂組成物A(前述)」 100質量部
メチルエチルケトン 400質量部
上記剥離層面に、下記組成のレリーフ形成層塗工液を、乾燥後の厚みが2.0g/m2になるように、コーターで塗工し80℃で乾燥させて、レリーフ形成層を形成した。
・<レリーフ形成層塗工液>
「電離放射線硬化性樹脂組成物A(前述)」 100質量部
メチルエチルケトン 200質量部
次に、該レリーフ形成層面へスタンパを加圧(エンボス)してレリーフを賦形する工程、即ちホログラム複製工程に入る。マスターホログラム(2光束干渉法で撮影した)から、2P法で複製したスタンパを複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させた。該レリーフ面へ真空蒸着法によりアルミニウムを厚さ300nmに蒸着して、反射層を形成し、反射型のレリーフ型ホログラムを形成した。該レリーフ面の反射層上に、下記組成の接着層塗工液を用いて、グラビアコートで塗工し100℃で乾燥して、厚さが0.5g/m2の接着層を形成して、実施例1の非加熱転写箔10を得た。
・<接着層塗工液>
ブチルメタアクリレート系樹脂 30部
(A−415、大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 10部
トルエン 10部
【0053】
(実施例2)下記の剥離層塗工液、及びレリーフ形成層塗工液を用いる以外は、実施例1と同様にして、非加熱転写箔10を得た。
・<剥離層塗工液>
エポキシ変性シリコーン(X−22−3000T、信越化学工業(株)製) 5質量部
メチルスチレン変性シリコーン(X−24−510、信越化学工業(株)製)5質量部
ポリエーテル変性シリコーン(FZ2101、日本ユニカー(株)製) 10質量部
「電離放射線硬化性樹脂組成物B(前述)」 100質量部
メチルエチルケトン 400質量部
・<レリーフ形成層塗工液>
「電離放射線硬化性樹脂組成物B(前述)」 100質量部
メチルエチルケトン 200質量部
【0054】
(実施例3)剥離層の代わりに、下記の離型層塗工液を用いて、離型層を形成する以外は、実施例1と同様にして、非加熱転写箔10を得た。なお、コールド転写し基材を剥離した際に、離型層は基材側に残る。
・<離型層塗工液>
エポキシ変性シリコーン(X−22−3000T、信越化学工業(株)製) 3質量部
メチルスチレン変性シリコーン(X−24−510、信越化学工業(株)製)3質量部
ポリエーテル変性シリコーン(FZ2101、日本ユニカー(株)製) 4質量部
シリコーン変性アクリル樹脂 100質量部
(セルトップ226、ダイセル化学(株)製)
メチルエチルケトン 400質量部
【0055】
(評価)実施例1〜3の非加熱転写箔10は下記剥離試験に合格であった。
・<剥離試験>;JIS Z−0237で定められる粘着力が2〜6N/10mm幅の範囲にある粘着シートの粘着面と上記非加熱転写箔の転写層面とを貼り合わせた後に、JIS Z−0237で定められる粘着力試験方法に準拠して、上記非加熱転写箔と粘着シートとを180度若しくは90度で引き剥がしたとき、上記非加熱転写箔の基材から転写層が剥離するものを「合格」とした。
【0056】
(実施例4〜6)公知のペンレコーダーへスティック糊を載置し、被転写体とした斤量200gの上質紙上へ、スティック糊をXY方向に移動させながら、図4のようにハート形のパターン状に糊を塗布し、実施例1〜3の非加熱転写箔10を重ねて2本のロール間を通過させた後に、非加熱転写箔10の基材のみを剥離したところ、糊の塗布されたハート形の部分へ、ホログラムが転写された画像形成物100が得られた。
【0057】
(実施例7)糊のパターンを、ハート形、星形、三日月形と順次変化させる以外は、実施例4と同様にしたところ、順次ハート形、星形、三日月形のホログラムが転写された画像形成物100が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の1実施例を示す非加熱転写方法の説明図である。
【図2】本発明の1実施例を示す非加熱転写箔の断面図である。
【図3】本発明の1実施例を示す非加熱転写箔の断面図である。
【図4】本発明の1実施例を示す画像形成物の平面図及び断面図である。
【図5】本発明の1実施例を示す画像形成物の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10:非加熱転写箔
11:基材
13:剥離層
15:レリーフ形成層
17:反射層
19:接着層
21:転写層
23:糊
100:画像形成物
101:被転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写体へ糊をパターニング状に塗布し、基材の一方の面に光回折効果を発現するレリーフ形状を有する転写層が設けられた非加熱転写箔を重ねて加圧した後に、基材のみ剥離することを特徴とする非加熱転写方法。
【請求項2】
上記糊の塗布工程、該糊の塗布面と非加熱転写箔との加圧工程、基材を剥離する剥離工程、を連続して行うことを特徴とする請求項1に記載の非加熱転写方法。
【請求項3】
被転写体へ糊をパターニング状に塗布する塗布工程と、該糊の塗布面と、基材の一方の面に光回折効果を発現するレリーフ形状を有する転写層が設けられた非加熱転写箔とを加圧する加圧工程と、基材を剥離する剥離工程とを、連続して行い、かつ、前記糊の塗布をオンデマンドで行うことを特徴とする非加熱転写装置。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれかに記載の非加熱転写方法に用いる非加熱転写箔であって、基材と、該基材の一方の面に転写層が設けられた非加熱転写箔において、前記転写層が少なくとも、基材から剥離性を有しかつ光回折効果を有するレリーフ形状を有するレリーフ形成層と、反射層とからなることを特徴とする非加熱転写箔。
【請求項5】
JIS Z−0237で定められる粘着力が2〜6N/10mm幅の範囲にある粘着シートの粘着面と上記非加熱転写箔の転写層面とを貼り合わせた後に、JIS Z−0237で定められる粘着力試験方法に準拠して、上記非加熱転写箔と粘着シートとを180度若しくは90度で引き剥がしたとき、上記非加熱転写箔の基材から転写層が剥離することを特徴とする請求項4に記載の非加熱転写箔。
【請求項6】
上記転写層が剥離層、レリーフ形成層及び反射層を含むか、基材側に離型層が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の非加熱転写箔。
【請求項7】
上記転写層に染料受容層を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の非加熱転写箔。
【請求項8】
上記剥離層及び/又は離型層が、主成分樹脂100質量部に対してシリコーンを3〜25質量部含有することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の非加熱転写箔。
【請求項9】
上記レリーフ形状がホログラム及び/又は回折格子であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の非加熱転写箔。
【請求項10】
請求項1〜2のいずれかに記載の非加熱転写方法で、上記被転写体上に転写された光回折効果を有することを特徴とする画像形成物。
【請求項11】
請求項3に記載の非加熱転写装置で、上記被転写体上に転写された光回折効果を有することを特徴とする画像形成物。
【請求項12】
請求項1〜2のいずれかに記載の非加熱転写方法で、上記被転写体上に転写された上記転写層の受像層面へ、さらに染料層を有する熱転写シートを用いて、染料の熱転写画像を形成し、着色光回折効果と熱転写画像を併せもつことを特徴とする画像形成物。
【請求項13】
上記被転写体が紙であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の画像形成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−259464(P2006−259464A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78991(P2005−78991)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】