説明

非可逆回路素子及びその製造方法

【課題】 小型で高特性及び高信頼性を有しており、また共振容量の調整が可能である非可逆回路素子を提供する。
【解決手段】 所定パターンを有する中心導体及び中心導体と一体的に焼成された絶縁性磁性体を含む磁気回転子と、共振容量、終端抵抗、入出力端子及びグランド端子の少なくとも1つが形成されており、磁気回転子の側方にこの磁気回転子を取り囲むように配置されかつ磁気回転子と電気的に接続された少なくとも1つの基板とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ波帯域等で用いられる無線機器、例えば携帯電話のごとき移動体無線機器等に使用される集積型の非可逆回路素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、移動体通信等においては高周波機器の小型化が進んでおり、これに使用される非可逆回路素子も小型化及び高性能化の要求が高まっている。
【0003】一般に、集中定数型非可逆回路素子は、磁気回転子及び励磁用永久磁石を有しており、さらに、所定の周波数で動作させるための共振容量を付加して構成される。
【0004】従来の磁気回転子は、電気的に絶縁された状態でかつ交差するように配置された複数の中心導体を非磁性体の基板上に形成し、この基板の両面上に磁性体部材を単に積み重ねて接合することにより製造されていた。このような組立式磁気回転子においては、磁性体部材により形成される磁路が非磁性体の基板によって遮断されてしまい、磁性体部材と非磁性体基板との境界面に反磁界が発生する。この結果、透磁率が低減してしまい、素子の小型化、広帯域化及び低損失化の要請に十分応えることができなかった。
【0005】このような問題点を解消するため、磁気回転子を所定パターンの中心導体と一体的に焼成された絶縁性磁性体で構成することが本出願人により既に提案されている(特開平6−343005号公報及び特開平6−338707号公報)。このように構成することによって、磁性体内で不連続部分が存在しなくなり、その結果、磁気回転子内に反磁界が発生しなくなる。
【0006】磁気回転子に容量を付加して非可逆回路素子を形成する方法として、従来より種々の提案がなされている。
【0007】例えば、上述した特開平6−343005号公報及び特開平6−338707号公報には、所定パターンの中心導体が形成された磁気回転子を、上下のグランド層との間で容量を形成する共振用キャパシタンス電極と共に一体的に焼成することが記載されている。この技術によると、中心導体が形成された磁性体シートを複数積層し、この上にさらに接地用導体及び共振容量(キャパシタンス電極)が形成された誘電体シートを積層した後に焼成する構成となっている。しかしながら、このように上下方向に共振容量用のシートを積層することは、高さ方向の寸法を増大させ、しかも 励磁用磁界の磁気回路が途中で遮断されてしまうので、磁気抵抗が増大してしまう。また、磁性体と誘電体とのような異材質を一体的に焼成することは非常に困難である。
【0008】特開平6−61708号公報、特開平6−291515号公報及び特開平7−111405号公報には、マイクロ波用磁性体内にキャパシタンスを一体的に形成した非可逆回路素子が記載されている。これらキャパシタンスは、いずれも、整合容量であり共振容量を形成するものではない。これら公知技術のように、磁性体内にキャパシタンス電極を形成して一体焼成した場合、得られる容量値は低くなってしまい、共振容量として使用するべく十分な容量を得るためにはキャパシタンス電極面積を大きくするか積層数を多くしなくてはならなくなり、素子の小型化を図ることが難しい。また、特開平7−111405号公報の場合は、磁性体中の中心電極の相互の線間容量を整合容量として利用しているが、このように線間容量で共振容量を得ようとすると高周波側での特性が悪化してしまう。
【0009】また、中心導体と同一面内にキャパシタンス電極を形成し、この電極と磁気回転子の表面に形成されたグランド電極との間で共振容量を得ることが考えられるが、この場合、所定の共振周波数で共振させようとすると、キャパシタンス電極の面積が非常に大きくなってしまい、非可逆回路素子を小型化できなくなる。また、高周波特性を劣化させることなく素子を小型化することが非常に困難である。
【0010】特開平5−299904号公報及び特開平5−304404号公報には、中心導体と共振容量とを同時に多層基板で形成し、非可逆回路素子を小型化することが記載されている。図1は、これら公報に開示された非可逆回路素子の断面を示す図である。
【0011】同図において、10は多層誘電体基板、11は磁気回転子を構成するためのフェライト、12は永久磁石をそれぞれ示している。この非可逆回路素子は、多層誘電体基板10中に中心導体と共振容量とが同時に形成されており、磁気回転子を構成するためのフェライト11はその基板の片面側に設置されている。このように構成されているため、この構造によると、従来の組立式の非可逆回路素子と同様に高周波磁界の磁路を閉じることができないので反磁界が発生し、動作帯域が狭くなってしまう。また、中心導体と共振容量とを同時に形成すると、直流回路的には容量電極とグランド電極とが短絡されるため、共振容量を測定することが困難となり、そのため容量値を調整することが非常に困難となる。
【0012】従って本発明の目的は、小型で高特性及び高信頼性を有しており、また共振容量の調整が可能である非可逆回路素子を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、所定パターンを有する中心導体及び中心導体と一体的に焼成された絶縁性磁性体を含む磁気回転子と、共振容量、終端抵抗、入出力端子及びグランド端子の少なくとも1つが形成されており、磁気回転子の側方にこの磁気回転子を取り囲むように配置されかつ磁気回転子と電気的に接続された少なくとも1つの基板とを備えた非可逆回路素子が提供される。
【0014】共振容量、終端抵抗、入出力端子及びグランド端子の少なくとも1つが形成された基板が、磁気回転子の側方にこの磁気回転子を取り囲むように配置されているため、磁気回転子の周囲を有効に使用することができ、非可逆回路素子の特に高さ方向の小型化に非常に有効である。また、永久磁石により作られる直流バイアス磁界の磁気回路をほぼ完全に閉じることができ、これにより磁気抵抗が低減されるため、永久磁石を薄くすることができる。そのため、さらに非可逆回路素子の高さ方向の小型化が可能になる。
【0015】基板が、例えば誘電体又は磁性体等のセラミクス材料による単層基板又は多層基板であることが好ましい。
【0016】基板が、磁気回転子の側方に配置された単一の基板からなるか、又は磁気回転子の側方に配置された複数の基板からなることも好ましい。
【0017】本発明によれば、さらにまた、所定パターンを有する中心導体及び中心導体と一体的に焼成された絶縁性磁性体を含む磁気回転子と共振容量、終端抵抗、入出力端子及びグランド端子の少なくとも1つを有する基板とをそれぞれ別個に形成した後、磁気回転子の側方にこの磁気回転子を取り囲むように基板を配置し、磁気回転子と基板とを電気的に接続することにある。
【0018】
【発明の実施の形態】図2は本発明の非可逆回路素子の一実施形態を示す分解斜視図、図3はその非可逆回路素子の断面図、図4はその非可逆回路素子の基板部分の分解平面図である。
【0019】これらの図において、20は磁気回転子、21はこの磁気回転子20の側方にこの磁気回転子を取り囲むように配置した基板、22は磁気回転子20の上に載置される励磁用永久磁石、23はヨークをそれぞれ示している。
【0020】磁気回転子20は、本出願人により提案された特開平6−343005号公報及び特開平6−338707号公報に記載された磁気回転子のごとく、所定パターンの中心導体と共に一体的に焼成された絶縁性磁性体から主として構成されており、その側面には入力端子、出力端子及びグランド電極が、上下面にはグランド電極がそれぞれ形成されている。
【0021】基板21は、本実施形態においては単層の誘電体基板であり、その上面には、入力端子24、出力端子25、アイソレーション電極26、終端抵抗27及びグランド端子28が形成されており、その下面にはグランド電極29が形成されている。入力端子24、出力端子25及びアイソレーション電極26とグランド電極29との間で共振容量が得られる。この誘電体基板21には、中央部に磁気回転子20が嵌合されるべく開口形状が磁気回転子20の平面外側形状にほぼ等しい穴30が設けられている。
【0022】磁気回転子20及び誘電体基板21をそれぞれ別個に製造し、磁気回転子20を基板21の穴30内に嵌合させた後、磁気回転子20の入力端子、出力端子及びグランド電極を基板21の入力端子24、出力端子25及びグランド電極29にそれぞれ電気的に接続することによって非可逆回路素子が形成される。
【0023】この構成によれば、磁気回転子20の周囲空間を有効に使用することができ、非可逆回路素子の高さ方向の小型化に非常に有効である。また、励磁用永久磁石22により作られる直流バイアス磁界の磁気回路をほぼ完全に閉じることができ、これにより磁気抵抗が低減されるため、この永久磁石22自体を薄くすることができる。そのため、非可逆回路素子の高さ方向のさらなる小型化が可能となる。
【0024】以下、本実施形態における非可逆回路素子の具体的な製造工程を説明する。
【0025】まず、磁気回転子20用の磁性体グリーンシートを作成する。酸化イットリウム(Y23 )と酸化鉄(Fe23 )とをモル比で3:5の割合で混合し、得られた混合粉を1200℃で仮焼きする。仮焼きされた混合粉をボールミルにて粉砕し、有機バインダ及び溶剤を添加し、磁性体スラリーを作製する。得られた磁性体スラリーをドクターブレード法にて、グリーンシートに成形する。
【0026】下層又は中間層のグリーンシートについては、グリーンシートにヴィアホール用の穴をパンチングマシーンで形成し、その後、グリーンシートに厚膜印刷法で中心導体パターンを形成する。このとき、ヴィアホールの充填も同時に行う。導体材料としては、例えばパラジウムペーストを使用する。
【0027】上層のグリーンシートについては、グリーンシートに厚膜印刷法で中心導体パターンを形成する。導体材料としては、例えばパラジウムペーストを使用する。
【0028】このようにして形成したグリーンシートを重ねて熱圧着し、積層体を得る。その後、この積層体を所定の大きさの所定の形状に切断し、1480℃で焼成する。
【0029】次いで、焼成体の上下面、側面に銀ペーストを焼き付けることによってグランド電極、入力端子、出力端子を、銀ペーストを焼き付けることにより形成する。これにより磁性体及び中心導体が一体化して焼成された磁気回転子20が得られる。
【0030】一方、ガラスを主成分とした誘電体シートをドクターブレード法にて作成することにより基板21用のグリーンシートを形成する。このグリーンシートに、磁気回転子20が嵌合されるべき穴30を打ち抜き型にて形成した後、所定の大きさに切断し、900℃で焼成する。焼成した誘電体シートの上面、下面及び側面に入力端子24、出力端子25、アイソレーション電極26、グランド端子28及びグランド電極29を印刷し、さらに厚膜による終端抵抗27を印刷し、焼成炉にて焼きつけて基板21を形成する。この場合、グランド端子28はグランド電極29に電気的に接続される。
【0031】次いで、入力端子24、出力端子25及びアイソレーション電極26とグランド電極29との間で得られる共振容量の容量値を測定し、入力端子24、出力端子25及びアイソレーション電極26をトリミングすることにより容量値を調整する。このように、磁気回転子の中心導体をこの基板21に内蔵させないことにより、非可逆回路素子を組み立てる前に容量値を調節することができ、調整工程を非常に簡略化することが可能である。
【0032】このようにして得られた磁気回転子20を基板21の穴30内に嵌合させ、電気的接続を行った後、励磁用永久磁石22及びヨーク23を組み付けることにより非可逆回路素子を得ることができる。この非可逆回路素子は、共振容量が磁気回転子20の周囲に効率よく形成されている。また、励磁用永久磁石22と磁気回転子20及びヨーク23との間に非磁性物がないため、直流バイアス磁気回路が閉じている。これにより直流バイアス磁気回路の磁気抵抗を低下させることができる。さらに励磁用永久磁石22を薄くすることができるため、素子全体を非常に薄くすることが可能になる。なお、磁気回転子20の外側形状、及び磁気回転子20が嵌合する穴30の形状は図2及び図4に示した形状に限定されるものでないことは明らかである。また、基板21として誘電体によるセラミクス材料を用いているが、これは最も好ましい材料であり、その他のセラミクス材料として磁性体等を用いることも可能である。
【0033】図5は本発明の非可逆回路素子の他の実施形態を示す分解斜視図、図6はその非可逆回路素子の断面図である。
【0034】これらの図において、50は磁気回転子、51a及び51bはこの磁気回転子50の側方にこの磁気回転子を取り囲むように配置した基板、52は磁気回転子50の上に載置される励磁用永久磁石、53はヨークをそれぞれ示している。
【0035】磁気回転子50は、図2の実施形態における磁気回転子20とほぼ同じ構成である。即ち、所定パターンの中心導体と共に一体的に焼成された絶縁性磁性体から主として構成されており、その側面には入力端子、出力端子及びグランド電極が、上下面にはグランド電極がそれぞれ形成されている。
【0036】基板51a及び51bは、本実施形態においては2分割された単層の誘電体基板である。基板51aの上面には入力端子54及び出力端子55が形成されており、基板51bの上面にはアイソレーション電極56、終端抵抗57及びグランド端子58が形成されており、基板51a及び51bの下面には図示されていないがグランド電極が形成されている。入力端子54、出力端子55及びアイソレーション電極56とグランド電極との間で共振容量が得られる。2分割された誘電体基板51a及び51bには、これらが合体した場合に、磁気回転子50が嵌合されるべく開口形状が磁気回転子50の平面外側形状にほぼ等しい穴となる凹部60a及び60bがそれぞれ設けられている。
【0037】磁気回転子50及び誘電体基板51a及び51bをそれぞれ別個に製造し、磁気回転子50を基板51a及び51bの凹部60a及び60bによって合成される穴内に嵌合させた後、磁気回転子50の入力端子、出力端子及びグランド電極を基板51a及び51bの入力端子54、出力端子55及びグランド電極にそれぞれ電気的に接続することによって非可逆回路素子が形成される。
【0038】この構成によれば、磁気回転子50の周囲空間を有効に使用することができ、非可逆回路素子の高さ方向の小型化に非常に有効である。また、励磁用永久磁石52により作られる直流バイアス磁界の磁気回路をほぼ完全に閉じることができ、これにより磁気抵抗が低減されるため、この永久磁石52自体を薄くすることができる。そのため、非可逆回路素子の高さ方向のさらなる小型化が可能となる。しかも本実施形態では、基板を2分割しているため、基板に機械的応力がかかった場合にも基板が割れる等の不都合を回避することができる。
【0039】本実施形態における非可逆回路素子の具体的な製造工程は、誘電体基板を作成する際に、グリーンシートに磁気回転子が嵌合されるべき穴を打ち抜き型にて形成した後、所定の大きさに切断し、さらに各シートを中心部分で2分割した後に焼成する点を除いて、図2の実施形態の場合に準じるため、説明を省略する。
【0040】なお、本実施形態では、誘電体基板が2分割されているが、誘電体基板を3以上の複数に分割してもよいことは明らかである。なお、磁気回転子50の外側形状、及び磁気回転子50が嵌合する基板側の穴の形状は図5に示した形状に限定されるものでないことは明らかである。また、基板51a及び51bとして誘電体によるセラミクス材料を用いているが、これは最も好ましい材料であり、その他のセラミクス材料として磁性体等を用いることも可能である。
【0041】図7は本発明の非可逆回路素子のさらに他の実施形態を示す分解斜視図、図8はその非可逆回路素子の断面図、図9はその非可逆回路素子の基板部分の分解平面図である。
【0042】これらの図において、70は磁気回転子、71はこの磁気回転子70の側方にこの磁気回転子を取り囲むように配置した基板、72は磁気回転子70の上に載置される励磁用永久磁石、73はヨークをそれぞれ示している。
【0043】磁気回転子70は、図2の実施形態における磁気回転子20とほぼ同じ構成である。即ち、所定パターンの中心導体と共に一体的に焼成された絶縁性磁性体から主として構成されており、その側面には入力端子、出力端子及びグランド電極が、上下面にはグランド電極がそれぞれ形成されている。
【0044】基板71は、本実施形態においては第1、第2、第3及び第4の誘電体層71a、71b、71c及び71dが積層された多層の誘電体基板であり、その第1の誘電体層71aの上面には、入力端子74、出力端子75、アイソレーション端子76、終端抵抗77並びにグランド電極78に接続されているグランド端子78a、78b及び78cが形成されており、その第4の誘電体層71dの下面にはグランド電極79が形成されている。さらに、中間層である第2の誘電体層71bの上面には入力端子74に接続されている第1の入力電極81、出力端子75に接続されている第1の出力電極82、及びアイソレーション端子76に接続されている第1のアイソレーション電極83が形成されている。同じく中間層である第3の誘電体層71cの上面にはグランド電極84が形成されている。第4の誘電体層71dの上面には入力端子74に接続されている第2の入力電極85、出力端子75に接続されている第2の出力電極86、及びアイソレーション端子76に接続されている第2のアイソレーション電極87が形成されている。グランド電極78と第1の入力電極81、第1の出力電極82及び第1のアイソレーション電極83との間、第1の入力電極81、第1の出力電極82及び第1のアイソレーション電極83とグランド電極84との間、グランド電極84と第2の入力電極85、第2の出力電極86及び第2のアイソレーション電極87との間、並びに第2の入力電極85、第2の出力電極86及び第2のアイソレーション電極87とグランド電極79との間で共振容量が得られる。この誘電体基板71には、中央部に磁気回転子70が嵌合されるべく開口形状が磁気回転子70の平面外側形状にほぼ等しい穴80が設けられている。
【0045】磁気回転子70及び誘電体基板71をそれぞれ別個に製造し、磁気回転子70を基板71の穴80内に嵌合させた後、磁気回転子70の入力端子、出力端子及びグランド電極を基板71の入力端子74、出力端子75及びグランド電極79にそれぞれ電気的に接続することによって非可逆回路素子が形成される。
【0046】この構成によれば、磁気回転子70の周囲空間を有効に使用することができ、非可逆回路素子の高さ方向の小型化に非常に有効である。また、励磁用永久磁石72により作られる直流バイアス磁界の磁気回路をほぼ完全に閉じることができ、これにより磁気抵抗が低減されるため、この永久磁石72自体を薄くすることができる。そのため、非可逆回路素子の高さ方向のさらなる小型化が可能となる。
【0047】以下、本実施形態における非可逆回路素子の具体的な製造工程を説明する。
【0048】まず、磁気回転子70用の磁性体グリーンシートを作成する。酸化イットリウム(Y23 )と酸化鉄(Fe23 )とをモル比で3:5の割合で混合し、得られた混合粉を1200℃で仮焼きする。仮焼きされた混合粉をボールミルにて粉砕し、有機バインダ及び溶剤を添加し、磁性体スラリーを作製する。得られた磁性体スラリーをドクターブレード法にて、グリーンシートに成形する。
【0049】下層又は中間層のグリーンシートについては、グリーンシートにヴィアホール用の穴をパンチングマシーンで形成し、その後、グリーンシートに厚膜印刷法で中心導体パターンを形成する。このとき、ヴィアホールの充填も同時に行う。導体材料としては、例えばパラジウムペーストを使用する。
【0050】上層のグリーンシートについては、グリーンシートに厚膜印刷法で中心導体パターンを形成する。導体材料としては、例えばパラジウムペーストを使用する。
【0051】このようにして形成したグリーンシートを重ねて熱圧着し、積層体を得る。その後、この積層体を所定の大きさの所定の形状に切断し、1480℃で焼成する。
【0052】次いで、焼成体の上下面、側面に銀ペーストを焼き付けることによってグランド電極、入力端子、出力端子を、銀ペーストを焼き付けることにより形成する。これにより磁性体及び中心導体が一体化して焼成された磁気回転子70が得られる。
【0053】一方、ガラスを主成分とした第1〜第4の誘電体層71a〜71d用のグリーンシートをドクターブレード法にて作成する。第2の誘電体層71b用のグリーンシート上には、所定の共振容量が得られるように第1の入力電極81、第1の出力電極82及び第1のアイソレーション電極83を印刷し、第3の誘電体層71c用のグリーンシート上にはグランド電極84を印刷し、第4の誘電体層71d用のグリーンシート上には第2の入力電極85、第2の出力電極86及び第2のアイソレーション電極87を印刷する。次いで、第1〜第4の誘電体層71a〜71d用のグリーンシートを積層して熱圧着し積層体を得る。得られた積層体に、磁気回転子70が嵌合されるべき穴80を打ち抜き型にて形成した後、所定の大きさに切断し、900℃で焼成する。焼成した積層体の最上面、最下面及び側面に入力端子74、出力端子75、アイソレーション電極76、グランド電極78、グランド端子78a、78b及び78c並びにグランド電極79を印刷し、さらに厚膜による終端抵抗77を印刷し、焼成炉にて焼きつけて基板71を形成する。この場合、グランド端子78a、78b及び78cとグランド電極84とグランド電極79とは互いに電気的に接続される。また、入力端子74と第1及び第2の入力電極81及び85とは互いに電気的に接続され、出力端子75と第1及び第2の出力電極82及び86とは互いに電気的に接続され、アイソレーション端子76と第1及び第2のアイソレーション電極83及び87とは互いに電気的に接続される。
【0054】次いで、上述した電極間で得られる共振容量の容量値を測定し、グランド電極78及び79をトリミングすることにより容量値を調整する。このように、磁気回転子の中心導体をこの基板71に内蔵させないことにより、非可逆回路素子を組み立てる前に容量値を調節することができ、調整工程を非常に簡略化することが可能である。
【0055】このようにして得られた磁気回転子70を基板71の穴80内に嵌合させ、電気的接続を行った後、励磁用永久磁石72及びヨーク73を組み付けることにより非可逆回路素子を得ることができる。この非可逆回路素子は、共振容量が磁気回転子70の周囲に効率よく形成されている。また、励磁用永久磁石72と磁気回転子70及びヨーク73との間に非磁性物がないため、直流バイアス磁気回路が閉じている。これにより直流バイアス磁気回路の磁気抵抗を低下させることができる。さらに励磁用永久磁石72を薄くすることができるため、素子全体を非常に薄くすることが可能になる。なお、磁気回転子70の外側形状、及び磁気回転子70が嵌合する穴80の形状は図7及び図9に示した形状に限定されるものでないことは明らかである。また、基板71として誘電体によるセラミクス材料を用いているが、これは最も好ましい材料であり、その他のセラミクス材料として磁性体等を用いることも可能である。
【0056】図10は本発明の非可逆回路素子のまたさらに他の実施形態を示す分解斜視図、図11はその非可逆回路素子の断面図である。
【0057】これらの図において、100は磁気回転子、101a及び101bはこの磁気回転子100の側方にこの磁気回転子を取り囲むように配置した基板、102は磁気回転子100の上に載置される励磁用永久磁石、103はヨークをそれぞれ示している。
【0058】磁気回転子100は、図7の実施形態における磁気回転子70とほぼ同じ構成である。即ち、所定パターンの中心導体と共に一体的に焼成された絶縁性磁性体から主として構成されており、その側面には入力端子、出力端子及びグランド電極が、上下面にはグランド電極がそれぞれ形成されている。
【0059】基板101a及び101bは、本実施形態においては2分割された多層の誘電体基板である。基板101aの上面には入力端子104、出力端子105、グランド端子108a及びグランド電極108が形成されており、基板101bの上面にはアイソレーション電極106、終端抵抗107、グランド端子108b及び108c、並びにグランド電極108が形成されており、基板101a及び101bの下面には図示されていないがグランド電極が形成されている。共振容量は、図9R>9の実施形態において述べた電極間で得られる。2分割された誘電体基板101a及び101bには、これらが合体した場合に、磁気回転子100が嵌合されるべく開口形状が磁気回転子100の平面外側形状にほぼ等しい穴となる凹部110a及び110bがそれぞれ設けられている。
【0060】磁気回転子100及び誘電体基板101a及び101bをそれぞれ別個に製造し、磁気回転子100を基板101a及び101bの凹部110a及び110bによって合成される穴内に嵌合させた後、磁気回転子100の入力端子、出力端子及びグランド電極を基板101a及び101bの入力端子104、出力端子105及びグランド電極にそれぞれ電気的に接続することによって非可逆回路素子が形成される。
【0061】この構成によれば、磁気回転子100の周囲空間を有効に使用することができ、非可逆回路素子の高さ方向の小型化に非常に有効である。また、励磁用永久磁石102により作られる直流バイアス磁界の磁気回路をほぼ完全に閉じることができ、これにより磁気抵抗が低減されるため、この永久磁石102自体を薄くすることができる。そのため、非可逆回路素子の高さ方向のさらなる小型化が可能となる。しかも本実施形態では、基板を2分割しているため、基板に機械的応力がかかった場合にも基板が割れる等の不都合を回避することができる。
【0062】本実施形態における非可逆回路素子の具体的な製造工程は、誘電体基板を作成する際に、グリーンシートに磁気回転子が嵌合されるべき穴を打ち抜き型にて形成した後、所定の大きさに切断し、さらに各シートを中心部分で2分割した後に焼成する点を除いて、図7の実施形態の場合に準じるため、説明を省略する。
【0063】なお、本実施形態では、誘電体基板が2分割されているが、誘電体基板を3以上の複数に分割してもよいことは明らかである。なお、磁気回転子100の外側形状、及び磁気回転子100が嵌合する基板側の穴の形状は図10に示した形状に限定されるものでないことは明らかである。また、基板101a及び101bとして誘電体によるセラミクス材料を用いているが、これは最も好ましい材料であり、その他のセラミクス材料として磁性体等を用いることも可能である。
【0064】以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【0065】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明によれば、共振容量、終端抵抗、入出力端子及びグランド端子の少なくとも1つが形成された基板が、磁気回転子の側方にこの磁気回転子を取り囲むように配置されているため、磁気回転子の周囲を有効に使用することができ、非可逆回路素子の高さ方向の小型化に非常に有効である。また、永久磁石により作られる直流バイアス磁界の磁気回路をほぼ完全に閉じることができ、これにより磁気抵抗が低減されるため、永久磁石を薄くすることができる。そのため、さらに非可逆回路素子の高さ方向の小型化が可能になる。もちろん、小型で高特性及び高信頼性を有しており、また共振容量の調整が可能である非可逆回路素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の非可逆回路素子の断面図である。
【図2】本発明の非可逆回路素子の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】図2の非可逆回路素子の断面図である。
【図4】図2の非可逆回路素子の基板部分の分解平面図である。
【図5】本発明の非可逆回路素子の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図6】図5の非可逆回路素子の断面図である。
【図7】本発明の非可逆回路素子のさらに他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図8】図7の非可逆回路素子の断面図である。
【図9】図7の非可逆回路素子の基板部分の分解平面図である。
【図10】本発明の非可逆回路素子のまたさらに他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図11】図10の非可逆回路素子の断面図である。
【符号の説明】
20、50、70、100 磁気回転子
21、51a、51b、70、101a、101b 基板
22、52、72、100 励磁用永久磁石
23、53、73、103 ヨーク
24、54、74、104 入力端子
25、55、75、105 出力端子
27、57、77、107 終端抵抗
28、58、78a、78b、78c、108a、108b、108c グランド端子
29、78、79、108 グランド電極
30、80 穴
60a、60b、110a、110b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定パターンを有する中心導体及び該中心導体と一体的に焼成された絶縁性磁性体を含む磁気回転子と、共振容量、終端抵抗、入出力端子及びグランド端子の少なくとも1つが形成されており、前記磁気回転子の側方に該磁気回転子を取り囲むように配置されかつ該磁気回転子と電気的に接続された少なくとも1つの基板とを備えたことを特徴とする非可逆回路素子。
【請求項2】 前記基板が、セラミクス単層基板であることを特徴とする請求項1に記載の非可逆回路素子。
【請求項3】 前記基板が、セラミクス多層基板であることを特徴とする請求項1に記載の非可逆回路素子。
【請求項4】 前記基板が、前記磁気回転子の側方に配置された単一の基板からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の非可逆回路素子。
【請求項5】 前記基板が、前記磁気回転子の側方に配置された複数の基板からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の非可逆回路素子。
【請求項6】 所定パターンを有する中心導体及び該中心導体と一体的に焼成された絶縁性磁性体を含む磁気回転子と共振容量、終端抵抗、入出力端子及びグランド端子の少なくとも1つを有する基板とをそれぞれ別個に形成した後、前記磁気回転子の側方に該磁気回転子を取り囲むように前記基板を配置し、該磁気回転子と該基板とを電気的に接続することを特徴とする非可逆回路素子の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【公開番号】特開平10−178304
【公開日】平成10年(1998)6月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−256240
【出願日】平成9年(1997)9月5日
【出願人】(000003067)ティーディーケイ株式会社 (7,238)