説明

非哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼの発現による植物における哺乳動物型グリコシル化反応

本発明は、野生型又は修飾形態で使用できる非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼに関する。本発明は、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する形質転換植物及び植物細胞、変更された糖タンパク質、好ましくは哺乳動物型グリコシル化を伴う糖タンパク質の製造方法にさらに関する。加えて、本発明は、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの核酸分子及び発現ベクターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスジェニック植物、特に、組み換え型生物薬剤学的タンパク質の製造に使用されるような植物における糖タンパク質プロセシングの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
組み換えタンパク質製造は、トランスジェニック植物の重要な適用である。組み換えタンパク質の圃場産生の収率と好ましいコストに加えて、トランスジェニック植物は、他の製造システム、例えば、細菌や、酵母や、動物細胞などを超える特定の利点を見せる。実際、それらは、ヒトに感染する病原体を持っておらず、且つ、貯蔵組織、例えば、種子又は塊茎などの中に着目のタンパク質を蓄積する。これは、それらの取り扱い、それらの輸送、及び周囲温度におけるそれらの保管を容易にする一方で、その後の抽出の可能性を与える。そのうえ、トランスジェニック植物、又はその部分のいくつかは、医薬品又はワクチンのベクターとして利用できる。
【0003】
タンパク質物質の工場としての植物の利点は、大部分が生物薬剤学の見地から説明されるが、植物はまた、例えば、より高い安定性に通じるそれらのグリコシル化反応の能力のため、他のタンパク質、例えば、工業用酵素等の製造にも有用である。今日、治療薬用途及び他の用途のための異種糖タンパク質の製造に関する植物の利用は、ダイズ、タバコ、ジャガイモ、ライス、及びナタネにおいて検討され、そして、それらの中で作り出される糖タンパク質には、モノクローナル抗体、ホルモン、ワクチン抗原、酵素、及び血液タンパク質が含まれる。これらのタンパク質のいくつかは、ヒトにおけるそれらの有効性を既に立証した。
【0004】
植物における糖タンパク質製造の欠点は、植物で作り出される糖タンパク質のグリコシル化パターンに関連する。他の異種発現系のように、植物は、哺乳動物と比較して異なったグリコシル化反応の特徴を示す。N結合型グリカンを全く持たない細菌、及び高マンノース型のN結合型グリカンしか持たない酵母とは対照的に、植物は、複合型のN結合型グリカンを持つタンパク質を作り出すことができる。しかしながら、植物の糖タンパク質は、哺乳動物には見られないα1,3-フコース残基及びβ1,2-キシロースを含む複合N結合型グリカンを持つ。そのうえ、植物の糖タンパク質は、哺乳動物に見られる独特のガラクトース含有複合N-グリカンを欠く。
【0005】
要するに、植物からの糖タンパク質の分析では、類似性が存在しているが、植物と哺乳動物のグリコシル化経路におけるいくつかのステップは、特に、複合グリカンの合成において異なっていることが示された。植物の複合グリカンは、一般に非常に小さく、且つ、Man3(GlcNAc)2コアに取り付けられたベータ-1,2キシロース又はアルファ-1,3フコース残基を含んでいる。糖タンパク質のそのような残基は免疫原性であることが知られて、それがこれらの糖を担持する組み換えタンパク質の特定の適用に関して問題を引き起こす。
【発明の概要】
【0006】
糖タンパク質の製造のための植物ベースのシステムがいくつか提案されているか、又は使用中であるが、ヒト化タンパク質の製造のための改良された植物ベースのシステムが必要とされている。特定の態様において、本発明は、前述の改良された植物ベースのシステムを提供する。
【0007】
例えば、WO 01/31045(その内容全体を本明細書中に援用する)に記載されているような、以前に提案された植物ベースのシステムが、ヒト化タンパク質の製造のために哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼに利用された。
【0008】
特徴決定された哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの特定の部分に相同性を示す、非哺乳動物であるニワトリ及びゼブラフィッシュから得られたものなどの特定のこれまで特徴決定されていないグリコシルトランスフェラーゼが、ヒト化タンパク質の製造においてこれまでの方法を超える予期せぬ改良を示すことをここで発見した。
【0009】
本発明の1つの側面によると、N結合型グリカンにβ-1,4-結合でガラクトース残基を付加することができるトランスジェニック植物、又はトランスジェニック植物細胞の製造方法を提供する。これらの方法は、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする核酸分子を植物又は植物細胞に挿入し、そして、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする核酸分子を取り込み、且つ、核酸分子を発現するトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞を選別し、それによって、N結合型グリカンにβ-1,4-結合でガラクトース残基を付加することができるトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞を作り出す。特定の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ニワトリ又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のいずれかを含んでなる。特定の態様において、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1は、配列番号2を含んでなり、その一方で、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1は配列番号14を含んでなる。いくつかの態様において、ニワトリ又はゼブラフィッシュの非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ゴルジ体内の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの局在化を導くことができるアミノ酸配列で延長される。いくつかの態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を用いてN末端にて延長される。特定の態様において、N末端アミノ酸配列は、最初の10個のN末端アミノ酸の中に少なくとも配列[K/R]-X-[K/R]を含んでなり、ここで、[K/R]はリジン又はアルギニン残基のいずれかを表し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい。特定の態様において、N末端アミノ酸配列は、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)である。いくつかの態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの細胞質‐膜貫通‐ステム領域(CTS)は、他のゴルジ局在性タンパク質のCTSによって置き換えられる。いくつかの態様において、CTSは、哺乳動物又は植物のゴルジ局在性タンパク質に由来する。いくつかの態様において、CTSは、哺乳動物シアリルトランスフェラーゼに由来する。特定の態様において、CTSは、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼに由来する。
【0010】
本発明の他の側面によると、1以上のガラクトシル化N結合型グリカンを含んでなる異種糖タンパク質の製造方法であって、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする核酸分子と異種糖タンパク質をコードする核酸分子を植物又は植物細胞内に挿入し、それにより、トランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞を作り出し、そして、上記核酸分子の発現に適切な条件下にそのトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞を維持することで、1以上のガラクトシル化N結合型グリカンを含んでなる異種糖タンパク質を産生させるステップを含んでなる前記製造方法を提供する。
【0011】
特定の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼであるか、又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼである。特定の態様において、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を用いてN末端にて延長される。特定の態様において、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSは、他のゴルジ局在性タンパク質のCTSによって置き換えられる。
【0012】
特定の態様において、前記方法は、トランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞から異種糖タンパク質を少なくとも部分的に分離するステップをさらに含んでなる。特定の態様において、糖タンパク質は、1以上のN-グリカン上に1以上のガラクトース残基を含んでなる。いくつかの態様において、糖タンパク質のN-グリカンは、キシロース、フコース、又はキシロースとフコース残基の両方を基本的に欠けている。特定の態様において、異種糖タンパク質をコードする核酸分子は、ホルモン;サイトカイン、ワクチン;接着分子、又は抗体若しくはその機能的フラグメントをコードする。
【0013】
特定の態様において、植物又は植物細胞は、植物又は植物細胞内で発現できる少なくとも1種類の選択マーカーをコードする核酸分子をさらに含んでなる。特定の態様において、植物又は植物細胞は、ニコチアナ亜種であるか、又はそれに由来する。いくつかの態様において、核酸分子は、マイクロインジェクション、PEG形質転換、アグロバクテリウム媒介形質転換、エレクトロポレーション、バリスティック・パーティクル・ボンバードメント(ballistic particle bombardment)、直接遺伝子導入、リポソーム融合、植物体への(in planta)形質転換、リン酸カルシウム沈殿、アグロインフィルトレーション(agrofiltration)、又はウイルス感染によって挿入される。
【0014】
本発明の他の側面によると、N結合型グリカンにβ-1,4-結合でガラクトース残基を付加することができるトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞の製造方法が提供され、ここで、上記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)と少なくとも85%同一である核酸によってコードされる。他の態様において、核酸は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)のいずれかと少なくとも90%、95%、又は98%同一である。
【0015】
本発明の他の側面によると、N結合型グリカンにβ-1,4-結合でガラクトース残基を付加することができるトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞の製造方法が提供され、ここで、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)のそれ又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)のそれと少なくとも85%同一である。他の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)のそれ又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)のそれと少なくとも90%、95%、又は98%同一である。特定の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列は、哺乳動物延長部(mammalian extension)をさらに含んでなる。いくつかの態様において、哺乳動物延長部は、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)である。特定の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSは、他のゴルジ局在性タンパク質由来のCTSと置き換えられ、そして、ここで、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)のそれ又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)のそれと少なくとも85%同一である。他の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)のそれ又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)のそれと少なくとも90%、95%、又は98%同一である。特定の態様において、他のゴルジ局在性タンパク質由来のCTSは、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼからのCTSである。
【0016】
本発明のさらに他の側面によると、N結合型グリカンにβ-1,4-結合でガラクトース残基を付加することができるトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞の製造方法が提供され、ここで、上記植物又は植物細胞は、β1,2-キシロースとα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンを含んでなる糖タンパク質を産生する。特定の態様において、β1,2-キシロースとα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量は、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の2倍である。他の態様において、β1,2-キシロースとα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量は、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の5倍、10倍、又は50倍である。特定の態様において、植物又は植物細胞は、少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐N-グリカンを含んでなる糖タンパク質を産生する。それらの態様において、少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐N-グリカンの産生量は、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の2倍、5倍、10倍、又は50倍である。
【0017】
本発明のさらに他の側面によると、本明細書中に記載した方法によって製造された糖タンパク質が提供される。
本発明の他の側面によると、本明細書中に記載した方法によって製造された植物、又はそのような植物の一部が提供される。特定の態様において、植物は、種子、胚、カルス組織、葉、根、新芽、花粉、及び小胞子から成る群から選択される植物の一部である。
【0018】
本発明の他の側面によると、本明細書中に記載した方法によって製造された植物細胞が提供される。特定の態様において、植物細胞は浮遊培養により培養される。特定の態様において、浮遊培養で培養される植物細胞は、N.タバクム(N. tabacum)BY2、ダウクス・カロタ(Daucus carota)、及びアラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)の細胞懸濁液から成る群から選択される。特定の態様において、植物細胞は、ブリオフェタエア(Bryophytaea)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)、フナリア・ヒグロメトリカ(Funaria hygrometrica)、及びセラトドンプルプロイス(Ceratodonpurpureus)から成る群から選択されるコケの一部である。
【0019】
本発明の他の側面によると、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のアミノ酸配列(配列番号2)又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のアミノ酸配列(配列番号14)、及びそのN末端の延長部を含んでなるポリペプチドをコードする核酸が提供され、ここで、上記延長部は、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列であり、ここで、N末端アミノ酸配列は、最初の10個のN末端アミノ酸の中に少なくとも配列[K/R]-X-[K/R]を含んでなり、ここで、[K/R]はリジン又はアルギニン残基のいずれかを表し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい。特定の態様において、前記アミノ酸配列は、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)である。特定の態様において、前記アミノ酸配列は、配列番号8又は配列番号が15を含んでなる。特定の態様において、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のアミノ酸配列(配列番号2)又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のアミノ酸配列(配列番号14)を含んでなるポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、上記のニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSは、他のゴルジ局在性タンパク質のCTSによって置き換えられる。特定の態様において、哺乳動物又は植物ゴルジ-局在性タンパク質からCTSを得る。特定の態様において、前記CTSは、哺乳動物シアリルトランスフェラーゼに由来する。特定の態様において、CTSは、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼに由来する。特定の態様において、前記アミノ酸配列は、配列番号11又は配列番号18を含んでなる。
【0020】
本発明のさらに他の側面によると、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする核酸が提供され、ここで、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(配列番号2)のそれ又はゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(配列番号14)のそれ、及びN末端の延長部と少なくとも90%同一であり、ここで、上記延長部は、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列であり、ここで、上記N末端アミノ酸配列は、最初の10個のN末端アミノ酸の中に少なくとも配列[K/R]-X-[K/R]を含んでなり、ここで、上記[K/R]はリジン又はアルギニン残基のいずれかを表し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい。他の態様において、配列の同一性は、少なくとも95%又は98%である。
本発明のさらに他の側面によると、本明細書中に記載した核酸分子を含んでなる発現ベクターが提供される。いくつかの態様において、上記核酸分子は、真核又は原核細胞内でのその核酸分子の転写に十分な調節因子に連結される。
本発明の他の側面によると、植物細胞内での転写に十分な異種調節因子に連結される、本明細書中に記載した核酸分子を含んでなるか、又は本明細書中に記載したベクターを含んでなる宿主細胞が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】種々の哺乳動物(ヒト、マウス、ウシ)及び非哺乳動物(ニワトリ、ゼブラフィッシュ、カエル)起源のβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの配列のアラインメント(Clustal W)を示す。「哺乳動物延長部」は、哺乳動物に特有のアミノ末端領域であり、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの非哺乳動物オルソログ(実線の囲み)には見られない。「TM」は、膜貫通領域を示す(破線の囲み)。
【図2】ニワトリ遺伝子を発現するトランスジェニック植物から精製したN-グリカンのMaldi-TOF分析の結果を示す。上から下に、正常なニワトリ遺伝子(ニワトリGalT)、13個のアミノ酸のN末端ヒトGalT‐ニワトリGalT、そして、SialT‐CTS‐ニワトリGalT。
【図3】ゼブラフィッシュGalT遺伝子配列を発現するトランスジェニック植物から精製したN-グリカンのMaldi-TOF分析の結果を示す。上から下に、正常なゼブラフィッシュ遺伝子(ゼブラフィッシュGalT、2種類の植物)、13個のアミノ酸のN末端ヒトGalT‐ゼブラフィッシュGalT、そして、SialT‐CTS‐ゼブラフィッシュGalT。
【図4】二分岐「野生型」植物N-グリカン(GlcNAc2-Man3-Xyl-Fuc-GlcNAc2-Asn)、1つのガラクトースを持つ(そして、キシロース及びフコースを欠く)ハイブリッド型N-グリカン、そして、2つのガラクトースを持つ二分岐のもの(上から下に)に関するヒト、ゼブラフィッシュ、及びニワトリGalTsからの結果をまとめた棒グラフを示す。
【図5】公開されている(Machingo et al., Dev Biol 297, 471-82, 2006; NM_001017730)推定上のゼブラフィッシュβ-1,4-GalT1と、Dgal(SEQ Dgal、配列番号14)のアミノ酸配列比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
ゴルジ体は、複合グリカン形成が行われる細胞小器官であり、そして、グリコシル化反応機構のある部分である。グリコシル化反応の主要な伝達物質は、グリコシルトランスフェラーゼである。特に研究されたゴルジ関連グリコシルトランスフェラーゼの1つは、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(GalT)である。β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1は、細胞質テール、膜貫通ドメイン(TMD)、及び触媒ドメインから成る。多数の哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子が、既にクローンニングされた。植物系の形質転換の容易さは、研究者が、植物の産生する糖タンパク質のグリカンを「ヒト化」若しくは「哺乳動物化」するために、哺乳動物からのグリコシルトランスフェラーゼによって植物のゴルジ体を「補完すること」を可能にした。
【0023】
非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)の使用は、これまで、植物における哺乳動物化若しくはヒト化糖タンパク質の製造に関して報告されていない。
【0024】
特定の、以前に特徴決定されていない非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、例えば、ニワトリ及びゼブラフィッシュから得られたものなどが、植物におけるN結合型糖タンパク質の末端ガラクトシル化に利用できること、これらの非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼがヒト化タンパク質の製造においてこれまでの方法を超える予期せぬ改良を示すことをここで発見した。例えば、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、主に、β1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンを産生する。
【0025】
さらに、ニワトリ及びゼブラフィッシュからの非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼより短く、且つ、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼに存在するアミノ末端領域を欠くことがさらにわかった。これらの非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ末端に相当するアミノ酸配列である「哺乳動物延長部」を用いて、アミノ末端にて延長できる。非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのこれらは修飾バージョンは、ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼと比較して、より高い頻度で特定のN結合型グリカンを作り出す。例えば、そのアミノ末端がラット・シアリルトランスフェラーゼのCTS領域に置き換えられたゼブラフィッシュGalTは、主に、二分岐の二重ガラクトシル化N-グリカンを産生する。
【0026】
いくつかの態様において、本発明は、植物における哺乳動物化糖タンパク質の製造に使用されるニワトリ及びサカナからの未修飾又は修飾した非哺乳動物GalTsを提供する。そのような非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物又は植物細胞において産生される哺乳動物化糖タンパク質もまた、特定の態様において提供される。
【0027】
定義
用語「核酸」は、本明細書中に使用されるとき、一本鎖若しくは二本鎖形態のいずれかの、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド重合体、すなわち、ポリヌクレオチドへの言及を含み、そして、別段の制限がない限り、天然のヌクレオチドの本質的性質を有する、すなわち、天然に存在するヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸)と類似した様式で一本鎖核酸にハイブリダイズする、公知の類似体を網羅する。ポリヌクレオチドは、天然又は異種の構造又は制御遺伝子の完全長又は部分配列である。別段の指摘がない限り、前記用語は、指定された配列、並びにその相補的配列への言及を含む。よって、その用語が本明細書中で対象とされるとき、安定性又は他の理由で修飾された骨格を持つDNAs又はRNAsは、「ポリヌクレオチド」である。そのうえ、ちょうど2つの例を挙げると、珍しい塩基、例えば、イノシンなど、又は修飾塩基、例えば、トリチル化塩基などを含んでなるDNAs又はRNAsは、その用語が本明細書中に使用されるとき、ポリヌクレオチドである。非常に様々な修飾が、当業者に知られている多くの有用な目的に役立つDNA及びRNAに対して施されることは理解されるだろう。それが本明細書中に用いられるように、ポリヌクレオチドという用語は、そのような化学的に、酵素的に、又は代謝的に修飾された形態のポリヌクレオチド、並びにウイルス、及び、とりわけ、単純細胞及び複合細胞を含めた細胞の特徴を示すDNA及びRNAの化学形態を包含する。
【0028】
「コードする核酸分子」又は「コード化」は、本明細書中では、個々の又は分離された分子、例えば、分離された存在としての核酸分子、に制限されず、ここで、それぞれの存在はある核酸分子を含んでなり、それはまた、1以上の核酸分子が、いずれかの介在配列によって分離され得る1つの連続した配列に連結される得ることも網羅する。1つの連続した配列内の核酸分子の順序と方向は、いずれかの特定の立体配置に制限されない、例えば、核酸分子は、同じプロモーターに連結されても別のプロモーターに連結されてもよく、単方向であっても双方向であってもよく、そして、直接隣接しても介在配列によって分離されてもよい。様々なそのような立体配置が、当該技術分野で知られている。追加の核酸分子は、1つの連続した配列内に組み合わせられても、別々の存在として提供されてもよい。例えば、特定の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、異種糖タンパク質、及び1種類以上の選択マーカーを含んでなる核酸分子を含んでなる植物又は植物細胞が提供される。これらの核酸分子は、本明細書中に記載したように、1、2、3個、又はそれ以上のベクターの形で提供されてもよい。
【0029】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体を指すために本明細書中で互換的に使用される。その用語は、1以上のアミノ酸残基が、天然に存在するアミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸重合体に対応する人工的な化学的類似体であるアミノ酸重合体に適用する。天然に存在するアミノ酸のそのような類似体の最も重要な性質は、タンパク質内に組み込まれたときに、同じタンパク質であるが完全に天然に存在するアミノ酸から成るタンパク質に誘発された抗体に対して、そのタンパク質が特異的に反応することである。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」にはまた、これだけに制限されることなく、グリコシル化反応、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシ化、ヒドロキシル化、及びADPリボシル化を含めた修飾も含まれる。
【0030】
「コード」又は「コードする」配列は、タンパク質のアミノ酸配列、又は、例えば、tRNA若しくはrRNAなどの機能的RNAをコードする遺伝子の一部であり、そして、核酸配列が指定されたタンパク質への翻訳のための情報を含んでいる事実を具体的に指している。タンパク質をコードする核酸は、核酸の翻訳領域内に非翻訳配列(例えば、イントロン)を含んでもよく、又は(例えば、cDNAなどで)そのような介在非翻訳配列を欠いていてもよい。タンパク質がコードされる情報は、コドンの使用によって特定される。典型的には、アミノ酸配列は、「普遍的な」遺伝コードを使用することで核酸によってコードされる。しかしながら、例えば、それが、ある植物、動物、並びに真菌ミトコンドリア、細菌マイコプラズマ・カプリコラム(Mycoplasma capricolum)、又は繊毛虫(ciliate)の大核に存在するように、普遍的コードの変異体は、核酸がそこに発現されるときに使用され得る。核酸を調製するか又は合成により変更するとき、その核酸が発現されるべき意図した宿主の公知のコドン選好について利点を生かすことができる。例えば、本発明の核酸配列は、単子葉植物と双子葉植物の両方で発現され得るが、配列は、これらの選好が異なることが示されている単子葉植物又は双子葉植物の特異的なコドン選好とGC含量選好を考慮に入れて修飾され得る。
【0031】
「発現」は、その後のタンパク質への翻訳を伴った、構造的RNA(rRNA、tRNA)又はメッセンジャーRNA(mRNA)への遺伝子の転写を指す。
タンパク質又は核酸に関連した「非哺乳動物」という用語は、例えば、トリ(例えば、ニワトリ又はアヒル)又はサカナなどの非哺乳類の脊椎動物、又は非哺乳類の無脊椎動物を含めた非哺乳動物に由来する上述の化合物を指す。非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(及びコード配列)の非常に好適な起源は、ニワトリ及びサカナである。
【0032】
タンパク質又は核酸に関連した「哺乳動物」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒト、ヒト以外の霊長目動物、マウス、ブタ、ウシ、ヤギ、ネコ、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、ウマ、サル、ヒツジ、ワラビー、カモノハシ、又はその他のヒト以外の哺乳動物に由来する上述の化合物を指す。
【0033】
用語「β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ」は、2型鎖からの骨格構造の生合成(Galβ1→4GlcNAc)に必要なグリコシルトランスフェラーゼEC 2.4.138(β-1,4-GalT1)を指し、それは、N結合型グリカン上に幅広く現れる、すなわち、その酵素は、例えば、N結合型グリカンに対するガラクトシル化活性を有する。2型鎖は、シアリル・ルイスx及びSSEA-1の合成で特に重要であり、それぞれ、免疫系と初期の胚発生において役割を果たす。哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは(例えば、ヒト、マウス、ネズミから)本明細書中に提供され、並びにβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのオルソログは、非哺乳動物種、例えば、ニワトリやサカナなどから提供される。
【0034】
用語「配列同一性」は、本明細書中では、2つ以上のポリヌクレオチド又は2つ以上のポリペプチドの間の同一性の存在を意味する。最高の一致のために整列させたときに、一方のポリヌクレオチド又はポリペプチドの、それぞれ、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列が、他方のポリヌクレオチド又はポリペプチドと同じである場合に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドは「同一」配列を持つ。2つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチドの間の配列比較は、局所的な領域の配列類似性を特定及び比較するための比較ウィンドウのわたって、2つの配列の部分を比較することによって一般に実施される。比較ウィンドウは、一般的に、約20〜200個の隣接ヌクレオチド、又は約7〜70個の隣接アミノ酸である。例えば、50、60、70、80、90、95、98、99、又は100パーセントの配列同一性などのポリヌクレオチド又はポリペプチドに関する「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたる、最適に整列させた2つの配列を比較することによって測定することができ、ここで、上記比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適な配列のために(付加又は欠失を含まない)基準配列と比較して、付加又は欠失(例えば、ギャップ)を含んでもよい。
【0035】
パーセンテージは、以下によって計算される:(a)両方の配列の中で同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が生じる位置数を測定して、一致した位置数を得;(b)上記の一致した位置数を、比較ウィンドウ内の位置総数で割り;(c)結果に100を掛けて、配列相同性のパーセンテージを得る。比較のための配列の最適な配列は、公知のアルゴリズムのコンピューターによる実装によって、又は精査によって実施することができる。配列の相同性又は同一性の比較及び計算のための配列のアラインメントにおける使用に好適なアルゴリズム及びソフトウェアは、当業者に知られているだろう。そのようなツールの重要な例は、FASTA及びBLASTプログラム・ベースのピアソン及びリップマン検索であり、これらの詳細は、Altschul et al (1997), Nucleic Acid Res. 25:3389-3402; Altschul et al (1990), J. Mol. Biol. 215: 403-10; Pearson and Lipman (1988), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444-8; Lipman and Pearson (1985), Science 227: 1435-41の中に見ることができる。
【0036】
他の好適なプログラムには、現在、Accelrys Inc.を通じて提供されている、ウィスコンシン大学の遺伝子学コンピュータ・グループ、Madison, WI, USAのGCG(登録商標)Wisconsin Package(登録商標)の中のPILEUP、LINEUP、GAP、BESTFIT、及びFASTAプログラムが含まれる。前記プログラムの詳細は、「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST」又はミラーサイト、及び「http://www.accelrys.com/products/gcg_wisconsin_package」を通してインターネット上で入手可能である。よって、そのような相同性及び同一性パーセンテージは、公的に利用可能な又は市販のソフトウェア・パッケージを使用して、又はインターネット上のコンピュータ・サーバによって確かめられ得る。用語「同一性」は、その配列が、アミノ酸又は塩基の最も高いパーセンテージのアラインメントを可能にするギャップの導入を必要とする特定の位置に欠失又は付加を持ち得るという事実にもかかわらず、その配列が最適に整列されたときに、クレームしたアミノ酸配列又は核酸配列のうちの規定のパーセンテージが、同じ相対的位置において基準配列内に見られることを意味している。好ましくは、配列は、10個以下のギャップを使用することによって整列される、すなわち、合計すると、2つの配列に導入したギャップの総数が10個以下である。そのようなギャップの長さは、特に重要なことではないが、一般に、10アミノ酸未満、好ましくは5アミノ酸未満、又は30塩基、好ましくは15塩基未満であるだろう。
【0037】
「遺伝コードの縮重」という用語は、多数の機能的に同一の核酸がいずれかの所定のタンパク質をコードするという事実を指す。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、及びGCUのすべてが、アミノ酸のアラニンをコードする。よって、アラニンがコドンによって指定されるあらゆる位置にて、そのコドンは、コードしているポリペプチドを変更することなく、記載した対応するコドンのいずれにも変更できる。そのような核酸の変異は「サイレント変異」である。本明細書中でポリペプチドをコードするあらゆる核酸配列はまた、遺伝コードを参照することによって、その核酸のあらゆる潜在的サイレント変異も説明する。
【0038】
「相補鎖」の中の用語「相補」は、核酸鎖が、ワトソン‐クリック塩基対形成の法則に従って別のヌクレオチド配列と水素結合二本鎖を形成するヌクレオチド配列を持つことを意味する。例えば、5’-AAGGCT-3’の相補的な塩基配列は、3’-TTCCGA-5’である。
【0039】
用語「ガラクトシル化N結合型グリカン」は、少なくとも3つのマンノース及び少なくとも1つのN-アセチルグルコサミン残基を持つキトビオース・コアから成り、且つ、非還元末端のN-アセチルグルコサミン上の少なくとも1つのガラクトース残基によってさらに延長される糖タンパク質のN結合オリゴ糖ユニットの共通コアを指す。
【0040】
「抗体」という用語は、抗体の抗原結合形態(例えば、Fab、F(ab)2)への言及を含む。「抗体」という用語は、単数又は複数の免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされたポリペプチド、又は分析物(抗原)に特異的に結合及び認識するそのフラグメントを頻繁に指す。しかしながら、様々な抗体フラグメントが完全な抗体の消化に関して規定されるが、当業者は、そのようなフラグメントが化学的に又は組み換えDNA法の利用によってデノボ合成され得ることを理解するだろう。よって、本明細書中では、抗体という用語にはまた、例えば、一本鎖Fvや、(すなわち、異なった種からの定常及び可変領域を含んでなる)キメラ抗体や、(すなわち、ヒト以外の起源から相補性決定領域(CDR)を含んでなる)ヒト化抗体や、ヘテロ複合抗体(例えば、二重特異性抗体)などの抗体フラグメントも含まれる。
「抗体重鎖又は軽鎖」という用語は、それらの技術分野で認識される意味で使用される。
【0041】
「機能的フラグメント」という用語は、機能的変異体又は機能的誘導体であるところのタンパク質の短縮バージョンを指す。タンパク質の「機能的変異体」又は「機能的誘導体」は、そのアミノ酸配列が、アミノ酸配列の変化にもかかわらず、その機能的変異体が、当業者が検出可能である、元のタンパク質の生物学的活性の少なくとも1つの少なくとも一部を維持するやり方での、1以上のアミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加によって元のタンパク質のアミノ酸配列から得られるタンパク質である。機能的変異体は、一般に、それが誘導され得るタンパク質に対して少なくとも50%相同(好ましくは、アミノ酸配列が、少なくとも50%同一である)、少なくとも70%相同、又は少なくとも90%相同である。機能的変異体はまた、タンパク質のどんな機能部分であってもよい。特定の態様において、機能は、ガラクトシルトランスフェラーゼ活性である。いくつかの態様において、アミノ酸配列は、主に、そして、単に保存的置換によって配列番号2(ニワトリ・ガラクトシルトランスフェラーゼのタンパク質配列)又は配列番号14(ゼブラフィッシュ・ガラクトシルトランスフェラーゼのタンパク質配列)と異なっている。いくつかの態様において、前記タンパク質は、配列番号2又は配列番号14と65%以上、75%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性を有する、以下を含む、そして、特定の態様において、それらの配列と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる。「機能的なもの」はまた、本明細書中では、植物において機能的なものも含む。
【0042】
アミノ酸に関して使用される「保存的置換」という表現は、同様の生化学特性を有するアミノ酸による所定のアミノ酸の置換に関連する。よって、いくつかの態様において、配列番号2又は配列番号14の配列内のアミノ酸が疎水基を持つ場合、保存的置換では、同様に疎水基を持つ別のアミノ酸によってそれを置き換える;他のそのような生化学的類似性は、特性基が親水性、陽イオン性、陰イオン性であるか、又はチオール若しくはチオエーテルを含むところのものである。そのような置換は、当業者にとって周知である、すなわち、米国特許番号第5,380,712号を参照のこと。保存的なアミノ酸置換は、例えば、脂肪族無極性アミノ酸のグループ(Gly、Ala、Pro、Ile、Leu、Val)、極性非荷電アミノ酸のグループ(Cys、Ser、Thr、Met、Asn、Gin)、極性荷電アミノ酸のグループ(Asp、Glu、Lys、Arg)、又は芳香族アミノ酸のグループ(His、Phe、Tyr、Trp)の中ですることができる。
【0043】
「選択マーカー」という用語は、トランスジェニック生物と非トランスジェニック生物の分離を可能にする代謝形質をコードするポリヌクレオチド配列を指し、そして、抗生物質抵抗性の提供を指すことができる。選択マーカーは、例えば、aphL1にコードされたカナマイシン耐性マーカーであるnptII遺伝子であり、上記遺伝子はハイグロマイシン耐性をコードする。他の耐性マーカーが、当該技術分野で周知である。他の選択マーカーは、例えば、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼや、β-ガラクトシダーゼや、ルシフェラーゼや、緑色蛍光タンパク質などのレポーター遺伝子である。レポーター遺伝子の産物の同定法には、これだけに制限されることなく、酵素アッセイ及び蛍光アッセイが含まれる。レポーター遺伝子と、それらの産物を検出するアッセイは、当該技術分野で周知であり、そして、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al., Greene Publishing and Wiley-mterscience: New York (1987)、及び定期的な更新版に記載されている。
【0044】
本明細書中では、「ベクター」という用語には、宿主細胞トランスフェクションに使用され、そして、宿主細胞内にポリヌクレオチドを挿入し得る核酸への言及を含む。ベクターは、多くの場合、レプリコンである。発現ベクターは、そこに挿入された核酸の転写を可能にする。
【0045】
本明細書中に使用される場合、「作動できるように連結された」という用語は、そのように記載された成分が、それらの意図した様式でそれらが機能することを可能にする関係にある機能的な結合又は近傍位置を指す。別の制御配列、及び/又はコード配列に「作動できるように連結された」制御配列は、コード配列の転写、及び/又は発現が制御配列に適合した条件下で達成されるようなやり方で連結される。一般的に、作動できるように連結されたとは、連結された核酸配列が隣接し、そして、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合に、隣接し、そして、同じ読み枠内に存在することを意味する。
【0046】
「宿主細胞」によって、ベクターを含み、そして、ベクターの複製、及び/又は発現をサポートする細胞を意味する。宿主細胞は、E.コリなどの原核細胞であっても、又は植物、酵母、昆虫、両生類、又は哺乳動物細胞などの真核細胞であってもよい。
【0047】
本明細書中に使用される場合には、核酸に関する「異種」とは、異なる種が起源であるか、あるいは、同じ種からの場合には、介入によって組成、及び/又はゲノムの遺伝子座で、その天然型から修飾されている核酸である。例えば、異種構造遺伝子に作動できるように連結されたプロモーターは、構造遺伝子が誘導された種と異なる種からであるか、又は同じ種からの場合には、その一方又は両方が、それらの原型から修飾される。異種タンパク質は、異なる種を起源とすることができるか、又は同じ種からの場合には、介入によって原型から修飾されている。
【0048】
「調節配列」又は「制御配列」という用語は、コード配列の発現に必要であるか、又は有利であるあらゆる成分を含むと本明細書中に規定される。調節配列は、コード配列に対して固有であっても、又は外来であってもよい。そのような調節配列には、これだけに制限されることなく、リーダ、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナル配列、及び転写ターミネータが含まれる。そのような配列は、当該技術分野で周知である。最少では、調節配列には、プロモーター、又は特定のプロモーター要素、並びに転写及び翻訳停止シグナルが含まれる。調節配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域と、調節配列の連結を容易にする特異的制限部位を導入する目的のためにリンカーと共に提供されてもよい。
【0049】
「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼの結合と転写開始に導くDNA配列を含む遺伝子の一部を意味する、その技術分野で認識される意味のために本明細書中に使用される。プロモーター配列は、常にではないが、一般的に、遺伝子の5’-非コード領域に見られる。「植物プロモーター」は、その起源が植物細胞であるか否かに関係なく、植物細胞において転写を開始することができるプロモーターである。代表的な植物プロモーターには、これだけに制限されることなく、植物から得られるもの、植物ウイルス、そして、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)又はリゾビウム(Rhizobium)などの植物細胞で発現される遺伝子を含んでなる細菌が含まれる。好適なプロモーターの例には、カリフラワー・モザイク病ウイルスの35Sプロモーター及びその誘導体、フェレドキシン・プロモーター、ノパリン・シンターゼ(nos)、マンノピン・シンターゼ(mas)及びオクトピン・シンターゼ(ocs)プロモーター(EP 0 122 791、EP 0 126 546、EP 0 145 338)、ユビキチン・プロモーター(EP 0 342 926)、キャッサバ葉脈モザイク病ウイルス・プロモーター、並びにRubiscoの短サブユニット用のクリサンテマム(chrysanthemum)プロモーターが含まれる。
【0050】
「トランスジェニック植物又は植物細胞」という用語は、そのゲノム内に異種ポリヌクレオチドを含んでなる植物又は植物細胞への言及を含む。一般に、異種ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドが連続した発生に伝えられるように、ゲノム内に安定的に組み込まれる。異種ポリヌクレオチドは、単独で、又は組み換え発現カセットの一部としてゲノム内に組み込まれてもよい。また、異種ポリヌクレオチドは、形質転換植物のゲノム内に組み込まれないこと、又は安定的に組み込まれないことも可能である。その場合、遺伝子は「一時的に」発現されることができ、所定の期間、発現が起こり、その後、導入されたポリヌクレオチドは細胞からなくなることを意味する。本願発明の目的のために、トランスジェニック植物又は植物細胞はまた、異種ポリペプチドを一時的に発現する植物又は植物細胞も含む。「トランスジェニック」は、最初にそのように変更されたそれらのトランスジェニック、並びに最初のトランスジェニックから有性交配又は無性繁殖によって作成されたものを含めた、その遺伝子型が異種核酸の存在によって変更された、あらゆる細胞、細胞株、カルス、組織、植物部分、又は植物を含むように本明細書中で使用される。用語「トランスジェニック」は、本明細書中では、従来の植物育種法によるか、あるいは、例えば、無作為他家受精、非組み換えウイルス感染、非組み換え細菌形質転換、非組み換え転位、又は自然突然変異などの天然に存在する事象による(染色体性又は染色体外)ゲノムの変更を含まない。
【0051】
核酸を細胞内に挿入することに関連して「挿入」という用語は、「トランスフェクション」、「形質転換」、又は「形質導入」を意味し、且つ、核酸が細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、色素体、若しくはミトコンドリアDNA)内に組み込まれ得るか、自律レプリコンに変換され得るか、又は一時的に発現され得る(例えば、導入mRNA)真核又は原核細胞内への核酸の組み込みへの言及を含む。
【0052】
本明細書中に使用される場合、「植物」という用語は、植物全体、植物器官(例えば、葉、茎、根など)、種子、及び植物細胞、並びにその子孫を(言及する)含む。植物細胞には、本明細書中では、これだけに制限されることなく、種子、胚、成長点領域、カルス組織、葉、根、新芽、配偶体、芽胞体、花粉、及び小胞子が含まれる。いくつかの態様において、植物細胞は浮遊培養により培養される。いくつかの態様において、植物細胞は、全植物を再生できる。本発明の方法で使用できる植物のクラスは、一般的に、単子葉植物と双子葉植物の両方を含めた、形質転換技術に適している高等植物のクラスと同じくらい幅広い。本明細書中では、植物に言及するとき、別段の定めがない限り、原藻から樹木に及ぶ植物の全領域が意図される。好ましい植物は、ニコチアナ亜種、好ましくはN.タバクム又はN.ベンサミアナ(N.benthamiana)である。
【0053】
用語「特異的に認識」には、抗体と、その抗体の抗原結合部位によって認識されるエピトープを持つタンパク質との間の結合反応への言及を含む。この結合反応は、異種集団のタンパク質及び他の生物製剤の存在に混じった、認識されるエピトープを持つタンパク質の存在の判定である。よって、示された免疫学的アッセイ条件下、指定された抗体は、サンプル中に存在する、エピトープを欠く実質的にすべての分析物に比べて、(例えば、少なくとも2倍バックグラウンドを上回る)実質的により大きい度合いで、認識されるエピトープを持つ分析物に結合する。そのような条件下での抗体への特異的結合には、特定のタンパク質に対する特異性に関して選択された抗体を必要とされ得る。例えば、本明細書中に記載したポリペプチド、例えば、配列番号2、4、7、9、11、14、16、18、及び20に対して産生された抗体は、これらのポリペプチドを特異的に認識する抗体を得るために選別されてもよい。免疫原として使用されるタンパク質又はポリペプチドは、天然立体配座の状態であるか、又は直鎖エピトープを提供するために変性され得る。様々な免疫学的アッセイ形式が、特定のタンパク質(又は、他の分析物)を特異的に認識する抗体を選別するために使用できる。例えば、固相ELISA免疫学的アッセイは、タンパク質との特異的な免疫反応性があるモノクローナル抗体を選別するために日常的に使用される。選択的な反応性を測定するのに使用できる免疫学的アッセイの形式及び条件の説明に関して、Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York (1988)を参照のこと。
【0054】
核酸分子と細胞発現系
本明細書中に記載したポリペプチドをコードする核酸性分子は、、例えば、植物、酵母、細菌、非哺乳動物、及び哺乳動物細胞発現系などのあらゆる細胞発現系でも発現され得るが、核酸分子は、好ましくは、懸濁液中で培養される植物又は植物細胞内で発現される。
【0055】
いくつかの態様において、本発明は、N-グリカンの生合成を提供する機能的タンパク質を含んでなる植物又は植物細胞を提供する、ここで、上記タンパク質は、例えば、ニワトリ又はサカナ起源からの、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼである。他の態様において、前述の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、酵素の意図された機能を実現するようにゴルジ体に対して局在化を容易にするN末端延長配列を用いてN末端にて延長される。N末端延長配列は、一般的に、ゴルジ局在性シグナル配列と膜貫通ドメインを含んでなる細胞質テールから成る。そのようなN末端配列(「CTS」と表される)は、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、哺乳動物シアリルトランスフェラーゼ、又はその他のゴルジ局在性タンパク質から得ることができ、そして、例えば、ニワトリ若しくはサカナ起源からの非哺乳動物GalTの触媒ドメインと融合され、そして、植物細胞又は植物内で発現される。
【0056】
グリコシルトランスフェラーゼのN末端細胞質の膜貫通領域(本明細書中ではCTS領域とも呼ばれる)は、ER又はゴルジ膜での酵素の局在化を決定する。自然な又は望ましいグリコシル化反応を提供するために、グリコシルトランスフェラーゼは、それらが哺乳動物内で生じたように、植物内で発現されることができるが、それはまた、2つの異なったグリコシルトランスフェラーゼ、又は2つの異なったグリコシルトランスフェラーゼの一部の間の融合タンパク質として発現され得る。この場合、局在化は、一方の酵素によって決定され、触媒能は、2番目の酵素によって決定される。例として、例えば、配列番号10と配列番号17に提供されるようなラット・シアリルトランスフェラーゼの細胞質、膜貫通、及びステム領域と、哺乳動物ガラクトシルトランスフェラーゼの触媒ドメインの間の融合は、ガラクトシルトランスフェラーゼの活性とシアリルトランスフェラーゼの局在を有する酵素を提供する。
【0057】
哺乳動物GalT酵素の使用可能なN末端延長は、それらが約10〜20アミノ酸の長さがあり、且つ、それらが細胞質テール配列の最初の10個のアミノ末端アミノ酸にモチーフ[K/R]-X-[K/R](ここで、K/Rはリジン又はアルギニン残基のいずれかを意味し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい)を含むという点を特徴とする。
【0058】
特定の態様において、N末端アミノ酸配列延長部は、ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・ポリペプチド1配列の最初の13個のアミノ酸残基、すなわち、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)、図1を参照のことを含んでなる。他の態様において、非哺乳動物GalTのCTSは、他のゴルジ局在タンパク質由来のCTSと置き換えられる;上記の置き換え物は、例えば、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ジェンバンク受入番号M18769)からのCTSから得ることができた。
【0059】
特定の態様において、植物細胞又は植物は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)に少なくとも85%同一である機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する。他の態様において、前記機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。
【0060】
特定の態様において、核酸及びそのベクターは、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)と85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であることを条件とする。
【0061】
特定の態様において、植物細胞又は植物は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも65%同一である機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する。他の態様において、前記機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)と75%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。
【0062】
特定の態様において、植物細胞又は植物は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも65%同一であり、且つ、哺乳動物延長部を含んでなる修飾N末端を含んでなる機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する。前記哺乳動物延長部は、例えば、ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチド1配列の最初の13アミノ酸残基、すなわち、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)を含んでなり、非哺乳動物GalTのCTSは、他のゴルジ局在性タンパク質由来のCTSと置き換えられる;上記の置き換え物は、例えば、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ジェンバンク受入番号M18769)からのCTSから得ることができた。他の態様において、哺乳動物延長部を含んでなる機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)と75%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。
【0063】
特定の態様において、先に記載したような哺乳動物延長部又は変更されたCTS領域を含んでなる、核酸及びそのベクターであって、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列のみに関して、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)と85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である;すなわち、越えるところで哺乳動物延長部又は変更されたCTS領域にわたる配列同一性は規定されていないものを提供する。
【0064】
特定の態様において、植物細胞又は植物は、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)に少なくとも85%同一である機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する。他の態様において、前記機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。
【0065】
特定の態様において、核酸及びそのベクターは、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)と85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であることを条件とする。
【0066】
特定の態様において、植物細胞又は植物は、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と少なくとも65%同一である機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する。他の態様において、前記機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と75%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。
【0067】
特定の態様において、植物細胞又は植物は、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と少なくとも65%同一であり、且つ、哺乳動物延長部を含んでなる修飾N末端を含んでなる非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する。他の態様において、哺乳動物延長部を含んでなる機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と75%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。
【0068】
特定の態様において、植物細胞又は植物は、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と少なくとも65%同一である非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する、ここで、上記のゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSは、他のゴルジ局在性タンパク質由来のCTSと置き換えられる。他の態様において、哺乳動物延長部を含んでなる機能的非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と75%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である。
【0069】
特定の態様において、先に記載したような哺乳動物延長部又は変更されたCTS領域を含んでなる、核酸及びそのベクターであって、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列のみに関して、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)と85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である;すなわち、越えるところで哺乳動物延長部又は変更されたCTS領域にわたる配列同一性は規定されていないものを提供する。
【0070】
いくつかの態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ニワトリ又はサカナβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼであるが、N末端延長は、ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子に由来するか、又はCTSは、ラット・シアリルトランスフェラーゼに由来する。特定の態様において、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列を持ち、そして、サカナβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)に由来し、配列番号14のアミノ酸配列を持っている。特定の態様において、酵素は、それぞれ、配列番号1及び配列番号13の核酸によってコードされる。
【0071】
いくつかの態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、例えば、ニワトリ及びサカナに由来するものなどを発現する植物細胞又は植物が提供される。特定の態様において、植物細胞又は植物は、機能的野生型ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(配列番号2)を発現する。いくつかの態様において、前記の植物細胞又は植物は、β1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠く少なくともハイブリッド型のN結合型グリカン(すなわち、そのN-グリカンのα1,3-アーム上の非還元末端にトリマンノシル化キトビオース・コア、1つの追加マンノース、及びガラクトシル化GlcNAc残基を少なくとも含んでなるN-グリカン)を産生する。特定の態様において、β1,2-キシロースとα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの総量は、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量を2倍上回る。他の態様において、前記の量は、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、50-、100-、250-、500-、1000-、又は10,000倍の増加まで増強される。
【0072】
他の態様において、前記の植物細胞又は植物は、N末端に13アミノ酸の延長部を含んでなるニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(配列番号9)を発現する。いくつかの態様において、先に触れた植物細胞又は植物は、少なくとも、β1,2-キシロースとα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンを産生する。特定の態様において、β1,2-キシロースとα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの総量は、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量を2倍上回る。他の態様において、前記の量は、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、50-、100-、250-、500-、1000-、又は10,000倍の増加まで増強される。
【0073】
他の態様において、前記の植物細胞又は植物は、N末端にシアリルトランスフェラーゼCTS延長部を含んでなるニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(配列番号11)を発現する。いくつかの態様において、先に触れた植物細胞又は植物は、少なくともβ1,2-キシロースとα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカン、並びに少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐のN-グリカン(すなわち、トリマンノシル化キトビオース・コアに加えて、非還元末端に少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を持つN-グリカン)を産生する。特定の態様において、β1,2-キシロースとα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカン、及び/又は、少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含む二分岐のN-グリカンの総量は、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量を2倍上回る。他の態様において、前記の量は、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、50-、100-、250-、500-、1000-、又は10,000倍の増加まで増強される。
【0074】
特定の態様において、植物細胞又は植物は、野生型ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(配列番号14)を発現する。いくつかの態様において、前記の植物細胞又は植物は、少なくとも二分岐のN結合型グリカン、並びに少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐のN-グリカンを産生する。特定の態様において、二分岐のN結合型グリカン、及び/又は少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐のN-グリカンの総量は、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量を2倍上回る。他の態様において、前記の量は、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、50-、100-、250-、500-、1000-、又は10,000倍の増加まで増強される。
【0075】
他の態様において、前記の植物細胞又は植物は、N末端に13アミノ酸の延長部を含んでなるゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(配列番号16)を発現する。いくつかの態様において、先に触れた植物細胞又は植物は、少なくとも二分岐のN結合型グリカン、並びに少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐のN-グリカンを産生する。特定の態様において、二分岐のN結合型グリカン、及び/又は少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐のN-グリカンの総量は、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量を2倍上回る。他の態様において、前記の量は、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、50-、100-、250-、500-、1000-、又は10,000倍の増加まで増強される。
【0076】
他の態様において、前記の植物細胞又は植物は、N末端にシアリルトランスフェラーゼCTS延長部を含んでなるゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(配列番号18)を発現する。いくつかの態様において、先に触れた植物細胞又は植物は、少なくとも二分岐のN結合型グリカン、並びに少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐のN-グリカンを産生する。特定の態様において、二分岐のN結合型グリカン、及び/又は少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐のN-グリカンの総量は、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量を2倍上回る。他の態様において、前記の量は、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、15-、20-、50-、100-、250-、500-、1000-、又は10,000倍の増加まで増強される。
【0077】
特定の態様において、本明細書中に記載されている、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端に由来する配列、又は哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ若しくはシアリルトランスフェラーゼに由来するN末端CTS配列を用いてN末端にて延長される非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする核酸は、もう一つの方法として、そのC末端にて融合される非哺乳動物GalT触媒ドメインのトランス-ゴルジ局所発現をもたらす、植物、動物、又は真菌からのゴルジ局在性タンパク質からのいずれか他のCTS配列を用いて延長されてもよい。そのような核酸が、本明細書中で提供される。
【0078】
特定の態様において、前記植物細胞又は植物は、本明細書中に記載した非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼに加えて、第2のタンパク質、好ましくは、そのN-グリカンの4-ガラクトシル化、二分岐、又は、もう一つの方法として、ハイブリッド型のものに関心がある異種糖タンパク質を作り出す、ガラクトシル化N結合型グリカンと共に提供されるべき哺乳動物タンパク質を発現する。非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物で産生されたそのような糖タンパク質もまた、本明細書中に提供される。
【0079】
特定の態様において、前述の第2のタンパク質は、抗体の重鎖、及び/又は軽鎖、又はその機能的フラグメントをコードする核酸から発現される。
当業者は、細胞発現系、例えば、植物全体を生じ得る植物細胞など、における組み換え核酸の発現に詳しい。発現ベクターが、細胞発現系の組み換え核酸の発現に使用できる。特定の態様において、そのようなベクターは、N末端が任意に延長されるか、又はそれがN結合型グリカンにガラクトシル化活性を有するように、それ自身のCTSが他のゴルジ局在性タンパク質からのN末端CTS配列で置き換えられる、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、又は酵素的に活性な誘導体若しくはその一部をコードするDNAを含んでなる。好適なベクターは、調節因子、例えば、プロモーターなど、及び任意に、前述の細胞発現系において発現可能な少なくとも1種類の選択マーカーをさらに含んでもよい。前記発現ベクターは、グリコシル化され得る哺乳動物型糖タンパク質をコードする少なくとも1種類のさらなるDNAをさらにコードしてもよい。
【0080】
特定の態様において、植物に通常存在しないN-グリカン生合成を提供する(任意に、哺乳動物GalTに由来するN末端延長部を持つ、又は内在するCTSが植物からのゴルジ局在性タンパク質からの別のCTSと置き換えられた)機能的な非哺乳動物酵素が提供され、その結果、例えば、ガラクトースの付加によってN結合型グリカンを延長する能力を提供する、植物又は植物細胞が提供される。特定の態様において、発現は一過性があるが、他の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、又は酵素的に活性な誘導体若しくはその一部の発現、及び、場合により、グリコシル化され得る追加の異種タンパク質の発現が安定している植物又は植物細胞が提供される。特定の態様において、第3のタンパク質が、植物細胞又は植物によってさらに発現される。そのような第3のタンパク質は、前述のガラクトシル化第2タンパク質のグリコシル化反応をさらに処理する酵素であるかもしれない。特定の態様において、植物細胞又は植物は、二量体又は多量体タンパク質の単量体をコードする2つの核酸を含んでもよい。特定の態様において、別々の核酸が、抗体軽鎖と重鎖の両方若しくはその機能的フラグメント、又はその他の着目の二量体又は多量体タンパク質のために提供される。もちろん、完全なタンパク質が発現される必要はない。
【0081】
特定の態様において、本発明による植物細胞又は植物は、断片のみ、好ましくは、前述の第2の哺乳動物糖タンパク質の機能的断片を発現し、前述の断片は、全タンパク質の少なくとも1つの活性を有し、そして、例えば、切断されたポリペプチド鎖、又は、例えば、ガラクトースで延長されただけである完全には延長されていないグリカンを特徴とする。そのような糖タンパク質又はその断片もまた、本明細書中に提供される。
【0082】
植物で産生された糖タンパク質への、例えば、β1,2-キシロースやα1,3-フコース残基などの植物特異的残基の付加は、哺乳動物におけるβ1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の望ましくない抗原性と免疫原性特性のため、そのような糖タンパク質を製薬学的用途に適さなくする。植物で産生される糖タンパク質上のβ1,2-キシロースとα1,3-フコース残基の実質的な数を制限するか、又はこれらの残基の完全な欠失を達成するために、合成された糖タンパク質がヒト化若しくは哺乳動物化特徴を示す様式で植物細胞のゲノムを修飾するストラテジーが必要である。
【0083】
特定の態様において、第2のタンパク質、好ましくは、第2の哺乳動物型タンパク質又はその機能的断片化が、β1,2-キシロース、及び/又はフコースを欠く延長されたN結合型グリカンを含んでなる、植物細胞又は植物が提供される。植物由来ガラクトシル化糖タンパク質は、さらに、キシロース及びフコース残基を含んでもよい。特定の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、又は本明細書中の他の場所に記載したその修飾されたバージョン(mersion)は、その結果、酵素が天然基質に対してゴルジ体において作用する、すなわち、N,N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI、ゴルジ-マンノシダーゼII、及びN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIの作用に続いて、そして、植物内でこれらの酵素が別のやり方で阻害されない限り、キシロシルトランスフェラーゼ及びフコシルトランスフェラーゼの作用に続いて又はその最中に作用するような方法で、植物中で発現される。植物に由来するガラクトシル化タンパク質は、本明細書中では、植物由来とも呼ばれる。そのような植物由来ガラクトシル化タンパク質もまた、本明細書中に提供される。
【0084】
植物におけるオーダーメイド糖タンパク質の製造に向けた植物のグリコシル化反応の哺乳動物化のために、キシロシルトランスフェラーゼとフコシルトランスフェラーゼがノックアウト又はサイレント化され得、そして、いくつかの哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼのうちの少なくとも1種類が発現されなければならない。N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIをコードする遺伝子内で突然変異させたアラビドプシス・タリアナ突然変異体は、完全に実行可能であったので、キシロシルトランスフェラーゼとフコシルトランスフェラーゼのノックアウトを提供し、その結果、植物の好ましくないグリコシル化反応の可能性を低減することは、実現可能な選択肢である。N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼは複合グリカンの形成を開始する酵素なので、この植物はキシロース及びフコース残基を含む複合グリカンを欠く。
【0085】
特定の態様において、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、又は酵素的に活性な誘導体若しくはその一部、グリコシル化され得る追加の異種タンパク質、及び、任意に、追加として、さらなるN-グリカン生合成を提供する第3のタンパク質が発現されている、且つ、キシロース、及び/又はフコース付加に関与する酵素をコードする遺伝子がノックアウトされているか、又はこれらの遺伝子の発現が、アンチセンス又はRNAi技術を使用することでサイレント化されている、植物又は植物細胞が提供される。植物における遺伝子ノックアウト又はRNAiによる遺伝子のサイレント化の方法は、当該技術分野で周知である。
【0086】
RNA干渉(RNAi)は、翻訳段階で、又は特定の遺伝子の転写を妨げることによって遺伝子発現を阻害する機構である。短い干渉RNA鎖(siRNA)は、RNAi過程の要であり、そして、標的RNA鎖に相補的なヌクレオチド配列を持っている。ダイサー(RISC)などの特定のRNAi経路タンパク質が、siRNAによって標的メッセンジャーRNA(mRNA)に誘導され、そこで、それらがタンパク質に翻訳できないくらい小さな部分まで標的を分割する。RNA干渉は、ウイルス、及び(特に植物における)他の外来遺伝物質に対する免疫応答の重要な部分である。
【0087】
RNA干渉は、例えば、低レベルの天然植物毒素を産生する食用植物の操作において、アレルゲンのレベルを下げるためにトマト植物において、及び食物抗酸化物質により植物の栄養価を高めるためのトマトにおいて、植物バイオテクノロジーにおける適用のために使用された(Sunilkumar G. et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103 (48): 18054-9; Siritunga D, Sayre R (2003) Planta 217 (3): 367-73; Le L. et al. (2006) Plant Biotechnol J 4 (2): 231-42; Niggeweg R. et al. (2004) Nat Biotechnol 22 (6): 746-54)。そのような技術は、植物資源における安定的、且つ、遺伝性のRNAi表現型をうまく利用する。
【0088】
他の態様において、キシロース、及び/又はフコースを欠く延長されたN結合型グリカンを含んでなる糖タンパク質を特異的に分離し、そして、精製するための方法が提供される。必要な精製を媒介するために、例えば、(免疫)アフィニティー精製、又はサイズ排除クロマトグラフィー、又は電気泳動などの数タイプの分離技法が存在している。そのような方法は、当該技術分野で周知である(例えば、US 2008/0003680を参照のこと)。
【0089】
当業者は、本発明が植物又は植物細胞に制限されないが、本発明に従って(基本的に、非シアル化)糖タンパク質を産生する能力を有する動物、真菌、若しくは酵母のような他の生物体、又は哺乳動物細胞株若しくは昆虫細胞株のような細胞株もまた提供することを理解するだろう。ここで、前述のN結合型グリカンはガラクトースを含んでなる。
【0090】
商業的に着目のオーダーメイド糖タンパク質を産生する一時的に又は安定的に形質転換された植物の製造は、いくつかの態様において、本明細書中に記載のN-グリコシル化反応調節酵素をコードするヌクレオチド配列と、商業的に注目の異種糖タンパク質をコードする遺伝子の両方を含んでなる(バイナリ)ベクターを含むアグロバクテリウム(Agrobacterium)株を植物細胞又は組織に接種することによって樹立できる。あるいは、いくつかの態様において、一時的に又は安定的に形質転換された、商業的に着目のオーダーメイド糖タンパク質を産生する植物は、N-グリコシル化反応調節酵素をコードするヌクレオチド配列、又は商業的に着目の異種糖タンパク質をコードするヌクレオチド配列のいずれかを含んでなるベクターをそれぞれ担持する2つ以上のアグロバクテリウム株の同時接種(同時形質転換)によって製造できる。あるいは、いくつかの態様において、一時的に又は安定的に形質転換された、商業的に着目のオーダーメイド糖タンパク質を産生する植物は、修飾されたN-グリコシル化反応を伴う植物を、商業的に着目のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現する植物と(多系)交雑することによって製造できる。これらの手順のすべてで、そのベクターはまた、選択物質に対する抵抗性を付与する核酸配列も含むことができる。
【0091】
N-グリコシル化に関与するタンパク質、及び商業的に着目の糖タンパク質又はポリペプチドの満足できる発現を得るために、そのヌクレオチド配列を、当業者に知られている宿主植物の特異的な転写及び翻訳機構に適合させてもよい。例えば、コード領域のサイレント突然変異は、コドン利用を改良するために導入でき、そして、特異的プロモーターは、植物組織に関連する上述の遺伝子の発現を駆動するのに使用できる。発生的に調節され得るか、又は自由自在に誘導され得るプロモーターが、適切な時期に、例えば、植物組織が耕地から収穫され、そして、一定条件にされた後にだけ、発現を確保するために使用できる。これらのすべての場合で、グリコシル化反応調節タンパク質、及び商業的に着目の糖タンパク質の発現カセットの選択は、糖タンパク質への所望の翻訳後修飾を可能にするように、それらが同じ細胞内で発現するようにすべきである。
【0092】
特定の態様において、タバコ植物、又はニコチアナ属亜種、好ましくはN.タバクム、又はN.ベンサミアナに関連した植物が提供される。他の態様において、他の比較的容易に形質転換できる植物、例えば、アラビドプシス・タリアナ又はズィー・メイス(Zea mays)、又はそれらに関連する植物などが使用できる。組み換え糖タンパク質の製造のために、ウキクサの使用が特別な利点をもたらす。植物は、一般的に小さく、そして、枝芽の発芽によって無性的に再生する。ほとんどのウキクサ種は、根、茎、花、種子、及び葉を含めた非常に大きな植物のすべての組織及び器官を持つ。ウキクサは、安価に培養でき、そして、そこからそれらを簡単に集菌できる完全な格納容器内の単純溶液の表面上の自由な浮遊植物として非常に速く培養できる。特定の態様において、ウキクサは、非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ若しくは本明細書中に記載したその修飾バージョン、及び/又は商業的に注目される異種糖タンパク質をコードする遺伝子を用いて、組み換えにより提供される。ウキクサ植物には、例えば、スピロデラ属(genus Spirodella)、ウォルフィア属(genus Wolffia)、ウォルフィエラ属(genus Wolffiella)、又はレムナ属(genus Lemna)、レムナ・ミノル(Lemna minor)、レムナ・ミニスクラ(Lemna miniscula)、又はレムナ・ジバ(Lemna gibba)が含まれ得る。
【0093】
特定の態様において、トマト果実における発現が提供される。トマトは、落ち着いた、制御された条件下の温室で容易に栽培でき、そして、トマト果実バイオマスは、多量に一年を通じて絶え間なく収穫できる。着目の糖タンパク質を含む水様性画分が、トマト果実の残りの部分から容易に分離でき、糖タンパク質の精製をより簡単にする。特定の態様において、これだけに制限されることなく、収穫及び精製技術が容易に利用可能である器官により巨大なバイオマスを提供する魅力的な代替手段であるトウモロコシの穀粒、ジャガイモの塊茎、及びナタネ又はヒマワリの種子を含めた、他の作物の貯蔵器官における発現が提供される。
【0094】
いくつかの態様において、ガラクトースでN結合型グリカンを延長する能力を有する、組み換えタンパク質を発現することができるトランスジェニック植物、例えば、トランスジェニック・ニコチアナ亜種、好ましくはN.タバクム若しくはN.ベンサミアナ、アラビドプシス・タリアナ、又はトウモロコシ、ジャガイモ、トマト、又はウキクサなどを提供する方法であって、上述のトランスジェニック植物を、少なくとも1種類の任意の機能的な非哺乳動物タンパク質、例えば、トランスポーター又は通常、植物内に存在しないN-グリカン生合成を提供する酵素、を含んでなる植物と交雑させ、上述の交雑から子孫を収穫し、そして、上述の組み換えタンパク質を発現し、且つ、通常、植物内に存在しない哺乳動物様N-グリカン生合成に関与する機能的な非哺乳動物酵素を発現する所望の子孫植物を選別するステップを含む前記方法が提供される。1つの態様において、前記方法は、ガラクトースを少なくとも含んでなる延長されたN結合型グリカンを含んでなる前述の組み換えタンパク質を発現する所望の子孫植物を選別するステップをさらに含む。
【0095】
いくつかの態様において、N結合型グリカンを含んでなる前述の組み換え糖タンパク質を発現し、且つ、哺乳動物様N-グリカン生合成に関与する非哺乳動物酵素を発現する植物が提供される。追加の態様において、また、本発明は、所望の糖タンパク質又はその機能的断片を産生するためのトランスジェニック植物の使用も提供し、特に、ここで、上述の糖タンパク質又はその機能的断片は、ガラクトースを少なくとも含んでる延長されたN結合型グリカンを含んでなる。
【0096】
いくつかの態様において、例えば、ガラクトースでN結合型グリカンを延長する能力を有する組み換えタンパク質を発現することができる、トランスジェニック・ニコチアナ亜種、好ましくはN.タバクム BY2、ダウクス・カロタ、及びアラビドプシス・タリアナ細胞懸濁液などのトランスジェニック植物細胞の懸濁培養方法が提供される。
【0097】
いくつかの態様において、方法は、例えば、ガラクトースでN結合型グリカンを延長する能力有する組み換えタンパク質を発現することができる、トランスジェニック・ブリオフェタエア、好ましくはフィスコミトレラ・パテンス、又はフナリア・ヒグロメトリカ、セラトドン・プルプロイスなどのトランスジェニック・コケを提供するために提供される。
【0098】
いくつかの態様において、例えば、ガラクトースを少なくとも含んでなる延長されたN結合型グリカン、を含んでなる所望の糖タンパク質又はその機能的断片を得る方法が提供される。前述の方法は、本明細書中に記載した植物をその植物が収穫可能な段階に達する、例えば、有益な収穫を可能にするのに十分なバイオマスが育つとき、まで栽培し、それに続いて、上述の植物を当該技術分野で知られている確立した技術を用いて収穫し、そして、上述の植物を当該技術分野で知られている確立した技術を用いて分画して、分画された植物物質を得、そして、上述の分画された植物物質から上述の糖タンパク質を少なくとも部分的に単離するステップを含んでなる。
【0099】
いくつかの態様において、ガラクトースを少なくとも含んでなる延長されたN結合型グリカンを含んでなる、例えば、先に説明したような方法によって得られる植物由来糖タンパク質又はその機能的断片が提供される。ガラクトースを少なくとも含んでなる延長されたグリカンを伴う前述の植物由来糖タンパク質は、基本的に、植物で発現される所望の糖タンパク質であり得る。例えば、抗体、ワクチン、サイトカイン、FSH、TSH、及び他のホルモン糖タンパク質、EPOのようなその他のホルモン、アンチトリプシン若しくはリパーゼのような酵素、NCAM若しくはコラーゲンのような細胞接着分子が、植物で産生でき、そして、基本的に、哺乳動物型グリコシル化パターンが提供され得る。
【0100】
いくつかの態様において、本発明は、例えば、抗体、ホルモン、サイトカイン、ワクチン抗原、酵素、又は同様のものを用いた患者の治療向きの医薬組成物の製造のための本明細書中に記載したような植物由来糖タンパク質又はその機能的断片の使用を提供する。糖タンパク質又はその機能的断片を含んでなるそのような医薬組成物もまた、提供される。
【0101】
植物の形質転換
タンパク質、例えば、N-グリカン生合成をもたらす非哺乳動物酵素、並びに抗体、サイトカイン、ワクチン、ホルモン等の糖タンパク質の発現が、当該技術分野で知られている方法を使用することによって実施される。例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換、エレクトロポレーション、若しくはパーティクル・ボンバードメントを用いた安定発現によるか、又は、例えば、PVXなどのウイルス・ベクター、若しくはアグロインフィルトレーションを使用した一過性発現によるか、あるいは、当該技術分野で知られているその他の方法による。グリカン生合成ができる本発明のグリコシルトランスフェラーゼ、及び/又はグリコシル化反応を受ける糖タンパク質は、特定の組織又は器官内での発現を容易にする特異的プロモータの制御下で発現され得る。本明細書中に記載した非哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼ、及び/又は糖タンパク質の所望のポリペプチドをコードするDNA配列、例えば、完全長タンパク質をコードするcDNA又はゲノム配列が、所望の植物に導入される組み換え発現カセットを構築するのに使用されてもよい。
【0102】
例えば、配列番号1、8、10、13、15、及び17などの配列を含んでなる本明細書中に記載した単離された核酸が、当該技術分野で知られている技術に従って植物内に導入され得る。一般的に、先に記載した、植物細胞の形質転換に好適な組み換え発現カセットが準備される。そして、本明細書中に記載した単離された核酸が、形質転換に使用される。このように、遺伝子を操作した植物、植物細胞、植物組織、種子等を得ることができる。
【0103】
形質転換プロトコールは、形質転換の標的となる植物細胞のタイプ、すなわち、単子葉植物又は双子葉植物によって異なる可能性がある。好適な植物細胞の形質転換方法には、マイクロインジェクション(Crossway et al. (1986) Biotechniques 4: 320-334)、エレクトロポレーション(Riggs et al (1986) Proc. Natl. Acad. Sci, USA 83: 5602-5606)、アグロバクテリウム媒介形質転換(例えば、Zhao et al. U. S. Patent 5,981,840; Hinchee et al. (1988) Biotechnology 6; 915-921を参照のこと)、遺伝子直接導入(Paszkowski et al (1984) EMBO J. 3:27172722)、及びバリスティック・パーティクル・アクセラレーション(例えば、Sanford et al.米国特許番号第4,945,050号;Tomes et al. "Direct DNA Transfer into Intact Plant Cells via Microprojectile Bombardment" In Gamborg and Phillips (Eds.) Plant Cell, Tissue and Organ Culture: Fundamental Methods, Springer-Verlag, Berlin (1995);及びMcCabe et al. (1988) Biotechnology 6: 923-926を参照のこと)を含む。
【0104】
形質転換された細胞は、従来の方法に従って植物に育ててもよい。例えば、McCormick et al. (1986) Plant Cell Reports, 5: 81-84を参照のこと。次に、これらの植物を育て、そして、同じ形質転換株又は異なる株と授粉させ、そして、所望の表現型特徴を有する、得られた雑種を特定した。
2世代以上栽培して、対象の表現型特徴が安定的に維持され、そして、引き継がれることを確実にし、そして、次に、種子を収穫して、所望の発現型又は他の特性が獲得されることを確実にした。
【0105】
トランスジェニック植物の再生
植物発現ベクターで形質転換した植物細胞は、標準的な植物組織培養技術に従って、例えば、単独細胞、カルス組織、又は葉ディスクから、再生され得る。ほとんどすべての植物からの様々な細胞、組織、及び器官が、植物全体を再生するために首尾よく培養され得ることは、当該技術分野で周知である。培養プロトプラストからの植物体の再生は、Evans et al., Protoplasts Isolation and Culture, Handbook of Plant Cell Culture, Macmillan Publishing Company, New York, pp. 124 176 (1983);及びBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, CRC Press, Boca Raton, pp. 21-73 (1985)に記載されている。
【0106】
葉外植片からアグロバクテリウムによって挿入された外来遺伝子を含む植物の再生は、Horsch et al., Science, 227: 1229-1231 (1985)によって記載されているように達成され得る。この手順で、形質転換体は、選択物質の存在下、且つ、Fraley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U. S. A.), 80: 4803 (1983)によって記載されるように形質転換される植物種における新芽の再生を誘導する培地中で培養される。この手順は、通常、2〜4週間以内に新芽を生じ、そして、次に、これらの形質転換体新芽を、選択物質と、細菌増殖を予防するための抗生物質を含む適切な根誘導培地に移す。本発明のトランスジェニック植物は、稔性であっても、不稔性であってもよい。
【0107】
再生はまた、植物カルス、外植片、器官、又はその一部からも得られる。そのような再生技術は、一般的に、Klee et al., Annu RevPlant Phys. 38: 467-486 (1987)に記載されている。単独の植物プロトプラスト又は様々な外植片のいずれかからの植物の再生は、当該技術分野で周知である。例えば、Methods for Plant Molecular Biology, A. Weissbach and H. Weissbach, eds., Academic Press, Inc., San Diego, Calif. (1988)を参照のこと。この再生、そして、培養の過程は、形質転換体細胞及び新芽の選別、形質転換体新芽の発根、そして、土中での植物の栽培のステップを含む。トウモロコシ細胞培養と再生に関して、一般的に、The Maize Handbook, Freeling and Walbot, Eds., Springer, New York (1994);Com and Corn Improvement, 3rd edition, Sprague and Dudley Eds., American Society of Agronomy, Madison, Wisconsin (1988)を参照のこと。
【0108】
当業者は、組み換え発現カセットがトランスジェニック植物内に安定的に組み込まれ、そして、作動できることが確認された後に、それは、有性交雑によって他の植物に導入されることを認識している。交雑される種に依存して、多くの標準的な育種方法の中のいずれかが使用できる。栄養繁殖性作物では、成熟トランスジェニック植物は、多数の同一な植物を製造するために、挿し木をすることによって、又は組織培養技術によって繁殖され得る。
【0109】
望ましいトランスジェニックの選別が行われ、そして、新しい変異体が得られ、そして、好ましくは、商業的利用のために栄養的に繁殖させる。種子繁殖性作物では、成熟トランスジェニック植物は、ホモ接合性近交系植物を作り出すために自家交配される。近交系植物は、新たに導入された異種核酸を含む種子を産生する。これらの種子は、選択された発現型を生じる植物を作り出すために栽培され得る。
【0110】
前記再生植物から得られる花、種子、葉、枝、果実等の部分は、本発明に含まれるが、これらの部分が本明細書中に記載した単離された核酸を含んでなる細胞を含むことを条件とする。前記再生植物の子孫や変異体、及び突然変異体もまた、本発明の範囲内に含まれるが、これらの部分が導入された核酸配列を含んでなることを条件とする。
【0111】
選択マーカーを発現するトランスジェニック植物は、例えば、標準的な免疫ブロット及びDNA検出技術、によって本明細書中に記載した核酸の遺伝に関してスクリーニングされ得る。形質転換株はまた、一般的に、異種核酸の発現レベルについても評価される。RNAレベルの発現は、初めは、発現陽性植物の特定及び定量のために測定される。RNA分析のための標準的な技術が利用でき、そして、それには、異種RNA鋳型だけを増幅するように設計されたオリゴヌクレオチド・プライマーを使用したPCR増幅アッセイ、及び異種核酸特異的プローブを使用した溶液ハイブリダイゼーション・アッセイが含まれる。RNA陽性植物は、次に、本明細書中に提供された特異的反応抗体を使用したウェスタン免疫ブロット分析によってタンパク質の発現について分析される。加えて、標準的なプロトコールによるin situハイブリダイゼーション及び免疫細胞化学法が、トランスジェニック組織内の発現部位を突き止めるために、それぞれ、異種核酸に特異的なポリヌクレオチド・プローブ及び抗体を使用して実施され得る。一般的に、多くの形質転換株が、組み込まれた核酸についてスクリーニングされて、最も適切な発現特徴を有する植物を特定、及び選別する。
【0112】
特定の態様において、追加異種核酸に関してホモ接合性であるトランスジェニック植物;すなわち、2つの追加核酸配列であるが、染色体対の各染色体上の同じ遺伝子座の1つの遺伝子を含むトランスジェニック植物が提供される。ホモ接合性トランスジェニック植物は、単独の追加異種核酸を含むヘテロ接合性トランスジェニック植物の有性交配し(自殖)、産生された種子のいくつかを発芽させ、そして、対照植物(すなわち、天然の非トランスジェニック)に対して、本明細書中に記載したポリヌクレオチドの発現変化について、得られた製造植物を分析することによって得られる。親との戻し交雑、及び非トランスジェニック植物との他殖もまた想定されている。
【0113】
特定の態様において、(a)植物又は植物細胞のゲノム内へのDNAの挿入、上述のDNAは、本明細書中に記載したように、哺乳動物型N末端配列で任意に延長された非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするか、あるいは、本明細書中に記載したように、そのCTSが他のゴルジ局在性タンパク質のものと置き換えられた前述のGalT、又は酵素的に活性な誘導体若しくはその一部をコードする核酸配列、並びに好ましくは、加えて、DNAが上述の植物又は上述の植物細胞で発現できる少なくとも1種類の選択マーカーをさらにコードする、そのN結合型グリカンのガラクトシル化を必要とする少なくとも1種類の哺乳動物タンパク質を含んでなり、(b)(a)による上述のDNAを取り込んだトランスジェニック植物又は植物細胞の選別;そして、(c)所望のトランスジェニック植物又は所望のトランスジェニック植物細胞の好適な培地中での培養を含んでなるトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞の製造のための過程が提供される。当業者は、前述のタンパク質をコードする核酸分子に関連した用語「ガラクトシル化N結合型グリカンを含んでなるタンパク質」は、単にポリペプチドをコードしているにすぎないが、そのガラクトシル化N結合型グリカンがゴルジにおけるタンパク質のプロセシングの結果であることを理解しているだろう。
【0114】
いくつかの態様において、組み換えGalTタンパク質と、ガラクトシル化N結合型グリカンを含んでなるタンパク質を発現するトランスジェニック植物を製造するための追加の方法が提供される。そのような方法は、例えば、本明細書中に記載したトランスジェニック植物を別の植物と交雑し、上述の交雑から子孫を収穫し、そして、組み換えGalTタンパク質を発現し、且つ、組み換え哺乳動物糖タンパク質、特に、ガラクトシル化N-グリカン若しくはその機能的断片を含んでなるタンパク質を発現する所望の子孫植物を選別するステップを含み得る。
【0115】
タンパク質の精製
特定の態様において、所望の糖タンパク質又はその機能的断片を得る方法は、本明細書中に記載した植物をその植物が収穫可能な段階に達するまで培養し、上記植物を収穫し、分画して、分画植物物質を得、そして、上述の分画植物物質から上述の糖タンパク質を少なくとも部分的に単離するステップを含んでなる。特定の態様において、所望の糖タンパク質又はその機能的断片を得る方法は、植物細胞を発酵槽における細胞培養によりその細胞培養が収穫可能な段階に達するまで、又は所望の糖タンパク質が培地から回収できるまで培養するステップを含んでなる。例えば、抗体、ワクチン、サイトカイン、及びホルモンなどの本明細書中に記載した糖タンパク質は、当業者に周知の標準的な技術によって精製することができる。組み換えによって製造されたタンパク質は、直接発現されても、又は融合タンパク質として発現されてもよい。組み換えタンパク質は、細胞溶解(例えば、超音波処理、フレンチ・プレス)と、親和性クロマトグラフィ又は他のアフィニティー・ベースの方法との組み合わせによって精製される。融合産物に関しては、それに続く、融合タンパク質の適切なタンパク質分解酵素での消化が、所望の組み換えタンパク質を放出する。
【0116】
本明細書中に記載した、組み換え又は合成のタンパク質は、界面活性剤可溶化、硫酸アンモニウムのような物質を用いた選択的沈殿、カラム・クロマトグラフィ、免疫精製法、及びその他のものなどを含めた当該技術分野で周知の標準的な技術によってかなりの純度まで精製できる。例えば、R. Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag: New York (1982);Deutscher, Guide to Protein Purification, Academic Press (1990)を参照のこと。例えば、本明細書中に記載したように前記タンパク質に対する抗体が製造されてもよい。E.コリ(E. coli)からの精製は、米国特許番号第4,511,503号に記載の手順に従って達成され得る。次に、前記タンパク質は、そのタンパク質を発現する細胞から単離され、そして、本明細書中に記載の標準的なタンパク質化学技術によってさらに精製されてもよい。発現たんぱく質の検出は、例えば、放射性同位元素標識免疫測定、ウェスタン・ブロッティング技術、又は免疫沈降反応を含めた当該技術分野で知られている方法によって達成される。
【実施例1】
【0117】
推定上の非哺乳動物β-1,4-GalTsの同定
β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)のファミリーには、少なくとも7つのメンバーが含まれ、その中のいくつかがクローンニングされたが、ほんのわずかしか特徴決定されなかった。ヒト及びウシ起源のβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼは、最も良く特徴決定されており、N-グリカン上の末端GlcNAc残基にβ-1,4-結合でガラクトース残基を付加できることが示された。N-グリコシル化に関与する推定上のGalT遺伝子は、相同性に基づいて非哺乳動物種の遺伝子配列に特定された。図1は、哺乳動物GalT遺伝子配列(ヒト、マウス、及びウシ)と、非哺乳動物の推定上のGalT遺伝子配列(ニワトリ、ゼブラフィッシュ、及びカエル)のClustal Wアラインメントを示す。珍しいことに、サイトゾル性であり、且つ、膜貫通領域(TM、破線の囲み)に隣接し、そして、ゴルジ局在性に関与すると推定される、哺乳動物アミノ末端(実線の囲み)は、例えば、ニワトリやゼブラフィッシュなどの非哺乳動物起源からのGalTオルソログで保存されていない(図1を参照のこと)。
【0118】
ゴルジ局在性は、二分岐のN-グリカンを産生する植物において、他のグリコシルトランスフェラーゼ、例えば、Man-I、GnT-I、Man-II、GnT-II、XylT、及びFucTなどの作用後にGalT触媒能が生じることを意味する「後期」であり得るGalT活性(多分、トランス-ゴルジ)に重要であると考えられる、つまり、GalT触媒能は、Man-II、XylT、及びFucTの活性の以前である「早期に」発生するので(シス/中間-ゴルジ)、それにより、これらの酵素の活性を妨げ、植物においてフコースとキシロースを欠くハイブリッド型N-グリカンを産生する。
【0119】
例えば、ニワトリ及びゼブラフィッシュに由来する非哺乳動物GalTオルソログは、特に、植物において外因的に発現されない、N-グリカンの末端GlcNAc残基にβ-1,4-結合でガラクトース残基を付加するそれらの能力についてこれまで特徴決定されていない。二分岐又はハイブリッド型N-グリカンの産生に対する、細胞内局在性に影響を及ぼす可能性がある異なる哺乳動物アミノ末端の影響、植物内で非哺乳動物GalTオルソログに融合させ発現された場合に、N-グリカンに、植物に特異的なフコースとキシロース残基を付加することに対する効果もまた、調査されていない。
【0120】
ニワトリ及びゼブラフィッシュのそれぞれについて3つのGalT構築物が、クローンニングされ、そして、N-グリコシル化活性について試験された:a)野生型、非哺乳動物型のニワトリ及びゼブラフィッシュβ-1,4-GalT1;b)非哺乳動物型のニワトリ及びゼブラフィッシュβ-1,4-GalT1と、13アミノ酸の保存された哺乳動物(ヒト)アミノ末端(図1を参照のこと)延長部の融合タンパク質;並びに(c)ラット・シアリルトランスフェラーゼ遺伝子に由来する哺乳動物細胞質テールと膜貫通ドメイン(CTS)の、ニワトリ及びゼブラフィッシュβ-1,4-GalT1アミノ末端を、ラット・シアリルトランスフェラーゼのCTSで置き換えた非哺乳動物型のニワトリ及びゼブラフィッシュβ-1,4-GalT1への融合タンパク質(実施例2及び3を参照のこと)。
【実施例2】
【0121】
完全長ニワトリβ-1,4-GalT1酵素及びその変異体をコードする遺伝子のクローニングと発現
推定上のニワトリβ-1,4-GalT1(GGal;ジェンバンク受入番号U19890;SEQ Ggal、配列番号2)を、以前にクローンニングしたが、それにN-グリカンをガラクトシル化する能力があることが示されなかった(Shaper et al, J Biol Chem 272, 31389-31399, 1997)。我々の研究室では、第114〜362残基(SEQ GgGal114-362、配列番号3)を含んでなるcDNA断片を、プライマーGgalLEEVAST及びGgGaldwを用いたRT-PCR法を使用して、ニワトリ脾臓全RNAから増幅した(表1を参照のこと)。C末端を含む、得られた断片を、Xho I及びBam HIで消化し、次に、プラスミドpCASeco内にクローンニングした。後者は、Hin dIII及びEco RI部位が隣接する多重クローニング部位が、これらの2つの部位と骨格内のEco 31I部位の排除と同時に、配列SEQ CASecoを挿入するのに使用されたpUC19誘導体である。このプラスミドpCASecoを、Xho I及びBam HIで消化し、クローンGgGalCを生じるC末端GGal断片を供給した。
【0122】
GGalのN末端を含み、且つ、第1〜113残基を含んでなるcDNA断片を、長いオリゴからPCRベースの方法を使用して合成により製造した。ストレイトフォワードRT-PCRクローニングを妨げた、GCリッチな特性の天然cDNA断片、及び野生型配列と比較してアミノ酸変更のないこの断片のコドンの最適化バージョン(SEQ GgGalsyn、配列番号6)を、野生型GGalアミノ酸配列(SEQ Ggal、配列番号2)をコードする遺伝子(SEQ GgGalhybr、配列番号1)を生み出すような方法でSEQ GgGal114-362をコードするクローンGgGalCと組み合わせた。次に、SEQ GgGalhybrと記載される遺伝子を、2つの変異体(一方が、完全長ヒトβ-1,4-GalT1(ジェンバンク受入番号NM_001497)の13アミノ酸残基をコードする配列でN末端が延長され、そして、もう一方が、GGalの触媒ドメインを含んでなる第40〜362残基をコードする断片を、第1〜53残基を含んでなるラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼ(SialT;ジェンバンク受入番号M18769)のN末端ドメインのC末端に融合させ、よって、細胞質テール、膜貫通ドメイン、及びステム領域の一部を含む)を作成するための出発材料として使用した。
【0123】
ラットSialT由来配列は、野生型配列に関して1つのサイレント突然変異を含む。
13アミノ酸N末端延長部を持つGGalは、オリゴHsGgGalstart及びM13順方向プライマー(表1)を用いたPCR法を使用することでGGalをコードするハイブリッド型クローン(SEQ GgGalhybr、配列番号1)から作製した。得られたPCR断片を、Bpi I及びXba Iで消化し、そして、同じように消化したGGalクローン内にクローンニングした。得られたクローンは、SEQ HsGGal(配列番号8)を持つ遺伝子を含む。
【0124】
ラットSialT N末端ドメインを持つ変異体を、オリゴGgGall42及びM13順方向プライマー(表1)を用いたPCR法を使用することで完全なGGal(SEQ GgGalhybr、配列番号1)をコードするクローンから作製した。得られた断片を、Eco 31I及びBam HIで消化し、Nco I及びBam HIで消化したラット配列を含むpCASecoプラスミド内にクローンニングした。得られたクローンは、SEQ sialGGal(配列番号10)を持つ遺伝子を含む。
【0125】
3つの異なるGGal遺伝子を含む植物形質転換ベクターを、最初に、Eco 31I及びBam HIで消化した遺伝子を、Nco I及びBam HIで消化したベクターpRAP40内にクローンニングし、その遺伝子を、促進されたCaMV 35Sプロモーター及びAMV翻訳エンハンサの下流になるように誘発することによって作製した。pRAP40は、促進されたCaMV 35Sプロモーターとnosターミネータを含んでなるpUC19誘導体であって、Asc I部位で上記プロモーターの上流に、且つ、Pac I部位でそのターミネータの下流に隣接した;隣接制限部位を含むカセット全体は、SEQ RAP40(配列番号12)と記載する。プロモーター、3種類の遺伝子のうちの1つ、及びターミネータを含んでなる3種類のカセットのそれぞれを、次に、多重クローニング部位のEco RI及びHin dIII部位がPac I及びAsc Iでそれぞれ置き換えられたバイナリーベクターpMOG22(Goddijn et al., 1993, Plant J 4:863-873)の修飾バージョンに別々に移した。このために、pRAP由来クローンを、Pac I及びAsc Iで消化し、次に、Asc-Pac消化バイナリーベクター内にクローンニングして、植物形質転換のために準備ができている3つの異なるベクターを得た。ニコチアナ・タバクムのアグロバクテリウム・トゥメファシエンス媒介形質転換の後に、GGalを発現するトランスジェニック植物又はその変異体を、例えば、Bakkerら(Proc Natl Acad Sci U S A 98:2899-904, 2001 and Proc Natl Acad Sci USA 103:7577-82, 2006)によって以前に説明されていた方法を使用して形質転換体によって合成されたN-グリカンを分析することによって選別した。
【0126】
ニワトリ遺伝子を発現するトランスジェニック植物から精製したN-グリカンのMALDI-TOF分析の結果は(図2、及び図4右欄と表3に集計したものを参照のこと)、13アミノ酸延長部(HsGGal、配列番号8)又はSialT-CTS(sialGGal、配列番号10)発現のどちらかを持つニワトリ遺伝子配列だけが、ガラクトース残基を持つ完全な二分岐のN-グリカンの産生をもたらすことを示した。野生型ニワトリGalT遺伝子の発現は、ハイブリッド型N-グリカンだけをもたらした。13アミノ酸延長部(HsGGal、配列番号8)又はニワトリGalTのSialT-CTS(sialGGal、配列番号10)はともに、いくつかのハイブリッド型ガラクトシル化N-グリカンも持つ。
【0127】
驚いたことに、3つの異なるGGal遺伝子の発現が、2つのGlcNAc残基で終わる二分岐のN-グリカンのほとんど完全な欠如をもたらし(表3及び図4の上パネル、右欄を参照のこと)、代わりに、1つのガラクトースを持ち、且つ、キシロースとフコースの両方を欠くハイブリッド型ガラクトシル化N-グリカンが、特に、野生型ニワトリGalTの発現に関して支配的である(図4、中段パネル、右欄を参照のこと)。N-グリカン産生のこのパターンは、ヒトGalT又はゼブラフィッシュからのGalTで形質転換した植物から得られたそれと顕著に異なっている(表3及び図4、左欄及び中欄をそれぞれ参照のこと、以下を参照のこと)。
【0128】
野生型ニワトリGalTが植物内で発現されるときのハイブリッド型ガラクトシル化N-グリカンに見られるような、植物に特異的なキシロース及びフコース残基の減少、又はそれらの完全な欠如は、β1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基は哺乳動物糖タンパク質に取り付けられず、アレルゲンとして作用するので、例えば、外来性の治療用糖タンパク質を製造する場合に、望ましい。
【実施例3】
【0129】
完全長ゼブラフィッシュβ-1,4-GalT1酵素及びその変異体をコードする遺伝子のクローニング及び発現
推定上のゼブラフィッシβ-1,4-GalT1(Machingo et al, Dev Biol 297, 471-82, 2006; NM_001017730)は特定されたが、その機能が立証されていないので、その発明者らは同定が不正確であると考えた。ゼブラフィッシュ全RNA全体から開始して、完全長DGal遺伝子(SEQ Dgal、配列番号13)を、プライマーDrGalup及びDrGaldwを用いたRT-PCR法を使用することで増幅した(表2を参照のこと)。得られた断片を、Xba I及びBam HIで消化し、次に、同じように消化したプラスミドpCASeco(前記を参照のこと)内にクローンニングした。配列決定法は、それが、ここに示されている3つの突然変異(+1にて開始、そして、非サイレント突然変異に下線を引いた): T126C、T230G、G862Cを持っていても、未確認のジェンバンク受入番号NM_001077259と事実上同一であることを示した。公開された推定上のゼブラフィッシュβ-1,4-GalT1(Machingo et al., Dev Biol 297, 471-82, 2006; NM_001017730)と、Dgal(SEQ Dgal、配列番号14)のアミノ酸配列比較は、特に、おそらくゴルジ局在性に関与するN末端、及び我々のクローンで顕著に長いC末端で、アミノ酸レベルでわずかな配列相同性しかなかったことを示した(図5を参照のこと)。
【0130】
13アミノ酸N末端延長部を持つDGalを、オリゴHsDrup及びDrGaldwを用いたPCR法を使用することでDGalをコードするクローン(SEQ Dgal、配列番号13)から作製した(表2)。得られたPCR断片を、Acc I及びBpi Iで消化し、そして、同じように消化したDGalクローン内にクローンニングした。得られたクローンは、SEQ HsDGal(配列番号15)を持つ遺伝子を含む。
【0131】
ラットSialT N末端ドメインを持つ変異体を、オリゴDrGal160及びDrGaldwを用いたPCR法を使用することで完全なDGal(SEQ Dgal、配列番号13)をコードするクローンから作製した(表2)。得られた断片を、Bpi I及びBam HIで消化し、そして、Nco I及びBam HIで消化したラット配列を含むpCASecoプラスミド内にクローンニングした。得られたクローンは、ラットSialT遺伝子(SEQ sialDGal、配列番号17)のN末端に融合されたDGal触媒ドメインを含む。
【0132】
3つの異なるDGal遺伝子を含む植物形質転換ベクターを、最初に、Eco 31I及びBam HIで消化した遺伝子を、Nco I及びBam HIで消化したベクターpRAP40内にクローンニングし、その遺伝子を、促進されたCaMV 35Sプロモーター及びAMV翻訳エンハンサの下流になるように誘発することによって作製した。プロモーター、3種類の遺伝子のうちの1つ、及びターミネータを含んでなる3種類のカセットのそれぞれを、次に、多重クローニング部位のEco RI及びHin dIII部位がPac I及びAsc Iでそれぞれ置き換えられたバイナリーベクターpMOG22(Goddijn et al., 1993, Plant J 4:863-873)の修飾バージョンに別々に移した。このために、pRAP由来クローンを、Pac I及びAsc Iで消化し、次に、Asc-Pac消化バイナリーベクター内にクローンニングして、植物形質転換のために準備ができている3つの異なるベクターを得た。ニコチアナ・タバクムのアグロバクテリウム・トゥメファシエンス媒介形質転換の後に、DGalを発現するトランスジェニック植物又はその変異体を、例えば、Bakkerら(Proc Natl Acad Sci U S A 98:2899-904, 2001 and Proc Natl Acad Sci USA 103:7577-82, 2006)によって以前に説明されていた方法を使用して形質転換体によって合成されたN-グリカンを分析することによって選別した。
【0133】
ゼブラフィッシュGalT遺伝子配列を発現するトランスジェニック植物から精製したN-グリカンのMALDI-TOF分析の結果(図3、及び図4中欄と表3に集計したものを参照のこと)は、野生型ゼブラフィッシュGalT遺伝子配列の発現が、多少のハイブリッド型ガラクトシル化N-グリカンももたらすが、2つのガラクトースを持つ完全な二分岐のN-グリカンももたらすことを示している。植物に依存して、いくつかの植物は、ゼブラフィッシュ野生型GalT遺伝子配列の発現によって、ガラクトシル化した二分岐のN-グリカンだけになる(図3最上部に対して上から2番目のパネルを参照のこと)。二重ガラクトシル化した二分岐のN-グリカンの量は、13アミノ酸N末端ヒトGalT(HsDGal、配列番号15)又はSialT-CTS-GalT(sialDGal、配列番号17)のいずれか(後者が最多量のガラクトシル化した二分岐のN-グリカンを持つ)によって顕著に増強される(表3、及び図4下段パネルの中欄を参照のこと)。
【0134】
驚いたことに、タバコにおけるSial-CTS-ゼブラフィッシュGalTの発現を通して得られた二重ガラクトシル化した二分岐のN-グリカンのガラクトシル化は、SialT-CTS-ヒトGalTと比較して、SialT-CTS-ゼブラフィッシュGalTで50%増強された(表3、及びそれぞれ、図4下段パネルの中欄と左欄を参照のこと)。Sial-CTS-ゼブラフィッシュGalTは、最大で45%の、1以上ガラクトース残基を持つ総N-グリカンを産生する(表3を参照のこと)。
【0135】
例えば、Sial-CTS-ゼブラフィッシュGalTが植物で発現されるときに、二分岐のN-グリカンで見られるような1以上のガラクトース残基を持つN-グリカン全体の高い収率は、例えば、外来性の治療用糖タンパク質を製造するときに望ましい。
【0136】
【表1】

【0137】
【表2】

【0138】
【表3】

【0139】
【化1】

【0140】
【化2】

【0141】
【化3】

【0142】
【化4】

【0143】
【化5】

【0144】
【化6】

【0145】
【化7】

【0146】
【化8】

【0147】
【化9】

【0148】
【化10】

N末端13アミノ酸残基、ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(配列番号21):MRLREPLLSGSAA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N結合型グリカンにβ-1,4-結合でガラクトース残基を付加することができるトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞の製造方法であって、以下のステップ:
(a)非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする核酸分子を植物又は植物細胞内に挿入し;そして
(b)(a)の核酸分子取り込み、そして、その核酸分子を発現するトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞を選別し、それにより、N結合型グリカンにβ-1,4-結合でガラクトース残基を付加することができるトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞を製造する、
を含んでなる、前記製造方法。
【請求項2】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1が、配列番号2を含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ゴルジ体における非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの局在化を導くことができるアミノ酸配列で延長されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を用いてN末端にて延長されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記N末端アミノ酸配列が、最初の10個のN末端アミノ酸の中に少なくとも配列[K/R]-X-[K/R]を含んでなり、ここで、[K/R]はリジン又はアルギニン残基のいずれかを表し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アミノ酸配列が、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの細胞質‐膜貫通‐ステム領域(CTS)を、他のゴルジ局在性タンパク質のCTSで置き換える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記CTSが、哺乳動物ゴルジ局在性タンパク質に由来する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CTSが、哺乳動物シアリルトランスフェラーゼに由来する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記CTSが、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼに由来する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記CTSが、植物のゴルジ局在性タンパク質に由来する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
1以上のガラクトシル化N結合型グリカンを含んでなる異種糖タンパク質の製造方法であって、以下のステップ:
(a)非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする核酸分子、及び異種糖タンパク質をコードする核酸分子を、植物又は植物細胞内に挿入し、それにより、トランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞を製造し;そして
(b)上記核酸分子の発現に適切な条件下に上記のトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞を維持し、それにより、1以上のガラクトシル化N結合型グリカンを含んでなる異種糖タンパク質を製造する、
を含んでなる前記製造方法。
【請求項14】
前記のトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞から異種糖タンパク質を少なくとも部分的に単離するステップをさらに含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記糖タンパク質が、1以上のN-グリカン上に1以上のガラクトース残基を含んでなる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記糖タンパク質のN-グリカンが、キシロース残基を基本的に欠いている、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記糖タンパク質のN-グリカンが、フコース残基を基本的に欠いている、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記糖タンパク質のN-グリカンが、キシロース及びフコース残基を基本的に欠いている、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記の異種糖タンパク質をコードする核酸分子が、ホルモン;サイトカイン、ワクチン;接着分子、又は抗体若しくはその機能的フラグメントをコードする、請求項13〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記の植物又は植物細胞が、植物又は植物細胞で発現できる少なくとも1種類の選択マーカーをコードする核酸分子をさらに含んでなる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記の植物又は植物細胞が、ニコチアナ亜種であるか、又はそれに由来する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記核酸分子を、マイクロインジェクション、PEG形質転換、アグロバクテリウム媒介形質転換、エレクトロポレーション、バリスティック・パーティクル・ボンバードメント、直接遺伝子導入、リポソーム融合、植物体への形質転換、リン酸カルシウム沈殿、アグロフィルトレーション、又はウイルス感染によって挿入する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)と少なくとも85%同一である核酸によってコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)と少なくとも90%同一である核酸によってコードされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)と少なくとも95%同一である核酸によってコードされる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号1)と少なくとも98%同一である核酸によってコードされる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼアミノ酸配列(配列番号2)のそれと少なくとも85%同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼアミノ酸配列(配列番号2)のそれと少なくとも90%同一である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼアミノ酸配列(配列番号2)のそれと少なくとも95%同一である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼアミノ酸配列(配列番号2)のそれと少なくとも98%同一である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列が、哺乳動物延長部をさらに含んでなる、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記哺乳動物延長部が、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSを、他のゴルジ局在性タンパク質由来のCTSで置き換え、そして、ここで、前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも85%同一である、請求項27〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも90%同一である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも95%同一である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも98%同一である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記の他のゴルジ局在性タンパク質由来のCTSが、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼからのCTSである、請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記の植物又は植物細胞が、β1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンを含んでなる糖タンパク質を産生する、請求項23〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記のβ1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量が、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の2倍である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記のβ1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量が、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の5倍である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記のβ1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量が、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の10倍である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記のβ1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量が、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の50倍である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記の植物又は植物細胞が、少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐のN-グリカンを含んでなる糖タンパク質を産生する、請求項38〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
請求項13〜22のいずれか1項に記載の方法によって産生される糖タンパク質。
【請求項45】
請求項1〜12又は19〜43のいずれか1項に記載の方法によって製造した植物又はかかる植物の一部。
【請求項46】
前記植物が、種子、胚、カルス組織、葉、根、新芽、花粉、及び小胞子から成る群から選択される植物の一部である、請求項45の植物。
【請求項47】
請求項1〜12又は19〜43のいずれか1項に記載の方法によって製造した植物細胞。
【請求項48】
前記植物細胞を、浮遊培養で培養する、請求項47に記載の植物細胞。
【請求項49】
ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のアミノ酸配列(配列番号2)、及びそのN末端に延長部を含んでなるポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、上記延長部は、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列であり、ここで、上記N末端アミノ酸配列は、最初の10個のN末端アミノ酸の中に少なくとも配列[K/R]-X-[K/R]を含んでなり、ここで、[K/R]はリジン又はアルギニン残基のいずれかを表し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい前記核酸。
【請求項50】
前記アミノ酸配列が、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)である、請求項49に記載の核酸。
【請求項51】
前記アミノ酸配列が、配列番号8を含んでなる、請求項49に記載の核酸。
【請求項52】
ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のアミノ酸配列(配列番号2)を含んでなるポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、上記のニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSを、他のゴルジ局在性タンパク質のCTSで置き換える前記核酸。
【請求項53】
前記CTSが、哺乳動物ゴルジ局在性タンパク質に由来する、請求項52に記載の核酸。
【請求項54】
前記CTSが、哺乳動物シアリルトランスフェラーゼに由来する、請求項53に記載の核酸。
【請求項55】
前記CTSが、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼに由来する、請求項54に記載の核酸。
【請求項56】
前記アミノ酸配列が、配列番号11を含んでなる、請求項55に記載の核酸。
【請求項57】
前記CTSが、植物のゴルジ局在性タンパク質に由来する、請求項52に記載の核酸。
【請求項58】
非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、上記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列は、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(配列番号2)のそれ、及びN末端の延長部と少なくとも90%同一であり、ここで、上記延長部は、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列であり、ここで、上記N末端アミノ酸配列は、最初の10個のN末端アミノ酸の中に少なくとも配列[K/R]-X-[K/R]を含んでなり、ここで、[K/R]はリジン又はアルギニン残基のいずれかを表し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい前記核酸。
【請求項59】
前記の配列同一性が、少なくとも95%である、請求項58に記載の核酸。
【請求項60】
前記の配列同一性が、少なくとも98%である、請求項58に記載の核酸。
【請求項61】
請求項49〜60のいずれか1項に記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項62】
前記核酸分子が、真核又は原核細胞におけるその核酸分子の転写に十分な調節因子に連結されている、請求項61に記載のベクター。
【請求項63】
植物細胞における転写に十分な異種調節因子に連結されている請求項49〜60のいずれか1項に記載の核酸分子を含んでなるか、あるいは、請求項61又は62に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項64】
浮遊培養で培養される前記植物細胞が、N.タバクム BY2、ダウクス・カロタ、及びアラビドプシス・タリアナ細胞懸濁液から成る群から選択される、請求項48の植物細胞。
【請求項65】
前記植物細胞が、ブリオフェタエア、フィスコミトレラ・パテンス、フナリア・ヒグロメトリカ、及びセラトドン・プルプロイスから成る群から選択されるコケの一部である、請求項48の植物細胞。
【請求項66】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1が、配列番号14を含んでなる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ゴルジ体における非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの局在化を導くことができるアミノ酸配列で延長されている、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を用いてN末端にて延長されている、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記N末端アミノ酸配列が、最初の10個のN末端アミノ酸の中に少なくとも配列[K/R]-X-[K/R]を含んでなり、ここで、[K/R]はリジン又はアルギニン残基のいずれかを表し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記アミノ酸配列が、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの細胞質‐膜貫通‐ステム領域(CTS)を、他のゴルジ局在性タンパク質のCTSで置き換える、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項73】
前記CTSが、哺乳動物ゴルジ局在性タンパク質に由来する、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記CTSが、哺乳動物シアリルトランスフェラーゼに由来する、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記CTSが、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼに由来する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記CTSが、植物のゴルジ局在性タンパク質に由来する、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記の植物又は植物細胞が、植物又は植物細胞で発現できる少なくとも1種類の選択マーカーをコードする核酸分子をさらに含んでなる、請求項66〜76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記の植物又は植物細胞が、ニコチアナ亜種であるか、又はそれに由来する、請求項66〜77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記核酸分子を、マイクロインジェクション、PEG形質転換、アグロバクテリウム媒介形質転換、エレクトロポレーション、バリスティック・パーティクル・ボンバードメント、直接遺伝子導入、リポソーム融合、植物体への形質転換、リン酸カルシウム沈殿、アグロインフィルトレーション、又はウイルス感染によって挿入する、請求項66〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)と少なくとも85%同一である核酸によってコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項81】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)と少なくとも90%同一である核酸によってコードされる、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)と少なくとも95%同一である核酸によってコードされる、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ核酸配列(配列番号13)と少なくとも98%同一である核酸によってコードされる、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)のそれと少なくとも85%同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項85】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)のそれと少なくとも90%同一である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)のそれと少なくとも95%同一である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)のそれと少なくとも98%同一である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列が、哺乳動物延長部をさらに含んでなる、請求項84〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記哺乳動物延長部が、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSを、他のゴルジ局在性タンパク質由来のCTSで置き換え、そして、ここで、前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と少なくとも85%同一である、請求項84〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と少なくとも90%同一である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と少なくとも95%同一である、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
前記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列が、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ・アミノ酸配列(配列番号14)と少なくとも98%同一である、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
前記の他のゴルジ局在性タンパク質由来のCTSが、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼからのCTSである、請求項90〜93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記の植物又は植物細胞が、β1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンを含んでなる糖タンパク質を産生する、請求項80〜94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記のβ1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量が、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の2倍である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記のβ1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量が、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の5倍である、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記のβ1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量が、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の10倍である、請求項95に記載の方法。
【請求項99】
前記のβ1,2-キシロース及びα1,3-フコース残基の両方を欠くハイブリッド型のN結合型グリカンの産生量が、野生型ヒトβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを発現する植物細胞又は植物によって産生される量の50倍である、請求項95に記載の方法。
【請求項100】
前記の植物又は植物細胞が、少なくとも1つのガラクトシル化GlcNAc残基を含んでなる二分岐のN-グリカンを含んでなる糖タンパク質を産生する、請求項95〜99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
請求項66〜100のいずれか1項に記載の方法によって製造した植物又はそのような植物の一部。
【請求項102】
前記植物が、種子、胚、カルス組織、葉、根、新芽、花粉、及び小胞子から成る群から選択される植物の一部である、請求項101の植物。
【請求項103】
請求項66〜100のいずれか1項に記載の方法によって製造した植物細胞。
【請求項104】
前記植物細胞を、浮遊培養で培養する、請求項103に記載の植物細胞。
【請求項105】
ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(配列番号14)のアミノ酸配列、及びそのN末端に延長部を含んでなるポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、上記延長部は、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列であり、ここで、上記N末端アミノ酸配列は、最初の10個のN末端アミノ酸の中に少なくとも配列[K/R]-X-[K/R]を含んでなり、ここで、[K/R]はリジン又はアルギニン残基のいずれかを表し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい前記核酸。
【請求項106】
前記アミノ酸配列が、MRLREPLLSGSAA(配列番号21)である、請求項105に記載の核酸。
【請求項107】
前記アミノ酸配列が、配列番号15を含んでなる、請求項105に記載の核酸。
【請求項108】
ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(配列番号14)のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、上記のゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSを、他のゴルジ局在性タンパク質のCTSで置き換える前記核酸。
【請求項109】
前記CTSが、哺乳動物ゴルジ局在性タンパク質に由来する、請求項108に記載の核酸。
【請求項110】
前記CTSが、哺乳動物シアリルトランスフェラーゼに由来する、請求項109に記載の核酸。
【請求項111】
前記CTSが、ラットα2,6-シアリルトランスフェラーゼに由来する、請求項110に記載の核酸。
【請求項112】
前記アミノ酸配列が、配列番号18を含んでなる、請求項111に記載の核酸。
【請求項113】
前記CTSが、植物のゴルジ局在性タンパク質に由来する、請求項108に記載の核酸。
【請求項114】
非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、上記の非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素的に活性なドメインのアミノ酸配列は、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(配列番号14)のそれ、及びN末端の延長部と少なくとも90%同一であり、ここで、上記延長部は、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列であり、ここで、上記N末端アミノ酸配列は、最初の10個のN末端アミノ酸の中に少なくとも配列[K/R]-X-[K/R]を含んでなり、ここで、[K/R]はリジン又はアルギニン残基のいずれかを表し、且つ、Xはどのアミノ酸であってもよい前記核酸。
【請求項115】
前記の配列同一性が、少なくとも95%である、請求項114に記載の核酸。
【請求項116】
前記の配列同一性が、少なくとも98%である、請求項114に記載の核酸。
【請求項117】
請求項105〜116のいずれか1項に記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項118】
前記核酸分子が、真核又は原核細胞におけるその核酸分子の転写に十分な調節因子に連結されている、請求項117に記載のベクター。
【請求項119】
植物細胞における転写に十分な異種調節因子に連結されている請求項105〜116のいずれか1項に記載の核酸分子を含んでなるか、あるいは、請求項117又は118に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項120】
浮遊培養で培養される前記植物細胞が、N.タバクム BY2、ダウクス・カロタ、及びアラビドプシス・タリアナ細胞懸濁液から成る群から選択される、請求項104の植物細胞。
【請求項121】
前記植物細胞が、ブリオフェタエア、フィスコミトレラ・パテンス、フナリア・ヒグロメトリカ、及びセラトドン・プルプロイスから成る群から選択されるコケの一部である、請求項104の植物細胞。
【請求項122】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼである、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項123】
前記ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を用いてN末端にて延長されている、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記ニワトリβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSを、他のゴルジ局在性タンパク質のCTSで置き換える、請求項122に記載の方法。
【請求項125】
前記非哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼである、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼが、哺乳動物β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1のN末端アミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を用いてN末端にて延長されている、請求項122に記載の方法。
【請求項127】
前記ゼブラフィッシュβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのCTSを、他のゴルジ局在性タンパク質のCTSで置き換える、請求項122に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−524452(P2010−524452A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503614(P2010−503614)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000944
【国際公開番号】WO2008/125972
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(510090760)
【Fターム(参考)】