説明

非対称アジン化合物の製造方法

【課題】簡便な操作で、高純度な非対称アジン化合物を、工業的に有利に製造する方法を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表されるアジン化合物(I)と、式(II)で表されるアジン化合物(II)あるいはアジン化合物(III)の混合物を、炭素数1〜15のアルコールで洗浄する工程を含むことにより、純度の高い非対称アジン化合物(I)が得られる。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶化合物の製造中間体等として有用な非対称アジン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の非対称アジン化合物は液晶相を示す温度範囲が広く、化学的に比較的安定で安価に製造できる等の特性を有する優れた液晶材料である。
【0003】
非対称アジン化合物の製造方法としては、ヒドラジン1水和物に、種類の異なるベンズアルデヒド化合物を順次反応させる方法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、この文献に記載の非対称アジン化合物の製造方法には、対称アジン化合物への不均化が生じ易く、目的とする非対称アジン化合物を収率よく得ることができないという問題があった。
【0004】
また、不均化反応は酸によって促進されることが知られており、水酸基やカルボキシル基等の酸性基を有する非対称アジン化合物を製造する場合には、より一層不均化反応が進行しやくなるため、対称アジン化合物の生成量が増加して、目的とする非対称アジン化合物の収率がさらに低下するという問題もあった。
【0005】
このような問題を解決すべく、特許文献2には、ヒドラジン1水和物にベンズアルデヒド化合物を反応させてヒドラゾン化合物を得た後、アミン類の存在下に、種類の異なるベンズアルデヒド化合物を反応させる非対称アジン化合物の製造方法が提案されている。この方法によれば、対称アジン化合物の副生を少なくして、高純度の非対称アジン化合物を得ることができるとされる。
【0006】
しかしながら、特許文献2の実施例では、反応混合物をカラムクロマトグラフィーにて精製した後、再結晶を2回繰り返して目的とする非対称アジン化合物を得ており、得られる目的物の純度は高いものの、操作が煩雑で、収率は必ずしも高いものとは言えなかった。
【0007】
その他、水酸基やカルボキシル基等の酸性基を有する非対称アジン化合物を製造する方法として、水酸基やカルボキシル基等を保護基で保護したベンズアルデヒド化合物を用いることも考えられるが、反応選択性は向上するものの、コスト的には不利となる。
よって、より簡便な方法で高い純度の非対称アジン化合物を、工業的に有利に製造する方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開昭54−87688号公報
【特許文献2】特開平10−59919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、簡便な操作で、高純度な非対称アジン化合物を、工業的に有利に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ヒドラジン1水和物に、種類の異なるベンズアルデヒド化合物を順次反応させることにより、非対称アジン化合物と対称アジン化合物を含有する反応混合物を得、この反応混合物を特定のアルコール溶剤で洗浄すると、対称アジン化合物を選択的に除去でき、その結果、純度の高い非対称アジン化合物が収率よく得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、下記(1)〜(5)の非対称アジン化合物(アジン化合物(I))の製造方法が提供される。
(1)式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、X、X、X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−N(R)(R)、又は−O−C(=O)−N(R)(R)を表す。ここで、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。R、Rがアルキル基又はアルケニル基である場合、当該アルキル基、アルケニル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜10のアルケニルオキシカルボニル基、アクリロイルオキシカルボニル基、又はメタクリロイルオキシカルボニル基を表す。
ただし、下記式(X)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)で表される基と、式(XI)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)で表される基は同一ではない。〕で表されるアジン化合物(I)、
式(II)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)
で表されるアジン化合物(II)、及び、式(III)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、X〜X及びRは式(I)の場合と同じ意味を表す。)で表されるアジン化合物(III)を含有する混合物を、炭素数1〜15のアルコールで洗浄する工程を含むことを特徴とするアジン化合物(I)の製造方法。
【0021】
(2)前記アジン化合物(I)、アジン化合物(II)及びアジン化合物(III)がそれぞれ、式(I)〜(III)中、X、X、X、X、X、X、X及びXが水素原子であり、Xがハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基、又は−OR(Rは前記と同じ意味を表す。)である化合物であることを特徴とする前記(1)に記載のアジン化合物(I)の製造方法。
【0022】
(3)前記アジン化合物(I)、アジン化合物(II)及びアジン化合物(III)がそれぞれ、式(I)〜(III)中、X、X、X、X、X、X、X及びXが水素原子であり、Xがフッ素原子であり、Rが水酸基である化合物であることを特徴とする前記(1)に記載のアジン化合物(I)の製造方法。
【0023】
(4)前記アルコールが、炭素数1〜3のアルコールであることを特徴とする前記(1)に記載のアジン化合物(I)の製造方法。
(5)前記アジン化合物(I)、アジン化合物(II)及びアジン化合物(III)を含有する混合物が、ヒドラジンと、式(1)
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)
で表されるアルデヒド化合物(1)を反応させ、次いで、式(2)
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、X〜X及びRは式(I)の場合と同じ意味を表す。)
で表されるアルデヒド化合物(2)(ただし、アルデヒド化合物(1)とアルデヒド化合物(2)は同一ではない。)を反応させて得られる反応混合物であることを特徴とする前記(1)に記載のアジン化合物(I)の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明の製造方法によれば、反応終了後、カラム精製、再結晶等の煩雑な操作を要することなく、簡便な操作により、高純度の非対称アジン化合物(アジン化合物(I))を収率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアジン化合物(I)の製造方法は、前記式(I)で表されるアジン化合物(アジン化合物(I))、式(II)で表されるアジン化合物(アジン化合物(II))、及び式(III)で表されるアジン化合物(アジン化合物(III))を含有する混合物を、炭素数1〜15のアルコールで洗浄する工程を含むことを特徴とする。
【0030】
洗浄に用いる炭素数1〜15のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−オクタノール等が挙げられる。これらの中でも、本発明においては、炭素数1〜3のアルコールを用いることが好ましい。用いることが好ましい炭素数1〜3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが挙げられる。
【0031】
アルコールの使用量は、混合物1重量部に対して、通常0.5〜10重量部、好ましくは1.5〜3重量部である。
【0032】
前記式(I)、式(II)、及び式(III)において、X〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−N(R)(R)、又は−O−C(=O)−N(R)(R)を表す。
【0033】
〜Xのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
〜Xの置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0034】
〜Xの置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基等が挙げられる。
【0035】
前記置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。
【0036】
、Rはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。R、Rの、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基としては、前記X〜Xで例示したのと同様のものが挙げられる。
【0037】
、Rがアルキル基又はアルケニル基である場合、当該アルキル基、アルケニル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。
【0038】
、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。R、Rの炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
【0039】
は、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜10のアルケニルオキシカルボニル基、アクリロイルオキシカルボニル基、又はメタクリロイルオキシカルボニル基を表す。
【0040】
の炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0041】
の炭素数2〜10のアルケニルオキシカルボニル基としては、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、1−プロペニルオキシカルボニル基、イソプロペニルオキシカルボニル基、1−ブテニルオキシカルボニル基、1−ペンテニルオキシカルボニル基、3−ペンテニルオキシカルボニル基、1−ヘキセニルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0042】
ただし、前記式(X)で表される基と、前記式(XI)で表される基は同一ではない。
【0043】
これらの中でも、本発明においては、アジン化合物(I)、アジン化合物(II)、及びアジン化合物(III)がそれぞれ、式(I)〜式(III)中、X、X、X〜Xが水素原子であり、Xがハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基、又は−OR(Rは前記と同じ意味を表す。)の化合物であるのが好ましく、X、X、X〜Xが水素原子であり、Xがフッ素原子であり、Rが水酸基の化合物であるのがより好ましい。
【0044】
本発明においてアジン化合物(I)の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0045】
【化8】

【0046】
本発明においては、アジン化合物(I)、アジン化合物(II)及びアジン化合物(III)を含有する混合物は、ヒドラジンと、式(1)
【0047】
【化9】

【0048】
(式中、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)で表されるアルデヒド化合物(1)を反応させ、次いで、式(2)
【0049】
【化10】

【0050】
(式中、X〜X及びRは式(I)の場合と同じ意味を表す。)で表されるアルデヒド化合物(2)を反応させて得られる反応混合物であるのが好ましい。但し、アルデヒド化合物(1)とアルデヒド化合物(2)は同一ではない。
【0051】
前記式(I)〜式(III)のアジン化合物の混合物の得るための製造方法、及び式(I)のアジン化合物の製造方法について、以下に詳細に述べる。
【0052】
まず、エタノール等の溶媒中、過剰のヒドラジン(ヒドラジン1水和物)と、アルデヒド化合物(1)とを反応させることによって、式(IV)
【0053】
【化11】

【0054】
(式中、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)で表されるヒドラゾン化合物(IV)を含む反応液を得る。
ヒドラジンとアルデヒド化合物(1)の仕込み量は、アルデヒド化合物(1)1モルに対して、ヒドラジンを通常1〜10モル、好ましくは2〜5モルである。
反応温度は、通常0℃から溶媒の還流温度、好ましくは10〜30℃である。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0055】
反応終了後は、反応液にジクロロメタン、クロロホルム等の水に不溶の溶媒を加え、飽和重曹水、水等で洗浄して過剰のヒドラジンを除去する。
【0056】
次いで、ヒドラゾン化合物(IV)を単離することなく、反応混合物にアルデヒド化合物(2)を加えて反応させる。
ヒドラゾン化合物とアルデヒド化合物(2)の仕込み量は、ヒドラゾン化合物(IV)1モルに対して、アルデヒド化合物(1)を通常1.0〜1.5モル、好ましくは1.0〜1.2モルである。
【0057】
反応は、アミン類存在下で行うのが好ましい。用いるアミン類としては、2級アミン又は3級アミンが好ましく、3級アミンが特に好ましい。3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の芳香族3級アミン;ピリジン等の環状3級アミン類;等が挙げられる。これらの中でも、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンが特に好ましい。
【0058】
アミン類の使用量は、アルデヒド化合物(1)1モルに対して、通常0.01〜20モル、好ましくは0.1〜10モルである。
アミン類は、ヒドラゾン化合物(IV)とアルデヒド化合物(2)とを反応させる際に系内に添加しても、ヒドラジンとアルデヒド化合物(1)との反応の後処理の段階で加えてもよいが、ヒドラゾン化合物(IV)とアルデヒド化合物(2)とを反応させる際に系内に添加することが好ましい。
【0059】
反応温度は、通常0℃から溶媒の還流温度、好ましくは10〜30℃である。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常15分から24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0060】
反応終了後は、析出した結晶を濾取し、必要に応じてn−ヘキサン等で洗浄した後、後述するように炭素数1〜15のアルコールでの洗浄操作を行うことにより、目的とするアジン化合物(I)を純度よく得ることができる。
【0061】
アジン化合物(I)、アジン化合物(II)及びアジン化合物(III)を含有する混合物を炭素数1〜15のアルコールで洗浄する方法としては、前記混合物に所定量のアルコールを加え、全容を撹拌した後、ろ過する方法が挙げられる。
【0062】
撹拌温度、撹拌時間、洗浄回数等は、用いるアジン化合物の種類、用いる炭素数1〜15のアルコールの種類、反応規模等によるが、目的とするアジン化合物(I)を高純度かつ高収率で得られるように、適宜設定すればよい。
すなわち、アジン化合物(II)、アジン化合物(III)のみを最も選択的に洗浄除去できるように、用いるアルコールの種類や量等に合わせて、撹拌温度、撹拌時間、洗浄回数を、適宜組み合わせて設定すればよい。
【0063】
撹拌温度は、通常5〜60℃、好ましくは15〜50℃、より好ましくは20〜45℃である。撹拌温度があまりに低いとアジン化合物(II)、アジン化合物(III)を選択的に洗浄除去することができずアジン化合物(I)の含量割合を上げられない。撹拌温度があまりに高いとアジン化合物(I)をも洗浄除去してしまい収率を低下させるおそれがある。
撹拌時間は、通常1分から1時間、好ましくは5〜40分程度である。
【0064】
洗浄回数は、通常1〜3回、好ましくは1回か2回である。洗浄回数が多いと操作が煩雑となり、また、目的とするアジン化合物(I)までをも洗浄除去してしまい収率を低下させるおそれがある。
【0065】
撹拌終了後は、吸引ろ過等により結晶をろ別し、必要に応じてヘキサン等の溶媒で洗浄し、溶媒を乾燥することによって目的物を得ることができる。
【0066】
アジン化合物(I)、アジン化合物(II)、アジン化合物(III)の含有割合は、高速液体クロマトグラフィーで分析することができる。
【0067】
本発明の製造方法によれば、反応終了後、カラム精製や再結晶等の煩雑な操作を要することなく、簡便な操作により、高純度の非対称アジン化合物を収率よく得ることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
なお、以下においては、1−(4−フルオロベンジリデン)−2−(4’−ヒドロキシベンジリデン)ヒドラゾンをアジン化合物(I−1)と、1,2−ビス(4−フルオロベンジリデン)ヒドラゾンをアジン化合物(II−1)と、及び1,2−ビス(4−ヒドロキシベンジリデン)ヒドラゾンをアジン化合物(III−1)という。
【0069】
実施例1 アジン化合物(I−1)の合成(その1)
【0070】
【化12】

【0071】
ヒドラジン1水和物1014gをエタノール1024gに溶解させて均一な溶液とした。この溶液に、窒素気流下、4−フルオロベンズアルデヒド(1−1)838.3gを室温(23℃)で滴下し、滴下終了後、更に室温(23℃)で30分間撹拌した。反応混合物に、クロロホルム2095g及び飽和重曹水1255gを加えて抽出操作を行い、有機層を分取した。
【0072】
有機層を飽和重曹水1255gで洗浄後、トリエチルアミン83.8gを添加し、攪拌しながら、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(2−1)824.9gを添加し、添加終了後、更に室温(23℃)で2時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、n−ヘキサン660gで洗浄することで、淡黄色固体を得た。
【0073】
この淡黄色固体にエタノール3353.3gを加え、室温(23℃)下で20分間攪拌したのち、濾過した。濾取した固体をn−ヘキサン660gで洗浄することにより、化合物(I−1)を含む固体を936g得た。収率は57.2%であった。
【0074】
得られた固体を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、アジン化合物(II−1)、アジン化合物(I−1)、及びアジン化合物(III−1)の生成比は、アジン化合物(II−1):アジン化合物(I−1):アジン化合物(III−1)=2.8:92.9:4.3であった。
【0075】
実施例2 アジン化合物(I−1)の合成(その2)
実施例1において、エタノール3353.3gを加えて室温(23℃)下で20分間攪拌する代わりに、エタノール3353.3gを加えて40℃で20分間攪拌した後濾過し、濾取した固体にエタノール3353.3gを加えて40℃にて20分間攪拌した以外は、実施例1と同様の操作を行い、アジン化合物(I−1)を含む固体739gを得た。収率は45.2%であった。
【0076】
得られた固体を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、アジン化合物(II−1)、アジン化合物(I−1)、及びアジン化合物(III−1)の生成比は、アジン化合物(II−1):アジン化合物(I−1):アジン化合物(III−1)=1.8:97.2:1.0であった。
【0077】
比較例1
実施例1において、エタノールを加えて洗浄を行う前の固体(収率71.5%)を、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、化合物アジン(II−1)、アジン化合物(I−1)、及びアジン化合物(III−1)の生成比は、アジン化合物(II−1):アジン化合物(I−1):化合物(III−1)=3.7:87.3:9.0であった。
実施例1、2及び比較例1の結果を、第1表にまとめて記載した。
【0078】
【表1】

【0079】
エタノール洗浄を行わない比較例1に対して、23℃のエタノールで1回洗浄した実施例1及び40℃のエタノールで2回洗浄した実施例2は所望の非対称アジン化合物が高純度で得られた。また、洗浄回数が多い実施例2が収率は低くなるものの、所望の非対称アジン化合物が実施例1に比較して、より高純度で得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、X、X、X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−N(R)(R)、又はO−C(=O)−N(R)(R)を表す。ここで、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。R、Rがアルキル基又はアルケニル基である場合、当該アルキル基、アルケニル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又はC(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜10のアルケニルオキシカルボニル基、アクリロイルオキシカルボニル基、又はメタクリロイルオキシカルボニル基を表す。
ただし、下記式(X)
【化2】

(式中、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)で表される基と、式(XI)
【化3】

(式中、R、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)で表される基は同一ではない。〕で表されるアジン化合物(I)、
式(I1)
【化4】

(式中、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)
で表されるアジン化合物(II)、及び、式(III)
【化5】

(式中、X〜X及びRは式(I)の場合と同じ意味を表す。)
で表されるアジン化合物(III)を含有する混合物を、
炭素数1〜15のアルコールで洗浄する工程を含むことを特徴とするアジン化合物(I)の製造方法。
【請求項2】
前記アジン化合物(I)、アジン化合物(II)及びアジン化合物(III)がそれぞれ、式(I)〜(III)中、X、X、X、X、X、X、X及びXが水素原子であり、Xがハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルケニル基、又は−OR(Rは式(I)の場合と同じ意味を表す。)である化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアジン化合物(I)の製造方法。
【請求項3】
前記アジン化合物(I)、アジン化合物(II)及びアジン化合物(III)がそれぞれ、式(I)〜(III)中、X、X、X、X、X、X、X及びXが水素原子であり、Xがフッ素原子であり、Rが水酸基である化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアジン化合物(I)の製造方法。
【請求項4】
前記アルコールが、炭素数1〜3のアルコールであることを特徴とする請求項1に記載のアジン化合物(I)の製造方法。
【請求項5】
前記アジン化合物(I)、アジン化合物(II)及びアジン化合物(III)を含有する混合物が、ヒドラジンと、式(1)
【化6】

(式中、X〜Xは式(I)の場合と同じ意味を表す。)
で表されるアルデヒド化合物(1)を反応させ、次いで、式(2)
【化7】

(式中、X〜X及びRは式(I)の場合と同じ意味を表す。)
で表されるアルデヒド化合物(2)(ただし、アルデヒド化合物(1)とアルデヒド化合物(2)は同一ではない。)を反応させて得られる反応混合物であることを特徴とする請求項1に記載のアジン化合物(I)の製造方法。