説明

非対称アリールアミン化合物を含む画像形成部材及び非対称アリールアミン化合物の製造方法

【課題】本発明の目的は、従来から用いられている正孔輸送分子で現在達成されている正孔移動度より速い移動度を持つ感光体が得られるような新たな分子の発見と、同物質の合成方法を提供することである。
【解決手段】本発明の非対称アリールアミン化合物を含む画像形成部材は、基材と、基材上に配置した電荷発生層と、電荷発生層上に配置した電荷輸送層とを含み、電荷輸送層が、銅触媒存在下で、第1のアリールアミンをブロモヨードアリールまたはクロロヨードアリール化合物と縮合させて、置換中間体を生成する工程と、パラジウム触媒存在下で、置換中間体に第2のアリールアミンを加え、反応させる工程と、を含む方法によって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は一般に、多層型感光体デバイスなどの画像形成部材に組み込まれる正孔輸送分子(HTM)として有用な新規化合物と、同物質を製造するための改良された化学的方法に関する。より詳細には、本発明の実施の形態は、感光体の“正孔移動度”、あるいはその電荷輸送層(CTL)を横断する電荷の移動性を高めるために用いられる非対称アリールアミン化合物に関する。更に本発明の実施の形態は、ウルマン反応とブッフバルト反応とを直列に組み合わせて用いた、これらのアリールアミン化合物を合成するための改良された化学的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層型感光体に用いられる光発生層は、例えば、塗膜を形成するポリマー系バインダ中に分散させた無機光導電性粒子または有機光導電性粒子を含むことができる。無機または有機光導電性材料は、連続した均質な光発生層として形成される。
【0003】
光が当たると、発生した電荷は感光体を通って移動する。電荷の移動は電荷輸送層によって促進される。電荷輸送層を通過する電荷の速度は、どのくらい速くこの装置が稼働できるかに直接影響する。装置速度(ppm)を所望の速さまで上げるには、感光体の電荷移動度も大きくしなければならない。すなわち、これらの層を通る電荷の輸送性を上げれば感光体性能は向上する。
【0004】
移動度を高めるため、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンなどの従来の正孔輸送分子が一般に電荷輸送層に加えられる。しかし、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンなどの従来の分子では、良好な移動度が得られるとはいえ、より高速の装置に十分な高い移動度を得ることができない。電子写真の進歩に伴い、更に装置速度を上げ、また現存する感光体の正孔移動度を向上させる装置的方法がより必要になってきている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,121,006号明細書
【特許文献2】米国特許第5,709,974号明細書
【特許文献3】米国特許第5,891,594号明細書
【特許文献4】米国特許第4,265,990号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/111588号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来から用いられている正孔輸送分子で現在達成されている正孔移動度より速い移動度を持つ感光体が得られるような新たな分子の発見と、同物質の合成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態では、基材と、基材上に配置した電荷発生層と、電荷発生層上に配置した電荷輸送層とを含み、電荷輸送層が、銅触媒存在下で、第1のアリールアミンをブロモヨードアリールまたはクロロヨードアリール化合物と縮合させて、置換中間体を生成する工程と、パラジウム触媒存在下で、置換中間体に第2のアリールアミンを加え、反応させる工程と、を含む方法によって得られた非対称アリールアミン化合物を含む画像形成部材が挙げられている。
【0008】
もう一つの実施の形態では、銅触媒存在下で、第1のアリールアミンをブロモヨードアリールまたはクロロヨードアリール化合物と縮合させて、置換中間体を生成する工程と、パラジウム触媒存在下で、置換中間体に第2のアリールアミンを加え、反応させる工程と、を含む方法によって得られた、非対称アリールアミン化合物の製造方法を提示する。更に別の実施の形態では、上記の方法で得られた生成物を提示する。
【0009】
別の実施の形態では、銅触媒存在下で、第1のアリールアミンをブロモヨードアリールまたはクロロヨードアリール化合物と縮合させて、置換中間体を生成する工程と、パラジウム触媒存在下で、置換中間体と第2のアリールアミンとを反応させる工程と、を含む方法によって得られた、非対称アリールアミン化合物の製造方法で得られた生成物が挙げられている。このとき、ウルマン縮合反応とブッフバルト反応とを直列に組み合わせて行い、非対称アリールアミン化合物は、テトラ(アリール)ビフェニルジアミン系またはテトラ(アリール)ターフェニルジアミン系分子である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
アリールアミン化合物の非対称性は、一方の端を最小限に置換し、もう一方の端を柔軟性のない(rigid)および/または芳香族基で置換することによって生じる。最小限に置換された末端は分子を柔軟にし、もう一方の端は分子相互作用を向上させる。この非対称性により、正孔輸送分子は、柔軟性のない端によって移動度が良くなるだけでなく、最小限に置換された端によって被覆性も良くなる。
【0011】
更に、実施の形態には、2つの炭素−窒素結合を形成するため、ウルマン縮合反応とブッフバルト反応とを直列に組み合わせた方法で製造した生成物も含まれる。ブッフバルト化学反応では、このような結合の形成に、一般にパラジウム系触媒が広く使えることが認められている。本明細書は、この方法を非対称アリールアミン化合物の効率的な製造に応用するものである。より詳細には、以下に示すように、銅触媒存在下での、アリールアミンとブロモヨードアリールまたはクロロヨードアリール前駆物質とのウルマン縮合によって臭素または塩素置換中間体を生成し、次に、パラジウムの結合した(ligated)触媒の存在下で、異なるアリールアミンを臭素または塩素置換中間体と反応させる、ブッフバルト反応を行う。
【0012】
ウルマン反応:
【化1】

【0013】
ブッフバルト反応:
【化2】

【0014】
この反応スキーム中、アリールアミンは、所望の最終生成物に応じて、適当であればどのようなアリールアミンであっても良い。つまり、例えば、上記の反応スキームにおいて、Arは、公知の置換または非置換芳香族成分、あるいは2〜約15の共役結合または縮合ベンゼン環を含む置換または非置換アリール基のいずれでも良く、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルなどである(但し、これらに限定しない)。Ar、Ar、Ar、およびAr上の置換基は、水素、ハロゲン、1〜約20の炭素原子を含むアルキル基、1〜約20の炭素原子を含む炭化水素ラジカル、必要に応じて1つ以上のアルキル基で置換されたアリール基、ヘテロ原子(酸素、窒素、イオウなど)を含み、1〜約20の炭素原子を含むアルキル基、ヘテロ原子(酸素、窒素、イオウなどの)を含み、1〜約20の炭素原子を含む炭化水素ラジカル、ヘテロ原子(酸素、窒素、イオウなど)を含み、必要に応じて1つ以上のアルキル基で置換されたアリール基、等から適当に選ぶことができる。Xはブロモまたはクロロを示し、nは、0、1、2、または3などの適当な整数のいずれでも良く、AとBは異なっていても良い。
【0015】
本発明の実施の形態において、中間体は、例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノ−4−ブロモビフェニル、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノ−4−クロロビフェニル、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−4−アミノ−4−ブロモビフェニル、N,N−ビス(3−メチルフェニル)−4−アミノ−4−ブロモビフェニル、N,N−ビス(4−エチルフェニル)−4−アミノ−4−クロロビフェニル、N,N−ビス(4−n−ブチルフェニル)−4−アミノ−4’−ブロモ−p−ターフェニル、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノ−4’−ブロモ−p−ターフェニル、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−4−アミノ−4’−クロロ−p−ターフェニル、N,N−ビス(3−メチルフェニル)−4−アミノ−4’−クロロ−p−ターフェニル、N,N−ビス(フェニル)−4−アミノ−4’−ブロモ−p−ターフェニル、等のいずれでも良い。ここに挙げた置換中間体は一部である。
【0016】
直列型合成手順によって、感光体で使用するための、電子写真品質のテトラ(アリール)ビフェニルジアミン系またはテトラ(アリール)ターフェニルジアミン系正孔輸送分子を選択的に製造することができる。この合成法は、バッチ式または連続式で行うことができ、従来の正孔輸送分子製造法より多くの点で優れている。バッチ式では、次の試料との反応を始める前に、異なる開始材料の試料をそれぞれ生成物が得られるまで反応させる。連続式では、反応を開始した後であっても開始材料を連続的に反応に加え、生成物を生成させながら反応を進めることができる。いずれの場合も、新たな直列型合成手順によって、以前よりも少ない工程と低いコストで所望とする非対称アリールアミン化合物を製造できる。更にこの手順では、より高い収率と純度で非対称アリールアミン化合物が製造可能である。また、本件に記載のウルマン−ブッフバルト合成手順によって製造された新たな正孔輸送分子は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンなどの従来から用いられている正孔輸送分子で現在達成できるよりも感光体の正孔移動度を速くすることができる。本件に記載の非対称アリールアミン化合物を用いた感光体の少なくとも1つに関する電気的評価では、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンを用いた感光体の5倍の速さの移動度が示された。
【0017】
本件の更なる実施の形態によれば、一般的に、少なくとも基材層と、基材上に配置された画像形成層と、必要に応じて画像形成層上に配置されたオーバーコート層とを含む電子写真用画像形成部材が提示される。この画像形成部材は、画像形成層として電荷輸送層と電荷発生層とを含んでいる。画像形成部材は、電子写真の画像形成工程で使用することができる。この工程ではまず、導電層上に光導電性絶縁層を含む電子写真用プレート、ドラム、ベルトなど(画像形成部材または感光体)の表面を、均一に静電気的に荷電する。次にこの画像形成部材を光などの活性化電磁放射のパターンに露光する。この放射は光導電性絶縁層の照射された部分の電荷を選択的に消失させ、その跡に静電潜像を残す。次に、光導電性絶縁層の表面に反対極性に荷電した粒子を置くことで、この静電潜像を現像して可視画像を生成する。得られた可視画像を、次に、画像形成部材から直接的または間接的に(転写部材または他の部材などにより)、透明体や紙などの被印刷体へ転写する。この画像形成工程を、再使用可能な画像形成部材を用いて何度も繰り返す。
【0018】
感光体を用いた電子写真用画像形成装置などの典型的な静電写真複写装置では、コピーすべき原画の光画像を静電潜像の形で画像形成部材上に記録し、続いて現像剤混合物を塗布してこの潜像を可視像化する。その中にトナー粒子を含む現像剤を静電潜像に接触させて、電荷保持面を持つ静電写真用画像形成部材上の画像を現像する。現像されたトナー画像は、次に、転写部材を経て画像を受け取る、紙などのコピー用被印刷体へ転写することができる。
【0019】
あるいは現像された画像を、転写部材を経てベルトやドラムなどの別の中間転写装置へ転写しても良い。次にこの画像を、別の転写部材によって紙へ転写することができる。トナー粒子は熱および/または圧力によって紙へ定着または融着する。最終的に画像を受ける媒体は紙に限らない。布、ポリマーまたは金属の導電性または非導電性シートなど、様々な被印刷体が可能である。また、シートや曲面など様々な形状にも印刷できる。画像形成部材へ転写した後のトナーは、熱および/または圧力下、高圧ローラや定着要素で定着することができる。
【0020】
図1に画像形成部材の実施の形態を図示する。基材32は必要に応じて導電層30を備えている。更に、導電層30の上に必要に応じて下引き層34を、また下引き層34の上に必要に応じて接着層36を塗布しても良い。電荷発生層38は接着層36と電荷輸送層40との間に図示されている。必要に応じて設ける接地ストリップ層41は、電荷発生層38と電荷輸送層40を導電層30に適切に接触させる。画像形成部材を好ましく平らにするため、基材32の電気的活性層の反対側に抗カール裏塗り層33を塗布する。画像形成部材の他の層として、例えば、摩耗や摩損を防ぐため、電荷輸送層40の直上に必要に応じてオーバーコート層42を加えても良い。
【0021】
基材32上の導電性接地面30は一般に薄い金属の層、例えば、厚さ10nmのチタンコーティングであり、これは真空蒸着やスパッタリング法により基材上に配置することができる。34、36、38、40、および42の層は、基材32の導電性接地面30の面の上に、1種類以上の溶媒を含む溶液の湿潤コーティング層としてそれぞれ、また順次堆積させる。それぞれの層は、次のコーティング層を堆積する前に完全に乾燥させる。更に、画像形成部材の曲がりを調整して整えるため、基材32の反対側に抗カール裏塗り層33も溶液塗布する。
【0022】
本件で図示した実施の形態は、基材と、基材上に配置した電荷発生層と、電荷発生層上に配置した少なくとも1つの電荷輸送層とを含む画像形成部材である。電荷輸送層は、ウルマン縮合とそれに続くブッフバルト反応とから成る直列型合成によって得られた非対称アリールアミン化合物を含んでいる。ある実施の形態において、非対称アリールアミン化合物は、テトラ(アリール)ビフェニルジアミン系アリールアミン分子である。更に別の実施の形態では、アリールアミン化合物は、テトラ(アリール)ターフェニルジアミン系アリールアミン分子である。
【0023】
実施の形態において、電荷輸送層は、次の構造を持つ化合物を含んでいる。
【化3】

式中、Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ、約6〜約30の炭素を含む芳香族炭化水素基、あるいは、窒素、酸素、イオウ、またはケイ素原子を含むヘテロアリール基であり、Arは、約6〜約30の炭素を含む二価芳香族炭化水素基、あるいは、窒素、酸素、イオウ、またはケイ素原子を含むヘテロアリーレン基であり、RおよびRの少なくとも1つは、長さに0〜2の炭素を含むアルキル基またはヘテロアルキル基を含み、RおよびRの少なくとも1つは、長さに4以上の炭素を含むアルキル基またはヘテロアルキル基を含み、x、y、j、およびkは、0〜5の整数である。
【0024】
一部の実施の形態においては、Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フルオレニル、およびアントリルから成る群より選ばれる。更に別の実施の形態では、Arは次の構造式で示されるもの、およびそれらの混合物から成る群より選ばれる。
【化4】

式中、Rは、水素原子または1〜約12の炭素を含む炭化水素基であり、R’は、1〜約12の炭素を含む炭化水素基であり、nは1〜約6の整数である。
【0025】
別の実施の形態では、Ar、Ar、Ar、およびArは、フェニル、ビフェニル、またはナフチル基より選ばれ、Arは、ビフェニルまたはターフェニル基であり、RおよびRは、水素、メチル、またはエチル基であり、RおよびRは、ブチル、ペンチル、またはヘキシル基であり、x、y、j、およびkは、0〜3である。
【0026】
更に別の実施の形態では、Ar、Ar、Ar、およびArはフェニル基であり、Arはビフェニルまたはターフェニル基であり、RおよびRはメチル基であり、RおよびRはn−ブチル基であり、x、y、j、およびkは1である。
【0027】
また更に別の実施の形態では、ArおよびArはフェニル基であり、ArおよびArは、フェニル、ビフェニル、またはナフチル基であり、Arはビフェニル基であり、RおよびRは、水素またはメチル基であり、RおよびRは、水素またはブチル基であり、x、y、j、およびkは0〜2である。
【0028】
更に別の実施の形態では、Ar、Ar、Ar、およびArはフェニル基であり、Arはターフェニル基であり、RおよびRはメチル基であり、RおよびRはブチルまたはペンチル基であり、x、y、j、およびkは0〜2である。
【0029】
具体的な実施の形態において、この化合物は、N,N’−テトラ(アリール)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン系分子、または、N,N’−テトラ(アリール)−1,1’−ターフェニル−4,4’−ジアミン系分子である。実施の形態において、この化合物は、N−フェニル−N−m−トリル−N’,N’−ジ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、N−フェニル−N−ビフェニル−N’,N’−ジ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、N−フェニル−N−1−ナフタレン−N’,N’−ジ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、N−フェニル−N−2−ナフタレン−N’,N’−ジ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N−ビス(4−n−ブチルフェニル)−N’,N’−ビス(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノ−p−ターフェニル、およびそれらの混合物から成る群より選ばれる。
【0030】
一般に、電荷発生層の厚さは、他の層の厚さや電荷発生層中に含まれる光発生体材料または顔料の量など、多くの要因によって決まる。従ってこの層の厚さは、例えば、顔料の含有量が約30〜約75容量%の場合、例えば約0.05〜約5μmまたは約0.25〜約2μmとすることができる。実施の形態でのこの層の最大厚さは、主に感光性、電気的性質、および機械的考慮などの要因によって決まる。電荷発生層バインダ樹脂の含有量は適当な様々な量、例えば、約1〜約50重量%または約1〜約10重量%であり、バインダ樹脂は、ポリビニルブチラール、ポリビニルカルバゾール、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリ塩化ビニル、ポリアクリラート類およびメタクリラート類、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、フェノキシ樹脂、ポリウレタン類、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、等の数多くの公知のポリマーから選ばれる。
【0031】
画像形成部材に用いられる基材層の代表的な例は、不透明またはほぼ透明で、必要な機械的性質を備えた適当な材料から成るものである。つまり、基材は、市販のポリマーであるMYLAR、MYLAR含有チタンなどの無機または有機ポリマー系材料を含む絶縁性材料の層、酸化インジウムスズなどの半導体表面層を備えた、またはその上にアルミニウムを配置した有機または無機材料の層、あるいは、アルミニウム、アルミニウム化ポリエチレンテレフタラート、チタン化ポリエチレン、クロム、ニッケル、真鍮などの導電性材料から成るものである。基材は、可撓性、シームレス、または堅牢で、例えば、板状、円筒形ドラム、スクロール、エンドレス可撓性ベルトなど、多くの様々な形状とすることができる。ある実施の形態において、基材はシームレス可撓性ベルトの形をしている。抗カール裏塗り層は基材の裏側に塗布する。
【0032】
基材層の厚さは経済的考慮など多くの要因によって決まる。このためこの層は相当な厚さ、例えば3,000μm以上から、部材に悪影響を与えない程度に最少の厚さとすることができる。実施の形態において、この層の厚さは約75〜約300μmである。
【0033】
更に、一部の実施の形態では、基材の上に公知の下引き層などの下引き層を加えている。下引き層としては、適当なフェノール樹脂、フェノール化合物、フェノール樹脂とフェノール化合物との混合物、酸化チタン、TiO/SiOのような酸化ケイ素混合物が挙げられる。
【0034】
実施の形態において、下引き層には更にバインダ成分を加えても良い。バインダ成分の例としては、ポリアミド類、塩化ビニル類、酢酸ビニル類、フェノール樹脂、ポリウレタン類、アミノプラスト類、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリイミド類、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、アクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、メタクリル樹脂、塩化ビニリデン類、ポリビニルアセタール類、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール類、ポリエステル類、ポリビニルブチラール類、ニトロセルロース類、エチルセルロース類、カゼイン類、ゼラチン類、ポリグルタミン酸類、澱粉類、酢酸澱粉類、アミノ澱粉類、ポリアクリル酸類、ポリアクリルアミド類、ジルコニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、有機チタン化合物、シランカップリング剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる(但し、これらに限定しない)。実施の形態において、バインダ成分は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、グリコールウリル(glycoluril)−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、およびそれらの混合物から成る群より選ばれるものを含んでいる。
【0035】
実施の形態では、下引き層に必要に応じて光散乱粒子を加えることができる。様々な実施の形態において、光散乱粒子は、バインダとは異なる屈折率を持ち、約0.8μm以上の数平均粒径を持つものである。様々な実施の形態において、光散乱粒子は無定形シリカ(P−100、エスプリ・ケミカル社(Espirit Chemical Co.)より市販)である。様々な実施の形態において、光散乱粒子の含有量は下引き層の全重量の約0〜約10重量%である。
【0036】
実施の形態において、下引き層には様々な着色料を加えても良い。様々な実施の形態において、下引き層は、アゾ顔料、キノリン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、ビスベンズイミダゾール顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キノリン顔料、レーキ顔料、アゾレーキ顔料、アントラキノン顔料、オキサジン顔料、ジオキサジン顔料、トリフェニルメタン顔料、アズレニウム染料、スクアリウム(squalium)染料、ピリリウム(pyrylium)染料、トリアリル(triallyl)メタン染料、キサンテン染料、チアジン染料、およびシアニン染料など(但し、これらに限定しない)の有機顔料および有機染料を含むことができる。様々な実施の形態において、下引き層は、無定形ケイ素、無定形セレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、およびそれらの組み合わせなどの無機材料を含んでいても良い。
【0037】
実施の形態において、下引き層の厚さは約0.1〜30μmとすることができる。
【0038】
本件の光導電性画像形成部材は、実施の形態において、順に、支持基材と、下引き層と、接着層と、電荷発生層と、電荷輸送層とを含むことができる。例えば、接着層は、例えば、約75,000のMと、約4万のMとを持つポリエステルを含むことができる。
【0039】
実施の形態において、光導電性画像形成部材は更に、約7万のMと、約35,000のMとを持つポリエステルから成る接着層を含んでいる。接着層は、適当な材料、例えば適当な塗膜形成ポリマーを含むことができる。典型的な接着層材料としては、例えば、コポリエステル樹脂、ポリアリーレート類、ポリウレタン類、樹脂混合物などが挙げられる(但し、これらに限定しない)。実施の形態において、接着層被覆用溶液の調製には、適当な溶媒を用いることができる。典型的な溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、モノクロロベンゼン、およびそれらの混合物などが挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0040】
実施の形態において、電荷輸送層は電荷輸送成分とバインダとを含んでいる。電荷輸送層の厚さは約10〜約50μmとすることができる。ポリマーバインダ材料の具体例としては、ポリカーボネート類、ポリアリーレート類、アクリラートポリマー類、ビニルポリマー類、セルロースポリマー類、ポリエステル類、ポリシロキサン類、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリシクロオレフィン類、エポキシ樹脂、およびそれらのランダムまたは交互共重合体が挙げられる。実施の形態において、電気的に不活性なバインダは、例えば約2万〜約10万の分子量、より詳細には約5万〜約10万の分子量(M)を持つポリカーボネート樹脂を含むものである。ポリカーボネート類の例は、ポリ(4,4’−イソプロピリデンジフェニレン)カーボネート(別名、ビスフェノールAポリカーボネート)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリジンジフェニレン)カーボネート(別名、ビスフェノールZポリカーボネート)、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−3,3’−ジメチルジフェニル)カーボネート(別名、ビスフェノールCポリカーボネート)などである。実施の形態において、正孔輸送層などの電荷輸送層の厚さは約10〜約55μmとすることができる。実施の形態において、電気的に不活性なバインダは、約2万〜約10万、または約5万〜約10万の分子量を持つポリカーボネート樹脂からなるものが選ばれる。一般に、輸送層は、約10〜約75重量%の電荷輸送材料、または約35〜約50重量%のこの材料を含んでいる。
【0041】
実施の形態において、電荷輸送層の少なくとも1つは約1〜約7層から成るものである。例えば、 実施の形態において、少なくとも1つの電荷輸送層はトップ電荷輸送層とボトム電荷輸送層とを含み、ボトム層は、電荷発生層とトップ層との間に置かれている。
【0042】
画像形成装置10の実施の形態の概略的な構造を図2に示す。画像形成装置10には、その上に静電潜像を受けるための電荷保持面を備えた、円筒形感光体ドラムなどの画像形成部材11が取り付けられている。画像形成部材11の周囲には、画像形成部材11上の残留静電電荷を除くための固定した放射光源12と、必要に応じて、画像形成部材11上に残留するトナーを除去するためのクリーニングブレード13と、画像形成部材11を帯電させるための荷電体ローラなどの荷電要素14と、画像信号に基づいて画像形成部材11を露光するための露光レーザ光学系15と、電荷保持面に現像剤材料を塗布して画像形成部材11に現像画像を作るための現像要素16と、画像形成部材11から紙などのコピー用被印刷体18へトナー画像を転写するための転写ローラなどの転写要素17と、がこの順で配置されている。更にこの画像形成装置10は、転写要素17からコピー用被印刷体18へ転写されたトナー画像を定着するためのフューザ/定着ロールなどの定着要素19も備えている。
【0043】
露光レーザ光学系15は、デジタル処理した画像信号に基づいてレーザ光を放射するためのレーザダイオード(例えば、発振波長780nm)と、放射レーザ光を偏光するための多面鏡と、レーザ光を均一な速度と所定の大きさで伝播させるためのレンズ系とを備えている。
【実施例】
【0044】
<テトラ(アリール)ビフェニルジアミン類の調製>
<4−ブロモ−4’−ヨードビフェニル>
撹拌機と温度計とアルゴン流入口と還流冷却管とを取り付けた1リットルの3つ口丸底フラスコに、氷酢酸(500ml)と、4−ブロモビフェニル(155.2g)と、水(76ml)と、過ヨウ素酸(26.4g)と、濃硫酸(38ml)と、ヨウ素(72g)とを入れた。得られた混合物を105℃で2時間加熱した。この間にヨウ素の色はほぼ、または完全に消失した。混合物を室温まで放冷して濾過した。得られた固体をイソプロピルアルコール(500ml)に加えて沸騰するまで加熱し、放冷して得られた固体を濾過し、500mlのメタノールで洗った。固体を風乾後、減圧下(80℃/15mmHg)で乾燥した。白色固体の4−ブロモ−4’−ヨードビフェニルの収率は80%以上であった。HPLCおよび1H−NMRで構造と純度を確認した。
【0045】
<N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノ−4’−ブロモビフェニル>
撹拌機と温度計とアルゴン流入口と還流冷却管とを取り付けた500mlの3つ口丸底フラスコに、ジ−p−トリルアミン(51.7g)と、4−ブロモ−4’−ヨードビフェニル(79.9g)と、水酸化カリウムペレット(88g)と、酸化銅(I)(7.5g)と、トリデカン(25ml)と、トルエン(25 ml)とを入れ、180〜200℃で一晩加熱した。混合物を放冷して塩酸(250ml)を加え、生成した沈殿物を1時間以上撹拌した。固体を濾過して集め、トルエンに溶解して、暖めながら(80℃)Filtrol−F−24とCG−20(Al)との混合物で処理した。熱いうちに濾過して吸収剤を除き、ロータリーエバポレータにかけてトルエンを除いた。所望の化合物は、球状部間(bulb-to-bulb)蒸留(沸点約220℃、5mmHg)後、メタノールから再結晶させて精製することができる。N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノ−4’−ブロモビフェニルの収率は約50%であった。HPLCおよびH−NMRで構造と純度を確認した。
【0046】
<N−フェニル−N−m−トリル−N’,N’−ジ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン(試料1A)>
アルゴン気流中、250mlの丸底フラスコに酢酸パラジウム(65mg)とCytop−216(65mg)とを入れ、トルエン(5ml)を加えて室温で30分間撹拌した。これに、順に、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノ−4’−ブロモビフェニル(5g)と、3−メチルジフェニルアミン(2.45g)と、ナトリウム=tert−ペントキシド(1.41g)と、トルエン(20ml)とを加えた。得られた混合物を加熱して静かに一晩還流させた。この時点でHPLC分析を行い、開始物質の消失を確認した。混合物をロータリーエバポレータにかけてトルエンを除いた。乾燥粉末を2質量当量のAlと混合し、3質量当量のAlを入れておいたカラムに加えた。吸収剤床の上端に砂を加えた。ヘプタンを還流させてカラムを溶出した。放冷すると生成物が沈殿し、これを集めてイソプロパノール(約25ml)中で4時間以上沸騰させた。得られた固体を濾過によって集め、一晩乾燥させた(80℃/15mmHg)。収率は約62%であった。
【0047】
<N−フェニル−N−ビフェニル−N’,N’−ジ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン(試料1B)>
120mgの酢酸パラジウム(Pd(OAc)、分子量224.51)と、120mgのCytop−216とをトルエン(10ml)に加え、室温で1時間撹拌した。これに、順に、15mlのアニリン(d1.022、分子量93.13)と、12.5gの4−ブロモビフェニル(分子量233.10)と、7gのナトリウム=t−ペントキシド(分子量110.13)と、更に10mlのトルエンとを加えた。得られた混合物を100〜110℃で4〜6時間加熱した。混合物を室温まで冷やして20mlのトルエンで希釈し、濾過して不溶物を除き、10〜20gのCG−20(Al)を加えた。得られたスラリーを約80℃に加熱し、熱いうちに濾過した。ロータリーエバポレータにかけてトルエンを除き、残分を約150mlのイソプロパノールから再結晶させた。放冷して生じた固体を吸引濾過し、約100mlのイソプロパノールで更に洗って一晩乾燥させた(80℃/15mmHg)。収量は8.9g、純度は99%以上であった。
【0048】
アルゴン気流中、250mlの丸底フラスコに酢酸パラジウム(65mg)とCytop−216(65mg)とを入れ、トルエン(5ml)を加えて室温で30分間撹拌した。これに、順に、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノ−4’−ブロモビフェニル(5g)と、N−フェニル−4−アミノビフェニル(3.2g)と、ナトリウム=tert−ペントキシド(1.41g)と、トルエン(20ml)とを加えた。得られた混合物を加熱して静かに一晩還流させた。この時点でHPLC分析を行い、開始物質の消失を確認した。混合物をロータリーエバポレータにかけてトルエンを除いた。乾燥粉末を2質量当量のAlと混合し、3質量当量のAlを入れておいたカラムに加えた。吸収剤床の上端に砂を加えた。ヘプタンを還流させてカラムを溶出した。放冷すると生成物が沈殿し、これを集めてイソプロパノール(約25ml)中で4時間以上沸騰させた。得られた固体を濾過によって集め、一晩乾燥させた(80℃/15mmHg)。収率は約51%であった。
【0049】
<N−フェニル−N−1−ナフタレン−N’,N’−ジ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン(試料1C)>
アルゴン気流中、250mlの丸底フラスコに酢酸パラジウム(65mg)とCytop−216(65mg)とを入れ、トルエン(5ml)を加えて室温で30分間撹拌した。これに、順に、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノ−4’−ブロモビフェニル(5g)と、N−フェニル−1−アミノナフタレン(2.8g)と、ナトリウム=tert−ペントキシド(1.41g)と、トルエン(20ml)とを加えた。生成した混合物を加熱して静かに一晩還流させた。この時点でHPLC分析を行い、開始物質の消失を確認した。混合物をロータリーエバポレータにかけてトルエンを除いた。乾燥粉末を2質量当量のAlと混合し、3質量当量のAlを入れておいたカラムに加えた。吸収剤床の上端に砂を加えた。ヘプタンを還流させてカラムを溶出した。放冷すると生成物が沈殿し、これを集めてイソプロパノール(約25ml)中で4時間以上沸騰させた。得られた固体を濾過によって集め、一晩乾燥させた(80℃/15mmHg)。収率は約65%であった。
【0050】
<N−フェニル−N−2−ナフタレン−N’,N’−ジ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン(試料1D)>
アルゴン気流中、250mlの丸底フラスコに酢酸パラジウム(65mg)とCytop−216(65mg)とを入れ、トルエン(5ml)を加えて室温で30分間撹拌した。これに、順に、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノ−4’−ブロモビフェニル(5g)と、N−フェニル−2−アミノナフタレン(2.8g)と、ナトリウム=tert−ペントキシド(1.41g)と、トルエン(20ml)とを加えた。生成した混合物を加熱して静かに一晩還流させた。この時点でHPLC分析を行い、開始物質の消失を確認した。混合物をロータリーエバポレータにかけてトルエンを除いた。乾燥粉末を2質量当量のAlと混合し、3質量当量のAlを入れておいたカラムに加えた。吸収剤床の上端に砂を加えた。ヘプタンを還流させてカラムを溶出した。放冷すると生成物が沈殿し、これを集めてイソプロパノール(約25ml)中で4時間以上沸騰させた。得られた固体を濾過によって集め、一晩乾燥させた(80℃/15mmHg)。収率は約59%であった。
【0051】
<4−ブロモ−p−ターフェニル>
撹拌機と還流冷却管と乾燥管とを取り付けた500mlの3つ口丸底フラスコに、p−ターフェニル(40g、173.6mmol)と、酢酸(300ml)と、ヨウ素(30mg)と、臭素(28.8ml、563.2mmol)とを入れた。反応物を加熱して5時間還流させた後、反応物を室温まで放冷した。白色の固体沈殿物を集め、エタノールで洗って、41.6g(78%)の4−ブロモ−p−ターフェニルを得た。
【0052】
<4−ブロモ−4’−ヨード−p−ターフェニル>
4−ブロモ−p−ターフェニル(27g)と、ヨウ素(10.53g)と、水(20g)と、濃硫酸(11.5g)と、酢酸(160ml)とを、100℃に熱した500mlの3つ口フラスコに入れ、撹拌器で20時間撹拌した。約60℃まで放冷した後、沈殿物を濾過して集め、酢酸で洗った。固体濾過物を再びイソプロパノール中に60℃で30分間分散させ、濾過により集めて乾燥させた。昇華によって純粋な4−ブロモ−4’−ヨード−p−ターフェニル(23g)が得られた。
【0053】
<N,N−ビス(4−n−ブチルフェニル)アミン>
アルゴン気流中、撹拌機と還流冷却管と温度計とを取り付けた500mlの3つ口丸底フラスコに、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(28ml)と4−ブチルアニリン(62g、415.4mmol)とを入れ、次に、塩化カルシウム(12.8g、115.3mmol)と塩化アルミニウム(15.4g、115.49mmol)とを加えた。得られた混合物を215℃で一晩加熱した。反応物を室温まで冷やしてトルエンを加え、次にこれを250mlの水に注ぎ入れて30分間撹拌した。水層を除き、有機層を、5%塩酸で洗い、次に飽和重炭酸ナトリウム水溶液、次に水で洗った。有機層を集めて乾燥(MgSO)し、減圧下で濃縮した。クーゲルロール蒸留によって過剰の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンを除き、このジ−4−ブチルフェニルアミンを直接、次の工程に用いた。
【0054】
<N,N−ビス(4−n−ブチルフェニル)−4−アミノ−4’−ブロモ−p−ターフェニル>
4−ブロモ−4’−ヨード−p−ターフェニル(21.75g)と、ジ−4−ブチルフェニルアミン(15.5g)と、水酸化カリウムフレーク(18.0g)と、塩化銅(I)(0.15g)と、1,10−フェナントロリン一水和物(0.3g)と、35mlのトルエン−キシレン(2:5V/V)との混合物を、ディーン・スタークトラップと撹拌機とを取り付けた3つ口フラスコに入れた。混合物を加熱し、アルゴン気流中で十分に撹拌しながら15時間、穏やかに還流させた。混合物を約60℃まで放冷し、トルエンと水を加えて反応を止めた。有機相を取り出し、Filtrol−24で、次にアルミナで処理した。減圧蒸留によりジ−n−ブチルフェニルアミン−p−ブロモターフェニルが得られた。
【0055】
<N,N−ビス(4−n−ブチルフェニル)−N’,N’−ビス(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノ−p−ターフェニル(試料2)>
アルゴン気流中、250mlの丸底フラスコに、酢酸パラジウム(11mg、0.05mmol)と、トリ−t−ブチルホスフィン(0.01g)と、5mlのトルエンとを入れた。この混合物を室温で30分間撹拌した。ジ−n−ブチルフェニルアミン−p−ブロモターフェニル(3.0g、5.1mmol)と、ジフェニルアミン(1.21g、6.1mmol)と、ナトリウム=t−ブトキシド(1.5g、15.3mmol)とを加え、反応物を100℃に加熱して一晩撹拌した。反応物を放冷し、減圧下でトルエンを除いた。残留物を100mlの水に入れ、これを2時間撹拌した。濾過して固体を集めた後、100mlのトルエンに溶解し、3gのFiltrol−24およびアルミナを加えた。この混合物を100℃に加熱した後、濾過した。減圧下でトルエンを除いた。乾燥粉末を2質量当量のAlと混合し、3質量当量のAlを入れておいたカラムに加えた。吸収剤床の上端に砂を加えた。ヘプタンを還流させてカラムを溶出した。放冷すると生成物が沈殿し、これを濾過によって集めて一晩真空乾燥させると、2.2g(65%)の生成物が得られた。
【0056】
<デバイスの調製>
光導電体を次のように調製した。厚さ3.5ミル(88.9μm)の二軸延伸ポリエチレンナフタレート基材(KALEDEX(登録商標)2000)上に厚さ0.02μmのチタン層を被覆(コータデバイス)したものを準備した。その上に、50gの3−アミノプロピルトリエトキシシランと、41.2gの水と、15gの酢酸と、684.8gの変性アルコールと、200gのヘプタンとを含む溶液を、グラビアアプリケータを用いて塗布した。次にこの層を、コータの強制換気乾燥機中、135℃で約5分間乾燥させた。得られた障壁層の乾燥厚さは500オングストロームであった。次に、グラビアアプリケータを用いて、障壁層の上に、テトラヒドロフラン/モノクロロベンゼン/ジクロロメタン(容量比60:30:10)の混合物に溶液の全重量の0.2重量%のコポリエステル接着剤(ARDEL D100(登録商標)、Toyota Hsutsu Inc.製)を加えた接着剤溶液を塗布し、接着層を調製した。次に、接着層をコータの強制換気乾燥機中、135℃で約5分間乾燥させた。得られた接着層の乾燥厚さは200オングストロームであった。
【0057】
光発生層分散液を次のように調製した。4オンス(約118ml)のガラス瓶に、0.45gの公知のポリカーボネート(LUPILON 200(登録商標)(PCZ−200)またはポリカーボネートZ(登録商標)、重量平均分子量2万、三菱ガス化学(株)製)と、50mlのテトラヒドロフランとを入れた。この溶液に、2.4gのヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)と、300gの直径1/8インチ(3.2mm)のステンレススチール製ショットとを加えた。次にこの混合物を8時間ボールミルにかけた。続いて、46.1gのテトラヒドロフランに2.25gのPCZ−200を溶解したものをヒドロキシガリウムフタロシアニン分散液に加えた。このスラリーを10分間シェーカにかけた。その後、バードアプリケータを用いて、得られた分散液を上記の接着剤界面に塗布し、湿潤厚さで0.25ミル(6.35μm)の光発生層を形成した。後に塗布する接地ストリップ層による適当な電気的接触を図るため、障壁層と接着層とを載せた基材ウェブの一方の端に沿った幅約10mmの細長い部分を光発生層材料で塗布しないよう故意に残した。電荷発生層を、強制換気オーブン中、135℃で5分間乾燥し、厚さ0.4μmの乾燥光発生層とした。
【0058】
上記の光発生層の上に、次のように調製した電荷輸送層を被覆した。ガラス製褐色瓶に、50重量%の供試化合物(試料1A〜1D)と、50重量%のMAKROLON 5705(登録商標)(約5万〜約10万の平均分子量を持つ公知のポリカーボネート樹脂、ファルベンファブリケン・バイエル社(Farbenfabriken Bayer A.G.)より市販)を入れた。得られた混合物を次にジクロロメタンに溶解して、15重量%の固体を含む溶液とした。この溶液を光発生層上に塗布し、乾燥(120℃で1分間)後の厚さが30μmのボトム層被覆とした。この被覆工程の間、湿度は約15%以下であった。
【0059】
上記の光発生層の上に、次のように調製した電荷輸送層を被覆した。ガラス製褐色瓶に、35重量%の供試化合物(試料2)と、65重量%のMAKROLON 5705(登録商標)(約5万〜約10万の平均分子量を持つ公知のポリカーボネート樹脂、ファルベンファブリケン・バイエル社より市販)を入れた。得られた混合物を次にジクロロメタンに溶解して、15重量%の固体を含む溶液とした。この溶液を光発生層上に塗布し、乾燥(120℃で1分間)後の厚さが30μmのボトム層被覆とした。この被覆工程の間、湿度は約15%以下であった。
【0060】
対照用または比較用光導電体試料は以下のように調製した。金属化MYLAR基材を用意し、この基材上にHOGaPc/ポリ(ビスフェノールZカーボネート)光発生層を機械塗布した。次に、光発生層の上に電荷輸送層を手で塗布した。電荷輸送溶液は、瓶中で、5gのN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(m−TPD)正孔輸送分子と、5gのMAKROLON(登録商標)5705を、60gのジクロロメタンに混ぜ、全ての固体が溶解するまで撹拌して調製した。電荷輸送層は、ウェブコーティング法を用い、ギャップ幅を10ミル(254μm)とした5インチ(127mm)8路(pass)のアプリケータをデバイスの端から端まで引いて、厚さ約30μm電荷輸送層を塗布した。被覆は、強制換気オーブン中、約120℃で約1分間乾燥させた。
【0061】
<電気的性質の試験>
上記の感光体を、光誘導放電サイクルを得るよう設定されたスキャナで試験した。1回の荷電−消去サイクルと、次に1回の荷電−露光−消去サイクルとを、サイクルと共に光強度を徐々に強くしながら繰り返し行って、一連の光誘導放電特性曲線を作成し、これより、様々な露光強度における感光性と表面電位とを測定した。更に、表面電位を上げながら一連の荷電−消去サイクルを行い、多数の電圧−荷電密度曲線を作成して電気的特性を求めた。スキャナは、様々な表面電位で一定の電圧を印加するよう設定されたスコロトロンを備えている。このデバイスは、露光光源として780nmの発光ダイオードを用い、一連の中性密度フィルタを調節する方法で露光強度を次第に上ながら、500Vの表面電位で試験を行った。電子写真模擬実験は、環境調節した遮光チャンバ内、周囲条件(相対湿度40%、22℃)で行った。
【0062】
試料1A〜1Dおよび試料2の画像形成部材の電子写真における電気的性質は、暗所において、表面電位が約700Vの初期値(Vddp)に達するまでコロナ放電装置を用いてその表面を静電気的に荷電し、電位計に繋いだ容量結合プローブで100ms後に測定することにより求めた。次に、荷電した部材を、フィルタに通したキセノンランプからの光(785nm、荷電後200ms)で露光した。光放電効果によるバックグラウンド電位(Vbg)への表面電位の低下を、露光の100ms後に測定した。光放電特性は、E1/2およびE7/8値で表される。E1/2は、VddpからVddpの2分の1まで光放電させるために必要な露光エネルギーであり、E7/8は、VddpをVddpの8分の1に放電させるためのエネルギーである。露光工程の際に画像形成部材の光放電に用いられる光エネルギーは光度計で測定した。感光性が高いとE1/2およびE7/8値は小さくなる。消去後の残留電位(V)は、デバイスを更に、フィルタに通した第2のキセノンランプから放射された強度の白色光に曝した後に測定した。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本明細書の実施の形態による、多層型電子写真用画像形成部材の断面図である。
【図2】本明細書の電子写真用画像形成装置の実施の形態を示す概略的な線図である。
【符号の説明】
【0064】
10 画像形成装置、11 画像形成部材、12 光源、13 クリーニングブレード、14 荷電要素、15 露光レーザ光学系、16 現像要素、17 転写要素、18 被印刷体、19 定着要素、30 導電層、32 基材、33 抗カール裏塗り層、34 下引き層、36 接着層、38 電荷発生層、40 電荷輸送層、41 接地ストリップ層、42 オーバーコート層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に配置した電荷発生層と、
前記電荷発生層上に配置した電荷輸送層と、を含む画像形成部材であって、
前記電荷輸送層は、次の構造式を持つ化合物を含み、
【化1】

式中、Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ、約6〜約30の炭素を含む芳香族炭化水素基、あるいは、窒素、酸素、イオウ、またはケイ素原子を含むヘテロアリール基であり、
Arは、約6〜約30の炭素を含む二価芳香族炭化水素基、あるいは、窒素、酸素、イオウ、またはケイ素原子を含むヘテロアリーレン基であり、
およびRの少なくとも1つは、長さに0〜2の炭素を含むアルキル基またはヘテロアルキル基を含み、
およびRの少なくとも1つは、長さに4以上の炭素を含むアルキル基またはヘテロアルキル基を含み、
x、y、j、およびkは、0〜5の整数であることを特徴とする画像形成部材。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成部材であって、
前記Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フルオレニル、およびアントリルから成る群より選ばれることを特徴とする画像形成部材。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成部材であって、
前記Arは、次の構造式で示されるもの、およびそれらの混合物から成る群より選ばれ、
【化2】

式中、Rは、水素原子または1〜約12の炭素を含む炭化水素基であり、
R’は、1〜約12の炭素を含む炭化水素基であり、
nは1〜約6の整数であることを特徴とする画像形成部材。
【請求項4】
非対称アリールアミン化合物の製造方法であって、
(a)銅触媒存在下で、第1のアリールアミンを、ブロモヨードアリールまたはクロロヨードアリール化合物と縮合させて、置換中間体を生成する工程と、
(b)パラジウム触媒存在下で、前記置換中間体に第2のアリールアミンを加え、反応させる工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−217007(P2008−217007A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44134(P2008−44134)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】