説明

非導電性ストップ部材を備えたバイポーラ電気外科鉗子

【課題】血管を適正かつ有効にシールするバイポーラ鉗子を開発する。
【解決手段】少なくとも1つの細長シャフトを有し、該シャフトの遠位端には対向ジョー部材が設けられ、該ジョー部材は、両ジョー部材が互いに間隔を隔てた関係に配置される第一位置から、両ジョー部材が協働してこれらの間で組織を掴む第二位置まで相対移動できるように構成された、組織をクランプしかつシールするバイポーラ鉗子。また、本発明の鉗子は電気エネルギ源に接続され、該電気エネルギ源は、両ジョー部材がこれらの間に保持された組織にエネルギを通すことができるように各ジョー部材に接続されている。両ジョー部材間に組織が保持されたときに両ジョー部材間の距離を制御するための少なくとも2つの非導電性ストップ部材が、少なくとも一方のジョー部材の内向き面に設けられかつ互いに間隔を隔てて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、1998年10月23日付米国特許出願第09/177,950号の継続出願である2000年7月21日付米国特許出願第09/621,029号の継続出願であり、これらの米国特許出願の内容は本願に援用する。
【0002】
本願の開示は、切開手術および/または内視鏡手術を遂行するための電気外科器具に関し、より詳しくは、対向ジョー部材間のギャップ距離を制御してシール手術中の組織の操作性およびグリップ性を高めるように設計された対向ジョー部材の一方または両方に関連する非導電性ストップ部材を備えたバイポーラ電気外科鉗子に関する。
【背景技術】
【0003】
止血鉗子または鉗子は、そのジョー間の機械的作用を用いて血管を絞窄する簡単なプライヤのような器具であり、一般に、組織を掴み、切開しおよび/またはクランプする切開手術に使用されている。電気外科鉗子は、機械的クランプ作用および電気エネルギの両方を使用して、組織および血管を加熱し、組織を凝固させ、焼灼しおよび/またはシールすることにより止血する。
【0004】
この数十年間来、ますます多くの外科医が、小孔状切開部を介して器官にアクセスする内視鏡および内視鏡器具を用いて生体器官および体腔へのアクセスを行なう伝統的な切開方法を賞賛している。内視鏡器具は、トロカールを形成するカニューレまたはポートを介して患者の体内に挿入される。カニューレの一般的なサイズは3〜12mmである。一般にカニューレは小さいほど好ましいが、小型化することは、カニューレに挿通する手術器具の製造方法を見出さなくてはならない器具製造業者に設計的挑戦を課すものである。
【0005】
或る外科手術は、血管または脈管組織の切断を必要とする。しかしながら、スペース的制限のため、外科医が、血管の縫合または例えば横断された血管のクランプおよび/または結紮のように出血をコントロールする他の伝統的方法を行なうことが困難である。直径2mm以下の血管は、しばしば、標準的な電気外科技術を用いて閉鎖される。より大きい血管を切断する場合には、外科医は、内視鏡手術を切開手術に変更する必要があり、従って腹腔鏡手術方法の利益を放棄しなければならない。
【0006】
幾つかの雑誌論文には、電気外科方法を用いて小血管をシールする方法が開示されている。非特許文献1には、小血管のシールに使用するバイポーラ凝固器が開示されている。この論文は、2〜2.5mmより大きい直径の動脈を安全に凝固させることはできないことを述べている。非特許文献2には、血管壁の焼焦を防止すべく血管への電気外科電力の供給を停止させる方法が開示されている。
【0007】
電気外科鉗子の使用により、外科医は、組織に供給される電気外科エネルギの強度、周波数および供給時間を制御することにより、出血を焼灼させ、凝固/乾燥させおよび/または簡単に低減または遅延させることができる。一般に、電気外科鉗子の電気的形態は、2つの種類すなわち1)モノポーラ電気外科鉗子および2)バイポーラ電気外科鉗子にカテゴリ化できる。
【0008】
モノポーラ鉗子は、クランピングエンド・エフェクタに関連する1つの活性電極と、一般に患者の体外に取り付けられる遠隔の患者戻り電極すなわちパッドとを使用する。電気外科エネルギが加えられると、エネルギは、活性電極から、患者を通って手術部位へと移動し、更に戻り電極へと移動する。
【0009】
バイポーラ電気外科鉗子はほぼ対向する2つの電極を使用し、これらの電極はエンド・エフェクタの内側対向面上に配置され、かつ両電極とも電気外科エネルギ発生器に電気的に接続されている。各電極は異なる電位に荷電される。組織は電気エネルギの導体であるので、エフェクタがこれらの間に組織を掴むのに使用される場合には、電気エネルギは組織を通って選択的に伝達される。
【0010】
大きい血管に適正なシールを行なうには、2つの主な機械的パラメータ、すなわち血管に加えられる圧力および電極間のギャップを正確に制御しなければならない。これらのパラメータは両方とも、シールされる血管の厚さに影響を与える。より詳しくは、圧力の正確な適用は、血管壁を対向させ、充分な電気外科エネルギが組織を通って流れるように組織のインピーダンスを充分に小さい値に低減させ、組織の加熱中の膨張力に打ち勝つようにし、かつ良好なシールの表示である端組織厚さに寄与させる上で重要である。溶融した血管壁は0.001〜0.005インチが最適であることが判明している。この範囲より低いと、シールが細断すなわち裂けてしまうであろうし、この範囲より高いと、管腔が適正すなわち有効にシールされないであろう。
【0011】
電気外科方法は、血管壁に大きい閉鎖力を加えることができる器具に連結される適当な電気外科電力曲線を用いて、大きい血管をシールできる。小さい血管を凝固させる方法は、電気外科な血管シーリングとは基本的に異なるものと考えられる。本願での目的から、用語「凝固(coagulation)」とは、組織を乾燥(desiccating)させる方法であって、組織細胞が破裂されかつ乾燥される方法であると定義する。また、血管のシーリングとは、組織中のコラーゲンを液化させ、溶融マスとして再生させる方法であると定義する。かくして、小さい血管の凝固は、これらの血管を永久的に閉鎖するのに充分である。大きい血管は、永久閉鎖を確保するにはシールする必要がある。
【0012】
種々の切開手術を行なうのに、これまで、多くのバイポーラ電気外科鉗子が提案されている。しかしながら、これらの幾つかの設計は、血管に再現可能な均一圧力を付与できず、従って得られるシールは有効でないすなわち不均一なものとなる。例えば、Willisの特許文献1、Hiltebrandtnの特許文献2および特許文献3、Boebel等の特許文献4、特許文献5および特許文献6、Lottickの特許文献7、特許文献8、特許文献9および特許文献10、Stern等の特許文献11、Eggers等の特許文献12、およびRichardson等の特許文献13の全ては、血管または組織の凝固、切断および/またはシーリングを行なう電気外科器具に関する。
【0013】
これらの器具はクランプ圧力のみを用いて適正シーリング厚さを得るものであって、ギャップ公差および/または平行性および閉端部制御の条件(これらの条件は、適正に制御されるならば、一定かつ有効な組織シールを確保できるパラメータである)を考慮に入れて設計されてはいない。例えば、次の2つの理由、すなわち1)加えられる力が大き過ぎると、2つの極が接触して、組織を通ってエネルギが伝達されず、従って有効なシールが得られないこと、および2)加えられる力が小さ過ぎると、厚くて信頼性に欠けるシールが形成されることから、クランプ圧力のみを制御することによって、シールされる組織の厚さを充分に制御することは困難なことが知られている。
【0014】
上記のように、大きい血管を適正かつ有効にシールするには、対向ジョー部材間に大きい閉鎖力を必要とする。両ジョー間に大きい閉鎖力を得るには、一般に、各ジョーのピボット回りの大きいモーメントを必要とする。一般にジョー部材は、各ジョー部材の枢動に関して小さいモーメントアームをもつように配置されたピンにより取り付けられるため、これは困難なことである。小さいモーメントアームと大きい力との組合せは、ピンに大きい剪断力が作用するため好ましくない。その上、特に内視鏡手術の場合には、ジョー部材および他の構成部品の物理的サイズがカニューレを通り得るものでなくてはならないため、ピンのモーメントアームを増大させることは好ましくない。
【0015】
また、電極間の閉鎖力を増大させることは、他の好ましくない効果をもたらす。例えば、閉鎖力の増大により対向電極が互いに接触して短絡回路を形成する虞れがある。これに対して閉鎖力が小さいと、圧縮中および付勢前に組織の早期移動が生じる虞れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第2,176,479号
【特許文献2】米国特許第4,005,714号
【特許文献3】米国特許第4,031,898号
【特許文献4】米国特許第5,827,274号
【特許文献5】米国特許第5,290,287号
【特許文献6】米国特許第5,312,433号
【特許文献7】米国特許第4,370,980号
【特許文献8】米国特許第4,552,143号
【特許文献9】米国特許第5,026,370号
【特許文献10】米国特許第5,116,332号
【特許文献11】米国特許第5,443,463号
【特許文献12】米国特許第5,484,436号
【特許文献13】米国特許第5,951,549号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】「凝固に関する研究およびコンピュータ化した自動バイポーラ凝固器の開発(Studies on Coagulation and the Development of an Automatic Computerized Bipolar Coagulator)」(J. Neurosurg., 75巻、1991年7月)という題名の論文
【非特許文献2】「自動制御型電気凝固−“COA−COMP”(Automatically Controlled Bipolar Electrocoagulation-"COA-COMP)」(Neurosurg. Rev. (1984年)、第187〜190頁)いう名称の論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
かくして、対向ジョー部材間に大きい閉鎖力を発生させ、付勢中に対向ジョー間に短絡回路を形成する機会を低減させ、かつ付勢前および付勢前に組織を操作し、グリップしかつ保持することを補助する器具を提供することにより、血管組織を有効にシールしかつ上記問題を解決できるバイポーラ鉗子を開発することが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の開示)
本発明は、切開手術または内視鏡手術に使用して、組織のクランピングおよびシーリングを行なうバイポーラ鉗子に関する。本発明の鉗子は、その遠位端に対向ジョー部材を備えた少なくとも1つの細長シャフトを有している。両ジョー部材は、該両ジョー部材が互いに間隔を隔てて配置される第一位置から、両ジョー部材が協働してこれらの間に組織を掴む第二位置まで相対移動できる。鉗子は電気エネルギ源に接続され、該電気エネルギ源は各ジョー部材に接続されて、両ジョー部材がこれらの間に保持された組織を通してエネルギを導くことができるようになっている。両ジョー部材間に組織が保持されたときに両ジョー部材間のギャップ距離を制御すべく、少なくとも2つの互いに間隔を隔てた非導電性ストップ部材が、両ジョー部材の内向き面上に配置されている。
【0020】
一実施形態では、ストップ部材は、ジョー部材の近位端から遠位端まで内向き面に沿って延びている一連の長手方向突出部を有している。他の実施形態では、ストップ部材は、内向き面から突出しかつジョー部材の近位端から遠位端まで延びている一連の円形状タブを有している。各ストップ部材は、ジョー部材の幅に沿って中心に配置されるか、ジョー部材の表面の長さ方向に沿って横方向に互い違いの態様で配置される。
【0021】
本発明の他の実施形態では、ジョー部材の内向き面から突出しかつジョー部材の外周部に沿って延びている隆起リップが、両ジョー部材間隔を隔てたのギャップ距離を制御するストップ部材として機能する。他の実施形態では、長手方向の隆起部がジョー部材の近位端から遠位端まで延びており、両ジョー部材間のギャップ距離を制御する。
【0022】
ストップ部材は、スタンピング、溶射、オーバーモールディングおよび/または接着によりジョー部材(単一または複数)に形成されるか、取付けられている。好ましくは、ストップ部材は、少なくとも1つのジョー部材の内向き面から約0.001〜0.005インチ、好ましくは約0.002〜0.003インチ突出している。ストップ部材は、パリレン、ナイロンおよび/またはセラミック等の絶縁材料で作ることを考えることができる。
【0023】
本発明の他の実施形態は、第一ジョー部材が第一電位を有しかつ第二ジョー部材が第二電位を有するように両ジョー部材を電気エネルギ源に接続する駆動ロッド組立体を有するバイポーラ鉗子に関する。駆動ロッド組立体には、第一および第二ジョー部材の運動を、第一および第二位置から相互に伝達するハンドルに取り付けられている。ジョー部材(単一または複数)の内向き面には、閉じたときの両ジョー部材間の全ギャップ距離を調整するための、互いに間隔を隔てた少なくとも2のストップ部材が設けられている。
【0024】
本発明の他の実施形態は、1対の細長シャフトを有し、該シャフトの遠位端にはジョー部材が設けられ、シャフトの近位端にはフィンガリングが設けられているバイポーラ鉗子に関する。フィンガリングを移動させると、両ジョー部材を、両ジョー部材が互いに間隔を隔てた関係に配置される第一位置から両ジョー部材が協働してこれらの間で組織を掴む第二位置まで相対移動させる運動が伝達される。第一シャフトは電気エネルギ源に接続されていて、第一ジョー部材に第一電位を供給し、第二シャフトは第二ジョー部材に第二電位を供給して、両ジョー部材がこれらの間に保持された組織にエネルギを通すことができるように構成されている。ジョー部材(単一または複数)の内向き面上には、両ジョー部材間のギャップ距離を制御するための少なくとも2つの互いに間隔を隔てたストップ部材が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による内視鏡鉗子を示す斜視図である。
【図2】図1の鉗子のエンド・エフェクタを示す拡大斜視図である。
【図3】図1の鉗子のハンドル組立体およびアクチベータの分解された部品を示す斜視図である。
【図4】図1の鉗子のエンド・エフェクタ組立体および駆動ロッド組立体の分解された部品を示す拡大斜視図である。
【図5A】図1の鉗子のハンドル組立体および駆動ロッド組立体の部分側断面図である。
【図5B】図5Aに示した領域の詳細を示す拡大側断面図である。
【図6】図1の鉗子のハンドル組立体、アクチベータおよび駆動ロッド組立体を示す斜視図である。
【図7】1対のジョー部材が開位置にあるところを示すエンド・エフェクタ組立体の拡大部分断面図である。
【図8】ジョー部材を閉じるエンド・エフェクタ組立体のカムフォロワに対する駆動ロッド組立体の直線運動を示す拡大部分断面図である。
【図9】長手方向軸線「A」の回りでエンド・エフェクタ組立体を回転させる回転組立体の回転運動を示す鉗子の斜視図である。
【図10】図9に示した領域の詳細を示す拡大斜視図である。
【図11】カニューレ組立体を用いて脈管をシールしているところを示す本発明の鉗子の斜視図である。
【図12】脈管のシール部位を示す拡大斜視図である。
【図13】図12の13−13線に沿うシール部位の縦断面図である。
【図14】脈管を分離させた後の図12のシール部位を示す縦断面図である。
【図15A】本発明による切開鉗子を示す斜視図である。
【図15B】図15Aの鉗子の拡大図である。
【図16A】一方のジョー部材の内向き面上または内向き面に沿って配置される非導電性ストップ部材の他の実施形態の一例を示す拡大斜視図である。
【図16B】一方のジョー部材の内向き面上または内向き面に沿って配置される非導電性ストップ部材の他の実施形態の一例を示す拡大斜視図である。
【図16C】一方のジョー部材の内向き面上または内向き面に沿って配置される非導電性ストップ部材の他の実施形態の一例を示す拡大斜視図である。
【図16D】一方のジョー部材の内向き面上または内向き面に沿って配置される非導電性ストップ部材の他の実施形態の一例を示す拡大斜視図である。
【図16E】一方のジョー部材の内向き面上または内向き面に沿って配置される非導電性ストップ部材の他の実施形態の一例を示す拡大斜視図である。
【図16F】一方のジョー部材の内向き面上または内向き面に沿って配置される非導電性ストップ部材の他の実施形態の一例を示す拡大斜視図である。
【図16G】一方のジョー部材の内向き面上または内向き面に沿って配置される非導電性ストップ部材の他の実施形態の一例を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の器具の種々の実施形態を説明する。
ここで図1〜図3を参照すると、内視鏡手術に使用するバイポーラ鉗子10が示されており、該鉗子10は、ハンドル組立体18に連結される駆動ロッド組立体11を有している。駆動ロッド組立体11は、近位端16および遠位端14を備えた細長い中空シャフト部分12を有している。添付図面および以下の説明において、伝統的に使用されているように、用語「近位」とは、使用者に近い方のバイポーラ鉗子10の端部をいい、用語「遠位」とは、使用者から遠い方の端部をいう。また、大部分の図面すなわち図1〜図14には内視鏡手術に使用する本発明の器具の一実施形態例えば鉗子10が示されているが、ここに図示しかつ説明するものと同じ発明概念を、例えば図15Aおよび図15Bに示す実施形態のような切開手術器具(open surgical instrument)100に使用するか、該器具100に組み込むことができる。
【0027】
シャフト12の遠位端14にはエンド・エフェクタ組立体22が取り付けられており、該組立体22は対向する1対のジョー部材80、82を有している。好ましくは、ハンドル組立体18はシャフト12の近位端16に取り付けられかつアクチベータ20を有している。アクチベータ20は、両ジョー部材80、82を、これらのジョー部材が互いに間隔を隔てて配置される開位置から、両ジョー部材がこれらの間に組織150(図12)を掴むべく協働するクランプ位置すなわち閉位置へと移動させる。
【0028】
図3に最も良く示すように、アクチベータ20は、オペレータの少なくとも1本の指を受け入れるための貫通孔34を備えた可動ハンドル26と、オペレータの親指を受け入れるための貫通孔32を備えた固定ハンドル28とを有している。可動ハンドル26は、固定ハンドル28に対して、第一位置から、固定ハンドル28に接近した、両ジョー部材80、82を閉じる第二位置まで選択的に移動できる。好ましくは、固定ハンドル28は、可動ハンドル26に連結されたラチェット30を受け入れるための、近位側に延びたチャネル27を有している。ラチェット30は、使用者が、両ジョー部材80、82を、開位置から閉位置まで選択的に、漸進的にかつ増分的に移動させることを可能にする。理解されようが、ラチェット30はまた、使用者が、付勢前および/または付勢中に、可動ハンドル26従って両ジョー部材80、82を、互いに増分位置にロック係合させることを可能にする。或る場合には、固定ハンドル28および両ジョー部材80、82に対する可動ハンドル26の運動を制御および/または制限するための他の機構、例えば流体圧力システム、半流体圧力システムおよび/またはギヤシステムを設けることが好ましい。
【0029】
固定ハンドル28は、細長シャフト12の長手方向軸線「A」(図9および図10)の回りでのエンド・エフェクタ組立体22の回転運動を制御するための回転組立体23を有している。好ましくは、回転組立体23は上下のノブ組立体24a、24bを有し、該ノブ組立体はシャフト12に取り付けられたギヤ62を包囲するように互いに機械的にインターフェースしている。好ましくは、エンド・エフェクタ組立体22に対する回転組立体23の回転比は1:1であるが、特定目的に基いて回転比を増大または減少させるため、異なるギヤ構造例えばウォームギヤ、ギヤトレーン等を組み込むことも考えられる。
【0030】
好ましくは、1対のハンドルセクション28a、28bが複数の機械的インターフェースにより互いに係合して固定ハンドル28を形成するように構成する。機械的インターフェースとして、ハンドルセクション28bに形成されかつハンドルセクション28aに取り付けられた複数の補完デテント(図示せず)を受け入れる寸法を有するソケット138がある。本願では用語「ソケット」を使用したが、雄型または雌型のいずれかを一方のハンドルセクション(例えばハンドルセクション28a)に配置し、相手の機械的インターフェースを反対側のハンドルセクション(例えば配置ンセクション28b)に配置することができる。
【0031】
図3に最も良く示すように、各ハンドルセクション28a、28bはほぼ中空であり、その中には、鉗子10を形成する内部作動部品を収容するためのキャビティ50が形成されている。例えば、キャビティ50は、電気外科エネルギ発生器(図示せず)から伝送された電気外科エネルギを各ジョー部材80、82に伝送するPCボード58を収容する。プラグ62が電気外科エネルギ発生器に連結され、ハンドル組立体28の近位端に設けられたワイヤポート29を通って鉗子10に供給される電気外科エネルギを、ケーブル60を介してPCボード58に伝送する。
【0032】
好ましくは、両ジョー部材80、82の間で組織をシールする所定力または最大力を維持するためのロストモーション機構を、各ハンドルセクション28a、28bの間に配置する。図3に示す特定実施形態では、ロストモーション機構は、ピン42によりハンドルセクション28a、28bの間で連結された弾性アーム40を有している。より詳しくは、アーム40は、下端部46、上端部45、およびこれらの間に位置するシャフト部分47を有している。好ましくは、上端部45は2股に分れており、それぞれ上方に延びたフランジ49a、49bを備えたクレビスを形成している。下端部46は、可動ハンドル部分26に設けられたステップ状インターフェース48と係合できる寸法を有している。シャフト部分47は、可動ハンドル26内に形成された細長チャネル56内に収容されるようにして、可動ハンドル26の上端部の方向を向いて配置されたピボットスロット55内に座合される。好ましくは、アーム40を可動ハンドル26内に固定するため、例えばスナップ嵌合形式等の慣用手段によりカバープレート31が可動ハンドル26に取り付けられる。
【0033】
図4を参照すると、ロッド組立体11は駆動ロッド70を有し、該駆動ロッド70は近位端71および遠位端72を備えている。駆動ロッド70の近位端71にはボールコンタクト38が取り付けられ、該ボールコンタクト38は、全体として丸い形状のヘッド部分39と、該ヘッド部分39とボールコンタクト38の近位端との間に位置するノッチ41とを有している。好ましくは、アーム40のクレビスフランジ49a、49bは、アーム40がハンドルセクション28a、28bの間で組立てられるときにヘッド39を受け入れる寸法を有している(図6参照)。ハンドル26を固定ハンドル28の方向に移動させると、ピボットスロット55でのアーム40の上端部45に枢動が生じ(図5A参照)、この枢動により、ボールコンタクト38に、該ボールコンタクト38がエンド・エフェクタ組立体22から遠くに位置する第一位置から、ボールコンタクト38がエンド・エフェクタ組立体22に近接して位置する第二位置まで移動する運動が伝達される(図5B参照)。以下に詳述するように、ボールコンタクト38が第一位置と第二位置との間で移動されると、駆動ロッド70に直線運動が伝達され、これにより両ジョー部材80、82が互いに近付く方向および離れる方向に移動される。
【0034】
上記説明から理解されようが、全体として丸い形状のヘッド39が両クレビスフランジ49a、49bの間に座合しているため、使用者が、ボールコンタクト38の直線運動を妨げることなく回転組立体23を有効に使用することが可能になる。
【0035】
図4の分解図から最も良く理解されるように、エンド・エフェクタ組立体22は、第一ジョー80と、第二ジョー82と、これらの間に配置される電気的な絶縁ヨーク84とを有している。好ましくは、前述のように、ジョー部材80、82は、ハンドル組立体18を移動させることにより、開位置から閉位置へと移動できる。また、ジョー部材80、82のいずれか一方または両方を、上記と同じまたは同様な態様で互いに移動させることを考えることもできる。第一ジョー部材80は、該ジョー部材から延びている第一フランジ81と、該第一フランジを貫通するカムスロット86とを有している。同様に、第二ジョー82も、該ジョー部材から延びている第二フランジ81と、該第二フランジを貫通するカムスロット88とを有している。好ましくは、各ジョー80、82は、ステンレス鋼または他の何らかの導電性材料で形成される。
【0036】
エンド・エフェクタ組立体22はまた、ジョー部材82およびジョー部材80とそれぞれ係合する外側ノーズ部分94および内側ノーズ部分96を有している。外側ノーズ部分94には第一ピボット105が設けられ、該第一ピボット105は、フランジ83に設けられた対応ピボット孔89と係合する寸法を有している。内側ノーズ部分96には第二ピボット103が設けられ、該第二ピボット103は、フランジ81に設けられた対応ピボット孔87と係合する寸法を有している。第一ジョー部材80の回転中心は第一ピボット孔87であり、第二ジョー部材82の回転中心は第二ピボット孔89である。好ましくは、各ノーズ部分94、96は導電性材料から作られ、かつ以下に詳述するようにそれぞれのジョー部材82、80に電気外科エネルギを伝送する。
【0037】
図3に関連して上述したように、電気外科エネルギは電気外科発生器からPCボード58に伝送され、該PCボード58はエネルギを第一極および第二極に伝送する。PCボード58には1対のターミナルクリップ64a、64bが接続され、該ターミナルクリップ64a、64bは、交流電位の第一および第二極を、それぞれ、駆動ロッド組立体11の異なる部分に接続する。すなわち、クリップ64aはシャフト12に接続されて第一極をジョー部材82に導き、クリップ64bはボールコンタクト38に接続されて第二極をジョー部材80に導く。駆動ロッド70およびシャフト12の両者は導電性材料で作られているので、駆動ロッド70とシャフト12との間には絶縁スリーブ75が配置されて、鉗子10が短絡することを防止する。
【0038】
図4に最も良く示すように、内側ノーズ部分96は駆動ロッド70に電気的に接続され、外側ノーズ部分94はシャフト12に電気的に接続される。内側ノーズ部分96および外側ノーズ部分94は、フランジ83,81に沿ってヨーク84を捕捉する。ヨーク84は、内側ノーズ部分96と外側ノーズ部分94との間の空間内で、軸線「A」(図7および図8)に沿って軸線方向に移動し、スペーサステーキ119は、ノーズ部分96、94の遠位端を分離した状態に維持する。ステーキ119は内側ノーズ部分96および外側ノーズ部分94と係合してこれらをロックし、これにより、両ジョー部材80、82をヨーク84上にロックする。或る場合には、ステーキ119は、該ステーキ119がストップ部材として、および/または対向ジョー部材80、82間の相互ギャップ距離を制御する付加ストップ部材として機能する寸法に定めるのが好ましい。この場合には、ステーキ119は、プラスチックのような電気的絶縁材料で形成される。ノーズ部分94、96は両フランジ81、83の側方支持体を形成し、かつデテント90、92がそれぞれカムスロット86、88内に確実に留まることを補助する。
【0039】
エンド・エフェクタ組立体22はまた、第一極と第二極との電気的絶縁を維持する内側絶縁体102および外側絶縁体100を有している。外側絶縁体100は、外側ノーズ部分94を、内側ノーズ部分96および電気エネルギの第二極を導く駆動ロッド70から絶縁する。内側絶縁体102は、内側ノーズ部分96を、外側ノーズ部分94および電気エネルギの第一極を導くシャフト12から絶縁する。この態様により、外側ノーズ部分94は、シャフト12とジョー部材82との電気的連続性を与え、一方、内側ノーズ部分96は駆動ロッド70とジョー部材80との電気的連続性を与える。
【0040】
好ましくは、駆動ロッド70の軸線方向移動中の駆動ロッド70と内側ノーズ部分96との電気的接続を維持するため、ばね接点を使用する。シールとして、ドーナツ型スペーサ108を用いることもできる。また、スリーブ75は駆動ロッド70とシャフト12との間の絶縁体として機能し、かつ駆動濾過70の移動中の鉗子10の不意の短絡回路形成防止を考えることもできる。
【0041】
上記のようにかつ図4に最も良く示すように、駆動ロッド組立体11はギヤ52を有し、該ギヤ52はシャフト12に取り付けられかつ軸線「A」の回りでのエンド・エフェクタ組立体22の回転運動を容易にするように設計されている。より詳しくは、ギヤ52は上方部分52aおよび下方部分52bを有し、各部分52a、52bは、それぞれ、外方に延びている1対の機械的インターフェース54a、54bを有している。これらのインターフェース54a、54bは、シャフト12に設けられた対応対をなす機械的インターフェース35に対して解放可能に係合する寸法を有している。好ましくは、ギヤ52は例えばプラスチックのような電気的絶縁材料で作られ、電気外科エネルギが回転組立体23に伝送されることを防止する。図5Aに示すように、回転組立体23は2つの半部24a、24bからなり、各半部は、ギヤ52と係合できるようにそれぞれの半部から外方に延びているフランジ77a、77bを有している。回転組立体23の回転によりシャフト12が回転され、これにより更にエンド・エフェクタ組立体22が軸線「A」(図9および図10参照)の回りで回転する。
【0042】
再び図4に戻ると、ヨーク84はプラスチックのような電気的絶縁材料で形成するのが好ましい。ヨーク84の第一側面91は第一フランジ81に対面し、ヨーク84の第二側面93は第二フランジ83に対面する。ヨーク84が両フランジ81、83間に配置されると、ヨーク84は第一ジョー部材80を第二ジョー部材82から電気的に絶縁しかつ隔絶する。このようにして、バイポーラ電気外科電流を、フランジ81、83の短絡回路を形成することなく、両ジョー80、82間に掴まれた組織150を通して流すことができる。
【0043】
ヨーク84はまた、カムスロット86に対して可動係合できる寸法を有する、第一側面91に設けられた第一デテント90と、カムスロット88と係合できる寸法を有する、第2側面93に設けられた第二デテント92とを有している。好ましくは、デテントとカムスロットとの組合せ90、86;92、88は、それぞれ協働して、カム/フォロワ機械的リンク機構として作動する。軸線「A」に沿う駆動ロッド70の直線運動によりヨーク84が移動されると、デテント90、92がそれぞれのカムスロット86、88内で摺動される。一実施形態では、スロット86、88が両ジョー80、82の遠位端に対して傾斜しており、これにより、両ジョー80、82は互いに近付く方向および離れる方向に、ほぼ弧状態様をなして移動する。
【0044】
他の実施形態では、カムスロット86、88の内周面は2つの傾斜を有する形状をなしており、これにより、駆動ロッド70が完全に伸長されたときに、ジョー部材80、82を、互いに別々の異なる2つの態様で移動させる。例えば、カムスロット86、88は、両ジョー部材80、82を互いにほぼ弧状に移動させる第一段階すなわち近位段階と、両ジョー部材80、82が互いにより直線的態様で移動する第二段階すなわち遠位段階とを有する。カムスロット86、88は、特定目的に基いて両ジョー部材80、82に他の運動、例えばパラボラ運動、サイクロイド運動および/または正弦運動を引起すように寸法を定めることも考えられる。
【0045】
図7および図8から最も良く理解されようが、デテント90、92は、それぞれ、ピボット103、105の回りのモーメントを生じさせるカムスロット86、88の対応内周面に対する力を付与する。好ましくは、カムスロット86、88は、駆動ロッド70の遠位側への移動によりジョー部材80、82を一緒に移動させるように配置される。両ジョー部材80、82が一緒に閉じられたならば、両ジョー80、82が、ハンドル部材26によりロッド70に加えられる連続押圧力によりクランプ位置に保持されるようにすることも考えられる。上記のように、ハンドル組立体18には、両ジョー80、82間で組織150をシールする所定のすなわち最大クランプ力を維持するためのロストモーション機構を設けることができる。
【0046】
本発明の1つの長所は、通常デテント90、92に付随して生じる過度のクランプ力が、鉗子10の機械的不全を防止するヨーク84のユニークな形状により除去されることである。より詳しくは、カムスロット86、88は、該カムスロット86、88内のデテント90、92のカム/フォロワ運動が単に両ジョー部材80、82間の組織150をクランプするように作動しかつそれぞれデテント90、92とピボット103、105との間に小さいモーメントアームが形成されるように寸法を定めるのが好ましい。ヨーク84に配置された1対のショルダ111、113は、デテント90、92がそれぞれカムスロット86、88内でそれらの最も遠位側の位置に到達する前に、フランジ81、83と係合して、ハンドル組立体18により加えられるあらゆる付加クランプ力を除去するように寸法が定められる。
【0047】
或る場合には、カムスロット86、88がそれぞれ拡大遠位端すなわち袋路(cul-de-sac)78a、78bを有し、これによりスロット86、88内の最も遠位側の位置でのデテント90、92のカム/フォロワ運動が袋路78a、78b内に休止し、フランジ81、83に当接するショルダ111、113により閉鎖力が除去されるようになる。カムスロット86、88内に配置された袋路78a、78bは、ヨーク84のショルダ部分111、113がフランジ81、83と係合して両ジョー部材80、82間に閉鎖力を付与するのとほぼ同時に、デテント90、92に作用する剪断応力を緩和するものと考えられる。
【0048】
ショルダ111、113はフランジ81、83の近位端に当接して両ジョー部材80、82を大きい閉鎖力で一緒に閉じる。換言すると、ショルダ部分111、113はピボット103、105回りの比較的大きいモーメントを付与し、両ジョー部材80、82間に大きい閉鎖力を付与する。大きいクランプ力を除去するショルダ111、113と共に、カム/フォロワリンク機構のユニークな形状は、デテント90、92が機械的不全により破壊されることを防止する。ピボット103、105は好ましくは金属で作られ、比較的高い剪断力に耐えることができるので、ヨーク84およびその構成部品は、組織をシールするのに必要な高いクランプ力による機械的不全の危険なくして、プラスチックのような絶縁材料から形成できる。上記のように、ヨーク84を絶縁材料から形成することにより、ジョー部材80、82の短絡を防止することもできる。
【0049】
上記のように、2つの機械的ファクタが、シールされる組織の得られる厚さおよびシールの有効性、すなわち、シーリング過程で対向両ジョー部材80、82間に加えられる圧力および対向ジョー部材間のギャップを決定する上で重要な役割を演じる。しかしながら、得られる組織シールの厚さは、力だけでは充分に制御できない。換言すれば、力が大き過ぎると、両ジョー部材80、82が接触して短絡が生じることがあり、このためエネルギは殆ど組織を通ることがなく、従って劣悪なシールになってしまう。また、力が小さ過ぎると、シールが厚くなり過ぎてしまう。
【0050】
適正な力を加えることは、他の理由、すなわち脈管の壁を対向させること、組織のインピーダンスを、組織を通って充分な電流が流れることを可能にする充分に小さい値に低下させること、および良好なシールであることを示す必要端組織厚さの形成への寄与に加え、組織加熱中の膨張力に打ち勝つことからも重要である。
【0051】
鋭い縁部での電流集中を防止しかつ突出尖点間のアーキングを防止するため、両ジョー部材80、82のシール表面すなわち組織接触表面151、251(図15Bおよび図16A〜図16G参照)は比較的平坦にするのが好ましい。また、ジョー部材80、82は、組織150と係合したときに組織から受ける反力により曲げられることに耐え得るように製造するのが好ましい。例えば、図2および図16A〜16Gに最も良く示すように、ジョー部材80、82は幅「W」に沿ってテーパ状であるのが好ましい。これは、次の2つの理由、すなわち1)テーパ形状は平行で一定な組織厚さに一定の圧力を加えることができ、2)両ジョー部材80、82の厚い近位側部分が組織150の反力による曲げに耐えることができる点で有利なことによる。
【0052】
図4に最も良く示すように、所望のギャップ範囲(例えば、約0.001〜0.005インチ、好ましくは約0.992〜0.002インチ)を達成しかつ組織をシールするための所望の力を加えるため、少なくとも1つのジョー部材80および/または82は、2つの対向ジョー部材80、82の相対運動を制限するストップ部材139を有している。ストップ部材139は、シーリング表面すなわち組織接触表面151から、シーリング中に正確な一定のギャップ距離が形成されるようにするための特定の材料特性(例えば圧縮強度、熱膨張等)に従って定められる所定距離だけ延びるのが好ましい。
【0053】
前述のように、或る場合には、ステーキ119がストップ部材および/または付加ストップ部材のように機能しかつ対向する両ジョー部材80、82の相対運動を制御/制限するように、ステーキ119の寸法を定めるのが好ましい。ストップ部材139および/またはステーキ119は、例えばパリレン、ナイロンおよび/またはセラミック等の絶縁材料から作られ、かつ両ジョー部材80、82の相対移動を上記ギャップ範囲内に制限する寸法を有することが好ましい。
【0054】
図11には使用中の本発明による内視鏡バイポーラ鉗子10が示されており、ここでは、図12および図13に示すように、ハンドル組立体を移動させて管状組織150にクランプ力を加え、シール52を形成する。より詳しくは、シャフト12およびエンド・エフェクタ22がトロカール130およびカニューレ132に挿通され、ハンドル26を徐々に固定ハンドル28に向けて移動して両ジョー部材80、82の間に管状脈管150を掴ませる。組織150の回りでジョー部材80、82が閉じられた後に、使用者は組織に電気外科エネルギを加える。組織150に加えられる電気外科エネルギの強度、周波数および時間を制御することにより、使用者は、出血を焼灼し、凝固/乾燥させ、シールしおよび/または単に低減または遅延させることができる。図13および図14に示すように、ひとたび管状脈管がシールされたならば、脈管150は、組織150を分離しかつこれらの間にギャップ154を形成するためシール152に沿って切断できる。
【0055】
図15Aおよび図15Bには、本発明による脈管切開バイポーラ手術鉗子(open vessel bipolar surgical forceps)が示されている。理解されようが、鉗子200は、細長い対向シャフト212a、212bのそれぞれのそれぞれの遠位端214a、214bに取り付けられたエンド・エフェクタ組立体222を有している。エンド・エフェクタ組立体222は、遠位端214a、214bにそれぞれ配置されたジョー部材280、282を有し、これらのジョー部材は互いに対向関係をなしておりかつピボット219の回りで枢動する。好ましくは、各シャフト212a、212bの近位端にはそれぞれ対応するフィンガリング232a、232bが取り付けられており、これらのフィンガリングを移動させると、両ジョー部材280、282が、開位置(両ジョー部材が互いに間隔を隔てて配置される位置)から、クランプ位置すなわち閉位置(両ジョー部材が協働してこれらの間に組織150(図12参照)を掴む位置)まで移動される。
【0056】
図15Bは、ジョー部材280、282の一実施形態を示す拡大図であり、この実施形態は、ジョー部材282の近位端243から遠位端245までジョー部材282の周縁部に沿って延びている隆起リップとして設計されたストップ部材239を有している。鉗子200には更に、図16A〜図16Gに関連して後述するいずれかの形状のストップ部材239を設けることもできる。
【0057】
図16A〜図16Gには、下方のジョー部材82(282)上に、該ジョー部材に沿ってまたは該ジョー部材から突出して配置される非導電性材料からなるストップ部材139の種々の実施形態が示されている。特定目的に基いて所望の結果が得られるようにするため、1つ以上のストップ部材139をジョー部材80、82(280、282)の両方またはいずれか一方に設けることができる。本発明の開示から理解されようが、ストップ部材139の種々の形状は、付勢前または付勢中に組織150の移動を制限しかつ組織150が押圧されたときにジョー部材80、82(280、282)に短絡回路が形成されないように設計される。
【0058】
図16Aには、ジョー部材82の近位端143から遠位端145まで延びている長手方向隆起として形成されたストップ部材139が示されている。図16Bには、ジョー部材82の近位端143から遠位端145まで延びている長手方向デテントとして形成された一連のストップ部材139が示されている。図16Cには、互いに横方向に互い違いの態様でジョー部材82の近位端143から遠位端145まで延びている一連のサークル状ストップ部材139が示されている。実質的にサイズが等しい円形のストップ部材139を、それぞれジョー部材82の右側および左側縁部147、149の近くに配置することを考えることもできる。しかしながら、特定目的に基いて所望の結果を得るため、1つ以上のストップ部材139を他のストップ部材とは異なる寸法または形状にすることができる。
【0059】
図16Dには、ジョー部材82の近位端143から遠位端145まで延びている一連の円形状ストップ部材139であって、各々がジョー部材82の幅「W」に沿って中心に配置されたストップ部材139が示されている。図16Eには、ジョー部材82の外周部から突出する隆起リップとしてとして設計された他の形態のストップ部材139が示されている。
【0060】
図16Fには、カタマラン(catamaran)状の態様でジョー部材82の側縁部147、149から延びているL型のストップ部材139bを有する更に別の実施形態が示されている。好ましくは、ジョー部材80に補完ストッパ139aを配置して、両ジョーが閉位置に向かって移動されるときに両ストップ部材139a、139bが互いに当接するように構成する。ジョー部材をこのような態様で構成することにより、幅「W」(図16D参照)に亘って、対向ジョー部材80、82(280、282)の両シーリング表面151、151間の全ギャップ距離(約0.001〜0.005インチ、好ましくは約0.002〜0.003インチ)の横方向一定性および安定性を得ることができる。図16Gには、ストップ部材139a、139bがほぼC型である更に別の実施形態が示されている。
【0061】
好ましくは、非導電性ストップ部材(単一または複数)139(239)は、ジョー部材80、82上に成形(例えば、オーバモールディング、射出成形等)し、スタンピング成形し、または堆積(例えばめっき)する。例えば、一技術として、セラミック材料を両ジョー部材80、82の表面上に溶射してストップ部材(単一または複数)139を形成する方法がある。導電性表面上に広範囲の種類の耐熱絶縁材料を堆積させる幾つかの溶射技術が考えられ、例えば、高速オキシフュエル(High velocity Oxy- fuel)蒸着、プラズマ蒸着等がある。導電性表面上にストップ部材(単一または複数)139を堆積させる他の技術として、例えばスライドオン成形、スナップオン成形、接着、金型成形等を考えることができる。
【0062】
ストップ部材139(239)をジョー部材82(282)の内向き面から約0.001〜0.005インチ突出させることを考えることができ、これにより、発明の開示から明らかなように、電極間の短絡回路の可能性を低下できかつ両ジョー部材80、82(280、282)のグリップ特性を高めることができる。ストップ部材139、239は、有効で、均一で、かつ一定の組織シールを形成する理想的ギャップ距離を生じさせると決定されている約0.002〜0.003インチだけ突出するのが好ましい。
【0063】
別の構成として、ストップ部材139(239)はジョー部材80、82(280、282)の一方または両方の内向き面上に成形でき、または或る場合には、ストップ部材139(239)を任意の既知の接着方法によりジョー部材80、82の一方または両方の内向き面に接着するのが好ましい。本願では、スタンピングとは、例えばブランキング、剪断、熱間成形、冷間成形、引抜き、曲げおよびコイニングを含む商業的に知られている事実上全てのプレス作業を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0064】
図16A〜図16Gは、ストップ部材139の幾つかの可能性ある形態を示すが、これらの形態は例示に過ぎず、これらに限定されるものと解釈すべきではない。他の形態を考えることもできる。例えば、図16A〜図16Gの1つ以上の形態を組み合わせてジョー部材80、82(280、282)の一方または両方の内向き面上に異なるストップ部材139(239)の形態を形成することができる。図16Cおよび図16Dは、ジョー部材82(282)上またはがジョー部材に沿って異なる形態に配置された円形状ストップ部材139(239)を示しているが、電極間の短絡回路の形成の可能性を低下させかつ組織グリップを向上させる上で他の形状も等しく有効であると考えられる。
【0065】
また、ストップ部材139(239)はジョー部材(単一または複数)の内向き面から約0.001〜0.005インチ、好ましくは約0.002〜0.003インチ突出するのが好ましいが、或る場合には、特定目的に基いてストップ部材139(239)を上記範囲より大きくまたは小さく突出させるのが好ましいこともある。例えば、ストップ部材139に使用できる材料の種類およびジョー部材間の短絡回路の形成可能性を低下させると同時に両ジョー部材間の大きい押圧閉鎖力を吸収する材料の能力は変えることができ、従って、ストップ部材139の全体的寸法を変えて所望のギャップ距離を得ることができる。換言すれば、材料の圧縮強度は、有効なシーリングに要求される望ましい所望ギャップ距離(究極ギャップ距離)とともに、ストップ部材139(239)を形成する場合に入念に考察すべきパラメータである。
【0066】
理解されようが、一方の材料の寸法を他方の材料の寸法から異ならせて、同じギャップ距離すなわち所望の結果を達成することができる。例えば、ナイロンの圧縮強度はセラミックの圧縮強度とは異なっており、従って、対向ジョー部材の閉鎖力を妨げかつ同一の所望ギャップ距離を達成するため、寸法を異ならせること、例えば厚くすることができる。
【0067】
上記説明および種々の図面から、当業者ならば、本発明の範囲から逸脱することなく本発明について或る変更をなし得ることは明らかである。例えば、鉗子10(200)に他の特徴、例えば細長シャフト12(212)に対してエンド・エフェクタ組立体22(222)を軸線方向に変位させるための関節組立体を付加することは好ましいことである。
【0068】
また、本発明のストップ部材の形態は、本件出願人の所有する「使い捨て電極を備えた切開脈管シーリング鉗子(OPEN VESSEL SEALING FORCEPS WITH DISPOSABLE ELECTRODES)」という名称に係るTetziaff等の係属中の1999年10月22日付米国特許出願第09/425,696号、「使い捨て電極を備えた切開脈管シーリング鉗子(OPEN VESSEL SEALING FORCEPS WITH DISPOSABLE ELECTRODES)」という名称に係るTetziaff等の1998年10月23日付米国特許出願第09/178,027号、および「交換可能な電極を備えたバイポーラ電気外科器具(BIPOLAR ELECTROSURGICAL INSTRUMENT WITH REPLACEABLE ELECTRODES)」という名称に係るSchmaltz等の1998年9月1日付米国特許出願第09/387,883号(これらの全ての米国特許出願の内容は本願に援用する)に開示されている使い捨てまたは一部使い捨て型電気外科器具に組み込むことができる。より詳しくは、本発明の鉗子には、電気外科器具、例えばエンド・エフェクタ、シャフト(単一または複数)および/またはハンドル(単一または複数)と選択的に係合できる使い捨て型電極組立体を設けることを考えることができる。
【0069】
添付図面には本発明の幾つかの実施形態を示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本願の開示は広義に解すべきでありかつ明細書はそのように読むべきものである。従って、上記説明は限定的なものではなく、本発明の実施形態の単なる例示である。当業者ならば、特許請求の範囲およびその精神内で他の変更を行なうことを考えることができるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの細長シャフトを有し、該シャフトの遠位端には対向ジョー部材が設けられ、該ジョー部材は、両ジョー部材が互いに間隔を隔てた関係に配置される第一位置から、両ジョー部材が協働してこれらの間で組織を掴む第二位置まで相対移動でき、
両ジョー部材がこれらの間に保持された組織にエネルギを通すことができるように各ジョー部材に接続される電気エネルギ源と、
両ジョー部材間に組織が保持されたときに両ジョー部材間の距離を制御するための、少なくとも一方のジョー部材の内向き面に設けられかつ互いに間隔を隔てた少なくとも2つの非導電性ストップ部材とを更に有することを特徴とするバイポーラ鉗子。
【請求項2】
前記ストップ部材は、パリレン、ナイロンおよびセラミックからなる群から製造されていることを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項3】
前記ストップ部材は、ジョー部材の近位端から遠位端まで延びている一連の長手方向突出部を有していることを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項4】
前記ストップ部材は、ジョー部材の近位端から遠位端まで延びている一連の円形状タブを有していることを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項5】
前記円形状タブは、ジョー部材の長さ方向に沿って横方向に互い違いの態様で配置されていることを特徴とする請求項4記載のバイポーラ鉗子。
【請求項6】
前記円形状タブは、ジョー部材の幅に沿って中心に配置されていることを特徴とする請求項4記載のバイポーラ鉗子。
【請求項7】
前記ストップ部材は、ジョー部材の内向き面から約0.001〜0.005インチ突出していることを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項8】
前記ストップ部材は、ジョー部材の内向き面から約0.002〜0.003インチ突出していることを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項9】
前記ストップ部材は、スタンピングによりジョー部材に形成されていることを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項10】
前記ストップ部材は、溶射によりジョー部材に形成されていることを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項11】
前記ストップ部材は、接着によりジョー部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項12】
前記ストップ部材は、成形によりジョー部材に設けられていることを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項13】
駆動ロッド組立体を有し、該駆動ロッド組立体は、第一ジョー部材が第一電位を有しかつ第二ジョー部材が第二電位を有するように両ジョー部材を電気エネルギ源に接続し、
第一および第二位置からの第一および第二ジョー部材の運動を伝達するための、駆動ロッド組立体に取り付けられたハンドルを更に有することを特徴とする請求項1記載のバイポーラ鉗子。
【請求項14】
少なくとも1つの細長シャフトを有し、該シャフトの遠位端には対向ジョー部材が設けられ、該ジョー部材は、両ジョー部材が互いに間隔を隔てた関係に配置される第一位置から、両ジョー部材が協働してこれらの間で組織を掴む第二位置まで相対移動でき、
両ジョー部材がこれらの間に保持された組織にエネルギを通すことができるように各ジョー部材に接続される電気エネルギ源と、
両ジョー部材間に組織が保持されたときに両ジョー部材間の距離を制御するための、少なくとも一方のジョー部材の内向き面の周囲に設けられたストップ部材とを更に有することを特徴とするバイポーラ鉗子。
【請求項15】
少なくとも1つの細長シャフトを有し、該シャフトの遠位端には対向ジョー部材が設けられ、該ジョー部材は、両ジョー部材が互いに間隔を隔てた関係に配置される第一位置から、両ジョー部材が協働してこれらの間で組織を掴む第二位置まで相対移動でき、
両ジョー部材がこれらの間に保持された組織にエネルギを通すことができるように各ジョー部材に接続される電気エネルギ源と、
両ジョー部材間の距離を制御するための、少なくとも一方のジョー部材の内向き面の近位端から遠位端まで延びている長手方向隆起部を有するストップ部材とを更に有することを特徴とするバイポーラ鉗子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図16C】
image rotate

【図16D】
image rotate

【図16E】
image rotate

【図16F】
image rotate

【図16G】
image rotate


【公開番号】特開2010−17587(P2010−17587A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246243(P2009−246243)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【分割の表示】特願2002−513367(P2002−513367)の分割
【原出願日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願人】(300044528)コヴィディエン アクチェンゲゼルシャフト (87)
【Fターム(参考)】