説明

非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器

【課題】コイル部のL値を維持することで高い電力伝送効率に維持したまま、コイル部の発熱が磁性シートに伝熱するのを抑えることのできる非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器を提供することを目的とする。
【解決手段】導線が巻回された平面コイル部2と、平面コイル部2を載置する面を備えた磁性シート51と、を備え、磁性シート51は、平面コイル部2と対向する面に、複数の凹部53を備え、複数の凹部53はお互いに離間し、複数の凹部の底部と平面コイル部2とが離れていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面コイル部と磁性シートとを有する非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、本体機器を充電器で非接触充電することのできるものが多く利用されている。これは、充電器側に送信側非接触充電モジュール、本体機器側に受信側非接触充電モジュールを配し、両モジュール間に電磁誘導を生じさせることにより充電器側から本体機器側に電力を伝送するものである。そして、上記本体機器として携帯端末機器などを適用することも提案されている。
【0003】
この携帯端末機器などの本体機器や充電器は、薄型化や小型化が要望されるものである。この要望に応えるため、(特許文献1)のように、送信側非接触充電モジュールや受信側非接触充電モジュールとしての平面コイル部と、磁性シートとを備えることが考えられる。また、従来の磁性シートには、(特許文献2)のように製造され、構成されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−42519号公報
【特許文献2】特許第4400509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の非接触充電モジュールは、電磁誘導現象を利用して電力伝送を行うため、1次側非接触充電モジュール(送信側非接触充電モジュール)のコイル部と2次側非接触充電モジュール(受信側非接触充電モジュール)のコイル部とにおいて、発熱が生じやすい。すなわち、1次側非接触充電モジュールと2次側非接触充電モジュールとの位置合わせや距離、周りの金属の影響など様々な理由により、伝送効率を100%とすることが困難である。また、コイル部自体が抵抗成分を備える。このような理由からコイル部の発熱は避けられない問題である。
【0006】
一方で、磁性シートは温度特性を備える。すなわち、コイル部の発熱により磁性シートが温められ、磁性シートの特性が変化する。磁性シートの特性が変化すると、コイル部のL値が変化し、その結果、非接触充電モジュールの共振周波数が変化する。1次側非接触充電モジュールの共振周波数と2次側非接触充電モジュールの共振周波数とがずれると、それだけ電力伝送効率が低下することがある。すなわち、1次側非接触充電モジュール及び2次側非接触充電モジュールの両方の共振周波数の変化を、抑える必要がある。さらに、2次側非接触充電モジュールは一般的に小型化された携帯端末内に収納されるため、1次側非接触充電モジュールに比較して、さらに、磁性シートが温まりやすい。
【0007】
さらに、非接触充電にかかる時間は一般的に数時間であり、長時間を必要とするため、コイル部の発熱が磁性シートへ伝熱する時間も長時間化する。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、コイル部のL値を維持することで高い電力伝送効率に維持したまま、コイル部の発熱が磁性シートに伝熱するのを抑えることのできる非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器を提供することを目的とする。また
、これにより、長時間の充電を行っても、電力伝送効率を高効率に安定した非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、導線が巻回された平面コイル部と、前記平面コイル部を載置する面を備えた磁性シートと、を備え、前記磁性シートは、前記平面コイル部と対向する面に、複数の凹部を備え、前記複数の凹部はお互いに離間し、前記複数の凹部の底部と前記平面コイル部とが離れていることを特徴とする非接触充電モジュールとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コイル部のL値を維持することで高い電力伝送効率に維持したまま、コイル部の導線と磁性シートとの接触面積を小さくすることで、コイル部の発熱が磁性シートに伝熱するのを抑えることのできる非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器とすることができる。これにより、長時間の充電を行っても、電力伝送効率を高効率に安定した非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態における非接触電力伝送機器を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態における非接触充電器の構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態における1次側非接触充電モジュールを示す図
【図4】本発明の実施の形態における1次側非接触充電モジュールを示す詳細図
【図5】本発明の実施の形態における携帯端末機器の構成を示す図
【図6】本発明の実施の形態における2次側非接触充電モジュールを示す図
【図7】本発明の実施の形態における2次側非接触充電モジュールを示す詳細図
【図8】本発明の実施の形態における磁性シートを示す概念図
【図9】本発明の実施の形態における非接触充電モジュールの断面図と磁性シートに凹部を形成していない場合の非接触充電モジュールの断面図との比較を示す図
【図10】本発明の実施の形態における磁性シートの温度特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
請求項1に記載の発明は、導線が巻回された平面コイル部と、前記平面コイル部を載置する面を備えた磁性シートと、を備え、前記磁性シートは、前記平面コイル部と対向する面に、複数の凹部を備え、前記複数の凹部はお互いに離間し、前記複数の凹部の底部と前記平面コイル部とが離れていることを特徴とする非接触充電モジュールである。これにより、コイル部のL値を維持することで高い電力伝送効率に維持したまま、コイル部の発熱が磁性シートに伝熱するのを抑えることのできる非接触充電モジュールとすることができる。これにより、長時間の充電を行っても、電力伝送効率を高効率に安定した非接触充電モジュールとすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記複数の凹部は、前記平面コイル部と対向する面において、前記平面コイル部が対向される部分に設けられることを特徴とする請求項1に記載の非接触充電モジュールである。これにより、効果的に、コイル部のL値を維持することで高い電力伝送効率に維持したまま、コイル部の発熱が磁性シートに伝熱するのを抑えることのできる非接触充電モジュールとすることができる。これにより、長時間の充電を行っても、電力伝送効率を高効率に安定した非接触充電モジュールとすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記複数の凹部は、前記平面コイル部と対向する面の面積に対する前記複数の凹部の占有面積が、10%〜35%であることを特徴とする請求項1ま
たは2のいずれかひとつに記載の非接触充電モジュールである。これにより、強度を確保した上で、長時間の充電を行っても、電力伝送効率を高効率に安定した非接触充電モジュールとすることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記複数の凹部は、前記平面コイル部の厚みに対する前記複数の凹部の深さが、10%〜25%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかひとつに記載の非接触充電モジュールである。これにより、非接触充電モジュールの電力伝送効率を維持しつつ、長時間の充電を行っても、電力伝送効率を高効率に安定した非接触充電モジュールとすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記複数の凹部の開口面の最大幅は、前記導線の線径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の非接触充電モジュールである。これにより、確実に凹部の底部と導線との距離を確保し、確実にコイル部のL値を維持することで高い電力伝送効率に維持したまま、コイル部の発熱が磁性シートに伝熱するのを抑えることのできる非接触充電モジュールとすることができる。これにより、長時間の充電を行っても、電力伝送効率を高効率に安定した非接触充電モジュールとすることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の非接触充電モジュールを備えたことを特徴とする非接触充電機器である。これにより、コイル部のL値を維持することで高い電力伝送効率に維持したまま、コイル部の発熱が磁性シートに伝熱するのを抑えることのできる非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器とすることができる。これにより、長時間の充電を行っても、電力伝送効率を高効率に安定した非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器とすることができる。なお、非接触充電機器とは、1次側非接触充電モジュールもしくは2次側非接触充電モジュールのいずれかを備える電子機器のことをいう。
【0018】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面をもちいて説明する。
〔非接触充電システムに関して〕
図1は、本発明の実施の形態における非接触電力伝送機器を示すブロック図である。
【0019】
非接触電力伝送機器は、1次側非接触充電モジュール41(送信側非接触充電モジュール)と、2次側非接触充電モジュール42(受信側非接触充電モジュール)とから構成され、電磁誘導作用を利用して1次側非接触充電モジュール41から2次側非接触充電モジュール42に電力伝送が行われる。この非接触電力伝送機器は、約5W以下の電力伝送に使用される。また、電力伝送の周波数は約110〜205kHzである。1次側非接触充電モジュール41は例えば充電器に搭載され、2次側非接触充電モジュール42は例えば携帯電話、デジタルカメラ、PCなどに搭載される。
【0020】
1次側非接触充電モジュール41は、1次側コイル21a、磁性シート51、共振コンデンサ(図示せず)、電力入力部71を備えて構成される。電力入力部71は、外部電源としての商用電源300に接続されて100〜240V程度の電力供給を受け、所定電流1(直流12V、1A)に変換して1次側コイル21aに供給する。1次側コイル21aは、その形状、巻数及び供給を受けた電流に応じた磁界を発生させる。共振コンデンサは、1次側コイル21aに接続され、1次側コイル21aとの関係により1次側コイル21aから発生させる磁界の共振周波数を決定する。1次側非接触充電モジュール41から2次側非接触充電モジュール42に対する電磁誘導作用は、この共振周波数により行われる。
【0021】
一方、2次側非接触充電モジュール42は、2次側コイル21b、磁性シート52、共振コンデンサ(図示せず)、整流回路72、電力出力部82から構成される。2次側コイル21bは、1次側コイル21aから発生した磁界を受けて、その磁界を電磁誘導作用により所定電流2に変換して、整流回路72、電力出力部82を介して、2次側非接触充電モジュール42の外部に出力する。整流回路72は、交流電流である所定電流2を整流して直流電流である所定電流3(直流5V、1.5A)に変換する。また、電力出力部82は2次側非接触充電モジュール42の外部出力部であり、この電力出力部82を介して、2次側非接触充電モジュール42に接続される電子機器200に電力供給を行う。
〔非接触充電器及び1次側非接触充電モジュールについて〕
次に、1次側非接触充電モジュール41を非接触充電器に搭載する場合について説明する。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態における非接触充電器の構成を示す図である。なお、図2に示す非接触充電器は、その内部が分かるように示したものである。
【0023】
電磁誘導作用を利用して電力を送信する非接触充電器400は、その外装を構成するケースの内部に1次側非接触充電モジュール41を有する。
【0024】
非接触充電器400は、屋内もしくは屋外に設置された商用電源300のコンセント301に差し込むプラグ401を有する。このプラグ401をコンセント301に差し込むことによって、非接触充電器400は商用電源300から電力供給を受けることができる。
【0025】
非接触充電器400は机上501に設置され、1次側非接触充電モジュール41は非接触充電器400の机面側とは反対側の面402の近傍に配置される。そして、1次側非接触充電モジュール41における1次側コイル21aの主平面を、非接触充電器400の机面側とは反対側の面402に平行に配置する。このようにすることで、2次側非接触充電モジュール42を搭載した電子機器の電力受信作業エリアを確保することができる。なお、非接触充電器400は壁面に設置されてもよく、この場合、非接触充電器400は壁面側とは反対側の面の近傍に配置される。
【0026】
また、1次側非接触充電モジュール41は、2次側非接触充電モジュール42との位置合わせに用いるマグネット30aを有する場合がある。この場合、1次側コイル21aの中央領域に位置する中空部に配置される。
【0027】
次に、1次側非接触充電モジュール41について説明する。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態における1次側非接触充電モジュールを示す図であり、1次側コイルが円形コイルの場合を示す。なお、図3においては円形に巻回された円形コイルにて説明しているが、略矩形状に巻回された矩形コイルであってもよい。なお、これから説明する1次側非接触充電モジュールの詳細については、基本的に2次側非接触充電モジュールに適応される。1次側非接触充電モジュールに対する2次側非接触充電モジュールの相違点は、詳しく後述する。
【0029】
1次側非接触充電モジュール41は、導線が渦巻き状に巻回された1次側コイル21aと、1次側コイル21aの面に対向するように設けられた磁性シート51とを備える。
【0030】
図3に示すとおり、1次側コイル21aは、面上で渦を描くように径方向に向けて導電体を巻いた1次側コイル21aと、1次側コイル21aの両端に設けられた電流供給部としての端子22a、23aを備える。すなわち、電流供給部としての端子22a、23a
は、外部電源である商用電源300からの電流を1次側コイル21aに供給する。1次側コイル21aは導線を平面上で平行に巻きまわしたものであり、コイルによって形成された面をコイル面と呼ぶ。なお、厚み方向とは、1次側コイル21aと磁性シート51との積層方向である。
【0031】
また、磁性シート51は、1次側コイル21aを載置する平坦部31aと、平坦部31aの中心部にあって1次側コイル21aの中空領域内に相当する中心部32aと、1次側コイル21aの引き出し線の一部が挿入される直線凹部33aとから構成されている。中心部32aは、平坦部32aに対して凸部形状、平坦形状、凹部形状、貫通孔である形状となり、いずれであってもよい。凸部形状であれば、1次側コイル21aの磁束を強めることができる。平坦であれば、製造しやすく1次側コイル21aを載置しやすい上、後述する位置合わせのマグネットの影響と1次側コイル21aのL値のバランスをとることができる。凹部形状、貫通孔に関しては、詳しく後述する。
【0032】
本実施の形態における1次側非接触充電モジュール41では、1次側コイル21aは直径が20mmの内径から外に向かって巻回され、外径が30mmとなっている。すなわち、1次側コイル21aはドーナツ形状に巻回されている。なお、1次側コイル21aは円形に巻回されてもよいし、多角形に巻回されてもよい。すなわち、略正方形でもよいし、略長方形でもよいし、そのたの形状でもよいし、多角形の場合には角にアール(曲線部)を有してもよい。
【0033】
また、導線はお互いに空間を空けるように巻回されることによって、上段の導線と下段の導線との間の浮遊容量が小さくなり、1次側コイル21aの交流抵抗を小さく抑えることができる。また、空間を詰めるように巻回されることによって、1次側コイル21aの厚みを抑えることができる。
【0034】
また、1次側非接触充電モジュール41は、2次側非接触充電モジュール42との位置合わせに用いるマグネット30aを有する場合がある。これは、規格(WPC)によって、円形であること、直径が15.5mm以下であることなどが定められている。マグネット30aはコイン形状をしており、その中心が1次側コイル21aの巻回中心軸と一致するように配置されなければならない。これは、1次側コイル21aに対するマグネット30aの影響を軽減させるためである。
【0035】
すなわち、位置合わせの方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。例えば充電器の充電面に凸部、2次側の電子機器に凹部を形成しはめ込むといった、物理的(形状的)に強制的な位置合わせを行う方法。また、少なくとも1次側及び2次側の一方にマグネットを搭載することで、お互いのマグネットもしくは一方のマグネットと他方の磁性シートとが引き付けあって位置合わせを行う方法。1次側が2次側のコイルの位置を検出することで、1次側のコイルを自動的に2次側のコイルの位置まで移動させる方法。充電器に多数のコイルを備えることで、携帯機器が充電器の充電面のどこにおいても充電可能とする方法など。
【0036】
このように、1次側(充電側)非接触充電モジュール及び2次側(被充電側)非接触充電モジュールのコイルの位置合わせには様々な方法が挙げられるが、マグネットを使用する方法とマグネットを使用しない方法とに分けられる。そして、1次側(充電側)非接触充電モジュールであれば、マグネットを使用する2次側(被充電側)非接触充電モジュール及びマグネットを使用しない2次側(被充電側)非接触充電モジュールの双方に適応できるようにすることで2次側(被充電側)非接触充電モジュールのタイプに関係せず充電ができ利便性が向上する。同様に、2次側(被充電側)非接触充電モジュールであれば、マグネットを使用する1次側(充電側)非接触充電モジュール及びマグネットを使用しな
い1次側(充電側)非接触充電モジュールの双方に適応できるようにすることで1次側(充電側)非接触充電モジュールのタイプに関係せず充電ができ利便性が向上する。すなわち、電力伝送を行う相手である他方の非接触充電モジュールと電磁誘導によって電力伝送を行う非接触充電モジュールにおいて、他方の非接触充電モジュールとの位置合わせに際し、他方の非接触充電モジュールに備えられたマグネットを利用して位置合わせを行う第1の手段、及びマグネットを利用しないで位置合わせを行う第2の手段、双方の手段により他方の非接触充電モジュールと位置合わせ可能であって、電力伝送が可能となるように構成することが必要である。
【0037】
1次側非接触充電モジュール41がマグネット30aを有する場合、マグネット30aを配置する1番目の方法として、マグネット30aを磁性シート51の中心部32aの上面に配置する方法がある。また、マグネット30aを配置する2番目の方法として、マグネット30aを磁性シート51の中心部32aの代わりに配置する方法がある。2番目の方法では、マグネット30aが1次側コイル21aの中空領域に配置されるため、1次側非接触充電モジュール41を小型化できる。
【0038】
なお、1次側非接触充電モジュール41と2次側非接触充電モジュール42の位置合わせにマグネットを利用しない場合は、図3に示すマグネット30aは必要ない。
【0039】
ここで、マグネットが非接触充電モジュールの電力伝送効率に与える影響について説明する。一般的に、マグネットは1次側非接触充電モジュール及び2次側非接触充電モジュールの少なくとも一方において、内蔵されるコイルの貫通孔の中に設けられる。これにより、マグネットとマグネットまたはマグネットと磁性シート51をなるべく近接させることができると同時に、1次側及び2次側のコイルを近接させることができる。マグネットは円形であり、この場合、マグネットの直径は1次側コイル21aの内幅よりも小さくなる。本実施の形態においてはマグネットの直径は約15.5mm(約10mm〜20mm)であり、厚みは約1.5〜2mmである。また、ネオジウム磁石を使用しており、強さは約75mTから150mT程度でよい。本実施の形態においては、1次側非接触充電モジュールのコイルと2次側非接触充電モジュールのコイルとの間隔が2〜5mm程度であるので、この程度のマグネットで十分位置合わせが可能となる。
【0040】
電力伝送のために1次側コイルと2次側コイルとの間に磁束が発生している際、その間や周辺にマグネットが存在すると磁束はマグネットを避けるように伸びる。もしくは、マグネットの中を貫く磁束はマグネットの中で渦電流や発熱となり、損失となる。さらに、マグネットが磁性シートの近傍に配置されることによって、マグネット近傍の磁性シートの透磁率が低下してしまう。従って、1次側非接触充電モジュール41に備えられたマグネット30aは、1次側コイル21a及び2次側コイル21b双方のL値を低下させてしまう。その結果、非接触充電モジュール間の伝送効率が低下してしまう。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態における1次側非接触充電モジュールを示す詳細図である。図4(a)は1次側非接触充電モジュールの上面図、図4(b)は図4(a)における1次側非接触充電モジュールのA−A断面図である。図4(c)は、直線凹部を設けた場合の図4(a)における1次側非接触充電モジュールのB−B断面図である。図4(d)は、スリットを設けた場合の図4(a)における1次側非接触充電モジュールのB−B断面図である。なお、図4(a),図4(b)は、マグネット30aを備えない場合を示している。なお、備える場合には、点線で示したマグネット30aを備える。
【0042】
1次側コイル21aは、1次側非接触充電モジュール41が装着される非接触充電器400の薄型化を達成するため、1次側コイル21aの中心領域に位置する巻始め部分から端子23aまでを厚さ方向に2段とし、残りの領域を1段とした。このとき、上段の導線
と下段の導線どうしがお互いに空間を空けるように巻回されることによって、上段の導線と下段の導線との間の浮遊容量が小さくなり、1次側コイル21aの交流抵抗を小さく抑えることができる。
【0043】
また、導線を積層して1次側コイル21aを1次側非接触充電モジュール41の厚み方向に伸ばす場合、1次側コイル21aの巻き数を増やして1次側コイル21aに流す電流を増加できる。導線を積層する際、上段に位置する導線と下段に位置する導線がお互いの空間を詰めるように巻回されることにより、1次側コイル21aの厚みを抑えつつ、1次側コイル21aに流す電流を増加できる。
【0044】
なお、本実施の形態では、断面形状が円形状の導線を使用して1次側コイル21aを形成しているが、使用する導線は断面形状が方形形状の導線でもよい。断面形状が円形状の導線を使用する場合、隣り合う導線どうしの間に隙間が生じるため、導線間の浮遊容量が小さくなり、1次側コイル21aの交流抵抗を小さく抑えることができる。
【0045】
また、1次側コイル21aは厚さ方向に2段で巻回するよりも1段で巻回した方が1次側コイル21aの交流抵抗が低くなり、伝送効率を高くすることができる。これは、2段で導線を巻回すると、上段の導線と下段の導線との間に浮遊容量が発生するためである。従って、1次側コイル21aは全体を2段で巻回するよりも、なるべく多くの部分を1段によって巻回した方がよい。また、1段で巻回することによって、1次側非接触充電モジュール41として薄型化することができる。なお、2本の導線で平面コイル部2を構成する場合は、端子22a、23a部分において2本の導線が半田などによって電気的に接続されているので、2本の導線が1本の太い導線のようにしてもよい。2本の導線は、コイル面に対して平行に並んで巻回されてもよいし、コイル面に対して垂直に並んで巻回されてもよい。すなわち、コイル面に平行の場合は、2本の導線は平面状で同一の中心を軸に巻きまわされており、半径方向において一方の導線が他方の導線に挟まれるようになる。このように2本の導線を端子22a、23a部分で電気的に接合して1本の導線のように機能させることによって、同じ断面積であっても厚みを抑えることができる。すなわち、例えば、直径が0.25mmの導線の断面積を、直径が0.18mmの導線を2本準備することによって得ることができる。従って、直径が0.25mmの導線1本であると、コイル21の1ターンの厚みは0.25mm、コイル21の半径方向の幅は0.25mmであるが、直径が0.18mmの導線2本であると、コイル21の1ターンの厚みは0.18mm、半径方向の幅は0.36mmとなる。なお、厚み方向とは、平面コイル部2と磁性シート51との積層方向である。また、コイル21は中心側の一部分のみ、厚さ方向に2段に重なっており、残りの外側の部分は1段としてもよい。また、コイル面に垂直の場合は、非接触充電モジュールの厚みが増加するが、導線の断面積が事実上増加することで平面コイル部2を流れる電流を増加させることができ、十分な巻き数も容易に確保することができる。なお、本実施の形態では、約0.18〜0.35mmの導線により1次側コイル21aを構成しており、その中でも1次側非接触充電モジュール41の1次側コイル21aには0.25〜0.35mmの導線が好適である。
【0046】
なお、1次側コイル21aの交流抵抗が低いことで1次側コイル21aにおける損失を防ぎ、L値を向上させることによって、L値に依存する1次側非接触充電モジュール41の電力伝送効率を向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、1次側コイル21aは環状(円形状)に形成されている。1次側コイル21aの形状は環状(円形状)に限定されず、楕円形状、矩形状、多角形状でもよい。1次側非接触充電モジュール41と2次側非接触充電モジュール42の位置合わせを考慮すれば、1次側コイル21aの形状は環状(円形状)が好ましい。これは、1次側コイル21aの形状が環状(円形状)の場合、電力の送受信がより広範囲で可能となる
ため、1次側非接触充電モジュール41の1次側コイル21aと2次側非接触充電モジュール42の2次側コイル21bの位置合わせが容易になる。すなわち、電力の送受信をより広範囲で可能とするため、2次側非接触充電モジュール42は1次側非接触充電モジュール41に対する角度の影響を受けにくくなる。
【0048】
なお、端子22a、23aはお互いに近接してもよく、離れて配置されてもよいが、離れて配置された方が1次側非接触充電モジュール41を実装しやすい。
【0049】
磁性シート51は、電磁誘導作用を利用した非接触充電の電力伝送効率を向上させるために設けたものであって、平坦部31aと、中心であってコイル21の内径に相当する中心部32aと、直線凹部33aとを備える。また、1次側非接触充電モジュール41と2次側非接触充電モジュール42の位置合わせのマグネット30aを設ける場合、マグネット30aを中心部32aの上方に配置してもよいし、マグネット30aを中心部32aの代わりに配置してもよい。
【0050】
また、磁性シート51として、Ni−Zn系のフェライトシート、Mn−Zn系のフェライトシート、Mg−Zn系のフェライトシートなどを使うことができる。磁性シート51は、単層構成としてもよいし、同一材料を厚み方向に複数枚積層した構成でもよいし、異なる磁性シートを厚み方向に複数枚積層してもよい。少なくとも、透磁率が250以上、飽和磁束密度が350mT以上のものであると好ましい。
【0051】
また、アモルファス金属も磁性シート51として用いることができる。磁性シート51としてフェライトシートを使用する場合は1次側コイル21aの交流抵抗を低下させる点で有利となり、磁性シートとしてアモルファス金属を使用する場合は1次側コイル21aを薄型化することができる。
【0052】
1次側非接触充電モジュール41に用いる磁性シート51は、約50×50mm以内の大きさに収まる程度のサイズであり、厚みは約3mm以下である。本実施の形態において磁性シート51は略正方形の約33mm×33mmである。磁性シート51が1次側コイル21aの外周端よりも同程度または大きく形成されることが望ましい。また、磁性シート51の形状は、円形、矩形、多角形、四隅に大きな曲線を備える矩形及び多角形でもよい。
【0053】
直線凹部33aまたはスリット34aは、コイルの巻始め部分(コイルの最内側部分)から端子までの導線を収納する。これにより、コイルの巻始め部分から端子までの導線が1次側コイル21aの厚み方向に重なることを防ぎ、1次側非接触充電モジュール41の厚みを抑えることができる。また、直線凹部33aまたはスリット34aの大きさをコイルの巻始め部分から端子までの導線を収納する最小限の大きさにすることで、漏れ磁束の発生を抑えることができる。また、直線凹部33aの断面形状は、矩形状に限定されず、円弧状や、丸みを帯びてもよい。
【0054】
直線凹部33aまたはスリット34aはその一端が交わる磁性シート51の端部とほぼ垂直であり、中心部32aの外形(円形コイルでいえば接線上、矩形コイルでいえば辺上)と重なるように形成される。このように直線凹部33aまたはスリット34aを形成することによって、導線の巻始めを折り曲げることなく端子22a、23aを形成することができる。直線凹部33aまたはスリット34aの長さはコイル21の内径に依存し、本実施の形態の場合、約15mm〜20mmとしている。
【0055】
また、直線凹部33aまたはスリット34aは、磁性シート51の端部と中心部32aの外周が最も近づく部分に形成してもよい。これによって、直線凹部33aまたはスリッ
ト34aの形成面積を最低限に抑えることができ、非接触電力伝送機器の伝送効率を向上させることができる。なお、この場合、直線凹部33aまたはスリット34aの長さは約5mm〜10mmである。どちらの配置であっても、直線凹部33aまたはスリット34aの内側端部は中心部32aに接続している。
【0056】
また、直線凹部33aまたはスリット34aは、他の配置にしてもよい。すなわち、1次側コイル21aはなるべく1段構造であることが望ましく、その場合、1次側コイル21aの半径方向のすべてのターンを1段構造とするか、1部を1段構造として他の部分を2段構造とすることが考えられる。従って、端子22a、23aのうち1方は1次側コイル21a外周から引き出すことができるが、他方は内側から引き出さなくてはならない。1次側コイル21aが巻回されている部分と、1次側コイル21aの巻き終わりから端子22aまたは23aまでの部分とが、必ず厚さ方向において重なる場合、その重なる部分に直線凹部33aまたはスリット34aを設ければよい。
【0057】
直線凹部33aを用いる場合であれば、磁性シート51に貫通孔やスリットを設けないので磁束が漏れることを防ぎ、1次側非接触充電モジュール41の電力伝送効率を向上させることができる。対して、スリット34aの場合は、磁性シート51の形成が容易となる。直線凹部33aである場合、断面形状が方形状となるような直線凹部33aに限定されず、円弧状や、丸みを帯びてもよい。
【0058】
次に、マグネットが1次側非接触充電モジュール41及び後述する2次側非接触充電モジュール42に対して与える影響について説明する。1次側非接触充電モジュール41によって発生した磁界を2次側非接触充電モジュール42内の2次側コイル21bが受信して電力伝送を行う。ここで、1次側コイル21a及び2次側コイル21bの周辺にマグネットを配置すると、磁界がマグネットを避けるように発生するか、マグネットを通過しようとする磁界はなくなってしまうこともある。また、磁性シート51のうちマグネットに近い部分の透磁率が低下してしまう。すなわち、マグネットによって、磁界が弱められるのである。従って、マグネットによって弱められる磁界を最小限にするためには、1次側コイル21a及び2次側コイル21bとマグネットの距離を離す、マグネットの影響を受けにくい磁性シート51を備える、などの対策を講じる必要がある。
【0059】
ここで、1次側非接触充電モジュール41は、電力供給の送信側として固定端末に用いられるため、1次側非接触充電モジュール41の固定端末内における占有スペースに余裕がある。また、1次側非接触充電モジュール41の1次側コイル21aに流れる電流は大きいため、磁性シート51の絶縁性が重要となる。これは、磁性シート51が導電性であると、1次側コイル21aを流れる大きな電流が磁性シート51を介してその他の部品に伝わる可能性があるからである。
【0060】
以上の点を考慮して、1次側非接触充電モジュール41に搭載する磁性シート51は、その厚みが400μm以上(好ましくは600μm〜1mm)で、磁気特性として透磁率250以上、磁束飽和密度350mT以上を有するNi−Zn系のフェライトシート(絶縁性)が好ましい。ただし、十分な絶縁処理を行うことで、Ni−Zn系のフェライトシートの代わりにMn−Zn系のフェライトシート(導電性)を使用することもできる。
【0061】
また、1次側非接触充電モジュール41は、マグネット30aを位置合わせとして使用する場合と使用しない場合とで1次側非接触充電モジュール41の1次側コイル21aのL値が大幅に変化する。すなわち、1次側非接触充電モジュール41にマグネット30aまたは2次側非接触充電モジュール42に同様のマグネットが存在することで1次側、2次側非接触充電モジュール間の磁束を妨げてしまい、マグネットがある場合では1次側非接触充電モジュール41の1次側コイル21aのL値が大幅に減少する。このマグネット
30aによる影響を抑えるために、磁性シート51は高飽和磁束密度材(飽和磁束密度が350mT以上)であることが好ましい。高飽和磁束密度材は磁場が強くなっても磁束が飽和しにくいため、マグネット30aの影響を受けにくく、マグネット30aが使用されている際のコイル21のL値を向上させることができる。従って、磁性シート51を薄型化させることができる。
【0062】
しかしながら、磁性シート51の透磁率が低くなりすぎると1次側コイル21aのL値が非常に低下してしまう。その結果、1次側非接触充電モジュール41の効率を低下させてしまうことがある。従って、磁性シート51の透磁率は少なくとも250以上、好ましくは1500以上が好ましい。また、L値は磁性シート51の厚みにも依存するが、フェライトシート3の厚み400μm以上であればよい。なお、フェライトシートは、アモルファス金属の磁性シートに比較してコイル21の交流抵抗を低下させることができるが、アモルファス金属であってもよい。このような磁性シート51とすることで、1次側非接触充電モジュール41及び2次側非接触充電モジュール42の少なくとも一方がマグネットを備えていたとしても、1次側非接触充電モジュール41はマグネットの影響を低下させることができる。
【0063】
また、フェライトシートがMn−Zn系であることによって、更なる薄型化が可能となる。すなわち、規格(WPC)によって、電磁誘導の周波数は100kHz〜200kHz程度(例えば120kHz)と決まっている。このような低周波数帯において、Mn−Zn系のフェライトシートは高効率となる。なお、Ni−Zn系のフェライトシートは高周波において高効率である。
〔携帯端末及び2次側非接触充電モジュールについて〕
次に、2次側非接触充電モジュール42を携帯端末機器に搭載する場合について、説明する。
【0064】
図5は、本発明の実施の形態における携帯端末機器の構成を示す図であり、携帯端末機器を分解した場合の斜視図である。
【0065】
携帯端末520は、液晶パネル521、操作ボタン522、基板523、電池パック524などで構成されている。電磁誘導作用を利用して電力を受信する携帯端末520は、その外装を形成する筐体525と筐体526の内部に2次側非接触充電モジュール42を有する携帯端末機器である。
【0066】
液晶パネル521、操作ボタン522が設けられた筐体525の裏面には、操作ボタン522から入力された情報を受信するともに必要な情報を液晶パネル521に表示して携帯端末520全体を制御する制御部を備える基板523が設けられている。また、基板523の裏面には電池パック524が設けられている。電池パック524は、基板523と接続されて基板523に電力供給を行う。
【0067】
さらに、電池パック524の裏面、すなわち筐体526側には2次側非接触充電モジュール42が設けられている。2次側非接触充電モジュール42は、電磁誘導作用により1次側非接触充電モジュール41から電力供給を受け、その電力を利用して電池パック524を充電する。
【0068】
2次側非接触充電モジュール42は、2次側コイル21b、磁性シート52などから構成される。電力供給を受ける方向を筐体526側とする場合、筐体526側から順に2次側コイル21b、磁性シート52を配置すると、基板523と電池パック524の影響を軽減して電力供給を受けることができる。
【0069】
また、2次側非接触充電モジュール42は、1次側非接触充電モジュール41との位置合わせに用いるマグネット30bを有する場合がある。この場合、2次側コイル21bの中央領域に位置する中空部に配置される。これは、規格(WPC)によって、円形であること、直径が15.5mm以下であることなどが定められている。マグネット30aはコイン形状をしており、その中心が1次側コイル21aの巻回中心軸と一致するように配置されなければならない。これは、1次側コイル21aに対するマグネット30aの影響を軽減させるためである。2次側非接触充電モジュール42に備えられたマグネット30bは、1次側コイル21a及び2次側コイル21b双方のL値を低下させてしまう。
【0070】
2次側非接触充電モジュール42がマグネット30bを有する場合、マグネット30bを配置する1番目の方法として、マグネット30bを磁性シート52の中心部32bの上面に配置する方法がある。また、マグネット30bを配置する2番目の方法として、マグネット30bを磁性シート52の中心部32bの代わりに配置する方法がある。2番目の方法では、マグネット30bが2次側コイル21bの中空領域に配置されるため、2次側非接触充電モジュール42を小型化できる。
【0071】
なお、1次側非接触充電モジュール41と2次側非接触充電モジュール42の位置合わせにマグネットを利用しない場合は、マグネット30bは必要ない。
【0072】
次に、2次側非接触充電モジュール42について説明する。
【0073】
図6は、本発明の実施の形態における2次側非接触充電モジュールを示す図であり、2次側コイルが円形コイルの場合を示す。
【0074】
図7は、本発明の実施の形態における2次側非接触充電モジュールを示す詳細図である。図7(a)は2次側非接触充電モジュールの上面図、図7(b)は図7(a)における2次側非接触充電モジュールのC−C断面図である。図7(c)は、直線凹部を設けた場合の図7(a)における2次側非接触充電モジュールのD−D断面図である。図7(d)は、スリットを設けた場合の図7(a)における2次側非接触充電モジュールのD−D断面図である。なお、図7(a),図7(b)は、マグネット30bを備えない場合を示している。なお、備える場合には、点線で示したマグネット30bを備える。
【0075】
2次側非接触充電モジュール42を説明する図6〜図7は、1次側非接触充電モジュール41を説明する図3〜図4にそれぞれ対応する。2次側非接触充電モジュール42の構成は、1次側非接触充電モジュール41と略同一である。
【0076】
2次側非接触充電モジュール42が1次側非接触充電モジュール41と異なる点として、磁性シート52の大きさと材料が挙げられる。2次側非接触充電モジュール42に用いる磁性シート52は、約40×40mm以内の大きさに収まる程度のサイズであり、厚みは約2mm以下である。
【0077】
1次側非接触充電モジュール41に用いる磁性シート51と、2次側非接触充電モジュール42に用いる磁性シート52のサイズは異なる。これは、2次側非接触充電モジュール42が一般的にポータブル電子機器に搭載されるためであり、小型化が要求されるからである。本実施の形態において磁性シート52は略正方形の約33mm×33mmである。磁性シート52が2次側コイル21bの外周端よりも同程度または大きく形成されることが望ましい。また、磁性シート51の形状は、円形、矩形、多角形、四隅に大きな曲線を備える矩形及び多角形でもよい。
【0078】
また、2次側非接触充電モジュール42は、電力供給の受信側として携帯端末に用いら
れるため、2次側非接触充電モジュール42の携帯端末内における占有スペースに余裕がない。また、2次側非接触充電モジュール42の2次側コイル21bに流れる電流は小さいため、磁性シート52の絶縁性はあまり要求されない。なお、本実施の形態では、約0.18〜0.35mmの導線により2次側コイル21bを構成しており、その中でも2次側非接触充電モジュール42の2次側コイル21bには0.18〜0.30mm程度の導線が好適である。
【0079】
搭載される電子機器が携帯電話の場合、携帯電話の外装を構成するケースとその内部に位置する電池パックとの間に配置されることが多い。一般的に、電池パックはアルミニウムの筐体であるため、電力伝送に悪影響を与える。これは、コイルが発生させる磁束を弱める方向にアルミニウムに渦電流が発生するため、コイルの磁束が弱められることに起因する。そのため、電池パックの外装であるアルミニウムとその外装の上に配置される2次側コイル21bとの間に磁性シート52を設け、アルミニウムに対する影響を軽減する必要がある。
【0080】
以上の点を考慮して、2次側非接触充電モジュール42に用いる磁性シート52は、透磁率、飽和磁束密度の高いものが使用され、2次側コイル21bのL値をなるべく大きくすることが重要である。基本的には磁性シート51と同様に透磁率250以上、飽和磁束密度350mT以上を備えるものであればよい。本実施の形態においては、Mn−Zn系のフェライトの焼結体であって、透磁率1500以上、飽和磁束密度400以上、厚みは約400μm以上であることが好ましい。ただし、Ni−Zn系フェライトでもよく、透磁率250以上、飽和磁束密度350以上あれば、1次側非接触充電モジュール41と電力伝送が可能である。また、2次側コイル21bも1次側コイル21aと同様で略円形や略矩形に巻回される。1次側非接触充電モジュール41内にマグネット30aを備えて位置合わせを行う場合と、マグネット30aを備えずに位置合わせを行う場合とがある。
【0081】
次に、マグネット30aのサイズと1次側コイル21aの内径のサイズとの関係について説明する。ここでは、1次側非接触充電モジュール41にマグネット30aを配置した場合について説明するが、2次側非接触充電モジュール42にマグネット30bを配置した場合も同様の関係が成り立つ。その場合は、マグネット30bはマグネット30aに相当する。
【0082】
次に、図4、7などに示した1次側非接触充電モジュール41の磁性シート51及び2次側非接触充電モジュール42の磁性シート52について説明する。
【0083】
図8は、本発明の実施の形態における磁性シートを示す概念図である。図8(a)は磁性シートの上面図、図8(b)は図8(a)のE−E断面図である。また、分かりやすくするため、凹部を拡大して図示している。また、例として1次側非接触充電モジュール41の磁性シート51について説明するが、下記の磁性シート51に関する説明は2次側非接触充電モジュール42の磁性シート52についても適用される。なお、磁性シート51のサイズは、焼結後で30mm×30mm×0.4mmである。
【0084】
磁性シート51の少なくとも一方の面には、複数の直線上に凹部53が複数形成される。凹部の形状は何でもよく、円、楕円、多角形、その他の形状でもよい。本実施の形態における凹部53は、開口面が0.5mm×0.5mmの円形状であり、深さは0.1mmである。基本的に、開口面の面積が0.5mm×0.5mmの円形状の面積から1mm×1mmの円形状の面積に相当する面積であればよい。これより大きくなると、1次側コイル21aの導線が凹部53内に入り込んでしまい、1次側コイル21aと凹部53の底部との距離を確保できなくなってしまう。なお、導線の線径は一般的に0.25mm〜0.4mm程度であり、凹部53の開口面よりも小さいが、導線は平面コイル状に巻回されて
いるため、容易に凹部53内に入らない。また、凹部53の開口面の最大幅が、1次側コイル21aの線径よりも小さくなるように構成すると、確実に凹部53の底部と1次側コイル21aの導線との距離を確保することができる。なお、凹部53の開口面の最大幅とは、例えば開口面が1mm×0.5mmの楕円形状であった場合1mmであり、凹部53はどのような形状でもいいため、任意の2点の幅の最大値のことをいう。
【0085】
また、凹部53の深さは、0.06mm〜0.15mm程度であればよい。もしくは、磁性シート51の厚みの10%〜25%程度であればよい。なお、磁性シート51の厚みとは、磁性シート51の平坦部31aの厚みである。これによって、非接触充電モジュールの電力伝送効率を維持しつつ、本願発明の効果を最大限に得ることができる。すなわち、凹部53が深すぎると、磁性シート51の体積が減少し、1次側コイル21aのL値を向上させる効果が減少してしまう。しかしながら、浅すぎると本願発明の効果を十分に得ることが困難となる。さらに、凹部53は複数設けられ、凹部間距離は約1mmであり、0.5mm〜3mm程度の距離であればよい。すなわち、磁性シート51の面の面積に対して、凹部53が占める面積が、本実施の形態においては約25%であり、10%〜35%程度であればよい。10%よりも小さければ、凹部53を形成する効果を十分に得ることができず、35%を越えると磁性シート51の強度が低下する。すなわち、破損しやすくなり、磁性シート51が破損すると磁性シート51の特性が変化してしまう。従って、10%〜35%程度であることによって、強度を確保し、かつ本願発明の効果を最大限得ることができる。さらに、上述した以上に磁性シート51と1次側コイル21aとが離れてしまうと、磁性シート51が1次側コイル21aのL値を向上させる影響力が弱くなってしまう。また、凹部53間の横方向の距離は、凹部53の横方向の凹部の開口面の横方向の幅よりも大きいほうがよい。これは、縦方向でも任意のどの方向でもそうである。これにより、その方向における磁性シート51の強度を維持することができる。
【0086】
また、凹部53の配置は、図8(a)のように直線状に並んでいるとよいが、どのようにランダムに並んでいてもよい。ただし、それぞれの凹部53間の距離を一定とし、一部に凹部53が集中させず均などに配置するとよい。また、格子状の縦横線上に配置するよりは、図8(a)のように横1列ごとを横方向に少しずつずらしたほうが磁性シート51の強度を確保することができる。さらに、近接するどの他の凹部53とも、ほとんど同じ距離とすることができるので、どの方向においても強度をほぼ一定にすることができる。
【0087】
また、凹部53は、1次側コイル21aが配置される部分、すなわち、1次側コイル21aと磁性シート51が対向する部分に少なくとも設けるとよい。これにより、1次側コイル21aの発熱が磁性シート51に伝熱することを防ぐことができる。
【0088】
図9は、本発明の実施の形態における非接触充電モジュールの断面図と磁性シートに凹部を形成していない場合の非接触充電モジュールの断面図との比較を示す図である。図9(a)は、説明のため磁性シートに凹部を形成していない場合の非接触充電モジュールの断面図である。図9(b)は、本実施の形態における非接触充電モジュールの断面図である。図10は、本発明の実施の形態における磁性シートの温度特性を示す図であり、図10(a)は温度と非接触充電モジュールのコイルのL値との関係、図10(b)は温度と非接触充電モジュールのコイルのL値減少率との関係を示す。ここでの温度変化による非接触充電モジュールの特性変化は、基本的に磁性シートの温度特性によるものである。
【0089】
図9(b)に示すように、1次側コイル21aは、磁性シート51の凹部53が形成された面側に配置される。ただし、凹部53は磁性シート51の両面に形成されてもよい。すなわち、磁性シート51の1次側コイル21aが配置される面とは反対の面(裏面)側には、一般的に電子部品が配置されることがある。また、これが2次側非接触充電モジュール42であれば、裏面側には電子部品だけでなく電池パック524が配置される可能性
がある。電池部品であっても電池パック524であっても発熱を伴いやすいので、その発熱が磁性シート51、52に伝熱する。従って、この伝熱を抑えるため、裏面にも凹部53を形成してもよい。
【0090】
上述したように、1次側コイル21aを、磁性シート51の凹部53が形成された面側に配置することによって、効果的に1次側コイル21aの発熱が磁性シート51に伝熱するのを防ぐことができる。その結果、図10に示す、磁性シート51の温度特性により、磁性シート51の特性が変化することを抑え、非接触充電モジュール間の電力伝送効率を維持することができる。図10に示すように、1次側コイル21aの発熱により磁性シート51が温められると、結果として、非接触充電モジュールの特性がL値及びL値減少率として現れる。なお、L値減少率とは、他方の非接触充電モジュールにマグネットを備えた場合における非接触充電モジュールのコイルのL値を、他方の非接触充電モジュールにマグネットを備えない場合における非接触充電モジュールのコイルのL値で割ったものであり、マグネットの影響が小さいほど値が小さくなる。なお、図10は、恒温槽にて設定温度になってから最低20分以上放置し測定したものである。
【0091】
なお、磁性シート51の両面には、磁性シート51を保護する保護シートが貼られており、厚みは10〜50μmである。従って、凹部53の深さよりも薄い。すなわち、凹部53の深さが保持シートの厚みよりも深いことによって、1次側コイル21aと凹部53の底部との間に確実に距離を確保することができる。なお、保護シートは、柔軟性を有する材料で形成され、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのプラスチックからなる。PET系のシート材は、取り扱いが容易で、環境負荷物質などが含まれておらず環境汚染防止として有効な素材である。また、シート13a、13bは、透明性もしくは遮光性のプラスチック、または、それらの組み合わせで構成することも可能である。こうすることで、紫外線などから磁性部材11や、磁性部材11上に形成した導電性部材(後述)を保護し、長期信頼性を向上させることができる。
【0092】
次に、本実施の形態の磁性シート51、52の製造方法について、説明する。前述したとおり、磁性シート51、52は基本的に(特許文献2)のような製造方法で製造されるが、本実施の形態の磁性シート51、52は凹部53を形成する。
【0093】
磁性部材は、フェライトなどからなる。フェライトとしては、Ni−Zn(ニッケル−亜鉛)系フェライトや、Mn−Zn(マンガン−亜鉛)系フェライトなどがある。例えば、Fe2O3を48.5mol%、ZnOを20.55mol%、NiOを20.55mol%、CuOを10.40mol%の組成比率で配合し、750℃〜900℃−4時間で焼成する。誘電体としては、例えば、Ti(チタン)酸化物が用いられる。
【0094】
まず、上述した組成比率のセラミック系磁性仮焼粉体3000gと、水溶性結合材としてメトローズ135gと、油性可塑材としてセラミゾール270gと、蒸留水340gとを、ミキサーにて20分混合する。次いで、3本ロールを3回パスさせて、はい土を生成する。このはい土を、5℃−96時間で保存することで、熟成した後、真空押し出し成型装置にてグリーンシートを作製する。
【0095】
このグリーンシートの表面を、95℃のドラム式乾燥機にパスさせることにより、乾燥させて、所定の寸法に切断してグリーンシートを作製する。作製したグリーンシートを、900℃−3時間で焼成して焼成体を作製した。
【0096】
凹部53を形成するためには、グリーンシートの成型の際に凹部が形成されるようにグリーンシートを作製するか、グリーンシートをシート状に成型した後に凸状の型をグリーンシートに押し付けて凹部53を形成してもよい。なお、焼結することによって、磁性シ
ート51のサイズ、凹部53のサイズは約8割に縮小する。従って、上述したサイズの凹部53を形成するためには、グリーンシートに開口部の幅や深さが約1.25倍の凹部を形成する必要がある。
【0097】
前述したように、凹部53の形成方法としては、焼成前の平面シートに、凹部53を形成する凸部の型を押しつけて形成してもよい。これにより、凹部53の周りは押し付けられただけ磁性材料の密度が向上し結晶性が向上する。すなわち、磁性材料の密度が向上した分だけ磁性シート51の特性が向上するため、非接触充電モジュール間の電力伝送効率が向上する。または、焼成前の磁性材料を、凹部を備えたシート状に形成してもよい。この場合、上記の方法と異なり、磁性材料に偏りがないため、磁性シート51の場所に関らず安定した特性を得ることができる。
【0098】
また、(特許文献2)のように、磁性シート51に柔軟性を与えるスリットを複数備えてもよい。柔軟性を備えるスリット間距離は、凹部53間距離の1倍〜3倍程度となるようにするとよい。それにより、磁性シート3の柔軟性を確保しつつ、凹部53をバランスよく配置することができる。さらに、スリットや凹部53を備えても、十分な非接触充電モジュール間の電力伝送効率を得られる程度の磁性シート51の特性を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器によれば長時間の充電を行っても、電力伝送効率を高効率に安定した非接触充電モジュール及びこれを用いた非接触充電機器とすることができるので、携帯電話、ポータブルオーディオ、携帯用のコンピュータなどの携帯端末、デジタルカメラ、ビデオカメラなどの携帯機器を充電する際の送信側充電機器として有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 非接触充電モジュール
2 平面コイル部
21 コイル
21a 1次側コイル
21b 2次側コイル
211、212 内側部分
22a、23a 端子(1次側)
22b、23b 端子(2次側)
30a マグネット(1次側)
30b マグネット(2次側)
31a 平坦部(1次側)
31b 平坦部(2次側)
32a 中心部(1次側)
32b 中心部(2次側)
33a 直線凹部(1次側)
33b 直線凹部(2次側)
34a スリット(1次側)
34b スリット(2次側)
41 1次側非接触充電モジュール(送信側非接触充電モジュール)
42 2次側非接触充電モジュール(受信側非接触充電モジュール)
51 磁性シート(1次側)
52 磁性シート(2次側)
71 電力入力部
72 整流回路
82 電力出力部
200 電子機器
300 商用電源
301 コンセント
400 非接触充電器
401 プラグ
402 面
501 机上
520 携帯端末
521 液晶パネル
522 操作ボタン
523 基板
524 電池パック(電力保持部)
525、526 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線が巻回された平面コイル部と、
前記平面コイル部を載置する面を備えた磁性シートと、を備え、
前記磁性シートは、前記平面コイル部と対向する面に、複数の凹部を備え、前記複数の凹部はお互いに離間し、前記複数の凹部の底部と前記平面コイル部とが離れていることを特徴とする非接触充電モジュール。
【請求項2】
前記複数の凹部は、前記平面コイル部と対向する面において、前記平面コイル部が対向される部分に設けられることを特徴とする請求項1に記載の非接触充電モジュール。
【請求項3】
前記複数の凹部は、前記平面コイル部と対向する面の面積に対する前記複数の凹部の占有面積が、10%〜35%であることを特徴とする請求項1または2のいずれかひとつに記載の非接触充電モジュール。
【請求項4】
前記複数の凹部は、前記平面コイル部の厚みに対する前記複数の凹部の深さが、10%〜25%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかひとつに記載の非接触充電モジュール。
【請求項5】
前記複数の凹部の開口面の最大幅は、前記導線の線径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の非接触充電モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の非接触充電モジュールを備えたことを特徴とする非接触充電機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−58719(P2013−58719A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12698(P2012−12698)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2011−196834(P2011−196834)の分割
【原出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【特許番号】特許第5077493号(P5077493)
【特許公報発行日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】